(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20231226BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 300E
B60C11/13 C
(21)【出願番号】P 2019212401
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】遊上 晋佑
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-283943(JP,A)
【文献】特開2019-151264(JP,A)
【文献】実開平04-052911(JP,U)
【文献】特開2015-112957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0271827(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/13
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、縦溝と、前記縦溝で区分される陸部とを含み、
前記陸部は、前記縦溝に面する陸部壁面を有し、
前記陸部壁面は、第1面と、前記第1面から前記縦溝の中心線側に位置する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に形成された階段状部とを含み、
前記階段状部は、前記縦溝の長手方向において、2段以上で段階的に高さが変化
し、
前記陸部は、横溝を介してタイヤ周方向に並ぶ複数のブロックを含み、
前記複数のブロックのうち、前記横溝を介して隣接する1対のブロックに、前記階段状部が設けられており、
前記1対のブロックに設けられた前記階段状部のそれぞれは、前記1対のブロックに隣接する前記横溝に向かって下降するように設けられている、
タイヤ。
【請求項2】
前記横溝を介して隣接する1対のブロックの一方は、前記縦溝に面する第1縦壁面と、前記横溝に面する横壁面と、前記第1縦壁面とタイヤ軸方向に離間し、前記横壁面に連なってタイヤ周方向に延びる第2縦壁面とを含み、
前記第1縦壁面に前記階段状部が設けられており、
前記ブロックの踏面と前記第2縦壁面とを切り欠くように形成された切欠き部が設けられており、
前記切欠き部は、前記縦溝とは逆側に段階的に高さが小さくなる階段状に形成されている、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記階段状部は、前記横溝に連通している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ブロックの前記縦溝と前記横溝とが交差するコーナ部に、前記第1面、前記第2面及び前記階段状部により画定される凹部が形成されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記階段状部の長さは、前記ブロックのタイヤ周方向の長さの80%以下である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記階段状部の幅は、前記ブロックのタイヤ軸方向の幅の30%以下である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記階段状部は、前記縦溝の長手方向において、3段以上で段階的に高さが変化する、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、複数のブロックが形成された空気入りタイヤが記載されている。前記ブロックのそれぞれ1箇所には、切欠き部が形成されている。前記切欠き部は、前記ブロックの表面から前記ブロックの縁部側の溝底方向に向かって延びる階段状の傾斜段部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤでは、雪上性能を向上することについて改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、雪上性能を向上し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、縦溝と、前記縦溝で区分される陸部とを含み、前記陸部は、前記縦溝に面する陸部壁面を有し、前記陸部壁面は、第1面と、前記第1面から前記縦溝の中心線側に位置する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に形成された階段状部とを含み、前記階段状部は、前記縦溝の長手方向において、2段以上で段階的に高さが変化する。
【0007】
本発明に係るタイヤは、前記陸部が、横溝を介してタイヤ周方向に並ぶ複数のブロックを含み、前記複数のブロックの少なくとも1つに前記階段状部が設けられている、のが望ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤは、前記複数のブロックの少なくとも2つのブロックに、前記階段状部が設けられている、のが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤは、前記複数のブロックのうち、前記横溝を介して隣接する1対のブロックに、前記階段状部が設けられている、のが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤは、前記階段状部が、前記横溝に向かって下降するように設けられている、のが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤは、前記階段状部が、前記横溝に連通している、のが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤは、前記ブロックの前記縦溝と前記横溝とが交差するコーナ部に、前記第1面、前記第2面及び前記階段状部により画定される凹部が形成されている、のが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤは、前記階段状部の長さが、前記ブロックのタイヤ周方向の長さの80%以下である、のが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤは、前記階段状部の幅が、前記ブロックのタイヤ軸方向の幅の30%以下である、のが望ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤは、前記階段状部が、前記縦溝の長手方向において、3段以上で段階的に高さが変化する、のが望ましい。
【0016】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、横溝と、前記横溝で区分される陸部とを含み、前記陸部は、前記横溝に面する陸部壁面を有し、前記陸部壁面は、第1面と、前記第1面から前記横溝の中心線側に位置する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に形成された階段状部とを含み、前記階段状部は、前記横溝の長手方向において、2段以上で段階的に高さが変化する。
【発明の効果】
【0017】
本発明1のタイヤは、縦溝に面する陸部壁面を有している。前記陸部壁面は、第1面と、前記第1面から前記縦溝の中心線側に位置する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に形成された階段状部とを含んでいる。前記階段状部は、前記縦溝の長手方向において、2段以上で段階的に高さが変化する。このような階段状部は、雪路走行時、前記縦溝の長手方向において、大きなトラクションを発生させる。したがって、本発明1のタイヤは、優れた雪上性能を有する。
【0018】
本発明2のタイヤは、横溝に面する陸部壁面を有している。前記陸部壁面は、第1面と、前記第1面から前記縦溝の中心線側に位置する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に形成された階段状部とを含んでいる。前記階段状部は、前記横溝の長手方向において、2段以上で段階的に高さが変化する。このような階段状部は、雪路走行時、前記横溝の長手方向において、大きなトラクションを発生させる。したがって、本発明2のタイヤは、優れた雪上性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態タイヤのトレッド部を拡大した平面図である。
【
図6】第2縦壁面側から見たブロックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の平面の拡大図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、冬用タイヤとして好適に用いられる。前記冬用タイヤとは、本明細書では、スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、オールシーズンタイヤ等を含む雪上走行に適したタイヤ1を意味する。
【0021】
本実施形態のトレッド部2は、縦溝3と、縦溝3で区分される陸部5とを含んでいる。縦溝3は、本明細書では、陸部5に沿って相対的にタイヤ周方向に延びている溝であればよく、例えば、直線状やジグザグ状や円弧状に延びるものを含む。また、前記溝は、本明細書では、その長手方向に対して直交する幅が1.5mm以上の溝状体をいう。
【0022】
図2は、
図1の陸部5の斜視図である。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の陸部5は、縦溝3に面する陸部壁面6を有している。
【0023】
陸部壁面6は、本実施形態では、第1面7と、第1面7から縦溝3の溝中心線3c側に位置する第2面8と、第1面7と第2面8との間に形成された階段状部9とを含んでいる。また、階段状部9は、縦溝3の長手方向において、2段以上で段階的に高さが変化する。このような階段状部9は、雪路走行時、縦溝3の長手方向において、大きなトラクションを発生させる。したがって、本実施形態のタイヤ1は、優れた雪上性能を有する。
【0024】
第1面7は、例えば、陸部5の踏面5aに連なって、タイヤ半径方向に延びている。第2面8は、本実施形態では、陸部5において、最も縦溝3側の面として形成されている。第2面8は、例えば、タイヤ半径方向に延びて縦溝3の溝底3sに連なっている。本実施形態の第2面8は、踏面5aにも連なっている。
【0025】
階段状部9は、本実施形態では、タイヤ半径方向に延びる複数の立上げ部10と、立上げ部10間を継ぐ平面部11とを含んでいる。平面部11は、例えば、陸部5の踏面5aと平行に延びている。立上げ部10と平面部11とは、縦溝3の長手方向に交互に配されている。立上げ部10は、本実施形態では、雪路に対してせん断力を作用させる。平面部11は、雪柱に押圧力を与えて押し固める。平面部11は、このような効果を発揮する限度において、踏面5aと平行に延びるものに限定されるものではない。
【0026】
平面部11は、トレッド部2の平面視、平行四辺形状である。このような平面部11は、階段状部9の剛性を高く維持する。なお、平面部11は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、矩形状でもよい。
【0027】
大きな雪柱を形成して雪上性能を高めるために、縦溝3の長手方向において、階段状部9は、3段以上で高さが変化しているのが望ましい。なお、階段状部9の高さの変化が過度に大きくなると、陸部5の剛性が小さくなり、耐摩耗性能が悪化するおそれがある。このため、階段状部9は、4段以下で高さが変化するのが望ましい。
【0028】
階段状部9の長さLaは、本実施形態では、階段状部9の幅Waよりも大きく形成されている。本実施形態の階段状部9は、タイヤ周方向に相対的に大きな雪柱を形成することができるので、大きなトラクションを発生することができる。特に限定されるものではないが、階段状部9の長さLaは、階段状部9の幅Waの2~8倍程度が望ましく、3~6倍程度がさらに望ましい。階段状部9の長さLaは、その高さが変化する方向(本実施形態では、縦溝3の長手方向)の両端間の距離である。階段状部9の幅Waは、階段状部9の長手方向に対して直交する長さ(奥行)である。
【0029】
図3は、本実施形態の陸部5の平面図である。
図4は、縦溝3側から見た陸部5の斜視図である。
図3及び
図4に示されるように、縦溝3は、本実施形態では、タイヤ周方向にジグザグ状に延びている。縦溝3は、例えば、タイヤ周方向に対して小さな角度で延びる複数の小傾斜部3aと、タイヤ周方向に隣接する小傾斜部3a間を継いで、小傾斜部3aよりも大きな角度で傾斜する大傾斜部3bとを含んでいる。大傾斜部3bは、本実施形態では、小傾斜部3aよりもタイヤ周方向の長さが小さく形成されている。小傾斜部3aは、本実施形態では、タイヤ周方向に対する角度θ1が、5~40度である。大傾斜部3bは、本実施形態では、タイヤ周方向に対する角度θ2が、45~85度である。角度θ1及びθ2は、溝中心線3cで測定された値である。
【0030】
本実施形態では、縦溝3から陸部5側に延びる横溝4が設けられている。横溝4は、例えば、陸部5を横断している。これにより、本実施形態の陸部5は、横溝4を介してタイヤ周方向に並ぶ複数のブロック12を含んでいる。なお、横溝4は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、陸部5内で終端してもよい。横溝4は、本明細書では、陸部5を横切るように相対的にタイヤ軸方向に延びている溝であればよく、例えば、直線状やジグザグ状や円弧状に延びるものを含む。
【0031】
横溝4は、例えば、大傾斜部3bに連なっている。これにより、横溝4と大傾斜部3bとでタイヤ軸方向延びる1本の雪柱が形成されるので、大きなトラクションが発生する。
【0032】
横溝4は、本実施形態では、縦溝3に連なりかつ溝幅が相対的に小さな小幅部4aと、小幅部4aに連なり小幅部4aよりも溝幅が大きな大幅部4bとを含んでいる。小幅部4aは、例えば、縦溝3の逆側へ溝幅が小さくなっている。大幅部4bは、例えば、縦溝3の逆側へ溝幅が大きくなっている。大幅部4bは、本実施形態では、小幅部4aに連なって溝幅の変化が大きい急変化部4dを含んでいる。
【0033】
ブロック12は、本実施形態では、横溝4のタイヤ周方向の一方側(
図3では上側)に配される第1ブロック12Aと、横溝4を介して第1ブロック12Aに隣接する第2ブロック12Bとを含んでいる。
【0034】
階段状部9は、少なくとも1つのブロック12に設けられていればよい。また、雪上性能をさらに高めるために、階段状部9は、少なくとも2つのブロック12に設けられるのが望ましい。本実施形態では、横溝4を介して隣接する第1ブロック12A及び第2ブロック12Bに階段状部9が設けられている。
【0035】
第1ブロック12A及び第2ブロック12Bは、それぞれ、例えば、縦溝3に面する第1縦壁面13と、横溝4に面する横壁面14とを含んでいる。また、第1ブロック12Aは、本実施形態では、第1縦壁面13とタイヤ軸方向に離間し、横壁面14に連なってタイヤ周方向に延びる第2縦壁面15を含んでいる。
【0036】
図5は、陸部5の平面図である。
図4及び5に示されるように、階段状部9は、例えば、横溝4に連通している。本実施形態では、第2ブロック12Bの階段状部9が横溝4に連通している。第1ブロック12Aの階段状部9は、大傾斜部3bに連通している。これにより、第1ブロック12Aの階段状部9と、第2ブロック12Bの階段状部9とが、横溝4及び大傾斜部3bを介してタイヤ周方向に延びる雪柱を形成するので、大きなトラクションが発生する。
【0037】
階段状部9は、例えば、横溝4に向かって下降するように設けられているのが望ましい。本実施形態では、第2ブロック12Bの階段状部9が横溝4に向かって下降している。また、第1ブロック12Aの階段状部9は、大傾斜部3bを介して横溝4に向かって傾斜している。これにより、両階段状部9によって形成される雪柱は、横溝4側に向かって段階的に雪柱の高さが大きくなるように形成される。このような雪柱は、さらに大きなトラクションを発生させる。
【0038】
本実施形態のブロック12には、縦溝3と横溝4とが交差するコーナ部12cに、第1面7、第2面8及び階段状部9により画定される凹部16aが形成されている。このような凹部16aは、縦溝3の容積を維持するので、階段状部9に固められた雪を縦溝3側にスムーズに排出し得る。本実施形態では、第2ブロック12Bに凹部16aが形成される。第1ブロック12Aには、小傾斜部3aと大傾斜部3bとが交差するコーナ部12dに、第1面7、第2面8及び階段状部9により画定される凹部16bが形成される。このような凹部16bも縦溝3の容積を維持するので、階段状部9に固められた雪を縦溝3側へスムーズに排出する。
【0039】
階段状部9の長さLa(
図1に示す)は、ブロック12のタイヤ周方向の長さL1の80%以下であるのが望ましい。このような階段状部9は、ブロック12の剛性の大きな低下を抑制して、耐摩耗性能の悪化を防止する。階段状部9のタイヤ周方向の長さLaが過度に小さいと、雪上性能を高めることができないおそれがある。このため、階段状部9の長さLaは、ブロック12の長さL1の30%以上が望ましい。ブロック12の長さL1は、本明細書では、ブロック12のタイヤ周方向の両端で測定される長さである。
【0040】
上述の作用を効果的に発揮させるために、階段状部9の幅Wa(
図1に示す)は、ブロック12のタイヤ軸方向の幅W1の30%以下が望ましい。また、階段状部9の幅Waは、ブロック12のタイヤ軸方向の幅W1の5%以上が望ましい。ブロック12の幅W1は、本明細書では、ブロック12のタイヤ軸方向の両端で測定される長さである。
【0041】
本明細書では、タイヤ1の各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。前記「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填され、しかも無負荷の状態である。
【0042】
「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0043】
前記「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0044】
図6は、第2縦壁面15側から見たブロック12の斜視図である。
図5及び
図6に示されるように、本実施形態のブロック12には、切欠き部17が設けられている。切欠き部17は、本実施形態では、第1ブロック12Aに設けられる。切欠き部17は、例えば、ブロック12の踏面12aと第2縦壁面15とを切り欠くように形成されている。本実施形態の切欠き部17は、縦溝3とは逆側に段階的に高さが小さくなる階段状に形成されている。これにより、切欠き部17によって形成される雪柱の高さは、横溝4の長手方向に沿って変化する。
【0045】
切欠き部17は、例えば、横壁面14に連なっている。このような切欠き部17は、これによって形成される雪柱を横溝4側にも排出できるので、雪上性能を高める。
【0046】
切欠き部17は、タイヤ半径方向に延びる複数の立上げ部17aと、隣接する立上げ部17a、17a間を繋ぐ水平部17bとを含んでいる。切欠き部17は、その長さLbが、幅Wbよりも小さく形成されている。切欠き部17の長さLbは、その高さが変化する方向(本実施形態では、横溝4の長手方向)の長さである。切欠き部17の幅Wbは、長手方向に対して直交する長さ(奥行)である。切欠き部17の長さLbは、例えば、幅Wbの0.15~0.35倍であるのが望ましい。
【0047】
切欠き部17は、本実施形態では、階段状部9とタイヤ周方向で重ねられている。これにより、切欠き部17と階段状部9とで同時に雪柱を形成することになるので、雪上走行時、大きなトラクションを得ることができる。特に限定されるものではないが、切欠き部17と階段状部9とがタイヤ周方向で重複する長さLcは、切欠き部17の幅Wbの50%以上が望ましく、80%以上がさらに望ましい。
【0048】
特に限定されるものではないが、切欠き部17の幅Wbは、ブロック12のタイヤ周方向の長さL1の40%~60%が望ましい。また、切欠き部17の長さLbは、ブロック12のタイヤ軸方向の幅W1の5%~30%が望ましい。
【0049】
ブロック12は、本実施形態では、サイプ18が設けられている。このようなサイプ18は、ブロック12の変形を容易にして、階段状部9や切欠き部17に残存する雪を効果的に排出し雪上性能を高める。サイプ18は、例えば、第1ブロック12A及び第2ブロック12Bのそれぞれに設けられている。サイプは、本明細書では、長手方向に対して直交する幅が1.5mm未満の切込み状体である。
【0050】
サイプ18は、例えば、タイヤ軸方向に延びている。サイプ18は、本実施形態では、各ブロック12に、タイヤ周方向に複数本、例えば、2本並べられている。サイプ18は、本実施形態では、互いに交差することなく延びている。各ブロック12内に配されたサイプ18は、互いに平行に延びているのが望ましい。
【0051】
サイプ18は、本実施形態では、第1縦壁面13からタイヤ軸方向に延びて、切欠き部17に連なることなくブロック12内で終端している。サイプ18は、例えば、ブロック12のタイヤ軸方向の幅W1の50%よりも大きく形成されている。本実施形態のサイプ18の少なくとも1本は、第1面7から延びている。これにより、階段状部9に残存する雪がさらに効果的に排出される。
【0052】
図4及び
図5に示されるように、本実施形態の横溝4には、溝底を隆起させたタイバー19が設けられている。このようなタイバー19は、ブロック12の剛性を高めて、耐摩耗性能を維持する。本実施形態のタイバー19は、第1ブロック12Aと第2ブロック12Bとを継いでいる。
【0053】
タイバー19は、本実施形態では、第2ブロック12Bのコーナ部12cからのタイヤ軸方向の距離L4が、横溝4のタイヤ軸方向の長さL5の50%以内の位置にあるのが望ましい。これにより、階段状部9が設けられたブロック12の剛性低下を抑制することができる。タイバー19は、本実施形態では、小幅部4aに配されている。これにより、上記の作用が一層発揮される。
【0054】
特に限定されるものではないが、タイバー19の長さLeは、横溝4の長さL5の15%~25%が望ましい。タイバー19の溝底からの隆起高さh1は、横溝4の溝深さd2(
図4に示す)の5%~50%が望ましく、15%~40%がさらに望ましく、25%~30%が一層望ましい。
【0055】
このようなブロック12を区分する縦溝3の溝深さd1(
図4に示す)は、例えば、5~20mmが望ましい。横溝4の溝深さd2は、縦溝3の溝深さd1よりも小さいのが望ましく、例えば、2.5~10mmである。
【0056】
図7は、本実施形態のトレッド部2の全体の平面図である。
図7に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、クラウン陸部5Aと、クラウン陸部5Aのタイヤ軸方向の両側に配される一対のミドル陸部5Bと、各ミドル陸部5Bのタイヤ軸方向の外側に配さる一対のショルダー陸部5Cとを含んでいる。クラウン陸部5Aは、例えば、タイヤ赤道C上に配されている。クラウン陸部5A、ミドル陸部5B及びショルダー陸部5Cは、それぞれ縦溝3で区分される。クラウン陸部5Aとミドル陸部5Bとは、タイヤ周方向に連続して延びるクラウン縦溝3Aで区分される。ミドル陸部5Bとショルダー陸部5Cとは、タイヤ周方向に連続して延びるショルダー縦溝3Bで区分される。
【0057】
本実施形態のクラウン陸部5A、ミドル陸部5B及びショルダー陸部5Cは、それぞれ、横溝4を介してタイヤ周方向に並ぶ複数のクラウンブロック20A、ミドルブロック20B及びショルダーブロック20Cを含んでいる。クラウン陸部5Aは、クラウン縦溝3A間を延びる複数のクラウン横溝4Aによって形成される複数のクラウンブロック20Aを含んでいる。ミドル陸部5Bは、クラウン縦溝3Aとショルダー縦溝3Bとの間を延びるミドル横溝4Bによって形成される複数のミドルブロック20Bを含んでいる。ショルダー陸部5Cは、ショルダー縦溝3Bとトレッド端Teとの間を延びるショルダー横溝4Cによって形成される複数のショルダーブロック20Cを含んでいる。
【0058】
トレッド端Teは、本明細書では、正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。
【0059】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0060】
本実施形態の階段状部9は、ショルダーブロック20Cに形成されている。ショルダーブロック20Cには、旋回走行時、大きな横力が作用する。このようなショルダーブロック20Cに階段状部9が設けられることにより、とりわけ、雪路面での操縦安定性能が向上する。上述の作用を効果的に発揮させるために、階段状部9は、本実施形態では、ショルダーブロック20Cのそれぞれに設けられている。なお、階段状部9は、ショルダーブロック20Cに設けられるも限定されず、例えば、クラウンブロック20A及び/又はミドルブロック20Bに設けられてもよい。
【0061】
本実施形態のミドル横溝4Bは、第1ブロック12Aの階段状部9と対向する位置に設けられている。対向する位置とは、本明細書では、ミドル横溝4B内を通るタイヤ軸方向線上に階段状部9が形成されることをいう。
【0062】
図8は、ミドルブロック20Bの斜視図である。
図8に示されるように、本実施形態のミドルブロック20Bは、ミドル横溝4Bに面するミドル横壁面21を有している。ミドル横壁面21は、ミドルブロック20Bの踏面24からミドル横溝4Bの溝中心線側に向かって階段状に延びているミドル横階段状部分25と、踏面24から溝底へ平面状に延びているスロープ部分26とを含んで形成されている。スロープ部分26は、ミドルブロック20Bの剛性を大きく確保する。
【0063】
ミドル横階段状部分25は、本実施形態では、タイヤ半径方向に延びる複数の半径方向面27と、半径方向面27間を継ぐ継面28とを含んでいる。継面28は、例えば、ミドル横階段状部分25で形成される雪柱に押圧力を与えて強く押し固める。
【0064】
ミドル横階段状部分25は、例えば、継面28が複数設けられる第1部分25Aと、第1部分25Aよりも継面28の数が小さい第2部分25Bとを含んでいる。本実施形態の第1部分25Aは、タイヤ半径方向の高さが異なる2つの継面28で形成されている。本実施形態の第2部分25Bは、1つの継面28で形成されている。このようなミドル横階段状部分25は、強固な雪柱を形成する。
【0065】
第1部分25Aのタイヤ半径方向の外側に配された継面28aと第2部分25Bの継面28bとが同じタイヤ半径方向の高さ位置に配されている。これにより、ミドル横階段状部分25の剛性が高く維持されて、ミドルブロック20Bの摩耗性能の悪化が抑制される。
【0066】
図7に示されるように、ミドル横階段状部分25は、本実施形態では、第1ブロック12Aのコーナ部12cと向き合った位置に配される。本実施形態のミドル横階段状部分25は、第1ブロック12Aの階段状部9とタイヤ周方向に重複する位置に配されている。これにより、階段状部9とミドル横階段状部分25とで連なる大きな雪柱が形成されるので、雪上性能が向上する。
【0067】
本実施形態のミドルブロック20Bは、ショルダー縦溝3Bに面するミドル縦壁面29を含んで形成されている。ミドル縦壁面29は、例えば、ショルダー縦溝3Bの溝中心線側に向かって階段状に延びているミドル縦階段状部分30を含んでいる。ミドル縦階段状部分30は、例えば、ショルダー縦溝3Bの溝中心線側に向かって高さが小さくなっている。ミドル縦階段状部分30は、本実施形態では、ショルダー横溝4C内を通るタイヤ軸方向線上に設けられている。
【0068】
クラウンブロック20Aは、本実施形態では、クラウン横溝4Aに面するクラウン横壁面31を有している。クラウン横壁面31は、例えば、クラウン横溝4Aの溝中心線側に向かって段階的に高さが小さくなるクラウン階段状部分33を含んでいる。クラウン階段状部分33は、本実施形態では、クラウン横壁面31のタイヤ軸方向の全長さに亘って設けられている。
【0069】
クラウン階段状部分33は、例えば、タイヤ半径方向に延びる複数の半径方向面35と、半径方向面35間を継ぐ継面37とを含んでいる。継面37は、例えば、クラウン階段状部分33によって形成される雪柱に押圧力を与えて強く押し固める。
【0070】
クラウン階段状部分33は、例えば、クラウン横溝4Aに向かって継面37が複数設けられる第1部分33Aと、第1部分33Aよりも継面37の数が小さい第2部分33Bとを含んでいる。本実施形態の第1部分33Aは、タイヤ半径方向の高さが異なる2つの継面37で形成されている。本実施形態の第2部分25Bは、1つの継面37で形成されている。このようなクラウン階段状部分33は、強固な雪柱を形成する。
【0071】
本実施形態の階段状部9は、ブロック20に形成されている。しかしながら、階段状部9は、ブロック20に設けられるものに限定されるものではなく、例えば、横断する横溝4の設けられないリブ状の陸部5に設けられてもよい。
【0072】
図9は、他の実施形態の陸部5の平面図である。本実施形態の構成要素と同じ構成要素には、同じ符号が付されて、その詳細な説明が省略される。
図9に示されるように、この実施形態の陸部5は、横溝4で区分されている。陸部5は、例えば、横溝4に面する陸部壁面40を有している。
【0073】
陸部壁面40は、この実施形態では、第1面41と、第1面41から横溝4の溝中心線4c側に位置する第2面42と、第1面41と第2面42との間に形成された階段状部43とを含んでいる。また、階段状部43は、横溝4の長手方向において、2段以上で段階的に高さが変化する。このような階段状部43は、雪路走行時、横溝4の長手方向において、大きなトラクションを発生させる。したがって、この実施形態のタイヤ1も、優れた雪上性能を有する。
【0074】
階段状部43の長さLdは、この実施形態では、階段状部43の幅Wdよりも大きく形成されている。階段状部43の長さLdは、例えば、階段状部43の幅Wdの2~8倍程度が望ましい。これにより、この実施形態の階段状部43は、タイヤ軸方向に相対的に大きな雪柱を形成することができる。階段状部43の長さLdは、その高さが変化する方向(本実施形態では、横溝4の長手方向)の両端間の距離である。階段状部43の幅Wdは、階段状部43の長手方向に対して直交する長さ(奥行)である。
【0075】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例】
【0076】
図7の基本パターンを有するタイヤが表1の仕様に基づき試作された。そして、各テストタイヤについて雪上性能と耐摩耗性能とがテストされた。テスト方法や共通仕様は以下の通りである。
タイヤサイズ:35×12.50R20LT
リムサイズ:20×10J
空気圧:260kPa
【0077】
<雪上性能>
テストタイヤが排気量4600ccのピックアップトラックの全輪に装着された。テストドライバーが雪路面を上記車両で走行し、そのときの駆動性、制動性及び安定性に関する評価が、テストドライバーの官能によりなされた。結果は、比較例1を100とする評点で表示される。数値が大きいほど雪上性能に優れている。
【0078】
<耐摩耗性能>
テストドライバーが乾燥アスファルト路面を上記車両で走行した。そして、ショルダーブロックの摩耗の程度や偏摩耗の発生状況がテストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で表示される。数値が大きいほど、摩耗や偏摩耗の発生が抑制されており、耐摩耗性能に優れている。
走行距離:20000km
テストの結果が表1に示される。表1の「幅方向」は、縦溝の幅方向を意味し、「長手方向」は、縦溝の長手方向を意味する。
【0079】
【0080】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤよりも雪上性能に優れていることが確認できた。また、実施例のタイヤは、耐摩耗性能が維持されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0081】
1 タイヤ
3 縦溝
3c 溝中心線
5 陸部
6 陸部壁面
7 第1面
8 第2面
9 階段状部