IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7408998インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタ駆動方法
<>
  • 特許-インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタ駆動方法 図1
  • 特許-インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタ駆動方法 図2
  • 特許-インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタ駆動方法 図3
  • 特許-インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタ駆動方法 図4
  • 特許-インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタ駆動方法 図5
  • 特許-インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタ駆動方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタ駆動方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231226BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/015 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019191982
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021066055
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 宏昭
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-343690(JP,A)
【文献】特開2012-045835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドの駆動波形を生成する駆動波形生成部と、
前記駆動波形生成部で生成された駆動波形のデジタルデータをアナログ波形電圧に変換するコンバータと、
前記コンバータにより変換されたアナログ波形電圧を、前記インクジェットヘッドを駆動する電圧レベルまで増幅させる駆動波形電圧増幅回路と、を有する制御基板と、
前記制御基板の前記駆動波形電圧増幅回路から出力されたアナログ波形電圧が供給され、前記アナログ波形電圧を前記インクジェットヘッドの素子を駆動できるレベルまで電力増幅する駆動波形電力増幅回路を有する駆動基板と、
前記駆動基板に配置された、前記インクジェットヘッドを制御する画像データのバッファ回路と、を備え、
前記駆動基板の前記駆動波形電力増幅回路により電力増幅された前記アナログ波形電圧を前記インクジェットヘッドに供給すると共に、前記バッファ回路に供給される画像データは差動信号であり、前記駆動基板は、差動信号を受信する差動レシーバを備えるようにした
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記駆動基板と前記インクジェットヘッドとを接続するケーブルは、前記制御基板と前記駆動基板とを接続するケーブルよりも短くした
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記駆動基板は、前記駆動波形電力増幅回路の出力に負帰還をかけて前記アナログ波形電圧を補正する負帰還回路を備える
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記駆動基板は、複数の前記インクジェットヘッドの駆動波形電力増幅回路を備える
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
インクジェットヘッドを駆動するアナログ信号波形を、前記インクジェットヘッドに供給するインクジェットプリンタ駆動方法において、
制御基板内で生成された駆動波形のデジタルデータをアナログ波形電圧に変換し、変換されたアナログ波形電圧を、前記インクジェットヘッドを駆動する電圧レベルまで増幅した後、前記制御基板からケーブルを介して駆動基板に伝送し、
前記駆動基板に配置された回路で、伝送された前記アナログ波形電圧を前記インクジェットヘッドの素子を駆動できるレベルまで電力増幅し、
前記駆動基板に配置されたバッファ回路で、前記インクジェットヘッドを制御する画像データのバッファ処理を行い、
前記駆動基板に配置された回路で電力増幅された前記アナログ波形電圧を、ケーブルを介して前記インクジェットヘッドに供給すると共に、前記バッファ回路に供給される画像データは差動信号とした
インクジェットプリンタ駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタ駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドの駆動基板と、インクジェットヘッドとの間をケーブルで接続して、駆動基板からのヘッド駆動信号により、インクジェットヘッドからのインクの吐出を制御している。
【0003】
プリンタによる印画画質の向上のためには、駆動基板とインクジェットヘッドとを接続するケーブルの長さをできるだけ短くすることが好ましい。ケーブル長を短くすることで、ヘッド駆動信号の波形の歪やなまりによる印画画質の劣化を防ぐことができる。
一方、インクジェットプリンタは用途が拡大しつつあり、大型化されたインクジェットプリンタが各種開発されている。大型化されたインクジェットプリンタの場合、駆動基板とインクジェットヘッドとの距離を短くすることは、構造的に困難であることが多い。
【0004】
特許文献1には、プリンタにおける駆動基板とヘッド間のケーブルを短くするために、デジタル・アナログコンバータ(DAコンバータ)から駆動波形出力回路までを、駆動基板とは別の子基板に配置し、その子基板をヘッドの近くに配置する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-158494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、子基板を設けて、子基板とヘッドとを接続するケーブル長を短くすることが従来から知られている。しかしながら、子基板にDA(デジタル/アナログ)変換器から駆動波形出力回路までを配置した場合、ヘッドを駆動するデジタルデータを駆動基板から子基板まで伝送する必要がある。例えば、1個のヘッドごとに複数ビット(例えば、12ビット)のデータを子基板に伝送する必要がある。そして、この駆動データのビット数は、印画画質の高画質化に伴って増える傾向にある。
【0007】
駆動データが12ビットで、1個のヘッドあたり5個の駆動回路を備えたインクジェットプリンタを想定すると、ヘッド1個につき12本×5個の60本のケーブルで駆動基板と子基板との間を接続する必要がある。このように、多数のケーブルを用意して駆動基板と子基板とを接続すると、インクジェットプリンタの駆動系の構成がかなり複雑化してしまう。具体的には、多くのケーブルを長く引き回す必要があり、ケーブルに要するコストが増大すると共に、多数の配線ケーブルをプリンタ内に引き回すスペースが必要になり、好ましくない。
【0008】
本発明は、簡単な構成で印画画質の劣化を防ぐことができるインクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタ駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドの駆動波形を生成する駆動波形生成部と、駆動波形生成部で生成された駆動波形のデジタルデータをアナログ波形電圧に変換するコンバータと、コンバータにより変換されたアナログ波形電圧を、インクジェットヘッドを駆動する電圧レベルまで増幅させる駆動波形電圧増幅回路と、を有する制御基板と、制御基板の駆動波形電圧増幅回路から出力されたアナログ波形電圧が供給され、アナログ波形電圧をインクジェットヘッドの素子を駆動できるレベルまで電力増幅する駆動波形電力増幅回路を有する駆動基板と、駆動基板に配置された、インクジェットヘッドを制御する画像データのバッファ回路と、を備える。
そして、駆動基板の駆動波形電力増幅回路により電力増幅されたアナログ波形電圧をインクジェットヘッドに供給すると共に、バッファ回路に供給される画像データは差動信号であり、駆動基板は、差動信号を受信する差動レシーバを備えるようにした
【0010】
また、本発明のインクジェットプリンタ駆動方法は、インクジェットヘッドを駆動するアナログ波形電圧を、インクジェットヘッドに供給するインクジェットプリンタ駆動方法において、制御基板内で生成された駆動波形のデジタルデータをアナログ波形電圧に変換し、変換されたアナログ波形電圧を、インクジェットヘッドを駆動する電圧レベルまで増幅した後、制御基板からケーブルを介して駆動基板に伝送し、駆動基板内で、伝送されたアナログ波形電圧をインクジェットヘッドの素子を駆動できるレベルまで電力増幅し、駆動基板に配置されたバッファ回路で、インクジェットヘッドを制御する画像データのバッファ処理を行い、駆動基板内で電力増幅されたアナログ波形電圧を、ケーブルを介してインクジェットヘッドに供給すると共に、バッファ回路に供給される画像データは差動信号としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、制御基板からインクジェットヘッドまでの距離が長い場合でも、駆動基板をインクジェットヘッドに近い箇所に設置することで、駆動波形に歪やなまりが生じることを防止でき、印画画質の劣化を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態例によるインクジェットプリンタの全体の例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施の形態例によるインクジェットプリンタの要部のブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態例によるインクジェットプリンタの基板の接続例を示す構成図である。
図4】本発明の一実施の形態例によるインクジェットプリンタの回路図(駆動基板に負帰還回路を設けた例)である。
図5】本発明の一実施の形態例によるインクジェットプリンタの駆動波形の例を示す図である。
図6】本発明の他の実施の形態例によるインクジェットプリンタの要部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)のインクジェットプリンタを、図1図5を参照して説明する。
【0014】
[インクジェットプリンタの全体構成]
図1は、本例のインクジェットプリンタ1の全体構成を示すブロック図である。
インクジェットプリンタ1は、制御部50と、移動制御部21と、移動動作部61と、通信部62と、ヘッド駆動制御部10と、インクジェットヘッド40などを備え、これらがバス63を介して信号を送受信可能に接続されている。
【0015】
制御部50は、インクジェットプリンタ1の全体動作を統括制御する。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51と、RAM(Random Access Memory)52と、記憶部53などを備える。
CPU51は、各種演算処理を行う。CPU51は、記憶部53に記憶されている制御プログラムを読み出して画像記録やその設定などに係る各種制御処理を行う。
RAM52は、CPU51に作業用領域を提供し、作業中のデータを記憶する。
【0016】
記憶部53は、制御プログラムや設定データなどを記憶する不揮発性メモリを含む。また、記憶部53は、通信部62を介して外部から取得されたプリントジョブに係る設定や記録対象の画像データなどを一時的に記憶するDRAMなどを備える。
移動動作部61は、画像を記録する対象である記録媒体を所定の方向に搬送することで、インクジェットヘッド40に対して記録媒体を相対的に移動させ、少なくとも記録媒体の供給及び排出に係る動作を行う。移動動作部61としては、例えば、表面に記録媒体を担持する円筒形状のドラム外周や無端状ベルトの表面を周回動作させる回転モータなどが挙げられる。
【0017】
移動制御部21は、移動動作部61を動作させて、担持されている記録媒体を適切なタイミング及び速度で移動させる制御動作を行う。この移動制御部21は、制御部50と共通の構成であってもよい。
【0018】
インクジェットヘッド40は、複数のノズルが所定のパターンで配列されて設けられ、複数のノズルの開口部から適切なタイミングでインクの液滴を吐出させることで記録媒体上に画像を記録する。インクジェットヘッド40は、容量性負荷である圧電素子41と、吐出選択スイッチング素子などで構成される駆動制御部42とを備える。
【0019】
圧電素子41は、複数のノズルに対して各々設けられ、印加される電圧(駆動電圧波形)に応じて変形して吐出対象の液体にかかる圧力を変化させることで、ノズルから液滴を吐出させるアクチュエータである。圧電素子は、駆動電圧の電圧値に対応して変形する。
【0020】
駆動制御部42は、各圧電素子のそれぞれに対して、ヘッド駆動制御部10から駆動電圧信号を供給するか否か切り替える。駆動制御部42は、出力対象の画像データなどに基づいて液滴を吐出させないノズルに対応する圧電素子41に駆動電圧波形を供給しないことで、各ノズルからのインク液滴の吐出有無を切り替える。
なお、この駆動制御部42による切り替えは、インク液滴の吐出時に限られず、インク液滴を吐出させない程度に小振幅の非吐出波形を供給する際にも行われる。
【0021】
ヘッド駆動制御部10は、出力対象画像の各画素データに応じて適切なタイミングでインクジェットヘッド40の圧電素子41を駆動する駆動電圧信号を出力する。ヘッド駆動制御部10は、制御基板10a上に形成される。制御基板10aには、制御部50などの他の回路が配置されてもよい。
【0022】
ヘッド駆動制御部10は、駆動波形生成部11と、デジタル・アナログコンバータ(以下、「DAC」と称する)12と、駆動波形電圧増幅回路13とを備える。
駆動波形生成部11は、CPU11aと記憶部11bを備え、CPU11aの制御で記憶部11bに記憶された駆動波形のデジタルデータが読み出される。
【0023】
駆動波形生成部11から出力された駆動波形のデジタルデータは、DAC12によりアナログの駆動波形電圧に変換される。DAC12で変換されたアナログの駆動波形電圧は、駆動波形電圧増幅回路13で、インクジェットヘッド40を駆動する電圧レベルまで増幅される。
【0024】
駆動波形電圧増幅回路13で増幅された駆動波形電圧は、制御基板10aから出力され、駆動基板30に配置された駆動波形電力増幅回路31に供給される。制御基板10aと駆動基板30とは、ケーブル71(図3)により接続されている。この駆動基板30は、インクジェットプリンタ1内のインクジェットヘッド40に比較的近い箇所に設置される。
駆動波形電力増幅回路31は、供給されるアナログ波形電圧を、インクジェットヘッド40の圧電素子41を駆動できるレベルまで電力増幅する。
駆動基板30の駆動波形電力増幅回路31で電力増幅された駆動波形電圧は、インクジェットヘッド40の圧電素子41に供給される。駆動基板30とインクジェットヘッド40とは、ケーブル72(図3)で接続されている。
【0025】
[インクジェットヘッドに駆動波形が供給される構成]
図2は、制御基板10aから駆動基板30を経由してインクジェットヘッド40に駆動波形が供給される構成を示す。
制御基板10aの駆動波形生成部11で生成された駆動波形のデータは、制御基板10a内のDAC12でアナログの駆動波形電圧に変換される。DAC12で変換された駆動波形電圧は、制御基板10a内の駆動波形電圧増幅回路13に供給され、インクジェットヘッド40を駆動する電圧レベルまで増幅される。
【0026】
駆動波形電圧増幅回路13で電圧増幅された駆動波形電圧は、制御基板10aから駆動基板30に伝送され、駆動基板30内の駆動波形電力増幅回路31で、圧電素子41を駆動できるレベルまで電力増幅される。
駆動波形電力増幅回路31で電力増幅された駆動波形電圧は、インクジェットヘッド40の圧電素子41に供給される。圧電素子41は、この駆動波形電圧により駆動される。すなわち、圧電素子41は、駆動波形の電圧に対応して変形し、吐出対象の液体にかかる圧力を変化させる。
【0027】
図3は、制御基板10aと駆動基板30とインクジェットヘッド40との接続状態を示す。
制御基板10aと駆動基板30とは、ケーブル71で接続されている。このケーブル71には、駆動波形電圧増幅回路13で電圧増幅された駆動波形電圧が伝送される。
駆動基板30とインクジェットヘッド40とは、ケーブル72で接続されている。このケーブル72には、駆動波形電力増幅回路31で電力増幅された駆動波形電圧が伝送される。
【0028】
なお、制御基板10aは、制御部50などが配置された基板と共にプリンタ動作全体を制御する箇所に設置される。一方、駆動基板30は、インクジェットヘッド40の近くに配置される。したがって、駆動基板30とインクジェットヘッド40とを接続するケーブル72は、制御基板10aと駆動基板30とを接続するケーブル71よりも短い。例えば、ケーブル71は数十センチから数メートル程度の長さであるのに対して、ケーブル72は10センチ程度の長さである。なお、駆動基板30には、駆動波形電力増幅回路31などの限られた回路だけが配置されるため、小面積の回路基板で構成することができる。
駆動基板30を小面積の回路基板で構成することで、駆動基板30をインクジェットヘッド40の近傍に配置することが可能になり、ケーブル72の長さを短くすることができる。
【0029】
[回路構成]
図4は、制御基板10aの駆動波形電圧増幅回路13と、駆動基板30の駆動波形電力増幅回路31との回路構成の例を示す。なお、図4では、駆動波形電力増幅回路31の前段に、負帰還回路32を設けた例を示す。この負帰還回路32も、駆動基板30に配置される。但し、駆動波形電力増幅回路31の前段に負帰還回路32を設けるのは一例であり、負帰還回路32がない構成としてもよい。
【0030】
駆動波形電圧増幅回路13は、オペアンプU1と抵抗器R1,R2とで構成される。オペアンプU1の非反転入力端(+)に、前段の回路であるDAC12の出力が供給される。そして、オペアンプU1の出力端と反転入力端(-)との間に抵抗器R1が接続され、反転入力端(-)が抵抗器R2を介して接地され、オペアンプU1の出力端から電圧増幅された駆動波形が出力される。
【0031】
駆動波形電圧増幅回路13から出力された駆動波形電圧は、駆動基板30の負帰還回路32に供給される。負帰還回路32は、オペアンプU2と抵抗器R3,R4とで構成される。オペアンプU2の非反転入力端(+)に、前段の回路である駆動波形電圧増幅回路13の出力が供給される。オペアンプU2の反転入力端(-)には、駆動波形電力増幅回路31の出力が、抵抗器R3を介して供給される。また、オペアンプU2の出力端と反転入力端(-)との間に抵抗器R4が接続される。オペアンプU2の出力端は、駆動波形電力増幅回路31に接続される。
【0032】
駆動波形電力増幅回路31は、電界効果トランジスタM1,M2で構成される。電界効果トランジスタM1は、Nチャンネル電界効果トランジスタであり、電界効果トランジスタM2は、Pチャンネル電界効果トランジスタである。
2つの電界効果トランジスタM1,M2のゲートに、負帰還回路32の出力(オペアンプU2の出力)が供給される。電界効果トランジスタM1のドレインには電源VCCが供給され、電界効果トランジスタM2のドレインは接地される。そして、2つの電界効果トランジスタM1,M2のソースを接続し、この2つの電界効果トランジスタM1,M2のソースの接続点に得られる信号を、駆動波形電力増幅回路31の出力とする。この駆動波形電力増幅回路31の出力が、インクジェットヘッド40の圧電素子41に供給される。
なお、図4では、電圧増幅回路13と負帰還回路32との間を近接して示しているが、実際には図3で説明したように、比較的長いケーブル71で電圧増幅回路13と負帰還回路32との間が接続されている。
【0033】
[駆動波形電圧の例]
図5は、圧電素子41に供給される駆動波形電圧の例を示す。
図5(a)は、図2図4で説明した本例の構成とした場合における、圧電素子41に供給される駆動波形電圧Vaを示す。
本例の構成の場合の駆動波形電圧Vaは、圧電素子41に供給される直前に配置された駆動波形電力増幅回路31で電力増幅が行われるため、圧電素子41に供給される時点での波形の歪やなまりが殆どない。しがたって、インクジェットヘッド40の圧電素子41の駆動を適正に行うことができ、インクジェットヘッド40による印画画質を劣化させる要因を排除でき、結果的に高画質化を図ることができる。
【0034】
図5(b)は、比較のために、駆動波形電力増幅回路31を制御基板10aに設けた場合の駆動波形電圧Vbを示す。
この場合の駆動波形電圧Vbは、電力増幅した後に比較的長いケーブルで伝送されて圧電素子41に供給されるため、波形の一部に歪みX1,X2等が発生している。このような駆動波形電圧Vbで圧電素子41を駆動した場合には、歪みX1,X2に対応した画質の劣化が生じてしまう。
【0035】
以上説明したように、本例のインクジェットプリンタ1によると、制御基板10aからインクジェットヘッド40までの距離が比較的長い場合でも、インクジェットヘッド40の圧電素子41に、適正な駆動波形電圧を供給することができ、印画画質の劣化を防ぐことができる。
【0036】
[駆動基板に他の回路を組み合わせた例]
なお、駆動基板30には、他の回路を配置するようにしてもよい。
図6の例は、制御基板10aからインクジェットヘッド40の駆動制御部42に供給する画像データのバッファ回路33を、駆動基板30に配置した例を示す。バッファ回路33を介して駆動制御部42に供給される画像データはデジタルデータである。
図6の例のその他の構成は、図2の例と同じ構成とする。
【0037】
なお、図6に示すようにバッファ回路33を配置した場合、駆動波形電力増幅回路31側の駆動波形電圧と画像データとの相互の干渉を防ぐために、画像データ伝送用のケーブルは、ケーブル71,72(図3)とは別にするのが好ましい。
また、画像データが差動信号の場合には、差動レシーバを駆動基板30が備えるようにしてもよい。
【0038】
[その他の変形例]
なお、本発明は、上述した実施の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、変形や変更が可能である。
例えば図1に示すインクジェットプリンタ1の全体構成は一例であり、その他の構成のインクジェットプリンタに適用してもよい。
また、図2図4などでは、1つのインクジェットヘッド40への駆動波形電圧の供給構成を示したものであり、複数のインクジェットヘッド40が配置される場合には、駆動基板30に、複数の駆動波形電力増幅回路31が配置される。
さらに、図4に示す回路構成についても一例を示すものであり、本発明は、この図4に示す構成に限定されるものではない。図4に示すように負帰還回路32を設けた点についても、好適な一例を示したものであり、負帰還回路32がない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…インクジェットプリンタ、10…ヘッド駆動制御部、10a…制御基板、11…駆動波形生成部、12…デジタル・アナログコンバータ(DAC)、13…駆動波形電圧増幅回路、30…駆動基板、31…駆動波形電力増幅回路、32…負帰還回路、33…バッファIC、40…インクジェットヘッド、41…圧電素子、42…駆動制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6