(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】危険度推定装置、車載装置、危険度推定方法、および危険度推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20231226BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20231226BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G08G1/13
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2019211935
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 竜洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚良
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-095987(JP,A)
【文献】特開2008-015561(JP,A)
【文献】特開2009-080659(JP,A)
【文献】特開2016-115087(JP,A)
【文献】特開2013-171317(JP,A)
【文献】特開2009-090028(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008666(WO,A1)
【文献】特表2020-502713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両
から走行履歴データを収集し、収集した
複数の車両の前記走行履歴データを基に統計データを生成する統計処理部と、
前記統計処理部によって生成された前記統計データを基にして、予め区分した時間帯別に、推定対象地域の危険度を推定する危険度推定部と、を備え、
前記走行履歴データは、検知日時毎に、その検知日時における車両の位置と、当該車両を運転しているドライバの目の開閉度とを対応付けたデータであり、
前記統計処理部は、
前記推定対象地域を走行した車両の前記走行履歴データを前記時間帯別に集計し、前記時間帯別に、前記推定対象地域におけるドライバの目の開閉度の代表値を
、集計した対応する時間帯の前記走行履歴データを基に算出した統計データを生成し、
前記危険度推定部は、前記時間帯別に、その時間帯について算出された
前記推定対象地域におけるドライバの目の開閉度の前記代表値
の大きさによって、前記推定対象地域の危険度を推定する、危険度推定装置。
【請求項2】
前記統計処理部は、前記推定対象地域における車両の走行方向別に、
前記推定対象地域を走行した車両の前記走行履歴データを前記時間帯別に集計し、前記時間帯別および車両の走行方向別に、前記推定対象地域におけるドライバの目の開閉度の代表値を
、集計した対応する時間帯であり、且つ対応する走行方向である前記走行履歴データを基に算出した統計データを生成する、請求項1に記載の危険度推定装置。
【請求項3】
前記統計処理部は、前記統計データを生成するとき、その時点を基準にした設定期間以前に収集された前記走行履歴データを用いないで前記統計データを生成する、請求項1、または2に記載の危険度推定装置。
【請求項4】
前記代表値は、
前記推定対象地域を走行した各車両のドライバの目の開閉度の平均値である、請求項1~3のいずれかに記載の危険度推定装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の危険度推定装置から前記推定対象地域の危険度を受信する受信部と、
搭載されている車両が、前記受信部で受信した危険度が注意喚起レベルを超えている前記推定対象地域を走行しているとき、ドライバに対して注意喚起を出力する出力部と、を備えた車載装置。
【請求項6】
収集した
複数の車両の走行履歴データを基に統計データを生成する統計処理ステップと、
前記統計処理ステップで生成した前記統計データを基にして、予め区分した時間帯別に、推定対象地域の危険度を推定する危険度推定ステップと、をコンピュータが実行し、
前記走行履歴データは、検知日時毎に、その検知日時における車両の位置と、当該車両を運転しているドライバの目の開閉度とを対応付けたデータであり、
前記統計処理ステップは、
前記推定対象地域を走行した車両の前記走行履歴データを前記時間帯別に集計し、前記時間帯別に、前記推定対象地域におけるドライバの目の開閉度の代表値を
、集計した対応する時間帯の前記走行履歴データを基に算出した統計データを生成するステップであり、
前記危険度推定ステップは、前記時間帯別に、その時間帯について算出された
前記推定対象地域におけるドライバの目の開閉度の前記代表値
の大きさによって、前記推定対象地域の危険度を推定するステップである、危険度推定方法。
【請求項7】
収集した
複数の車両の走行履歴データを基に統計データを生成する統計処理ステップと、
前記統計処理ステップで生成した前記統計データを基にして、予め区分した時間帯別に、推定対象地域の危険度を推定する危険度推定ステップと、をコンピュータに実行させ、
前記走行履歴データは、検知日時毎に、その検知日時における車両の位置と、当該車両を運転しているドライバの目の開閉度とを対応付けたデータであり、
前記統計処理ステップは、
前記推定対象地域を走行した車両の前記走行履歴データを前記時間帯別に集計し、前記時間帯別に、前記推定対象地域におけるドライバの目の開閉度の代表値を
、集計した対応する時間帯の前記走行履歴データを基に算出した統計データを生成するステップであり、
前記危険度推定ステップは、前記時間帯別に、その時間帯について算出された
前記推定対象地域におけるドライバの目の開閉度の前記代表値
の大きさによって、前記推定対象地域の危険度を推定するステップである、危険度推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交通事故を抑制し、安全、安心な交通社会の構築に寄与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路網において、交通事故の発生リスクが高い場所(地域)を判断し、当該場所を走行する車両のドライバに対して注意喚起を行う装置があった(特許文献1参照)。この特許文献1に記載された装置は、道路網を走行している車両の状態(例えば、位置、速度、ブレーキ操作、アクセル操作、ステアリング操作)を、当該車両に搭載されている車載装置から取得する。特許文献1に記載された装置は、多くの車両から取得した情報を処理し、設定した判定領域毎に、急ブレーキ、急ハンドル等の危険回避にかかる運転操作が行われた回数等を計数する。特許文献1に記載された装置は、設定した判定領域毎に、その領域について計数した危険回避にかかる運転操作の回数によって、リスク度合いを判定する。また、特許文献1に記載された装置は、リスクの度合いが高い領域を走行している車両に対して注意喚起にかかる情報を送信し、ドライバに対して注意を促す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路網には、危険回避にかかる運転操作が行われる回数が比較的少なくても、交通事故の発生リスクが高い地域が存在している。例えば、外光が眩しく、ドライバが歩行者や自転車等に気づきにくい地域も、交通事故の発生リスクが高い。このような地域の中には、歩行者や自転車等の通行量が少ない地域がある。この歩行者や自転車等の通行量が少ない地域では、多くの車両が歩行者や自転車等に出会うことなく走行し、危険回避にかかる運転操作が行われる回数が比較的少ない。
【0005】
したがって、特許文献1に記載された装置の構成では、外光が眩しく、ドライバが歩行者や自転車等に気づきにくい地域であっても、歩行者や自転車等の通行量が少ないと、交通事故の発生リスクが高い地域であると判定されないことがある。
【0006】
この発明の目的は、通行量に関係なく、外光が眩しく、ドライバが歩行者や自転車等に気づきにくい地域を、交通事故の発生リスクが高い地域であると推定できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の危険度推定装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0008】
統計処理部は、車両の走行履歴データを収集し、収集した走行履歴データを基に統計データを生成する。走行履歴データは、検知日時毎に、その検知日時における車両の位置と、当該車両を運転しているドライバの目の開閉度とを対応付けたデータである。統計処理部は、予め区分した時間帯別に、推定対象地域におけるドライバの目の開閉度の代表値を算出した統計データを生成する。この代表値は、例えば、ドライバの目の開閉度の平均値であってもよいし、中央値であってもよいし、最頻値であってもよい。
【0009】
危険度推定部は、統計処理部によって生成された統計データを基にして、予め区分した時間帯別に、推定対象地域の危険度を推定する。危険度推定部は、時間帯別に、その時間帯について算出されたドライバの目の開閉度の代表値によって、推定対象地域の危険度を推定する。
【0010】
ドライバは、外光が眩しいとき、目を細める。統計処理部によって生成された統計データによって、推定対象地域を走行したドライバが目を細めている程度を時間帯別に取得できる。外光の眩しさが大きいほど、ドライバが目を細めている程度が大きくなる。すなわち、危険度推定部は、外光の眩しさが要因である推定対象地域の危険度を推定できる。したがって、この構成によれば、通行量に関係なく、外光が眩しく、ドライバが歩行者や自転車等に気づきにくい地域を、交通事故の発生リスクが高い地域であると推定できる。
【0011】
また、統計処理部を、推定対象地域における車両の走行方向別に、ドライバの目の開閉度の代表値を算出した統計データを生成する構成にすれば、危険度の推定がより適正に行える。
【0012】
また、統計処理部を、統計データを生成するとき、その時点を基準にした設定期間以前に収集された走行履歴データを用いないで統計データを生成する、構成にしてもよい。
【0013】
また、この発明にかかる車載装置は、受信部において、上記の危険度推定装置から推定対象地域の危険度を受信する。また、搭載されている車両が、受信部で受信した危険度が注意喚起レベルを超えている推定対象地域を走行しているとき、出力部がドライバに対して注意喚起を出力する。したがって、この車載装置は、ドライバに対して、交通事故を起こさせないための注意喚起を適正なタイミングで行える。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、通行量に関係なく、外光が眩しく、ドライバが歩行者や自転車等に気づきにくい地域を、交通事故の発生リスクが高い地域であると推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】危険度推定装置を適用した運転支援システムを示す概略図である。
【
図2】危険度を推定する推定対象地域の例を示す図である。
【
図5】危険度推定装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図6】車載装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図7】危険度推定装置の走行履歴データ収集処理を示すフローチャートである。
【
図8】危険度推定装置の危険度推定処理を示すフローチャートである。
【
図9】車載装置の走行履歴データ送信処理を示すフローチャートである。
【
図10】車載装置の注意喚起処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0017】
<1.適用例>
図1は、危険度推定装置を適用した運転支援システムを示す概略図である。
図2は、危険度を推定する推定対象地域の例を示す図である。この例にかかる運転システムは、センタに設置されている危険度推定装置1と、車両100に搭載されている車載装置3とを有する。危険度推定装置1と、車載装置3とはネットワーク5を介してデータ通信を行う。
図1に示すように、危険度推定装置1には、ネットワーク5を介して複数の車載装置3が接続される。
【0018】
この例にかかる運転支援システムは、例えば、
図2に示すように、交差点、および当該交差点の各流入路を含むある程度の大きさの推定対象地域110の危険度を推定する。この例では、推定対象地域110は、危険度推定装置1に予め設定されている。推定対象地域110は、
図2では矩形上である例を示しているが、円形状であってもよいし、楕円形状であってもよいし、他の形状であってもよい。推定対象地域110は、道路網をカバーするように、複数設定されている。
【0019】
車載装置3は、搭載されている車両100の走行履歴データを生成し、危険度推定装置1に送信する。
図3は、車載装置が生成する走行履歴データを示す図である。車載装置3は、車両100の走行時に、一定時間間隔(数十msec~数百msec間隔)で繰り返し、車両100の位置(緯度、経度)、およびドライバの左右の目の開閉度を検出する。
図3は、この検出が100msec間隔で繰り返されたときの走行履歴データを示している。走行履歴データは、検出日時毎に、車両100の位置、およびドライバの左右の目の開閉度を対応付けたレコードを登録したデータである。車載装置3は、適当なタイミング(例えば、5分間隔、10分間隔)で、未送信の走行履歴データ(未送信のレコードからなる走行履歴データ)を危険度推定装置1に送信する。ここでドライバの目の開閉度とは、そのドライバについて一定時間(例えば、数分)観測したときの目の大きさの最大値を基準サイズとし、検出したドライバの目の大きさを、当該ドライバの目の大きさの基準サイズで除した値である。
【0020】
危険度推定装置1は、車載装置3から走行履歴データを受信すると、受信した走行履歴データを蓄積的に記憶する。これにより、危険度推定装置1は、複数の車両100の走行履歴データを収集する。この例では、走行履歴データに、送信元を特定する情報を含ませていない。危険度推定装置1は、受信した走行履歴データを、送信元を特定することができない匿名情報として記憶する。
【0021】
なお、危険度推定装置1は、受信した走行履歴データに対して、送信元のアドレス、または車両100の位置等を用いて、同一車両100に搭載されている車載装置3から送信されてきた走行履歴データを抽出して纏めることもできるが、この例では、このような処理は行わない。
【0022】
危険度推定装置1は、収集した走行履歴データから、推定対象地域110の走行時にかかる走行履歴データを抽出する。推定対象地域110の走行時にかかる走行履歴データとは、その走行履歴データの中に、車両100の位置が推定対象地域110内であるレコードが含まれている走行履歴データである。言い換えれば、車両100の位置が推定対象地域110内であるレコードが含まれていない走行履歴データは、推定対象地域110の走行時にかかる走行履歴データではない。
【0023】
危険度推定装置1は、抽出した推定対象地域110の走行時にかかる走行履歴データを、車両100の走行方向によって分類する。具体的には、走行方向が、
図2において右側から左側である第1分類、左側から右側である第2分類、上側から下側である第3分類、および下側から上側である第4分類の4つに分類する。車両100の走行方向は、時間経過にともなう位置の変化から判断できる。
【0024】
危険度推定装置1は、走行履歴データの分類毎に、ドライバの目の開閉度の代表値を、時間帯別に算出した時間帯別開閉度データを生成する。この時間帯別開閉度データは、車両100の走行位置が推定対象地域110内であるレコードのみを用いて生成する。言い換えれば、この時間帯別開閉度データは、車両100の走行位置が推定対象地域110内でないレコードを用いないで生成する。
【0025】
図4は、時間帯別開閉度データを示す図である。
図4では、時間帯の長さを1時間とし、時間帯の開始時刻を毎正時とした時間帯別開閉度データを示している。車両100の走行方向が左方向である時間帯別のドライバの目の開閉度の代表値J#(#は、1~24の整数)は、上記した第1分類の走行履歴データの中から抽出された、該当する時間帯に推定対象地域110を走行した車両100のドライバの目の開閉度の代表値である。同様に、車両100の走行方向が右方向である時間帯別のドライバの目の開閉度の代表値K#(#は、1~24の整数)は、上記した第2分類の走行履歴データの中から抽出された、該当する時間帯に推定対象地域110を走行した車両100のドライバの目の開閉度の代表値である。また、車両100の走行方向が下方向である時間帯別のドライバの目の開閉度の代表値M#(#は、1~24の整数)は、上記した第3分類の走行履歴データの中から抽出された、該当する時間帯に推定対象地域110を走行した車両100のドライバの目の開閉度の代表値である。また、車両100の走行方向が上方向である時間帯別のドライバの目の開閉度の代表値N#(#は、1~24の整数)は、上記した第1分類の走行履歴データの中から抽出された、該当する時間帯に推定対象地域110を走行した車両100のドライバの目の開閉度の代表値である。
【0026】
この例では、上記したドライバの目の開閉度の代表値は、ドライバの右目の開閉度の平均値と、ドライバの左目の開閉度の平均値とにおける、小さいほうの値である。
【0027】
なお、ドライバの目の開閉度の代表値は、ドライバの右目、および左目の開閉度の平均値にしてもよい。また、平均値の代わりに中央値、最頻値等を用いてもよい。
【0028】
危険度推定装置1は、推定対象地域110における車両100の走行方向毎に、時間帯別に危険度を2段階のレベルで推定する。具体的には、この例にかかる危険度推定装置1は、ドライバの目の開閉度の代表値が、予め定めた閾値α以下であれば、危険度を高と推定し、閾値αを超えていれば、危険度を低と推定する。危険度推定装置1は、推定対象地域110毎に推定した危険度を車両100に搭載されている車載装置3に通知する。
【0029】
ドライバは、外光が眩しいときに、目を細めるので、目の開閉度が小さくなる。すなわち、危険度推定装置1は、外光の眩しさによる危険度を推定している。したがって、危険度推定装置1は、通行量に関係なく、外光が眩しく、ドライバが歩行者や自転車等に気づきにくい地域を、交通事故の発生リスクが高い地域であると推定できる。
【0030】
また、危険度推定装置1が、外光の眩しさによる危険度の推定結果を車載装置3に通知するので、車載装置3が、ドライバに対して、外光の眩しさによる危険度の推定結果に応じた注意喚起を行える。
【0031】
<2.構成例>
図5は、危険度推定装置の主要部の構成を示すブロック図である。危険度推定装置1は、制御ユニット11と、受信部12と、送信部13と、走行履歴データベース14(走行履歴DB14)と、地図データベース15(地
図DB15)を備えている。
【0032】
制御ユニット11は、危険度推定装置1本体各部の動作を制御する。制御ユニット11は、統計処理部21、および危険度推定部22を有している。統計処理部21、および危険度推定部22については、後述する。
【0033】
受信部12は、ネットワーク5を介して、車載装置3から送信されてきた走行履歴データを受信する。送信部13は、ネットワーク5を介して、各推定対象地域110の危険度の推定結果を車載装置3に送信する。
【0034】
走行履歴DB14は、受信部12で受信した走行履歴データを蓄積的に記憶する。地
図DB15は、地図情報を記憶する。また、設定されている推定対象地域110毎に、その推定対象地域110の位置を示す位置情報を記憶する。
【0035】
次に、制御ユニット11が有する統計処理部21、および危険度推定部22について説明する。統計処理部21は、推定対象地域110毎に、走行履歴DB14に記憶している走行履歴データを集計し、
図4に示した時間帯別開閉度データを生成する。この時間帯別開閉度データが、この発明で言う統計データに相当する。危険度推定部22は、推定対象地域110毎に、その推定対象地域110について生成された時間帯別開閉度データを参照して、時間帯、および走行方向別に危険度を推定する。
【0036】
危険度推定装置1の制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる危険度推定プログラムを実行したときに、統計処理部21、および危険度推定部22として動作する。また、メモリは、この発明にかかる危険度推定プログラムを展開する領域や、この危険度推定プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる危険度推定方法を実行するコンピュータである。
【0037】
図6は、車載装置の主要部の構成を示す図である。車載装置3は、制御ユニット31と、画像入力部32と、測位データ入力部33と、通信部34と、走行履歴データ記憶部35と、危険度推定結果記憶部36と、出力部37とを備えている。
【0038】
制御ユニット31は、車載装置3本体各部の動作を制御する。制御ユニット31は、開閉度算出部41、走行履歴データ生成部42、および注意喚起判定部43を有している。開閉度算出部41、走行履歴データ生成部42、および注意喚起判定部43については後述する。
【0039】
画像入力部32には、カメラ32aが接続されている。カメラ32aは、車両100のドライバの顔を撮像するアングルで取り付けられている。画像入力部32には、カメラ32aによって撮像されたドライバの顔のフレーム画像が入力される。カメラ32aは、フレームレートが数十フレーム/secであるビデオカメラである。この例では、カメラ32aのフレームレートを10フレーム/secとして説明する。
【0040】
測位データ入力部33には、図示していない外部機器(例えば、車両100に搭載されているナビゲーション装置、ドライバのスマートフォン等)において測位された車両100の位置を示す位置データ(緯度、経度)が入力される。
【0041】
なお、測位データ入力部33は、GPS機能を有し、車両100の位置を測位する構成であってもよい。
【0042】
通信部34は、ネットワーク5を介して、危険度推定装置1との間でデータ通信を行う。
【0043】
走行履歴データ記憶部35は、後述する走行履歴データ生成部42において生成された走行履歴データを記憶する。
【0044】
危険度推定結果記憶部36は、危険度推定装置1が各推定対象地域110について時間帯、および走行方向別に推定した危険度の推定結果を記憶する。
【0045】
出力部37は、ドライバに対して、注意喚起を出力する。この注意喚起は、音声によるものであってもよいし、映像によるものであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0046】
次に、制御ユニット31が有する開閉度算出部41、走行履歴データ生成部42、および注意喚起判定部43について説明する。
【0047】
開閉度算出部41は、画像入力部32に入力されたドライバの顔が撮像されたフレーム画像を処理し、そのフレーム画像におけるドライバの目の大きさを検出する。開閉度算出部41は、車両100のエンジンが始動されてから、一定時間(例えば、数分)経過するまでの間に、ドライバの顔が撮像されたフレーム画像を処理し、右目の大きさの最大値Rmax、および左目の大きさの最大値Lmaxを検出する。その後、開閉度算出部41は、ドライバの顔が撮像されたフレーム画像毎に、そのフレーム画像に撮像されているドライバの右目の大きさR、および左目の大きさLを検出し、右目の開閉度、および左目の開閉度を算出する。右目の開閉度は、
右目の開閉度=R/Rmax
により算出され、左目の開閉度は、
左目の開閉度=L/Lmax
により算出される。
【0048】
Rmaxが、ドライバの右目の基準サイズであり、Lmaxが、ドライバの右目の基準サイズである。
【0049】
走行履歴データ生成部42は、車両100の位置、右目の開閉度、および左目の開閉度を検知日時に対応付けたレコードを走行履歴データに追加する。
【0050】
注意喚起判定部43は、車両100の現在の走行位置、および現在の時間で、危険度推定結果記憶部36に記憶している危険度推定装置1による危険度の推定結果を検索し、車両100が危険度の高い位置を走行しているかどうかを判定する。注意喚起判定部43は、車両100が危険度の高い位置を走行していれば、注意喚起要と判定する。
【0051】
車載装置3の制御ユニット31は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、予めインストールされているプログラムを実行したときに、開閉度算出部41、走行履歴データ生成部42、および注意喚起判定部43として動作する。また、メモリは、このプログラムを展開する領域や、このプログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット31は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。
【0052】
<3.動作例>
危険度推定装置1は、以下に示す走行履歴データ収集処理と、危険度推定処理を実行する。また、車載装置3は、以下に示す走行履歴データ送信処理と、注意喚起処理を実行する。
図7は、危険度推定装置の走行履歴データ収集処理を示すフローチャートである。
図8は、危険度推定装置の危険度推定処理を示すフローチャートである。
図9は、車載装置の走行履歴データ送信処理を示すフローチャートである。
図10は、車載装置の注意喚起処理を示すフローチャートである。
【0053】
まず、
図7を参照して、危険度推定装置1の走行履歴データ収集処理について説明する。危険度推定装置1は、受信部12において、車両100に搭載されている車載装置3から送信されてきた走行履歴データを受信すると(s1)、受信した走行履歴データを走行履歴DB14に記憶する(s2)。危険度推定装置1は、s1、およびs2にかかる処理を繰り返す。これにより、危険度推定装置1は、車載装置3を搭載している複数の車両100から走行履歴データを収集する。
【0054】
ここで、
図9を参照して、車載装置3の走行履歴データ送信処理について説明する。車載装置3は、車両100のエンジンが始動されると、この走行履歴データ送信処理を開始する。車載装置3は、ドライバの左右の目の基準サイズを検出する(s21)。s21では、開閉度算出部41が、画像入力部32に入力されたドライバの顔が撮像されたフレーム画像を処理し、そのフレーム画像におけるドライバの目の大きさを検出する。開閉度算出部41は、車両100のエンジンが始動されてから、一定時間(例えば、数分)経過するまでの間に、ドライバの顔が撮像された複数のフレーム画像を処理し、右目の大きさの最大値Rmax、および左目の大きさの最大値Lmaxを検出する。開閉度算出部41は、ここで検出した右目の大きさの最大値Rmaxを、ドライバの右目の基準サイズとし、また、ここで検出した左目の大きさの最大値Lmaxを、ドライバの左目の基準サイズとする。
【0055】
車載装置3は、画像入力部32にドライバの顔が撮像されたフレーム画像が入力されると、ドライバの左右の目の開閉度を算出する(s22、s23)。s23では、開閉度算出部41が、今回入力されたドライバの顔が撮像されたフレーム画像を処理し、ドライバの右目の大きさR、および左目の大きさLを検出する。開閉度算出部41は、s21で検出したドライバの右目の基準サイズRmax、および左目の基準サイズLmaxを用いて、右目の開閉度(R/Rmax)、および左目の開閉度(L/Lmax)を算出する。
【0056】
また、車載装置3は、搭載されている車両100の位置を取得する(s24)。車両100の位置は、外部装置から測位データ入力部33に入力されている。車載装置3は、s23で開閉度算出部41が算出したドライバの左右の目の開閉度、s24で取得した車両100の位置を現在の日時に対応付けたレコードを生成し、このレコードを走行履歴データ記憶部35に追加する(s25)。走行履歴データ生成部42が、s25にかかる処理を行う。
【0057】
車載装置3は、s22でフレーム画像入力されていないと判定した場合、または上記したs25にかかる処理を行うと、走行履歴データを危険度推定装置1に送信するタイミングであるかどうかを判定する(s26)。走行履歴データを危険度推定装置1に送信するタイミングは、予め定められた時間間隔(例えば、5分間隔、10分間隔)等にしてもよいし、車両100が信号等で一時停止したタイミングにしてもよい。
【0058】
車載装置3は、s26で、走行履歴データを危険度推定装置1に送信するタイミング
であると判定すると、走行履歴データ記憶部35に記憶している、未送信の送信履歴データを送信する(s27)。未送信の送信履歴データとは、危険度推定装置1に送信していないレコードからなる送信履歴データである。
【0059】
車載装置3は、s26で走行履歴データを危険度推定装置1に送信するタイミングでないと判定した場合、または上記したs27にかかる処理を行うと、車両100のエンジンが停止されたかどうかを判定する(s28)。車載装置3は、s28でエンジンが停止されていないと判定すると、s22に戻る。また、車載装置3は、s28でエンジンが停止されたと判定すると、本処理を終了する。
【0060】
このように、車載装置3は、車両100の走行時に、走行履歴データを生成し、危険度推定装置1に送信する。
【0061】
次に、
図8を参照しながら、危険度推定装置1が実行する危険度推定処理について説明する。危険度推定装置1は、この危険度推定処理を前回の実行から一定期間(例えば、1週間、10日、1カ月)経過すると、実行する。
【0062】
危険度推定装置1は、危険度を推定する推定対象地域110を設定する(s11)。統計処理部21が、s11にかかる処理を実行する。統計処理部21は、s11で設定した推定対象地域110にかかる走行履歴データを、走行履歴DB14から抽出する(s12)。s11で抽出される走行履歴データは、車両100の位置がs11で設定した推定対象地域110内であるレコードが含まれている走行履歴データである。統計処理部21は、s12で抽出した走行履歴データを、時間帯、および車両100の走行方向別に分類する(s13)。この例では、時間帯の長さは1時間であり、各時間帯の開始時刻を毎正時である。また、
図2に示す推定対象地域110では、車両100の走行方向は4方向である。したがって、s13における走行履歴データの分類数は、96個である。
【0063】
統計処理部21は、s11で設定した推定対象地域110について、s13で分類した分類毎に、ドライバの目の開閉度の代表値を算出し、
図4に示した時間帯別開閉度データを生成する(s14)。
【0064】
危険度推定部22が、s14で生成された時間帯別開閉度データの分類毎に、危険度が高いか低いかを推定し(s15)、その推定結果を記憶する。s15では、危険度推定部22は、ドライバの目の開閉度の代表値が、予め定めた閾値α以下である分類に対して、危険度を高と推定し、予め定めた閾値αを超えている分類に対して、危険度を低と推定する。推定対象地域110に対する危険度の推定結果は、
図4に示した時間帯別開閉度データにおけるドライバの目の開閉度の代表値を、危険度の推定結果(高、または低)に置き換えたデータである。
【0065】
危険度推定装置1は、未処理の推定対象地域110の有無を判定し(s15)、未処理の推定対象地域110があれば、上記したs11~s15にかかる処理を繰り返す。危険度推定装置1は、s15で未処理の推定対象地域110がないと判定すると、本処理を終了する。
【0066】
危険度推定装置1は、この
図8に示した危険度推定処理の処理結果を図示していない記憶部に記憶する。また、危険度推定装置1は、車載装置3から危険度推定処理の処理結果の送信要求を受信すると、当該車載装置3に対して、記憶している危険度推定処理の処理結果を送信する。
【0067】
また、車載装置3は、所定の入力操作が行われたときに、危険度推定装置1に対して、危険度推定処理の処理結果の送信要求を送信する。車載装置3は、危険度推定装置1から送信されてきた危険度推定処理の処理結果を危険度推定結果記憶部36に記憶する。
【0068】
このように、危険度推定装置1は、通行量に関係なく、外光が眩しく、ドライバが歩行者や自転車等に気づきにくい地域を、交通事故の発生リスクが高い地域であると推定できる
次に、車載装置3における注意喚起処理について説明する。車載装置3は、搭載されている車両100のエンジンが始動されると、この注意喚起処理を実行する。車載装置3は注意喚起判定部43が車両100の位置、および現在の日時を取得する(s31)。注意喚起判定部43は、危険度推定結果記憶部36に、推定対象地域110別に記憶している、危険度推定処理の処理結果を参照し、ドライバに対して注意喚起が必要であるかどうかを判定する(s32)。s32では、注意喚起判定部43が、車両100の位置に対応する推定対象地域110を判断し、この推定対象地域110について危険度推定結果記憶部36に記憶している危険度推定処理の処理結果を読み出す。注意喚起判定部43は、読み出した危険度推定処理の処理結果において、車両100の現在の走行方向、および現在日時に対応する分類の危険度が高であれば注意喚起要と判定する。また、注意喚起判定部43は、読み出した危険度推定処理の処理結果において、車両100の現在の走行方向、および現在日時に対応する分類の危険度が低であれば注意喚起不要と判定する。
【0069】
注意喚起判定部43が、s32で注意喚起要と判定すると、出力部37において、ドライバに対する注意喚起を出力する(s33)。例えば、s33では、「この周辺は、外光が眩しいので、速度を落として運転しましょう。」等のメッセージを、音声、または映像で出力する。
【0070】
注意喚起判定部43は、車両100のエンジンが停止されるまで(s34)、上記s31~s33の処理を繰り返す。
【0071】
したがって、車載装置3は、外光が眩しいところを車両100で走行しているドライバに対して、注意喚起を適正に行うことができる。これにより、外光が眩しい場所での交通事故を抑制できる。
【0072】
なお、
図7~
図10に示したフローチャートにおける処理の順番は、図示した順番に限らず、適宜、その順番を入れ替えてもよい。
【0073】
<4.変形例>
上記した例の危険度推定装置1は、予め設定されている推定対象地域110について危険度を推定するとしたが、走行履歴データを処理して、設定人数を超えるドライバが目を細めている区間を推定対象地域として抽出する構成であってもよい。この場合、危険度推定装置1は、抽出した推定対象地域について、上記した処理で、危険度が高いかどうかを推定すればよい。
【0074】
また、走行履歴データを、検知日時毎に、その検知日時における車両の位置、および当該車両を運転しているドライバの目の開閉度に加えて、ドライバによる危険回避にかかる運転操作の有無を対応づけたデータにしてもよい。また、統計処理部21は、時間帯別に、推定対象地域110におけるドライバの目の開閉度の代表値、および危険回避にかかる運転操作の発生頻度を算出した統計データを生成する。そして、危険度推定部22が、時間帯別に、その時間帯について算出されたドライバの目の開閉度の代表値、および特定の運転操作の発生頻度によって、推定対象地域の危険度を推定する。
【0075】
このように構成すれば、外光の眩しさだけでなく、危険回避にかかるドライバの運転操作の発生頻度も考慮した危険度の推定が行える。危険回避にかかる運転操作は、例えば急ブレーキや、急ハンドルである。
【0076】
また、上記の例では、危険度推定装置1は、危険度を高低の2段階で推定するとしたが、3段階以上で推定してもよい。
【0077】
例えば、危険度推定装置1は、ドライバの目の開閉度の代表値に対して2つの閾値(第1の閾値α、第2の閾値β(α>β))を設定する。危険度推定装置1は、
ドライバの目の開閉度の代表値>α、であれば、危険度を低と推定し、
α≧ドライバの目の開閉度の代表値>β、であれば、危険度を中と推定し、
β≧ドライバの目の開閉度の代表値、であれば、危険度を高と推定する。
【0078】
また、車載装置3は、危険度のレベルに応じて、ドライバに対する注意喚起を変化させればよい。このように構成すれば、推定した危険度のレベルに応じて、ドライバに対する注意喚起を決め細かく行える。
【0079】
また、
図8に示したs12で、設定した推定対象地域110にかかる走行履歴データを、走行履歴DB14から抽出するとき、その時点よりも一定期間(例えば、1カ月)以上前の走行履歴データを抽出しないようにしてもよい。すなわち、推定対象地域110における危険度の推定において、その時点よりも一定期間以上前の走行履歴データを用いない構成にしてもよい。
【0080】
このように構成すれば、推定対象地域110における危険度の推定が、季節、周辺環境等の変化に対応して行える。
【0081】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0082】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
車両(100)の走行履歴データを収集し、収集した前記走行履歴データを基に統計データを生成する統計処理部(21)と、
前記統計処理部(21)によって生成された前記統計データを基にして、予め区分した時間帯別に、推定対象地域(110)の危険度を推定する危険度推定部(22)と、を備え、
前記走行履歴データは、検知日時毎に、その検知日時における車両(100)の位置と、当該車両(100)を運転しているドライバの目の開閉度とを対応付けたデータであり、
前記統計処理部(21)は、前記時間帯別に、前記推定対象地域(110)におけるドライバの目の開閉度の代表値を算出した統計データを生成し、
前記危険度推定部(22)は、前記時間帯別に、その時間帯について算出されたドライバの目の開閉度の前記代表値によって、前記推定対象地域(110)の危険度を推定する、危険度推定装置(1)。
【符号の説明】
【0083】
1…危険度推定装置
3…車載装置
5…ネットワーク
11…制御ユニット
12…受信部
13…送信部
14…走行履歴データベース(走行履歴DB)
15…地図データベース(地
図DB)
21…統計処理部
22…危険度推定部
31…制御ユニット
32…画像入力部
32a…カメラ
33…測位データ入力部
34…通信部
35…走行履歴データ記憶部
36…危険度推定結果記憶部
37…出力部
41…開閉度算出部
42…走行履歴データ生成部
43…注意喚起判定部
100…車両
110…推定対象地域