(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体製造装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/50 20060101AFI20231226BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20231226BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20231226BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20231226BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20231226BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01L21/50 A
H01L25/04 C
H01L23/12 Z
H05K3/34 501Z
H05K1/14 E
(21)【出願番号】P 2019209021
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】西田 祐平
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2015/151235(JP,A1)
【文献】再公表特許第2018/011853(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0361442(US,A1)
【文献】再公表特許第2013/118478(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0268603(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/50
H01L 21/447-21/449
H01L 21/60-21/607
H01L 23/00-21/52
H01L 25/00-21/16
H01L 27/00
H05K 1/14-3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁回路基板と、
前記第1絶縁回路基板の上面に搭載された第1半導体チップと、
前記第1絶縁回路基板の上方に配置されたプリント基板と、
前記プリント基板に挿入され、前記第1絶縁回路基板の上面に一端が接合された第1外部端子と、
前記プリント基板に挿入され、前記第1半導体チップの上面に一端が接合された第1ピンと、
前記第1絶縁回路基板と離間して配置された第2絶縁回路基板と、
前記第2絶縁回路基板の上面に搭載された第2半導体チップと、
前記プリント基板に挿入され、前記第2絶縁回路基板の上面に一端が接合された第2外部端子と、
前記プリント基板に挿入され、前記第2半導体チップの上面に一端が接合された第2ピンと、
を備え、
前記第1絶縁回路基板及び前記プリント基板が、互いに相補的な反りを有
し、
前記第2絶縁回路基板及び前記プリント基板が、互いに相補的な反りを有し、
前記第1絶縁回路基板が正反りを有し、
前記第2絶縁回路基板が負反りを有し、
前記プリント基板がうねりを有し、前記プリント基板の前記第1絶縁回路基板に対向する一部が下側に凸であり、前記プリント基板の前記第2絶縁回路基板に対向する一部が上側に凸である
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
第1絶縁回路基板と、前記
第1絶縁回路基板の上面に搭載された
第1半導体チップと、前記
第1絶縁回路基板の上方に配置されたプリント基板と、前記プリント基板に挿入され、前記
第1絶縁回路基板の上面に一端が接合された
第1外部端子と、前記プリント基板に挿入され、前記
第1半導体チップの上面に一端が接合された
第1ピンと
、前記第1絶縁回路基板と離間して配置された第2絶縁回路基板と、前記第2絶縁回路基板の上面に搭載された第2半導体チップと、前記プリント基板に挿入され、前記第2絶縁回路基板の上面に一端が接合された第2外部端子と、前記プリント基板に挿入され、前記第2半導体チップの上面に一端が接合された第2ピンとを備え、前記第1絶縁回路基板及び前記プリント基板が、互いに相補的な反りを有し、前記第2絶縁回路基板及び前記プリント基板が、互いに相補的な反りを有し、前記第1絶縁回路基板が正反りを有し、前記第2絶縁回路基板が負反りを有し、前記プリント基板がうねりを有し、前記プリント基板の前記第1絶縁回路基板に対向する一部が下側に凸であり、前記プリント基板の前記第2絶縁回路基板に対向する一部が上側に凸である半導体装置を製造するための半導体製造装置であって、
複数の絶縁回路基板の形状及び複数のプリント基板の形状をそれぞれ測定する測定部と、
前記複数の絶縁回路基板の形状の測定結果に基づき、前記
第1ピンと前記
第1半導体チップを接合
し、且つ前記第2ピンと前記第2半導体チップを接合するための加熱時における前記複数の絶縁回路基板のそれぞれの反り方向を予測すると共に、前記複数のプリント基板の形状の測定結果に基づき、前記加熱時における前記複数のプリント基板のそれぞれの反り方向を予測するコントローラと、
前記複数の絶縁回路基板及び前記複数のプリント基板から、前記予測された反りが
正反りである前記第1絶縁回路基板、前記予測された反りが負反りである前記第2絶縁回路基板、及び前記予測された反りがうねりである前記プリント基板の組み合わせを選択する組立部と、
を備えることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項3】
第1絶縁回路基板と、前記
第1絶縁回路基板の上面に搭載された
第1半導体チップと、前記
第1絶縁回路基板の上方に配置されたプリント基板と、前記プリント基板に挿入され、前記
第1絶縁回路基板の上面に一端が接合された
第1外部端子と、前記プリント基板に挿入され、前記
第1半導体チップの上面に一端が接合された
第1ピンと
、前記第1絶縁回路基板と離間して配置された第2絶縁回路基板と、前記第2絶縁回路基板の上面に搭載された第2半導体チップと、前記プリント基板に挿入され、前記第2絶縁回路基板の上面に一端が接合された第2外部端子と、前記プリント基板に挿入され、前記第2半導体チップの上面に一端が接合された第2ピンとを備え、前記第1絶縁回路基板及び前記プリント基板が、互いに相補的な反りを有し、前記第2絶縁回路基板及び前記プリント基板が、互いに相補的な反りを有し、前記第1絶縁回路基板が正反りを有し、前記第2絶縁回路基板が負反りを有し、前記プリント基板がうねりを有し、前記プリント基板の前記第1絶縁回路基板に対向する一部が下側に凸であり、前記プリント基板の前記第2絶縁回路基板に対向する一部が上側に凸である半導体装置の製造方法であって、
複数の絶縁回路基板の形状をそれぞれ測定する工程と、
複数のプリント基板の形状をそれぞれ測定する工程と、
前記複数の絶縁回路基板の形状の測定結果に基づき、前記
第1ピンと前記
第1半導体チップを接合
し、且つ前記第2ピンと前記第2半導体チップを接合するための加熱時における前記複数の絶縁回路基板のそれぞれの反り方向を予測する工程と、
前記複数のプリント基板の形状の測定結果に基づき、前記加熱時における前記複数のプリント基板のそれぞれの反り方向を予測する工程と、
前記複数の絶縁回路基板及び前記複数のプリント基板から、前記予測された反りが
正反りである前記第1絶縁回路基板、前記予測された反りが負反りである前記第2絶縁回路基板、及び前記予測された反りがうねりである前記プリント基板の組み合わせを選択する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用の半導体チップが搭載された絶縁回路基板と、プリント基板とを有する電力用の半導体装置(半導体モジュール)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力用の半導体チップが搭載された絶縁回路基板と、プリント基板とを有する電力用の半導体装置が知られている。プリント基板にはピンが挿入され、ピンの一端がはんだ等の接合材を介して半導体チップに接合されている。
【0003】
このような半導体装置では、プリント基板及び絶縁回路基板を構成する各部材の熱膨張係数、配線パターン形状や厚みの違いに起因して、半導体装置の組み立て時にプリント基板及び絶縁回路基板のそれぞれが反る場合がある。プリント基板及び絶縁回路基板のそれぞれの反り(歪み)が大きい場合、プリント基板に挿入されたピンと、絶縁回路基板に搭載された半導体チップとが離間し、オープン不良が発生する場合がある。
【0004】
オープン不良の発生を防止するため、半導体装置の組み立て前における絶縁回路基板及びプリント基板の初期の反りをそれぞれ測定し、測定された反りが、オープン不良が発生しなくなる反り量の実績から予め決定した規格(上下限値)に収まるか判定することにより、極力平坦な部材を選別している。しかし、規格外と判定された絶縁回路基板及びプリント基板は廃棄となり、歩留まりが低下する。
【0005】
特許文献1には、下に凸の配線基板の下面に複数配置された外部端子の背丈を、半導体装置中央から外周に向かうにつれ、徐々に背丈が高くなるように形成することが開示されている。特許文献2には、導電パターン付絶縁基板及び銅ベースの反りに起因して発生する半田のボイドを、導電パターン付絶縁基板に加圧力を加えることで低減する方法が開示されている。特許文献3には、半導体チップが実装された絶縁基板と、絶縁基板の上方に配置されたプリント基板を備えた半導体モジュールが開示されている。特許文献4には、半導体素子を実装する2つのヒートスプレッダと、2つのヒートスプレッダ間の樹脂との熱膨張係数の違いに起因する熱応力による反りを抑制するために、2つのヒートスプレッダ間に補強部材を備えることが開示されている。特許文献5には、プリント基板の反りを抑制するために、プリント基板の外周側にフレームを周回するように形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-164473号公報
【文献】特開2013-157377号公報
【文献】国際公開第2014/061211号
【文献】特開2013-232495号公報
【文献】特開2016-46509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、プリント基板及び絶縁回路基板が反りを有する場合に、プリント基板に挿入されたピンと絶縁回路基板上に搭載された半導体チップとのオープン不良を防止することができ、歩留まりを向上させることができる半導体装置、半導体製造装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、(a)絶縁回路基板と、絶縁回路基板の上面に搭載された半導体チップと、(b)絶縁回路基板の上方に配置されたプリント基板と、(c)プリント基板に挿入され、絶縁回路基板の上面に一端が接合された外部端子と、(d)プリント基板に挿入され、半導体チップの上面に一端が接合されたピンとを備え、絶縁回路基板及びプリント基板が、互いに相補的な反りを有する半導体装置であることを要旨とする。
【0009】
本発明の他の態様は、絶縁回路基板と、絶縁回路基板の上面に搭載された半導体チップと、絶縁回路基板の上方に配置されたプリント基板と、プリント基板に挿入され、絶縁回路基板の上面に一端が接合された外部端子と、プリント基板に挿入され、半導体チップの上面に一端が接合されたピンとを備える半導体装置を製造するための半導体製造装置であって、(a)複数の絶縁回路基板の形状及び複数のプリント基板の形状をそれぞれ測定する測定部と、(b)複数の絶縁回路基板の形状の測定結果に基づき、ピンと半導体チップを接合するための加熱時における前記複数の絶縁回路基板のそれぞれの反り方向を予測すると共に、複数のプリント基板の形状の測定結果に基づき、加熱時における複数のプリント基板のそれぞれの反り方向を予測するコントローラと、(c)複数の絶縁回路基板及び複数のプリント基板から、予測された反りが互いに相補的な絶縁回路基板及びプリント基板の組み合わせを選択する組立部とを備える半導体製造装置であることを要旨とする。
【0010】
本発明の更に他の態様は、絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板の上面に搭載された半導体チップと、絶縁回路基板の上方に配置されたプリント基板と、プリント基板に挿入され、絶縁回路基板の上面に一端が接合された外部端子と、プリント基板に挿入され、半導体チップの上面に一端が接合されたピンとを備える半導体装置の製造方法であって、(a)複数の絶縁回路基板の形状をそれぞれ測定する工程と、(b)複数のプリント基板の形状をそれぞれ測定する工程と、(c)複数の絶縁回路基板の形状の測定結果に基づき、ピンと半導体チップを接合するための加熱時における複数の絶縁回路基板のそれぞれの反り方向を予測する工程と、(d)複数のプリント基板の形状の測定結果に基づき、加熱時における複数のプリント基板のそれぞれの反り方向を予測する工程と、(e)複数の絶縁回路基板及び複数のプリント基板から、予測された反りが互いに相補的な絶縁回路基板及びプリント基板の組み合わせを選択する工程とを含む半導体装置の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プリント基板及び絶縁回路基板が反りを有する場合に、プリント基板に挿入されたピンと絶縁回路基板上に搭載された半導体チップとのオープン不良を防止することができ、歩留まりを向上させることができる半導体装置、半導体製造装置及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図2】比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図3A】正反り状態の絶縁回路基板を示す断面図である。
【
図3B】負反り状態の絶縁回路基板を示す断面図である。
【
図4A】正反り状態のプリント基板を示す断面図である。
【
図4B】負反り状態のプリント基板を示す断面図である。
【
図5】第1実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図6A】比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図6B】比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図7】プリント基板及び絶縁回路基板の反りの関係を表す表である。
【
図8】絶縁回路基板の反り量と個数の関係を表すグラフである。
【
図9】第1実施形態に係る半導体製造装置を示す概略図である。
【
図10】プリント基板及び絶縁回路基板の反りの温度変化を表す表である。
【
図11A】一括はんだ接合前の半導体装置を示す断面図である。
【
図12A】一括はんだ接合前の半導体装置を示す断面図である。
【
図13】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図14】比較例に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図15】第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図16】比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図17】第2実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図18】第2実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図19】第2実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図20】第2実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図21】比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図22】比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図23】比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図24】比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図25】比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図26】比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図27】比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図28】プリント基板及び絶縁回路基板の反りの関係を表す表である。
【
図29】プリント基板及び絶縁回路基板の反りの関係を表す表である。
【
図30】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図31】比較例に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【
図32A】第2実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図32B】第2実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を示す
図32Aに引き続く断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、図面を参照して第1及び第2実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、以下の説明における「上側導電層」や「下側導電層」における「上」「下」は単なる便宜上の選択に過ぎず、地球の重力の方向に対して定義されるものではない。よって、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。
【0015】
(第1実施形態)
<半導体装置>
第1実施形態に係る半導体装置に係る半導体装置(半導体モジュール)は、
図1に示すように、絶縁回路基板1と、絶縁回路基板1の上面に搭載された半導体素子(半導体チップ)2a,2bと、絶縁回路基板1の上面に対向して配置されたプリント基板3とを備える。第1実施形態に係る半導体装置に係る半導体装置は、例えば3相ブリッジ回路の上下アームの一部を構成する。
【0016】
なお、
図1では図示を省略するが、絶縁回路基板1及びプリント基板3の周囲を封止する封止ケースが設けられていてもよい。封止ケースとしては、例えば耐熱性が高く硬質な熱硬化性樹脂等の樹脂材料が使用可能であり、具体的にはエポキシ樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂等が使用可能である。また、絶縁回路基板1の下面は、放熱用金属ベースを介して冷却フィンに取り付けられてもよい。或いは、絶縁回路基板1の下面は、冷却フィンに直接取り付けられてもよい。
【0017】
絶縁回路基板1は、例えば直接銅接合(DCB)基板や活性ろう付け(AMB)基板等であってもよい。絶縁回路基板1は、絶縁基板11と、絶縁基板11の上面に配置された上側導電層12a,12bと、絶縁基板11の下面に配置された下側導電層13とを有する。
【0018】
絶縁基板11は、例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si
3N
4)等の絶縁性セラミクスからなる板状部材である。上側導電層12a,12b及び下側導電層13としては、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の導体箔等が使用可能である。
図1では、上側導電層12a,12bが2つの場合を例示するが、上側導電層12a,12bの数や配置位置は特に限定されない。
【0019】
上側導電層12a上には、はんだ等の接合材7a,7bを介して、半導体チップ2a,2bが配置されている。接合材7a,7bは、はんだに限定されず、銀(Ag)や銅(Cu)系の焼結材であってもよい。
【0020】
半導体チップ2a,2bのそれぞれは、例えばMOSFET又はIGBT等のトランジスタや、サイリスタ等のパワー半導体素子で構成することができる。半導体チップ2a,2bのそれぞれは、例えばシリコン(Si)基板で構成してもよく、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等のワイドバンドギャップ半導体基板で構成してもよい。なお、半導体チップ2a,2bの種類や個数、配置位置は特に限定されない。
【0021】
プリント基板3は、絶縁層31と、絶縁層31の上面側に配置された第1配線層32と、絶縁層31の下面側に配置された第2配線層33とを有する。プリント基板3は、2層以上の絶縁層を有し、絶縁層と配線層とを交互に積層した多層基板であってもよい。
【0022】
絶縁層31としては、ガラス繊維とエポキシ樹脂との組み合わせや、ガラス繊維とポリイミド樹脂との組み合わせ等からなる樹脂基板であってよい。また、絶縁層31は、Al2O3、AlN、Si3N4等を主成分としたセラミクス基板であってもよい。
【0023】
第1配線層32及び第2配線層33の材料としては、例えば銀(Ag)や銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の金属等の導電材料が使用可能である。第1配線層32及び第2配線層33は、Cu板やAl板の張り合わせでもよく、Cuやニッケル(Ni)、錫(Sn)等のめっきが施されていてもよい。
【0024】
プリント基板3には、絶縁層31、第1配線層32及び第2配線層33を貫通する複数の貫通孔(スルーホール)が設けられている。プリント基板3の複数の貫通孔には、外部端子4a,4bがそれぞれ挿入されている。外部端子4a,4bは、プリント基板3の複数の貫通孔と離間していてもよく、プリント基板3の複数の貫通孔にはんだ等の接合材で接合していてもよい。
【0025】
外部端子4a,4bは、例えば半導体チップ2a,2bの電位を上側導電層12a,12bを介して外部へ取り出したり、半導体チップ2a,2bを制御するための信号を外部から半導体チップ2a,2bへ供給したりすることができる。外部端子4a,4bの材料としては、例えばCuやAl等の導電材料が使用可能である。外部端子4a,4bは、例えば円柱状であるが、角柱状、板状、ブロック状等の他の形状を有していてもよい。外部端子4a,4bの本数や配置位置は特に限定されない。
【0026】
外部端子4aの一端は、はんだ等の接合材6aを介して上側導電層12aの上面に接合されている。外部端子4bの一端は、はんだ等の接合材6bを介して上側導電層12bの上面に接合されている。なお、外部端子4a,4bを上側導電層12aに接合する際には、接合材6a,6bを用いずに、上側導電層12aに設けられた開口部に外部端子4a,4bを圧入することにより、外部端子4a,4bを上側導電層12aに直接接合してもよい。半導体チップ2a,2bは、半導体装置の中央側に配置され、外部端子4a,4bは、半導体装置の周辺側に配置されている。
【0027】
プリント基板3の外部端子4a,4bが挿入された貫通孔とは異なる複数の貫通孔には、ピン(導電ポスト)5a,5bがそれぞれ挿入され、接合されている。ピン5a,5bの材料としては、例えばCuやAl等の導電材料が使用可能である。ピン5a,5bの本数や配置位置は特に限定されない。ピン5a,5bは、例えば円柱状であるが、角柱状、板状、ブロック状等の他の形状を有していてもよい。ピン5aの一端は、はんだ等の接合材8aを介して半導体チップ2aの上面側の電極に接合されている。ピン5bの一端は、はんだ等の接合材8bを介して半導体チップ2bの上面側の電極に接合されている。
【0028】
図2は、比較例に係る半導体装置であり、絶縁回路基板1及びプリント基板3が平坦である構造を示している。理想的には絶縁回路基板1及びプリント基板3が平坦であることが好ましいが、半導体装置の製造プロセスにおいて、熱変形や組立工程中で発生した外力により、実際には絶縁回路基板1及びプリント基板3に反りが発生する場合がある。
【0029】
例えば、絶縁回路基板1の絶縁基板11と、上側導電層12a,12b及び下側導電層13とで熱膨張係数が異なるために、各層のパターン形状や厚さの違いが影響し、製造プロセス中において、例えば一括はんだ付け等の熱処理工程で絶縁回路基板1に熱反りが発生する。絶縁回路基板1の反りは、
図3Aに示すように、半導体チップ2a,2bの搭載面側(上面側)とは反対側(下面側)に凸となるように突出して湾曲する反り(以下、「正反り」ともいう。)と、
図3Bに示すように、半導体チップ2a,2bの搭載面(上面側)に凸となるように突出して湾曲する反り(以下、「負反り」ともいう。)がある。
【0030】
図3A及び
図3Bに示した絶縁回路基板1の反り方向及び反り量D1は、レーザ変位計等で測定することができる。例えば、絶縁回路基板1の反り方向は、絶縁回路基板1の矩形の平面パターンの対角線上のプロファイルで、端と端を結んだ直線L1の高さ(基準高さ)に対するずれ量が最大であるピーク位置P1と直線L1との位置関係で求めることができ、反り量D1は、直線L1の高さ(基準高さ)とピーク位置P1とのずれ量として求めることができる。
【0031】
また、プリント基板3の絶縁層31と、第1配線層32及び第2配線層33とで熱膨張係数が異なるために、各層のパターン形状や厚さの違いが影響し、製造プロセス中にプリント基板3に熱反りが発生する。プリント基板3の反りには、
図4Aに示すように、半導体チップ2a,2bと対向する面側(下面側)に凸となるように突出して湾曲する反り(以下、「正反り」ともいう。)と、
図4Bに示すように、半導体チップ2a,2bと対向する面とは反対側(上面側)に凸となるように突出して湾曲する反り(以下、「負反り」ともいう。)がある。
【0032】
図4A及び
図4Bに示したプリント基板3の反り方向及び反り量D2は、絶縁回路基板1の反り量D1と同様に、レーザ変位計等で測定することができる。例えば、プリント基板3の反り方向は、プリント基板3の矩形の平面パターンの対角線上のプロファイルで、端と端を結んだ直線L2の高さ(基準高さ)に対するずれ量が最大であるピーク位置P2と直線L2との位置関係で求めることができ、反り量D2は、直線L2の高さ(基準高さ)とピーク位置P2とのずれ量として求めることができる。
【0033】
図1に示すように、第1実施形態に係る半導体装置では、絶縁回路基板1及びプリント基板3が反りを有する。ここで、絶縁回路基板1及びプリント基板3は、互いに相補的な反りを有する。換言すれば、絶縁回路基板1及びプリント基板3がともに正反りを有しており、絶縁回路基板1の反り方向と、プリント基板3の反り方向とが一致する。このため、絶縁回路基板1とプリント基板3とを所定の間隔以内に接近させることができ、ピン5a,5bと半導体チップ2a,2bとのオープン不良を防止し、電気的な導通を確保することができる。
【0034】
第1実施形態に係る半導体装置は、
図5に示すように、絶縁回路基板1及びプリント基板3がともに負反りを有していてもよい。この場合も、絶縁回路基板1及びプリント基板3が互いに相補的な反りを有し、反り方向が互いに一致する。絶縁回路基板1及びプリント基板3がともに負反りを有することにより、絶縁回路基板1とプリント基板3とを所定の間隔以内に接近させることができ、ピン5a,5bと半導体チップ2a,2bとのオープン不良を防止し、電気的な導通を確保することができる。
【0035】
ここで、
図6A及び
図6Bを参照して、比較例に係る半導体装置について説明する。
図6Aに示す比較例に係る半導体装置は、絶縁回路基板1が正反りを有し、プリント基板3が負反りを有する点が、
図1に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
図6Aに示した比較例に係る半導体装置では、絶縁回路基板1及びプリント基板3の反りが互いに逆方向であるため、絶縁回路基板1及びプリント基板3の中央側の間隔が大きくなり、中央側に位置するピン5bと半導体チップ2bとのオープン不良が発生している。
【0036】
また、
図6Bに示す比較例に係る半導体装置は、絶縁回路基板1が負反りを有し、プリント基板3が正反りを有する点が、
図1に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
図6Bに示した比較例に係る半導体装置では、絶縁回路基板1及びプリント基板3の反りが互いに逆方向であるため、絶縁回路基板1及びプリント基板3の周辺側の間隔が大きくなり、周辺側に位置するピン5aと半導体チップ2aとのオープン不良が発生している。
【0037】
図6A及び
図6Bに示した比較例に係る半導体装置に対して、第1実施形態に係る半導体装置によれば、
図1又は
図5に示すように、絶縁回路基板1及びプリント基板3の反りが互いに相補的であるので、絶縁回路基板1及びプリント基板3を所定の間隔以内に接近させることができる。このため、ピンと半導体チップ2aとのオープン不良を防止することができ、電気的な導通を確保することができる。
【0038】
図7は、絶縁回路基板1(
図7では「DCB」と表記)及びプリント基板3(
図7では「P板」と表記)の反りの関係を示す表であり、
図1、
図5、
図6A及び
図6Bの構造に対応している。絶縁回路基板1及びプリント基板3が互いに正反り又は負反りの場合にオープン不良を防止することができる。一方、絶縁回路基板1及びプリント基板3の一方が正反りであり、他方が負反りの場合にはオープン不良が発生している。
【0039】
図8は、はんだ付け工程前の絶縁回路基板1の反り量と個数の関係を示す。従来は、互いに逆方向の反りを有するプリント基板3及び絶縁回路基板1を組み合わせてもオープン不良が発生しないように、例えば
図8に示すように絶縁回路基板1の反り量の規格(許容範囲)R1を設定し、極力平坦な絶縁回路基板1を選別する。プリント基板3の規格についても同様である。このため、プリント基板3及び絶縁回路基板1の良品率が低下し、歩留まりが低下する。
【0040】
これに対して、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、プリント基板3及び絶縁回路基板1がともに反りを有する場合に、互いに相補的な反りを有する(反り方向が一致する)プリント基板3及び絶縁回路基板1を組み合わせることでオープン不良を防止できる。このため、反り量の規格(許容範囲)R1より緩和した規格(許容範囲)R2を設定することができる。プリント基板3の規格についても同様である。したがって、プリント基板3及び絶縁回路基板1の良品率を向上させ、歩留まりを向上させることができる。
【0041】
<半導体製造装置>
次に、第1実施形態に係る半導体装置を製造するための半導体製造装置の一例を説明する。半導体製造装置は、
図9に示すように、測定部101、コントローラ102、記憶部103及び組立部104を備える。
【0042】
測定部101は、レーザ変位計等で構成できる。測定部101は、
図1に示した絶縁回路基板1と同様の複数の絶縁回路基板に対して、反り方向及び反り量を含む形状をそれぞれ測定する。更に、測定部101は、
図1に示したピン5a,5bが挿入された状態のプリント基板3と同様の、ピンがそれぞれ挿入された状態の複数のプリント基板に対して、反り方向及び反り量を含む形状をそれぞれ測定する。なお、測定部101は、ピンが挿入されていない状態のプリント基板の形状を測定してもよく、ピンに加えて外部端子も挿入され、接合された状態のプリント基板の形状を測定してもよい。
【0043】
記憶部103は、半導体メモリやディスクメディア等からなり、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM及びRAM等の記憶媒体を含んでいてもよい。記憶部103の一部又は全部は、コントローラ102に内蔵されていてもよい。記憶部103は、絶縁回路基板の種類ごとに、絶縁回路基板の反り量の温度変化や、絶縁回路基板の室温での反りに対する規格、絶縁回路基板のはんだ融点での反りに対する規格等の反り情報を記憶する。更に、記憶部103は、プリント基板の種類ごとに、プリント基板の反り量の温度変化や、プリント基板の室温での反りに対する規格、プリント基板のはんだ融点での反りに対する規格等の反り情報を記憶する。
【0044】
コントローラ102は、第1実施形態に係る半導体製造装置が行う動作に必要な処理を行う処理回路であり、例えば、プロセッサ、記憶装置及び入出力インターフェースを備えてもよい。プロセッサには、算術論理演算装置(ALU)、制御回路(制御装置)、各種レジスタ等を含む中央演算処理装置(CPU)等に等価なマイクロプロセッサ等を対応させることができる。
【0045】
コントローラ102は、測定部101による絶縁回路基板及びプリント基板の形状の測定結果に基づき、記憶部103に記憶された反り情報を参照して、はんだ付け工程(はんだ融点)における絶縁回路基板及びプリント基板の反りをそれぞれ予測する。更に、コントローラ102は、予測された絶縁回路基板及びプリント基板の反り量が、記憶部103に記憶された規格(許容範囲)内か否かをそれぞれ判定する。なお、規格は、絶縁回路基板とプリント基板とで個別に決定される。更に、コントローラ102は、規格内と判定された絶縁回路基板及びプリント基板の反り方向をそれぞれ判定する。
【0046】
組立部104は、半導体装置を組み立てるための各種装置で構成することができる。組立部104は、コントローラ102による判定結果に基づき、絶縁回路基板及びプリント基板を選別し、互いに相補的な反りを有する絶縁回路基板及びプリント基板を組み合わせるアクチュエータを備える。
【0047】
次に、コントローラ102による絶縁回路基板1及びプリント基板3の反り量及び反り方向の判定方法について説明する。
図10は、上側導電層及び下側導電層がベタパターンで且つ厚みが等しい絶縁回路基板(
図10の「ベタパターン」の表記)、下側導電層がベタパターンであり、上側導電層のパターンが切れている絶縁回路基板(
図10の「パターン有り」の表記)、プリント基板(
図10の「プリント基板」の表記)のそれぞれの反りの温度変化を示す。
【0048】
図10に示すように、「パターン有り」の場合は上側導電層の体積差の影響で、「ベタパターン」の場合と比較して、加熱中は正反り方向に変形し易い。そこで、室温~はんだ融点での反り量の変化を解析又は実験で求め、はんだ付け工程で互いに相補的な反りを有すると予測される絶縁回路基板及びプリント基板の組み合わせを選択する。
【0049】
例えば、室温~はんだ融点の反りの変化量が10μmの「ベタパターン」の絶縁回路基板上に、反りの変化量が70μmの同じサイズのプリント基板を搭載する場合には、
図11Aに示すように、室温での反りが-10μmの絶縁回路基板1と、室温での反りが-70μmのプリント基板3を組み合わせる。この場合、はんだ融点において、
図11Bに示すように、絶縁回路基板1及びプリント基板3のいずれも反りが0μmとなる。
【0050】
また、室温~はんだ融点の反りの変化量が78μmの「パターン有り」の絶縁回路基板上に、反りの変化量が70μmの同じサイズのプリント基板を搭載する場合には、
図12Aに示すように、室温でプリント基板3より8μm反りの小さい絶縁回路基板1を組み合わせる。
図12Aでは、室温での反りが-8μmの絶縁回路基板1と、室温での反りが0μmのプリント基板3を模式的に示している。この場合、はんだ融点において、
図12Bに示すように、絶縁回路基板1及びプリント基板3のいずれも反りが70μmとなり、反り量が一致する。コントローラ102は、
図11B及びず12Bに示したはんだ融点における絶縁回路基板1及びプリント基板3の反り量及び反り方向を予測する。
【0051】
<半導体装置の製造方法>
次に、
図13のフローチャートを参照しながら、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。ここでは、
図1の半導体装置の符号を参照して説明する。
【0052】
ステップS100において、複数の絶縁回路基板1を用意する。ステップS101において、測定部101が、複数の絶縁回路基板1の初期形状をそれぞれ測定する。複数の絶縁回路基板1の初期形状は、反りを有していてもよく、或いは平坦であってもよい。
【0053】
ステップS102において、コントローラ102は、測定部101による複数の絶縁回路基板1の初期形状の測定結果に基づき、複数の絶縁回路基板1のはんだ付け工程の加熱時の変形量を予測する。コントローラ102は、予測された複数の絶縁回路基板1の反り量が許容範囲内か否かをそれぞれ判定する。反り量が許容範囲外と判定された場合、ステップS103に移行し、判定された絶縁回路基板1を不良品として廃棄する。
【0054】
一方、ステップS102において反り量が許容範囲内と判定された場合、ステップS104に移行する。ステップS104において、コントローラ102は、加熱時の絶縁回路基板1の反り方向が正反りであるか、負反りであるかを判定する。組立部104は、コントローラ102の判定結果に基づき、加熱時の反り方向が正反りと判定された絶縁回路基板1と、加熱時の反り方向が負反りと判定された絶縁回路基板1とを選別する。
【0055】
ステップS105において、加熱時の反り方向が正反りと判定された絶縁回路基板1の上面にはんだ等の接合材6a,6b,7a,7bを塗布する。ステップS106において、絶縁回路基板1の上面に接合材7a,7bを介して半導体チップ2a,2bを搭載する。更に、絶縁回路基板1の上面に接合材6a,6bを介して外部端子4a,4bを搭載する。なお、外部端子4a,4bは、この段階で搭載する代わりに、ピン5a,5bと同様にプリント基板3に挿入され、接合されていてもよい。ステップS107において、半導体チップ2a,2bの上面にはんだ等の接合材8a,8bを塗布する。
【0056】
また、ステップS108において、加熱時の反り方向が負反りと判定された絶縁回路基板1の上面にはんだ等の接合材6a,6b,7a,7bを塗布する。ステップS109において、絶縁回路基板1の上面に接合材7a,7bを介して半導体チップ2a,2bを搭載する。更に、絶縁回路基板1の上面に接合材6a,6bを介して外部端子4a,4bを搭載する。ステップS110において、半導体チップ2a,2bの上面にはんだ等の接合材8a,8bを塗布する。
【0057】
一方、ステップS111において、絶縁層31、第1配線層32及び第2配線層33からなる複数のプリント基板3を用意する。複数のプリント基板3のそれぞれは、プリント基板3の貫通孔にピン5a,5bを、プリント基板3の主面に垂直方向に圧入することにより、ピン5a,5bが挿入されて一体化されている。
【0058】
ステップS112において、測定部101が、複数のプリント基板3の初期形状をそれぞれ測定する。複数のプリント基板3の初期形状は、反りを有していてもよく、或いは平坦であってもよい。
【0059】
ステップS113において、コントローラ102は、測定部101による複数のプリント基板3の初期形状の測定結果に基づき、複数のプリント基板3のはんだ付け工程の加熱時の変形量を予測する。コントローラ102は、予測された複数のプリント基板3の反り量が許容範囲内か否かをそれぞれ判定する。反り量が許容範囲外と判定された場合、ステップS114に移行し、判定されたプリント基板3を不良品として廃棄する。
【0060】
一方、ステップS113において反り量が許容範囲内と判定された場合、ステップS115に移行する。ステップS115において、コントローラ102は、はんだ付け工程の加熱時のプリント基板3の反り方向が正反りであるか、負反りであるかを判定する。組立部104は、コントローラ102の判定結果に基づき、加熱時の反り方向が正反りと判定されたプリント基板3と、加熱時の反り方向が負反りと判定されたプリント基板3とを選別する。
【0061】
ステップS116において、加熱時の反り方向が正反りと判定された絶縁回路基板1及びプリント基板3の組み合わせを選択して、カーボン等の治具を用いて絶縁回路基板1の上面にプリント基板3を対向させて、プリント基板3に挿入されているピン5a,5bを、絶縁回路基板1の上面に接合材8a,8bを介して搭載する。外部端子4a,4bは、プリント基板3の貫通孔に挿入される。
【0062】
ステップS117において、加熱時の反り方向が負反りと判定された絶縁回路基板1及びプリント基板3の組み合わせを選択して、カーボン等の治具を用いて絶縁回路基板1の上面にプリント基板3を対向させて、プリント基板3に挿入されているピン5a,5bを、絶縁回路基板1の上面に接合材8a,8bを介して搭載する。外部端子4a,4bは、プリント基板3の貫通孔に挿入される。
【0063】
ステップS118において、加熱炉等により全体を200℃以上、350℃以下程度の温度で加熱し、接合材6a,6b,7a,7b,8a,8bを溶融させて一括して接合する。この際の加熱により、
図1又は
図5に示すように絶縁回路基板1及びプリント基板3に熱反りが発生する。
図1又は
図5に示した半導体装置のように、絶縁回路基板1及びプリント基板3が相補的な反りを有するため、ピン5a,5bと半導体チップ2a,2bとが所定の距離内にあり、ピン5a,5bと半導体チップ2a,2bとのオープン不良を防止することができる。
【0064】
この際、外部端子4a,4b及びピン5a,5bと、プリント基板3の貫通孔との一方又は両方に錫(Sn)メッキやはんだメッキを施しておくことにより、一括接合の際にメッキが溶けて、外部端子4a,4b及びピン5a,5bとプリント基板3の貫通孔も固着する。そして、金型(不図示)を用いて樹脂でモールド成型することにより、
図1又は
図5に示した半導体装置が完成する。
【0065】
ここで、
図14のフローチャートを参照して、比較例に係る半導体装置の製造方法を説明する。
図14のステップS200~S203の手順は、
図13のステップS100~S103と基本的には同様であり、
図13のステップS104に対応する絶縁回路基板1の反り方向を判定する手順を
図14では有さない。
図14のステップS204~S206の手順は、
図13のステップS105~S107又はステップS108~S110と同様である。
図14のステップS207~S210の手順は、
図13のステップS111~S114と基本的には同様であり、
図13のステップS115に対応するプリント基板3の反り方向を判定する手順を
図14では有さない。
図14のステップS211の手順は、
図13のステップS116又はステップS117と同様であるが、プリント基板3及び絶縁回路基板1の反り方向に関係なく、プリント基板3及び絶縁回路基板1を組み合わせて接合する。
【0066】
比較例に係る半導体装置の製造方法では、ステップS211において、互いに逆方向の反りを有するプリント基板3及び絶縁回路基板1を組み合わせた場合でもオープン不良を発生させないように、ステップS202,S209において、反り量の規格を厳しくして(例えば
図8の規格R1)、極力平坦なプリント基板3及び絶縁回路基板1を選別する。このため、プリント基板3及び絶縁回路基板1の良品率が低下し、歩留まりが低下する。
【0067】
これに対して、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、
図13のステップS116,S117において、プリント基板3及び絶縁回路基板1がともに反りを有する場合に、互いに相補的な反りを有する(反り方向が一致する)プリント基板3及び絶縁回路基板1を組み合わせることにより、ステップS102,S113で判定する際の反り量の規格を緩和することができ(例えば
図8の規格R2)、歩留まりを向上させることができる。更に、互いに相補的な反りを有する(反り方向が一致する)プリント基板3及び絶縁回路基板1を組み合わせることにより、オープン不良を防止した半導体装置を実現可能となる。
【0068】
また、
図13のステップS102において、2つの許容範囲R1及び許容範囲R2を用いて、絶縁回路基板1の反り量を段階的に判定してよい。例えば、絶縁回路基板1が第1許容範囲R1に収まるか判定し、第1許容範囲R1に収まると判定された場合には、絶縁回路基板1の反り方向に依存せず(プリント基板3と反り方向が一致しなくても)、プリント基板3と組み合わせる。一方、第1許容範囲R1に収まらないと判定された場合には、絶縁回路基板1が第2許容範囲R2に収まるか判定する。第1許容範囲R1に収まると判定された場合には、判定された絶縁回路基板1を反り方向が一致するプリント基板3と組み合わせる。一方、第2許容範囲R2に収まらないと判定された場合には、絶縁回路基板1を廃棄する。これにより、オープン不良の発生を防止可能な絶縁回路基板1及びプリント基板3の組み合わせの自由度を向上させることができる。
【0069】
(第2実施形態)
<半導体装置>
第2実施形態に係る半導体装置は、
図15に示すように、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bの上面に対向して配置されたプリント基板3とを備える。なお、
図15では図示を省略するが、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1b及びプリント基板3の周囲を封止する封止材が設けられていてもよい。
【0070】
第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bのそれぞれは、
図1に示した絶縁回路基板1と同様の構成であり、例えばDCB基板やAMB基板等であってもよい。
図15の左側に示した第1絶縁回路基板1aは、第1絶縁基板11aと、第1絶縁基板11aの上面に配置された第1上側導電層12a,12bと、第1絶縁基板11aの下面に配置された第1下側導電層13aとを有する。
図15の右側に示した第2絶縁回路基板1bは、第2絶縁基板11bと、第2絶縁基板11bの上面に配置された第2上側導電層12c,12dと、第2絶縁基板11bの下面に配置された第2下側導電層13bとを有する。
【0071】
第1上側導電層12a上には、はんだ等の接合材7a,7bを介して、第1半導体素子(半導体チップ)2a,2bが配置されている。第2上側導電層12c上には、はんだ等の接合材7c,7dを介して、第2半導体素子(半導体チップ)2c,2dが配置されている。
【0072】
プリント基板3は、絶縁層31と、絶縁層31の上面側に配置された第1配線層32と、絶縁層31の下面側に配置された第2配線層33とを有する。プリント基板3には、絶縁層31、第1配線層32及び第2配線層33を貫通する複数の貫通孔が設けられている。プリント基板3の複数の貫通孔には、第1外部端子4a,4b及び第2外部端子4c,4dがそれぞれ挿入され、接合されている。第1外部端子4aの一端は、はんだ等の接合材6aを介して第1上側導電層12aの上面に接合されている。第1外部端子4bの一端は、はんだ等の接合材6bを介して第1上側導電層12bの上面に接合されている。第2外部端子4cの一端は、はんだ等の接合材6cを介して第2上側導電層12cの上面に接合されている。第2外部端子4dの一端は、はんだ等の接合材6dを介して第2上側導電層12dの上面に接合されている。
【0073】
更に、プリント基板3の複数の貫通孔には、第1ピン(導電ポスト)5a,5b及び第2ピン(導電ポスト)5c,5dがそれぞれ挿入され、接合されている。第1ピン5aの一端は、はんだ等の接合材8aを介して半導体チップ2aの上面に接合されている。第1ピン5bの一端は、はんだ等の接合材8bを介して半導体チップ2bの上面に接合されている。第2ピン5cの一端は、はんだ等の接合材8cを介して半導体チップ2cの上面に接合されている。第2ピン5dの一端は、はんだ等の接合材8dを介して半導体チップ2dの上面に接合されている。
【0074】
図16は、比較例に係る半導体装置であり、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1b及びプリント基板3が平坦である構造を示している。理想的には第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1b及びプリント基板3が平坦であることが好ましいが、半導体装置の製造プロセスにおいて、熱変形や組立工程中で発生した外力により、実際には第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1b及びプリント基板3に反りが発生する場合がある。
【0075】
第2実施形態に係る半導体装置では、
図15に示すように、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、プリント基板3とが相補的な反りを有する。即ち、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bがともに正反りを有し、プリント基板3が正反りを有する。このため、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bとプリント基板3とを所定の間隔以内に接近させることができ、第1ピン5a,5b及び第2ピン5c,5dと半導体チップ2a~2dとのオープン不良を防止し、電気的な導通を確保することができる。
【0076】
次に、
図17~
図20を参照して、第2実施形態に係る半導体装置の変形例を説明する。
図17に示す第2実施形態の変形例に係る半導体装置は、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bがともに負反りを有しており、プリント基板3が負反りを有する。この場合も、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、プリント基板3とが相補的な反りを有する場合に含まれる。
【0077】
図18に示す第2実施形態の変形例に係る半導体装置は、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bがともに負反りを有しており、プリント基板3がM字型の反りを有する。プリント基板3の第1絶縁回路基板1aと対向する領域が部分的に負反りを有し、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bと対向する領域が部分的に負反りを有する。例えば、プリント基板3の第1配線層32及び第2配線層33のそれぞれが、第1絶縁回路基板1aと対向する領域と、第2絶縁回路基板1bと対向する領域とで分離された回路パターンを有すること等に起因して、プリント基板3の反り状態が部分的に変化する場合がある。この場合も、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、プリント基板3とが相補的な反りを有する場合に含まれる。
【0078】
図19に示す第2実施形態の変形例に係る半導体装置は、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bがともに正反りを有しており、プリント基板3がW字型の反りを有する。プリント基板3の第1絶縁回路基板1aと対向する領域が部分的に正反りを有し、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bと対向する領域が部分的に正反りを有する。この場合も、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、プリント基板3とが相補的な反りを有する場合に含まれる。
【0079】
図20に示す第2実施形態の変形例に係る半導体装置は、第1絶縁回路基板1aが正反りを有し、第2絶縁回路基板1bが負反りを有し、プリント基板3がうねり(N字型の反り)を有する。プリント基板3の第1絶縁回路基板1aと対向する領域が部分的に正反りを有し、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bと対向する領域が部分的に負反りを有する。この場合も、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、プリント基板3とが相補的な反りを有する場合に含まれる。
【0080】
次に、
図21~
図27を参照して、比較例に係る半導体装置を説明する。
図21に示す比較例に係る半導体装置は、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bがともに負反りを有し、プリント基板3が正反りを有する点が、
図15に示した第2実施形態に係る半導体装置と異なる。
図21に示した比較例に係る半導体装置では、プリント基板3の周辺側が第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bに対して遠ざかるため、周辺側に位置する第1ピン5aと半導体チップ2aとのオープン不良、及び第2ピン5dと半導体チップ2dとのオープン不良等が発生している。
【0081】
図22に示す比較例に係る半導体装置は、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bがともに正反りを有し、プリント基板3が負反りを有する点が、
図15に示した第2実施形態に係る半導体装置と異なる。
図22に示した比較例に係る半導体装置では、プリント基板3の中央側が第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bから遠ざかるため、中央側に位置する第2ピン5bと半導体チップ2bとのオープン不良、及び第2ピン5cと半導体チップ2cとのオープン不良が発生している。
【0082】
図23に示す比較例に係る半導体装置は、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bがともに正反りを有し、プリント基板3がM字型の反りを有する点が、
図15に示した第2実施形態に係る半導体装置と異なる。プリント基板3の第1絶縁回路基板1aと対向する領域が部分的に負反りを有し、プリント基板3の第1絶縁回路基板1aに対向する領域の中央側が第1絶縁回路基板1aに対して遠ざかるため、中央側の第1ピン5a,5bと半導体チップ2a,2bとのオープン不良が発生している。また、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bと対向する領域が部分的に負反りを有し、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bに対向する領域の中央側が第2絶縁回路基板1bに対して遠ざかるため、中央側の第2ピン5c,5dと半導体チップ2c,2dとのオープン不良が発生している。
【0083】
図24に示す比較例に係る半導体装置は、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bがともに負反りを有し、プリント基板3がW字型の反りを有する点が、
図15に示した第2実施形態に係る半導体装置と異なる。プリント基板3の第1絶縁回路基板1aと対向する領域が部分的に正反りを有し、プリント基板3の第1絶縁回路基板1aに対向する領域の周辺側が第1絶縁回路基板1aに対して遠ざかるため、周辺側の第1ピン5aと半導体チップ2aとのオープン不良が発生している。また、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bと対向する領域が部分的に負反りを有し、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bに対向する領域の周辺側が第2絶縁回路基板1bに対して遠ざかるため、周辺側の第2ピン5cと半導体チップ2cとのオープン不良が発生している。
【0084】
図25に示す比較例に係る半導体装置は、第1絶縁回路基板1aが正反りを有し、第2絶縁回路基板1bが負反りを有し、プリント基板3がうねり(N字型の反り)を有する点が、
図15に示した第2実施形態に係る半導体装置と異なる。プリント基板3の第1絶縁回路基板1aと対向する領域が部分的に負反りを有し、プリント基板3の第1絶縁回路基板1aに対向する領域の中央側が第1絶縁回路基板1aに対して遠ざかるため、第1ピン5a,5bと半導体チップ2a,2bとのオープン不良が発生している。また、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bと対向する領域が部分的に正反りを有し、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bに対向する領域の周辺側が第2絶縁回路基板1bに対して遠ざかる。
【0085】
図26に示す比較例に係る半導体装置は、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bがともに正反りを有し、プリント基板3がうねり(N字型の反り)を有する点が、
図15に示した第2実施形態に係る半導体装置と異なる。プリント基板3の第1絶縁回路基板1aと対向する領域が部分的に正反りを有し、プリント基板3の第1絶縁回路基板1aに対向する領域と、第1絶縁回路基板1aとは相補的な反りを有する。しかし、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bと対向する領域が部分的に負反りを有し、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bに対向する領域の中央側が第2絶縁回路基板1bに対して遠ざかるため、中央側に位置する第2ピン5c,5dと半導体チップ2c,2dとのオープン不良が発生している。
【0086】
図27に示す比較例に係る半導体装置は、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bがともに負反りを有し、プリント基板3がうねり(N字型の反り)を有する点が、
図15に示した第2実施形態に係る半導体装置と異なる。プリント基板3の第1絶縁回路基板1aと対向する領域が部分的に正反りを有し、プリント基板3の第1絶縁回路基板1aに対向する領域の周辺側が第1絶縁回路基板1aに対して遠ざかるため、周辺側に位置する第1ピン5aと半導体チップ2aとのオープン不良が発生している。プリント基板3の第2絶縁回路基板1bと対向する領域が部分的に負反りを有し、プリント基板3の第2絶縁回路基板1bに対向する領域と、第2絶縁回路基板1bとは部分的に相補的な反りを有する。
【0087】
図21~
図27に示した比較例に係る半導体装置に対して、第2実施形態に係る半導体装置によれば、
図15、
図17~
図20に示すように、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、プリント基板3とが互いに相補的な反りを有するので、第1ピン5a,5b及び第2ピン5c,5dと半導体チップ2a~2dとの距離をそれぞれ所定の範囲内とすることができる。このため、第1ピン5a,5b及び第2ピン5c,5dと半導体チップ2a~2dとのオープン不良を防止することができ、電気的な導通を確保することができる。
【0088】
【0089】
<半導体装置の製造方法>
次に、
図30のフローチャートを参照して、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。第2実施形態に係る半導体装置の製造方法においても、
図9に示した半導体製造装置を使用することができる。ここでは、
図15に示した半導体装置の符号を参照して説明する。
【0090】
図30のステップS300~S314の手順は、
図13に示した第1実施形態に係る半導体装置の製造方法のステップS100~S114の手順と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0091】
ステップS315において、コントローラ102は、はんだ付け工程の加熱時におけるプリント基板3の反り方向を予測し、予測された反り方向が正反り、負反り、W字型の反り、M字型の反り、うねり(N字型の反り)のいずれであるかを判定する。組立部104は、コントローラ102の判定結果に基づき、加熱時の反り方向が正反り又はW字型と判定されたプリント基板3と、加熱時の反り方向が負反り又はM字型の反りと判定されたプリント基板3と、加熱時の反り方向がうねりと判定されたプリント基板3との3種類に選別する。
【0092】
ステップS316において、組立部104は、加熱時の反り方向が正反りと判定された第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、加熱時の反り方向が正反り又はW字型と判定されたプリント基板3との組み合わせを選択して、カーボン等の治具を用いて第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bの上面にプリント基板3を対向させて、プリント基板3に挿入されている第1ピン5a,5b及び第2ピン5c,5dを、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bの上面に接合材8a~8dを介して搭載する。第1外部端子4a,4b及び第2外部端子4c,4dは、プリント基板3の貫通孔に挿入される。
【0093】
ステップS317において、組立部104は、加熱時の反り方向が正反り及び負反りとそれぞれ判定された第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、加熱時の反り方向がうねりと判定されたプリント基板3との組み合わせを選択して、カーボン等の治具を用いて第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bの上面にプリント基板3を対向させて、プリント基板3に挿入されている第1ピン5a,5b及び第2ピン5c,5dを、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bの上面に接合材8a~8dを介して搭載する。第1外部端子4a,4b及び第2外部端子4c,4dは、プリント基板3の貫通孔に挿入される。
【0094】
ステップS318において、組立部104は、加熱時の反り方向が負反りと判定された第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、加熱時の反り方向が負反り又はM字型と判定されたプリント基板3の組み合わせを選択して、カーボン等の治具を用いて第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bの上面にプリント基板3を対向させて、プリント基板3に挿入されている第1ピン5a,5b及び第2ピン5c,5dを、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bの上面に接合材8a~8dを介して搭載する。第1外部端子4a,4b及び第2外部端子4c,4dは、プリント基板3の貫通孔に挿入される。
【0095】
ステップS319において、加熱炉等により全体を200℃以上、350℃以下程度の温度で加熱し、接合材6a~6d,7a~7d,8a~8dを溶融させて一括して接合する。この際の加熱により、
図15に示すように第1絶縁回路基板1a、第2絶縁回路基板1b及びプリント基板3に熱反りが発生するが、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、プリント基板3とが相補的な反りを有するため、第1ピン5a,5b及び第2ピン5c,5dと半導体チップ2a~2dとが所定の距離内にあり、第1ピン5a,5b及び第2ピン5c,5dと半導体チップ2a~2dとのオープン不良を防止することができる。そして、金型(不図示)を用いて樹脂でモールド成型することにより、
図15、
図17~
図20に示した半導体装置が完成する。
【0096】
第2実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと、プリント基板3とが相補的な反りを有する組み合わせることにより、第1ピン5a,5b及び第2ピン5c,5dと半導体チップ2a~2dとのオープン不良を防止することができる。更に、ステップS302における第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bを判定するための反り量の許容範囲と、S313におけるプリント基板3の反り量を判定するための許容範囲を緩和することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0097】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1及び第2実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0098】
例えば、第2実施形態においては、
図15に示すように2枚の第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bを有する場合を例示したが、はんだ付け溶融中の基板反り変化が予測通りではなく、
図31に模式的に示すように、プリント基板3と第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bの距離が離れ、はんだオープン不良が起こり得る。これは、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bと1枚のプリント基板3を接合する場合、反り(歪み)形状が一様でない第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bを、熱板上で加熱することで、熱板と接する部位が先に加熱変形し、加熱むらが生じたり、形状変化による重心移動することで熱板との接点が変化したりすること等により、加熱時の変形挙動が複雑となり、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bに傾きが生じ、プリント基板3と第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bの距離が離れることが原因と考えられる。
【0099】
そこで、
図32Aに示すように、プリント基板3上に錘9を載置することにより、プリント基板3に荷重を与え、プリント基板3で第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bを押さえてよい。これにより、
図32Bに示すように、第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bの傾きを低減し、プリント基板3と第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bの距離を遠ざけ難くし、オープン不良を抑制することができる。
【0100】
また、第1実施形態では、
図1に示すように、1枚の絶縁回路基板1を用いた場合を例示し、第2実施形態では、
図15に示すように、2枚の第1絶縁回路基板1a及び第2絶縁回路基板1bを用いた場合を例示したが、3枚以上の複数の絶縁回路基板をプリント基板に対向させて配置してもよい。この場合も、複数の絶縁回路基板のそれぞれの反り方向が、複数の絶縁回路基板のそれぞれと対向するプリント基板の領域の部分的な反り方向と一致するように、プリント基板及び複数の絶縁回路基板の組み合わせを選択すればよい。
【0101】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0102】
1…絶縁回路基板
2a,2b…半導体素子(半導体チップ)
3…プリント基板
4a 外部端子
4a~4d…外部端子
5a~5d…ピン(導電ポスト)
6a~6d,7a~7d,8a~8d…接合材
9…錘
11…絶縁基板
12a~12d…上側導電層
13a,13b…下側導電層
31…絶縁層
32…第1配線層
33…第2配線層33
101…測定部
102…コントローラ
103…記憶部
104…組立部