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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】車両用スロープ装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/43 20060101AFI20231226BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61G 3/06 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B60P1/43 A
B60P3/00 A
A61G3/06 711
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019166372
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2020164142
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2018196141
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019060670
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄亮
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 大
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0109294(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第04422598(DE,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02908092(FR,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0327022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00 - 3/04
B60P 1/00 - 9/00
A61G 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部の下端に展開されるスロープ板と、
前記スロープ板の展開及び格納方向に延びるガイドレールと、
前記ガイドレールの延伸方向に移動する駆動シューと、
前記スロープ板の後端部に対して回動可能に連結される第1連結点及び前記駆動シューに対して回動可能に連結される第2連結点を有したリンク部材と、を備えるとともに、
前記ガイドレールに対する前記リンク部材の係合状態に基づいて、
前記リンク部材の姿勢を保持する状態で前記駆動シューに連動して前記スロープ板が前記ガイドレールの延伸方向に移動するように構成された姿勢保持機構と、
前記ガイドレールの前端部に前記スロープ板の後端部が移動することにより該スロープ板が前記ドア開口部に展開された状態において、前記第1連結点と前記第2連結点との間に前記リンク部材の回動支点を形成するとともに、前記ガイドレールの後端部側から前端部側に向かう前記駆動シューの移動に基づき前記ガイドレールの延伸方向における前記回動支点と前記第2連結点との間隔が変化することにより前記リンク部材が回動して、前記スロープ板の後端部が持ち上がるように構成されたリフト機構と、
前記第1連結点と前記第2連結点との間の位置において前記リンク部材に連結されることにより該リンク部材と一体に前記ガイドレールの延伸方向に移動する従動シューと、
を備え
前記リフト機構は、前記リンク部材に対して前記従動シューが連結された第3連結点を前記回動支点として前記リンク部材が回動するように構成されており、
前記第3連結点は、前記従動シュー及び前記リンク部材の一方側に設けられた長孔に対して前記従動シュー及び前記リンク部材の他方側に設けられた軸状部を挿通してなるとともに、
前記リフト機構は、前記スロープ板が展開された状態において、前記従動シューに当接することにより、前記ガイドレールの前端部側に向かう前記従動シューの移動を規制するストッパ部を備えてなる車両用スロープ装置。
【請求項2】
ドア開口部の下端に展開されるスロープ板と、
前記スロープ板の展開及び格納方向に延びるガイドレールと、
前記ガイドレールの延伸方向に移動する駆動シューと、
前記スロープ板の後端部に対して回動可能に連結される第1連結点及び前記駆動シューに対して回動可能に連結される第2連結点を有したリンク部材と、を備えるとともに、
前記ガイドレールに対する前記リンク部材の係合状態に基づいて、
前記リンク部材の姿勢を保持する状態で前記駆動シューに連動して前記スロープ板が前記ガイドレールの延伸方向に移動するように構成された姿勢保持機構と、
前記ガイドレールの前端部に前記スロープ板の後端部が移動することにより該スロープ板が前記ドア開口部に展開された状態において、前記第1連結点と前記第2連結点との間に前記リンク部材の回動支点を形成するとともに、前記ガイドレールの後端部側から前端部側に向かう前記駆動シューの移動に基づき前記ガイドレールの延伸方向における前記回動支点と前記第2連結点との間隔が変化することにより前記リンク部材が回動して、前記スロープ板の後端部が持ち上がるように構成されたリフト機構と、
前記第1連結点と前記第2連結点との間の位置において前記リンク部材に連結されることにより該リンク部材と一体に前記ガイドレールの延伸方向に移動する従動シューと、
を備え、
前記リフト機構は、前記リンク部材に対して前記従動シューが連結された第3連結点を前記回動支点として前記リンク部材が回動するように構成されており、
前記リフト機構は、前記スロープ板が展開された状態において、前記ガイドレールの延伸方向における前記回動支点の形成位置を保持する位置保持機構を備え、
前記回動支点となる前記第3連結点は、前記リンク部材に設けられた長孔に対して前記従動シューに設けられた軸状部を挿通してなるものであって、
前記位置保持機構は、
前記スロープ板が展開された状態で前記従動シューに当接することにより前記ガイドレールの前端部側に向かう前記従動シューの移動を規制するストッパ部と、
前記スロープ板が展開された状態で前記従動シューに係合することにより前記ガイドレールの後端部側に向かう前記従動シューの移動を規制する係合部材と、
を備えてなる車両用スロープ装置。
【請求項3】
請求項に記載の車両用スロープ装置において、
前記係合部材は、前記ガイドレールに支持された状態で前記駆動シューに設けられたカム面に摺接することにより、前記ガイドレールの延伸方向に沿った前記駆動シューの移動に基づいて前記従動シューに係脱すること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項4】
ドア開口部の下端に展開されるスロープ板と、
前記スロープ板の展開及び格納方向に延びるガイドレールと、
前記ガイドレールの延伸方向に移動する駆動シューと、
前記スロープ板の後端部に対して回動可能に連結される第1連結点及び前記駆動シューに対して回動可能に連結される第2連結点を有したリンク部材と、を備えるとともに、
前記ガイドレールに対する前記リンク部材の係合状態に基づいて、
前記リンク部材の姿勢を保持する状態で前記駆動シューに連動して前記スロープ板が前記ガイドレールの延伸方向に移動するように構成された姿勢保持機構と、
前記ガイドレールの前端部に前記スロープ板の後端部が移動することにより該スロープ板が前記ドア開口部に展開された状態において、前記第1連結点と前記第2連結点との間に前記リンク部材の回動支点を形成するとともに、前記ガイドレールの後端部側から前端部側に向かう前記駆動シューの移動に基づき前記ガイドレールの延伸方向における前記回動支点と前記第2連結点との間隔が変化することにより前記リンク部材が回動して、前記スロープ板の後端部が持ち上がるように構成されたリフト機構と、
を備え、
前記リフト機構は、前記リンク部材の回動により前記第1連結点が前記回動支点よりも前記ガイドレールの後端部側に移動するように構成される車両用スロープ装置。
【請求項5】
ドア開口部の下端に展開されるスロープ板と、
前記スロープ板の展開及び格納方向に延びるガイドレールと、
前記ガイドレールの延伸方向に移動する駆動シューと、
前記スロープ板の後端部に対して回動可能に連結される第1連結点及び前記駆動シューに対して回動可能に連結される第2連結点を有したリンク部材と、を備えるとともに、
前記ガイドレールに対する前記リンク部材の係合状態に基づいて、
前記リンク部材の姿勢を保持する状態で前記駆動シューに連動して前記スロープ板が前記ガイドレールの延伸方向に移動するように構成された姿勢保持機構と、
前記ガイドレールの前端部に前記スロープ板の後端部が移動することにより該スロープ板が前記ドア開口部に展開された状態において、前記第1連結点と前記第2連結点との間に前記リンク部材の回動支点を形成するとともに、前記ガイドレールの後端部側から前端部側に向かう前記駆動シューの移動に基づき前記ガイドレールの延伸方向における前記回動支点と前記第2連結点との間隔が変化することにより前記リンク部材が回動して、前記スロープ板の後端部が持ち上がるように構成されたリフト機構と、
を備え、
前記第2連結点が設けられた前記リンク部材の第2端部には、該リンク部材の回動により前記スロープ板の後端部が上方に持ち上げられた状態において、前記ガイドレールに設けられた底板部に対して上側から当接することにより、前記リンク部材の回動を規制する回動規制部が設けられる車両用スロープ装置。
【請求項6】
ドア開口部の下端に展開されるスロープ板と、
前記スロープ板の展開及び格納方向に延びるガイドレールと、
前記ガイドレールの延伸方向に移動する駆動シューと、
前記スロープ板の後端部に対して回動可能に連結される第1連結点及び前記駆動シューに対して回動可能に連結される第2連結点を有したリンク部材と、を備えるとともに、
前記ガイドレールに対する前記リンク部材の係合状態に基づいて、
前記リンク部材の姿勢を保持する状態で前記駆動シューに連動して前記スロープ板が前記ガイドレールの延伸方向に移動するように構成された姿勢保持機構と、
前記ガイドレールの前端部に前記スロープ板の後端部が移動することにより該スロープ板が前記ドア開口部に展開された状態において、前記第1連結点と前記第2連結点との間に前記リンク部材の回動支点を形成するとともに、前記ガイドレールの後端部側から前端部側に向かう前記駆動シューの移動に基づき前記ガイドレールの延伸方向における前記回動支点と前記第2連結点との間隔が変化することにより前記リンク部材が回動して、前記スロープ板の後端部が持ち上がるように構成されたリフト機構と、
を備え、
前記スロープ板に対する前記第1連結点が設けられた前記リンク部材の第1端部における前記第1連結点よりも先端側の位置に前記リンク部材との回動連結点を有して前記スロープ板の側端部に保持される脱落防止部材を備え、
前記スロープ板の後端部が持ち上がる方向に前記リンク部材が回動することにより、前記脱落防止部材が前記スロープ板の上面側に持ち上がるように構成される車両用スロープ装置。
【請求項7】
請求項に記載の車両用スロープ装置において、
前記スロープ板に対して回動可能に連結されるとともに前記脱落防止部材に対して回動可能に連結されることにより前記スロープ板に対する前記第1連結点及び前記脱落防止部材との前記回動連結点を有した前記リンク部材の第1端部とともに平行リンクを形成する第2リンク部材を備えること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項8】
請求項又は請求項に記載の車両用スロープ装置において、
前記スロープ板に対する前記第1連結点よりも前記脱落防止部材との前記回動連結点が上方に位置すること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項9】
請求項~請求項の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記スロープ板には、該スロープ板の上面に開口する前記脱落防止部材の収容凹部が設けられること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項10】
請求項~請求項の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記脱落防止部材が持ち上がる方向に該脱落防止部材を付勢する付勢部材を備えること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項11】
請求項4~請求項10の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記第1連結点と前記第2連結点との間の位置において前記リンク部材に連結されることにより該リンク部材と一体に前記ガイドレールの延伸方向に移動する従動シューを備え、
前記リフト機構は、前記リンク部材に対して前記従動シューが連結された第3連結点を前記回動支点として前記リンク部材が回動するように構成されること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車両用スロープ装置において、
前記ガイドレールには、前記従動シューに係合することにより該従動シューを前記ガイドレールの延伸方向に案内する従動ガイド部が設けられるとともに、
前記リフト機構は、前記ガイドレールの前端部において前記ガイドレールの後端部側から前端部側に向かって上方に延びる湾曲部を前記従動ガイド部に形成してなること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項13】
請求項4~請求項10の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記リフト機構は、前記スロープ板が展開された状態において、前記ガイドレールの前端部側に向かう前記リンク部材に当接することにより、該リンク部材の当接部に前記回動支点を形成する当接部材を備えてなること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項14】
請求項1請求項4~請求項13の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記リフト機構は、前記スロープ板が展開された状態において、前記駆動シューに連動して前記リンク部材が前記ガイドレールの後端部側に向かって移動することにより、前記リンク部材に当接して該リンク部材に第2の回動支点を形成する戻り支点形成部を備えてなること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項15】
請求項1請求項4~請求項13の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記リフト機構は、前記スロープ板が展開された状態において、前記ガイドレールの延伸方向における前記回動支点の形成位置を保持する位置保持機構を備えること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項16】
請求項1~請求項1の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記スロープ板の後端部には、前記リンク部材の回動により上方に持ち上げられた状態において、前記ドア開口部に臨む車両フロアの縁部に係合する係合部が設けられること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項17】
請求項1~請求項1の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記駆動シューに連結される駆動ケーブルと、
前記ガイドレールの延伸方向に沿って延びる摺動路と、
前記摺動路に沿って前記駆動ケーブルを摺動させるアクチュエータと、
を備えること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スロープ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両フロアの下方に格納されたスロープ板をドア開口部の下端に展開する車両用のスロープ装置がある。例えば、特許文献1に記載のスロープ装置は、そのスロープ板が格納される格納ボックス内を奥行き方向、即ち展開及び格納方向に移動する移動体を備えている。また、この移動体は、リンク部材を介してスロープ板に接続されている。更に、このリンク部材は、その移動体に対する連結点よりも後方側(格納方向)となる位置において、格納ボックスの側壁部に形成されたガイド部(誘導部)に係合する係合部(ガイド体)を備えている。そして、これにより、ガイド部に設定された斜面形状に基づきスロープ板の傾斜角度を変更しつつ、その移動体の動作に連動して、スロープ板を格納ボックスから車外に展開し、及び再び格納ボックス内に格納することが可能になっている。
【0003】
即ち、スロープ板に対する第1連結点と移動体に対する第2連結点との間の距離を長く設定することにより、ガイド部に設けられた斜面形状に基づいた係合部の上下方向変位が小さくとも、そのリンク部材を介して移動体に連結されたスロープ板を大きく傾動させることができる。そして、上記従来技術のスロープ装置は、これにより、上下方向の格納スペースを抑えて車両に対する搭載性の向上を図る構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-112578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の構成では、ドア開口部の下端に展開されたスロープ板の後端部を車両フロアに近づけることが難しい。そして、これにより、例えば、格納ボックスの蓋部材等、そのスロープ板の後端部と車両フロアとの間に架け渡す付加的な延長部材が必要になるという問題があることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より車両フロアに近い位置にスロープ板を配置することのできる車両用スロープ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、ドア開口部の下端に展開されるスロープ板と、前記スロープ板の展開及び格納方向に延びるガイドレールと、前記ガイドレールの延伸方向に移動する駆動シューと、前記スロープ板の後端部に対して回動可能に連結される第1連結点及び前記駆動シューに対して回動可能に連結される第2連結点を有したリンク部材と、を備えるとともに、前記ガイドレールに対する前記リンク部材の係合状態に基づいて、前記リンク部材の姿勢を保持する状態で前記駆動シューに連動して前記スロープ板が前記ガイドレールの延伸方向に移動するように構成された姿勢保持機構と、前記ガイドレールの前端部に前記スロープ板の後端部が移動することにより該スロープ板が前記ドア開口部に展開された状態において、前記第1連結点と前記第2連結点との間に前記リンク部材の回動支点を形成するとともに、前記ガイドレールの後端部側から前端部側に向かう前記駆動シューの移動に基づき前記ガイドレールの延伸方向における前記回動支点と前記第2連結点との間隔が変化することにより前記リンク部材が回動して、前記スロープ板の後端部が持ち上がるように構成されたリフト機構と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、スロープ板をドア開口部に展開する動作に連続して、そのガイドレールの後端部側から前端部側に向かって移動する駆動シューの駆動力に基づきスロープ板の後端部を持ち上げる方向にリンク部材を回動させることができる。更に、この場合におけるリンク部材の回動量及び当該リンク部材の長さに基づいて、その後端部の持ち上げ位置を任意に設定することができる。そして、これにより、より車両フロアに近い位置にスロープ板を配置することができる。
【0009】
また、簡素な構成を活かして装置の小型化を図ることができる。特に、ドア開口部にスロープ板が展開した状態でリンク部材が回動するとともに、ガイドレールの延伸方向に沿った駆動シューの移動に基づいて、そのリンク部材を回動させるリフト機構が形成されていることから、容易に、その上下方向の厚みを薄型化することができる。そして、これにより、車両に対する搭載性を向上させることができる。
【0010】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記第1連結点と前記第2連結点との間の位置において前記リンク部材に連結されることにより該リンク部材と一体に前記ガイドレールの延伸方向に移動する従動シューを備え、前記リフト機構は、前記リンク部材に対して前記従動シューが連結された第3連結点を前記回動支点として前記リンク部材が回動するように構成されることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、駆動シュー及び従動シューによって、安定的に、そのリンク部材を支えることができる。そして、従動シューが形成する第3連結点を回動支点とすることで、安定的に、そのリンク部材を回動させることができる。
【0012】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記第3連結点は、前記従動シュー及び前記リンク部材の一方側に設けられた長孔に対して前記従動シュー及び前記リンク部材の他方側に設けられた軸状部を挿通してなるとともに、前記リフト機構は、前記スロープ板が展開された状態において、前記従動シューに当接することにより、前記ガイドレールの前端部側に向かう前記従動シューの移動を規制するストッパ部を備えてなることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、従動シューがストッパ部に当接した後においても、この従動シューに対するリンク部材の連結部において、見かけ上、軸状部が長孔内を移動することにより、駆動シューについては、引き続き、そのガイドレールの後端部側から前端部側に向かう移動が許容される。そして、これにより、その長孔内に挿通された軸状部を支点にリンク部材が回動する。つまり、従動シューの移動が規制された状態で駆動シューがガイドレールの延伸方向に沿って移動することにより、その延伸方向におけるリンク部材の回動支点と駆動シューに対する第2連結点の間隔が変化する。そして、これにより、その駆動シュー及び従動シューを介してガイドレールに係合するリンク部材を安定的に回動させることができる。
【0014】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記ガイドレールには、前記従動シューに係合することにより該従動シューを前記ガイドレールの延伸方向に案内する従動ガイド部が設けられるとともに、前記リフト機構は、前記ガイドレールの前端部において前記ガイドレールの後端部側から前端部側に向かって上方に延びる湾曲部を前記従動ガイド部に形成してなることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、ドア開口部にスロープ板が展開された状態にある場合、従動シューは、そのガイドレールの前端部において従動ガイド部に設けられた湾曲部に案内されることにより、上下方向の変位を伴いつつ、駆動シューに連動してガイドレールの延伸方向に移動する。更に、これに伴いガイドレールの延伸方向におけるリンク部材の第3連結点と第2連結点との間隔が変化する。そして、これにより、ガイドレールの後端部側から前端部側に向かう駆動シューの移動に基づいて、その第3連結点を回動支点として、スロープ板の後端部を上方に持ち上げる方向にリンク部材を回動させることができる。
【0016】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記リフト機構は、前記スロープ板が展開された状態において、前記ガイドレールの前端部側に向かう前記リンク部材に当接することにより、該リンク部材の当接部に前記回動支点を形成する当接部材を備えてなることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、リンク部材が当接部材に当接する状態でガイドレールの前端部側に移動することにより、その当接部材に対するリンク部材の当接位置も移動する。更に、これに伴いガイドレール延伸方向における当接部材に対するリンク部材の当接部と駆動シューに対する第2連結点との間隔が変化する。そして、これにより、ガイドレールの後端部側から前端部側に向かう駆動シューの移動に基づいて、その当接部材に対するリンク部材の当接部を回動支点として、スロープ板の後端部を上方に持ち上げる方向にリンク部材を回動させることができる。
【0018】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記リフト機構は、前記スロープ板が展開された状態において、前記駆動シューに連動して前記リンク部材が前記ガイドレールの後端部側に向かって移動することにより、前記リンク部材に当接して該リンク部材に第2の回動支点を形成する戻り支点形成部を備えてなることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、ガイドレールの後端部側に向かう駆動シューの移動に基づいて、安定的に、そのスロープ板の後端部を引き下げる方向にリンク部材を回動させることができる。そして、この引き下げ動作に連続して、そのリンク部材と一体にスロープ板を格納方向に移動させることができる。
【0020】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記リフト機構は、前記スロープ板が展開された状態において、前記ガイドレールの延伸方向における前記回動支点の形成位置を保持する位置保持機構を備えることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、ガイドレールの延伸方向に沿った駆動シューの移動を、より直接的に、そのリンク部材の回動に変換することができる。そして、これにより、より円滑に、ガイドレールの前端部側に向かう駆動シューの移動に基づいて、スロープ板の後端部を持ち上げることができるとともに、ガイドレールの後端部側に向かう駆動シューの移動に基づいて、その上方に持ち上げられたスロープ板の後端部を引き下げることができる。
【0022】
つまり、回動支点の形成位置を保持することにより、駆動シューの移動方向を反転させた場合においても、そのガイドレールの延伸方向に移動する駆動シューと、この駆動シューに連動して回動するリンク部材との同期を維持することができる。そして、これにより、円滑に、その持ち上げ動作及び引き下げ動作の切り替えを行うことができる。
【0023】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記リフト機構は、前記スロープ板が展開された状態において、前記ガイドレールの延伸方向における前記回動支点の形成位置を保持する位置保持機構を備え、前記回動支点となる前記第3連結点は、前記リンク部材に設けられた長孔に対して前記従動シューに設けられた軸状部を挿通してなるものであって、前記位置保持機構は、前記スロープ板が展開された状態で前記従動シューに当接することにより前記ガイドレールの前端部側に向かう前記従動シューの移動を規制するストッパ部と、前記スロープ板が展開された状態で前記従動シューに係合することにより前記ガイドレールの後端部側に向かう前記従動シューの移動を規制する係合部材と、を備えてなることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、簡素な構成にて、駆動シューの移動方向に依らず、その従動シューの軸状部による回動支点の形成位置を保持可能な位置保持機構を形成することができる。
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記係合部材は、前記ガイドレールに支持された状態で前記駆動シューに設けられたカム面に摺接することにより、前記ガイドレールの延伸方向に沿った前記駆動シューの移動に基づいて前記従動シューに係脱することが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、ガイドレールの延伸方向に沿った駆動シューの移動によりスロープ板の後端部を持ち上げ又は引き下げるリンク部材の動作に連動して、その従動シューに対して係合部材を係脱させることができる。そして、これにより、簡素な構成にて、適切なタイミングで、そのガイドレールの後端部側に向かう従動シューの移動を規制し、及び、この規制を解除することができる。
【0026】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記リフト機構は、前記リンク部材の回動により前記第1連結点が前記回動支点よりも前記ガイドレールの後端部側に移動するように構成されることが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、ドア開口部にスロープ板を展開した方向、つまりは、そのドア開口部が車外に開口する方向から、このドア開口部に臨む車両フロアの縁部に対して、そのスロープ板の後端部を近づけることができる。そして、これにより、より車両フロアに近い位置にスロープ板を配置することができる。
【0028】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記スロープ板の後端部には、前記リンク部材の回動により上方に持ち上げられた状態において、前記ドア開口部に臨む車両フロアの縁部に係合する係合部が設けられることが好ましい。
【0029】
上記構成によれば、スロープ板の荷重を車両フロアによって支えることができる。そして、これにより、そのリフト機構の負荷を軽減して高い信頼性及び耐久性を確保することができる。
【0030】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記第2連結点が設けられた前記リンク部材の第2端部には、該リンク部材の回動により前記スロープ板の後端部が上方に持ち上げられた状態において、前記ガイドレールに設けられた底板部に対して上側から当接することにより、前記リンク部材の回動を規制する回動規制部が設けられることが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、簡素な構成にて、そのリンク部材の回動量を規定することができる。そして、これにより、より車両フロアに近い位置にスロープ板を配置することができる。加えて、リンク部材に加わる荷重を、その回動規制部が当接したガイドレールの底板部により支えることができる。そして、これにより、高い信頼性及び耐久性を確保することができる。
【0032】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記駆動シューに連結される駆動ケーブルと、前記ガイドレールの延伸方向に沿って延びる摺動路と、前記摺動路に沿って前記駆動ケーブルを摺動させるアクチュエータと、を備えることが好ましい。
【0033】
上記構成によれば、簡素な構成にて、安定的に、その駆動シューをガイドレールの延伸方向に移動させることができる。そして、その簡素な構成を活かして小型化を図ることにより、車両に対する搭載性を向上させることができる。
【0034】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記スロープ板に対する前記第1連結点が設けられた前記リンク部材の第1端部における前記第1連結点よりも先端側の位置に前記リンク部材との回動連結点を有して前記スロープ板の側端部に保持される脱落防止部材を備え、前記スロープ板の後端部が持ち上がる方向に前記リンク部材が回動することにより、前記脱落防止部材が前記スロープ板の上面側に持ち上がるように構成されることが好ましい。
【0035】
上記構成によれば、スロープ板の上面よりも上方に持ち上げられた脱落防止部材が側壁部を形成することで、そのスロープ板上を移動する物体が、このスロープ板から脱落し難くなる。更に、スロープ板の格納時には、その側端部に保持する脱落防止部材がスロープ板の上面から上方に突出しない、或いは、その突出量を抑えることができる。そして、これにより、車両に対する搭載性の向上を図ることができる。
【0036】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記スロープ板に対して回動可能に連結されるとともに前記脱落防止部材に対して回動可能に連結されることにより前記スロープ板に対する前記第1連結点及び前記脱落防止部材との前記回動連結点を有した前記リンク部材の第1端部とともに平行リンクを形成する第2リンク部材を備えることが好ましい。
【0037】
上記構成によれば、脱落防止部材の姿勢を維持したまま、その脱落防止部材を持ち上げることができる。そして、これにより、その脱落防止用の側壁部としての機能を向上させるとともに、併せて、その高い意匠性を確保することができる。
【0038】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記スロープ板に対する前記第1連結点よりも前記脱落防止部材との前記回動連結点が上方に位置することが好ましい。
上記構成によれば、スロープ板の後端部を持ち上げる方向にリンク部材が回動する際、その脱落防止部材との回動連結点に引っ掛かりが生じ難い。そして、これにより、そのリンク部材の回動に基づいて、より円滑に、スロープ板の側端部に保持された脱落防止部材を持ち上げることができる。
【0039】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記スロープ板には、該スロープ板の上面に開口する前記脱落防止部材の収容凹部が設けられることが好ましい。
上記構成によれば、脱落防止部材を保護するとともに、意匠性の向上を図ることができる。
【0040】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記脱落防止部材が持ち上がる方向に該脱落防止部材を付勢する付勢部材を備えることが好ましい。
上記構成によれば、リンク部材の回動に基づいて、より円滑に、そのスロープ板の長手方向に延在する脱落防止部材を上方に持ち上げることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、より車両フロアに近い位置にスロープ板を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の斜視図(格納状態)。
図2】ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の斜視図(展開状態)。
図3】(a)(b)は、ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の側面図(a:格納状態、b:展開状態)。
図4】スロープ装置の分解斜視図。
図5】スロープ装置の断面図(図3(a)におけるV-V断面)。
図6】スロープ装置の分解斜視図。
図7】(a)(b)は、第1の実施形態におけるスロープ装置の側面図(a:展開及び格納動作時、b:展開状態)。
図8】スロープ装置の平面図。
図9】駆動ケーブル及びアクチュエータの概略構成図。
図10】第1の実施形態におけるスロープ装置の側面図(回動支点形成)。
図11】第1の実施形態におけるスロープ装置の側面図(リンク部材回動)。
図12】第1の実施形態におけるスロープ装置の側面図(最上位置)。
図13】第1の実施形態におけるスロープ装置の側面図(後方移動位置)。
図14】(a)~(c)は、第1の実施形態におけるスロープ装置の側面図(a:第2の回動支点形成、b,c:リンク部材回動)。
図15】第2の実施形態におけるスロープ装置の断面図(回動支点形成前)。
図16】第2の実施形態におけるスロープ装置の断面図(回動支点形成及びリンク部材回動)。
図17】第2の実施形態におけるスロープ装置の断面図(最上位置)。
図18】第2の実施形態におけるスロープ装置の断面図(後方移動位置)。
図19】第3の実施形態におけるスロープ装置の側面図(回動支点形成)。
図20】第3の実施形態におけるスロープ装置の側面図(リンク部材回動)。
図21】第3の実施形態におけるスロープ装置の側面図(最上位置)。
図22】第3の実施形態におけるスロープ装置の側面図(後方移動位置)。
図23】脱落防止部材が設けられたスロープ板の斜視図(持ち上げ状態)。
図24】脱落防止部材が設けられたスロープ板の側面図(持ち上げ状態)。
図25】第4の実施形態におけるスロープ装置の作用説明図(持ち上げ前)。
図26】第4の実施形態におけるスロープ装置の作用説明図(持ち上げ中)。
図27】(a)(b)は、脱落防止部材が設けられたスロープ板の断面図。
図28】スロープ板と脱落防止部材とを接続する第2リンク部材がリンク部材の第1端部とともに形成する平行リンクの説明図。
図29】スロープ板の側端部に設けられた脱落防止部材の収容凹部を示す斜視図。
図30】(a)(b)は、脱落防止部材の収容凹部が設けられたスロープ板の側端部近傍の断面図。
図31】(a)~(c)は、スロープ板と脱落防止部材との間に介在された付勢部材の説明図。
図32】別例のスロープ装置の側面図。
図33】(a)(b)は、第5の実施形態におけるスロープ装置の側面図。
図34】ガイドレールに設けられたレバー部材近傍の拡大図。
図35】ガイドレールに設けられたレバー部材近傍の拡大図。
図36】ガイドレールに設けられたレバー部材近傍の拡大断面図。
図37】ガイドレールに設けられたレバー部材近傍の拡大断面図。
図38】(a)(b)は、第5の実施形態におけるスロープ装置の側面図。
図39】(a)(b)は、第5の実施形態におけるスロープ装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[第1の実施形態]
以下、車両用のスロープ装置を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1図2、及び図3(a)(b)に示すように、本実施形態の車両1には、車体2に設けられたドア開口部3の下端にスロープ板10を展開するスロープ装置11が設けられている。本実施形態の車両1において、このスロープ装置11は、ドア開口部3の下方に設けられた格納ボックス12内に設置されている。具体的には、この格納ボックス12は、そのドア開口部3と同一方向(図3中、左側)に開口部12aを有している。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この開口部12aを介することにより、その格納ボックス12に格納されたスロープ板10を車外に展開し、及び、その展開したスロープ板10を再び格納ボックス12内に格納する構成になっている。
【0044】
尚、このスロープ装置11が設置されるドア開口部3としては、例えば、車両1の後方開口部(バックドア)、或いは、スライドドアや所謂グライドドアにより開閉される側方開口部(サイドドア)が想定される。そして、このようなドア開口部3に展開されたスロープ板10を利用することで、例えば、車椅子や自転車等を、容易に、車室に積み込むことができる。
【0045】
詳述すると、図3図5に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、その格納ボックス12から車外に押し出されるかたちでドア開口部3の下端に展開されるスロープ板10の展開及び格納方向、つまりは、その格納ボックス12内の奥行き方向(図3中、左右方向)に延びる一対のガイドレール20,20を備えている(図1及び図2参照)。また、このスロープ装置11は、これらの各ガイドレール20に係合する状態で、それぞれ、その係合する各ガイドレール20の延伸方向に沿って摺動可能に設けられた一対の駆動シュー22,22を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、その前端部10fを先頭に上記格納ボックス12から車外に押し出されるスロープ板10の後端部10rに対し、それぞれ回動可能に連結されるとともに、上記各駆動シュー22に対して、それぞれ回動可能に連結される一対のリンク部材25,25を備えている。
【0046】
図1図2、及び図6に示すように、本実施形態の各ガイドレール20は、その後端部10r側から引き戻されるかたちで格納ボックス12内に格納されるスロープ板10の幅方向両側を挟み込む態様で、略平行に配置されている。尚、本実施形態のスロープ装置11において、これらの各ガイドレール20は、固定部材27,28を介して互いに連結されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その各ガイドレール20,20の離間距離を一定に保持する構成になっている。
【0047】
また、図4図5、及び図7(a)(b)に示すように、本実施形態の各リンク部材25は、長尺略平板状の外形を有している。更に、これらの各リンク部材25は、それぞれ、その長手方向の両端部に、これらの各リンク部材25を厚み方向(図5中、左右方向、図7中、紙面に直交する方向)に貫通する貫通孔31,32を備えている。そして、本実施形態の各駆動シュー22は、そのリンク部材25の第2端部25bに設けられた貫通孔32に挿通される軸状部22aを備えている。
【0048】
また、本実施形態のスロープ装置11は、リンク部材25の第1端部25aに設けられた貫通孔31に挿通される軸状部35aを有した一対の連結部材35,35を備えている。そして、これらの各連結部材35,35には、スロープ板10の後端部10rに対する固定部35bが設けられている。
【0049】
即ち、本実施形態のスロープ装置11においては、これらの各連結部材35の軸状部35aを支軸として、スロープ板10に対する各リンク部材25の第1連結点X1が形成されている。そして、各駆動シュー22の軸状部22aを支軸として、その各駆動シュー22に対する各リンク部材25の第2連結点X2が形成される構成になっている。
【0050】
また、本実施形態の各ガイドレール20は、その上端部分から第1端部25aが突出する状態で内側にリンク部材25を配置する溝状のリンクガイド部37を備えている。更に、各ガイドレール20は、このリンクガイド部37の側壁面37sに開口部を有して、そのリンクガイド部37とともにガイドレール20の延伸方向(図7中、左右方向)に延びる溝状の駆動ガイド部38,38を備えている。そして、本実施形態の各駆動シュー22は、それぞれ、その対応する各ガイドレール20に設けられた駆動ガイド部38に対する係合部22bを備えている。
【0051】
尚、本実施形態のスロープ装置11において、これらの各駆動シュー22の係合部22bは、それぞれ、その各ガイドレール20に設けられた上記各駆動ガイド部38,38のうち、スロープ板10の展開方向に向かって右側(図5中、右側)に位置する駆動ガイド部38に係合する。そして、本実施形態の各駆動シュー22は、これらの各駆動ガイド部38に案内されることにより、その上下方向の移動が規制された状態で各ガイドレール20の延伸方向に沿って移動する構成になっている。
【0052】
また、本実施形態のスロープ装置11は、上記第1連結点X1と第2連結点X2との間の位置において、それぞれ、各リンク部材25に対して回動可能に連結される一対の従動シュー40,40を備えている。
【0053】
具体的には、本実施形態の各リンク部材25は、第1端部25aと第2端部25bとの間の位置において、その長手方向に延びる長孔43を備えている。そして、本実施形態の各従動シュー40は、この長孔43に挿通される軸状部40aと、この軸状部40aの軸端部に設けられた係合部40bと、を備えている。
【0054】
また、本実施形態の各ガイドレール20は、上記駆動ガイド部38と同様、そのリンクガイド部37の側壁面37s(図5中、左側の側壁面)に開口部を有して延伸方向(図7中、左右方向)に延びる溝状の従動ガイド部45を備えている。本実施形態の従動ガイド部45は、上記各駆動ガイド部38の上方に設けられている。更に、本実施形態の各従動シュー40は、この従動ガイド部45に対し、それぞれ、その係合部40bが係合する構成になっている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、各駆動シュー22に連動して、これらの各駆動シュー22及び各リンク部材25と一体に、その各従動シュー40が、上下方向の移動が規制された状態で各ガイドレール20の延伸方向に移動する構成になっている。
【0055】
さらに詳述すると、図7(a)に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、上記のような各駆動シュー22及び各従動シュー40を介した各ガイドレール20に対する各リンク部材25の係合状態に基づいて、これらの各リンク部材25の姿勢を保持する。具体的には、本実施形態の各リンク部材25は、そのスロープ板10に対する第1連結点X1を駆動シュー22に対する第2連結点X2よりも上方に配置するとともに、その第1連結点X1を第2連結点X2よりもガイドレール20の前端部20f側、つまりはスロープ板10の展開方向(図7中、左側)に配置した姿勢(前傾姿勢)に保持される。
【0056】
また、図4図5及び図7に示すように、本実施形態の各ガイドレール20は、このような前傾姿勢に保持された各リンク部材25を内側に配置する上記リンクガイド部37の上方において、その延伸方向に延びる天板部46を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これらの各ガイドレール20に設けられた天板部46の下面46sに対し、そのスロープ板10に対する第1連結点X1が設けられた各リンク部材25の第1端部25aが摺接するように構成されている。
【0057】
即ち、図7に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、各駆動シュー22がガイドレール20の延伸方向に移動することにより、これらの各駆動シュー22に連結された各リンク部材25を介して、そのスロープ板10を、格納ボックス12から押し出すかたちで車外に展開し、及び引き戻すかたちで格納ボックス12内に格納する。また、本実施形態の各リンク部材25は、その長孔43内に挿通された各従動シュー40の軸状部40aが、この長孔43における第1端部25a側の端部43aに位置することで、上記のような前傾姿勢となる。更に、本実施形態のスロープ装置11は、このとき、これら各リンク部材25の第1端部25aが、各ガイドレール20に設けられた天板部46(の下面46s)に摺接(係合)することで、その長孔43に挿通された軸状部40aの位置変化に基づいた各リンク部材25の回動が規制されるようになっている。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、各ガイドレール20に対する各リンク部材25の係合状態に基づいて、これら各リンク部材25の前傾姿勢を保持した状態で、各駆動シュー22に連動して、そのスロープ板10を各ガイドレール20の延伸方向に移動させる姿勢保持機構50が形成されている。
【0058】
尚、図5及び図7に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、このような各リンク部材25の第1端部25aが各ガイドレール20の天板部46に係合する状態において、そのスロープ板10の下面10sに当接する回転部材としてのローラー48aを有したスロープ支持部48を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、略水平な安定した姿勢で、そのスロープ板10が各駆動シュー22に連動して各ガイドレール20の延伸方向に移動する構成になっている。
【0059】
また、図7(b)に示すように、本実施形態のスロープ装置11においては、各駆動シュー22が各ガイドレール20の後端部20r側から前端部20f側(図7中、右側から左側)に移動することにより、当該各ガイドレール20の前端部20fにおいて、そのスロープ板10の下面10sが上記ローラー48aに対して当接しない状態になる。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、各リンク部材25の第1端部25aに設けられた第1連結点X1を支点としたスロープ板10の傾動を許容する状態で、このスロープ板10をドア開口部3の下端に展開する構成となっている。
【0060】
さらに詳述すると、図8に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、各ガイドレール20(20R,20L)の延伸方向に沿って配索される一対の駆動ケーブル51(51R,51L)を備えている。また、本実施形態のスロープ装置11において、これら各駆動ケーブル51は、その各ガイドレール20(20R,20L)に設けられた駆動ガイド部38に係合する各駆動シュー22(22R,22L)に対し、それぞれ、その一端側(接続端51a)が接続されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、モータ52mを駆動源として、これらの各駆動ケーブル51を各ガイドレール20の延伸方向に沿って摺動させるアクチュエータ52を備えている。
【0061】
即ち、本実施形態のスロープ装置11は、各駆動ケーブル51を介して伝達されるアクチュエータ52の駆動力に基づいて、各駆動シュー22を各ガイドレール20の延伸方向に移動させる。そして、これにより、その各リンク部材25(25R,25L)を介して各駆動シュー22に連結されたスロープ板10を展開及び格納方向に移動させる構成になっている。
【0062】
図6及び図8に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、スロープ板10の幅方向(図8中、上下方向)に延びる略平板形状を有して各ガイドレール20(20R,20L)の後端部20rに接続されるブラケット53を備えている。また、本実施形態のアクチュエータ52は、このブラケット53の長手方向略中央部分に固定されている。更に、本実施形態のスロープ装置11は、そのアクチュエータ52と各ガイドレール20の内側駆動ガイド部38aとの間を接続するケーシングパイプ55(55R,55L)と、そのアクチュエータ52と各ガイドレール20の外側駆動ガイド部38bとの間を接続するケーシングパイプ56(56R,56L)と、を備えている。そして、本実施形態の各駆動ケーブル51は、それぞれ、これらの各ケーシングパイプ55,56及び各駆動ガイド部38(38a,38b)を摺動路58として、そのアクチュエータ52に駆動される構成になっている。
【0063】
即ち、本実施形態のスロープ装置11において、一方の駆動ケーブル51Lは、ケーシングパイプ55R,55Lを介することにより、各ガイドレール20(20R,20L)の内側駆動ガイド部38a内に配索される。また、他方の駆動ケーブル51Rは、ケーシングパイプ56R,56Lを介することにより、各ガイドレール20(20R,20L)の外側駆動ガイド部38b内に配索される。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、一方の駆動ケーブル51Rの接続端51aが、右側のガイドレール20Rに係合する駆動シュー22Rに対して接続されるとともに、他方の駆動ケーブル51Lの接続端51aが、左側のガイドレール20Lに係合する駆動シュー22Lに対して接続される構成になっている。
【0064】
尚、本実施形態のスロープ装置11において、各駆動ケーブル51(51R,51L)は、それぞれ、挿入された駆動ガイド部38内において、その接続端51a,51aが各駆動シュー22(22R,22L)の係合部22bに対して接続される。そして、これら各駆動ケーブル51(51R,51L)の自由端51b,51bは、それぞれ、その接続端51a,51aが配索された側の各ガイドレール20,20とは、左右反対の各ガイドレール20,20において、その駆動ガイド部38内に配索される構成になっている。
【0065】
また、図9に示すように、本実施形態の各駆動ケーブル51(51R,51L)は、平歯式のラックベルト60としての構成を有している。そして、本実施形態のアクチュエータ52は、これらの両駆動ケーブル51(51R,51L)に歯合する状態で回転するピニオンギヤ61を備えている。
【0066】
即ち、本実施形態のアクチュエータ52は、ピニオンギヤ61の回転軸61xを挟む二位置(図9中、上下方向位置)において、このピニオンギヤ61に対して各駆動ケーブル51(51R,51L)が歯合するように構成されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、そのアクチュエータ52に駆動された各駆動ケーブル51(51R,51L)の摺動に基づいて、各駆動シュー22(22R,22L)が互いに同期して、その各ガイドレール20(20R,20L)の前端部20f側又は後端部20r側に向かって移動する構成になっている。
【0067】
(リフト機構)
次に、本実施形態のスロープ装置11に実装されたリフト機構の構成について説明する。
【0068】
図10に示すように、本実施形態の各ガイドレール20は、これらの各ガイドレール20の前端部20fにスロープ板10の後端部10rが移動することにより、このスロープ板10がドア開口部3に展開された状態において、その各リンク部材25の第1端部25aが各ガイドレール20の天板部46から脱離するように構成されている。具体的は、本実施形態の各ガイドレール20において、天板部46の前端46fは、上記リンクガイド部37の底面37bを形成する底板部66の前端66fよりも、そのガイドレールの後端部20r側(図10中、右側)に設定されている。そして、本実施形態の各ガイドレール20は、これにより、その前端部20fに各駆動シュー22が移動した際、これらの各駆動シュー22が駆動ガイド部38に係合する状態で、各リンク部材25の第1端部25aが各ガイドレール20の天板部46から脱離する構成になっている。
【0069】
また、図10図12に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、上記のようにスロープ板10がドア開口部3に展開された状態において、上記各従動シュー40に当接することにより、各ガイドレール20の前端部20f側に向かう各従動シュー40の移動を規制するストッパ部64を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、各ガイドレール20に対する各リンク部材25の係合状態に基づいて、そのガイドレールの後端部20r側から前端部20f側に向かって移動する各駆動シュー22に連動して、スロープ板10の後端部10rを上方に持ち上げるリフト機構70が形成されている。
【0070】
詳述すると、図4及び図7に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、各ガイドレール20の前端部20fに固定される一対のエンドブロック65,65を備えている。そして、本実施形態のストッパ部64は、これらの各エンドブロック65と一体に設けられている。
【0071】
また、図10図12に示すように、本実施形態のスロープ装置11において、各リンク部材25は、上記のように各ガイドレール20の天板部46から第1端部25aが脱離することにより、その長孔43内に挿通された従動シュー40の軸状部40aを支点とした回動が許容される(回動支点Px)。更に、このとき、見かけ上、その長孔43内を軸状部40aが移動することで、これらの長孔43及び軸状部40aが形成する各従動シュー40に対する第3連結点X3と各駆動シュー22に対する第2連結点X2との間の離間距離が変化する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、上記のように各従動シュー40が各ストッパ部64に当接した後においても、各駆動シュー22については、引き続き、各ガイドレール20の後端部20r側から前端部20f(各図中、右側から左側)に向かって移動することが可能となっている。
【0072】
即ち、各従動シュー40の移動が規制された状態で各駆動シュー22が各ガイドレール20の延伸方向に沿って移動することにより、各ガイドレール20の延伸方向における第3連結点X3と第2連結点X2との間隔、つまりは各リンク部材25の回動支点Pxと各駆動シュー22に対する第2連結点X2との間隔(距離)dが変化する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これに伴い、その各駆動シュー22及び各従動シュー40を介して各ガイドレール20に係合する各リンク部材25が回動することで、これらの各リンク部材25に連結されたスロープ板10の後端部10rが上方に持ち上がる構成となっている。
【0073】
具体的には、各ストッパ部64に対して各従動シュー40が当接する状態で各駆動シュー22が各ガイドレール20の前端部20f側に移動することにより、各リンク部材25の長孔43内に挿入された従動シュー40の軸状部40aの位置が、見かけ上、第1端部25a側の端部43aから第2端部25b側の端部43bに向かって移動する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、スロープ板10の後端部10rに対する第1連結点X1が設けられた第1端部25aが持ち上がる方向に(各図中、時計回り方向)、各リンク部材25が回動する構成になっている。
【0074】
また、図13に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、各ストッパ部64に当接した各従動シュー40を追い越すかたちで、その各駆動シュー22が、各ガイドレール20の前端部20f側に移動する。更に、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、各リンク部材25の第2連結点X2が、これら各リンク部材25の回動支点Pxを構成する第3連結点X3を超えて、各ガイドレール20の前端部20f側に移動する。そして、本実施形態のリフト機構70は、これにより各リンク部材25が更に回動することで、スロープ板10の後端部10rに対する第1連結点X1を、その回動支点Pxよりもガイドレール20の後端部20r側に移動させる構成になっている。
【0075】
具体的には、図12に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、各ガイドレール20の延伸方向に沿った各駆動シュー22の移動位置が、各リンク部材25の回動支点Pxを構成する第3連結点X3と等しくなる位置において、その第1端部25aに連結されたスロープ板10の後端部10rが、最も上方の位置に持ち上げられる。そして、図13に示すように、この状態から各リンク部材25が更に回動することにより、スロープ板10の後端部10rが、その各リンク部材25により持ち上げられた位置を緩やかに降下させながら、各ガイドレール20の後端部20r側に向かって移動する構成になっている。
【0076】
さらに詳述すると、本実施形態のスロープ装置11において、スロープ板10の後端部10rには、上記のような各リンク部材25の回動により上方に持ち上げられた状態において、そのドア開口部3に臨む車両フロア71に対して係合する係合部72が設けられている。
【0077】
具体的には、本実施形態のスロープ装置11は、上記のように各リンク部材25に連結された後端部10rが緩やかに降下しながら各ガイドレール20の後端部20r側に向かうスロープ板10の動きに基づいて、その後端部10rに設けられた係合部72が、上側から、その車両フロア71の縁部71eに係合する構成になっている。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、そのスロープ板10の荷重が車両フロア71によって支えられる構成になっている。
【0078】
また、各駆動シュー22に対する第2連結点X2が設けられた各リンク部材25の第2端部25bには、それぞれ、スロープ板10の後端部10rを持ち上げる方向に各リンク部材25が回動した状態において、ガイドレール20の底板部66に対して上側から当接することにより各リンク部材25の回動を規制する回動規制部74が設けられている。
【0079】
具体的には、本実施形態の各リンク部材25は、その第2端部25bに平坦面75を有している。更に、各リンク部材25は、上記のようにスロープ板10の後端部10rに設けられた係合部72がドア開口部3に臨む車両フロア71の縁部71eに係合する回動位置となった場合に、その平坦面75が、これらの各リンク部材25を内側に配置するリンクガイド部37の底面37bに対して上側から当接するように構成されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その平坦面75を回動規制部74として、各リンク部材25の回動(各図中、時計回り方向の回動)が規制される構成になっている。
【0080】
また、図14(a)~(c)に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、各スロープ板10がドア開口部3に展開された状態において、各駆動シュー22に連動して各リンク部材25が各ガイドレール20の後端部20r側に移動することにより、その各リンク部材25が、天板部46の前端46fに当接するように構成されている。更に、本実施形態のスロープ装置11においては、この状態で、更に各駆動シュー22が各ガイドレール20の後端部20r側に移動することにより、その天板部46の前端46fに当接する部分を第2の回動支点Pyとして、各リンク部材25が回動する(各図中、反時計回り方向)。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、上方に持ち上げたスロープ板10の後端部10rを引き下げるとともに、その各ガイドレール20の後端部20r側に向かう各駆動シュー22に連動してスロープ板10を格納方向に移動させる構成になっている。
【0081】
即ち、本実施形態のスロープ装置11においては、その天板部46の前端46fが、各リンク部材25に第2の回動支点Pyを形成する戻り支点形成部77として機能する。また、この天板部46の前端46fに対する各リンク部材25の当接位置は、これらの各リンク部材25が各駆動シュー22に連動して、回動しつつ各ガイドレール20の後端部20r側に移動することにより、次第に、そのスロープ板10の後端部10rに対する第1連結点X1が設けられた第1端部25a側に移動する。そして、本実施形態の各リンク部材25は、この第2の回動支点Pyの移動によって、その第1端部25aが、それぞれ、対応する天板部46の下面46sに摺接する状態となるように構成されている。
【0082】
つまり、図7(a)に示すように、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、再び、その各ガイドレール20に対する各リンク部材25の係合状態に基づいた姿勢保持機構50が機能するようになる。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これらの各リンク部材25及び各駆動シュー22と一体にスロープ板10がガイドレール20の後端部20r側に移動することで、その車外に展開したスロープ板10を引き込むかたちで格納ボックス12内に格納する構成になっている。
【0083】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)スロープ装置11は、スロープ板10の展開及び格納方向に延びるガイドレール20と、このガイドレール20の延伸方向に移動する駆動シュー22と、スロープ板10の後端部10rに対して回動可能に連結される第1連結点X1及び駆動シュー22に対して回動可能に連結される第2連結点X2を有したリンク部材25と、を備える。また、スロープ装置11は、ガイドレール20に対するリンク部材25の係合状態に基づいて、リンク部材25の姿勢を保持する状態で駆動シュー22に連動してスロープ板10がガイドレール20の延伸方向に移動するように構成された姿勢保持機構50を備える。更に、このスロープ装置11においては、ガイドレール20の前端部20fにスロープ板10の後端部10rが移動することにより当該スロープ板10がドア開口部3に展開された状態において、第1連結点X1と第2連結点X2との間にリンク部材25の回動支点Pxが形成される。そして、スロープ装置11は、ガイドレール20の後端部20r側から前端部20f側に向かう駆動シュー22の移動に基づきガイドレール20の延伸方向における回動支点Pxと第2連結点X2との間隔dが変化することによりリンク部材25が回動して、スロープ板10の後端部10rが持ち上がるように構成されたリフト機構70を備える。
【0084】
上記構成によれば、スロープ板10をドア開口部3に展開する動作に連続して、そのガイドレール20の後端部20r側から前端部20f側に向かって移動する駆動シュー22の駆動力に基づきスロープ板10の後端部10rを持ち上げる方向にリンク部材25を回動させることができる。更に、この場合におけるリンク部材25の回動量及び当該リンク部材25の長さに基づいて、その後端部10rの持ち上げ位置を任意に設定することができる。そして、これにより、より車両フロア71に近い位置にスロープ板10を配置することができる。
【0085】
また、簡素な構成を活かして装置の小型化を図ることができる。特に、ドア開口部3にスロープ板10が展開した状態でリンク部材25が回動するとともに、ガイドレール20の延伸方向に沿った駆動シュー22の移動に基づいて、そのリンク部材25を回動させるリフト機構70が形成されていることから、容易に、その上下方向の厚みを薄型化することができる。そして、これにより、車両1に対する搭載性を向上させることができる。
【0086】
例えば、低床車両に搭載することが可能になる。また、これにより、そのスロープ板10の傾斜を緩やかなものとすることができる。その結果、より優れた乗降性を確保することができる。
【0087】
(2)スロープ装置11は、第1連結点X1と第2連結点X2との間の位置においてリンク部材25に連結されることにより当該リンク部材25と一体にガイドレール20の延伸方向に移動する従動シュー40を備える。そして、リフト機構70は、そのリンク部材25に対して従動シュー40が連結された第3連結点X3を回動支点Pxとしてリンク部材25が回動するように構成される。
【0088】
上記構成によれば、駆動シュー22及び従動シュー40によって、安定的に、そのリンク部材25を支えることができる。そして、従動シュー40が形成する第3連結点X3を回動支点Pxとすることで、安定的に、そのリンク部材25を回動させることができる。
【0089】
(3)第3連結点X3は、リンク部材25に設けられた長孔43に従動シュー40の軸状部40aを挿通することにより形成される。そして、リフト機構70は、ドア開口部3にスロープ板10が展開された状態において、その従動シュー40に当接することにより、ガイドレール20の前端部20f側に向かう従動シュー40の移動を規制するストッパ部64を備えてなる。
【0090】
即ち、リンク部材25は、その長孔43内に挿通された従動シュー40の軸状部40aを支点に回動する。更に、見かけ上、その長孔43内を軸状部40aが移動することで、これらの長孔43及び軸状部40aが形成する従動シュー40に対する第3連結点X3と駆動シュー22に対する第2連結点X2との間の離間距離が変化する。このため、従動シュー40がストッパ部64に当接した後においても、駆動シュー22については、引き続き、そのガイドレール20の後端部20r側から前端部20f側に向かう移動が許容される。つまり、従動シュー40の移動が規制された状態で駆動シュー22がガイドレール20の延伸方向に沿って移動することにより、その延伸方向におけるリンク部材25の回動支点Pxと駆動シュー22に対する第2連結点X2の間隔dが変化する。そして、これにより、その駆動シュー22及び従動シュー40を介してガイドレール20に係合するリンク部材25を安定的に回動させることができる。
【0091】
(4)リフト機構70は、リンク部材25の回動により、スロープ板10の後端部10rに対する第1連結点X1が、その回動支点Pxよりもガイドレール20の後端部20r側に移動するように構成される。
【0092】
上記構成によれば、ドア開口部3にスロープ板10を展開した方向、つまりは、そのドア開口部3が車外に開口する方向から、このドア開口部3に臨む車両フロア71の縁部71eに対して、そのスロープ板10の後端部10rを近づけることができる。そして、これにより、より車両フロア71に近い位置にスロープ板10を配置することができる。
【0093】
(5)スロープ装置11は、ガイドレール20の前端部20f側に向かう駆動シュー22の移動に基づいて、該駆動シュー22に対するリンク部材25の第2連結点X2が、その回動支点Pxを超えてガイドレール20の前端部20f側に移動するように構成される。
【0094】
上記構成によれば、安定的に、スロープ板10の後端部10rに対するリンク部材25の第1連結点X1を、その回動支点Pxよりもガイドレール20の後端部20r側に移動させることができる。
【0095】
(6)スロープ板10の後端部10rには、リンク部材25の回動により上方に持ち上げられた状態において、ドア開口部3に臨む車両フロア71の縁部71eに係合する係合部72が設けられる。
【0096】
上記構成によれば、スロープ板10の荷重を車両フロア71によって支えることができる。そして、これにより、そのリフト機構70の負荷を軽減して高い信頼性及び耐久性を確保することができる。
【0097】
特に、上記(4)(5)の構成との組み合わせによって、そのリンク部材25の回動により持ち上げられたスロープ板10の後端部10rが、緩やかに降下しながら車両フロア71の縁部71eに近づくことになる。そして、これにより、その車両フロア71に対する良好な係合状態を確保することができる。
【0098】
(7)第2連結点X2が設けられたリンク部材25の第2端部25bには、当該リンク部材25の回動によりスロープ板10の後端部10rが上方に持ち上げられた状態において、ガイドレール20に設けられた底板部66に対して上側から当接することにより、そのリンク部材25の回動を規制する回動規制部74が設けられる。
【0099】
上記構成によれば、簡素な構成にて、そのリンク部材25の回動量を規定することができる。そして、これにより、より車両フロア71に近い位置にスロープ板10を配置することができる。加えて、リンク部材25に加わる荷重を、その回動規制部74が当接したガイドレール20の底板部66により支えることができる。そして、これにより、高い信頼性及び耐久性を確保することができる。
【0100】
(8)リフト機構70は、スロープ板10がドア開口部3に展開された状態において、駆動シュー22に連動してリンク部材25がガイドレール20の後端部20r側に向かって移動することにより、そのリンク部材25に当接して当該リンク部材25に第2の回動支点Pyを形成する戻り支点形成部77を備える。
【0101】
上記構成によれば、ガイドレール20の後端部20r側に向かう駆動シュー22の移動に基づいて、安定的に、そのスロープ板10の後端部10rを引き下げる方向にリンク部材25を回動させることができる。そして、この引き下げ動作に連続して、そのリンク部材25と一体にスロープ板10を格納方向に移動させることができる。
【0102】
(9)スロープ装置11は、駆動シュー22に連結される駆動ケーブル51と、ガイドレール20の延伸方向に沿って延びる摺動路58と、この摺動路58に沿って駆動ケーブル51を摺動させるアクチュエータ52と、を備える。
【0103】
上記構成によれば、簡素な構成にて、安定的に、その駆動シュー22をガイドレール20の延伸方向に移動させることができる。そして、その簡素な構成を活かして小型化を図ることにより、車両1に対する搭載性を向上させることができる。
【0104】
(10)姿勢保持機構50は、スロープ板10の後端部10rに対する第1連結点X1を駆動シュー22に対する第2連結点X2よりも上方且つスロープ板10の展開方向に配置する姿勢にリンク部材25を保持する。
【0105】
上記構成によれば、スロープ板10をドア開口部3に展開する動作に連続して、速やかに、そのガイドレール20の前端部20f側に向かう駆動シュー22の移動に基づき第1連結点X1と第2連結点X2との間に回動支点Pxを形成して、そのスロープ板10の後端部10rを持ち上げる方向にリンク部材25を回動させることができる。
【0106】
(11)ガイドレール20は、駆動シュー22に係合することにより当該駆動シュー22をガイドレール20の延伸方向に案内する駆動ガイド部38と、従動シュー40に係合することにより当該従動シュー40をガイドレール20の延伸方向に案内する従動ガイド部45と、を備える。
【0107】
上記構成によれば、安定的に、その駆動シュー22及び従動シュー40をガイドレール20の延伸方向に移動させることができる。そして、これらの駆動シュー22及び従動シュー40を介してガイドレール20にリンク部材25を係合させることにより、そのリンク部材25の姿勢を安定させることができる。
【0108】
(12)ガイドレール20は、駆動ガイド部38及び従動ガイド部45の上方において、そのガイドレール20の延伸方向に延びる天板部46を備える。そして、姿勢保持機構50は、その第1連結点X1が設けられたリンク部材25の第1端部25aが天板部46の下面46sに摺接する状態で、そのリンク部材25の姿勢を保持する。
【0109】
即ち、天板部46の下面46sにリンク部材25の第1端部25aが摺接することにより、この第1端部25aに連結されたスロープ板10の後端部10rが持ち上がる方向におけるリンク部材25の回動を規制することができる。そして、これにより、簡素な構成にて、そのリンク部材25の姿勢を保持することができる。
【0110】
(13)ガイドレール20は、当該ガイドレール20の前端部20fに駆動シュー22が移動することにより、この駆動シュー22が駆動ガイド部38に係合する状態でリンク部材25の第1端部25aが天板部46から脱離するように構成される。
【0111】
上記構成によれば、ガイドレール20の前端部20fが格納ボックス12から突出する長さを抑えつつ、スロープ板10がドア開口部3に展開された状態において、そのリンク部材を大きく回動させることができる。そして、これにより、より車両フロア71に近い位置にスロープ板10を配置することができる。
【0112】
(14)ガイドレール20は、スロープ板10がドア開口部3に展開された状態において、駆動シュー22に連動してリンク部材25がガイドレール20の後端部20r側に向かって移動することにより、その天板部46の前端46fにリンク部材25が当接するように構成される。
【0113】
上記構成によれば、天板部46の前端46fが、そのリンク部材25に第2の回動支点Pyを形成する戻り支点形成部77として機能する。更に、駆動シュー22に連動してリンク部材25が回動しつつガイドレール20の後端部20r側に移動することにより、その天板部46の前端46fに対する当接位置が第1端部25a側に移動する。そして、これにより、そのリンク部材25の第1端部25aが天板部46の下面46sに摺接する状態となることで、再び、そのガイドレール20に対するリンク部材25の係合状態に基づいた姿勢保持機構50が機能する。従って、上記構成によれば、より円滑に、その後端部10rの引き下げ動作に連続してスロープ板10を格納方向に移動させることができる。
【0114】
(15)スロープ装置11は、駆動シュー22に連動してスロープ板10がガイドレール20の延伸方向に移動する状態において、そのスロープ板10の下面10sに当接する回転部材としてのローラー48aを有したスロープ支持部48を備える。これにより、安定した姿勢で、そのスロープ板10を展開及び格納方向に移動させることができる。
【0115】
[第2の実施形態]
以下、車両用のスロープ装置を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0116】
図15図18に示すように、本実施形態のスロープ装置11Bは、上記第1の実施形態におけるスロープ装置11と比較して、その姿勢保持機構50B(50)及びリフト機構70B(70)の構成が相違する。
【0117】
詳述すると、本実施形態のスロープ装置11Bにおいて、各従動シュー40Bは、そのリンク部材25Bを厚み方向(各図中、紙面に直交する方向)に貫通する軸形状をなしている。また、本実施形態の各リンク部材25Bは、その第1連結点X1と第2連結点X2との間に設定された各従動シュー40Bに対する第3連結点X3の配置が変化しない構成になっている。更に、本実施形態のスロープ装置11Bにおいては、この各従動シュー40Bの軸端部が、各ガイドレール20Bの従動ガイド部45Bに対して係合する。そして、本実施形態の各従動シュー40Bは、それぞれ、これらの各従動ガイド部45Bに案内されるかたちで、その各ガイドレール20Bの延伸方向に沿って移動する構成になっている。
【0118】
さらに詳述すると、本実施形態の各従動ガイド部45Bは、各駆動シュー22と一体にスロープ板10を各ガイドレール20Bの延伸方向に沿って移動させる展開及び格納動作領域においては(図15参照、後述する湾曲部80よりも後端部20r側の領域)、これらの各駆動シュー22を案内する各駆動ガイド部38と略平行に延びている。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、これにより各駆動シュー22及び各従動シュー40Bの相対位置を規定して各リンク部材25Bの回動を規制することで、その姿勢保持機構50Bが形成される構成になっている。
【0119】
また、本実施形態の各従動ガイド部45Bは、そのスロープ板10がドア開口部3に展開される各ガイドレール20Bの前端部20fにおいて、当該各ガイドレール20Bの後端部20r側から前端部20f側に向かって上方に延びる湾曲部80を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11Bにおいては、これにより、そのリフト機構70Bが形成されている。
【0120】
即ち、図16図18に示すように、各従動ガイド部45Bの湾曲部80に対して各従動シュー40Bが係合する各ガイドレール20Bの前端部20fにおいては、その湾曲部80に案内されることにより、各従動シュー40Bが上下方向の変位を伴いつつ、各駆動シュー22に連動して各ガイドレール20Bの延伸方向に移動する。
【0121】
しかしながら、このとき、各リンク部材25Bに設けられた各従動シュー40Bに対する第3連結点X3の位置は変化しないことから、この第3連結点X3と駆動シュー22に対する第2連結点X2とを結ぶ直線距離は一定である。このため、本実施形態のスロープ装置11Bにおいても、スロープ板10が展開した状態で各駆動シュー22が移動することにより、各ガイドレール20Bの延伸方向における第3連結点X3と第2連結点X2との間隔dが変化することで、その第3連結点X3を回動支点Pxとして各リンク部材25Bが回動することになる(各図中、時計回り方向)。そして、本実施形態のリフト機構70Bは、これにより、そのガイドレール20Bの後端部20r側から前端部20f側に向かう駆動シュー22の移動に基づいて、各リンク部材25Bの第1端部25aに連結されたスロープ板10の後端部10rが上方に持ち上がる構成になっている。
【0122】
以上、本実施形態の構成によっても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、姿勢保持機構50Bは、その各駆動シュー22及び各従動シュー40Bを介した各ガイドレール20Bに対する各リンク部材25Bの係合状態に基づいて、これらの各リンク部材25Bの姿勢を保持する。そして、これにより、簡素な構成にて、安定的に、その各リンク部材25Bの姿勢を保持する状態で、当該各リンク部材25Bと一体にスロープ板10を展開及び格納方向に移動させることができる。
【0123】
[第3の実施形態]
以下、車両用のスロープ装置を具体化した第3の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記各実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0124】
図19図22に示すように、本実施形態のスロープ装置11Cは、上記各実施形態におけるスロープ装置11,11Bと比較して、そのリフト機構70C(70,70B)の構成が相違する。
【0125】
詳述すると、本実施形態のスロープ装置11Cにおいては、各ガイドレール20Cの延伸方向全域に亘って、その各駆動ガイド部38と略平行に各従動ガイド部45Cが延びている。また、本実施形態の各従動ガイド部45Cは、スロープ板10がドア開口部3に展開される各ガイドレール20Cの前端部20fにおいて、その上方(各図中、上側)に開口する上方開口部81を有している。そして、本実施形態のスロープ装置11Cは、これにより、その上方開口部81を介して各従動ガイド部45Cから各従動シュー40Cが上方に脱離するかたちで、そのスロープ板10がドア開口部3に展開された状態における各リンク部材25Cの回動を許容する構成になっている。
【0126】
尚、本実施形態の各従動シュー40Cは、上記第2の実施形態における各従動シュー40Bと同様の構成を有している。そして、各従動ガイド部45Cもまた、その上方開口部81が形成された部分を除いて、上記第2の実施形態における各従動ガイド部45Bと同様の溝形状(湾曲部80を除く)を有している。
【0127】
また、本実施形態のスロープ装置11Cは、ドア開口部3にスロープ板10が展開された状態において、各駆動シュー22と一体に各リンク部材25Cが各ガイドレール20Cの後端部20r側から前端部20f側に向かって移動することにより、これらの各リンク部材25Cに対して当接する一対の当接部材82,82を備えている。具体的には、本実施形態の各当接部材82は、スロープ板10に対する第1連結点X1と各駆動シュー22に対する第2連結点X2との間の位置において、その各リンク部材25Cに当接するように構成されている。更に、本実施形態のスロープ装置11Cは、この状態で各リンク部材25Cが各ガイドレール20Cの前端部20f側に移動することにより、その各当接部材82に対する当接部25xに、各リンク部材25Cの回動支点Pxが形成されるように構成されている。そして、本実施形態のスロープ装置11Cにおいては、これにより、各ガイドレール20Cの前端部20f側に向かって移動する各駆動シュー22の駆動力に基づいて、そのスロープ板10の後端部10rを上方に持ち上げるリフト機構70Cが形成されている。
【0128】
即ち、本実施形態のスロープ装置11Cにおいては、各リンク部材25Cが各当接部材82に当接する状態で各ガイドレール20Cの前端部20f側に移動することにより、その延伸方向における各当接部材82に対する各リンク部材25の当接部25xと各駆動シュー22に対する第2連結点X2との間隔dが変化する。具体的には、各ガイドレール20Bの前端部20f側に向かう駆動シュー22の移動に伴って、各当接部材82に対する各リンク部材25Cの当接部25xが、第2連結点X2が設けられた第2端部25b側に移動することにより、その第2連結点X2と各当接部材82に対する当接部25xとの間隔dが縮まることになる。そして、本実施形態のスロープ装置11Cは、これにより、その各当接部材82に対する当接部25xを回動支点Pxとして、各リンク部材25Cが、その第1端部25aに連結されたスロープ板10の後端部10rを持ち上げる方向に回動する構成になっている(各図中、時計回り方向)。
【0129】
尚、図22に示すように、本実施形態のスロープ装置11Cにおいては、第2連結点X2がリンク部材25Cの回動支点Pxを超えてガイドレール20の前端部20f側に移動する前に、第1連結点X1が、その回動支点Pxよりもガイドレール20の後端部20r側に移動するようになっている。そして、本実施形態のスロープ装置11Cは、この状態で、スロープ板10の後端部10rに設けられた係合部72がドア開口部3に臨む車両フロア71の縁部71eに係合する構成になっている。
【0130】
以上、本実施形態の構成によっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、その簡素な構成を活かして、より一層の小型化を図ることができる。
[第4の実施形態]
以下、車両用のスロープ装置を具体化した第4の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記各実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0131】
図23及び図24に示すように、本実施形態のスロープ装置11Dは、スロープ板10Dの幅方向両側の側端部100において、そのスロープ板10Dの側方に保持された一対の脱落防止部材101,101を備えている。
【0132】
本実施形態のスロープ装置11Dにおいて、これらの各脱落防止部材101は、長尺略平板状の外形を有している。また、これらの各脱落防止部材101は、それぞれ、その板厚方向をスロープ板10Dの幅方向(図24中、紙面に直交する方向)に向けた状態で、当該スロープ板10Dの長手方向、その後端部10rから前端部10f側(図24中、右側から左側)に向かって延びている。更に、これらの各脱落防止部材101は、リフト機構70Dの作動によりスロープ板10Dの後端部10rが上方に持ち上げられた状態においては、その上面10aから上方に突出した状態で、このスロープ板10Dの側方に配置されるようになっている。そして、本実施形態のスロープ装置11Dは、これにより、そのドア開口部3の下端に展開されたスロープ板10D上を移動する物体が、このスロープ板10Dから脱落し難い構成になっている。
【0133】
詳述すると、本実施形態の各脱落防止部材101は、それぞれ、そのリフト機構70Dを構成する各リンク部材25Dの第1端部25aに対して回動可能に連結されている。具体的には、各リンク部材25Dの第1端部25aを当該各リンク部材25Dの先端とした場合、これらの各脱落防止部材101は、それぞれ、各リンク部材25Dの第1端部25aに設けられたスロープ板10Dの後端部10rに対する第1連結点X1よりも先端側の位置に、このリンク部材25Dとの回動連結点Xaを有している。また、本実施形態のスロープ装置11Dは、そのリンク部材25Dと脱落防止部材101との間の回動連結点Xaよりもスロープ板10Dの前端部10f側の位置において、このスロープ板10D及び脱落防止部材101に対して回動可能に連結された第2リンク部材105を有している。尚、本実施形態のスロープ装置11Dにおいては、このような第2リンク部材105が、脱落防止部材101の長手方向、図示しないスロープ板10Dの前端部10f側を含め、複数箇所に設けられている。更に、本実施形態のスロープ装置11Dにおいては、これらの第2リンク部材105が、そのスロープ板10Dに対する第1連結点X1及び脱落防止部材101との回動連結点Xaを有した各リンク部材25Dの第1端部25aとともに平行リンク110を形成する。そして、本実施形態のスロープ装置11Dは、これにより、スロープ板10Dの後端部10rを持ち上げる各リンク部材25Dの回動によって、そのスロープ板10Dの側方に保持された各脱落防止部材101が、スロープ板10Dの上面10a側に持ち上がる構成になっている。
【0134】
尚、本実施形態の第2リンク部材105は、略平板状の外形を有している。また、そのスロープ板10Dに対する板側連結点Xb及び脱落防止部材101に対する壁側連結点Xcは、第2リンク部材105の長手方向両端部に、それぞれ、回動軸となる軸状部材111,112を配置することにより形成されている。そして、脱落防止部材101とリンク部材25Dの第1端部25aとの回動連結点Xaについてもまた、脱落防止部材101の後端部101rに、その回動軸となる軸状部材113を配置することにより形成されている。
【0135】
即ち、図25及び図26に示すように、スロープ板10Dの後端部10rが持ち上がる方向に各リンク部材25Dが回動することにより、これら各リンク部材25Dの第1端部25aは、見かけ上、そのスロープ板10Dに対する第1連結点X1を中心として、その脱落防止部材101との回動連結点Xaが設けられた先端部分が回動することになる。そして、本実施形態のスロープ装置11Dは、これにより、これら各リンク部材25Dの第1端部25aに連結された各脱落防止部材101の後端部101rが、そのスロープ板10Dの上方に持ち上がる。
【0136】
更に、本実施形態のスロープ装置11Dにおいては、この各リンク部材25Dの回動に連動して、これら各リンク部材25Dの第1端部25aとともに平行リンク110を形成する第2リンク部材105が、そのスロープ板10Dに対する板側連結点Xbを中心として、各リンク部材25Dと同じく、各図中、時計回り方向に回動する。そして、本実施形態のスロープ装置11Dは、これにより、各脱落防止部材101が、そのスロープ板10Dに対して平行な姿勢を維持したまま、スロープ板10Dの上方に持ち上がる構成になっている。
【0137】
また、スロープ板10Dを格納する際には、このスロープ板10Dの後端部10rを引き下げる方向に各リンク部材25Dが回動することにより(各図中、反時計回り方向に回動)、これら各リンク部材25Dの第1端部25aに連結された各脱落防止部材101の後端部101rもまた、下方に引き下げられる。更に、この各リンク部材25Dの回動に連動して、第2リンク部材105が、同じく、各図中、反時計回り方向に回動することにより、各脱落防止部材101は、スロープ板10Dに対して平行な姿勢を維持したまま、そのスロープ板10Dの側方に引き下げられる。そして、本実施形態のスロープ装置11Dは、これにより、これらの各脱落防止部材101がスロープ板10Dの側端部100と一体化された状態で、その略水平な姿勢に保持されたスロープ板10Dを、車体2に設けられた格納ボックス12内に引き込む構成になっている。
【0138】
具体的には、図27(a)に示すように、本実施形態のスロープ装置11Dにおいて、その各脱落防止部材101の上下幅W1は、スロープ板10Dの厚みW0と略等しく設定されている。更に、本実施形態のスロープ装置11Dは、これらのスロープ板10D及び各脱落防止部材101が略水平な姿勢で展開及び格納方向に移動する状態においては、スロープ板10Dの側方に保持された各脱落防止部材101が、そのスロープ板10Dの上面10aから上方に突出しないように設定されている。そして、本実施形態のスロープ装置11Dにおいては、これにより、その車体2に設けられた格納ボックス12内に配置される各ガイドレール20の高さH1を、スロープ板10Dの格納時における装置全体の高さH0とすることで、その車両1に対する搭載性の向上が図られている。
【0139】
また、図27(b)に示すように、本実施形態のスロープ装置11Dは、そのリフト機構70Dを構成する各リンク部材25Dの回動によりスロープ板10Dの後端部10rが上方に持ち上げられた状態にある場合には、各脱落防止部材101の大部分が、そのスロープ板10Dの上面10aから上方に突出した状態で配置される。そして、これにより、これらの各脱落防止部材101が、効果的に、その脱落防止用の側壁部120として機能する構成になっている。
【0140】
さらに詳述すると、図28に示すように、本実施形態のスロープ装置11Dにおいて、各リンク部材25の第1端部25aと各脱落防止部材101との回動連結点Xaは、同じく各リンク部材25の第1端部25aに設けられたスロープ板10Dに対する第1連結点X1よりも上方に配置されている。即ち、本実施形態のスロープ装置11Dは、これにより、スロープ板10Dの後端部10rを持ち上げる方向に各リンク部材25が回動する際、その各脱落防止部材101との回動連結点Xaに引っ掛かりが生じ難い構成になっている。その結果、これら各リンク部材25の回動によって、円滑に、そのスロープ板10Dの側方に保持された各脱落防止部材101を上方に持ち上げることが可能になっている。
【0141】
尚、図28は、その回動連結点Xaが最も下方に配置される各リンク部材25の回動位置、つまりは、スロープ板10Dを上方に持ち上げる前の回動連結点Xa及び第1連結点X1の位置関係を示している。また、各リンク部材25の第1端部25aとともに平行リンク110を形成する第2リンク部材105において、そのスロープ板10Dに対する板側連結点Xbと各脱落防止部材101に対する壁側連結点Xcとを結ぶ線分N2の長さは、各リンク部材25に設けられた回動連結点Xaと第1連結点X1とを結ぶ線分N1の長さと略等しい値になっている。更に、スロープ板10D及び各脱落防止部材101の長手方向に対し、これらの各線分N1,N2がなす傾斜角θ1,θ2もまた、互いに略等しい角度となっている。このため、本実施形態のスロープ装置11Dにおいては、第2リンク部材105においてもまた、そのスロープ板10Dに対する板側連結点Xbよりも脱落防止部材101に対する壁側連結点Xcの方が上方に配置されている。そして、本実施形態のスロープ装置11Dは、これにより、これらの板側連結点Xb及び壁側連結点Xcに引っ掛かりを生させることなく、その第2リンク部材105の回動によって、円滑に、スロープ板10Dに対する平行な姿勢を維持したまま、各脱落防止部材101を上方に持ち上げることが可能になっている。
【0142】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)スロープ装置11Dは、スロープ板10Dの側端部100に保持された脱落防止部材101を備える。また、この脱落防止部材101は、リンク部材25Dの第1端部25aに設けられたスロープ板10Dに対する第1連結点X1よりも先端側の位置に、このリンク部材25Dとの回動連結点Xaを有する。そして、この脱落防止部材101は、これにより、そのスロープ板10Dの後端部10rが持ち上がる方向にリンク部材25Dが回動することで、スロープ板10Dの上面10a側に持ち上がるように構成される。
【0143】
上記構成によれば、スロープ板10Dの上面10aよりも上方に持ち上げられた脱落防止部材101が側壁部120を形成することで、そのスロープ板10D上を移動する物体が、このスロープ板10Dから脱落し難くなる。更に、スロープ板10Dの格納時には、その側端部100に保持する脱落防止部材101がスロープ板10Dの上面10aよりも上方に突出しないように設定することができる。そして、これにより、車両1に対する搭載性の向上を図ることができる。
【0144】
(2)スロープ装置11Dは、そのリンク部材25Dと脱落防止部材101との回動連結点Xaよりもスロープ板10Dの前端部10f側の位置において、このスロープ板10D及び脱落防止部材101に対して回動可能に連結された第2リンク部材105を備える。そして、この第2リンク部材105が、そのスロープ板10Dに対する第1連結点X1及び脱落防止部材101との回動連結点Xaを有した各リンク部材25Dの第1端部25aとともに平行リンク110を形成する。
【0145】
上記構成によれば、脱落防止部材101の姿勢を維持したまま、その脱落防止部材101を持ち上げることができる。そして、これにより、その脱落防止用の側壁部120としての機能を向上させるとともに、併せて、その高い意匠性を確保することができる。
【0146】
(3)リンク部材25の第1端部25aと脱落防止部材101との回動連結点Xaは、同じく各リンク部材25の第1端部25aに設けられたスロープ板10Dに対する第1連結点X1よりも上方に位置する。
【0147】
上記構成によれば、スロープ板10Dの後端部10rを持ち上げる方向にリンク部材25が回動する際、その脱落防止部材101との回動連結点Xaに引っ掛かりが生じ難い。そして、これにより、そのリンク部材25の回動に基づいて、より円滑に、スロープ板10Dの側端部100に保持された脱落防止部材101を持ち上げることができる。
【0148】
[第5の実施形態]
以下、車両用のスロープ装置を具体化した第5の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0149】
図33(a)(b)に示すように、本実施形態のスロープ装置11Hは、上記第1の実施形態におけるスロープ装置11と比較して、そのリフト機構70Hの構成が相違する。
詳述すると、本実施形態のスロープ装置11Hにおいて、駆動シュー22Hは、そのガイドレール20Hの延伸方向に延びる長尺略平板状のシュー本体200を備えている。そして、本実施形態の駆動シュー22Hは、このシュー本体200をガイドレール20Hに設けられた駆動ガイド部38Hに対する係合部22bとして、そのガイドレール20Hの延伸方向、即ちスロープ板10の展開及び格納方向に移動する構成となっている。
【0150】
また、本実施形態の駆動シュー22Hは、そのシュー本体200の先端部200fに、リンク部材25Hに対して回動可能に連結される軸状部22aを備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11Hもまた、この軸状部22aを支軸として、その駆動シュー22Hに対するリンク部材25Hの第2連結点X2が形成される構成になっている。
【0151】
更に、本実施形態のスロープ装置11Hにおいては、従動シュー40Hもまた、ガイドレール20Hの延伸方向に延びる長尺略棒状のシュー本体201を有している。また、本実施形態の従動シュー40Hは、このシュー本体201の先端部201fに、そのリンク部材25Hに設けられた長孔43に挿通されることにより当該リンク部材25Hとの第3連結点X3を形成する軸状部40aを備えている。そして、本実施形態の従動シュー40Hもまた、そのシュー本体201をガイドレール20Hに設けられた従動ガイド部45Hに対する従動シュー40Hの係合部40bとして、ガイドレール20Hの延伸方向に移動する構成になっている。
【0152】
また、本実施形態の従動シュー40Hは、その四角略棒状の外形を有したシュー本体201の外周に嵌着された嵌合部材202を有している。具体的には、本実施形態の従動シュー40Hにおいて、この嵌合部材202は、略四角筒状の外形を有している。更に、この嵌合部材202は、シュー本体201の長手方向、略中間位置に設けられている。そして、本実施形態のスロープ装置11Hは、ガイドレール20Hの前端部20fに設けられたストッパ部64Hに対し、この嵌合部材202が当接することにより、そのガイドレール20Hの前端部20f側に向かう従動シュー40Hの移動が規制される構成になっている。
【0153】
尚、本実施形態のスロープ装置11Hにおいて、ストッパ部64Hは、そのガイドレール20Hの前端部20f側に向って移動する従動シュー40Hのシュー本体201を挿通可能な略四角筒形状を有している。そして、スロープ装置11Hは、これにより、このストッパ部64Hの軸方向端面に、その従動シュー40Hのシュー本体201に設けられた嵌合部材202が当接する構成になっている。
【0154】
即ち、本実施形態のスロープ装置11Hは、リンク部材25Hの第3連結点X3を形成する従動シュー40Hの軸状部40aが、ガイドレール20Hの前端部20fよりも前方(図33中、左側)に移動した状態で、そのスロープ板10がドア開口部3の下端に展開される。更に、本実施形態のスロープ装置11Hにおいては、このとき、リンク部材25Hの第2連結点X2を形成する駆動シュー22Hの軸状部22aもまた、ガイドレール20Hの前端部20fよりも前方に移動した状態となっている。そして、本実施形態のスロープ装置11Hにおいてもまた、これにより、ガイドレール20Hの前端部20fに干渉することなく、そのリンク部材25Hの回動によって、スロープ板10の後端部10rを上方に持ち上げることが可能なリフト機構70Hが形成されている。
【0155】
また、本実施形態のスロープ装置11Hは、このように従動シュー40Hの嵌合部材202がストッパ部64Hに当接する状態において、その従動シュー40Hのシュー本体201に係合することにより、ガイドレール20Hの後端部20r側に向かう従動シュー40Hの移動を規制する係合部材210を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11Hにおいては、これにより、スロープ板10が展開された状態において、そのリンク部材25Hの長孔43に挿入された軸状部40aの位置、つまりは、このリンク部材25Hの回動支点Pxについて、そのガイドレール20Hの延伸方向における形成位置Zを保持する位置保持機構220が形成されている。
【0156】
詳述すると、図34図37に示すように、本実施形態のスロープ装置11Hは、ガイドレール20Hの延伸方向に延在する状態で、このガイドレール20Hに対して回動可能に軸支されたレバー部材221を備えている。また、本実施形態のスロープ装置11Hにおいて、その駆動シュー22Hのシュー本体200には、このシュー本体200がガイドレール20Hの前端部20f近傍に移動することより、レバー部材221に摺接するカム面222が設けられている。更に、本実施形態のレバー部材221は、このカム面222に押圧されて回動することにより、その従動シュー40Hのシュー本体201に係合する。そして、本実施形態のスロープ装置11Hは、これにより、このレバー部材221が、その位置保持機構220を構成する係合部材210として機能する構成になっている。
【0157】
さらに詳述すると、本実施形態のガイドレール20Hにおいては、その駆動シュー22Hのシュー本体200が係合する駆動ガイド部38H、及び従動シュー40Hのシュー本体201が係合する従動ガイド部45Hが、上下方向に並んで配置されている。更に、このガイドレール20Hは、これらの駆動ガイド部38H及び従動ガイド部45Hの双方に開口する収容凹部223を有している。そして、本実施形態のレバー部材221は、そのガイドレール20Hの延伸方向に延在する状態で、この収容凹部223内に収容されている。
【0158】
具体的には、本実施形態のレバー部材221は、その基端部221bに回動軸224を有している。また、このレバー部材221は、この回動軸224が軸支されることにより、その先端部221aがガイドレール20Hの前端部20f側に向かって延出する状態で収容凹部223内に収容されている。更に、このレバー部材221は、その先端部221aから下方に突出する摺接突部225を有している。そして、本実施形態のスロープ装置11Hは、これにより、収容凹部223内に配置されたレバー部材221が、その下方を移動する駆動シュー22Hのシュー本体200に対して摺接する構成となっている。
【0159】
さらに詳述すると、本実施形態の駆動シュー22Hは、そのシュー本体200の後端部200rに設けられた上方突部226を有している。そして、本実施形態のスロープ装置11Hは、この上方突部226の上面226sをカム面222として、その駆動シュー22Hに対してレバー部材221が摺接する構成になっている。
【0160】
即ち、本実施形態のスロープ装置11Hは、スロープ板10がドア開口部3の下方に展開された状態において、そのガイドレール20Hの延伸方向に移動する駆動シュー22Hのカム面222に対してレバー部材221の摺接突部225が摺接するように構成されている。また、このとき、そのカム面222に摺接した摺接突部225が上方に押し上げられるかたちでレバー部材221が回動する。更に、この回動により、そのレバー部材221の先端部221aが上方に位置する従動ガイド部45H内に突出する。そして、本実施形態のスロープ装置11Hは、これにより、そのレバー部材221の先端部221aが従動シュー40Hに係合する構成になっている。
【0161】
具体的には、本実施形態の従動シュー40Hは、そのシュー本体201の後端部201rに設けられた嵌合部材227を有している。本実施形態の従動シュー40Hにおいて、この嵌合部材227は、そのシュー本体201の長手方向中間位置に設けられた嵌合部材227と同様の略四角筒形状を有している。更に、本実施形態のスロープ装置11Hにおいては、その駆動シュー22Hのカム面222に押し上げられるかたちで回動したレバー部材221の先端部221aが、この嵌合部材227が設けられた従動シュー40Hのシュー本体201に対して、そのガイドレール20Hの後端部20r側から係合する。そして、本実施形態のスロープ装置11Hは、これにより、そのガイドレール20Hの後端部20r側に向かう従動シュー40Hの移動が規制される構成になっている。
【0162】
即ち、図38(a)(b)及び図39(a)(b)に示すように、本実施形態のスロープ装置11Hにおいても、そのストッパ部64Hに対する当接によりガイドレール20Hの前端部20f側に向かう従動シュー40Hの移動が規制された状態で、そのガイドレール20Hの延伸方向に沿った駆動シュー22Hの移動が許容される。また、このとき、その駆動シュー22Hの移動に伴いガイドレール20Hの延伸方向における第3連結点X3を構成する従動シュー40Hの軸状部40aと第2連結点X2を構成する駆動シュー22Hの軸状部22aとの間隔dが変化することにより、リンク部材25Hが回動する。そして、本実施形態のスロープ装置11Hにおいてもまた、これにより、そのガイドレール20Hの前端部20f側に向かって移動する駆動シュー22Hの駆動力に基づいて、スロープ板10の後端部10rを上方に持ち上げることが可能なリフト機構70Hが形成されている。
【0163】
更に、本実施形態のスロープ装置11Hでは、このようなストッパ部64Hに対して従動シュー40Hが当接する状態において、ガイドレール20Hに設けられた係合部材210としてのレバー部材221が従動シュー40Hに係合することにより、そのガイドレール20Hの後端部20r側に向かう従動シュー40Hの移動が規制される。このため、ガイドレール20Hの後端部20r側に駆動シュー22Hの移動した場合にも、従動シュー40Hについては、そのガイドレール20Hの延伸方向に沿った移動位置が保持される。そして、これにより、従動シュー40Hの軸状部40aが形成するリンク部材25Hの回動支点Pxについてもまた、そのガイドレール20Hの延伸方向における形成位置Zが保持される。
【0164】
つまり、本実施形態のスロープ装置11Hは、スロープ板10がドア開口部3の下方に展開された状態において、ガイドレール20Hの後端部20r側に向かって駆動シュー22Hが移動した場合にも、その長孔43内に挿入された従動シュー40Hの軸状部40aを回動支点Pxとしてリンク部材25Hが回動する。そして、本実施形態のリフト機構70Hは、これにより、その上方に持ち上げられたスロープ板10の後端部10rを引き下げることが可能になっている。
【0165】
即ち、本実施形態のリフト機構70Hは、その位置保持機構220が回動支点Pxの形成位置Zを保持することで、ガイドレール20Hの延伸方向に沿った駆動シュー22Hの移動を、より直接的に、そのリンク部材25Hの回動に変換することが可能になっている。そして、本実施形態のスロープ装置11Hは、これにより、より円滑に、ガイドレール20Hの前端部20f側に向かう駆動シュー22Hの移動に基づいて、スロープ板10の後端部10rを持ち上げるとともに、その後端部20r側に向かう駆動シュー22Hの移動に基づいて、そのスロープ板10の後端部10rを引き下げることが可能になっている。
【0166】
また、特に、引き下げ動作への切り替え時には、上方に持ち上げられたスロープ板10の重みによって、リンク部材25Hの回動支点Pxを形成する従動シュー40Hを、そのガイドレール20Hの延伸方向に移動させる力が発生する。そして、これにより、その駆動シュー22Hとの同期が崩れた状態、つまりは駆動シュー22Hの位置変化を伴うことなくリンク部材25Hが回動した場合には、このリンク部材25Hに連結されたスロープ板10の後端部10rが急峻に降下する可能性がある。
【0167】
しかしながら、本実施形態のスロープ装置11Hにおいては、その当接によりガイドレール20Hの前端部20f側に向かう従動シュー40Hの移動を規制するストッパ部64Hと、その係合によりガイドレール20Hの前端部20f側に向かう従動シュー40Hの移動を規制する係合部材210とによって、位置保持機構220が形成されている。このため、駆動シュー22Hの移動方向に依らず、その従動シュー40Hの軸状部40aによる回動支点Pxの形成位置Zが保持される。そして、本実施形態のスロープ装置11Hは、これにより、そのガイドレール20Hの延伸方向に移動する駆動シュー22Hと、この駆動シュー22Hに連動して回動するリンク部材25Hとの同期を維持することで、円滑に、その引き下げ動作への切り替えを行うことが可能となっている。
【0168】
また、本実施形態のスロープ装置11Hにおいては、スロープ板10の引き下げ動作に連続して、その駆動シュー22Hがガイドレール20Hの後端部20r側に向かって移動することにより、この駆動シュー22Hのシュー本体200に設けられたカム面222が、そのレバー部材221の先端部221aに設けられた摺接突部225から脱離する。更に、これにより、レバー部材221が回動することで、このレバー部材221の先端部221aが、従動シュー40Hのシュー本体201、詳しくは、その係合部となる嵌合部材227が設けられたシュー本体201の後端部201rから脱離する。そして、本実施形態のスロープ装置11Hは、これにより、駆動シュー22Hと一体に、リンク部材25H及び従動シュー40Hが移動することで、そのリンク部材25Hに連結されたスロープ板10が、略水平な姿勢を保持したまま、その格納方向であるガイドレール20Hの後端部20r側に向かって移動する構成になっている。
【0169】
尚、図36及び図37に示すように、本実施形態のスロープ装置11Hにおいて、レバー部材221は、その下方に突出する摺接突部225を有した先端部221aの断面形状が略T字状をなしている。そして、本実施形態のレバー部材221は、その断面形状に基づいて、このレバー部材221の下方から駆動シュー22Hのシュー本体200がガイドレール20Hの後端部20r側に移動した後においても、収容凹部223の底部223bに係合することで、その先端部221aが駆動ガイド部38H内に脱落しない構成になっている。
【0170】
また、本実施形態の駆動シュー22Hは、シュー本体200と同様の長尺略平板状の外形を有してガイドレール20Hの延伸方向に沿って移動するサブシュー230を備えている。更に、本実施形態の駆動シュー22Hは、これらのシュー本体200及びサブシュー230によって、その駆動シュー22Hに対するリンク部材25Hの第2連結点X2を構成する軸状部22aの両端を支持する。そして、本実施形態のスロープ装置11Hは、これにより、より安定的に、その軸状部22aに連結されたリンク部材25Hを介してスロープ板10を支持することが可能となっている。
【0171】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)リフト機構70Hは、スロープ板10が展開された状態において、ガイドレール20Hの延伸方向におけるリンク部材25Hの回動支点Pxを形成する従動シュー40Hの軸状部40aの位置、つまりは、その回動支点Pxの形成位置Zを保持する位置保持機構220を備える。
【0172】
上記構成によれば、ガイドレール20Hの延伸方向に沿った駆動シュー22Hの移動を、より直接的に、そのリンク部材25Hの回動に変換することができる。そして、これにより、より円滑に、ガイドレール20Hの前端部20f側に向かう駆動シュー22Hの移動に基づいて、スロープ板10の後端部10rを持ち上げるとともに、ガイドレール20Hの後端部20r側に向かう駆動シュー22Hの移動に基づいて、その上方に持ち上げられたスロープ板10の後端部10rを引き下げることができる。
【0173】
つまり、回動支点Pxの形成位置Zを保持することにより、駆動シュー22Hの移動方向を反転させた場合においても、そのガイドレール20Hの延伸方向に移動する駆動シュー22Hと、この駆動シュー22Hに連動して回動するリンク部材25Hとの同期を維持することができる。そして、これにより、円滑に、その持ち上げ動作及び引き下げ動作の切り替えを行うことができる。
【0174】
(2)スロープ装置11Hは、スロープ板10が展開された状態で従動シュー40Hに当接することにより、そのガイドレール20Hの前端部20f側に向かう従動シュー40Hの移動を規制するストッパ部64Hを備える。また、スロープ装置11Hは、スロープ板10が展開された状態で従動シュー40Hに係合することにより、そのガイドレール20Hの後端部20r側に向かう従動シュー40Hの移動を規制する係合部材210を備える。そして、これらのストッパ部64H及び係合部材210によって、その位置保持機構220が形成される。
【0175】
上記構成によれば、簡素な構成にて、駆動シュー22Hの移動方向に依らず、その従動シュー40Hの軸状部40aによる回動支点Pxの形成位置Zを保持可能な位置保持機構220を形成することができる。
【0176】
(3)係合部材210は、ガイドレール20Hに支持された状態で駆動シュー22Hに設けられたカム面222に摺接することにより、そのガイドレール20Hの延伸方向に沿った駆動シュー22Hの移動に基づいて従動シュー40Hに係脱する。
【0177】
上記構成によれば、ガイドレール20Hの延伸方向に沿った駆動シュー22Hの移動によりスロープ板10の後端部10rを持ち上げ又は引き下げるリンク部材25Hの動作に連動して、その従動シュー40Hに対して係合部材210を係脱させることができる。そして、これにより、簡素な構成にて、適切なタイミングで、そのガイドレール20Hの後端部20r側に向かう従動シュー40Hの移動を規制し、及び、この規制を解除することができる。
【0178】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0179】
・上記第1の実施形態では、リンク部材25に設けられた長孔43に従動シュー40の軸状部40aを挿通することにより従動シュー40に対するリンク部材25の第3連結点X3を形成することとした。しかし、これに限らず、従動シュー40側に形成された長孔に対してリンク部材25側に設けられた軸状部を挿入することにより、その第3連結点X3を形成する構成としてもよい。
【0180】
・上記各実施形態では、駆動ケーブル51は、平歯式のラックベルト60としての構成を有することとしたが、駆動ケーブル51の形状及びアクチュエータ52による駆動形式は任意に変更してもよい。
【0181】
・また、従来技術にみられるように、モータ駆動により回転する螺子軸と、この螺子軸に螺合するナット部材との間の歯合関係(螺子対偶)に基づいて、駆動シュー22をガイドレール20の延伸方向に移動させる構成であってもよい。そして、モータ駆動以外の駆動手段、例えば、弾性部材(圧縮バネ等)の付勢力に基づいて、その駆動シュー22がスロープ板10の展開方向、つまりはガイドレール20の後端部20r側から前端部20f側に移動する構成についてもまた、これを排除しない。
【0182】
・更に、スロープ板10を展開及び格納するにあたり上記各実施形態のスロープ装置11(11B,11C)のような姿勢保持機構50(50B)及びリフト機構70(70B,70C)を有しないスロープ装置について、そのスロープ板10に連結された駆動シュー22が駆動ケーブル51を介して駆動される構成を適用してもよい。そして、この場合もまた、そのガイドレール20の延伸方向に沿って延びる摺動路58と、この摺動路58に沿って駆動ケーブル51を摺動させるアクチュエータ52と、を備える構成にするとよい。
【0183】
このような構成を採用することで、簡素な構成にて、安定的に、その駆動シュー22と一体にスロープ板10をガイドレール20の延伸方向に移動させることができる。そして、これにより、その簡素な構成を活かして装置の小型化を図ることができる。
【0184】
・上記第2の実施形態においては、従動シュー40Bに対する第3連結点X3がリンク部材25の回動支点Pxとして機能する構成であれば、必ずしも、リンク部材25Bと従動シュー40Bとが相対回動可能な構成でなくともよい。即ち、従動ガイド部45Bに対して従動シュー40Bが係合する状態で、この従動シュー40Bを回動支点Pxとして、当該従動シュー40Bと一体にリンク部材25Bが回動する構成であってもよい。そして、上記第3の実施形態においては、その従動シュー40Cが、リンク部材25C及び従動ガイド部45Cの何れに対しても相対回動しないものであってもよい。
【0185】
・また、ガイドレール20に対するリンク部材25の係合状態に基づいて、そのリンク部材25の姿勢を保持することが可能であれば、姿勢保持機構50の構成は、任意に変更してもよい。例えば、上記第2及び第3の実施形態におけるガイドレール20B,20Cについては、天板部46を備えない構成としてもよい。
【0186】
・上記第1の実施形態においては、ガイドレール20は、スロープ板10がドア開口部3に展開された状態において、駆動シュー22に連動してリンク部材25がガイドレール20の後端部20r側に向かって移動することにより、その天板部46の前端46fにリンク部材25が当接するように構成される。そして、これにより、その天板部46の前端46fが、リンク部材25に第2の回動支点Pyを形成する戻り支点形成部77として機能することとした。しかし、これに限らず、天板部46の前端46f以外の構成によって、その戻り支点形成部77が形成される構成であってもよい。
【0187】
・また、例えば、スロープ板10の重み等によって、そのスロープ板10の後端部10rを引き下げる方向の力がリンク部材25に働くようにする。そして、これにより、そのスロープ板10の後端部10rを引き下げる動作においてもまた、その持ち上げ動作時と同じ回動支点Px回りにリンク部材25が回動する構成としてもよい。
【0188】
・上記各実施形態では、リンク部材25の回動により、スロープ板10の後端部10rに対する第1連結点X1が、その回動支点Pxよりもガイドレール20の後端部20r側に移動するように構成されることとした。しかし、これに限らず、例えば、スロープ板10の後端部10rが最も上方に持ち上げられる位置まで、そのリンク部材25が回動する等、ガイドレール20の前端部20f側に向かう駆動シュー22の移動に基づくリンク部材25の回動量については、任意に変更してもよい。
【0189】
・また、上記第3の実施形態においては、第2連結点X2がリンク部材25Cの回動支点Pxを超えてガイドレール20の前端部20f側に移動する前に、第1連結点X1が、その回動支点Pxよりもガイドレール20の後端部20r側に移動することとした。しかし、これに限らず、上記第1及び第2の実施形態と同様に、第2連結点X2がリンク部材25Cの回動支点Pxを超えてガイドレール20の前端部20f側に移動することにより、第1連結点X1が、その回動支点Pxよりもガイドレール20の後端部20r側に移動する構成としてもよい。これにより、安定的に、ドア開口部3に臨む車両フロア71の縁部71eに対して、そのスロープ板10の後端部10rを近づけることができる。そして、第1及び第2の実施形態におけるリフト機構70,70Bについても、例えばリンク部材25の形状を変更する等により、第2連結点X2がリンク部材25Cの回動支点Pxを超えてガイドレール20の前端部20f側に移動する前に、第1連結点X1が、その回動支点Pxよりもガイドレール20の後端部20r側に移動するようにしてもよい。
【0190】
・上記各実施形態では、第1連結点X1と第2連結点X2との間にリンク部材25の回動支点Pxが形成された状態で駆動シュー22がガイドレール20の後端部20r側から前端部20f側に移動することにより、そのリンク部材25が回動する。そして、上記第4の実施形態では、スロープ板10Dの後端部10rが持ち上がる方向にリンク部材25Dが回動することにより、スロープ板10Dの側端部100に保持された脱落防止部材101が、そのスロープ板10Dの上方に持ち上がることとした。しかし、これに限らず、このような脱落防止部材101が設けられたスロープ板10Dを上方に持ち上げるリフト機構70Dにおいて、そのリンク部材25Dを回動させる構成については、任意に変更してもよい。
【0191】
・上記第4の実施形態において、各脱落防止部材101は、スロープ板10Dの幅方向両側の側端部100において、そのスロープ板10Dの側方に保持されることとした。
しかし、これに限らず、図29及び図30(a)(b)に示すスロープ装置11Eのように、スロープ板10Eの側端部100Eに、その長手方向に延在するかたちでスロープ板10Eの上面10aに開口する溝状の収容凹部130を設ける。そして、この収容凹部130内に収容された脱落防止部材101が、そのスロープ板10Eの上面10a側に持ち上がる構成としてもよい。これにより、脱落防止部材101を保護するとともに、意匠性の向上を図ることができる。
【0192】
・また、図31(a)~(c)に示すように、脱落防止部材101が持ち上がる方向に当該脱落防止部材101を付勢する付勢部材140を備える構成としてもよい。例えば、この図31に示す例では、スロープ板10Fに対する第2リンク部材105Fの板側連結点Xbを形成する軸状部材111に対して捩りコイルバネ141が嵌装されている。更に、スロープ板10Fには、その捩りコイルバネ141の第1端部141aに対する係合部142が形成されるとともに、第2リンク部材105Fには、その捩りコイルバネ141の第2端部141bに対する係合部143が形成されている。そして、この図31に示す例においては、その捩りコイルバネ141の弾性力に基づいて、同図中、時計回り方向に第2リンク部材105Fを回動付勢することにより、この第2リンク部材105Fを介して、その脱落防止部材101が持ち上がる方向に当該脱落防止部材101を付勢する構成になっている。
【0193】
上記構成によれば、より円滑に、そのスロープ板10Fの長手方向に延在する脱落防止部材101を上方に持ち上げることができる。尚、付勢部材140の数及び配置、並びに、その種類については、任意に変更してもよい。例えば、圧縮コイルバネや板バネ等、捩りコイルバネ141以外のバネ部材、或いは、その他の弾性部材を付勢部材140に用いてもよい。更に、付勢部材140が、直接、その脱落防止部材101を上方に押圧する構成であってもよい。そして、第2リンク部材105F以外の押圧部材を介して、その付勢部材140が脱落防止部材101を上方に押圧する構成であってもよい。
【0194】
・上記第4の実施形態においては、スロープ板10Dと各脱落防止部材101との間には、そのリンク部材25Dに対する第1連結点X1よりもスロープ板10の前端部10f側に、複数の第2リンク部材105が介在されることとした。しかし、これに限らず、このような第2リンク部材105の数及び配置は任意に変更してもよい。そして、その第2リンク部材105が、各リンク部材25Dの第1端部25aと平行リンク110を形成しない構成であってもよい。
【0195】
・また、図32に示すスロープ装置11Gのように、上記のような第2リンク部材105を設けることなく、各脱落防止部材101Gが前傾姿勢となるかたちで、そのリフト機構70Gを構成するリンク部材25Gの回動により各脱落防止部材101Gの後端部101rが持ち上がる構成としてもよい。そして、これにより、簡素な構成にて、可動式の側壁部120をスロープ板10Gの上方に展開することができる。
【0196】
尚、この場合、例えば、長孔と、この長孔に係合する軸部材によって、そのスロープ板10Gと各脱落防止部材101Gとの連結点を形成するとよい。そして、スロープ板10Gに上記別例のような収容凹部130が設けられた構成においては、この収容凹部130の底面130bを脱落防止部材101Gの前端部が摺動する構成としてもよい。
【0197】
・上記第4の実施形態では、脱落防止部材101は、長尺略平板状の外形を有して、そのスロープ板10Dの長手方向に延在することとした。しかし、これに限らず、スロープ板10Dの上面10a側に持ち上げられることにより、脱落防止用の側壁部120を形成可能であれば、その脱落防止部材101の形状は任意に変更してもよい。そして、その脱落防止用の側壁部120を形成する脱落防止部材101の長さ、及びスロープ板10Dの上方への突出量についてもまた、任意に変更してもよい。
【0198】
・また、上記第4の実施形態では、脱落防止部材101の上下幅W1は、スロープ板10Dの厚みW0と略等しく設定されることとしたが、その上下幅W1は、任意に変更してもよい。そして、脱落防止部材101がスロープ板10Dとともに、略水平な姿勢で展開及び格納方向に移動する状態、つまりスロープ板10Dの持ち上げ前の状態において、その脱落防止部材101の一部が、スロープ板10Dの上方に突出している構成であってもよい。尚、車両1に対する搭載性を考慮した場合、持ち上げ前の状態におけるスロープ板10Dの上方への脱落防止部材101の突出量は、より少ない方が好ましい。
【0199】
・上記第5の実施形態では、ガイドレール20Hに対して回動可能に軸支されたレバー部材221が、駆動シュー22Hのシュー本体200に設けられたカム面222に押し上げられるかたち回動することにより、そのシュー本体201の後端部201rに係合する。そして、これにより、このレバー部材221を係合部材210として、ガイドレール20Hの後端部20r側に向かう従動シュー40Hの移動を規制する位置保持機構220が形成されることとした。
【0200】
しかし、これに限らず、カム面222がレバー部材221を押圧する方向については、任意に変更してもよい。例えば、そのカム面222に押圧されたレバー部材221が、側方から従動シュー40Hに係合する構成であってもよい。また、ガイドレール20Hに対してスライド動作可能に支持された係合部材210を設けることにより、この係合部材210が、カム面222に押圧されて、その従動シュー40Hに係合する構成であってもよい。そして、その係合によりガイドレール20Hの後端部20r側に向かう従動シュー40Hの移動を規制可能であれば、駆動シュー22Hに対する係合部材210の係合位置についてもまた、任意に変更してもよい。
【0201】
・また、例えば、ブラケット等、ガイドレール20H以外の箇所に、その位置保持機構220の係合部材210を設ける構成としてもよい。更に、例えば、ソレノイド等の電気的駆動手段を用いることにより、上記のような駆動シュー22Hに設けられたカム面222に対する摺接以外の駆動方法で、その係合部材210を従動シュー40Hに係合させる構成としてもよい。そして、その従動シュー40に係合する係合部材210が、ガイドレール20Hの前端部20f側に向かう従動シュー40の移動、及び後端部20r側に向かう従動シュー40の移動の両方を規制するように、その位置保持機構220を構成してもよい。
【0202】
・上記第5の実施形態では、ガイドレール20Hに設けられたストッパ部64H及び係合部材210としてのレバー部材221によって、ガイドレール20Hの延伸方向に沿った従動シュー40Hの移動を規制することにより、その位置保持機構220が形成されることとした。しかし、これに限らず、例えば、リンク部材25と一体に設けられた回動支点Pxの構成部材がガイドレール20Hに対して回動可能に係合する等により、その位置保持機構220を形成してもよい。これにより、その適用可能なリフト機構の構成を拡張することができる。
【0203】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記姿勢保持機構は、前記第1連結点を前記第2連結点よりも上方且つ前記スロープ板の展開方向に配置する姿勢に前記リンク部材を保持すること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【0204】
上記構成によれば、スロープ板をドア開口部に展開する動作に連続して、速やかに、そのガイドレールの前端部側に向かう駆動シューの移動に基づき第1連結点と第2連結点との間に回動支点を形成して、そのスロープ板の後端部を持ち上げる方向にリンク部材を回動させることができる。
【0205】
(ロ)前記ガイドレールは、前記駆動シューに係合することにより該駆動シューを前記ガイドレールの延伸方向に案内する駆動ガイド部と、前記従動シューに係合することにより該従動シューを前記ガイドレールの延伸方向に案内する従動ガイド部と、を備えること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【0206】
上記構成によれば、安定的に、その駆動シュー及び従動シューをガイドレールの延伸方向に移動させることができる。そして、これらの駆動シュー及び従動シューを介してガイドレールにリンク部材を係合させることにより、そのリンク部材の姿勢を安定させることができる。
【0207】
(ハ)前記ガイドレールは、前記駆動ガイド部の上方において前記ガイドレールの延伸方向に延びる天板部を備え、前記姿勢保持機構は、前記第1連結点が設けられた前記リンク部材の第1端部が前記天板部の下面に摺接する状態で、前記リンク部材の姿勢を保持すること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【0208】
即ち、天板部の下面にリンク部材の第1端部が摺接することにより、この第1端部に連結されたスロープ板の後端部が持ち上がる方向におけるリンク部材の回動を規制することができる。そして、これにより、簡素な構成にて、そのリンク部材の姿勢を保持することができる。
【0209】
(ニ)前記ガイドレールは、該ガイドレールの前端部に前記駆動シューが移動することにより、該駆動シューが前記駆動ガイド部に係合する状態で前記リンク部材の第1端部が前記天板部から脱離するように構成されること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【0210】
上記構成によれば、ガイドレールの前端部が車体に設けられた所謂格納ボックス等の収容部から突出する長さを抑えつつ、スロープ板がドア開口部に展開された状態において、リンク部材を大きく回動させることができる。そして、これにより、より車両フロアに近い位置にスロープ板を配置することができる。
【0211】
(ホ)前記ガイドレールは、前記スロープ板が展開された状態において、前記駆動シューに連動して前記リンク部材が前記ガイドレールの後端部側に向かって移動することにより、前記天板部の前端に前記リンク部材が当接するように構成されること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【0212】
上記構成によれば、天板部の前端が、そのリンク部材に第2の回動支点を形成する戻り支点形成部として機能する。更に、駆動シューに連動してリンク部材が回動しつつガイドレールの後端部側に移動することにより、その天板部の前端に対する当接位置が第1端部側に移動する。そして、これにより、そのリンク部材の第1端部が天板部の下面に摺接する状態となることで、再び、その各ガイドレールに対するリンク部材の係合状態に基づいた姿勢保持機構が機能する。従って、上記構成によれば、より円滑に、その後端部の引き下げ動作に連続してスロープ板を格納方向に移動させることができる。
【0213】
(へ)前記駆動シューに連動して前記スロープ板が前記ガイドレールの延伸方向に移動する状態において前記スロープ板の下面に当接する回転部材を有したスロープ支持部を備えること、を特徴とする車両用スロープ装置。これにより、安定した姿勢で、そのスロープ板を展開及び格納方向に移動させることができる。
【0214】
(ト)前記ガイドレールの前端部側に向かう前記従動シューの移動に基づいて、前記第2連結点が前記回動支点を超えて前記ガイドレールの前端部側に移動するように構成されること、を特徴とする車両用スロープ装置。これにより、安定的に、スロープ板の後端部に対するリンク部材の第1連結点を、その回動支点よりもガイドレールの後端部側に移動させることができる。
【0215】
(チ)前記姿勢保持機構は、前記駆動シュー及び前記従動シューを介した前記ガイドレールに対する前記リンク部材の係合状態に基づいて、該リンク部材の姿勢を保持すること、を特徴とする車両用スロープ装置。これにより、簡素な構成にて、安定的に、そのリンク部材の姿勢を保持して、当該リンク部材と一体にスロープ板を展開及び格納方向に移動させることができる。
【0216】
(リ)ドア開口部の下端に展開されるスロープ板と、前記スロープ板の展開及び格納方向に延びるガイドレールと、前記スロープ板に連結された状態で前記ガイドレールの延伸方向に移動する駆動シューと、前記駆動シューに連結される駆動ケーブルと、前記ガイドレールの延伸方向に沿って延びる摺動路と、前記摺動路に沿って前記駆動ケーブルを摺動させるアクチュエータと、を備える車両用スロープ装置。
【0217】
上記構成によれば、簡素な構成にて、安定的に、そのスロープ板を駆動シューと一体に、ガイドレールの延伸方向に移動させることができる。そして、その簡素な構成を活かして小型化を図ることにより、車両に対する搭載性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0218】
1…車両、2…車体、3…ドア開口部、10…スロープ板、10f…前端部、10r…後端部、10s…下面、11…スロープ装置、12…格納ボックス、12a…開口部、20(20R,20L)…ガイドレール、20f…前端部、20r…後端部、22(22R,22L)…駆動シュー、22a…軸状部、22b…係合部、25(25R,25L)…リンク部材、25a…第1端部、25b…第2端部、31,32…貫通孔、35…連結部材、35a…軸状部、35b…固定部、37…リンクガイド部、37b…底面、37s…側壁面、38…駆動ガイド部、38a…内側駆動ガイド部、38b…外側駆動ガイド部、40…従動シュー、40a…軸状部、40b…係合部、43…長孔、43a,43b…端部、45…従動ガイド部、46…天板部、46f…前端、46s…下面、48…スロープ支持部、48a…ローラー、50…姿勢保持機構、51(51R,51L)…駆動ケーブル、51a…接続端、51b…自由端、52…アクチュエータ、52m…モータ、53…ブラケット、55(55R,55L)、56(56R,56L)…ケーシングパイプ、58…摺動路、60…ラックベルト、61…ピニオンギヤ、61x…回転軸、64…ストッパ部、65…エンドブロック、66…底板部、66f…前端、70…リフト機構、71…車両フロア、71e…縁部、72…係合部、74…回動規制部、75…平坦面、77…支点形成部、X1…第1連結点、X2…第2連結点、X3…第3連結点、Px…回動支点、d…間隔、Py…第2の回動支点、11B…スロープ装置、20B…ガイドレール、25B…リンク部材、40B…従動シュー、45B…従動ガイド部、50B…姿勢保持機構、70B…リフト機構、80…湾曲部、11C…スロープ装置、20C…ガイドレール、25C…リンク部材、25x…当接部、40C…従動シュー、45C…従動ガイド部、70C…リフト機構、81…上方開口部、82…当接部材、10D,10E,10F,10G…スロープ板、10a…上面、11D,11E,11G…スロープ装置、25D,25G…リンク部材、70D,70G…リフト機構、100,100E…側端部、101,101G…脱落防止部材、101r…後端部、105,105F…第2リンク部材、110…平行リンク、111~113…軸状部材、120…側壁部、130…収容凹部、130b…底面、140…付勢部材、141…コイルバネ、141a…第1端部、141b…第2端部、142,143…係合部、11H…スロープ装置、20H…ガイドレール、22H…駆動シュー、25H…リンク部材、38H…駆動ガイド部、40H…従動シュー、45H…従動ガイド部、64H…ストッパ部、70H…リフト機構、200…シュー本体、200f…先端部、200r…後端部、201…シュー本体、201f…先端部、201r…後端部、202…嵌合部材、210…係合部材、220…位置保持機構、221…レバー部材、221a…先端部、221b…基端部、222…カム面、223…収容凹部、223b…底部、224…回動軸、225…摺接突部、226…上方突部、226s…上面、227…嵌合部材、230…サブシュー、θ1,θ2…傾斜角、H0,H1…高さ、N1,N2…線分、W0…厚み、W1…上下幅、Xa…回動連結点、Xb…板側連結点、Xc…壁側連結点、Z…形成位置。
図1
図2
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