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特許7409058義歯洗浄剤組成物及び泡状義歯洗浄剤製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】義歯洗浄剤組成物及び泡状義歯洗浄剤製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20231226BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61Q 11/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/02
A61Q11/00
A61Q11/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019221887
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021091621
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 康太
(72)【発明者】
【氏名】森井 裕子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 真弓
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509718(JP,A)
【文献】Intensive Extra Strength Denture Tablets, MINTEL GNPD [ONLINE], 2009.09,[検索日 2023.08.18],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.1170733)
【文献】Mouthwash, MINTEL GNPD [ONLINE], 2019.06,[検索日 2023.08.18],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.6659771)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/46
A61K 8/02
A61Q 11/00
A61Q 11/02
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で示されるスルホン酸基を有するアニオン性界面活性剤(A1)及び下記式(2)で示される硫酸基を有するアニオン性界面活性剤(A2)
1 -C 6 4 -SO 3 - 1/X・M + (1)
(式中、R 1 は、炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖の鎖式炭化水素基を表し、M + は対イオンであり、XはM + の価数である。)
2 -O-[(PO) p /(EO) q ]-SO 3 - 1/Y・Z + (2)
(式中、R 2 は、炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖の鎖式炭化水素基を表し、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pは、プロピレンオキシドの平均付加モル数を表し、0≦p≦1であり、qは、エチレンオキシドの平均付加モル数を表し、0≦q≦5である。また、[(PO) p /(EO) q ]において、EOとPOとはランダム付加であってもブロック付加であってもよい。Z + は対イオンであり、YはZ + の価数である。)
から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性界面活性剤を0.5~10質量%と、
(B)下記式(3)で示されるハイドロトロープ剤を0.05~3.5質量%
【化1】

(式中、R 3 、R 4 、R 7 は、それぞれ炭素数1~5の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基又はHであるが、R 3 、R 4 、R 7 のうちの少なくとも1つは炭素数1~5の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基である。R 5 、R 6 は、それぞれCH 3 又はHである。)
とを含有する泡状義歯洗浄剤組成物。
【請求項2】
化合物(A1)が、炭素数8~18の直鎖及び分岐鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸並びにその塩から選ばれ、化合物(A2)が、炭素数8~18の直鎖及び分岐鎖アルキル基を有するアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩並びにポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩から選ばれるものである請求項記載の泡状義歯洗浄剤組成物。
【請求項3】
(A)アニオン性界面活性剤が、スルホン酸基を有するアニオン性界面活性剤(A1)及び硫酸基を有するアニオン性界面活性剤(A2)である請求項1又は2記載の泡状義歯洗浄剤組成物。
【請求項4】
スルホン酸基を有するアニオン性界面活性剤(A1)と硫酸基を有するアニオン性界面活性剤(A2)との量比を示す(A1)/(A2)が、質量比として0.1~100である請求項記載の泡状義歯洗浄剤組成物。
【請求項5】
(B)ハイドロトロープ剤が、クメンスルホン酸ナトリウム(式(3)中のR3:CH(CH32、R4~R7:H)、トルエンスルホン酸ナトリウム(式(3)中のR3:CH3、R4~R7:H)及びキシレンスルホン酸ナトリウム(m-キシレンの場合は式(3)中のR3,R5:CH3、R4,R6,R7:H、o-キシレンの場合は式(3)中のR3,R4:CH3、R5~R7:H、p-キシレンの場合は式(3)中のR5,R7:CH3、R3,R4,R6:H)から選ばれる1種又は2種以上である請求項1~4のいずれか1項記載の泡状義歯洗浄剤組成物。
【請求項6】
(A)成分を質量%、(B)成分を0.12.5質量%含有する請求項1~のいずれか1項記載の泡状義歯洗浄剤組成物。
【請求項7】
(A)成分と(B)成分との量比を示す(A)/(B)が、質量比として0.5~100である請求項1~のいずれか1項記載の泡状義歯洗浄剤組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項記載の泡状義歯洗浄剤組成物が、泡形成機構を備えた容器に充填されている泡状義歯洗浄剤製品。
【請求項9】
泡形成機構を備えた容器が、トリガー式スプレー容器である請求項記載の泡状義歯洗浄剤製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義歯洗浄剤、特に泡状で義歯表面に適用する義歯洗浄剤に関し、更に詳述すると、一態様として、内容物を泡状で吐出させる容器に充填し、使用時に泡状で義歯表面に適用することができ、洗浄しにくい義歯の溝部、凹部に付着した油汚れに対しても高い浸透洗浄効果を与える義歯洗浄剤組成物及びこれを用いた泡状義歯洗浄剤用製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会の到来に伴い、義歯(人工歯とそれを支持する義歯床)の使用者は年々増大する傾向にある。義歯の使用にあたっては、義歯床と口腔粘膜との間や、義歯の人工歯間に食べかすが溜り易く、健常人に比べて口腔内が不潔になり易い。義歯に付着する汚れにはデンチャープラーク、食物残渣、ステイン(着色沈着物)、歯石等があり、これらは不快な義歯臭発生の原因となると共に、隣接歯のう蝕、歯周病の発症又は進行の原因となる。そのため、従来から義歯を洗浄し、清潔に保つために義歯のブラッシングや、義歯洗浄剤による洗浄が行われている。
【0003】
従来、義歯の洗浄に用いられる義歯洗浄剤は、過酸化物等の漂白剤を主成分とする発泡錠(水に投入した際に、水中で炭酸水の発泡のような微小な気泡を発生させながら溶解する錠剤)タイプのものが主流であり、例えば、酸塩基反応により発泡する有機酸及び炭酸塩と、界面活性剤とを含有する固体形態の漬け置き洗浄剤に、漂白剤を配合した入れ歯洗浄剤が特許文献1(特開平11-181500号公報)に提案されている。
【0004】
しかしながら、上記のような従来の発泡錠タイプの固体の義歯洗浄剤は、1回分単位で個装されており、これは、部分義歯のように義歯の大きさが個人で大きく異なる場合に使用量調節ができないため、使用者の不満となることが多かった。また、義歯に付着した汚れ、中でも食物等に由来する油汚れの除去には、ある程度の浸漬時間(一般的には一晩)を要し、利便性の面でも問題を有していた。そのため、特に部分義歯装着者は、例えば、朝食後や昼食後は、固体の義歯洗浄剤を用いず、流水での洗浄又は水だけでブラッシングして物理的に汚れを除去する洗浄を行う場合が多いが、義歯表面に付着した食物等に由来する油汚れは、水を用いてブラッシングするだけでは十分に除去することができず、洗浄後に残ってしまうことが多く、また、ブラッシングを行う手間が面倒でもあった。特に、立体的な形状である義歯の溝部や凹部の奥に付着した汚れは、除去が困難である場合が多い。
【0005】
特許文献2(特許第4724141号公報)には、義歯への適用が容易で長時間の洗浄時間を必要とせず、泡状の形態で提供される、エマルジョンを利用した義歯洗浄剤が提案されているが、食物等に由来する油汚れに対する洗浄力が未だ不十分であり、ブラッシングが必要であるために義歯装着者の手間を軽減することもできていなかった。
特許文献3(特許第5598273号公報)は、アニオン性界面活性剤、亜硫酸塩、特定のポリリン酸塩、及び多価アルコールを組み合わせて配合した、泡状で使用される義歯洗浄用液体組成物が、義歯のステイン除去力に優れることを提案しているが、ブラッシングを行うことを前提としたステイン除去であり、油汚れの洗浄に着目した技術ではなく、ステインとは化学的性質等が異なる油汚れの洗浄面では改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-181500号公報
【文献】特許第4724141号公報
【文献】特許第5598273号公報
【文献】特開平9-295923号公報
【文献】特許第3487023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、義歯表面、特に義歯の溝部や凹部に付着した汚れに対して高い浸透洗浄効果を与える、特に使用時に泡状で義歯表面に適用することができる義歯洗浄剤組成物及びこれを用いた泡状義歯洗浄剤製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)アニオン性界面活性剤と(B)ハイドロトロープ剤とを併用して義歯洗浄剤組成物に配合し、これを好ましくは泡状で義歯(人工歯とそれを支持し、口腔粘膜面を覆い装着させるための義歯床。以下、「義歯」と記載。)に適用すると、義歯表面に付着した汚れに対する浸透洗浄効果に優れ、付着した油汚れに対しても高い浸透洗浄効果を発揮することを知見した。
即ち、本発明では、(A)アニオン性界面活性剤及び(B)ハイドロトロープ剤を配合した義歯洗浄剤組成物が、例えば内容物を泡状で吐出させる容器に充填されるなどして、使用時に泡状で義歯表面に適用されると、義歯を覆うのに十分な適量の泡が得られると共に、義歯表面、特に義歯の溝部や凹部に付着した汚れに対して高い浸透洗浄効果を奏し、また、低温保存しても製剤外観が安定であり、低温保存安定性も良好であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
本発明の義歯洗浄剤組成物は、好ましくは液体状であり、液体状の義歯洗浄剤組成物を、泡形成手段を有する容器に充填し、泡状義歯洗浄剤製品として調製し、使用時に前記容器から泡状で吐出させることが好ましく、泡状で義歯表面に適用されることで、上記格別な作用効果を付与することができる。この場合、本発明では、義歯洗浄剤組成物において、(A)及び(B)成分が相乗的に作用することで泡量及び泡質が改善し、適量の泡が義歯表面を覆うように適度になじんで広がり、同時に、義歯表面に付着した汚れに速やかに浸透し、油汚れであっても効果的に除去する洗浄力を発揮させることができる。
食物由来の油汚れは、顎堤(義歯を装着する歯茎部分)を覆うために凹状の溝形状となる義歯床粘膜側面の溝の奥(底部)にまで入り込み、水を用いたブラッシングだけでは十分に除去することができず、また、ブラッシングと義歯洗浄剤を併用した方法でも、義歯洗浄剤への一定時間、例えば5分間程度の浸漬後にブラッシングを要し、手間がかかることから、特に油汚れの除去の点で、義歯洗浄がおろそかになりやすいという課題があった。しかし、本発明の義歯洗浄剤組成物は、食物由来の油汚れに対する浸透洗浄力に優れ、上記のように義歯床粘膜側面の溝の奥に入り込んだ油汚れにまでも浸透してブラッシングを必須とせずに除去することができ、しかも洗浄時間が比較的短時間で簡単かつ効果的に義歯洗浄することができる。また、この義歯洗浄剤組成物は、液体状とした場合は、低温で保存後に室温に戻されることで凍結融解されたとしても析出物の発生が防止され、良好な低温保存安定性を確保することもできる。
【0010】
本発明の作用効果は、(A)及び(B)成分を併用することで得られる特異かつ格別な作用効果であり、(A)成分又は(B)成分を欠く場合は浸透洗浄効果が低く、本作用効果が劣るものであった。後述の比較例に示すように、(A)成分単独の場合(比較例1)、(B)成分単独の場合(比較例2、3、4)は、溝部への浸透洗浄効果が低く、また、泡量や低温安定性に劣ることもあった。これに対して、本発明の(A)及び(B)成分が配合された義歯洗浄剤組成物(後述の実施例)は、泡状で義歯表面に適用されると、泡量、浸透洗浄効果及び低温安定性に優れており、泡状で義歯表面に適用し、60秒間経過後に水で洗い流すだけでも、義歯床粘膜側面の溝部の油汚れも残ることなく洗浄され、また、義歯に適用する前の液体の状態では、低温保存して凍結融解されても析出物の発生が抑えられ安定な製剤外観が保たれていた。
なお、特許文献4、5(特開平9-295923号公報、特許第3487023号公報)は、泡状口腔用組成物における口腔内での泡の均一性、保型性等の改善であり、義歯への適用及び義歯洗浄に関して何ら言及もない。特許文献4、5から、本発明の義歯洗浄剤組成物における(A)及び(B)成分による浸透洗浄効果の向上は予測できない。
【0011】
従って、本発明は、下記の義歯洗浄剤組成物及び泡状義歯洗浄剤製品を提供する。
〔1〕
(A)アニオン性界面活性剤と(B)ハイドロトロープ剤とを含有する義歯洗浄剤組成物。
〔2〕
(A)アニオン性界面活性剤が、スルホン酸基を有するアニオン性界面活性剤(A1)及び硫酸基を有するアニオン性界面活性剤(A2)から選ばれる1種又は2種以上である〔1〕に記載の義歯洗浄剤組成物。
〔3〕
スルホン酸基を有するアニオン性界面活性剤(A1)が、下記式(1)で示される化合物(A1)であり、硫酸基を有するアニオン性界面活性剤(A2)が、下記式(2)で示される化合物(A2)である〔2〕に記載の義歯洗浄剤組成物。
1-C64-SO3 - 1/X・M+ (1)
(式中、R1は、炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖の鎖式炭化水素基を表し、M+は対イオンであり、XはM+の価数である。)
2-O-[(PO)p/(EO)q]-SO3 - 1/Y・Z+ (2)
(式中、R2は、炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖の鎖式炭化水素基を表し、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pは、プロピレンオキシドの平均付加モル数を表し、0≦p≦1であり、qは、エチレンオキシドの平均付加モル数を表し、0≦q≦5である。また、[(PO)p/(EO)q]において、EOとPOとはランダム付加であってもブロック付加であってもよい。Z+は対イオンであり、YはZ+の価数である。)
〔4〕
化合物(A1)が、炭素数8~18の直鎖及び分岐鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸並びにその塩から選ばれ、化合物(A2)が、炭素数8~18の直鎖及び分岐鎖アルキル基を有するアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩並びにポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩から選ばれる〔3〕に記載の義歯洗浄剤組成物。
〔5〕
(A)アニオン性界面活性剤が、スルホン酸基を有するアニオン性界面活性剤(A1)及び硫酸基を有するアニオン性界面活性剤(A2)である〔2〕~〔4〕のいずれかに記載の義歯洗浄剤組成物。
〔6〕
スルホン酸基を有するアニオン性界面活性剤(A1)と硫酸基を有するアニオン性界面活性剤(A2)との量比を示す(A1)/(A2)が、質量比として0.1~100である〔5〕に記載の義歯洗浄剤組成物。
〔7〕
(B)ハイドロトロープ剤が、下記式(3)で示される化合物である〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の義歯洗浄剤組成物。
【化1】

(式中、R3、R4、R7は、それぞれ炭素数1~5の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基又はHであるが、R3、R4、R7のうちの少なくとも1つは炭素数1~5の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基である。R5、R6は、それぞれCH3又はHである。)
〔8〕
(B)ハイドロトロープ剤が、クメンスルホン酸ナトリウム(式(3)中のR3:CH(CH32、R4~R7:H)、トルエンスルホン酸ナトリウム(式(3)中のR3:CH3、R4~R7:H)及びキシレンスルホン酸ナトリウム(m-キシレンの場合は式(3)中のR3,R5:CH3、R4,R6,R7:H、o-キシレンの場合は式(3)中のR3,R4:CH3、R5~R7:H、p-キシレンの場合は式(3)中のR5,R7:CH3、R3,R4,R6:H)から選ばれる1種又は2種以上である〔7〕に記載の義歯洗浄剤組成物。
〔9〕
(A)成分を0.5~10質量%、(B)成分を0.05~3.5質量%含有する〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の義歯洗浄剤組成物。
〔10〕
(A)成分と(B)成分との量比を示す(A)/(B)が、質量比として0.5~100である〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の義歯洗浄剤組成物。
〔11〕
液体である〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の義歯洗浄剤組成物。
〔12〕
泡状で義歯表面に適用するためのものである〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の義歯洗浄剤組成物。
〔13〕
〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の義歯洗浄剤組成物が、泡形成機構を備えた容器に充填されている泡状義歯洗浄剤製品。
〔14〕
泡形成機構を備えた容器が、トリガー式スプレー容器である〔13〕に記載の泡状義歯洗浄剤製品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用時に泡状で義歯表面に適用することができる、義歯表面に付着した汚れに対して高い浸透洗浄効果を与え、また、泡量及び低温保存安定性も良好な義歯洗浄剤組成物及びこれを用いた泡状義歯洗浄剤製品を提供できる。本発明の義歯洗浄剤組成物は、内容物を泡状で吐出させる容器に充填し吐出させた泡を義歯洗浄に用いる泡状義歯洗浄剤製品として応用できる。また、上記義歯洗浄剤組成物及び泡状義歯洗浄剤製品は、義歯洗浄を比較的短時間かつ簡単な操作で行うことができ、また、義歯への使用量調整も可能であり、利便性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の義歯洗浄剤組成物は、(A)アニオン性界面活性剤と、(B)ハイドロトロープ剤とを含有する。この義歯洗浄剤組成物は、泡状で義歯表面に適用されることが好ましく、内容物を泡状で吐出させる泡形成手段を有する容器に充填し、前記容器から使用時に吐出させて泡を形成させて使用することができる。
【0014】
(A)アニオン性界面活性剤は、スルホン酸基を有するアニオン性界面活性剤(A1)、硫酸基を有するアニオン性界面活性剤(A2)が好ましく、これらとしては、特に下記式(1)で示される化合物(A1)、下記式(2)で示される化合物(A2)を好ましく用いることができる。
(A1)
1-C64-SO3 - 1/X・M+ (1)
(式中、R1は、炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖の鎖式炭化水素基を表し、M+は対イオンであり、XはM+の価数である。)
(A2)
2-O-[(PO)p/(EO)q]-SO3 - 1/Y・Z+ (2)
(式中、R2は、炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖の鎖式炭化水素基を表し、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pは、プロピレンオキシドの平均付加モル数を表し、0≦p≦1であり、qは、エチレンオキシドの平均付加モル数を表し、0≦q≦5である。また、[(PO)p/(EO)q]において、EOとPOとはランダム付加であってもブロック付加であってもよい。Z+は対イオンであり、YはZ+の価数である。)
【0015】
上記式(1)中、R1は、炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖の鎖式炭化水素基であり、炭素数は好ましくは10~14であり、直鎖の鎖式炭化水素基が好ましく、より好ましくはアルキル基である。M+は対イオンであり、例えば、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンのイオンであり、水溶性の塩を形成し得るものであればよい。アルカリ金属は、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等が挙げられる。アルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。好ましくは、アルカリ金属塩、アルカノールアミン塩である。XはM+の価数であり、1~2が好ましい。
【0016】
上記式(2)中、R2は炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖の鎖式炭化水素基であり、炭素数は好ましくは10~16であり、より好ましくは炭素数12~14であり、直鎖の鎖式炭化水素基が好ましく、より好ましくはアルキル基である。R2は、洗浄力及び環境面から、特に、植物油脂原料由来の鎖式炭化水素基であることが好ましい。好適な植物油脂原料は、パーム核油、ヤシ油等である。
pはプロピレンオキシドの平均付加モル数を表し、0≦p≦1であり、p=0がより好ましい。
qはエチレンオキシドの平均付加モル数を表し、0≦q≦5であり、0≦q≦4が好ましく、0≦q≦2がより好ましい。
また、[(PO)p/(EO)q]は、0<p≦1かつ0<q≦5である場合、EOとPOとはランダム付加であってもブロック付加であってもよい。
+は対イオンであり、M+で説明したものと同様のものが挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩である。YはZ+の価数であり、1~2が好ましい。
【0017】
化合物(A1)において、上記式(1)で表される化合物としては、例えば、炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩等が挙げられ、その塩は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましく、特にナトリウム塩が好ましい。
化合物(A1)として、具体的には、直鎖アルキル(C10~14)ベンゼンスルホン酸又はそのナトリウム塩が挙げられる。
なお、上記記載において「C+数字」は炭素数を表し、「(C10~14)」とは、炭素数が10~14であることを意味する(以下同様)。
上記化合物(A1)は、1種単独でも、又は2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、市販品を使用することができる。
【0018】
化合物(A2)において、上記式(2)で表される化合物としては、例えば、アルキル硫酸又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル又はその塩等が挙げられ、特にアルキル硫酸又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル又はその塩が好ましく、塩は、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。これらのアルキル基は、炭素数が8~18、特に10~16、とりわけ12~14であり、直鎖又は分岐鎖であることが好ましい。
具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレン(1)直鎖アルキル(C12)硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(2)直鎖アルキル(C12)硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(3)直鎖アルキル(C12)硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシプロピレン(0.4)ポリオキシエチレン(1.5)直鎖アルキル(C12)硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(1)直鎖アルキル(C12/14=75/25)硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(2)直鎖アルキル(C12/14=75/25)硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(3)直鎖アルキル(C12/14=75/25)硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシプロピレン(0.4)ポリオキシエチレン(1.5)直鎖アルキル(C12/14=75/25)硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、ラウリル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレン(1)直鎖アルキル(C12/14=75/25)硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(2)直鎖アルキル(C12/14=75/25)硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(3)直鎖アルキル(C12/14=75/25)硫酸エステルナトリウム塩が、本発明の効果発現の点で、特に好ましい。前記(A2)成分は、合成油脂又は天然油脂を原料とすることができる。
なお、上記記載において、例えば「ポリオキシエチレン(1)」とは、エチレンオキシドの平均付加モル数が1であることを意味し、「C12/14=75/25」とは、炭素数12の直鎖アルキル基を有するものと、炭素数14の直鎖アルキル基を有するものとの混合物(混合比率:質量比で75/25)であることを意味する(以下同様)。
上記化合物(A2)は、1種単独でも、又は2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、市販品を使用することができる。
【0019】
(A)アニオン性界面活性剤は、上記のアニオン性界面活性剤(A1)及び/又はアニオン性界面活性剤(A2)を用いることができるが、アニオン性界面活性剤(A1)及び(A2)を併用することが好ましい。この場合、両者の量比を示す(A1)/(A2)が、質量比として好ましくは0.1~100、より好ましくは1~35、特に1~15である。この範囲内であると、泡量、浸透洗浄効果及び低温安定性がより優れる。
【0020】
(A)アニオン性界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.5~10%(質量%、以下同様)が好ましく、より好ましくは2~8%、更に好ましくは2.1~7.5%である。(A)成分の配合量が0.5%以上であると、十分な泡量が確保でき、かつ十分に泡質が改善して浸透洗浄効果が十分に得られる。多く配合し過ぎると、低温安定性が悪くなって析出することがあり、配合量が10%以下であると、十分な低温安定性を確保できる。
更に、(A)成分として上記アニオン性界面活性剤(A1)及び(A2)を併用した混合物を配合する場合、アニオン性界面活性剤(A1)の配合量は、好ましくは組成物全体の0.45~9%、特に2~7%であり、アニオン性界面活性剤(A2)の配合量は、好ましくは組成物全体の0.05~5%、特に0.1~4%である。
【0021】
(B)ハイドロトロープ剤は、アニオン性芳香族化合物、特にスルホン酸基を有する芳香族化合物であることが好ましく、下記式(3)で示される化合物を用いることができる。
【0022】
【化1】
(式中、R3、R4、R7は、それぞれ炭素数1~5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基等の一価炭化水素基又はHであるが、R3、R4、R7のうちの少なくとも1つは炭素数1~5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基等の一価炭化水素基である。R5、R6は、それぞれCH3又はHである。)
【0023】
このようなハイドロトロープ剤としては、例えばクメンスルホン酸ナトリウム(式(3)中のR3:CH(CH32、R4~R7:H)、トルエンスルホン酸ナトリウム(式(3)中のR3:CH3、R4~R7:H)、キシレンスルホン酸ナトリウム(m-キシレンの場合は式(3)中のR3,R5:CH3、R4,R6,R7:H、o-キシレンの場合は式(3)中のR3,R4:CH3、R5~R7:H、p-キシレンの場合は式(3)中のR5,R7:CH3、R3,R4,R6:H)等が挙げられ、中でもクメンスルホン酸ナトリウムが好ましい。これらは、1種単独でも、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、ハイドロトロープ剤とは、低溶解性又は不溶性の化合物を、組成物の水相中に可溶化するために使用される物質であるが、本発明では、(B)ハイドロトロープ剤が、(A)成分と併用することで、泡を適量に調整すると共に油汚れに対する浸透洗浄効果を高める作用を奏し、また、低温保存における析出を防止して保存安定性を改善する作用に寄与する。
【0024】
(B)ハイドロトロープ剤の配合量は、組成物全体の0.05~3.5%が好ましく、より好ましくは0.1~2.5%、更に好ましくは0.2~1.6%である。(B)成分の配合量が0.05%以上であると、十分な浸透洗浄効果が得られ、低温安定性を確保することもできる。3.5%以下であると、泡量を十分に確保し、浸透洗浄効果及び低温安定性を十分に維持できる。
【0025】
本発明において、(A)成分と(B)成分との量比を示す(A)/(B)は、質量比として0.1~200とすることができるが、0.5~100が好ましく、より好ましくは1~50、特に好ましくは2~25である。(A)/(B)の質量比が上記範囲内であると、泡量、浸透洗浄効果及び低温安定性がより優れる。
【0026】
本発明の義歯洗浄剤組成物は、特に液体状の組成物に調製され、使用時に泡状とし、泡状で義歯に適用されることが好ましい。また、上記成分に加えて、これら以外にも、義歯洗浄剤組成物に通常使用される公知成分を本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて添加することができる。具体的には、安定化剤、粘度調整剤、香料、着色剤、殺菌剤等を配合することができ、溶剤として水を用い、全成分を混合して調製することができる。調製方法は、特に制限されず、公知の方法を採用できる。
【0027】
安定化剤は、任意の界面活性剤や、多価アルコール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0028】
任意の界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステルや、糖脂肪酸エステル、糖アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
多価アルコールは、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0029】
粘度調整剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース等のセルロース誘導体等の水溶性高分子物質が挙げられる(配合量は、通常、組成物全体の0.005~3%)。
【0030】
香料は、スペアミント油、ペパーミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、シンナモンバーク油等の天然香料、及び、メントール、メントン、カルボン、エチルブチレート、バニリン、エチルマルトール、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、シネオール、オイゲノール、エチルバニリン、マルトール、リモネン、シトロネロール、リナロール、リナリールアセテート、メンチルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、ジンジャーオレオレジン、クレオソール、dl-カンファー等の単品香料、更に、エチルアセテート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール等の単品香料及び/又は天然香料も含む各種調合香料等、公知の香料を使用できる。
義歯洗浄剤組成物には、香料を配合して清涼感を付与することができ、これにより使用者がより快適に義歯を洗浄し、義歯装着時にサッパリ感を実感させることもできる。
【0031】
着色剤は、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号等の法定色素、カラメル色素、ベニバナ色素、クチナシ色素、コチニール色素、アナトー色素、雲母チタン、酸化チタン等が挙げられる。
【0032】
殺菌剤は、イソプロピルメチルフェノール、チモール、トリクロサン、安息香酸又はその塩、サリチル酸やそのエステル又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル、フェノール等が挙げられる。
【0033】
組成物のpHは、25℃においてpH5~8が好ましく、より好ましくはpH5.5~7.5である。なお、pHはなりゆきで上記範囲になることもあるが、必要に応じて水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸又はその塩、クエン酸又はその塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸又はその塩等のpH調整剤を配合して調整してもよい。
【0034】
組成物の粘度は、25℃において粘度(B型粘度計)が1~150mPa・sが好ましく、より好ましくは2~100mPa・s、特に2~50mPa・sである。
【0035】
本発明の義歯洗浄剤組成物は、内容物を泡状で吐出させる泡形成手段を有する容器に充填し、泡状義歯洗浄剤製品として用いることができる。
充填容器は、内容物を、泡形成機構を介して泡状で吐出させる容器、例えば、内容物に押圧力を付与することにより該内容物を空気と混合せしめてその吐出口から泡状に吐出させることができる容器を用いることができる。
【0036】
上記容器としては、液体状内容物を泡形成機構により泡状に吐出させることができる構造を有している泡吐出容器であれば特に制限されず、公知の泡形成機構を有するエアゾール容器、非エアゾール型のトリガー式スプレー容器(以下、トリガー容器という)、スクイズ容器、ディスペンサー等が挙げられ、これらを採用できる。特に、噴射剤を使用しない非エアゾール型のスプレー容器が好ましく、とりわけ、使用者が内溶液を再充填(詰替)できる点で、非エアゾール型のトリガー容器が好ましい。トリガー容器は、直圧式、蓄圧式のどちらのトリガーも使用可能であり、公知のトリガー容器を用いることができる。
具体的には、内容物を収容するプラスチックボトル等の容器本体と、内容物を前記容器本体から吸引、圧送し、内容物吐出口(ノズル)から吐出させる吐出機構を有するスプレー部と、前記スプレー部を上記容器本体に取り付けるキャップ部とを備え、容器本体の上部開口部に密着して装着されたスプレー部の吐出機構に備えられたトリガーを、スプレー部側に引いて元に戻す操作を繰り返して往復させることで吐出機構が作動し、容器本体から吸い上げられた内容物が泡形成機構、例えば内容物とエアーとの混合機構及び発泡部材(多孔質部材、網目状部材等)を有し、内容物がエアーと混合された後に、発泡部材を通過することで発泡し、内容物吐出口(ノズル)から泡が吐出されるものである。あるいは、吐出孔周囲前方に突出形成された壁部(例えば筒形状の泡化筒)と、前記容器本体内の液体が吐出孔から吐出されるときにその吐出液に回転をかけるスピンエレメントとを備えて、前記吐出孔から吐出された液滴を前記壁部の内壁に衝突させて泡化されるものである。本発明で使用し得るトリガー容器は、前記に制限されず、容器に充填された液体を泡状で義歯に適用できるものであればよい。
この場合、1回の吐出で内容物を0.5~1.5g程度吐出できる口径のものが、義歯への吐出性や本発明の効果発現性の点からも好ましい。
上記容器としては、市販品を使用してもよく、例えば商品名;お風呂のルック(ライオン(株)製)で使用されているトリガー容器、商品名;レンジまわりのルック(ライオン(株)製)で使用されている泡吐出トリガー容器等を用いることができる。
【0037】
本発明の義歯洗浄剤組成物は、部分床義歯、全部床義歯の洗浄に用いることができ、これら義歯を洗浄するには、例えば上記泡形成機構を有する吐出容器から吐出させて、義歯表面に泡状でスプレー塗布し、泡が付着した状態で30秒間以上、特に60秒間以上静置させておくことが好ましく、上限は特に制限はないが、作業性の点から、5分間以内、特に2分間以内、とりわけ90秒間以内とすることができる。静置は室温下でよい。静置後は、義歯洗浄剤組成物を流水で10秒間~1分間程度すすぎ、義歯洗浄が完了する。なお、本発明の義歯洗浄剤組成物は、ブラッシング等による物理的な力を与えなくても油汚れ洗浄力が高く、本作用効果が得られる。但し、ブラッシングを必要としないが、ブラッシングを行うことを禁止するものではなく、歯ブラシ、電動歯ブラシ、義歯ブラシ等のブラシで短時間ブラッシングを行ってから流水ですすいでもよい。
【実施例
【0038】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0039】
[実施例、比較例]
表1~4に示す組成の義歯洗浄剤組成物(泡状義歯洗浄剤用液体組成物)を下記方法で調製し、泡形成機構を備えたトリガー容器に充填して泡状義歯洗浄剤を調製した。これらを試験サンプルとして使用し、下記方法で評価した。結果を表に併記した。
なお、表中の配合量を示す数値は、各成分の純分量である。
【0040】
調製方法
表に示す成分を用い(全体量1,000g)、下記の手順で調製した。
1Lビーカーに(A)成分、(B)成分、その他成分を入れ、合計量が全体量の95%になるように水(イオン交換水)を添加し、スリーワンモータ(製品名:FBL1,200M、東京硝子器械(株)製)で均一になるまで攪拌した。25℃でのpHが6.0になるように水酸化ナトリウムを適量添加した後、合計量が全体量の100%になるように水(イオン交換水)を入れ、均一になるまで攪拌し、液体の義歯洗浄剤組成物を得た。得られた液体義歯洗浄剤組成物は、泡形成機構を備えたトリガー容器(商品名;レンジまわりのルック(ライオン(株)製)の泡吐出トリガー容器、狭い泡設定、1回当たりの吐出量1.0g)に充填した。
【0041】
(1)泡量の評価方法
100mLメスシリンダーの中に、試験サンプルの容器中から液体義歯洗浄剤組成物を3プッシュ(1.0g/1プッシュ)して泡状で吐出させた後、吐出直後の泡量(mL)を測り、下記に示す4段階の評価基準で泡量を評価した。
<評価基準>
◎:泡量40mL以上
○:泡量25mL以上40mL未満
△:泡量10mL以上25mL未満
×:泡量10mL未満
【0042】
(2)浸透洗浄効果の評価方法
サラダ油(食用菜種油及び大豆油の混合、日清オイリオグループ(株)製)に、視認性を上げるために、0.1%となるようにSudan IV(色素、東京化成工業(株)製)を加えて均一溶解させたものをモデル汚垢とした。調製したモデル汚垢を、電子天秤で計量しながら、ポリスポイトを用いて0.2g採取し、これを下顎総義歯((株)ニッシン製)に対し、その義歯床粘膜側面の前歯部側の溝部(奥行3mm×深さ3mm×横幅20mm)に均一に塗布し、室温(25℃)で1時間静置した。このモデル汚垢を塗布した義歯床粘膜面の前歯部側の溝部に、試験サンプルの容器中から液体義歯洗浄剤組成物を1プッシュ(1.0g)して泡状で吐出させて塗布し、60秒間静置した。その後、25℃、流速6L/minの流水で十分にすすぎ、義歯洗浄を行った。
評価は、洗浄前後の上記義歯の汚垢塗布周辺部位(10mm×40mm)を写真撮影し、画像解析ソフトImage J(NIH)にて、汚垢(モデル汚垢)の残り具合(上記義歯表面積に対する染色面積の割合(%))を算出し、下記に示す4段階の評価基準で油汚れに対する浸透洗浄効果を評価した。
<評価基準>
◎:汚垢の残りが殆ど無い(染色面積10%未満)
○:汚垢の残りは僅かである(染色面積10%以上25%未満)
△:汚垢の残りがやや多い(染色面積25%以上50%未満)
×:汚垢の残りが非常に多い(染色面積50%以上)
【0043】
(3)低温安定性の評価方法
試験サンプルを-5℃で3日間低温保存した後、容器を転倒混和して室温に24時間放置した。凍結融解後の析出物の有無、析出物の溶解過程を確認し、下記の評価基準で低温安定性を評価した。
<評価基準>
◎:析出なし
○:凍結融解時に微量の析出が発生するが、転倒混和して室温放置すると5分以内に
再溶解する
△:凍結融解時に析出が発生するが、転倒混和して室温放置すると1時間以内に再
溶解する
×:低温保存すると析出が発生し、凍結融解時も析出が認められ、室温放置しても再
融解しない
【0044】
使用原料の詳細を下記に示す。
<(A)成分>
(A1)LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)
アルキル基の炭素数10~14、純度96%、ライオン・スペシャリティ・
ケミカルズ(株)製、商品名;ライポン LH-200
(A2)SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)
純度33%、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名;サン
ノール LM-1130
<(B)成分>
クメンスルホン酸ナトリウム
純度40%、テイカ(株)製、商品名;テイカトックスN5040
トルエンスルホン酸ナトリウム
純度90%、東京化成工業(株)製、商品名;p-トルエンスルホン酸ナト
リウム
キシレンスルホン酸ナトリウム
純度98%、東京化成工業(株)製、商品名;m-キシレン-4-スルホン
酸ナトリウム一水和物
CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)
純度99.7%、ダイセル化学工業(株)製、商品名;CMC1260
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油
日本エマルジョン(株)製、商品名;PEG-60水添ヒマシ油
水酸化ナトリウム(pH調整剤)
関東化学(株)製、1mol/l水酸化ナトリウム溶液(1N)
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】