(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ラミネート用グラビアインキ、印刷物、および積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20231226BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20231226BHJP
C09D 11/033 20140101ALI20231226BHJP
C09D 11/106 20140101ALI20231226BHJP
【FI】
C09D11/102
B32B27/40
C09D11/033
C09D11/106
(21)【出願番号】P 2019220017
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高畑 智明
(72)【発明者】
【氏名】塚越 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅弘
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-189903(JP,A)
【文献】特開2002-294128(JP,A)
【文献】特開2017-019991(JP,A)
【文献】特開2001-271015(JP,A)
【文献】特開平04-372640(JP,A)
【文献】特開2019-038897(JP,A)
【文献】特開平10-072562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/102
B32B 27/40
C09D 11/033
C09D 11/106
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合樹脂および/またはセルロース系樹脂を含むバインダー樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、並びに、有機溶剤を含有するラミネート用グラビアインキであって、前記ポリウレタン樹脂総質量中に、ポリアミン由来のウレア結合を有しないポリウレタン樹脂(A)を60質量%以上含有し、前記有機溶剤がエステル系有機溶剤を含み、有機溶剤総質量中に、エステル系有機溶剤を80質量%以上含有するか、芳香族系有機溶剤を含む場合は、有機溶剤総質量中に、エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤との合計が50質量%以上であるラミネート用グラビアインキ。
【請求項2】
ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合樹脂を含むバインダー樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、および、有機溶剤を含有するラミネート用グラビアインキであって、前記ポリウレタン樹脂総質量中に、ポリアミン由来のウレア結合を有しないポリウレタン樹脂(A)を60質量%以上含有し、前記有機溶剤がエステル系有機溶剤を含み、有機溶剤総質量中に、エステル系有機溶剤を50質量%以上含有するか、芳香族系有機溶剤を含む場合は、有機溶剤総質量中に、エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤との合計が50質量%以上であるラミネート用グラビアインキ。
【請求項3】
有機溶剤総質量中に、エステル系有機溶剤を70質量%以上含有するか、芳香族系有機溶剤を含む場合は、有機溶剤総質量中に、エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤との合計が70質量%以上である、請求
項2に記載のラミネート用グラビアインキ。
【請求項4】
ポリウレタン樹脂(A)が、ポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオール由来の構成単位を含有する、請求項1~3いずれかに記載のラミネート用グラビアインキ。
【請求項5】
ポリウレタン樹脂(A)の少なくとも一つの末端基が、アルキル基および/または水酸基である、請求項1~4いずれかに記載のラミネート用グラビアインキ。
【請求項6】
基材1上に請求項1~5いずれかに記載のラミネート用グラビアインキから形成された印刷層を有する印刷物。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷物の印刷層上に、接着剤層および基材2をこの順に有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用グラビアインキ、基材1上に当該インキからなる印刷層を有する印刷物、および印刷物が有する印刷層上に更に基材2をラミネートしてなる積層体に関する。
【0002】
より具体的には、ポリオプロピレン(OPP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ナイロン(NY)フィルムなどのフィルム基材への印刷において、版カブリ性および着肉性(転移性ともいう)など印刷適性に優れた性質を有する上記グラビアインキと、それを用いた印刷物および積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、グラビア印刷方式等で用いられるインキは、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合樹脂やセルロース系樹脂、有機溶剤で構成されていることが多い。グラビアインキの中でも、ポリウレタン樹脂としてポリアミン由来のウレア結合単位を有するポリウレタンウレア樹脂をバインダー樹脂にもちいた場合、フィルム基材への密着性およびラミネート強度が向上することが知られている(特許文献1)。
【0004】
上記インキにおいてラミネート用の使用形態では、特に食品包装用の積層体として使用されることが多く、例えば、基材上にインキが印刷され、更にその印刷層上に接着剤・アンカー剤を介して別の基材を貼り合わせられる。このような積層体ではラミネート強度が要求される。そして、使用されるポリウレタン樹脂には、耐ブロッキング性およびラミネート強度の観点からウレア結合が必要であり、ポリウレタン樹脂の設計としてポリアミン由来のウレア結合が必要であるとされている。
【0005】
資源の再利用の観点からグラビアインキに用いられる有機溶剤は回収して再利用される試みがなされているが、一般的にポリウレタンウレア樹脂をバインダー樹脂に用いた場合では、ポリウレタンウレア樹脂の溶解性確保のためにアルコール系有機溶剤を一定量使用し、更にエステル系有機溶剤、グリコール系有機溶剤など複数種の有機溶剤を混合・併用することが必要となり、溶剤組成が複雑になるため、有機溶剤の回収・再利用が難しいという問題がある(特許文献2)。更に、印刷適性を維持するためにインキ中の有機溶剤組成を変化させないための工夫も必要であった(特許文献3)。
【0006】
良好な印刷適性の実現のためには、上記したような有機溶剤の配合組成(混合組成ともいう)を維持しながら印刷することが必要であるが、例えば、外部環境において特に気温・湿度の過酷な条件では各種溶剤の揮発速度の差異が発生し、グラビアインキ中の溶剤組成が変化してしまい、印刷適性が劣化する等などの問題点が指摘されていた。
【0007】
したがって、産業上利用するうえで安定した印刷適性およびラミネート強度の確保しながらも溶剤回収再利用に適したグラビアインキを開発するという課題は未だは解消されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-199991号公報
【文献】特開2008-266370号公報
【文献】特開2016-094548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、印刷適性、基材密着性およびラミネート強度に優れ、更に溶剤回収・再利用を容易にするグラビアインキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を鑑みて、鋭意検討を行った結果、以下に記載のラミネート用グラビアインキを用いることで当該課題を解決できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0011】
本発明は、ポリウレタン樹脂と、塩化ビニル共重合樹脂および/またはセルロース系樹脂とを含むバインダー樹脂、並びに、有機溶剤を含有するラミネート用グラビアインキであって、
前記ポリウレタン樹脂総質量中に、ポリアミン由来のウレア結合を有しないポリウレタン樹脂(A)を60質量%以上含有し、
前記有機溶剤がエステル系有機溶剤を含み、有機溶剤総質量中に、エステル系有機溶剤を50質量%以上含有するか、芳香族系有機溶剤を含む場合は、有機溶剤総質量中に、エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤との合計が50質量%以上であるラミネート用グラビアインキに関する。
【0012】
また、本発明は、有機溶剤総質量中に、エステル系有機溶剤を70質量%以上含有するか、芳香族系有機溶剤を含む場合は、有機溶剤総質量中に、エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤との合計が70質量%以上である、上記ラミネート用グラビアインキに関する。
【0013】
また、本発明は、ポリウレタン樹脂(A)が、ポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオール由来の構成単位を含有する、上記ラミネート用グラビアインキに関する。
【0014】
また、本発明は、ポリウレタン樹脂(A)の少なくとも一つの末端基が、アルキル基および/または水酸基である、上記ラミネート用グラビアインキに関する。
【0015】
また、本発明は、更に、塩素化ポリオレフィン樹脂を含有する、上記ラミネート用グラビアインキに関する。
【0016】
また、本発明は、基材1上に上記ラミネート用グラビアインキから形成された印刷層を有する印刷物に関する。
【0017】
また、本発明は、上記印刷物の印刷層上に、接着剤層および基材2をこの順に有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、本発明は、印刷適性、基材密着性およびラミネート強度に優れ、更に溶剤回収・再利用を容易にするグラビアインキを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に例を挙げて本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する事項は本発明の実施形態の一例ないし代表例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0020】
以下の説明において、ラミネート用グラビアインキは単に「インキ」または「グラビアインキ」と表記する場合があるが同義である。また、ラミネート用グラビアインキにより形成された印刷層のことを「インキ皮膜」と表記する場合があるが同義である。
【0021】
本発明はポリウレタン樹脂と、塩化ビニル共重合樹脂および/またはセルロース系樹脂と、有機溶剤とを含有するグラビアインキであって、「ポリウレタン樹脂は、ポリアミン由来のウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(A)を60%以上含有し」、「エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤」、または、「エステル系有機溶剤」を主成分(50質量%以上)とすることで、同有機溶剤での希釈・粘度調整が可能となり、複雑な混合溶剤を使用しないことから溶剤組成の大幅な変化がなく安定した印刷適性を示すグラビアインキを提供する。
【0022】
(バインダー樹脂)
本発明のラミネート用グラビアインキは、バインダー樹脂として、ポリウレタン樹脂と、塩化ビニル共重合樹脂および/またはセルロース系樹脂とを含むものである。バインダー樹脂とは本発明のグラビアインキにおける結着樹脂をいい、有機溶剤に可溶な熱可塑性樹脂であることが好ましい。
バインダー樹脂はガラス転移温度が-100℃以上0℃以下であるポリウレタン樹脂と、ガラス転移温度が40℃以上200℃以下である塩化ビニル共重合樹脂および/またはセルロース系樹脂とを併用することが好ましい。更には、ガラス転移温度が-80℃~-10℃であるポリウレタン樹脂と、ガラス転移温度が50℃~190℃である塩化ビニル共重合樹脂および/またはセルロース系樹脂とを併用することが好ましい。なお、本明細書においてガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)における測定値である。
【0023】
上記ポリウレタン樹脂は、バインダー樹脂総量中、ポリウレタン樹脂を合計で30~95質量%含有することが好ましい。基材への接着性が良好となるためである。バインダー樹脂は、更に塩化ビニル共重合樹脂および/またはセルロース系樹脂を含有する。この場合耐ブロッキング性およびラミネート強度が良好となる。
【0024】
また、バインダー樹脂100質量%中、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂を合計で70~100質量%含むことが好ましく、さらに好ましくは90~100質量%である。
更に、質量比で表される、ポリウレタン樹脂/塩化ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂/セルロース系樹脂は、それぞれ質量比で95/5~30/70であることが好ましい。より好ましくは質量比で90/10~40/60である。この配合比および組み合わせのとき、耐ブロッキング性およびラミネート強度が良好となるためである。
【0025】
<ポリアミン由来のウレア結合を有しないポリウレタン樹脂(A)>
上記ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂100質量%中に、ポリアミン由来のウレア結合を有しないポリウレタン樹脂(A)を60質量%以上含有する。ポリウレタン樹脂100質量%中に、ポリウレタン樹脂(A)を70質量%含有することが好ましく、80質量%以上含有することがなお好ましく、90質量%以上含有することが更に好ましい。ポリアミン由来のウレア結合を有しないポリウレタン樹脂(A)を使用することで再溶解性が向上し、印刷適性が良好となり、ラミネート強度も良好となる。
ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、10,000~100,000であることが好ましく、ポリウレタン樹脂(A)のガラス転移温度が0℃以下であることが好ましい。-100℃~0℃であることがなお好ましく、-80~-10℃であることが更に好ましい。塩化ビニル共重合樹脂および/またはセルロース系樹脂との併用でラミネート強度が良好となるためである。
「ポリアミン由来のウレア結合を有しない」とは、ジアミン、トリアミンその他のポリアミンとイソシアネートとの反応によるウレア結合を有さない旨の規定であり、当該ジアミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンなどが挙げられ、トリアミンとしては、イミノビスプロピルアミン、イミノビスエチルアミンなどが挙げられる。しかし、ポリウレタン樹脂(A)は、モノアミンとイソシアネートとの反応由来の構成単位としてそのウレア結合を含有してもよい。
【0026】
上記ポリウレタン樹脂(A)の製造方法は特に制限はなく、公知の方法により適宜製造されるが、少なくともポリオール由来の構成単位とポリイソシアネート由来の構成単位から形成されたポリウレタン樹脂であればよい。中でも、エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤から構成された混合溶剤、または、エステル系有機溶剤、との親和性を良好とするため、また印刷適性を良化させるためにポリウレタン樹脂の末端基が水酸基および/またはアルキル基となっていることが好ましい。また前記溶剤との親和性を妨げない限りはモノアミンを使用してもよい。製造方法としては、例えば、特開2017-19991号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0027】
(ポリオール)
ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、水素添加ひまし油ポリオール、ダイマージオール、水添ダイマージオールなどが好適に挙げられる。より好ましくはポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールである。
【0028】
ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコールおよびこれらから選ばれる共重合体であるポリエーテルポリオールなどが挙げられる。ポリエーテルポリオールは数平均分子量200~5,000であることが好ましい。数平均分子量は、末端を水酸基として水酸基価から計算するものであり、(式1)により求められる。
(式1)ポリオールの数平均分子量=1000×56.1× 水酸基の価数/水酸基価
【0029】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸とジオールとのエステル化反応により得られる縮合物等が挙げられる。
多塩基酸としては二塩基酸であることが好ましく、当該二塩基酸としては、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等が挙げられる。
ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、2、4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、1-モノグリセライド、2-モノグリセライド、1-モノグリセリンエーテル、2-モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が挙げられる。
【0030】
ジオールは、なかでも分岐構造を有するジオールが好ましい。分岐構造とは、ジオールに含まれるアルキレン基の水素原子の少なくとも1つがアルキル基によって置換された、アルキル側鎖を有するジオールを意味し、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、および2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等が好適に挙げられる。これらは、印刷適性、印刷効果、耐ブロッキング性を向上させるため特に好ましい。
これらのポリエステルポリオールは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。なお、二塩基酸としてはセバシン酸、アジピン酸が特に好ましい。また、ヒドロキシル基を3個以上有するポリオール、カルボキシル基を3個以上有する多価カルボン酸を併用することもできる。
【0031】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは200~5,000である。数平均分子量は、上記(式1)により求めることが可能である。
【0032】
(ポリイソシアネート)
上記ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。なおこれらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていても良い。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加された4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
中でも好ましくは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体から選ばれる少なくとも一種である。これらのポリイソシアネートは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
(末端基としてのアルキル基、水酸基)
上記ポリウレタン樹脂(A)における末端基とは、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の構造が直鎖構造であれば、直鎖構造の両端を末端基といい、ポリウレタン樹脂(A)の構造が枝分かれ構造であれば枝の端も含めた端部分も末端基という。
末端基としてはアルキル基および/または水酸基であることが好ましく、水酸基を有する場合、ポリウレタン樹脂(A)の水酸基価としては0.1~35mgKOH/gであることが好ましく、0.5~20mgKOH/gであることがなお好ましい。アルキル基を有する場合は炭素数1~10であることが好ましく、1~8であることがなお好ましく、1~5であることが更に好ましい。当該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、等が好適に挙げられる。
【0034】
ポリウレタン樹脂(A)の末端基として水酸基、アルキル基を導入するためには、ポリオールをポリイソシアネートと反応させたのち水酸基、または、アルキル基を有する重合停止剤を使用するという手法が挙げられる。例えば、ポリオールとポリイソシアネートを必要に応じイソシアネート基に不活性な溶媒を用い、また、更に必要であればウレタン化触媒を用いて50℃~150℃の温度で反応させ(ウレタン化反応)、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、次いで、このプレポリマーに水酸基、アルキル基を有する重合停止剤を一段で反応させてポリウレタン樹脂(A)を得るワンショット法など公知の方法により製造することが出来る。
水酸基を末端基として導入するためには、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等のジオールや2-エタノールアミン等、1級、2級のアミノ基を有するモノアルコールアミン化合物を水酸基を有する重合停止剤として使用するという方法、または上記ウレタン化反応をポリオールの水酸基価を過剰として末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を得るという方法が好適に挙げられる。
アルキル基を末端基として導入するためには、アルキル基を有する重合停止剤としてエタノール、プロパノール、イソプロパノール等、1価アルコールを用いるほか、ジ-n-ブチルアミン等の1価のアミノ基を有する化合物を用いる方法が好適に挙げられる。
【0035】
前記、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造するに当たり、ポリオールとポリイソシアネートとの量は、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数と高分子ポリオールの合計の水酸基のモル数の比であるNCO/OH比=1.05~3.0の範囲となるようにすることが好ましい。更に好ましくはNCO/OH比=1.1~2.0である。
【0036】
また、前記プレポリマーの合成には有機溶剤を用いることが反応制御の面で好ましい。インキとして使用する有機溶剤の組成に近い有機溶剤が好ましい。エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤から構成された混合溶剤、または、エステル系有機溶剤などが好適である。また他に使用できる有機溶剤としてはイソシアネート基と反応不活性な有機溶剤が好ましく、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上混合し混合溶媒として用いることもできる。
【0037】
さらに、このプレポリマーの合成反応には触媒を用いることもできる。使用できる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアニリンなどの3級アミン系の触媒;スズ、亜鉛などの金属系の触媒などが挙げられる。これらの触媒は通常ポリオール化合物に対して0.001~1モル%の範囲で使用される。
【0038】
<塩化ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニル由来の構成単位とその他モノマー由来の構成単位を含有するものであれば特に限定されない。中でも塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂および塩化ビニル‐アクリル共重合樹脂が好ましい。
【0039】
<塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであり、分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、20,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、皮膜物性、ラミネート強度等が良好となる。
また、有機溶剤への溶解性が向上するため、ケン化反応あるいは共重合でビニルアルコール由来の水酸基を含むものが更に好ましく、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0040】
<塩化ビニル-アクリル共重合樹脂>
塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、塩化ビニルモノマーとアクリルモノマーの共重合樹脂を主成分とするものであり、アクリルモノマーとしては、基材に対する接着性と有機溶剤に対する溶解性が向上するため(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含むことが好ましい。アクリルモノマーは、ポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト重合されていても良い。塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、重量平均分子量が10,000から100,000であることが好ましく、30,000から70,000であることが更に好ましい。また、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましく、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0041】
また、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂中の塩化ビニルモノマー由来の構造は、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂固形分100質量%中、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、皮膜物性、ラミネート強度等が良好となる。
【0042】
以下の説明において、(メタ)アクリルないし(メタ)アクリレートはそれぞれメタクリルおよびアクリル、メタクリレートおよびアクリレートを意味する。
【0043】
上記アクリルモノマーは水酸基を有するものが好ましく、例としては(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが溶剤に対する溶解性を向上させるため、より好ましい。これらは単独または2種以上を併用できる。なお上記以外のアクリルモノマーを随時含有しても良い。
【0044】
<セルロース系樹脂>
セルロース系樹脂としては、例えばニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース等が挙げられ、上記アルキル基は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していても良い。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースが好ましい。分子量としては重量平均分子量で5,000~1,000,000のものが好ましく、10,000~200,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が100℃~160℃であるものが好ましい。
【0045】
(ニトロセルロース)
ニトロセルロースは、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましく、重量平均分子量が10,000~100,000であることが好ましく、10,000~80,000であることがなお好ましい。インキ皮膜の強度が向上し、溶剤への溶解性、インキの低温安定性、併用樹脂との相溶性が向上するため好ましい。また、窒素含有量は10.5~12.5質量%であることが好ましい。
【0046】
<他のバインダー樹脂>
バインダー樹脂は、バインダー性能を有するものであれば、上記ポリウレタン樹脂(A)を含むポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合樹脂、およびセルロース系樹脂以外の樹脂を併用しても良く、例えば、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、無水マレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂、酢酸ビニル樹脂、ロジン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、シクロオレフィン樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができ、その含有量は、バインダー樹脂の固形分100質量%に対して、0~30質量%が好ましく、0~15質量%がより好ましい。なお、バインダー樹脂は、塩素化ポリオレフィン樹脂を含まない。
【0047】
<塩素化ポリオレフィン樹脂>
本発明におけるインキは、塩素化オレフィン樹脂を含むことが好ましい。塩素化オレフィン樹脂は、易接着処理基材への接着性やラミネート強度が向上するため、塩素含有率が25~45質量%であることが好ましく、26~40質量%であることがより好ましい。ここで、本発明における塩素含有率とは、塩素化ポリオレフィン樹脂100質量%中の塩素原子の含有質量%をいう。また、エステル系溶剤/アルコール系溶剤などの混合溶剤への溶解性の観点から、本発明における塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量は、5,000~80,000であることが好ましく、10,000~50,000であることがなお好ましい。また、耐ブロッキング性とのバランスの観点から、塩素化オレフィン樹脂はインキ100質量%中に0.05~2質量%含有することが好ましい。より好ましくは0.1~1.0質量%である。
本発明において、塩素化ポリオレフィン樹脂とは、下記一般式(2)で示されるα-オレフィンの重合体の水素を塩素置換した構造を有するものである。
一般式(2)
CH2=CH-R3
(式中、R3は炭素数1以上のアルキル基である。)
塩素化ポリオレフィン樹脂は、柔軟性を持つアルキル基を分枝構造として有するため、低温下でも粘稠な状態であり、上記使用にて基材接着性を向上させる。塩素化ポリオレフィン樹脂におけるポリオレフィン構造は、特に制限はない。例えば、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィン系不飽和炭化水素の単独重合体又は共重合体を含有する樹脂が好ましい。中でもポリプロピレン構造(すなわち塩素化ポリプロピレン構造)を含むものが特に好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂は、ポリウレア由来の構成単位を有しないポリウレタン樹脂と併用した場合に優れた基材密着性、ラミネート強度が得られる。
【0048】
<有機溶剤>
本発明のグラビアインキは有機溶剤を含み、有機溶剤100質量%中に、エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤から構成された混合溶剤、または、エステル系有機溶剤、のいずれかを50質量%以上含有する。有機溶剤100質量%中の含有率は、60質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがなお好ましく、80質量%以上含有することが更に好ましい。芳香族系有機溶剤としては、トルエン、キシレン等が好ましく、エステル系有機溶剤としては酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等が好ましい。環境に配慮し、芳香族系有機溶剤を含まないノントルエン系有機溶剤とするためにエステル系有機溶剤の使用が好ましい。
【0049】
「エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤の混合溶剤、または、エステル系有機溶剤のいずれかを50質量%以上」とは、「エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤の混合溶剤を50質量%以上」または「エステル系有機溶剤を50質量%以上」のいずれか、という意味であり、前者はエステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤を両方含有していることを要件とし、その場合には「エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤の混合溶剤」として扱う。一方、後者の「エステル系有機溶剤を50質量%以上」は芳香族系有機溶剤を含有する場合を含まない。
【0050】
(エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤から構成された混合溶剤)
エステル系有機溶剤と、芳香族系有機溶剤の混合質量比率(エステル系有機溶剤:芳香族系有機溶剤)としては10:90~90:10であることが好ましく、20:80~80:20であることがなお好ましく、30:70~70:30であることが更に好ましい。
【0051】
(エステル系有機溶剤)
エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等が好ましく、酢酸エチルおよび/または酢酸n-プロピルを含むことがなお好ましい。
【0052】
(その他有機溶剤)
上記有機溶剤はエステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤から構成された混合溶剤、エステル系有機溶剤以外の有機溶剤を含有してもよく、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール系有機溶剤(以下記載のグリコールエーテル系有機溶剤を含まない)、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。印刷適性を良好とするためには有機溶剤100質量%中、30質量%以下の量でグリコールエーテル系有機溶剤を含むことが好ましい。また、有機溶剤100質量%中、アルコール系有機溶剤(グリコールエーテル系有機溶剤を含まない)は、10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがなお好ましく、3質量%以下とすることが更に好ましい。
なお、本発明のグラビアインキは、液状媒体として水を含んでいても良いが、その含有量は液状媒体100質量%中0.1~5質量%が好ましい。
【0053】
(顔料)
本発明のグラビアインキにおいては、顔料を含むことが好ましく、グラビアインキ100質量%中、0.2~60質量%含むことが好ましい。なお、顔料は、有機顔料、無機顔料、体質顔料のいずれでも使用は可能であるが、無機顔料では酸化チタンを含むもの、体質顔料としては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが好ましい。有機顔料では、有機化合物、有機金属錯体からなるものの使用が好ましい。
【0054】
(有機顔料)
上記有機顔料としては、以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。
【0055】
有機顔料の色相としては黒色顔料、藍色顔料、緑色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料、茶色顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。また更には、黒色顔料、藍色顔料、赤色顔料、黄色顔料、からなる群より選ばれる少なくとも一種または二種以上が好ましい。有機顔料として具体的な例をカラーインデックス(Colour Index International、略称C.I. )のC.I.ナンバーで示す。
好ましくはC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7であり、一種または二種以上を使用することが好ましい。
【0056】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒等が挙げられ、アルミニウムはリーフィングタイプまたはノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0057】
<酸化チタン顔料>
本発明において、酸化チタン顔料は、結晶構造がアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれのものを使用しても良い。中でも顔料分散性が良好であるため、ルチル型酸化チタンの使用が好ましい。酸化チタンの工業的生産では原料にルチル鉱石またはイルメナイト鉱石(FeTiO3)が用いられている。主な製造法には塩素法と硫酸法の二種類がありいずれの製法のものを用いても良い。
また、グラビア印刷における印刷適性が向上するため、酸化チタン顔料は表面処理されているものが好ましい。特にSi、Al、Zn、Zrおよびそれらの酸化物から選ばれる少なくとも一種の金属により表面処理されているものが好ましい。
【0058】
また、JIS K5101に規定されている測定法による吸油量が14~35ml/100gであることが好ましく、17~32ml/100gであることがより好ましい。また、透過型電子顕微鏡により測定した平均粒子径(メディアン粒子径)が0.2~0.3μmであることが好ましい。また、酸化チタン顔料の合計含有量は、インキ100重量%中、10~60重量%であることが好ましく、10~45重量%であることがより好ましい。また複数種の酸化チタン顔料を併用しても良い。
本発明のグラビアインキにおいて、酸化チタン顔料の他に、その他の無機顔料、有機顔料も更に併用することができる。
【0059】
<添加剤>
本発明のグラビアインキは、添加剤として従来公知のものを適宜含むことができ、インキ組成物の製造においては必要に応じて添加剤、例えば顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、キレート架橋剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、上記以外のワックス成分、イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤などを使用することができる。
【0060】
(イソシアネート系硬化剤)
イソシアネート系硬化剤としては、ポリイソシアネートおよびそれらの変性化合物を利用できる。具体的には、ポリイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体、アダクト体が好適であり、ポリイソシアネートとしてはジイソシアネートが好ましく、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、及び、α,α,α′,α′-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネートが利用できる。具体的な市販の製品としては、24A-100、22A-75、TPA-100、TSA-100、TSS-100、TAE-100、TKA-100、P301-75E、E402-808、E405-70B、AE700-100、D101、D201、A201H(旭化成社製)、マイテックY260A(三菱化学社製)、コロネート CORONATE HX、コロネート CORONATE HL、コロネート CORONATE L(日本ポリウレタン社製)、デスモデュール N75MPA/X(バイエル社製)等が例示できる。なかでも、イソホロンジイソシアネートと、イソホロンジイソシアネートのアダクト体および/またはイソシアヌレート体が好ましい。
【0061】
(顔料分散剤)
顔料を安定に分散させるため顔料分散剤を併用することもできる。顔料分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総質量100質量%に対して0.1~10.0質量%でインキ中に含まれることが好ましい。さらに、0.1~3.0質量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0062】
<グラビアインキの製造>
本発明のグラビアインキは、ポリウレタン樹脂(A)、塩化ビニル共重合樹脂および/またはセルロース系樹脂および顔料を有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。具体的には、例えば有機顔料、ポリウレタン樹脂(A)、塩化ビニル共重合樹脂、および必要に応じて上記顔料分散剤を混合し、有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、更にポリウレタン樹脂、水、あるいは必要に応じて他の樹脂や添加剤などを配合することによりグラビアインキを製造することができる。また、顔料分散体の粒度分布は、分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミル、ガンマミルなどを用いることができる。中でもサンドミル等のビーズミル分散機による製造が好ましい。ビーズミル分散機のビーズの種類およびサイズ、ビーズの充填率、分散処理時間、粘度などを適宜調節することにより、製造することができる。
【0063】
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0064】
上記方法で製造されたグラビアインキの粘度は、高速印刷(50~300m/分)に対応させるため、B型粘度計での25℃における粘度が40~500cpsの粘度範囲であることが好ましい。より好ましくは50~400cpsである。この粘度範囲は、ザーンカップ#4での粘度が9秒~50秒程度に相当する。なお、グラビアまたはフレキソインキ組成物の粘度は、使用される原材料の種類や量、例えば有機顔料、バインダー樹脂、有機溶剤などの量を適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の有機顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0065】
<グラビア印刷>
(グラビア版)
上記グラビア印刷においては、グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻または腐蝕・レーザーにて凹部を各色で作成される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては150線~350線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1μm~100μmが好ましい。
(印刷機)
グラビア印刷機において一つの印刷ユニットには上記グラビア版およびドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、有機溶剤系グラビアまたはフレキソインキおよび絵柄インキに対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0066】
<基材1>
基材1は、印刷される面(印刷層と接する面)の濡れ指数が30~60dyne/cmである。35~55dyne/cmであることが更に好ましい。なお、濡れ指数は、濡れ指数標準液を用いてJISK6768に記載の方法で測定した値である。
本発明の印刷物に使用できる基材1は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハン、紙、アルミなど、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状の基材が挙げられる。また、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの無機化合物をポリエチレンテレフタレート、ナイロンフィルムに蒸着した蒸着基材も用いることができ、更に蒸着処理面がポリビニルアルコールなどによるコート処理を施されていても良い。
基材1は、印刷層と接する面の濡れ指数が上記範囲となるように易接着処理されていることが好ましい。易接着処理とは、例えば、コロナ放電処理、紫外線/オゾン処理、プラズマ処理、酸素プラズマ処理、プライマー処理等が挙げられる。例えばコロナ放電処理では基材上に水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等が発現する。水素結合を利用できるためインキ中には水酸基やアミノ基といった官能基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0067】
<基材2>
基材2としては基材1と同様のものが挙げられ、同一でも異なっていても良い。中でも未延伸ポリエチレン、未延伸ポリプロピレン、ナイロン基材、アルミニウム箔基材、アルミニウム蒸着基材などが好ましい。
【0068】
<積層体>
本発明の積層体は、上記印刷物の印刷層に、更にフィルム層が順に貼り合わされたものである。なお、積層体は接着剤層を含む積層体が好ましく、基材1、印刷層、接着剤層、基材2を順に有する積層体が好ましい。接着剤層は、アンカーコート剤、ウレタン系ラミネート接着剤、溶融樹脂等からなる層が挙げられる。アンカーコート剤(AC剤)としてはイミン系AC剤、イソシアネート系AC剤、ポリブタジエン系AC剤、チタン系AC剤が挙げられ、ウレタン系ラミネート接着剤としてはポリエーテルウレタン系ラミネート接着剤、ポリエステル系ラミネート接着剤などが挙げられ、有機溶剤を含むものと、無溶剤のものとがある。また、溶融樹脂としては、溶融ポリエチレン等が挙げられる。
積層体の製造方法としては、例えば、印刷層上に、イミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタン系等の各種アンカーコート剤を介して、溶融ポリエチレン樹脂を積層する通常のエクストルジョンラミネート(押し出しラミネート)法、印刷面にウレタン系等の接着剤を塗工し、その上にプラスチックフィルムを積層するドライラミネート法やノンソルベントラミネート法、また印刷面に直接溶融ポリプロピレンを圧着して積層するダイレクトラミネート法等、公知のラミネート工程により得られる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、以下の実施態様は本発明のごく一例であり、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表す。
【0070】
(酸価および水酸基価)
JISK0070に記載された方法に従って測定した。
【0071】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW2500
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW3000
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW4000
東ソー株式会社製 TSKgel guardcolumn SuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0072】
[合成例1](ポリウレタン樹脂P1の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ポリエステルポリオ-ルA(3‐メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸の縮合物「MPO/AA」である数平均分子量2,000のポリエステルポリオール)を278.8部、トリレンジイソシアネート(以下「TDI」とも略す)21.2部、酢酸エチル670部を仕込み、窒素気流下に70 ℃で6時間反応させ、イソプロパノール(以下「IPA」と略す)30部を加え冷却し、質量平均分子量30,000、水酸基価4mgKOH/g 固形分30.0質量%のポリウレタン樹脂P1溶液を得た。
【0073】
[合成例2~7](ポリウレタン樹脂P2~P7の合成)
表1に記載の原料および使用比率を用いた以外は、合成例1と同様の操作で、ポリウレタン樹脂P2~P6を得た。表1における略称は以下を示す。
PPG:ポリプロピレングリコール
MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
2EtAm:2-エタノールアミン
DEAE:2-ジエチルアミノエタノール
【0074】
[比較合成例1](ポリウレタン樹脂PP1の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000のMPO/AAを213部、数分子量400のPPG22.3部、MDI53.4部、酢酸エチル180部を仕込み、窒素気流下に90 ℃で4時間反応させ、末端イソシアネートプレポリマーの溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下「IPDA」とも略す)9.8部、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン(以下「AEA」とも略す)0.2部、2EtAm1.3部、酢酸エチル245部およびIPA275部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、質量平均分子量36,000、固形分30.0質量%のポリウレタン樹脂PP1溶液を得た。
【0075】
[比較合成例2](ポリウレタン樹脂PP2の合成)
表1に記載の原料および使用比率を用いた以外は、比較合成例1と同様の方法で、ポリウレタン樹脂PP2を得た。表1における略称は以下を示す。
PPA:アジピン酸と1,2-プロパンジオールの縮合物であるポリエステルポリオール
【0076】
[実施例1](グラビアインキI1の製造)
フタロシアニン藍顔料である(Lionol blue FG-7358-G トーヨーカラー社製 C.I.ピグメントブルー15:4)を10部、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインALLP:日信化学工業社製塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=92/1/7(質量比)の共重合樹脂、固形分25%酢酸エチル溶液)を17.2部、酢酸エチル20.3部、塩素化ポリプロピレン樹脂(日本製紙社製 スーパークロン370M 塩素含有率29質量%、重量平均分子量30,000 固形分50%)0.6部を撹拌混合し、ビーズミル(ジルコニアビーズを使用)で顔料分散した後、ポリウレタン樹脂溶液PU1(固形分30%)を30部、酢酸エチル22部を攪拌混合し、グラビアインキI1を得た。
【0077】
[実施例2~17](インキI2~I17の製造)
表2に記載の原料および使用比率を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、グラビアインキI2~I17を得た。なお表中の数値は各成分の合計値を表し、表中の名称は以下を表す。
DLX5-8:ニトロセルロース樹脂 ICI Novel enterprises社製 窒素分12.0% (固形分30%イソプロパノール溶液)
JR403:テイカ社製 酸化チタン
Lionol Red 6B FG4306G:トーヨーカラー社製 溶性アゾ顔料 C.I.ピグメントレッド57:1
【0078】
[比較例1~6](インキT1~T6の製造)
表2に記載の原料および使用比率を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、グラビアインキT1~T6を得た。
【0079】
[インキI1を用いた印刷物の作成]
グラビアインキI1の粘度を、酢酸エチルにてザーンカップ#3(離合社製)における粘度が16.0秒(25℃において)に希釈調整し、版深30μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、プラスチック基材である、FOR-BT#20およびE5100#15のコロナ放電処理面に印刷して40~50℃ で乾燥し、グラビアインキI1を用いた印刷物を得た。
なお、上記基材FOR-BT#20およびE5100#15は以下を表す。
・FOR-BT#20:フタムラ化学社製 両面コロナ放電処理ポリプロピレン(OPP)フィルム 膜厚20μm
・E-5100#15:東洋紡社製 片面コロナ放電処理ポリエステル(PET)フィルム 膜厚15μm
【0080】
[グラビアインキI2~I17およびグラビアインキT1~T6を用いた印刷物の作成]
グラビアインキI2~I17およびグラビアインキT1~T6を使用した以外は上記インキI1を用いた印刷物の例と同様の方法でグラビアインキI2~I17(実施例)およびグラビアインキT1~T6(比較例)を用いた印刷物をそれぞれ得た。
【0081】
[グラビアインキI1を用いた積層体の作成]
インキI1を用いた印刷物について、さらにポリエーテルウレタン系ラミネート接着剤(東洋モートン社製 TM320/CAT13B)を固形分25重量%および10重量%の酢酸エチル溶液として1.5g/m2となるように、印刷面に塗工・乾燥し、アルミ蒸着未延伸ポリプロピレン(VMCP2203、膜厚25μm、東レフィルム加工社製)と貼り合わせてドライラミネート加工を行った。
【0082】
[グラビアインキI2~I17を用いた積層体、およびグラビアインキT1~T6を用いた積層体の作成]
グラビアインキI2~I17およびグラビアインキT1~T4を使用した以外は上記インキI1を用いた積層体の例と同様の方法でグラビアインキI2~I17(実施例)およびグラビアインキT1~T6(比較例)を用いた積層体をそれぞれ得た。
【0083】
[特性評価]
上記実施例および比較例において得られたグラビアインキI1~I17(実施例)およびグラビアインキT1~T6(比較例)および、それらを用いた印刷物および積層体について、以下に記載する特性評価を行い、評価結果を表3に結果を示した。なお表中で「※インキの状態劣」とは、インキがゲル化または大幅に増粘して状態が悪く、評価が不可能であったことを意味する。
【0084】
<密着性>
グラビアインキI1~I17およびグラビアインキT1~T6を用いた印刷物について、それぞれ25℃ で1日間放置後、印刷面に幅12mmの粘着テープ(ニチバン社製セロハンテープ)を貼り付け、これを基材面に対して90°方向に急速に剥がしたときの印刷面の外観の状態を目視判定した。尚、判定基準は以下の通りとした。
[評価基準]
5.印刷面のインキ皮膜が全く剥離しないもの(良好)
4.インキ皮膜の剥離面積が1%以上5%未満であるもの(実用可)
3.インキ皮膜の剥離面積が5%以上20%未満のもの(やや不良)
2.インキ皮膜の剥離面積が20%以上50%未満のもの(不良)
1.インキ皮膜が50%以上剥がれるもの(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0085】
<ラミネート強度>
グラビアインキI1~I17を用いた積層体、およびグラビアインキT1~T6を用いた積層体について、印刷部分を巾15mmで裁断し、インキ面と基材面で剥離させた後、剥離強度(ラミネート強度)をインテスコ社製201万能引張り試験機にて測定した。
[評価基準]
5.引張強度が1.0N/15mm以上である(良好)
4.引張強度が0.6N/15mm、1.0N/15mm未満である(実用可)
3.引張強度が0.4N/15mm、0.6N/15mm未満である(やや不良)
2.引張強度が0.2N/15mm、0.4N/15mm未満である(不良)
1.引張強度が0.2N/15mm未満である(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0086】
<印刷適性(着肉性)>
グラビアインキI1~I17およびグラビアインキT1~T6を用いた印刷物について、階調5%部分のインキの転移した面積の維持率%で着肉性評価を行った。なお維持率%とは「印刷終了時の転移面積×100/印刷スタート時の転移面積」で表される値であり、印刷適性試験は環境温度30℃、印刷速度200m/分、印刷時間60分でおこなった。
[評価基準]
5.インキ転移維持率が100%である(良好)
4.インキ転移維持率が80%以上100%未満である(実用可)
3.インキ転移維持率が60%以上80%未満である(やや不良)
2.インキ転移維持率が30%以上60%未満である(不良)
1.インキ転移維持率が30%未満である(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0087】
<印刷適性(版かぶり性)>
グラビアインキI1~I17およびグラビアインキT1~T6について版かぶり性評価を行った。なお、希釈溶剤は酢酸エチルで行い、粘度をザーンカップ#3で16秒(25℃)とし、環境温度30℃、印刷速度200m/分、印刷機における版の空転90分後の、版かぶり部分の面積を目視判定し、評価を行った。
[評価基準]
5.版かぶり面積が0%以上5%未満である(良好)
4.版かぶり面積が5%以上10%未満である(実用可)
3.版かぶり面積が10%以上15%未満である(やや不良)
2.版かぶり面積が15%以上30%未満である(不良)
1.版かぶり面積が30%以上である(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0088】
<インキ安定性>
グラビアインキI1~I17およびグラビアインキT1~T6について50℃で10日間保存を行った。その後、粘度を測定して保存前との粘度変化を評価した。なお粘度の測定は25℃でザーンカップNo.4の流出秒数にて行った。
[評価基準]
5.粘度変化が2秒未満(良好)
4.粘度差が2秒以上5秒未満(実用可)
3.粘度差が5秒以上10秒未満(やや不良)
2.粘度差が10秒以上15秒未満(不良)
1.粘度差が15秒以上(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
以上の結果より、本発明のグラビアまたはフレキソインキを用いることで、課題を達成できた。ポリアミン由来のウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(A)を含み、また有機溶剤が、エステル系有機溶剤と芳香族系有機溶剤の混合溶剤、または、エステル系有機溶剤のいずれかを含む場合には印刷適性とラミネート強度において特別の効果が得られ、これに対して比較例であるポリアミン由来のウレア結合を有するポリウレタンウレア樹脂である場合、またはポリウレタン樹脂を含まない場合はいずれかの特性を達成することができず、本願に記載の発明により特性を満たすことが示された。また本発明のグラビアインキは含有する有機溶剤の組成が複雑な組成でないため有機溶剤の回収・再利用に有利である。