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  • 特許-リラックス空間提供システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】リラックス空間提供システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
G01C21/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019194855
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021067620
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-02-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】仲亀 梓
(72)【発明者】
【氏名】吉村 瞭吾
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-269268(JP,A)
【文献】特開2017-20859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G08G 1/00 - 99/00
G09B 23/00 - 29/14
B60N 2/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上を走行すると共に、ユーザーが滞在する内部空間を有する移動体と、
設定された目的地及び前記内部空間における前記ユーザーのケアメニューに合わせて、前記目的地までの前記移動体の移動ルートを設定するように構成された制御装置と、
を備え、
前記ケアメニューには、前記ユーザーが受ける負荷の継続時間が含まれ、
前記制御装置は、前記移動体で発生する慣性力及び振動に基づいて、前記ユーザーが前記内部空間において受ける負荷の継続時間が前記ケアメニューに含まれる前記継続時間に沿うように前記移動ルートを設定する、リラックス空間提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載のリラックス空間提供システムであって、
前記内部空間に配置されたシートをさらに備え、
前記制御装置は、前記ケアメニューに合わせて、前記シートの姿勢を調整するように構成される、リラックス空間提供システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のリラックス空間提供システムであって、
前記制御装置は、前記ケアメニューに合わせて、前記移動ルートにおける前記移動体の移動速度を調整するように構成される、リラックス空間提供システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリラックス空間提供システムであって、
前記内部空間内において前記ユーザーの知覚に対する刺激を出力するように構成された刺激出力装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記ケアメニューに合わせて、前記刺激出力装置に前記刺激を出力させるように構成される、リラックス空間提供システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリラックス空間提供システムであって、
前記ユーザーの身体情報を検知するように構成された検知装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記検知装置が検知した前記身体情報に合わせて、前記移動ルートを設定するように構成される、リラックス空間提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リラックス空間提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の移動体において、自動運転に最適な移動ルートを探索するシステムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-133328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のシステムは、自動運転が可能なルートを優先的に選択することで利便性を高められるが、移動体に搭乗したユーザーの目的に合わせて移動ルートを設定する機能は備えていない。
【0005】
本開示の一局面は、移動体内でリラックスに適切な空間を提供できるリラックス空間提供システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、地上を走行すると共に、ユーザーが滞在する内部空間(21)を有する移動体(2)と、設定された目的地及び内部空間(21)におけるユーザーのケアメニューに合わせて、目的地までの移動体(2)の移動ルートを設定するように構成された制御装置(6)と、を備えるリラックス空間提供システム(1)である。
【0007】
このような構成によれば、移動ルートの設定によって、移動体(2)に発生する慣性力及び振動をユーザーの求めるリラックスケアに合わせて調整することができる。そのため、ユーザーが目的地まで移動する間に、ユーザーに移動体(2)の慣性力及び振動を心地よい負荷として用いたリラックスケアを提供できる。
【0008】
本開示の一態様は、内部空間(21)に配置されたシート(3)をさらに備えてもよい。制御装置(6)は、ケアメニューに合わせて、シート(3)の姿勢を調整するように構成されてもよい。このような構成によれば、ユーザーの着座姿勢を変化させることで、ユーザーの求めるリラックスケアをより適切に提供できる。
【0009】
本開示の一態様では、制御装置(6)は、ケアメニューに合わせて、移動ルートにおける移動体(2)の移動速度を調整するように構成されてもよい。このような構成によれば、移動体(2)の慣性力及び振動の大きさを変化させることで、ユーザーの求めるリラックスケアをより適切に提供できる。
【0010】
本開示の一態様は、内部空間(21)内においてユーザーの知覚に対する刺激を出力するように構成された刺激出力装置(4)をさらに備えてもよい。制御装置(6)は、ケアメニューに合わせて、刺激出力装置(4)に刺激を出力させるように構成されてもよい。このような構成によれば、ユーザーのリラックス状態への誘導、ユーザーに対するリラックス効果の付与等を行うことができる。
【0011】
本開示の一態様は、ユーザーの身体情報を検知するように構成された検知装置(5)をさらに備えてもよい。制御装置(6)は、検知装置(5)が検知した身体情報に合わせて、移動ルートを設定するように構成されてもよい。このような構成によれば、ユーザーの体調に合わせて、適切なレベルのリラックスケアを提供することができる。
【0012】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態におけるリラックス空間提供システムを示す模式的な構成図である。
図2図2は、図1のリラックス空間提供システムの模式図である。
図3図3は、図1の制御装置が実行する処理を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1及び図2に示すリラックス空間提供システム1は、ユーザーUが目的地へ移動しながら、移動体2に発生する慣性力及び振動を利用してリラックスケア(つまり、精神的な休息又は安息)を行うことができる空間を提供するシステムである。リラックス空間提供システム1は、移動体2と、シート3と、刺激出力装置4と、検知装置5と、制御装置6とを備える。
【0015】
<移動体>
移動体2は、地上を走行する乗物である。移動体2は、ユーザーUが滞在する内部空間21を有する。移動体2は、制御装置6によって自動走行するように構成されてもよいし、ユーザーU以外のドライバによって手動で運転されるように構成されてもよい。
【0016】
<シート>
シート3は、移動体2の内部空間21に配置されている。シート3は、移動体2の走行中にユーザーUが着席しながら、移動体2から慣性力及び振動による負荷を受けるように設計されている。
【0017】
シート3は、位置及び姿勢が変更可能である。具体的には、シート3は、内部空間21の内部で移動が可能である。また、シート3は、水平方向と交差する軸を中心とした回転、及びシートバック又はシートクッションの水平方向に対する傾斜角度の変更(つまりリクライニング、チルト及びリフト)が可能である。シート3は、制御装置6からの指示によって位置及び姿勢が変更される。
【0018】
<刺激出力装置>
刺激出力装置4は、内部空間21内においてユーザーUの知覚に対する刺激を出力するように構成されている。
【0019】
図2では、刺激出力装置4としてディスプレイが例示されている。このようにディスプレイを刺激出力装置4として用いた場合、ユーザーUの視覚に対して、映像が刺激として出力される。
【0020】
また、刺激出力装置4は、視覚以外の知覚(例えば、聴覚、嗅覚、触覚)で認識される刺激(例えば、音、におい、風、振動等)を出力するハードウェア(例えば、オーディオ、アロマディフューザー、送風機等)を有してもよい。さらに、刺激出力装置4は、映像又は音声にて、リラックスケアの手順(つまりガイダンス)を出力してもよい。
【0021】
<検知装置>
検知装置5は、ユーザーUの身体情報を検知するように構成されている。身体情報としては、ユーザーUの脈拍、心拍、体温等が挙げられる。
【0022】
検知装置5としては、例えば、身体情報を検出可能なセンサを内蔵したウェアラブルデバイスが使用できる。また、検知装置5として、内部空間21に配置されたセンサを用いてもよい。
【0023】
<制御装置>
制御装置6は、設定された目的地及び内部空間21におけるユーザーUのケアメニューに合わせて、目的地までの移動体2の移動ルートを設定するように構成されている。
【0024】
制御装置6は、図1に示すように、入力部61と、処理部62とを有する。制御装置6は、例えばマイクロプロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるマイクロコンピュータにより構成される。制御装置6は、移動体2の内部に設置されている。
【0025】
入力部61は、ユーザーUからの目的地、到着時間、及びケアメニューの入力を受け付ける。ユーザーUは、移動体2に搭乗する際、又は搭乗する前に、移動の目的地と、目的地への到着時間と、目的地への移動の間に内部空間21にて行いたいケアメニューとを入力部61に入力する。
【0026】
ケアメニューには、負荷(つまり慣性力及び振動)の大きさ、負荷の持続時間などの情報が含まれる。例えばユーザーUは、負荷及び負荷の継続時間の組み合わせをケアメニューとして選択する。ケアメニューは、移動体2から見える風景が選択できるように構成されてもよい。
【0027】
また、ユーザーUがケアメニューを入力する代わりに、処理部62がユーザーUの体調から自動でケアメニューを設定してもよい。ユーザーUの体調は、ユーザーU自身による入力部61への入力データのほか、検知装置5による検知データから取得又は推測することができる。
【0028】
目的地及びケアメニューが設定された後、処理部62は、移動中の移動体2においてユーザーUに提供される負荷及び負荷の継続時間がケアメニューに沿ったものとなるように移動ルートを設定する。ここで、処理部62は、検知装置5が検知した身体情報に合わせて、移動ルートを設定してもよい。
【0029】
例えば、処理部62は、ケアメニューにおける負荷の大小に合わせて、カーブの数、カーブの曲率半径、傾斜の有無、傾斜の大小等を考慮して移動ルートを設定する。また、処理部62は、負荷の継続時間の大小に合わせて、目的地までの走行距離を考慮して移動ルートを設定する。
【0030】
ケアメニューにおいてユーザーUが希望する風景が選択されている場合、処理部62は、選択された風景がユーザーUから見える移動ルートを設定する。例えば、ケアメニューの希望風景が「海」であった場合、処理部62は、海岸線、又は海の見える地域を走行する移動ルートを設定する。また、処理部62は、季節、時刻、天気等による景色の変化を考慮して移動ルートを設定してもよい。
【0031】
処理部62は、例えば、移動ルートとユーザーUへの負荷(つまり移動体2で発生する慣性力及び振動)との関係を記述したデータベースを参照することで、ケアメニューに応じた移動ルートを設定する。
【0032】
処理部62は、上述の手順によってケアメニューに合わせた複数のルート候補を用意し、これらのルート候補をユーザーUに提示してもよい。処理部62は、これらのルート候補のうち、ユーザーUが選択したものを移動ルートとして設定してもよい。
【0033】
処理部62は、ケアメニューに合わせて、シート3の姿勢を調整する。例えば、処理部62は、傾斜している道を走行中に、内部空間21の傾斜によるユーザーUへの負荷が軽減されるようにシート3を傾斜させてもよい。
【0034】
また、例えば、処理部62は、負荷の継続中はシート3をユーザーUが安楽姿勢になるような姿勢に維持し、負荷がない間はシート3をユーザーUが立ち座りとなるような姿勢に維持してもよい。
【0035】
処理部62は、ケアメニューに合わせて、移動ルートにおける移動体2の移動速度を調整する。例えば、処理部62は、カーブを走行中に、遠心力によるユーザーUへの負荷が軽減されるように移動速度を小さくしてもよい。また、処理部62は、移動体2の振動が適度な大きさになるように移動速度を調整してもよい。
【0036】
処理部62は、ケアメニューに合わせて、刺激出力装置4に刺激を出力させる。例えば、処理部62は、ユーザーUがリラックスできる刺激(例えば、落ち着いた映像及び音楽と、アロマとの組み合わせ)を、ユーザーUの求める負荷の大小に合わせてユーザーUに提供してもよい。
【0037】
上述したシート3の姿勢調整、移動体2の移動速度調整、及び刺激出力装置4の刺激出力は、移動ルートの設定時に予め設定されてもよい。つまり、処理部62は、各地点でのシート3の姿勢、移動体2の移動速度、及び刺激の出力内容が含まれた移動ルートを生成してもよい。
【0038】
また、処理部62は、移動体2の移動中(つまりユーザーUのケア中)に、ユーザーU及び移動体2の現状に合わせて、リアルタイムでシート3の姿勢調整、移動体2の移動速度調整、及び刺激出力装置4への刺激出力指示を行ってもよい。
【0039】
さらに、処理部62は、移動体2の移動中に、検知装置5が検知した身体情報に合わせて、移動ルートを再設定してもよい。例えば、処理部62は、移動中にユーザーUのリラックス度合いが低下してきたと判断される場合に、現在の移動ルートをより負荷の少ない移動ルートに変更してもよい。
【0040】
<制御装置の処理>
以下、図3のフロー図を参照しつつ、制御装置6が実行する処理の一例について説明する。
【0041】
本処理では、制御装置6は、最初に、移動体2の目的地及びケアメニューを設定する(ステップS10)。次に、制御装置6は、目的地及びケアメニューに合わせて、移動ルートを設定する(ステップS20)。
【0042】
移動ルートの設定後、制御装置6は、移動ルートに沿って移動体2の移動を開始させる(ステップS30)。続いて、制御装置6は、移動ルートを移動体2が移動している間(つまり、ユーザーUが内部空間21に滞在している間)に、シート3の姿勢調整、移動体2の移動速度調整、及び刺激出力装置4の刺激出力の制御を行う(ステップS40)。
【0043】
制御装置6は、上述の制御を繰り返しつつ、移動ルートに沿って移動体2を目的地に到着させることで移動を完了させ(ステップS50)、処理を終了する。
【0044】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)移動ルートの設定によって、移動体2に発生する慣性力及び振動をユーザーUの求めるリラックスケアに合わせて調整することができる。そのため、ユーザーUが目的地まで移動する間に、ユーザーUに移動体2の慣性力及び振動を心地よい負荷として用いたリラックスケアを提供できる。
【0045】
(1b)制御装置6は、ケアメニューに合わせてシート3の姿勢を調整することで、ユーザーUの着座姿勢を変化させる。これにより、ユーザーUの求めるリラックスケアをより適切に提供できる。
【0046】
(1c)制御装置6は、ケアメニューに合わせて移動体2の移動速度を調整することで、移動体2の慣性力及び振動の大きさを変化させる。これにより、ユーザーUの求めるリラックスケアをより適切に提供できる。
【0047】
(1d)ケアメニューに合わせて刺激が出力されることで、ユーザーUのリラックス状態への誘導、ユーザーUに対するリラックス効果の付与等を行うことができる。
【0048】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0049】
(2a)上記実施形態のリラックス空間提供システム1において、制御装置6は、必ずしもケアメニューに合わせてシート3の姿勢を調整しなくてもよい。また、リラックス空間提供システム1は、シート3を備えなくてもよい。
【0050】
(2b)上記実施形態のリラックス空間提供システム1において、制御装置6は、必ずしもケアメニューに合わせて移動体2の移動速度を調整しなくてもよい。例えば、移動体2は交通状況に合わせて一定の移動速度で移動してもよい。
【0051】
(2c)上記実施形態のリラックス空間提供システム1は、必ずしも刺激出力装置4を備えなくてもよい。さらに、リラックス空間提供システム1は、必ずしも検知装置5を備えなくてもよい。
【0052】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0053】
1…リラックス空間提供システム、2…移動体、3…シート、4…刺激出力装置、
5…検知装置、6…制御装置、21…内部空間、61…入力部、62…処理部。
図1
図2
図3