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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ICカード
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20231226BHJP
   G06F 3/06 20060101ALI20231226BHJP
   G06F 3/08 20060101ALI20231226BHJP
   G06K 19/073 20060101ALI20231226BHJP
   G06F 11/07 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G06K19/07 220
G06F3/06 304P
G06F3/08 C
G06K19/073 009
G06F11/07 175
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019206074
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021081768
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】岩井 祐樹
【審査官】土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-171394(JP,A)
【文献】特開2016-162264(JP,A)
【文献】特開2013-164686(JP,A)
【文献】特開2009-163339(JP,A)
【文献】特開2002-342734(JP,A)
【文献】特開2012-043208(JP,A)
【文献】特開平06-348549(JP,A)
【文献】特開2008-152452(JP,A)
【文献】特開2000-066928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G06F 3/06
G06F 3/08
G06K 19/073
G06F 11/07
G06F 11/28
G06F 11/34
G06F 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時のコマンド処理状況を解析することのできるICカードであって、
揮発性メモリと第1の記憶領域を含む不揮発性メモリとから成る記憶領域を有し、
ICカードアクセス装置から与えられた情報処理コマンドに対して、
情報処理フロー中の任意の複数のステップ毎に
固有なユニーク番号を前記記憶領域において前記第1の記憶領域とは異なる第2の記憶領域に蓄積するユニーク番号保持手段と、
当該ステップにおいて書き込まれるべき値を、前記不揮発性メモリの前記第1の記憶領域に書き込む書込み手段と、
前記書込み手段による前記値の書き込みに応じた結果を示すユニーク番号を、前記第2の記憶領域に保持されたユニーク番号に追記するよう前記第2の記憶領域に蓄積し、前記第2の記憶領域に蓄積された一連のユニーク番号を、前記不揮発性メモリにおいて前記第1の記憶領域及び前記第2の記憶領域とは異なる第3の記憶領域に保存するユニーク番号記憶手段を備えることを特徴とするICカード。
【請求項2】
請求項1に記載のICカードであって、
ICカードアクセス装置から与えられたエラー解析コマンドに対して、
前記不揮発性メモリに保存されている一連のユニーク番号を読み出し、
該ICカードアクセス装置へ送信するユニーク番号出力手段を備えることを特徴とするICカード。
【請求項3】
前記ユニーク番号保持手段が、少なくともエラー発生毎に該エラーに対応する固有なユニーク番号を前記記憶領域に保持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項4】
前記ユニーク番号出力手段が、予め参照を許可された者に限定して行われるための認証手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードの利用に際しては、接続されたICカードアクセス装置から受信したコマンド処理においてエラーが発生した場合、ICカード側からそのエラーに対応したレスポンスをICカードアクセス装置に返す処理が行われる。
【0003】
例えばICカードに搭載されるフラッシュメモリに対して特定の値を書き込む処理においては、書き込み後にその値を読み出して書き込みが正常に行われたことを確認するが、フラッシュメモリの劣化や外部からの攻撃などによって正常な値が書き込まれずにエラー判定になる場合が発生する。この場合、カードの状態をロックあるいは無応答にするなどの異常系の処理を続ける。
【0004】
このような異常系の処理は処理フローの様々な場面で発生する場合があること、また処理全体が適切なフローに基づいて異常なく行われていることを確認する必要もあることから、処理フロー内に複数のチェックポイントを設け、個々の処理に対応して変化する複数のチェックフラグによってデータ処理の正当性を確認する技術が利用されている(先行特許文献1)。
【0005】
しかし上記技術においては処理の正当性を確認することについては有用であるが、エラーが発生した場合の異常解析については情報量が不十分なため、発生した異常の原因が完全に特定できない場合があるという課題があった。
【0006】
また異常系の処理に対応して、複数のCPUレジスタ及びプログラムカウンタの値を確保し、エラーの原因特定を容易にする技術も利用されている(先行特許文献2)。
【0007】
しかし上記技術においてはエラーが発生した処理を特定することはできるが、その処理が処理フロー全体の中で異なる複数の処理から呼び出されて行われる共通処理、例えば上記フラッシュメモリへの書き込み確認処理などの場合には、どの段階の処理においてエラーが発生したのかを特定することが困難であるという課題があった(図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-243097号公報
【文献】特開2013-171394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ICカードのコマンド処理フローにおいて発生したエラーの特定と解析を容易に行うことのできるICカードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明は、
使用時のコマンド処理状況を解析することのできるICカードであって、
揮発性メモリと第1の記憶領域を含む不揮発性メモリとから成る記憶領域を有し、
ICカードアクセス装置から与えられた情報処理コマンドに対して、
情報処理フロー中の任意の複数のステップ毎に
固有なユニーク番号を前記記憶領域において前記第1の記憶領域とは異なる第2の記憶領域に蓄積するユニーク番号保持手段と、
当該ステップにおいて書き込まれるべき値を、前記不揮発性メモリの前記第1の記憶領域に書き込む書込み手段と、
前記書込み手段による前記値の書き込みに応じた結果を示すユニーク番号を、前記第2の記憶領域に保持されたユニーク番号に追記するよう前記第2の記憶領域に蓄積し、前記第2の記憶領域に蓄積された一連のユニーク番号を、前記不揮発性メモリにおいて前記第1の記憶領域及び前記第2の記憶領域とは異なる第3の記憶領域に保存するユニーク番号記憶手段を備えることを特徴とするICカードである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のICカードであって、
ICカードアクセス装置から与えられたエラー解析コマンドに対して、
前記不揮発性メモリに保存されている一連のユニーク番号を読み出し、
該ICカードアクセス装置へ送信するユニーク番号出力手段を備えることを特徴とするICカードである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、
前記ユニーク番号保持手段が、少なくともエラー発生毎に該エラーに対応する固有なユニーク番号を前記記憶領域に保持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のICカードである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、
前記ユニーク番号出力手段が、予め参照を許可された者に限定して行われるための認証手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のICカードである。
【発明の効果】
【0014】
ICカードの処理におけるエラー発生に対し、エラー発生箇所の特定を正確かつ迅速に行い、解析を効率的に行うことができる。
【0015】
このことによって、エラーの原因特定が容易になり、エラーの再発防止対策を的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コマンド処理状況を解析することのできるICカードの構成
図2】Writeコマンドに対する書き込みエラー処理フローの例(従来技術)
図3】Writeコマンドに対する書き込みエラー処理フローの例(本技術)
図4】ユニーク番号出力フロー
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の一実施形態示す。
【0018】
本発明に供されるICカード100は、従来公知のICカードと同様な構成で良い。例えば図1に示すように、少なくともコマンド処理を行う処理部110と、コマンド処理に必要な情報を記憶する記憶領域である記憶部120と、ICカードアクセス装置とのデータ通信を行う通信部130とからなる。
【0019】
また上記記憶部120は、少なくとも情報処理過程で給電時にのみデータを保持する揮発性メモリ、例えばRAM(Random Access Memory)と、非給電時にもデータを保持する不揮発性メモリ、例えばフラッシュメモリ(Flash Memory)からなる。
【0020】
本実施形態はICカードがICカードアクセス装置から受信した情報処理コマンドを処理するフローにおけるユニーク番号の保持および記憶方法と、該ICカードが受信したエラー解析コマンドに応答して返すユニーク番号の出力方法からなる。
【0021】
まずユニーク番号の保持および記憶方法について、ICカード上の記憶領域のひとつであるフラッシュメモリの特定の領域に特定の値を書き込むコマンドを例として、図3に基づいて説明する。
【0022】
S001:ICカードはICカードアクセス装置に接続され、該ICカードアクセス装置からコマンドを受信できる状態に維持されており、該ICカードアクセス装置は該ICカード上のフラッシュメモリの3つの領域(1,2,3)に順次指定された値(X,Y,Z)をそれぞれ書き込む情報処理コマンドであるWriteコマンドを送る。
【0023】
S011:Writeコマンドを受信した該ICカードは、最初のアクセス対象として領域1を指定する。
【0024】
S012:該ICカードは上記S011の処理に対応してユニーク番号1を該ICカード上の記憶領域の一つであるRAM(Random Access Memory)に保持する。
【0025】
S013:該ICカードは該フラッシュメモリの対象領域1に指定の値Xを書き込む。
【0026】
S014:値が正常に書き込まれたことを確認するため、前記対象領域1から書き込まれた値を読み出す。
【0027】
S015:上記S013にて書き込んだ値Xと上記S014で読み出した値を比較し、一致していなかった場合、書き込みが正常に行われなかったことを示すユニーク番号Aを既に保持されているユニーク番号1に加えてRAMに保持する(S101)。
【0028】
S102:該ICカードは、これらRAMに保持された一連のユニーク番号(以下ユニーク番号群)である「1,A」を該フラッシュメモリの今回指定されている3つの領域以外の領域に保存する。
【0029】
S103:こうして異常に至るまでのユニーク番号群をフラッシュメモリに保存の後、該ICカードは異常系の処理に移行して、この情報処理コマンド処理を終える。
【0030】
上記S015で値が一致し、値Xが正常に領域1に書き込まれていたことが確認された場合、領域2に値Yを書き込むフローS021~S025を上記S011~S015と同様の手順で行う。
【0031】
ただし、今回S022で保持されるユニーク番号は領域2に対応するユニーク番号2となる点がS012とは異なる。
【0032】
S025:S023にて書き込んだ値YとS024で読み出した値を比較し、一致していなかった場合、書き込みが正常に行われなかったことを示すユニーク番号Aを既に保持されているユニーク番号1、2に加えてRAMに保持する(S201)。
【0033】
S202:該ICカードは、これらRAMに保持されたユニーク番号群である「1,2,A」をフラッシュメモリの今回指定されている3つの領域以外の領域に保存する。
【0034】
S203:こうして異常に至るまでのユニーク番号群をフラッシュメモリに保存の後、該ICカードは異常系の処理に移行して、このコマンド処理を終える。
【0035】
上記S025で値が一致し、値Yが正常に領域2に書き込まれていたことが確認された場合、領域3に値Zを書き込むフローS031~S035を上記と同様の手順で行う。
【0036】
そして今回S032で保持されるユニーク番号は領域3に対応するユニーク番号3となる。
【0037】
S035:S033にて書き込んだ値ZとS034で読み出した値を比較し、一致していなかった場合、書き込みが正常に行われなかったことを示すユニーク番号Aを既に保持されているユニーク番号1、2、3に加えてRAMに保持する(S301)。
【0038】
S302:該ICカードは、これらRAMに保持されたユニーク番号群である「1,2,3,A」をフラッシュメモリの今回指定されている3つの領域以外の領域に保存する。
【0039】
S303:こうして異常に至るまでのユニーク番号群をフラッシュメモリに保存の後、該ICカードは異常系の処理に移行して、このコマンド処理を終える。
【0040】
S040:上記S035で値が一致し、値Zが正常に領域3に書き込まれていたことが確認された場合、全ての書き込み処理が正常に行われたので、該ICカードは正常レスポンスを該ICカードアクセス装置に返し、該ICカードアクセス装置は該レスポンスの受信をもって該Writeコマンドを完了する(S002)。
【0041】
以上により、ユニーク番号群がフラッシュメモリに保存され、後の異常解析時に書き込み処理のどの段階で書き込みに失敗したかを同定するための有用な情報として保持される。
【0042】
なお、本実施例では各ユニーク番号の保持については、その都度記憶領域内の揮発性メモリであるRAM上に各ユニーク番号を順次追加保持し、異常処理に移行する直前にそれらユニーク番号群をフラッシュメモリに保存する手順を示したが、必ずしもRAMに保持する手順を経ることなく、直接記憶領域内の不揮発性メモリであるフラッシュメモリ上に保持することも可能である。
【0043】
次に該ICカードが受信したエラー解析コマンドに応答して返すユニーク番号の出力方法について図4を用いて説明する。
【0044】
該ICカードはICカードアクセス装置に接続され、該ICカードアクセス装置からコマンドを受信できる状態に維持されており、該ICカードアクセス装置は該ICカードに対して異常解析に必要となる情報を要求するエラー解析コマンドを送信する。
【0045】
該ICカードはエラー解析コマンドの要求に応じて、処理中に発生し保持したユニーク番号群が保存されているフラッシュメモリから、ユニーク番号群を読み出す。
【0046】
なおエラー解析コマンドへの応答については、ユニーク番号群の参照を許可された者に限定して行われるための認証手段を用いて、保安を確保することが望ましい。
【0047】
該ICカードは上記ユニーク番号群とレスポンスを該ICカードアクセス装置へ返し、エラー解析コマンドへの応答を終了させる。
【0048】
前記S001からS002に至った場合を除く、S001~S104、S001~S204或いはS001~S304の3つのフローについては、それぞれに異なるユニーク番号群が与えられており、ユニーク番号Aの直前のユニーク番号1、2または3によって、どのフラッシュメモリ領域での書き込みに失敗したかを容易に同定することができる。
【0049】
例えばユニーク番号群が「1、2、A」であった場合は、書き込みエラーが領域2への書き込み時に起こったことがわかる。
【0050】
本実施例では、書き込み処理に失敗した際に固有のユニーク番号を保持すること、また複数ある書き込み処理を判別するためにそれぞれ固有のユニーク番号を保持することを示したが、固有のユニーク番号の保持については、必ずしも処理の失敗である必要はなく、解析に有用なあらゆる処理ステップにおいてユニーク番号を付与することができる。
【0051】
また当該処理が上位ルーチンのサブルーチンとして複数の共通処理に用いられる場合には、上位ルーチン上で、サブルーチンを呼び出す際にそれぞれ呼応した固有のユニーク番号を保持し、どの上位ルーチンに属する処理であるかを判別することができる。
【0052】
なお本実施例では、異常系の処理についてICカードアクセス装置へのレスポンスを返さないフローを示しているが、エラーの程度によってはエラー発生時に対応するエラーレスポンスを該ICカードアクセス装置に返す場合がある。その場合においても固有のユニーク番号を付与し、RAMに保持した後、ユニーク番号群をフラッシュメモリに保存するフローが適用できる。
【0053】
以上のように、固有のユニーク番号を個別の処理点や処理結果に応じて自由に付与し保持すること、かつこれらユニーク番号の集合であるユニーク番号群を総合的に解析することによって、これまで解析が困難な場合があった異常解析を的確かつ迅速に行うことができ、異常に対する対応を改善することが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
100 コマンド処理状況を解析することのできるICカード
110 処理部
120 記憶部
130 通信部
図1
図2
図3
図4