(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ガラスコア多層配線基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/16 20060101AFI20231226BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H05K1/16 A
H05K3/46 Q
H05K3/46 N
(21)【出願番号】P 2019208248
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】馬庭 進
(72)【発明者】
【氏名】澤田石 将士
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-193214(JP,A)
【文献】特開2004-47667(JP,A)
【文献】特開2019-102733(JP,A)
【文献】特開2019-106429(JP,A)
【文献】特開2005-268447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と上記第1面と反対側の第2面とを有し、上記第1面側から上記第2面側に向けて孔径が小さくなる貫通孔が設けられたガラス基板と、
上記貫通孔の側壁に沿って配置された貫通電極と、
上記ガラス基板の両面にそれぞれ形成された層状構造体と、を有し、
上記第2面側の上記層状構造体は、上記貫通孔の開口部を塞ぐ状態で形成されて、上記貫通孔の上記第2面側の底の部位を構成し、
上記貫通電極は、3つの層を有し、
上記3つの層のうちの第1層は、上記貫通孔の側壁の上記第1面側の一部及び、上記貫通孔の上記第2面側の開口部を塞いでいる上記貫通孔の上記第2面側の底の部分の一部若しくは全面に配置され、
上記3つの層のうちの第2層は、上記第1層及び上記第1層から露出した上記貫通孔の側壁及び上記貫通孔の上記第2面側の底の部位を覆うように配置され、
上記3つの層のうちの第3層は、上記第2層上に配置さ
れ、
上記第2面側の上記貫通孔の開口部を塞ぐ状態で形成された上記層状構造体は、上記第2面に接する耐フッ酸層と、上記耐フッ酸層の上記第2面側とは反対側の面に接する銅層とを少なくとも含むことを特徴とするガラスコア多層配線基板。
【請求項2】
上記層状構造体を構成する導電材料が金属を有し、その金属が、ニッケル、クロム又はその合金であることを特徴とする請求項1に記載のガラスコア多層配線基板。
【請求項3】
上記3つの層のうちの少なくとも1つの層は、複数の層からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガラスコア多層配線基板。
【請求項4】
上記層状構造体は、上記第1面及び上記第2面の上に配置された導体からなる配線層と、その上に交互に積層された絶縁体層及び導体配線層とを有することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のガラスコア多層配線基板。
【請求項5】
上記絶縁体層を貫通する孔と、その孔の内部に配置された導電物質からなる貫通電極とを有し、
上記貫通電極によって、上記第1面及び上記第2面の上に配置された配線層間が電気的で導通されていることを特徴とする請求項4に記載のガラスコア多層配線基板。
【請求項6】
上記貫通電極と上記第1面に設置された配線層と、上記第2面上に設置された配線層とが接続されることによって、ガラスコアを螺旋状に巻くようなソレノイド型コイルからなるインダクタが形成された
ことを特徴とする請求項5に記載のガラスコア多層配線基板。
【請求項7】
一方の電極が上記導体配線層の中に配置され、それと平行なもう他方の電極が、誘電体層を挟んで配置されることによってキャパシタが形成され、該キャパシタが上記層状構造体内部に配置されたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のガラスコア多層配線基板。
【請求項8】
上記貫通電極と上記第1面、上記第2面上に設置された配線とが接続されることによって、ガラスコアを螺旋状に巻くようなソレノイド型コイルからなるインダクタが形成され、
一方の電極が上記導体配線層の中に配置され、それと対になる他方の電極が、誘電体層を挟んで配置されることによってキャパシタが形成され、該キャパシタが上記層状構造体内部に配置され、
上記インダクタと上記キャパシタが、一対又はそれ以上接続されて、周波数フィルタを構成し、該周波数フィルタが上記層状構造体内部に配置されたことを特徴とす
る請求項5に記載のガラスコア多層配線基板。
【請求項9】
上記耐フッ酸層は、クロム層であることを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のガラスコア多層配線基板。
【請求項10】
上記耐フッ酸層の厚さは、上記銅層の厚さと同じであることを特徴とする請求項9に記載のガラスコア多層配線基板。
【請求項11】
上記第1層は、上記貫通孔の側壁に接するチタン層と、上記チタン層に接し、且つ上記貫通孔の上記第2面側の底の部分に接する銅層とを備え、
上記第2層は、ニッケル層であって、
上記銅層は、上記チタン層及びニッケル層よりも厚く、
上記ニッケル層は、上記チタン層よりも厚いことを特徴とする請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のガラスコア多層配線基板。
【請求項12】
上記請求項1~請求項
11のいずれか1項に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法であって、
上記第1層が、スパッタリングによってなることを特徴とするガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項13】
上記請求項1~請求項
11のいずれか1項に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法であって、
上記第2層が無電解めっきによってなることを特徴とするガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項14】
上記請求項1~請求項
11のいずれか1項に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法であって、
上記第3層が電解めっきによってなることを特徴とするガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項15】
上記請求項1~請求項
11のいずれか1項に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法であって、
上記第1面及び上記第2面の上に、導体からなる配線層が配置され、更にその上に、絶縁体層と導体配線層を交互に積層することによってなることを特徴とするガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項16】
上記絶縁体層を貫通する孔を設けた上で、その孔の内部に導電物質を配置することによって貫通電極を設け、該貫通電極によって、上記導体配線層間の電気的導通をとることを特徴とする請求項1
5に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項17】
上記貫通電極と上記第1面上に設置された配線層と、上記第2面上に設置された配線層とを接続することによって、ガラスコアを螺旋状に巻くようなソレノイド型コイルを有するインダクタを上記層状構造体内部に配置したことを特徴とす
る請求項1
6に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項18】
一方の電極を上記導体配線層の中にそれが配置され、それと平行な他方の電極が、誘電体層を挟んで配置されることによってキャパシタが形成され、該キャパシタが層状構造体内部に配置されたことを特徴とす
る請求項1
6に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項19】
上記貫通電極と上記第1面、上記第2面上に設置された配線を接続することによって、ガラスコアを螺旋状に巻くようなソレノイド型コイルを有するインダクタを上記層状構造体内部に配置し、
一方の電極を上記導体配線層の中に配置し、それと対になる他方の電極を、誘電体層を挟んで配置されることによってキャパシタを形成し、該キャパシタが層状構造体内部に配置され、
上記インダクタとキャパシタを、一対又はそれ以上、適切に接続することによって、周波数フィルタを構成し、該周波数フィルタが多層基板内部に配置されたことを特徴とす
る請求項1
6に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項20】
上記請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法であって、
上記ガラス基板は、上記第2面から上記第1面に向けて延びる、貫通孔形成の起点となるレーザー改質部を備え、
上記レーザー改質部の上端は、上記第2面の面内に位置し、
上記レーザー改質部の下端は、上記ガラス基板内に留まっており、
上記ガラス基板を上記第1面側からエッチングして上記貫通孔を形成することを特徴とするガラスコア多層配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を設けたガラス基板を有する多層配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信産業、通信機器を取り巻く状況をみると、動画配信サービス拡大などを背景として通信データ量が増大しており、この傾向は今後も続くと予想されている。代表的な通信機器であるスマートフォンを例にとると、通信量増大に対応するために、High Band(2.3~6.0 GHz)TDD(Time Division Duplex:TDD)、CA(Carrier Aggregation)、MIMO(Multi Input Multi Output)等の新たな通信技術が普及し、それに伴い1台のスマートフォンが使用するRF(Radio Frequency)フィルタの数が増加している。
【0003】
セルラー通信の送受信二重化方式には、TDDとFDD(Frequency Division Duplex)とがある。TDDは一つの通信帯域を時分割で二重化連続し、FDDは隣接した1組の通信帯域(送信帯域をUL:Up Link, 受信帯域をDL:Down Linkと呼ぶ)を使用して二重化する。
送受信で電波を対称に使用するFDDに対し、TDDは非対称な使用が可能であり、電波利用効率において原理的に優位である。また、2波長帯を使うFDDに対し、1波長帯で実現するTDDは、回路構成もよりシンプルになる。
【0004】
このように、TDDは原理的優位性を有するものの、デジタルセルラー通信サービス開始当初は端末・基地局同期精度が低く、送信期間と受信期間の間に長いブランク期間を設ける必要がある。更に、電波利用効率でもFDDが優位だったため、FDDから普及が進んだ。
現在のセルラー通信の周波数は460MHzから6GHzまでの帯域が割り当てられている。
電波はより低周波において伝達特性(減衰特や障害物回避など)に優れるため、1GHz以下の帯域を用いてFDDから普及が進んだ。
【0005】
しかし、近年の通信量拡大に伴い、1GHz以下の帯域の利用状況は早々に過密化し、現在は2GHzまで過密化が進んでいる。このような状況に対し、近年の基地局・端末同期技術進歩が、TDDのブランク期間を短縮し、TDDの普及を加速している。
同期技術の進歩は、ブロードバンドによる高速通信にも繋がっている。サービス開始当初のFDD帯域幅は20MHz以下であったが、現在のTDDは200MHzのブロードバンドで利用されており、更なる広帯域化が決まっている。このような状況を背景とし、今後は未使用帯域が広がる2.3~6.0 GHzでブロードバンドTDDの普及が進む。
【0006】
スマートフォンは、ノイズとなる外来通信波から使用通信帯域を隔離するために、帯域毎にバンドパスフィルタ(以降、BPFと略す、又は周波数フィルタと呼ぶ場合がある)を使用する。
各国の各キャリアが使用する通信帯域は、3GPP (Third Generation Partnership Project)が仕様の検討・作成を行っており、通信キャリアに割り当てられる帯域にはbandナンバーが付与される。
一例としてband12は、FDD方式、UL 699~716MHz、 DL729~746MHzと規定されている。これは、幅17MHzの狭い帯域を13MHzの近接した間隔で利用する仕様であり、周波数フィルタにはシャープなバンドパス特性をもつAW(Acoustic Wave)が用いられる。
【0007】
AWフィルタには、SAW (Surface Acoustic Wave)フィルタと、BAW (Balk Acoustic Wave)フィルタがある。SAWフィルタは圧電体の上に櫛歯型対向電極を形成し、表面弾性波の共振を利用するフィルタである。BAWフィルタには、FBAR型 (film bulk acoustic resonator)とSMR型(solid mounted resonator)がある。FBARは圧電体フィルムの下にキャビティを設けバルク弾性波の共振を利用するフィルタである。SMRはキャビティの代わりに圧電膜の下に音響多層膜(ミラー層)を設けることで弾性波を反射させ共振を利用するフィルタである。FBARはフィルタ特性の急峻性と許容挿入電力においてSMRに優れ、現在のBAWの主流となっている。FBAR は前述したキャビティを高度なMEMS技術で形成するため、SAWより高価であるといわれている。
【0008】
BAWはSAWに比較し、許容挿入電力などの点で高周波特性に優れ、利用周波数において下記のような帯域の棲み分けがある。
Low Band (~1.0GHz):SAW
Middle Band (1.0~2.3GHz):SAW又はBAW
High Band (2.3GHz~):BAW
世界各国で使用するハイエンド・スマートフォンは、各国地域とキャリアに応じband(帯域)を切り替えて通信するため、10~20bandの複雑なRF(Radio Frequency)回路を内蔵している。回路基板配線の複雑化は信号干渉を生じるため、ハイエンド・スマートフォンでは、帯域や通信方式毎に、周波数フィルタ、アンプ、スイッチをまとめてモジュール化し、回路基板配線を単純化している。
またスマートフォンでは、厚さ6mm程度の筐体に、回路基板と表示素子を重ねて実装するため、モジュール厚は0.6~0.9mm程度に納める必要がある。
【0009】
ソレノイド型コイルとキャパシタを組み合わせたLCフィルタも、周波数フィルタとして使用できる。しかしながら、AWフィルタに比較し閾値特性がブロードなため、隣接する2帯域を同時使用するFDDに利用することはできなかった。ところが、1帯域で運用するTDDでは、LCフィルタを周波数フィルタとして用いることが可能である。
また、LCフィルタはAWフィルタに比較し、許容挿入電力、広通信帯域(ブロードバンド)、温度ドリフトなどの優位性を有する。一方、通過対象の周波数帯に対する減衰特性が穏やかであるため、これまでは受信規格を満足しない場合があったが、3.5GHz帯の標準仕様の最適化が行われたことにより、状況が好転し、LCフィルタは、今後普及するHigh Band(3.5~6.0 GHz)TDD用の周波数フィルタとして有望な技術となった。しかしながら、従来のLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)で製造するチップLCフィルタは、AWフィルタに比べサイズが大きく、特に厚みの問題から、ハイエンド・スマートフォンの薄型モジュールに搭載することは困難だった。
【0010】
同様に今後普及が進む、CA(Carrier Aggregation)は、複数bandの同時使用により高速通信を実現する技術であり。同時使用する複数bandの中には2.3~6.0 GHz 帯 TDDも含まれる。
CAの周波数フィルタでは、同時使用する他のband信号が抑制対象ノイズとなり、従来の外来信号に比べ、ノイズの強度が非常に大きい。
このため、モジュール化においても、従来帯域や通信方式単位から、CA単位での最適化に変更する必要がある。
【0011】
このように、スマートフォンの薄型モジュール内に、いかにしてLCフィルタを実装するかという課題がある。これに対し、回路基板にコイルを内蔵することで、よりコンパクトな回路構成を実現する技術が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2005-268447号公報
【文献】特開平7-193214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1においてポイントとなるのは、ガラスをコアとすることと、コアの周りを巻くようにソレノイド型コイルを形成する点である。しかし、この構成の場合にキーとなる技術は、いかにしてガラスに貫通孔を形成して、それを導電化して貫通電極を形成するかということである。
これについては、例えば特許文献2にあるように、最終形態よりも厚い状態のガラスコアにBoschプロセスなどにてガラスの厚さ方向の途中までの孔を形成し、その側壁や底面に連続した導電層を形成してから、孔開口部の反対側からガラスを研磨してゆき、底面部を超えて削り落とすことによって、導電化した貫通電極を得る方法がある。
【0014】
ところが、この方法にて貫通電極付きのガラスコアを得たのちに、貫通電極からガラス表裏面に対する導通を取ろうとすると、研磨にて露出した貫通電極の側において、
図1(c)に示すように、接続をとる部分が、貫通孔側壁上の導体層の断面部に限られるため、接続面積の小ささから、接続信頼性が不十分となる懸念がある。
図1中、符号11がガラスコアであり、符号39が貫通電極である。
また、Boschプロセスにおいては、ドライエッチングにてガラスに孔を形成してゆくため、長時間を要し、実用性、コストなどの問題がある。
【0015】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、より簡便なガラス貫通電極を提供し、かつその後の貫通電極との確実な電気的接続を提供するものである。また、貫通電極をもつガラスをコアとした、高周波LCフィルタ付き多層基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
課題解決のために、本発明の一態様は、第1面、第1面と反対側の第2面、第1面と第2面を貫通する貫通孔が設けられたガラス基板であって、貫通孔の孔径が、第1面側から第2面側に向けて小さくなっていて、かつ第2面において、孔を完全にふさぐ状態で、金属又はその化合物を主体とする層状構造体が形成されていることを要旨とする。
この構成によれば、貫通孔を完全にふさぐ蓋状の構造体が層状構造体で形成されているため、
図2(d)に示すように、貫通電極39と導通をとる場合に、貫通孔をふさいでいる蓋の部分全体を導通の対象とすることができる。この結果、導体層の断面のみを対象としていた場合と比較して、格段に高い信頼性をもった接続を得ることが可能である。
【0017】
また、本発明の態様においては、貫通孔の側壁に沿って配置された貫通電極を有し、貫通電極は、3つの層を有し、第1層は、貫通孔の側壁のガラス第1面側の一部及び、貫通孔の第2面側の開口部をふさいでいる貫通孔の第2面側の底に部分の一部若しくは全面に配置され、第2層は、第1層及び第1層から露出した側壁及び貫通孔の第2面側の底の部位を覆うように配置され、第3層は、第2層上に配置される。
この構成は、貫通孔の内部の導通をとる構成について述べたものであり、導体を導入するのが困難な貫通孔内に対し、どのようにして簡便かつ確実に導体層を形成するかを主張している。
また、本発明の一態様においては、上記金属又はその化合物を主体とする層状構造体において、その金属がニッケル、クロム又はその合金であることが好ましい。
【0018】
本発明の一態様によるガラスコア多層配線基板の製造方法の一つとして、後に実施形態で述べるように、予め内部に脆弱部を作ったガラスにフッ酸処理を加えることによって、脆弱部を優先的に除去して孔とするものがある。上記構成はそれを想定したものであり、フッ酸処理の際に、脆弱部を取り除いたフッ酸が、そこから先に侵入しないために、脆弱部に蓋をするようにフッ酸に対する耐腐食性を有する金属を配置しておくということを意味している。これによって、フッ酸によって脆弱部を取り除いたあとのガラスには、底部に耐フッ酸金属にて蓋をした有底ビアができることとなる。
【0019】
また、本発明の態様において、第1層から第3層の少なくとも1層が、それぞれ単層又は複数の層からなることが好ましい。
導電層を構成する各層には、それぞれ、下地層との密着を向上させるための層や、化学反応の触媒として作用する物質の層など、主たる層以外の層の介在が必要な場合がある。本構成においては、その可能性を鑑み、それらの層の存在によって、更に質の高いガラスコア多層配線基板ができるものとして、その権利を主張するものである。
また、本発明の態様において、貫通電極が有する第1層が、スパッタリングによってなる構成であっても良い。
【0020】
ガラス基板内の孔の、特に貫通孔の側壁に導電層を積層するのは、物理的な困難性を伴う。多くの場合、積層する化学種はもともとガラス材料の外側にあり、それをガラスコアの孔内に導入する場合の化学種の軌道が、ガラスコアの孔の側壁と平行若しくはそれに近い角度をなすため、化学種が側壁上に成膜するために必要なエネルギーのやりとりを、側壁を形成する化学種と行いにくいためである。
例えば、無電解めっきのような、化学種の運動が等方的な方法に関しては、この困難性は大きく軽減されるが、他方、ガラスコアに形成された孔の側壁に対して、十分な密着性を確保するのが難しくなる。
【0021】
スパッタリング法は、ガラスコアの外側からガラスコアに向かって直線的に化学種をとばし、衝突させて製膜する、異方性の強い成膜法ではあるが、衝突の際における化学種の運動エネルギーを大きくしやすく、密着性を強くすることが比較的結容易である。それに加え、チャンバー内に適度に気体分子を存在させることによって、それとの衝突によって化学種を散乱させ、本来は成膜をするのに不利な位置関係にある場所にも、ある程度成膜をすることが可能である。以上のような理由より、ガラスコア内の孔の導電膜形成にスパッタリングを用いることによって、より物性の優れたガラスコア多層基板を提供できることについて、その権利を主張するのが、この構成の意味するところである。
【0022】
また、本発明の態様において、貫通電極が有する第2層が無電解めっきによってなる構成であってもよい。
上記主張したスパッタリングによる導電層第1層は、比較的孔内の側壁にも成膜しやすい方法ではある。しかい、貫通孔の側壁上へ製膜する困難性は、その位置が孔開口部から遠くなればなるほど、また孔開口径が小さくなればなるほど高くなる。その結果、導電層第1層は
図3(b)に示すように、ガラスコア表面、ガラスコア内の貫通孔の底の部分、ガラスコア内の穴の側壁の開口径から近い部分に積層される場合が多くなる。
【0023】
そこで、
図3(c)に示すように、導電層第1層27,28が積層していない部分つまり、孔の側壁のうち孔の開口部から遠い部分に、他の方法によって、導電層あるいはそのシードとなる層を積層する必要が生じる。無電解めっき法は、化学種の運動が等法的であり、貫通孔の側壁への成膜に関しての困難性が低いという利点がある。半面、一般的にガラスに対する密着性が低いという点はあるが、ガラスに直接成膜される部分以外に導電層第1層の上に成膜される部分もあり、そこでの密着性が高くなるように、第1層、第2層を構成する物質を選んで、補うことも可能である。以上の理由より、ガラスコア内の孔の導電層の第2層29の積層方法として無電解めっき法を選択することによって、より高品質なガラスコア多層配線基板が得られる。
【0024】
また、本発明の態様において、貫通電極が有する第3層が電解めっきによってなる構成であってもよい。
第3層32は、導電層の主層であり、全体の厚さのほとんどを占めることを想定している(
図3(d)参照)。そして、第2層29を積層した段階において、孔の内壁すべては導電層で覆われている。そこで第3層の積層方法としては、積層対象部の導電化を前提として、ある程度厚い層を比較的早く成膜できる方法が適していると考えた。そこで、第3層の成膜方法として、電解めっきを採用することによって、より高品質なガラスコア多層配線基板が得られる。
【0025】
また、本発明の態様において、第1面及び第2面の上に、導体からなる配線層が配置され、更にその上に、絶縁体層と導体配線層を交互に積層することによってなる構成であっても良い。
本基板の機能を達成するためには、必ず必要な量の導体配線があり、基板全体の面積に制限があって、それに導体配線を収めることができない場合、あるいは配線層の機能上の制約によって、それを厚さ方向に重ねるように配置する必要がある場合などに、配線層をいくつかの層に分割して重ね、その間に絶縁体層を挟むことによって、短絡をさける構造とすることが解決法の一つとなる。このような多層構造をとることによって、より高品質で付加価値の高いガラスコア多層配線基板が得られる。
【0026】
また、本発明の態様において、絶縁体層を貫通する孔を設けた上で、その内部に導電物質を配置することによって貫通電極を設け、該貫通電極によって、導体配線層間の電気的導通をとる構成でもよい。
各配線層は、層のみでは、その間の絶縁体層によって絶縁しているが、必要な機能を発現するために、必要に応じて、適切な箇所で導通を取られねばならない。その方法として、絶縁体層内にビアを設け、それを導電物質で埋めることによって貫通電極にすることを採用することにより、より高品質なガラスコア多層配線基板が得られる。
【0027】
また、本発明の態様において、貫通電極と第1面、第2面上に設置された両配線層を接続することによって、ガラスコアを螺旋状に巻くようなソレノイド型コイルからなるインダクタを層状構造体内部に配置する構成でも良い。
コア材料としてガラスを採用する理由として、平滑な表面を持つため、その上に形成する配線層についても、高い寸法安定性などが期待できたり、その誘電率の低さから、高周波回路に対する適性が高いことが挙げられる。そのことを積極的に利用して、高周波用のインダクタをガラスコアの周りに作りこむことが可能となる。
【0028】
また、本発明の態様において、少なくとも一方の電極について、導体層の中にそれが配置され、それと平行なもう一方の電極が、誘電体層を挟んで配置されることによってキャパシタが形成され、該キャパシタが層状構造体内部に配置された構成としてもよい。
この構成によれば、ガラスの特性を活かして、高周波用部品を基板内に作りこむことが可能となる。
また、本発明の態様において、インダクタとキャパシタを、一対又はそれ以上、適切に接続することによって、周波数フィルタを構成し、該周波数フィルタが多層基板内部に配置された構成としても良い。
この構成によれば、ガラスコア多層配線基板内に、インダクタとキャパシタから構成される周波数フィルタを作りこむことで、良質なフィルタ内蔵基板が得られる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の態様によれば、より簡便なガラス貫通電極を提供し、かつその後の貫通電極との確実な電気的接続を有するガラスコア多層配線基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】従来技術による、貫通電極の製造方法の参考図である。
【
図2】本発明による、貫通電極の製造方法の参考図である。
【
図3】本発明による、ガラスコアの孔内への導電の手順についての参考図である。
【
図4】本発明の実施形態に含まれるキャパシタの断面図を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に含まれるインダクタの斜視図を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に含まれるバンドパスフィルタの回路図を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図8】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図9】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図10】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図11】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図12】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図13】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図14】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図15】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図16】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図17】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図18】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図19】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図20】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図21】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図22】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図23】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図24】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図25】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図26】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図27】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図28】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図29】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図30】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図31】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図32】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図33】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図34】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図35】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図36】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図37】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図38】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【
図39】本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明は、これらによって限定されるものではない。
また、本明細書中、「上」とはガラスコアから遠ざかる方向をいい、「下」とはガラスコアに近づく方向をいう。
【0032】
まず高周波フィルタとしての回路設計を行うため、通過又は遮断する電波の周波数帯域に応じて、必要なキャパシタとインダクタンスを、シミュレーションソフトによって算出する。例えば3300MHz以上、3700MHz以下の帯域を透過するフィルタについては、
図6に示したような回路構成となる。そしてそれを実現するために、キャパシタについては、電極の大きさ、電極間の距離、誘電体の誘電率を、インダクタについては、巻きの断面積、巻き数、長さなどを、加工性やスペース効率を加味しながら設計する。その設計の例を表1及び表2に示す。なお、表2においてインダクタンスL1とL2の巻き数が空欄となっているが、これは両素子に求められるインダクタンスが非常に小さいため、1巻きすら必要でなく、直線状の配線の状態で生じる自己インダクタンスで足りることを意味している。
【0033】
【0034】
【0035】
高周波モジュール用基板に搭載される他の帯域用のBPFについても、同様の手順によって、キャパシタ、インダクタンスを計算し、必要な回路の設計を行う(数値については省略)。
【0036】
次に、ガラス基板をコア材として、その両面に配線層と絶縁樹脂層を交互に形成した基板を例にとって、LC回路を構成する回路素子としてのキャパシタとインダクタの例を、それぞれ説明する。
キャパシタについては、二枚の導体板の間に誘電体を挟んだ構造とする。キャパシタの例としては、
図4に示すように、不図示のガラス基板直上、又はガラス基板上に形成した絶縁樹脂層11の上に、下電極30を積層して導体パターンを形成し、かかる導体パターンの上に誘電体層33を積層し、更にその上に上電極となる導体36を積層したものである。下電極30と上電極36は、一般的にシード層と導電層からなる多層構造を有する。
【0037】
インダクタについては、らせん状のコイルと同様の性能を、貫通穴を備えた基板に内蔵することができる。
図5においては、2列に並んだ貫通穴を有する平行平板状のガラス基板を透明化して図示している。
図5において、ガラス基板の表裏面において隣接する貫通穴の開口部同士を接続するように配線22,31(配線層)を形成し、またガラス基板の表裏面を連通する貫通穴の内壁に貫通電極39としての導体層を形成し、貫通導電ビア(以下TGV)とする。
【0038】
ここで、
図5において、1列目n番目のTGVを、TGV(1,n)とし、2列目n番目のTGVを、TGV(2,n)とする。裏面側の配線22によりTGV(1,n)とTGV(2,n)とを接続し、表面側の配線31によりTGV(1,n)とTGV(2,n+1)とを接続すると、配線22と、TGV(1,n)と、配線21と、TGV(1,n+1)とで、ガラス基板の内部と表面を導体が一周(一巻き)する、オープン回路を構成することができる。この回路に電流を流すことで、インダクタとして機能させることができる。インダクタの特性は、例えば、巻き数を変えることで調整することができる。
【0039】
次に、本実施形態のガラスコア多層配線基板の構成について説明する。
本実施形態のガラスコア多層配線基板は、第1面と第1面と反対側の第2面とを有し、第1面側から第2面側に向けて孔径が小さくなる貫通孔が設けられたガラス基板と、貫通孔の側壁に沿って配置された貫通電極と、ガラス基板の両面にそれぞれ、導電材料(金属又はその化合物を主体とする材料)で形成された層状構造体と、を有する。第2面側の層状構造体は、貫通孔の開口部を塞ぐ状態で形成されて、貫通孔の第2面側の底の部位を構成する。貫通電極は、3つの層を有する。3つの層のうちの第1層は、貫通孔の側壁のガラス第1面側の一部及び、貫通孔の第2面側の開口部を塞いでいる貫通孔の第2面側の底の部分の一部若しくは全面に配置され、3つの層のうちの第2層は、第1層及び第1層から露出した貫通孔の側壁及び貫通孔の第2面側の底の部位を覆うように配置され、3つの層のうちの第3層は、第2層上に配置される。
【0040】
層状構造体を構成する導電材料が有する金属は、ニッケル、クロム又はその合金であることが好ましい。
3つの層のうちの少なくとも1つの層は、複数の層からなる。
層状構造体は、第1面及び第2面の上に配置された導体からなる配線層と、その上に交互に積層された絶縁体層及び導体配線層とを有する。
絶縁体層を貫通する孔と、その孔の内部に配置された導電物質からなる貫通電極とを有し、貫通電極によって、第1面及び第2面の上に配置された配線層間が電気的で導通されていることが好ましい。
【0041】
貫通電極と第1面、第2面上に設置された両配線層が接続されることによって、ガラスコアを螺旋状に巻くようなソレノイド型コイルからなるインダクタが形成されていても良い。
一方の電極が導体層の中に配置され、それと平行なもう他方の電極が、誘電体層を挟んで配置されることによってキャパシタが形成され、該キャパシタが層状構造体内部に配置されていてもよい。
【0042】
貫通電極と第1面、第2面上に設置された配線とが接続されることによって、ガラスコアを螺旋状に巻くようなソレノイド型コイルからなるインダクタが形成され、一方の電極が導体層の中に配置され、それと対になる他方の電極が、誘電体層を挟んで配置されることによってキャパシタが形成され、該キャパシタが層状構造体内部に配置される。インダクタとキャパシタが、一対又はそれ以上接続されて、周波数フィルタを構成し、該周波数フィルタが層状構造体内部に配置されていてもよい。
第1層は、例えば、スパッタリングによってなる。
第2層は、例えば無電解めっきによってなる。
第3層は、電解めっきによってなる。
【0043】
次に、本実施形態のガラスコア多層配線基板の製造方法を、
図7~
図39を参照して説明する。なお、以下に示す寸法等は、参考的な値であり、本発明はそれに限定されるものではない。
まず、
図7(a)に示すように、低膨張のガラスコア11(厚さ500μmで320mm×400mmの長方形の板状、CTE:3.5ppm/K)を準備する。
次に、
図7(b)に示すように、ガラスコア11の第1面12側からフェムト秒レーザーを照射し、後のフッ酸によるガラスエッチングの際に、貫通孔の起点となるレーザー改質部14(ガラスコア内の脆弱部14)を形成する。フェムト秒レーザーの焦点は、下降中に連続して動かし、改質部がガラスコアの第1面からの深さ200μmの位置から第2面の深さまで、連続的に形成されるようにした。
【0044】
次に、
図8(c)に示すように、ガラスコアの第2面13全面に、スパッタリングにて、200nmの厚さにてクロム層15(耐フッ酸層15)を形成し、続いて、
図8(d)に示すように、スパッタリングにて、200nmの厚さにて銅層16を形成した。クロム層は、フッ酸に対する耐腐食性があるため、後のガラスエッチングの際に、エッチングを止める効果がある。
続いて、
図9(e)に示すように、ガラスコアの第2面上のスパッタ層の上に、フォトレジスト17を塗布し、更に
図9(f)に示すように、後に配線層としたい部分が露出するように、フォトリソグラフィーによるパターニングを施した。
【0045】
続いて、
図10(g)に示すように、電解銅めっきによって、ガラスコア第2面側のフォトレジストパターンから露出した部分に、12μmの厚さにて銅配線層18(配線層)を形成した。その後で、
図10(h)に示すように、レジストパターンは剥離除去した。
この状態で、ガラスコア第2面上の配線パターンでない部分には、耐フッ酸用のクロム層及びその上スパッタ銅層が積層されている。そこで、
図11(i)に示すように、ウエットエッチング処理にて、それらの層を除去する。この際に、配線パターンの最上層にある電解めっきによる銅層も、若干溶解するが、クロム層、スパッタ銅層に比べて、その厚さが非常に大きいため、エッチング条件、エッチング時間を適切に選べば、不要なクロム層、スパッタ銅層のみを除去して、銅パターンとその下にあるクロム層、スパッタ銅層はガラスコア第2面上に残る。
【0046】
続いて、
図11(j)に示すように、ガラスコア第2面側に絶縁樹脂シートを積層して、絶縁樹脂層19を形成した。実例においては、絶縁樹脂シートとしては、味の素ファインテクノ株式会社製の絶縁樹脂(商品名「ABF-GX-T31R」)を使用し、積層に際しては真空プレス式のラミネータを用いたが、必ずしもこれに限るものではなく、適宜選択してよい。絶縁樹脂シートの厚さは25μmとしたが、これに関しては、ガラスコア第2面上の配線層を完全に覆う厚さが必要である。実施例の場合は、配線層の厚さは、耐フッ酸層などの下地も込みで、12μm程度であるので、絶縁樹脂シートの厚さは、25μmで十分と判断した。
【0047】
続いて、
図12(k)に示すように、ガラスコア第2面側の絶縁樹脂層に導通のための貫通孔20(絶縁樹脂層に設けられたビア20)を加工した。加工に際しては、レーザー加工機を使用して、孔径は入り口側が60μmで、孔底側が45μmのテーパー形状となるように設定した。ただし、加工方法や孔径、形状に関しては、これに限るものではなく、目的に合わせて、適宜選択してよい。なお、図示はしていないが、レーザー加工の後に、過マンガン酸カリウム水溶液を主成分とする液によって、デスミア加工を実行した。目的は、レーザー加工による樹脂の溶解分を孔底部分から取り除き、孔底部に導体を完全に露出させることと、樹脂表面を適度に粗らして、後述する配線シード層の密着性を高めるためである。
【0048】
続いて、
図12(l)に示すように、ガラスコア第2面側の絶縁樹脂層の表面及び、樹脂層に加工した孔の内壁に対し、導電シード層として、無電解めっき法にて銅層21を積層して配線層を形成した。層の厚さは500nmに設定した。なお、導電シード層の形成については、材料、加工法ともに、これに限るものではなく、目的に合わせて適宜選択してよい。
続いて、
図13(m)に示すように、ガラスコア第2面側に積層されている樹脂層の上に、フォトレジスト17によるパターンを形成し、配線層としたいところのみが露出するようにした。次に、
図13(n)に示すように、電解メッキによって、フォトレジストパターンから露出した部分に電解銅メッキを施した。銅厚は12μmに設定した。なお、銅厚や積層方法は、これに限るものではなく、目的に合わせて適宜選択してよい。
【0049】
その後、
図14(O)に示すように、フォトレジストパターンは剥離除去した。ここまでの工程によって、ガラスコア第2面側に積層された絶縁樹脂層の上には、配線パターンが形成された部分と、導電シード層が施された部分が混在した状態になっている。
続いて、
図14(p)に示すように、ソフトエッチング処理によって、ガラスコアの第2面上の絶縁樹脂上面に露出した導電シード層を溶解除去した。なお、ソフトエッチング処理によっては、配線パターンも若干は溶解するが、導電シード層よりも厚さが大きく上回るため、配線パターンが除去されることはなく、露出した導電シード層のみが除去される。
【0050】
続いて、
図15(q)及び(r)に示すように、ガラスコア第2面側の導体配線層の上全体に接着層24を設け、その上にキャリアガラス25を敷設する。キャリアガラス25は後で除去するため、接着層24は仮貼り可能なものとし、キャリアガラスの厚さは1mmとした。キャリアガラスの厚さについては、特に制限はなく、ハンドリングや基板の剛性その他の条件によって、目的にあったものを選べばよい。
続いて、
図16(s)に示すように、基板にフッ酸エッチングを施し、ガラスコア11を第1面側から薄くしていった。加工条件を調整し、ガラスコア第1面全体が均等に薄化するようにしたため、エッチングがガラスコア内部の改質部に至るまでは、ガラスは第2面と平行に薄化されてゆくが、エッチングが改質部に至ると、そこのエッチングレートが高いために、あたかも、ガラスに孔をあけながら薄化をしているような状態になる。ガラスのフッ酸エッチングに関しては、予め条件出しをしておき、ガラス厚が200μmになった時点で、第1面側の孔径が90μm、第2面側の孔径が70μmにてガラスコアに貫通孔が形成されるように調整をしておいた。
【0051】
続いて、
図17(t)、
図18(u)に示すように、ガラスコア第1面の孔内壁を含む表面に、第1層としてのチタン層27と銅層28を積層した。積層はスパッタリングにて行い、チタン層の厚さは50nm、銅層の厚さは300nmに設定した。事前の条件出しによって、この加工条件にて成膜した場合、孔の内壁への膜の付きまわりについては、側壁が孔入り口から約50nmまで届き、孔底については、孔でない表面と同様に成膜できることが確認済みであった。
続いて、
図19(v)に示すように、ガラスコア第1面の表面と孔内に無電解めっきにて、第2層としてのニッケル層29を積層した。ニッケルの厚さは200nmとした。
【0052】
続いて、
図20(w)に示すように、ガラスコア第1面側にフォトレジスト層を設け、後に配線パターンとするところが露出するように、フォトリソグラフィーのパターニングを実行した。
続いて、
図21(x)に示すように、ガラスコアの第1面のフォトレジストパターンのうちレジストが除去されて下地が露出しているところに電解めっき法にて、銅を積層した。銅の厚さは12μmを狙い値として、予め条件設定を行っておいた。
続いて、
図22(y)に示すように、多層基板に内蔵されるキャパシタの両電極に挟まれる誘電体層33の形成を実行した。手順としては、不要な箇所は、あとで除去するものとして、まずはガラスコアの第1面側最上面全体に、誘電体層を形成した。誘電体としては、窒化アルミニウムを選択し、スパッタリングを用いて積層し、厚さは200nmに設定した。
【0053】
続いて、
図23(z)に示すように、誘電体層の上前面にチタン層34を形成した。これはこの後でキャパシタの上電極を形成するための密着層の役割を持っている。積層する厚さは50nmに設定し、積層方法はスパッタリングを選択した。
続いて、
図24(aa)に示すように、上記のガラスコア第1面上最上層のチタン層の上全面に銅層35を積層した。これは、後の銅の電解銅めっきのための導電シードの役割を持つ。積層する厚さは300nmとし、積層方法はスパッタリングを選択した。
続いて、
図25(ab)に示すように、上記のガラスコア第1面上の最上層にあるスパッタ銅層の上に、フォトレジスト層を形成し、その後にフォトリソグラフィーによって、後に電解銅めっきによってキャパシタの上電極を形成する部分のフォトレジストを取り除いた形状にパターニングした。
【0054】
続いて、
図26(ac)に示すように、ガラスコア第1面に対して、電解銅めっきを施し、キャパシタ上電極36を形成した。めっき厚としては、8μmと設定した。電解めっきの後、
図27(ad)に示すように、レジストパターンを剥離した。この段階におけるガラスコア第1面の状態として、キャパシタ上電極が形成された部分以外には、余分な層が積層されていることになる。まず、ガラスコア第1面に配線パターンが形成されている部分については、その上に、誘電体層、チタン層、銅層が余分に積層されており、ガラスコア第1面に配線パターンがない部分については、ガラス表面上に下から、チタン層、銅層、ニッケル層、誘電体層、チタン層、銅層の順に余分な層が積層されている。そこで、次からの工程で、それら余分な層を、順次除去していった。
【0055】
まず、
図28(ae)に示すように、フォトレジスト17によって、キャパシタ上電極36及びその下の誘電体層33、キャパシタ下電極30を覆い、後に不要な層を除去する工程において、一緒に除去されないように保護した。
続いて、
図29(af)に示すように、ソフトエッチングによって、不要な層のうち、一番上に位置しているスパッタリングによる銅層35を除去した。
続いて、
図30(ag)に示すように、チタン層34及びその下の窒化アルミニウムからなる誘電体層33を除去した。方法としてはドライエッチング法を選択したが、これについては、この方法に限定されるものではなく、適宜自由に選択が可能である。
【0056】
続いて、
図31(ah)に示すように、キャパシタを覆っているフォトレジスト17を除去した。これは、今後に不要な層を除去する工程においては、配線パターンを形成している銅層が、それ自体とその下の層を保護する役割を担うことができるからである。
続いて、
図32(ai)に示すように、不要なニッケル層29、銅層28、チタン層27を順次除去していった。方法は、それぞれの層について、選択的な腐食性をもつ別々の薬液を用いたが、これについては、特に制約を加えるものではなく、例えば、複数の層を同時に除去できる薬液があれば、それを用いるのは自由である。
【0057】
続いて、
図33(aj)に示すように、ガラスコア第1面側に絶縁樹脂シートを積層して、絶縁樹脂層を形成した。実施例においては、絶縁樹脂シートとしては、味の素ファインテクノ株式会社製の絶縁樹脂(商品名「ABF-GX-T31R」)を使用し、積層に際しては真空プレス式のラミネータを用いたが、必ずしもこれに限るものではなく、適宜選択してよい。絶縁樹脂シートの厚さは25μmとしたが、これに関しては、ガラスコア第1面上の配線層、キャパシタを完全に覆える厚さが必要である。実施例の場合は、ガラスコア第1面表面からキャパシタ上電極までの厚さは、各下地層なども込みで、21μm程度であるので、絶縁樹脂シートの厚さは、25μmで十分と判断した。
【0058】
続いて、
図34(ak)に示すように、ガラスコア第1面側の絶縁樹脂層に導通のための貫通孔20を加工した。加工に際しては、レーザー加工機を使用して、孔径は入り口側が60μmで、孔底側が45μmのテーパー形状となるように設定した。ただし、加工方法や孔径、形状に関しては、これに限るものではなく、目的に合わせて、適宜選択してよい。なお、図示はしていないが、レーザー加工の後に、過マンガン酸カリウム水溶液を主成分とする液によって、デスミア加工を行った。目的は、レーザー加工による樹脂の溶解分を孔底部分から取り除き、孔底部に導体を完全に露出させることと、樹脂表面を適度に粗らして、後述する配線シード層の密着性を高めるためである。
【0059】
続いて、
図35(al)に示すように、ガラスコア第1面側の絶縁樹脂層の表面及び、樹脂層に加工した孔の内壁に対し、導電シード層として、無電解めっき法にて銅層21を積層して配線層を形成した。層の厚さは500nmに設定した。なお、導電シード層の形成については、材料、加工法ともに、これに限るものではなく、目的に合わせて適宜選択してよい。
続いて、
図36(am)に示すように、ガラスコア第1面側に積層されている樹脂層の上に、フォトレジストによるパターンを形成し、配線層としたいところのみが露出するようにした。
【0060】
次に、
図37(an)に示すように、電解メッキによって、フォトレジストパターンから露出した部分に電解銅メッキを施した。銅厚は12μmに設定した。なお、銅厚や積層方法は、これに限るものではなく、目的に合わせて適宜選択してよい。その後、
図38(ao)に示すように、フォトレジストパターンは剥離除去した。
続いて、
図39(ap)に示すように、ガラスコア第1面側に貼付してあったキャリアガラス25を除去した。実施例の場合は、機械的な方法によって除去したが、特にこれに限るわけではなく、適宜目的にあった方法を選択してよい。以上をもって、ガラスコア多層基板が完成した。
【0061】
なお、実例においては、多層基板の層構成は、ガラスコアとその表裏面に直接設置された配線層、加えて、ガラスコア両面に設けられた絶縁体層とその上に設けられた配線層で成り立っているが、必要に応じて、更にこれに絶縁体層、配線を重ねていってもよい。
【符号の説明】
【0062】
11・・・ガラスコア
12・・・ガラスコアの第1面
13・・・ガラスコアの第2面
14・・・ガラスコア内の脆弱部
15・・・耐フッ酸層
16・・・耐フッ酸層上のスパッタリングによる銅層
17・・・フォトレジスト
18・・・ガラスコア第2面上の銅配線層
19・・・絶縁樹脂層
20・・・絶縁樹脂層に設けられたビア
21・・・銅層
22・・・ガラスコア第2面上に積層した絶縁樹脂層状の銅配線層
23・・・ガラスコア第2面上に積層した絶縁樹脂層内の貫通電極
24・・・接着層
25・・・キャリアガラス
26・・・ガラスコア内のビア
27・・・スパッタチタン層(貫通電極第1層の一構成要素)
28・・・スパッタ銅層(貫通電極第1層の一構成要素)
29・・・無電解ニッケル層(貫通電極第2層)
30・・・キャパシタ下電極
31・・・ガラスコア第1面上の銅配線層
32・・・電解銅層(貫通電極第3層)
33・・・誘電体層
34・・・誘電体層上のスパッタチタン層
35・・・誘電体層上のスパッタチタン層上のスパッタ銅層
36・・・キャパシタ上電極
37・・・ガラスコア第1面上に積層した絶縁樹脂層状の銅配線層
38・・・ガラスコア第1面上に積層した絶縁樹脂層内の貫通電極
39・・・ガラスコア内の貫通電極