(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0014 20190101AFI20231226BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F24F1/0014
B60H1/22 611Z
(21)【出願番号】P 2020002370
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正善
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101293(JP,A)
【文献】特開2018-144655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F24F 1/0014
1/0097
1/0378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(10)と、
前記ケースの内部において一方側に区画された暖風通路(10c)と、
前記ケースの内部において前記暖風通路とは反対側の他方側に区画された冷風通路(10d)と、
前記ケースの内部に空気を流通させる送風部(2)と、
前記暖風通路に設けられて、前記暖風通路を流通する空気を加熱する暖風側熱交換部(4)と、
前記冷風通路に設けられて、前記冷風通路を流通する空気を冷却する冷風側熱交換部(5)と、
前記暖風側熱交換部に対して放熱する一方の放熱部(31)と前記冷風側熱交換部に対して吸熱する他方の吸熱部(32)とを有するペルチェモジュール(3)と、
空調対象に向けて吹き出される空気が流通する供給通路(13a)と、
前記供給通路に流通させない空気を前記ケースの外部に排気する排気通路(11a,12a)と、
前記暖風通路を流下する暖風と前記冷風通路を流下する冷風との一方を前記供給通路に流通させ他方を前記排気通路に流通させる流路と、前記暖風と前記冷風の両方を前記供給通路に流通させる流路とにわたって切り換える流路切換部(
6)と、
前記暖風通路と前記冷風通路とを前記ケースの内部において仕切る仕切り部(14)と、
を備え
、
前記流路切換部は、暖風側ドア部(61)と、冷風側ドア部(62)と、前記暖風側ドア部と前記冷風側ドア部との間に形成された通風用開口部(63)と、を有する板状の流路切換用ドアであり、
前記流路切換用ドアの位置が制御されることにより前記暖風と前記冷風とが混合されて温度調節された空調風は前記供給通路に供給され、
前記流路切換用ドアは、前記通風用開口部が前記仕切り部をまたがるように位置するときに、前記暖風の一部と前記冷風の一部との両方を前記供給通路に流通させる流路を形成する空調装置。
【請求項2】
前記流路切換部は、前記暖風を前記供給通路に流通させる流路と前記冷風を前記排気通路に流通させる流路とを同時に形成する請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記流路切換部は、前記冷風を前記供給通路に流通させる流路と前記暖風を前記排気通路に流通させる流路とを同時に形成する請求項1に記載の空調装置。
【請求項4】
前記流路切換部は、前記暖風の
全部と前記冷風の
全部との両方を前記供給通路に流通させる流路と前記
排気通路を閉じる状態とを同時に形成する請求項1に記載の空調装置。
【請求項5】
ケース(10)と、
前記ケースの内部において一方側に区画された暖風通路(10c)と、
前記ケースの内部において前記暖風通路とは反対側の他方側に区画された冷風通路(10d)と、
前記ケースの内部に空気を流通させる送風部(2)と、
前記暖風通路に設けられて、前記暖風通路を流通する空気を加熱する暖風側熱交換部(4)と、
前記冷風通路に設けられて、前記冷風通路を流通する空気を冷却する冷風側熱交換部(5)と、
前記暖風側熱交換部に対して放熱する一方の放熱部(31)と前記冷風側熱交換部に対して吸熱する他方の吸熱部(32)とを有するペルチェモジュール(3)と、
空調対象に向けて吹き出される空気が流通する供給通路(13a)と、
前記供給通路に流通させない空気を前記ケースの外部に排気する排気通路(11a,12a)と、
前記暖風通路を流下する暖風と前記冷風通路を流下する冷風との一方を前記供給通路に流通させ他方を前記排気通路に流通させる流路と、前記暖風と前記冷風の両方を前記供給通路に流通させる流路とにわたって切り換える流路切換部(6;106,206,306)と、
を備え、
前記流路切換部は、前記暖風の
一部と前記冷風の
一部との両方を前記供給通路に流通させる流路と
、前記
暖風の残部と前記冷風の残部との両方を前記排気通路
に流通させる流路とを同時に形成す
る空調装置。
【請求項6】
前記ケースは、車室内のシート(91)に装着されており、
前記供給通路は、前記シートに着座する乗員の上半身に向けて空気が吹き出される吹出部(13b)を備えている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の空調装置。
【請求項7】
前記吹出部は、前記乗員の首元に向けて空気を吹き出す請求項6に記載の空調装置。
【請求項8】
前記ケースの内部に空気を吸い込む吸気部(10a)は、前記ケースの上部に位置し、
前記吹出部は、前記ケースに対して下方に位置している請求項6または請求項7に記載の空調装置。
【請求項9】
前記吹出部は、前記ケースに対して上方に位置し、
前記ケースの内部に空気を吸い込む吸気部(10a)は、前記ケースの下部に位置している請求項6または請求項7に記載の空調装置。
【請求項10】
前記排気通路の排気出口部(11b,12b)と前記吸気部は、前記シートの背面側に位置し、
前記吹出部は、前記シートの前面側から空気を吹き出す請求項8または請求項9に記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ペルチェ素子に供給する直流電流の方向を切り換えることで冷房と暖房を切り換えるエアコンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空調装置は、電源の極性を切り換えた後に、実際に空気温度が所望の温度に切り換わるまでに時間を要するという課題がある。この空調装置は、改良が求められている。
【0005】
この明細書における開示の目的は、暖風供給と冷風供給とを迅速に実施可能な空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された空調装置の一つは、ケース(10)と、ケースの内部において一方側に区画された暖風通路(10c)と、ケースの内部において暖風通路とは反対側の他方側に区画された冷風通路(10d)と、ケースの内部に空気を流通させる送風部(2)と、暖風通路に設けられて、暖風通路を流通する空気を加熱する暖風側熱交換部(4)と、冷風通路に設けられて、冷風通路を流通する空気を冷却する冷風側熱交換部(5)と、暖風側熱交換部に対して放熱する一方の放熱部(31)と冷風側熱交換部に対して吸熱する他方の吸熱部(32)とを有するペルチェモジュール(3)と、空調対象に向けて吹き出される空気が流通する供給通路(13a)と、供給通路に流通させない空気をケースの外部に排気する排気通路(11a,12a)と、暖風通路を流下する暖風と冷風通路を流下する冷風との一方を供給通路に流通させ他方を排気通路に流通させる流路と、暖風と冷風の両方を供給通路に流通させる流路とにわたって切り換える流路切換部(6)と、暖風通路と冷風通路とをケースの内部において仕切る仕切り部(14)と、を備え、
流路切換部は、暖風側ドア部(61)と、冷風側ドア部(62)と、暖風側ドア部と冷風側ドア部との間に形成された通風用開口部(63)と、を有する板状の流路切換用ドアであり、
流路切換用ドアの位置が制御されることにより暖風と冷風とが混合されて温度調節された空調風は供給通路に供給され、
流路切換用ドアは、通風用開口部が仕切り部をまたがるように位置するときに、暖風の一部と冷風の一部との両方を供給通路に流通させる流路を形成する。
また、開示された空調装置の一つは、ケース(10)と、ケースの内部において一方側に区画された暖風通路(10c)と、ケースの内部において暖風通路とは反対側の他方側に区画された冷風通路(10d)と、ケースの内部に空気を流通させる送風部(2)と、暖風通路に設けられて、暖風通路を流通する空気を加熱する暖風側熱交換部(4)と、冷風通路に設けられて、冷風通路を流通する空気を冷却する冷風側熱交換部(5)と、暖風側熱交換部に対して放熱する一方の放熱部(31)と冷風側熱交換部に対して吸熱する他方の吸熱部(32)とを有するペルチェモジュール(3)と、空調対象に向けて吹き出される空気が流通する供給通路(13a)と、供給通路に流通させない空気をケースの外部に排気する排気通路(11a,12a)と、暖風通路を流下する暖風と冷風通路を流下する冷風との一方を供給通路に流通させ他方を排気通路に流通させる流路と、暖風と冷風の両方を供給通路に流通させる流路とにわたって切り換える流路切換部(6;106,206,306)と、を備え、
流路切換部は、暖風の一部と冷風の一部との両方を供給通路に流通させる流路と、暖風の残部と冷風の残部との両方を排気通路に流通させる流路とを同時に形成する。
【0008】
この空調装置によれば、ペルチェモジュールはケース内の一方側に設置された暖風通路側の放熱部において放熱し、他方側に設置された冷風通路側の吸熱部において吸熱する。つまり、ペルチェモジュールにおける放熱部と吸熱部は、切り換わる構成ではなく固定されている。さらに流路切換部は、暖房供給時には暖風を供給通路に流通させ冷風を排気通路に流通させる流路に切り換えることができる。流路切換部は、冷風供給時には冷風を供給通路に流通させ暖風を排気通路に流通させる流路に切り換えることができる。さらに流路切換部は、必要に応じて暖風と冷風との混合風を供給通路に流通させる流路に切り換えることができる。この空調装置は、暖風供給時と冷風供給時とにわたって切り換えたときに、暖風温度が低く暖房感が得られなかったり冷風温度が高く冷房感が得られなかったりする事態を回避できる。以上により、暖風供給と冷風供給とを迅速に実施可能な空調装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の空調装置の構成を示す概要図である。
【
図2】空調装置における暖風供給状態を示す概要図である。
【
図3】空調装置における冷風供給状態を示す概要図である。
【
図5】空調装置の第1の設置例を示す斜視図である。
【
図6】空調装置の第2の設置例を示す斜視図である。
【
図7】第2実施形態の空調装置の構成を示す概要図である。
【
図8】空調装置における暖風供給状態を示す概要図である。
【
図9】空調装置における冷風供給状態を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0011】
<第1実施形態>
第1実施形態について
図1~
図6を参照して説明する。第1実施形態は、明細書に開示の目的を達成可能な空調装置の一例を示したものである。したがって、明細書に開示の目的を達成可能な空調装置は、第1実施形態において開示する使用例、設置例に限定するものではない。空調装置1は、広範囲の空調対象に対して空調風を供給する装置ではなく、狭い範囲の空調対象に対して集中的に空調風を供給するスポット空調を実施する装置である。
【0012】
図1等に示すように、空調装置1は、ケース10、送風機2、ペルチェモジュール3、暖風側熱交換部4、冷風側熱交換部5、流路切換用ドア6および制御装置8を備える。
【0013】
制御装置8は、各種のセンサからの温度情報、操作部80が操作されることで送信された入力情報を取得し、これらの情報に基づいて空調装置1における各種空調機器に対して制御信号を出力する。
図4に示すように、制御装置8の入力側には、暖風側温度センサ71、冷風側温度センサ72、吹出し温度センサ73、シャッタ位置センサ74等の検出信号が入力される。暖風側温度センサ71は、暖風側熱交換部4の温度を検出する。冷風側温度センサ72は、冷風側熱交換部5の温度を検出する。吹出し温度センサ73は、供給通路13aを流下する空気の温度を検出する。シャッタ位置センサ74は、サーボモータ6aの回転位置に基づいて、流路切換用ドア6の位置を検出する。
【0014】
制御装置8の入力側には、車室内前部の計器盤付近の操作パネルに設けられた各種の操作部80による操作信号が入力される。操作部80としては、例えば、空調装置1の電源スイッチ、自動運転スイッチ、冷房スイッチ、暖房スイッチ、風量設定スイッチ等が含まれている。
【0015】
ケース10は、空気が流通する空気通路を内部に有する。ケース10は、空気の流下する方向に延びる空気通路を有する。ケース10には、吸気部10aが設けられている。吸気部10aは、ケース10内に周囲の空気を吸い込むための吸気口である。ケース10内には、上流側通路10b、暖風通路10cおよび冷風通路10dが設けられている。上流側通路10bは、吸気部10aよりも下流であって暖風通路10cおよび冷風通路10dよりも上流に位置する。
【0016】
暖風通路10cと冷風通路10dとは、ケース10の内部において仕切り部14とペルチェモジュール3とによって仕切られている。暖風通路10cと冷風通路10dは、流通する空気がそれぞれに通路において混ざり合うことなく、独立した通路である。暖風通路10cは、ケース10の内部において仕切り部14やペルチェモジュール3よりも一方側に位置する通路である。冷風通路10dは、ケース10の内部において仕切り部14やペルチェモジュール3よりも他方側に位置する通路である。したがって、上流側通路10bは、さらに下流において暖風通路10cと冷風通路10dとに分岐することになる。
【0017】
ケース10は、設置場所に応じて各種の形状に設計できるが、例えば、扁平な略直方体の箱状に形成されていることが好ましい。ケース10は、例えば樹脂材料によって形成されている。
【0018】
上流側通路10bには、送風機2が設置されている。送風機2は、ケース10内に設けられた通路、供給通路13a、暖風用排気通路11a、冷風用排気通路12a等に空気を流通させる送風部である。送風機2は、例えば、軸流送風機、遠心式の送風機である。ケース10の形状を扁平状に形成するためには、遠心式の送風機であることが好ましい。送風機2は、ファンと、ファンを駆動するモータとを備えている。送風機2の運転は、制御装置8によって制御される。
【0019】
暖風通路10cには、暖風側熱交換部4が設けられている。暖風側熱交換部4は、ペルチェモジュール3における一方の放熱面31に対して熱移動可能に設けられている。放熱面31は、暖風側熱交換部に対して放熱する放熱部である。暖風側熱交換部4は、熱伝導率が高い材質によって形成されているため、放熱面31からの放熱によって温められる。暖風側熱交換部4は、上流側通路10bから暖風通路10cに流入した空気と熱交換して、この空気を加熱して暖風にする。
【0020】
冷風通路10dには、冷風側熱交換部5が設けられている。冷風側熱交換部5は、ペルチェモジュール3における他方の吸熱面32に対して熱移動可能に設けられている。吸熱面32は、冷風側熱交換部に対して吸熱する吸熱部である。冷風側熱交換部5は、熱伝導率が高い材質によって形成されているため、吸熱面32による吸熱作用によって温められる。冷風側熱交換部5は、上流側通路10bから冷風通路10dに流入した空気と熱交換して、この空気を冷却して冷風にする。暖風側熱交換部4、冷風側熱交換部5は、アルミニウム、銅、その合金などによって形成され、ヒートシンクとも呼ばれている。暖風側熱交換部4、冷風側熱交換部5は、通過する空気との接触面積を大きくするために、薄板状、フィン状、ハニカム状等に形成されている。
【0021】
ペルチェモジュール3について説明する。ペルチェモジュール3は、ペルチェ素子を内蔵している。ペルチェ素子は、ペルチェ効果を利用した板状の熱電素子であり、通電されると厚さ方向の一方面側で吸熱作用を果たし、他方面側で放熱作用を果たす熱電素子である。ペルチェ素子は、2種の金属板の間にP型半導体とN型半導体とを多数配置するとともに、一方の金属板によってN-P接合を構成し、かつ他方の金属板によってP-N接合を構成した素子である。
【0022】
ペルチェモジュール3は、直流電流の方向を切り換えることにより、一方の金属板で放熱現象を生じ他方の金属板で吸熱現象を生じていた状態を、逆の現象に切り換えできる。制御装置8は、放熱面31で放熱作用をもたらし、吸熱面32で吸熱作用をもたらすように、ペルチェモジュール3に供給する電流を制御する。したがって、制御装置8は、ペルチェモジュール3において放熱現象が起こる面と吸熱現象が起こる面とは固定であり切り換わらないように、電流を制御する。
【0023】
空調装置1は、空調対象に向けて吹き出される空調空気が流通する供給通路13aを備えている。供給通路13aは、ケース10に設けられた供給用ダクト13内の通路である。供給通路13aは、空調対象の近傍に位置する吹出部13bを有する。吹出部13bは、供給用ダクト13の開口端に形成されている。供給通路13aは、暖風通路10cと冷風通路10dとに連通している。
【0024】
空調装置1は、供給通路13aに流下させない空気をケース10の外部に排気するための排気通路を備えている。排気通路は、暖風を外部に排気するための暖風用排気通路11aと、冷風を外部に排気するための冷風用排気通路12aとを含む。暖風用排気通路11aは、ケース10に設けられた排気用ダクト11内の通路である。暖風用排気通路11aは、吹出部13bよりも空調対象から離れて位置する排気出口部11bを有する。排気出口部11bは、排気用ダクト11の開口端に形成されている。冷風用排気通路12aは、ケース10に設けられた排気用ダクト12内の通路である。冷風用排気通路12aは、吹出部13bよりも空調対象から離れて位置する排気出口部12bを有する。排気出口部12bは、排気用ダクト12の開口端に形成されている。
【0025】
流路切換用ドア6は、暖風側ドア部61と冷風側ドア部62とを有している。暖風側ドア部61は、暖風用排気通路11aと暖風側供給通路13a1とを開閉可能である。冷風側ドア部62は、冷風用排気通路12aと冷風側供給通路13a2とを開閉可能である。一つの板状ドアは、暖風側ドア部61と冷風側ドア部62とを有し、暖風側ドア部61と冷風側ドア部62との間に通風用開口部63が形成されている。
【0026】
図1に示すように、通風用開口部63が仕切り部14をまたがるように位置する場合は、通風用開口部63は暖風側供給通路13a1と冷風側供給通路13a2とを開く。このとき、暖風側ドア部61によって暖風用排気通路11aが開き、冷風側ドア部62によって冷風用排気通路12aが開いた状態になる。これにより、暖風の一部は暖風側供給通路13a1に流下し冷風の一部は冷風側供給通路13a2に流下して、暖風と冷風の混合風が空調対象に供給される。一方、暖風の残部は暖風用排気通路11aに流下し冷風の残部は冷風用排気通路12aに流下して、空調対象には供給されないことになる。
【0027】
図2に示すように、通風用開口部63が暖風側供給通路13a1のみを開くように位置する場合は、冷風側ドア部62によって冷風側供給通路13a2が閉じた状態になる。このとき、暖風側ドア部61によって暖風用排気通路11aが閉じ、冷風側ドア部62によって冷風用排気通路12aが全開した状態になる。これにより、暖風の全部は暖風側供給通路13a1に流下し、暖風のみが空調対象に供給される暖房運転を実施する。一方、冷風の全部は冷風用排気通路12aに流下して、空調対象には供給されないことになる。
【0028】
図3に示すように、通風用開口部63が冷風側供給通路13a2のみを開くように位置する場合は、暖風側ドア部61によって暖風側供給通路13a1が閉じた状態になる。このとき、冷風側ドア部62によって冷風用排気通路12aが閉じ、暖風側ドア部61によって暖風用排気通路11aが全開した状態になる。これにより、冷風の全部は冷風側供給通路13a2に流下し、冷風のみが空調対象に供給される冷房運転を実施する。一方、暖風の全部は暖風用排気通路11aに流下し空調対象には供給されないことになる。
【0029】
流路切換用ドア6は、開閉機構の一例であるサーボモータ6aによって駆動される。制御装置8は、サーボモータ6aの回転位置を制御することにより、流路切換用ドア6の位置を制御する。制御装置8は、各センサによる検出温度と設定温度とに応じて、
図1~
図3に示すいずれかの状態になるように、サーボモータ6aの回転位置を制御し適度な温度の空調風を供給通路13aに供給する。
【0030】
図5は、空調装置1の第1の設置例を示している。空調装置1は、車室内の乗員9が着座するシート91のヘッドレスト部91aに設置されている。空調装置1は、ヘッドレスト部91aに装着されている構成でもよいし、ヘッドレスト部91aに埋め込まれている構成でもよい。ケース10は、ヘッドレスト部91aの背面側または後面側に設置されている。空調装置1は、吸気部10aを上部に位置させ、供給通路13aと各排気通路とを下方に位置させた状態で設置されている。吹出部13bは、ヘッドレスト部91aの前面側に回り込むように設けられた供給用ダクト13によって、乗員9の首元の後方近傍に位置している。
【0031】
図6は、空調装置1の第2の設置例を示している。空調装置1は、車室内の乗員9が着座するシート91の背もたれ部91bに設置されている。空調装置1は、背もたれ部91bに装着されている構成でもよいし、背もたれ部91bに埋め込まれている構成でもよい。ケース10は、背もたれ部91bの背面側または後面側に設置されている。空調装置1は、吸気部10aを上部に位置させ、供給通路13aと各排気通路とを上方に位置させた状態で設置されている。吹出部13bは、ヘッドレスト部91aの前面側に回り込むように設けられた供給用ダクト13により乗員9の首元の後方近傍に位置している。
【0032】
第1実施形態の空調装置1がもたらす作用効果について説明する。空調装置1は、ケース10の内部において一方側に区画された暖風通路10cと、他方側に区画された冷風通路10dとを備える。空調装置1は、送風部と、暖風通路10cに設けられて暖風通路10cを流通する空気を加熱する暖風側熱交換部4と、冷風通路10dに設けられて冷風通路10dを流通する空気を冷却する冷風側熱交換部5とを備える。空調装置1は、暖風側熱交換部4に対して放熱する一方の放熱部と冷風側熱交換部5に対して吸熱する他方の吸熱部とを有するペルチェモジュール3を備える。空調装置1は、空調対象に向けて吹き出される空気が流通する供給通路13aと、供給通路13aに流通させない空気をケース10外に排出する排気通路とを備える。空調装置1は流路切換部を備える。流路切換部は、暖風通路10cを流下する暖風と冷風通路10dを流下する冷風との一方を供給通路13aに流通させ他方を排気通路に流通させる流路と、暖風と冷風の両方を供給通路13aに流通させる流路とにわたって切り換える。
【0033】
これによれば、ペルチェモジュール3はケース内の一方側に設置された暖風通路側の放熱部において放熱し、他方側に設置された冷風通路側の吸熱部において吸熱する。ペルチェモジュール3の放熱部と吸熱部は、電流の制御によって切り換わる構成ではなく固定されている。さらに流路切換部は、暖房供給時には暖風を供給通路13aに流通させるとともに冷風を排気通路に流通させる流路になるように切り換えることができる。流路切換部は、冷風供給時には冷風を供給通路13aに流通させるとともに暖風を排気通路に流通させる流路になるように切り換えることができる。さらに流路切換部は、必要に応じて暖風と冷風との混合風を供給通路13aに流通させる流路に切り換えることができる。空調装置1は、冷風発生部と暖風発生部とが固定であるため、熱交換部の温度が大きく変化することがない。これにより、空調装置1は、冷房と暖房とを迅速に切り替えて提供することができる。空調装置1によれば、暖風供給時と冷風供給時とにわたって切り換えたときに、暖風供給時初期の暖風温度が大きく低下したり冷風供給時初期の冷風温度が大きく上昇したりする事態を回避できる。以上により、空調装置1は、暖風供給と冷風供給とを迅速に実施可能な装置を提供できる。
【0034】
流路切換部は、暖風を供給通路13aに流通させる流路と冷風を排気通路に流通させる流路とを同時に形成する。これによれば、暖風による暖房を空調対象に対して供給でき、冷風は空調対象に供給せずに排気する運転を提供できる。空調装置1は、空調対象に対して、装置が有する暖房能力をフル活用した空調を提供するため、空調対象に、明確な暖房感を与えることができる。
【0035】
流路切換部は、冷風を供給通路13aに流通させる流路と暖風を排気通路に流通させる流路とを同時に形成する。これによれば、冷風による冷房を空調対象に対して供給でき、暖房は空調対象に供給せずに排気する運転を提供できる。空調装置1は、空調対象に対して、装置が有する冷房能力をフル活用した空調を提供するため、空調対象に、明確な冷房感を与えることができる。
【0036】
流路切換部は、暖風の一部と冷風の一部との両方を供給通路13aに流通させる流路と、暖風の残部と冷風の残部との両方を排気通路に流通させる流路とを同時に形成する。これによれば、暖風の一部と冷風の一部との混合風によって適度に温度調節された空調風を空調対象に対して供給できる。空調装置1は、不要な量の暖風や冷風を排気して、空調対象に対して適度な温度の空調風を提供することができる。
【0037】
ケース10は、車室内のシート91に装着されている。供給通路13aは、シート91に着座する乗員9の上半身に向けて空気が吹き出される吹出部13bを備えている。この構成によれば、乗員9の上半身に対して、暖風供給時初期に暖かく冷風供給初期に涼しい空調風を提供できる。乗員9の上半身はシート91に近い位置にあるため、空調装置1は明確な暖房感や冷房感が得られる空調風を乗員9の感度が高い箇所に集中的に提供できる。
【0038】
吹出部13bは、シート91に着座する乗員9の首元に向けて空気を吹き出す構成である。この構成によれば、乗員9の首元に対して、暖風供給時初期に暖かく冷風供給初期に涼しい空調風を提供できる。首元は感度の高い箇所であるため、明確な暖房感や冷房感をより感じやすく、空調装置1は乗員9の生体情報に影響を与えやすい空調風を提供できる。生体情報は、例えば、呼吸数、脈拍数、心電図、血圧等である。
【0039】
ケース10の内部に空気を吸い込む吸気部10aは、ケース10の上部に位置する。吹出部13bは、ケース10に対して下方に位置している。この構成によれば、空調装置1は上部から車室内の空気を吸い込み、ケース10よりも下方において乗員9に向けて空調風を吹き出す。この空気経路によれば、吹出部13bと乗員9と吸気部10aとに循環する空気流れを形成できる。乗員9の上半身や首元よりも上方にはシート91などの空気流れを妨げる障害物が存在しにくい。したがって、吹出部13bから乗員9に供給された空調風を吸気部10aに吸い込みやすい。これにより、暖房継続中や冷房継続中に、エネルギロスを抑え、ペルチェモジュールの出力を抑制可能な空調装置1を提供できる。
【0040】
吹出部13bは、ケース10に対して上方に位置する。ケース10の内部に空気を吸い込む吸気部10aは、ケース10の下部に位置している。この構成によれば、空調装置1は下部から車室内の空気を吸い込み、ケース10よりも上方において乗員9に向けて空調風を吹き出す。低温の空気は下方に移動しやすいため、この空調装置1によれば、周囲空気よりも比較的温度の低い冷風を供給する冷房時に有利な空気流れを形成できる。
【0041】
排気通路の排気出口部と吸気部10aは、シートの背面側に位置する。吹出部13bは、シート91の前面側から空気を吹き出す。この装置によれば、乗員9に対して、冷風供給時に排気出口部から排気する暖風を遠ざけることができ、暖風供給時に排気出口部から排気する冷風を遠ざけることができる。
【0042】
<第2実施形態>
第2実施形態の車両用空調装置について
図7~
図9を参照して説明する。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様であり、以下、前述の実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0043】
図7に示すように、空調装置101は、流路切換部として、第1ドア106、第2ドア206および第3ドア306を備える。制御装置8は、サーボモータ106aの回転位置を制御することにより、第1ドア106の位置を制御する。制御装置8は、サーボモータ206aの回転位置を制御することにより、第2ドア206の位置を制御する。制御装置8は、サーボモータ306aの回転位置を制御することにより、第3ドア306の位置を制御する。
【0044】
図7に示す状態では、第3ドア306は供給通路13aを全開するように位置し、第3ドア306は暖風側供給通路13a1と冷風側供給通路13a2とを開く。さらに、第1ドア106によって暖風用排気通路11aが閉じ、第2ドア206によって冷風用排気通路12aが閉じた状態になる。これにより、暖風の全部と冷風の全部との混合風が空調対象に供給される。
【0045】
図8に示す状態では、第3ドア306は暖風側供給通路13a1を全開し、冷風側供給通路13a2を全閉するように位置する。さらに、第1ドア106によって暖風用排気通路11aが閉じ、第2ドア206によって冷風用排気通路12aが開いた状態になる。これにより、暖風の全部が暖風側供給通路13a1を通じて空調対象に供給される暖房運転を実施する。一方、冷風の全部は冷風用排気通路12aに流下し空調対象には供給されないことになる。
【0046】
図9に示す状態では、第3ドア306は暖風側供給通路13a1を全閉し、冷風側供給通路13a2を全開するように位置する。さらに、第1ドア106によって暖風用排気通路11aが開き、第2ドア206によって冷風用排気通路12aが閉じた状態になる。これにより、冷風の全部が冷風側供給通路13a2を通じて空調対象に供給される冷房運転を実施する。一方、暖風の全部は暖風用排気通路11aに流下して、空調対象には供給されないことになる。
【0047】
第2実施形態の流路切換部は、暖風の全部と冷風の全部との両方を供給通路13aに流通させる流路と排気通路を閉じる状態とを同時に形成する。これによれば、暖風の全部と冷風の全部との混合風によって温度調節された空調風を空調対象に対して供給できる。空調装置1は、空調空気を排気することなく、装置が有する暖房能力と冷房能力とをフル活用した空調を提供できる。
【0048】
<他の実施形態>
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0049】
明細書に開示の目的を達成可能な空調装置が備える排気通路は、前述の実施形態に記載した構成に限定されない。この排気通路は、例えば、暖風用排気通路と冷風用排気通路とを一つの排気通路とする構成でもよい。
【符号の説明】
【0050】
2…送風機(送風部)、 3…ペルチェモジュール、 4…暖風側熱交換部
5…冷風側熱交換部、 6…流路切換用ドア(流路切換部)、 10…ケース
10c…暖風通路、 10d…冷風通路、 11a…暖風用排気通路(排気通路)
12a…冷風用排気通路(排気通路)、 13a…供給通路、 31…放熱面(放熱部)
32…吸熱面(吸熱部)、 106…第1ドア(流路切換部)
206…第2ドア(流路切換部)、 306…第3ドア(流路切換部)