(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】除電装置及びこれを用いた媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
H05F 3/04 20060101AFI20231226BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20231226BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20231226BHJP
B65H 5/00 20060101ALI20231226BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231226BHJP
B65H 29/20 20060101ALI20231226BHJP
B65H 43/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H05F3/04 D
G03G15/16
G03G21/16 104
B65H5/00 A
G03G15/00 460
B65H29/20
B65H43/00
H05F3/04 E
(21)【出願番号】P 2020003005
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】田中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 宏一郎
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-142187(JP,A)
【文献】特開平06-020791(JP,A)
【文献】特開2019-167169(JP,A)
【文献】特開2015-108773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/04
G03G 15/16
G03G 21/16
B65H 5/00
G03G 15/00
B65H 29/20
B65H 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される媒体に接触する第1の除電部材と、
前記第1の除電部材との間で前記媒体を挟み込む第2の除電部材と、
前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源と、
を備え、
前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は弾性体を
有し、
前記媒体は、除電前に比べて、除電後の表面における正電荷と負電荷の分布が不均一になるように除電されることを特徴とする除電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の除電装置において、
前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材はいずれも弾性体を有することを特徴とする除電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の除電装置において、
前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は前記媒体に接触する面が曲面部を有することを特徴とする除電装置。
【請求項4】
請求項3に記載の除電装置において、
前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は回転部材であることを特徴とする除電装置。
【請求項5】
請求項
1に記載の除電装置において、
前記媒体は、除電後の表面電荷の分布が、除電前に支配的だった電荷の割合が多くなるように除電されることを特徴とする除電装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれかに記載の除電装置において、
前記媒体の除電前後の少なくとも一方の表面電位に応じて前記電源の印加電圧を制御する制御手段を備えることを特徴とする除電装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の除電装置において、
前記制御手段は、前記媒体の除電前の少なくとも一方の表面電位に応じて前記電源の印加電圧を制御することを特徴とする除電装置。
【請求項8】
搬送される媒体に接触する第1の除電部材と、
前記第1の除電部材との間で前記媒体を挟み込む第2の除電部材と、
前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源と、
前記媒体の除電前後の少なくとも一方の表面電位に応じて前記電源の印加電圧を制御する制御手段と、
を備え、
前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は弾性体を有し、
前記制御手段は、前記媒体の除電後の少なくとも一方の表面電位に応じて前記電源の印加電圧を制御することを特徴とする除電装置。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載の除電装置において、
前記弾性体を有する除電部材は、アスカーC硬度が60度以上80度以下であることを特徴とする除電装置。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれかに記載の除電装置において、
前記弾性体を有する除電部材は、体積抵抗率が10
6Ω・cm以上10
8Ω・cm以下であることを特徴とする除電装置。
【請求項11】
搬送される媒体に接触する第1の除電部材と、前記第1の除電部材との間で前記媒体を挟み込む第2の除電部材と、前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源と、を備え、前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は弾性体を有する接触型除電手段と、
前記接触型除電手段よりも前記媒体の搬送方向下流側に設けられ、前記接触型除電手段にて除電された後の媒体の残電荷を非接触な状態で除電する非接触型除電手段と、
を
備え、
前記接触型除電手段として、請求項1乃至10のいずれかに記載の除電装置を用いることを特徴
とする除電装置。
【請求項12】
搬送される媒体に接触する第1の除電部材と、前記第1の除電部材との間で前記媒体を挟み込む第2の除電部材と、前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源と、を備え、前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は弾性体を有する接触型除電手段と、
前記接触型除電手段よりも前記媒体の搬送方向下流側に設けられ、前記接触型除電手段にて除電された後の媒体の残電荷を非接触な状態で除電する非接触型除電手段と、
前記非接触型除電手段に電圧を印加する電源と、
前記媒体の除電前後の少なくとも一方の表面電位に応じて前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源の印加電圧を制御し、かつ、前記非接触型除電手段の電源の印加電圧を制御しない制御手段と、
を備えることを特徴とする除電装置。
【請求項13】
媒体を搬送する搬送手段と、
前記媒体の搬送経路の途中に設けられ、前記媒体を帯電する帯電手段と、
前記帯電手段よりも前記媒体の搬送方向下流側に設けられ、前記帯電手段にて帯電された
前記媒体を除電する請求項1乃至
12のいずれかに記載の除電装置と、を備えたことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項14】
媒体を搬送する搬送手段と、
前記媒体の搬送経路の途中に設けられ、前記媒体を帯電する帯電手段と、
前記帯電手段よりも前記媒体の搬送方向下流側に設けられ、前記帯電手段にて帯電された前記媒体を除電する除電装置と、を備え、
前記帯電手段は対構成の転写部材間に前記媒体を挟み込んで画像を転写する転写手段で
あり、
前記除電装置は、搬送される前記媒体に接触する第1の除電部材と、前記第1の除電部材との間で前記媒体を挟み込む第2の除電部材と、前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源と、を備え、前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は弾性体を有し、
前記除電装置を構成する第1、第2の除電部材間の媒体接触圧は前記対構成の転写部材間の媒体接触圧よりも低いことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項15】
請求項
13又は
14に記載の媒体処理装置において、
前記除電装置よりも媒体の搬送方向上流側に媒体反転手段を備え、
前記媒体反転手段による媒体の反転の有無に応じて前記電源の印加電圧の極性を切り替
える切替手段を有することを特徴とする媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を除電する除電装置及びこれを用いた媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の除電装置としては例えば特許文献1~4に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、媒体同士の貼り付きを抑制するために、画像形成部によって画像が形成された媒体を帯電させる電荷制御ユニットと、媒体の温度に基づいて、電荷制御ユニットに供給される電流を制御する印加電流制御部と、を有する画像形成システムが開示されている。
特許文献2には、接触型除電手段で帯電シートの表面を除電し、非接触型除電手段で帯電シートの裏面を除電する除電装置が開示されている。
特許文献3には、媒体を除電する除電部材と、媒体を除電するための除電電流が当該媒体に流れるように除電電圧を除電部材に印加する電圧印加部と、除電電圧を除電部材に印加させる際、媒体の搬送速度を変更させると共に、搬送速度の変更に応じて除電電圧を変更させて媒体に流れる除電電流を変更させる制御部と、を備える画像形成システムが開示されている。
特許文献4には、シートの一方の面に対向し、シートの移動方向にほぼ直交する直線上に配置され、直流電圧を印加する複数の第1の放電電極と、シートを挟んで第1の放電電極と対向し、シートの移動方向にほぼ直交する直線上に配置され、直流電圧を印加する複数の第2の放電電極とを備え、第1、第2の放電電極は、それぞれ隣り合う放電電極の極性を逆極性にすると共に、対向する第1、第2の放電電極の極性を逆極性にし、隣り合う放電電極間に正イオンと負イオンとを混在させる構成にした除電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-157011号公報
【文献】米国特許公報US8,320,817 B2
【文献】特開2017-111329号公報
【文献】特許第6481219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、媒体を挟み込む除電部材の表面がいずれも金属製である場合に比べて、媒体の搬送方向に交差する交差方向における除電ムラを抑制する除電装置及びこれを用いて媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、搬送される媒体に接触する第1の除電部材と、前記第1の除電部材との間で前記媒体を挟み込む第2の除電部材と、前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源と、を備え、前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は弾性体を有し、前記媒体は、除電前に比べて、除電後の表面における正電荷と負電荷の分布が不均一になるように除電されることを特徴とする除電装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る除電装置において、前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材はいずれも弾性体を有することを特徴とする除電装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る除電装置において、前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は前記媒体に接触する面が曲面部を有することを特徴とする除電装置である。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る除電装置において、前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は回転部材であることを特徴とする除電装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1に係る除電装置において、前記媒体は、除電後の表面電荷の分布が、除電前に支配的だった電荷の割合が多くなるように除電されることを特徴とする除電装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに係る除電装置において、前記媒体の除電前後の少なくとも一方の表面電位に応じて前記電源の印加電圧を制御する制御手段を備えることを特徴とする除電装置である。
請求項7に係る発明は、請求項6に係る除電装置において、前記制御手段は、前記媒体の除電前の少なくとも一方の表面電位に応じて前記電源の印加電圧を制御することを特徴とする除電装置である。
請求項8に係る発明は、搬送される媒体に接触する第1の除電部材と、前記第1の除電部材との間で前記媒体を挟み込む第2の除電部材と、前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源と、前記媒体の除電前後の少なくとも一方の表面電位に応じて前記電源の印加電圧を制御する制御手段と、を備え、前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は弾性体を有し、前記制御手段は、前記媒体の除電後の少なくとも一方の表面電位に応じて前記電源の印加電圧を制御することを特徴とする除電装置である。
請求項9に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに係る除電装置において、前記弾性体を有する除電部材は、アスカーC硬度が60度以上80度以下であることを特徴とする除電装置である。
請求項10に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに係る除電装置において、前記弾性体を有する除電部材は、体積抵抗率が106Ω・cm以上108Ω・cm以下であることを特徴とする除電装置である。
【0007】
請求項11に係る発明は、搬送される媒体に接触する第1の除電部材と、前記第1の除電部材との間で前記媒体を挟み込む第2の除電部材と、前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源と、を備え、前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は弾性体を有する接触型除電手段と、前記接触型除電手段よりも前記媒体の搬送方向下流側に設けられ、前記接触型除電手段にて除電された後の媒体の残電荷を非接触な状態で除電する非接触型除電手段と、を備え、前記接触型除電手段として、請求項1乃至10のいずれかに係る除電装置を用いることを特徴とする除電装置である。
請求項12に係る発明は、搬送される媒体に接触する第1の除電部材と、前記第1の除電部材との間で前記媒体を挟み込む第2の除電部材と、前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源と、を備え、前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は弾性体を有する接触型除電手段と、前記接触型除電手段よりも前記媒体の搬送方向下流側に設けられ、前記接触型除電手段にて除電された後の媒体の残電荷を非接触な状態で除電する非接触型除電手段と、前記非接触型除電手段に電圧を印加する電源と、前記媒体の除電前後の少なくとも一方の表面電位に応じて前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源の印加電圧を制御し、かつ、前記非接触型除電手段の電源の印加電圧を制御しない制御手段と、を備えることを特徴とする除電装置である。
【0008】
請求項13に係る発明は、媒体を搬送する搬送手段と、前記媒体の搬送経路の途中に設けられ、前記媒体を帯電する帯電手段と、前記帯電手段よりも前記媒体の搬送方向下流側に設けられ、前記帯電手段にて帯電された前記媒体を除電する請求項1乃至12のいずれかに記載の除電装置と、を備えたことを特徴とする媒体処理装置である。
請求項14に係る発明は、媒体を搬送する搬送手段と、前記媒体の搬送経路の途中に設けられ、前記媒体を帯電する帯電手段と、前記帯電手段よりも前記媒体の搬送方向下流側に設けられ、前記帯電手段にて帯電された前記媒体を除電する除電装置と、を備え、前記帯電手段は対構成の転写部材間に前記媒体を挟み込んで画像を転写する転写手段であり、前記除電装置は、搬送される前記媒体に接触する第1の除電部材と、前記第1の除電部材との間で前記媒体を挟み込む第2の除電部材と、前記第1の除電部材又は前記第2の除電部材の少なくとも一方に電圧を印加する電源と、を備え、前記第1の除電部材及び前記第2の除電部材の少なくとも一方は弾性体を有し、前記除電装置を構成する第1、第2の除電部材間の媒体接触圧は前記対構成の転写部材間の媒体接触圧よりも低いことを特徴とする媒体処理装置である。
請求項15に係る発明は、請求項13又は14に係る媒体処理装置において、前記除電装置よりも媒体の搬送方向上流側に媒体反転手段を備え、前記媒体反転手段による媒体の反転の有無に応じて前記電源の印加電圧の極性を切り替える切替手段を有することを特徴とする媒体処理装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、媒体を挟みこむ除電部材の表面がいずれも金属製である場合に比べて、媒体の搬送方向に交差する交差方向における除電ムラを抑制することができる。特に、表面電位計で測定したときの媒体の表面電位を大きく下げることができる。
請求項2に係る発明によれば、一方の除電部材のみが弾性体を有する場合に比べて、媒体の交差方向における除電ムラをより抑制することができる。
請求項3に係る発明によれば、媒体の搬送性を損なうことなく、媒体の交差方向における除電ムラを抑制することができる。
請求項4に係る発明によれば、媒体の搬送性を良好に保ちながら、媒体の交差方向における除電ムラを抑制することができる。
請求項5に係る発明によれば、除電後の媒体表面の電荷の分布がばらついてしまうことを抑制することができる。
請求項6に係る発明によれば、電源の印加電圧を一律で用いる場合に比べて、除電に最適な電圧を設定することができる。
請求項7に係る発明によれば、1枚目の媒体から電源の印加電圧をフィードバック制御して除電することができる。
請求項8に係る発明によれば、表面電位計で高電位を測定することなく、2枚目以降の媒体について電源の印加電圧をフィードバック制御して除電することができる。
請求項9に係る発明によれば、第1、第2の除電部材による媒体に対する挟持状態を安定させ、媒体の交差方向における除電特性を略均一にすることができる。
請求項10に係る発明によれば、体積抵抗率が106Ω・cm未満のものに比べて、第1、第2の除電部材間の放電を安定させ、かつ、体積抵抗率が108Ω・cmを超えたものに比べて過多な電圧を必要とせずに放電を実施することができる。
請求項11に係る発明によれば、非接触型除電手段を用いない場合に比べて、接触型除電手段による除電で生じた媒体上の不均一な電荷を除電することができる。
請求項12に係る発明によれば、非接触型除電手段に対する制御を複雑にすることなく、大きな除電効果を決定づける接触型除電手段のみを制御することで、良好な除電を実現することができる。
請求項13に係る発明によれば、媒体を挟みこむ除電部材の表面がいずれも金属製である場合に比べて、媒体の搬送方向に交差する交差方向における除電ムラを抑制することが可能な除電装置を含む媒体処理装置を構築することができる。
請求項14に係る発明によれば、媒体上に形成された画像品質を損なうことなく、媒体の交差方向における除電ムラを抑制することができる。
請求項15に係る発明によれば、媒体反転機構による反転の有無に拘わらず、媒体に対して除電を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は本発明が適用された除電装置を用いた媒体処理装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す接触型除電手段の要部を示す説明図である。
【
図2】(a)は実施の形態1に係る画像形成装置の除電装置を用いない態様で媒体排出受けに積載された複数の媒体の帯電分布例を模式的に示す説明図、(b)は同除電装置の作用を示す説明図、(c)は同除電装置を用いた態様で媒体排出受けに積載された複数の媒体の帯電分布例を模式的に示す説明図である。
【
図3】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【
図4】実施の形態1に係る画像形成装置の二次転写部周り、除電部周りの構成例を示す説明図である。
【
図5】(a)は実施の形態1で用いられる接触型除電器の構成例を示す説明図、(b)は実施の形態1で用いられる接触型除電器の他の構成例を示す説明図、(c)は(b)に示す接触型除電器による除電動作不実施時の状態を示す説明図である。
【
図6】(a)は接触型除電器による除電動作を模式的に示す説明図、(b)は同接触型除電器による除電動作に伴う媒体の帯電状態の変化傾向を示す説明図、(c)は非接触型除電器による除電動作を模式的に示す説明図、(d)は非接触型除電器による除電動作に伴う媒体の帯電状態の変化傾向を示す説明図である。
【
図7】(a)は媒体の帯電状態の一例を示す説明図、(b)は接触型除電器による除電動作原理を示す説明図、(c)は非接触型除電器による除電動作原理を示す説明図である。
【
図8】実施の形態1に係る画像形成装置の作像制御処理過程を示すフローチャートである。
【
図9】(a)は
図8に示す「除電方式の決定手法」の一例を示す説明図、(b)は媒体の表面抵抗を測定する一例を示す説明図である。
【
図10】実施の形態1における除電装置による除電動作過程を模式的に示す説明図である。
【
図11】(a)は実施の形態1に係る接触型除電器の対構成の除電ロールの構造を示す説明図、(b)は(a)中のB部分における対構成の除電ロールによる媒体との接触状態を示す説明図、(c)は対構成の除電ロールの軸方向における媒体との接触状態を示す説明図である。
【
図12】(a)は対構成の除電ロールによる媒体との接触の意義及びその接触圧を示す説明図、(b)は除電ロールの体積抵抗率の測定方法の一例を示す説明図である。
【
図13】(a)は媒体の表面電位を測定する表面電位計の設置例を示す説明図、(b)は表面電位計と媒体との位置関係を示す説明図である。
【
図14】接触型除電器の除電バイアス制御の一例を示すフローチャートである。
【
図15】(a)は接触型除電器による除電動作に伴う媒体の帯電変化を示す説明図、(b)は接触型除電器による除電前後における媒体表面の帯電状態を模式的に示す説明図である。
【
図16】(a)は接触型除電器に対する表面電位計の設置例を示す説明図、(b)は接触型除電器よりも媒体の搬送方向下流側に設置された表面電位計を用いて除電バイアスの初期最適値を選定する手法の一例を示す説明図、(c)はその手法による計量線の一例を示す説明図である。
【
図17】(a)は非接触型除電器によるコロナ放電に伴う放電ワイヤからの電荷の移動を模式的に示す説明図、(b)はコロナ放電の電圧-電流特性の一例を示す説明図、(c)はACコロトロン(交流放電バイアスを使用)のイオンバランスを模式的に示す説明図である。
【
図18】(a)は非接触型除電器の対向電極有りの態様における発生イオンの挙動例を模式的に示す説明図、(b)は対向電極無しの態様における発生イオンの挙動例を模式的に示す説明図、(c)はAC除電バイアスを使用した場合の媒体の表面電位の除電経過を示す説明図、(d)はDC除電バイアスを使用した場合の媒体の表面電位の除電経過を示す説明図である。
【
図19】(a)は非接触型除電器の除電バイアス制御の一例を示すフローチャート、(b)は除電バイアスVd2の周波数fの決定手法の一例を示す説明図である。
【
図20】実施の形態2に係る画像形成装置の要部を示す説明図である。
【
図21】実施の形態2に係る画像形成装置の除電部周りの構成例を示す説明図である。
【
図22】(a)は媒体反転無しにおける接触型除電器による除電動作例を示す説明図、(b)は媒体反転有りにおける接触型除電器による除電動作例を示す説明図である。
【
図23】(a)は変形の形態1における非接触型除電器の要部を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た遮蔽シールドの一例を示す説明図、(c)は遮蔽シールドの作用を示す説明図である。
【
図24】(a)は変形の形態2における非接触型除電器の要部を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た非接触型除電器の矢視図、(c)は(b)に示す非接触型除電器の変形例を示す説明図である。
【
図25】(a)は実施例1において、媒体の表面電荷分布を可視化させるカスケード現像法を示す説明図、(b)は除電前の媒体の表面電荷分布、接触型除電器を通過後の媒体の表面電荷分布及び非接触型除電器を通過後の媒体の表面電荷分布をカスケード現像法にて可視化した一例を示す説明図である。
【
図26】(a)は実施例2に係る接触型除電器における定電圧制御による印加電圧と除電後電位との関係を示すグラフ図、(b)は実施例2に係る接触型除電器における定電流制御による印加電流と除電後電位との関係を示すグラフ図である。
【
図27】実施例3における対構成の除電ロールによる媒体ニップ変動と、除電制御安定性との関係を示す説明図である。
【
図28】(a)は実施例4における非接触型除電器において、除電パラメータとしてのf/vとその評価結果との関係を示す説明図、(b)は除電パラメータとして周波数fを振った例を示す説明図、(c)は除電パラメータとしてf(周波数)/v(媒体搬送速度)を振った例を示す説明図、(d)は除電パラメータとしてf(周波数)/v(媒体搬送速度)*L(筐体開口幅)を振った例を示す説明図である。
【
図29】(a)は実施例4の評価方法を示す説明図、(b)は(a)の評価手法において、周波数と引張荷重との関係を示す説明図である。
【
図30】(a)は実施例5に係る非接触型除電器において、除電パラメータf(周波数)/v(媒体搬送速度)が規定値以上の場合の除電後の媒体の表面電荷分布の一例を示す説明図、(b)は除電パラメータf/vが規定値未満の場合の除電後の媒体の表面電荷分布の一例を示す説明図である。
【
図31】実施例6に係る非接触型除電器において、電極距離(放電ワイヤと媒体との間の距離に相当)と電荷量(媒体の表面電荷量に相当)との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された除電装置を用いた媒体処理装置の実施の形態の概要を示す。
同図において、媒体処理装置は、媒体Sを搬送する搬送手段13と、媒体Sの搬送経路の途中に設けられ、媒体Sを帯電する帯電手段14と、帯電手段14よりも媒体Sの搬送方向下流側に設けられ、帯電手段14にて帯電された媒体Sを除電する除電装置10と、を備えたものである。
ここで、媒体処理装置は画像形成部を有する画像形成装置に限らず、画像形成部を有しない態様も含む。また、帯電手段14には転写電圧を印加する転写手段は勿論、媒体S搬送中の摩擦によって帯電する搬送手段も含む。
本例において、除電装置10は、
図1(b)に示すように、搬送される媒体Sに接触する第1の除電部材1と、第1の除電部材1との間で媒体Sを挟み込む第2の除電部材2と、第1の除電部材1又は第2の除電部材2の少なくとも一方に電圧を印加する電源3と、を備え、第1の除電部材1及び第2の除電部材2の少なくとも一方は弾性体4を有する接触型除電手段11と、接触型除電手段11よりも媒体Sの搬送方向下流側に設けられ、接触型除電手段11にて除電された後の媒体Sの残電荷を非接触な状態で除電する非接触型除電手段12と、を備えたものである。
【0012】
このような技術的手段において、第1の除電部材1、第2の除電部材2は回転部材(ロール)に限らず、固定部材であっても、例えば媒体Sとの接触面を曲面部に形成し、媒体Sに対し搬送可能に接触するものを広く含む。
また、第1の除電部材1、第2の除電部材2は媒体非通過時には非接触であるが、媒体S通過時に媒体Sに接触するものを含む。
更に、電源3の印加電圧制御については、定電流制御でも除電効果は得られるものの、定電圧制御が好ましい。また、印加電圧としては直流電圧が用いられる。
更にまた、第1の除電部材1、第2の除電部材2のうち少なくとも一方は弾性体4を有しているため、第1の除電部材1、第2の除電部材2間に媒体Sが通過するときには、少なくとも弾性体4を有する第1の除電部材1又は第2の除電部材2は媒体Sの表面に面接触し、媒体Sの表面との接触状態を保つ。
特に、第1の除電部材1、第2の除電部材2の媒体Sの搬送方向に交差する交差方向においても、弾性体4の弾性変形によって媒体Sとの接触状態が保たれることから、媒体Sの交差方向に対する除電ムラは抑制される。
【0013】
また、本例では、接触型除電手段11にて大幅除電が実施され、非接触型除電手段12にて除電量が均一にレベリングされるという作用を奏する。
仮に、本例の除電装置(接触型除電手段11,非接触型除電手段12)による除電処理が実施されない場合を想定すると、
図2(a)に示すように、例えば樹脂フィルムのような高抵抗な媒体Sの表面電位が-電位に帯電され、誘電分極により媒体Sの裏面電位が反転した+電位となり、この種の媒体Sが積載された状態で収容されると、媒体S同士が静電気力にて張り付いてしまう懸念がある。
しかしながら、本例の除電装置10(接触型除電手段11,非接触型除電手段12)による除電処理を行うようにすれば、
図2(b)に示すように、高抵抗の媒体Sを使用したとしても、接触型除電手段11及び非接触型除電手段12を通過した媒体Sの表面の帯電は大幅に除電され、これに伴って、媒体Sの裏面の帯電も大幅に除電されることから、
図2(c)に示すように、媒体Sが積載された状態で収容されたとしても、媒体S同士が静電気力にて貼り付く懸念は解消される。
【0014】
次に、本実施の形態に係る除電装置10のうち、特に接触型除電手段11の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、第1の除電部材1、第2の除電部材2の好ましい態様については、第1の除電部材1及び第2の除電部材2がいずれも弾性体4を有する態様が挙げられる。これは、一方の除電部材のみが弾性体4を有する場合に比べて、媒体Sの交差方向において媒体Sの両方の表面(表裏両面に相当)との接触状態を保ち易いことによる。
また、第1の除電部材1及び第2の除電部材2の少なくとも一方は媒体Sに接触する面が曲面部を有する態様が好ましい。これは、第1の除電部材1又は第2の除電部材2の曲面部と媒体Sとの間の摺動抵抗が小さいことから、搬送手段13によって搬送される媒体Sの搬送性が損なわれる懸念が少ないことによる。
特に、第1の除電部材1及び第2の除電部材2の少なくとも一方が回転部材である態様が、媒体Sの搬送性も良好に保たれる点で好ましい。
【0015】
更に、第1の除電部材1又は第2の除電部材2の硬度については、弾性体4を有する除電部材1又は2は、アスカーC硬度が60度以上80度以下であることが好ましい。本例は、第1の除電部材1、第2の除電部材2による媒体Sに対する挟持状態を安定させる上で好適である。
更にまた、第1の除電部材1又は第2の除電部材2の体積抵抗率については、弾性体4を有する第1の除電部材1又は第2の除電部材2は、体積抵抗率が106Ω・cm以上108Ω・cm以下であることが好ましい。これは、体積抵抗率が106Ω・cm未満の場合には放電し難くなり、また、体積抵抗率が108Ω・cmを超えると、放電に要する過度な電圧が必要になってしまうことによる。
【0016】
また、接触型除電手段11による好ましい除電動作としては、媒体Sは、除電前に比べて、除電後の表面における正電荷と負電荷の分布が不均一になるように除電される態様が挙げられる。本例では、媒体Sの表面電位を打ち消す極性の電圧を印加すればよいが、その電位レベルは除電後の表面電位が略0に近づくように選定することが好ましい。
更に好ましくは、媒体Sは、除電後の表面電荷の分布が、除電前に支配的だった電荷の割合が多くなるように除電される態様が挙げられる。仮に、除電前に支配的だった電荷の割合が少なくなるように除電されてしまうと、極性の異なる電荷が多く配分されることになり、除電後の媒体表面の電荷の分布がばらつき易くなってしまうことによる。
【0017】
また、電源3の印加電圧については一律で用いるようにしてもよいが、除電に最適な電圧を印加するという観点からすれば、媒体Sの除電前後の少なくとも一方の表面電位に応じて電源3の印加電圧を制御する制御手段6を備える態様が挙げられる。本例では、接触型除電手段11による除電前後の少なくとも一方に表面電位計5を設置し、表面電位計5にて媒体Sの表面電位を測定するようにすればよい。
このとき、制御手段6は、媒体Sの除電前の少なくとも一方の表面電位に応じて電源3の印加電圧を制御するようにしてもよいし、あるいは、媒体Sの除電後の少なくとも一方の表面電位に応じて電源3の印加電圧を制御するようにすればよい。前者の態様では、1枚目の媒体Sから電源3の印加電圧をフィードバック制御することが可能であり、後者の態様では、2枚目の媒体Sから電源3の印加電圧をフィードバック制御することが可能であり、除電後の媒体Sの表面電位を測定することから、表面電位計5として高電位を測定することを考慮せずに済む。
【0018】
また、制御手段6については、非接触型除電手段12の電源15の印加電圧を制御するようにしても差し支えないが、本例では、非接触型除電手段12による除電動作は、接触型除電手段11による除電後に残存する媒体Sの表面電荷であるから、そもそも除電対象とする媒体Sの表面電位は少なく、制御手段6によって電源15の印加電圧を制御する必要性が少ない。このため、より制御系を簡略化させるという観点から電源15に対して印加電圧を制御しない態様が採用されている。
また、接触型除電手段11については、例えば帯電手段14が対構成の転写部材間に媒体Sを挟み込んで画像を転写する転写手段である態様では、第1の除電部材1、第2の除電部材2間の媒体接触圧(ニップ圧)は対構成の転写部材間の媒体接触圧よりも低く設定して差し支えない。これは、転写手段にあっては対構成の転写部材間の媒体接触圧として画像の転写性が必要になり、その分、媒体接触圧をある程度高く設定することが必要になるが、第1の除電部材1、第2の除電部材2間の媒体接触圧については転写手段のような要請がなく、媒体Sとの接触状態を維持すれば除電動作が可能になることから、媒体接触圧を低く選定して差し支えない。また、第1の除電部材1、第2の除電部材2間のニップ圧を転写部材間の媒体接触圧よりも低く抑えることで、第1の除電部材1や第2の除電部材2への過度な負荷を抑え、摩耗や変形を抑えることができる。
更に、除電装置10よりも媒体Sの搬送方向上流側に媒体反転手段(
図1では図示せず)を備えた態様では、媒体反転手段による媒体の反転の有無に応じて電源3の印加電圧の極性を切り替える切替手段(
図1では図示せず)を有することが好ましい。
【0019】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
図3は実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す。
-画像形成装置の全体構成-
同図において、画像形成装置20は、画像形成装置筐体21内に、複数の色成分(本実施の形態ではホワイト#1、イエロ、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイト#2)画像を形成する画像形成部22(具体的には22a~22f)と、各画像形成部22にて形成された各色成分画像を順次転写(一次転写)して保持するベルト状の中間転写体30と、中間転写体30上に転写された各色成分画像を媒体Sに二次転写する二次転写装置50と、二次転写された画像を媒体S上に定着させる定着装置70と、二次転写域に媒体Sを搬送する媒体搬送系80と、を備えている。尚、本例では、ホワイト#1、ホワイト#2は全く同色の白色材料を用いているが、媒体S上の他の色成分画像よりも下層に位置するか、上層に位置するかによって異なる白色材料を用いたものでもよいし、また、例えばホワイト#1、ホワイト#2に代えて透明色の材料を用いるようにしてもよいし、他の特殊色の材料を用いてもよいことは勿論である。
【0020】
-画像形成部-
本実施の形態において、各画像形成部22(22a~22f)は、夫々ドラム状の感光体23を有し、各感光体23の周囲には、感光体23が帯電されるコロトロンや転写ロール等の帯電装置24、帯電された感光体23上に静電潜像が書き込まれるレーザ走査装置等の露光装置25、感光体23上に書き込まれた静電潜像が各色成分トナーにて現像される現像装置26、感光体23上のトナー画像が中間転写体30に転写される転写ロール等の一次転写装置27及び感光体23上の残留トナーが除去される感光体清掃装置28を夫々配設したものである。
【0021】
また、中間転写体30は、複数の張架ロール31~33に掛け渡されており、例えば張架ロール31が図示外の駆動モータにて駆動される駆動ロールとして用いられ、当該駆動ロールにて循環移動するようになっている。更に、張架ロール31,33間には二次転写後の中間転写体30上の残留トナーを除去するための中間転写体清掃装置35が設けられている。
【0022】
-二次転写装置-
更に、二次転写装置50は、
図3及び
図4に示すように、複数の張架ロール52(具体的には52a,52b)に転写搬送ベルト53が張架されたベルト転写モジュール51を中間転写体30の表面に接触するように配置したものである。
ここで、転写搬送ベルト53はクロロプレン等の材料を用いた体積抵抗率10
6~10
12Ω・cmの半導電性ベルトであり、一方の張架ロール52aを弾性転写ロール55として構成し、この弾性転写ロール55を、転写搬送ベルト53を介して中間転写体30に二次転写域TRにて圧接配置すると共に、中間転写体30の張架ロール33を弾性転写ロール55の対向電極をなす対向ロール56として対向配置し、一方の張架ロール52a位置から他方の張架ロール52b位置に向けて媒体Sの搬送経路を形成するものである。
そして、本例では、弾性転写ロール55は金属製シャフトの周囲に発泡ウレタンゴムやEPDMにカーボンブラック等が配合された弾性層を被覆した構成になっている。
更に、対向ロール56(本例では張架ロール33を兼用)には導電性の給電ロール57を介して転写用電源58からの転写バイアスVtが印加されており、一方、弾性転写ロール55(一方の張架ロール52a)は図示外の金属製シャフトを介して接地されており、弾性転写ロール55及び対向ロール56間に所定の転写電界が形成されるようになっている。尚、他方の張架ロール52bも接地されており、転写搬送ベルト53への帯電を防止するようになっている。また、転写搬送ベルト53の下流端での媒体Sの剥離性を考慮すると、下流側の張架ロール52bを上流側の張架ロール52aよりも小径にすることが有効である。
【0023】
-定着装置-
定着装置70は、媒体Sの画像保持面側に接触して配置される駆動回転可能な加熱定着ロール71と、当該加熱定着ロール71に対向して圧接配置され、加熱定着ロール71に追従して回転する加圧定着ロール72とを有し、両定着ロール71,72間の圧接領域に媒体S上に保持された画像を通過させ、当該画像を加熱加圧定着するものである。尚、定着装置70の定着方式については実施の形態で示した態様に限られるものではなく、非接触、レーザ光を利用した定着方式など適宜選定して差し支えない。
【0024】
-媒体搬送系-
更に、媒体搬送系80は、複数段(本例では二段)の媒体供給容器81,82を有し、媒体供給容器81,82のいずれかから供給される媒体Sを略鉛直方向に延びる鉛直搬送路83から略水平方向に延びる水平搬送路84を経て二次転写域TRへと至り、その後、転写された画像が保持された媒体Sを、搬送ベルト85を経由して定着装置70による定着部位に至り、画像形成装置筐体21の側方に設けられた媒体排出受け86に排出するものである。
そして更に、媒体搬送系80は、水平搬送路84のうち定着装置70の媒体搬送方向下流側に位置する部分から下方に向かって分岐する反転可能な分岐搬送路87を有し、当該分岐搬送路87で反転された媒体Sを戻し搬送路88を経て再び鉛直搬送路83から水平搬送路84へと戻し、二次転写域TRにて媒体Sの裏面に画像を転写し、定着装置70を経て媒体排出受け86へ排出するようになっている。また、分岐搬送路87の途中には、水平搬送路84を通過する媒体Sを反転させて媒体排出受け86に排出する媒体反転機構89が設けられている。この媒体反転機構89は、分岐搬送路87の途中から分岐し且つ反転された媒体Sを媒体排出受け86側に搬送する分岐戻し搬送路90を有し、水平搬送路84と分岐搬送路87との境界部及び分岐搬送路87と分岐戻し搬送路90との境界部には夫々切替ゲート91,92を設置し、水平搬送路84を通過する媒体Sを反転させて媒体排出受け86に排出するものである。
また、媒体搬送系80には媒体Sを位置合せして二次転写域TRに供給する位置合せロール93のほか、各搬送路83,84,87,88には適宜数の搬送ロール94が設けられている。更にまた、画像形成装置筐体21の媒体排出受け86の反対側には水平搬送路84に向かって手差し媒体が供給可能な手差し媒体供給器95が設けられている。
【0025】
-除電装置の基本構成-
本実施の形態においては、定着装置70から媒体排出受け86に至る水平搬送路84のうち、媒体反転機構89に通じる分岐搬送路87よりも媒体Sの搬送方向上流側に除電装置100が設けられている。
本例において、除電装置100は、媒体Sに接触して当該媒体Sに帯電した電荷の過半量を除電する接触型除電器101と、接触型除電器101よりも媒体Sの搬送方向下流側に設けられ、接触型除電器101にて除電された後の媒体Sの残電荷を非接触な状態で除電する非接触型除電器102とを備えている。
以下、接触型除電器101及び非接触型除電器102について説明する。
【0026】
<接触型除電器>
接触型除電器101は、
図3、
図4及び
図5(a)に示すように、対構成の除電ロール111,112を接触配置し、いずれか一方の除電ロールには駆動モータ113からの駆動力をギア等の駆動伝達機構114を介して伝達すると共に、除電ロール111を除電ロール112に接触させることで従動させ、除電ロール111,112間に媒体Sを挟持して搬送するものである。
更に、本例では、一方の除電ロール111には除電用電源115が接続され、当該除電用電源115から除電バイアスVd1(本例では正極性の直流電圧を使用)が印加され、他方の除電ロール112が接地されている。
尚、除電用電源115の設置については、媒体Sの表面側、裏面側のいずれでも差し支えなく、媒体Sの裏面側に配置する態様では、媒体Sの表面側に配置する態様で使用する除電バイアスや除電電流とは逆の極性のものを使用するようにすればよい。
特に、本例とは異なる態様としては、接触型除電器101は、
図5(b)(c)に示すように、他方の除電ロール112に対して一方の除電ロール111を接離する接離機構116が設けられている。本例で用いられる接離機構116は、例えば揺動支点を中心に揺動する揺動アーム117を有し、この揺動アーム117の揺動支点から離れた先端側に除電ロール111を回転可能に支持し、駆動モータ等の駆動源118にて揺動アーム117を時計回り方向又は反時計回り方向に揺動させ、除電ロール112に対して除電ロール111を非接触な退避位置又は接触位置に配置するようになっている。
【0027】
<非接触型除電器>
本例において、非接触型除電器102は、例えば
図4に示すように、水平搬送路84に沿って搬送される媒体Sの表面側に向かって開口するチャネル断面形状の除電筐体121を有し、この除電筐体121内の長手方向に沿って放電ワイヤ122を掛け渡すと共に、この放電ワイヤ122には除電用電源125を接続し、当該除電用電源125から除電バイアスVd2(本例では交流電圧成分を出力する交流電源126と直流電圧成分を出力する直流電源127を使用(
図6参照))を印加する一方、媒体Sの裏面側には接地された金属板からなるアース電極123を配置するようにしたものである。
尚、本例では放電ワイヤ122は一本だけ使用した態様であるが、これに限られるものではなく、複数本の放電ワイヤ122を使用するようにしてもよいし、また、本例では所謂コロトロン方式が採用されているが、これに限られるものではなく、除電筐体121の開口に面した箇所に制御電極としてのグリッド板を付加する態様(所謂スコロトロン方式)を採用してもよいことは勿論である。あるいは、放電ワイヤ122の代わりに後述する針状電極を設けた態様であってもよい。また、除電用電源125の設置については、媒体Sの表面側、裏面側のいずれでも差し支えなく、また、両側に設置するようにしてもよい。
【0028】
<各除電器の除電特性>
ここで、各除電器101,102の除電特性について簡単に説明する。
今、媒体Sが樹脂フィルムのように高抵抗(誘電体)である場合を想定し、例えば二次転写装置50を通過する媒体Sが転写電界を受けて帯電したものとする。このとき、
図6(a)(b)及び
図7(a)に示すように、媒体Sの表面電位が負極性のVc1(-)であったと仮定すると、媒体Sの裏面では正極性の電荷e+が誘導分極されている。
この状態において、接触型除電器101は、一方の除電ロール111に除電バイアスVd1を印加することで、
図7(b)に示すように、一方の除電ロール111と他方の除電ロール112との接触域(ニップ域)CNの前後でコロナ放電が起こる。特に、本例では、除電ロール111,112の接触域CNの入口側(媒体Sの搬送方向上流側に相当)の空隙では除電前の表面電位の高い媒体Sが進入することから、接触域CNから離れた領域で大電流放電Hbが、接触域CNに接近した領域で弱電流放電Hsが混在して生じ、除電ロール111,112の接触域CNの出口側(媒体Sの搬送方向下流側に相当)の空隙では除電後の表面電位の低い媒体Sが通過することから、接触域CNに接近した領域で弱電流放電Hsが生ずる。この結果、帯電した媒体Sの表面に正極性の電荷が予め決められた量だけ付与され、付与した電荷量分だけ媒体Sの表面上の負極性の電荷e-を除電する。この状態では、媒体Sの表面電荷が減少することに伴って、媒体Sの裏面では誘電分極した正極性の電荷e+も減少する。このため、
図6(b)に示すよう、媒体Sの表面電位はVc1(-)から絶対値でΔVc1だけ減少することになるが、接触型除電器101は、除電量としてΔVc1の絶対値をある程度大きく確保することが可能であることから、除電後の媒体Sの表面電位のばらつき量が大きく、除電が不均一になり易い傾向がある。
【0029】
一方、非接触型除電器102の除電特性については、
図6(c)(d)に示すように、媒体Sの表面電位が負極性のVc2(-)であったと仮定すると、非接触型除電器102は、放電ワイヤ122に除電バイアスVd2(直流電圧成分重畳の交流電圧成分)を印加することで、
図7に示すように、放電ワイヤ122と除電筐体121との間でACコロナ放電が起こり、放電ワイヤ122の周囲には正イオン(+)、負イオン(-)が発生する。この結果、帯電した媒体Sの表面にはコロナ放電で生じた正イオン(+)、負イオン(-)が媒体Sとの電界により引き寄せられて供給され、正イオン(+)の供給量分だけ媒体Sの表面上の負極性の電荷e-を除電し、また、負イオン(-)の供給量分だけ媒体Sの表面上の正極性の電荷e+を除電する。また、媒体Sの裏面はアース電極123を介して0電位になるため、誘電分極した媒体Sの裏面上の電荷e+がアース電極123へと逃げやすい。このため、
図6(d)に示すように、媒体Sの表面電位はVc2(-)から絶対値でΔVc2だけ減少することになるが、非接触型除電器102は、除電量としてΔVc2の絶対値をそれほど大きく確保することはできないものの、除電後の媒体Sの表面電位のばらつき量が小さく、均一に除電することが可能である。
【0030】
-除電制御系-
本実施の形態においては、除電装置100(接触型除電器101、非接触型除電器102)は、
図4に示すように、除電制御系130を介して除電の要否を判断し、除電を必要とする場合に除電方式、除電条件を決定し、除電動作を実施するようになっている。
本例において、除電制御系130は、
図4に示すように、例えばマイクロコンピュータにて構成される制御装置131を有し、この制御装置131には画像形成装置20の操作パネル140、環境条件(例えば温度、湿度)を検出する環境センサ145が接続されている。また、制御装置131と各除電器101,102の各除電用電源115,125との間は選択スイッチ132,133を介して選択的に接続されている。
ここで、操作パネル140には、画像形成装置20による作像処理を開始するためのスタートスイッチ(
図4においては「スイッチ」を「SW」で表記、以下同様)141、各種作像モード(片面・両面印刷モード、標準・高画質印刷モードなど)を選択するモード選択スイッチ142及び媒体Sの物性(抵抗、厚み、坪量、サイズ等)を指示する物性指示スイッチ143が設けられている。尚、媒体Sの物性については、例えば媒体供給容器81,82や搬送路中に媒体Sの物性(抵抗、厚み、サイズ等)を検出する検出器を設置し、当該検出器にて媒体Sの物性情報を取得するようにしてもよいことは勿論である。
【0031】
-画像形成装置の作像処理-
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作像処理過程を
図8に示すフローチャートに従って説明する。
先ず、
図3及び
図4に示すように、スタートスイッチ141をオン操作すると、画像形成装置20は印刷ジョブを開始する。この状態において、媒体供給容器81又は82又は手差し媒体供給器95から媒体Sが供給され、一方、画像形成部22では媒体Sに転写する作像処理が行われ、作製された画像が中間転写体30を介して二次転写域TRへと移動する。
この後、媒体Sは水平搬送路84を経て二次転写域TRへと搬送され、二次転写装置50による転写動作が行われ、しかる後、画像が転写された媒体Sは定着装置70を通過して媒体S上に画像が定着され、画像定着された媒体Sは除電装置100へと向かう。
【0032】
この状態において、制御装置131は、操作パネル140の例えば物性指示スイッチ143からの指示情報に基づいて媒体Sの物性情報(例えば媒体種)を読み込み、除電装置100による除電の要否を判断する。この判断手法としては、例えば媒体Sの物性情報(例えば媒体種)から媒体Sの表面抵抗が除電を要するレベル(例えば1011Ω/□)以上か否かを見て、除電を要するレベル以上の媒体Sである場合には除電が必要であると判断するようにすればよい。但し、必ずしも内部処理として媒体Sの表面抵抗を判断する必要はなく、媒体種の情報のみから除電が必要であると判断してもよい。
本例では、前述した除電の要否判断処理において、除電が必要であると判断されると、媒体Sは除電装置100による除電処理を経て搬送され、除電が不要であると判断されると、媒体Sは除電装置100による除電処理を行うことなく、媒体排出受け86に向かって搬送される。
【0033】
ここで、本実施の形態において、接触型除電器101が
図5(a)に示す態様では、除電の要否に拘わらず、除電ロール111,112は接触した状態を保つ。但し、本例では、除電が必要な場合は除電バイアスVd1が印加され、除電が不要な場合は除電バイアスVd1が印加されない。
一方、接触型除電器101が
図5(b)(c)に示す態様では、除電が必要な場合に対構成の除電ロール111,112は接触状態に保たれ、除電が不要な場合に接離機構116により対構成の除電ロール111,112は非接触状態に保たれる。
【0034】
次に、除電を必要とする場合についての処理を説明する。
本例では、制御装置131は、除電が必要であると判断すると、除電方式を決定すると共に、除電条件を決定する。
<除電方式の決定>
本例においては、制御装置131は、例えば物性指示スイッチ143からの指示情報に基づいて媒体Sの物性情報(例えば媒体種)を認識し、例えば
図9(a)に示すように、媒体Sの表面抵抗(Ω/□)が低抵抗、中抵抗あるいは高抵抗のいずれかであるかを判断する。ここでは、低抵抗は10
11以上10
13未満、中抵抗は10
13以上10
15未満、高抵抗は10
15以上10
18未満とする。
そして、本例では、消費電力を必要最小限に抑えるという観点から、媒体Sの表面抵抗が低抵抗のときは選択スイッチ132,133をいずれもオフにして接触型除電器101、非接触型除電器102のいずれも選択せず、また、媒体Sの表面抵抗が中抵抗のときは選択スイッチ132をオフ、選択スイッチ133をオンにして非接触型除電器102のみを選択し、更に、媒体Sが高抵抗のときは選択スイッチ132,133の両方をオンにして接触型除電器101及び非接触型除電器102の両方を選択する方式が採用されている。
但し、除電装置100による除電精度を高めるという観点から、媒体Sが低抵抗、中抵抗及び高抵抗のいずれに対しても接触型除電器101及び非接触型除電器102の両方を使用するようにしてもよいことは勿論である。また、本例では、接触型除電器101のみを選択する方式が設けられていないが、例えば中抵抗の場合は接触型除電器101のみを選択する方式を設けてもよい。
【0035】
また、本例では、物性指示スイッチ143からの指示情報に基づいて媒体Sの表面抵抗を判断する方式が採用されているが、これに限られるものではなく、例えば
図9(b)に示す抵抗測定回路150を用いて、媒体Sの表面抵抗を実測して判断するようにしてもよい。
図9(b)に示す抵抗測定回路150は、媒体Sの搬送方向に沿って対構成の測定ロール151,152を並設し、媒体Sの搬送方向上流側に位置する対構成の測定ロール151の一方には測定用電源153を接続すると共に、他方を抵抗154を介して接地し、媒体Sの搬送方向下流側に位置する対構成の測定ロール152の一方と接地との間に電流計155を設けるようにしたものである。尚、測定ロール151,152としては媒体Sの搬送部材(位置合せロール93や搬送ロール94)を兼用してもよいし、搬送部材とは別に設けるようにしてもよい。
本例では、例えば媒体Sとして低抵抗、中抵抗あるいは高抵抗のいずれかの媒体が使用されると仮定すると、媒体Sが高抵抗である場合には、対構成の測定ロール151,152間に媒体Sが跨がって配置されたとしても、測定用電源153からの測定電流は、対構成の測定ロール151を横切るように流れ、媒体Sを伝わって測定ロール152側の電流計155に至るものはほとんどない。
【0036】
これに対し、媒体Sが中抵抗、低抵抗である場合には、これらの媒体Sの表面抵抗は高抵抗の媒体Sに比べて小さいことから、対構成の測定ロール151,152間に媒体Sが跨がって配置された場合、測定用電源153からの測定電流の一部は、対構成の測定ロール151を横切るように流れると共に、測定電流の残りは媒体Sを伝わって測定ロール152側の電流計155に至り、電流計155にて測定された測定電流と測定用電源153の印加電圧とによって媒体Sの表面抵抗が演算される。
尚、この種の抵抗測定回路150については、例えば二次転写装置50の弾性転写ロール55と接地との間に電流計を介在させ、この電流計により転写電流を測定し、転写バイアスと転写電流とから二次転写域TRのシステム抵抗を演算し、媒体Sの表面抵抗を割り出すようにしてもよいことは勿論である。
【0037】
<除電条件の決定>
次に、本例における除電条件の決定手法について説明する。
本例においては、制御装置131は、
図4及び
図9に示すように、二次転写装置50による転写条件(例えば環境センサ145からの環境情報に基づいて定電圧制御方式の転写バイアスVtを補正)、更には、物性指示スイッチ143からの指示情報(例えば媒体種)に基づいて媒体Sの表面抵抗を割り出し、二次転写装置50を通過した媒体Sの帯電電位を予測する。尚、二次転写装置50にて帯電された媒体Sの表面電位を電位プローブ(図示せず)にて実測するようにしてもよいことは勿論である。
そして、接触型除電器101の除電条件としては、予測または実測した媒体Sの表面電位Vcを絶対値で過半量(本例では目標表面電位をVc1とする)減少させるように除電バイアスVd1を決定し、更に、非接触型除電器102の除電条件としては、接触型除電器101の除電条件(媒体Sの目標表面電位Vc1)に依存して除電バイアスVd2を決定し、媒体Sの表面電位をVc2(本例では略0)になるようにすればよい。
尚、本例では、非接触型除電器102の除電条件を接触型除電器101の除電条件に依存させる方式が採用されているが、これに限られるものではなく、例えば非接触型除電器102の除電条件を予め決めておき、接触型除電器101の除電条件を非接触型除電器102の除電条件に依存させる方式を採用してもよいことは勿論である。
【0038】
このようにして、除電方式及び除電条件が決定されると、媒体Sの表面抵抗に応じて適切な除電処理が実施される。
例えば媒体Sが樹脂フィルムのように高抵抗である場合には、
図9(a)に示すように除電方式は接触型除電器101及び非接触型除電器102の両方を使用し、
図8に示すように、除電条件として決定された除電バイアスVd1,Vd2を夫々印加する。
この状態において、
図8及び
図10に示すように、二次転写装置50にて媒体Sの表面が負極性の電荷e-にて帯電され、誘電分極により媒体Sの裏面が正極性の電荷e+にて帯電されることになるが、先ず、接触型除電器101による除電処理が行われ、媒体Sの表面電位Vcが絶対値で過半量減少してVc1になる。但し、この段階では、媒体Sの表面電位Vc1のばらつき量は大きい。
そして、接触型除電器101を通過した媒体Sは、次いで、非接触型除電器102による除電処理が行われ、媒体Sの表面電位はVc1からVc2(略0)に至る。この段階では、媒体Sの表面電位Vc2は均一に除電されている。
特に、本例では、接触型除電器101の除電力を強めると、接触型除電器101による除電処理が終わった後の媒体Sの帯電電位のばらつきが大きくなるため、非接触型除電器102の除電力を強めることが好ましい。
【0039】
また、媒体Sが中抵抗である場合には、
図9(a)に示すように、除電方式は非接触型除電器102のみを使用し、除電条件として決定された除電バイアスVd2を印加し、非接触型除電器102による除電処理が行われる。このとき、媒体Sの表面電位はVcからVc2(略0)へと除電される。尚、本例では、接触型除電器101は未使用になるため、例えば
図5(b)(c)に示す態様の場合、除電ロール111,112は媒体Sから退避した位置に配置される。
更に、媒体Sが低抵抗である場合には、
図9(a)に示すように、除電方式は接触型除電器101、非接触型除電器102のいずれも使用せず、除電処理は行われないが、媒体Sの表面電位は自然に除電される。
【0040】
-接触型除電器の除電ロール構造-
図11に示すように、本例では、除電ロール111,112は、いずれも金属製シャフト170の周囲に発泡ウレタンゴムやEPDMにカーボンブラック等が配合された弾性層171を被覆し、この弾性層171の表面を例えばフッ素樹脂等の保護層172で被覆する構成になっている。そして、除電用電源115からの除電バイアスVd1は金属製シャフト170に印加されている。
本例において、弾性層171のアスカーC硬度は、除電特性の観点から50度以上90度以下であることが好ましく、60度以上80度以下であることがより好ましい。ここで、アスカーC硬度は荷重200gのときの反発硬度を指し、以下の方法により測定される。高分子計器株式会社製軟質ゴム、スポンジなどの硬さ測定におけるデファクト スタンダード アスカーC型硬度計で、JIS-K7312、JIS-S6050に準拠して計測される。
【0041】
本実施の形態によれば、除電ロール111,112は、いずれも弾性層171を有していることから、媒体Sを挟んでニップ搬送するときに媒体Sの両面に対して軸方向に沿う接触域CNをもって接触する。このため、除電ロール111,112の少なくともいずれかが軸方向に対して傾斜配置されたとしても、当該傾斜角度が微小であれば、除電ロール111,112間において媒体Sの表面との接触状態は維持される。このため、両除電ロール111,112間の媒体Sとの接触域CN前後の空隙部CNf,CNrでは除電ロール111と媒体Sの表面との間でコロナ放電が安定的に実施される。
更に、除電ロール111,112は、
図11(c)に示すように、弾性層171の弾性変形によって媒体Sの両面に対して軸方向に沿う接触域CNをもって接触するため、除電ロール111,112が軸方向の一部において媒体Sの表面と非接触になる懸念は少ない。このため、除電ロール111,112は媒体Sをニップ搬送するときに、軸方向に延びる接触域CNの一部に非接触部が生ずることはなく、除電ロール111,112間の接触域CNは軸方向において媒体Sとの接触状態を保ち、軸方向に対して除電ムラが生ずる懸念はない。
【0042】
<除電ロールの非接触配置例>
また、本実施の形態では、除電ロール111,112は媒体S非通過時にも接触して配置されているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば
図12(a)に示すように、媒体S非通過時には、除電ロール111,112は非接触に配置されていてもよい。但し、除電ロール111,112間の間隙gは媒体Sの厚さtsよりも狭く設定されていればよく、除電ロール111,112間に媒体Sが通過するときに、除電ロール111,112が媒体Sの両方の表面に接触し、媒体Sに対して接触域CNでの接触圧Fdが除電ロール111,112による媒体Sの搬送性を確保し、かつ、媒体Sに対する除電動作を損なわない範囲であれば適宜選定して差し支えない。
本例では、除電ロール111,112による媒体Sに対する接触圧Fdは、二次転写装置50の二次転写域TRでの接触圧よりも低く選定されている。このため、接触型除電器101に媒体Sが通過するときに、媒体S上に形成された画像が不必要に損なわれる虞はなく、媒体Sの搬送性、除電動作性は良好に保たれる。
【0043】
<弾性層の体積抵抗率>
また、弾性層171の体積抵抗率は、10
4Ω・cm以上10
10Ω・c m以下が好ましく、10
5Ω・cm以上10
9Ω・cm以下がより好ましく、10
6Ω・cm以上10
8Ω・cm以下が更に好ましく、環境が変化してもこの範囲内に収まるものが最も好ましい。
ここで、体積抵抗率の測定方法としては適宜選定して差し支えないが、例えば
図12(b)に一例を示す。
同図において、除電ロール111,112のいずれかである導電性ロールを金属板180の上に置き、導電性ロールの芯金である金属製シャフト170の両端の矢印A1及びA2の箇所に予め決められた荷重(例えば500g)を掛けた状態で、例えば温度22℃、湿度55%RHの環境下、芯金である金属製シャフト170と金属板180との間に予め決められた印加電圧(例えば1000V)を印加して、10秒後の電流値I(A)を電流計測器181で読み取り、式「R=V/I」によって体積抵抗R(Ω)を計算する。この測定と計算を、除電ロール111,112のいずれかである導電性ロールを90°ずつ周方向に回転させて4点について行い、その平均値を導電性ロールの体積抵抗Rとする。そして、導電性ロールの体積抵抗Rから、下記式により、弾性層171の体積抵抗率ρv(Ω・cm)を算出する。
式ρv=D×W×R/t
上記式中、D(cm)は導電性ロールの軸方向の長さ、W(cm)は導電性ロールと電極(金属板180に相当)との接触(ニップ)幅、t(cm)は弾性層の厚さを示す。上記式より体積抵抗率が算出される。
【0044】
<接触型除電器の除電バイアス制御>
本実施の形態では、接触型除電器101は、予め決められた除電バイアスVd1を使用しても差し支えないが、媒体Sの物性値や帯電量がまちまちであるため、媒体Sの表面電位に応じて除電バイアスVd1を制御する方式が好ましい。
本例では、
図13(a)に示すように、例えば搬送ロール94間の任意の箇所に表面電位計190を設置し、媒体Sの表面電位を非接触にて測定するようにすればよい。ここで、表面電位計190としては例えば静電気測定を利用したESV(Electrostatic Voltmeterの略)が用いられる。本例において、表面電位計190は、
図13(a)(b)に示すように、媒体Sの搬送方向に交差する幅方向の中心ラインCL(媒体Sの幅方向寸法wの1/2の位置に相当)に対応した位置に設置され、表面電位計190に対向した部位には接地した対向電極191が設けられ、この対向電極191には媒体Sが接触しながら通過するようになっている。尚、
図13(a)中、符号192は表面電位計190の支持ブラケットである。そして、表面電位計190の測定値としては、例えば所定時間測定した結果の平均値を、採用してもよいし、あるいは、複数点測定した結果の平均値を採用してもよい。あるいは、その他の計算方法を用いて測定するようにしてよい。
【0045】
図14は接触型除電器の除電バイアス制御を実施するためのフローチャートである。
同図において、接触型除電器101を使用する除電条件か否かをチェックし、接触型除電器101を使用する場合には、媒体Sの物性情報を読み込み、更に、表面電位計190により媒体Sの表面電位を測定する。
そして、除電バイアスVd1を決定し、除電ロール111に除電バイアスVd1を印加するようにすればよい。
【0046】
<表面電位計のレイアウトについて>
表面電位計190のレイアウトについては、接触型除電器101に対して媒体Sの搬送方向の上流側でもよいし、あるいは、下流側でもよい。ここで、接触型除電器101よりも媒体Sの搬送方向上流側に表面電位計190を設置した態様では、1枚目の媒体Sから接触型除電器101の除電バイアスVd1をフィードバック制御することが可能である。
これに対し、接触型除電器101よりも媒体Sの搬送方向下流側に表面電位計190を設置した態様では、1枚目の媒体Sの表面電位をテスト用に測定した後、2枚目以降の媒体Sに対して接触型除電器101の除電バイアスVd1をフィードバック制御することが可能である。但し、接触型除電器101による除電後の媒体S上の表面電位を測定することになるため、大きな電位を測定する必要がなくなり、その分、表面電位計190を小型化することが必要である。
尚、本例では、表面電位計190の測定結果は、非接触型除電器102の除電バイアスVd2の制御には利用されていない。これは、非接触型除電器102による除電電位レベルが接触型除電器101による除電電位レベルに比べて少ないため、あえて非接触型除電器102の除電バイアスVd2を制御しなくても差し支えないということに基づくものである。
【0047】
<除電バイアスVd1の決定手法>
接触型除電器101による除電バイアスVd1の決定手法としては適宜選定して差し支えないが、本例では、媒体Sは、除電前に比べて、除電後の表面における正電荷と負電荷の分布が不均一になるように除電
される除電バイアスVd1が選定されていることが好ましい。特に、本例では、媒体Sは、除電後の表面電荷の分布が、除電前に支配的だった電荷の割合が多くなるように除電されることが好ましい。
今、
図15(a)に示すように、除電前の媒体Sの表面電位がVc1で、除電前には負の電荷が支配的であったと仮定する。
このとき、接触型除電器101の除電バイアスVd1としては、除電後の媒体Sの表面電位をVc2とすると、当該|Vc2|が0に近い値まで減衰し、かつ、Vc2はVc1と同じ極性になるように、Vd1を選定すればよい。
このようにして、除電バイアスVd1を選定すると、
図15(b)に示すように、除電前の媒体Sの電荷分布が負電荷(図中白丸で表記)が正電荷(図中白丸に×を付記)に比べて支配的で均一に分布し、かつ、表面電位がVc1であったのに対し、除電後の媒体Sの電荷分布は、負電荷の割合が多くなるように、負電荷と正電荷が不均一に分布し、かつ、表面電位がVc2に減衰するように、|ΔVc1|だけ除電される。尚、除電後の媒体Sの電荷分布については、点線の白丸部分は減衰した負電荷の領域を示し、また、点線の白丸に×を付記した部分は正電荷の領域を示す。
このような除電パターンを選定した理由としては、例えば除電前の媒体Sで支配的だった負電荷と異なる正電荷の割合が多くなるということは、除電バイアスVd1が強すぎるために、Vc2が0に近い値ではなく、除電前の電位とは逆極性の電位を有してしまうことを回避することが挙げられる。
【0048】
<接触型除電器の除電バイアスの初期値選定>
前述したように、接触型除電器101の除電バイアスVd1を制御するに当たって、媒体Sの表面電位に対して最適な除電バイアスVd1の初期値を選定することが好ましい。但し、除電バイアスVd1の初期値を選定するには、予め決められた帯電状態のテスト用の媒体Sに対して複数候補の除電バイアスVd1を印加し、各除電バイアスVd1による媒体Sの表面電位の減衰程度を表面電位計190で測定することが必要である。
このため、本例では、表面電位計190は、
図16(a)に示すように、接触型除電器101よりも媒体Sの搬送方向下流側に設置されている態様(図中二点鎖線で示す位置に表面電位計190を設置した態様に相当)であることを要する。
本例において、
図16(b)に示すように、テスト用の媒体Sに対して例えば3箇所のパッチPT1~PT3(いずれも同様な帯電条件の表面電位を具備)に異なる除電バイアスVd1(具体的にはVd1(1)~Vd1(3))を印加した後、媒体S上に残存した表面電位を測定し、例えば各除電条件に対して媒体S上に残存した表面電位をVc2(具体的にはVc2(1)~Vc2(3))とし、これをプロットすると、
図16(c)の計量線で示すように、除電バイアスVd1が増加するにつれ媒体S上に残存する表面電位Vc2が少なくなることが理解される。このとき、残存する表面電位Vc2が略0に至る除電バイアスVd1(具体的にはVd1(0))を
図16(c)の計量線から直線近似すればよい。
このようにすれば、予め決められた媒体Sの表面電位Vc1に対し、これを除電する上で最適な除電バイアスVd1(Vd1(0))が算出されることから、任意に帯電した表面電位Vc1を除電する上で最適な除電バイアスVd1を除電バイアスVd1の初期値を基準に選定することが可能である。但し、必ずしも計量線から直線近似する必要はなく、異なる除電バイアスVd1を印加した後の媒体S上に残存した複数の表面電位から除電バイアスVd1の初期値を求める方式であれば、その他の方式であってもよい。
【0049】
-非接触型除電器の除電パラメータについて-
本例では、非接触型除電器102は、
図17(a)に示すように、放電ワイヤ122と除電筐体121との間に直流電圧成分重畳の交流電圧成分からなる除電バイアスVd2が印加される除電用電源125が接続されている。
本例では、放電ワイヤ122と除電筐体121との間で交流電圧成分を含む除電バイアスVd2が印加されているため、放電ワイヤ122の周囲からはコロナ放電による正イオン(+)と負イオン(-)とが混在して発生する。本例では、正イオン(+)と負イオン(-)とが除電バイアスVd2の周波数f(Hz)の半周期毎に交互に生成される。
ここで、非接触型除電器102の除電パラメータについて検討してみるに、除電バイアスVd2の周波数fが高くなれば、その分、正イオン(+)と負イオン(-)との発生周期が速くなり、イオンの生成量が増加するものと推測される。
【0050】
また、媒体Sの搬送速度vに着目してみるに、媒体Sの搬送速度vが速い場合には、イオンの発生周期を短く(イオン周波数を高く)しておかないと、イオンバランスが悪くなる。
本例では、これを踏まえて、媒体Sの搬送速度v、交流電圧成分を含む除電バイアスVd2の周波数fを用いた除電パラメータf/vに着目し、後述する媒体Sの貼り付き評価方法による評価に従って、最適な除電パラメータf/vの範囲を選定したところ、
f/v≧0.8……(式1)
を満たす態様が好ましいことが判明した。
式1のうち、特に好ましくは、
f/v≧1.5……(式2)
を満たすものが挙げられる。
【0051】
更に、本例では、除電筐体121の開口部128は、
図17(a)に示すように、媒体Sの搬送方向に対して開口幅Lをもって形成されている。
ここで、除電筐体121の開口部128の開口幅Lは媒体Sに向かうイオン出射領域を規制するものであり、開口幅Lが狭いと、イオン射出領域が狭くなり、逆に広いと、イオン射出領域が広がる。従って、イオン量とイオン出射領域との関係で単位長さ当たりのイオン量を調整することが可能である。具体的には、開口幅Lが長い場合には、イオンの発生周期(イオン周波数)を短くしておかないと、開口部128全域でのイオンバランスが悪くなる懸念がある。
このように、除電筐体121の開口幅Lが除電作用に影響を及ぼすものと推測される。
この点を踏まえると、除電パラメータとして、f/v*Lを選定したところ、
f/v*L≧30……(式3)
を満たす態様が好ましいことが判明した。
尚、式1~式3の採用理由については後述する実施例4にて詳述する。
また、本例では、開口幅Lが狭いと、所定以上の高い周波数にしないと除電不足となる虞があることが分かった。これは、イオン射出領域が狭くなることで、非接触型除電器102を通過する媒体Sの単位長さあたりに受けるイオン量が減少するためであると推定される。一方、開口幅Lが大きいとイオン射出領域が広いため、非接触型除電器102を通過する媒体Sの単位長さあたりに受けるイオン量が増加する。よって、開口幅Lが狭い場合と比べ、より低い周波数でも十分に除電される。
【0052】
-非接触型除電器によるコロナ放電特性-
本例では、放電ワイヤ122に印加される除電バイアスVd2は、
図17(a)に示すように、直流電圧成分Vdc(本例では正極性電圧を使用)重畳の交流電圧成分Vac(ピークツウピーク電圧Vpp、周波数fを具備)である。このとき、放電ワイヤ122の周囲ではコロナ放電が生じており、コロナ放電の電圧-電流特性を
図17(b)に示す。
図17(b)において、横軸が印加電圧、縦軸がコロナ放電電流を示すものであって、負コロナ(負イオン(-)に相当)が発生する印加電圧の絶対値は、正コロナ(正イオン(+))が発生する印加電圧よりも低くなっている。
ここで、本例では、除電バイアスVd2には交流電圧成分Vacに直流電圧成分Vdcが重畳されていることから、
図17(c)に実線から細線で示すように、交流電圧成分Vacが直流電圧成分Vdc分だけ+側にオフセットした変化を示す。
このとき、例えばVppが±4kV、Vdcが+0.3kV、正のコロナ放電開始電圧が+2kV、負のコロナ放電電圧が-1.7kVであると仮定すると、
図17(c)中の斜線領域がイオン発生領域であり、正コロナ(正イオン(+))が+2kV以上のイオン発生領域で発生し、負コロナ(負イオン(-))が-1.7kV以下のイオン発生領域で発生する。このため、直流電圧成分Vdcが重畳されない場合と比べ、正イオンと負イオンとの発生量のバランスが均一となる。
【0053】
-非接触型除電器の除電作用について-
本例では、非接触型除電器102は、
図18(a)に示すように、放電ワイヤ122に対向して対向電極としてのアース電極123を接地して設けたものである。このようなアース電極123を設けるようにすれば、放電ワイヤ122の周囲で発生したイオンのうち主として正イオン(+)はアース電極123側に引っ張られ、媒体Sの表面電荷(主として負極性の電荷e-)の除電に供される。
これに対し、
図18(b)に示すように、放電ワイヤ122に対向して対向電極としてのアース電極123を設置しない態様では、放電ワイヤ122の周囲で発生したイオンは周囲に放射されるだけで、媒体Sの表面電荷(主として負極性の電荷e-)側に向かって積極的に引っ張られ、除電に供されることはない。
【0054】
-AC除電バイアスとDC除電バイアスとの対比-
本例では、除電用電源125として、除電バイアスVd2は、
図18(c)に示すように、直流電圧成分重畳の交流電圧成分からなるAC除電バイアスであり、媒体Sの表面には正イオン(+)と負イオン(-)とが混在して除電に供される。このため、媒体Sの表面電荷の負極性の電荷e-、正極性の電荷e+の両方が除電され、媒体Sの表面電位は略0に向かって減衰する。
これに対し、除電用電源125’として、除電バイアスVd2が、
図18(d)に示すように、直流電圧成分のみからなる直流除電バイアスを使用したと仮定すると、放電ワイヤ122の周囲には正イオン(+)のみが生成され、当該正イオン(+)が媒体Sの表面の負極性の電荷e-を除電することになるが、媒体Sの表面電荷のうち正極性の電荷e+を除電するための負イオン(-)は生成されておらず、媒体S上の正極性の電荷e+は除去されない。
このように、本例では、AC除電バイアスを採用することで、媒体Sの表面電荷が正極性の電荷e+と負極性の電荷e-とが混在していたとしても、両者を除電することが可能である。
【0055】
-非接触型除電器の除電バイアス制御-
本例では、非接触型除電器102は、除電パラメータについて固定的に用いてもよいが、媒体Sの搬送速度vが変化する態様では、
図19(b)に示すように、媒体Sの搬送速度vに応じて除電バイアスVd2の周波数fを制御することが好ましい。
つまり、本例では、媒体Sの搬送経路の途中に媒体Sの搬送速度vを検出する速度センサ200が設けられ、この速度センサ200からの速度情報が制御装置131に取り込まれ、当該制御装置131が除電バイアスVd2の周波数fを制御するものである。
本例では、制御装置131に非接触型除電器102の除電バイアス制御プログラムがインストールされており、
図19(a)に示す除電バイアス制御処理が実行されるようになっている。
【0056】
図19(a)において、制御装置131は、非接触型除電器102を使用する除電条件か否かをチェックし、非接触型除電器102を使用する場合には、媒体Sの物性情報を読み込み、更に、速度センサ200によって媒体Sの搬送速度vを測定する。
そして、除電バイアスVd2の周波数fを決定し、放電ワイヤ122に除電バイアスVd2を印加するようにすればよい。
本例では、
図19(b)に示すように、例えば媒体Sの搬送速度vが通常速度より速い速度v(速)である場合には、周波数fをf(大)にすればよく、逆に、媒体Sの搬送速度vが通常速度よりも遅い速度v(遅)である場合には、周波数fをf(小)+にすればよい。
【0057】
◎実施の形態2
図20は実施の形態2に係る画像形成装置の全体構成を示す。
同図において、画像形成装置20は、画像形成部22を内蔵する画像形成ユニット210と、この画像形成ユニット210の水平搬送路84の出口部分から排出される媒体Sを受け入れて除電する除電ユニット220とを備えたものであって、実施の形態1に係る画像形成装置とは異なり、画像形成ユニット210には除電装置100以外の各要素(画像形成部22、中間転写体30、定着装置70、媒体搬送系80)を組み込み、除電ユニット220に除電装置100を組み込むようにしたものである。
尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
【0058】
本例において、除電ユニット220は、
図20及び
図21に示すように、画像形成ユニット210から排出された媒体Sが略水平方向に搬送される水平搬送路221を有し、この水平搬送路221には適宜数の搬送ロール222~224を設置し、更に、水平搬送路221の出口箇所には媒体排出受け86を設けるほか、水平搬送路221のうち搬送ロール222,223間の領域には、除電装置100として接触型除電器101を設置すると共に、接触型除電器101に対して媒体Sの搬送方向下流側には非接触型除電器102を設置したものである。
本例では、除電ユニット220内にも制御装置240が組み込まれており、例えば搬送ロール223,224間の領域には媒体Sの表面電位を測定する表面電位計190を設置すると共に、水平搬送路221のうち搬送ロール222と接触型除電器101との間の領域には速度センサ200を設置するようにしたものである。
また、接触型除電器101の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、除電用電源115が正極性直流電源115aと負極性直流電源115bとが並列に設けられ、切替スイッチ250にて切替選択されるようになっている。
そして、制御装置240は、画像形成ユニット210内の媒体反転機構89による媒体Sの反転の有無を踏まえ、除電用電源115の正極性直流電源115a、負極性直流電源115bを切替スイッチ250にて切替選択するようになっている。
尚、制御装置240には、実施の形態1と略同様に、接触型除電器101の除電バイアス制御(媒体Sの表面電位に応じた制御)、及び、非接触型除電器102の除電バイアス制御が実施されるようになっている。
【0059】
本例では、除電装置100は、画像形成ユニット210内の媒体反転機構89よりも媒体Sの搬送方向下流側に設置されていることから、媒体Sの反転の有無に応じて、除電用電源115の正極性直流電源115a、負極性直流電源115bとを切替選択するようになっている。
例えば
図22(a)に示すように、媒体反転機構89を経由しないで媒体Sが除電ユニット220に入り込む場合には、制御装置240は除電用電源115として正極性直流電源115aを切替選択する。このため、媒体Sの表面電荷は除電用電源115(正極性直流電源115aを使用)による除電バイアスVd1によって適切に除電される。
一方、
図22(b)に示すように、媒体反転機構89を経由して媒体Sが反転した状態で除電ユニット220内に入り込む場合を想定すると、制御装置240は除電用電源115として負極性直流電源115bを切替選択する。このため、媒体Sの表面電荷は除電用電源115(負極性直流電源115bを使用)による除電バイアスVd1によって適切に除電される。
尚、本例では、媒体Sの反転に応じて除電用電源115の極性を切り替えるようにしたが、これに限られるものではなく、例えば媒体反転機構89により媒体Sを反転させた場合には、除電装置100による除電を実施しないようにすることも可能であり、また、媒体反転機構89により媒体Sを反転した場合には、UI(User Interface)上で除電装置100による除電処理を選択できないようにしてもよい。
【0060】
◎変形の形態1
図23(a)は非接触型除電器102の変形の形態を示す。
同図において、非接触型除電器102の基本構成は、除電筐体121内を仕切り部材260で二室に仕切り、夫々の室に放電ワイヤ122(本例では122a,122b)を設置し、各放電ワイヤ122には除電用電源125(交流電源126及び直流電源127を具備)から交流電圧成分を含む除電バイアスVd2を印加するようにしたものである。
更に、本例では、
図23(a)(b)に示すように、除電筐体121の開口部128を遮るように板状の遮蔽部材270が設けられ、この遮蔽部材270には通孔271が開設されている。
特に、本例では、二つの放電ワイヤ122(122a,122b)は、媒体Sの搬送方向に交差する幅方向に沿って延びる態様であるが、遮蔽部材270の通孔271は、
図23(b)(c)に示すように、複数の放電ワイヤ122a,122bに対して斜め方向に交差し、かつ、複数の放電ワイヤ122a,122bの長さ方向に向かって予め決められた間隔で複数配置されている。ここで、通孔271は二つの放電ワイヤ122a,122bに跨がるように連続的に延びていても差し支えないが、本例では、仕切り部材260に対応した遮蔽部材270には通孔271を二分する仕切り部272が一体的に形成されている。
【0061】
従って、本実施の形態では、複数の放電ワイヤ122a,122bの少なくともいずれかが長手方向の任意の領域で露呈するようになっている。例えば
図23(c)には、例えば一方の放電ワイヤ122aが長手方向の任意の箇所(例えばα領域)では遮蔽部材270で遮られているが、他方の放電ワイヤ122bが長手方向の任意の箇所(例えばα領域)では遮蔽部材270の通孔271に面して露呈している。また、他方の放電ワイヤ122bの長手方向の任意の箇所(例えばβ領域)では遮蔽部材270で遮られているが、一方の放電ワイヤ122aが長手方向の任意の箇所(例えばβ領域)では通孔271に面して露呈した位置に配置されている。
このように、本例では、複数の放電ワイヤ122a,122bの少なくともいずれかが長手方向の任意の領域で露呈する態様になっており、放電ワイヤ122と媒体Sとの間の除電処理が放電ワイヤ122a,122bの途中で遮断されてしまうという懸念はない。
更に、本例では、遮蔽部材270は絶縁性材料で構成されており、放電ワイヤ122a,122bで発生したイオンが遮蔽部材270側に不必要に漏洩しない点で好ましい。遮蔽部材270の素材としては、例えばポリカーボネートといった樹脂を用いることができる。
【0062】
◎変形の形態2
図24(a)は変形の形態2に係る非接触型除電器102を示す。
同図において、非接触型除電器102は、実施の形態1,2及び変形の形態1で用いた線状電極である放電ワイヤ122に代えて、針状電極300を用いるようにしたものである。
本例において、針状電極300は、
図24(a)(b)に示すように、媒体Sの幅方向に沿って延びる長尺な導電性の支持部材301に対し所定間隔毎に設けられたものであって、除電用電源125(交流電源126と直流電源127と具備)からの除電バイアスVd2を支持部材301に印加し、針状電極300の周囲に正イオン(+)、負イオン(-)を発生させ、媒体S側には針状電極300と対向する対向電極としてのアース電極310を設置し、針状電極300の周囲に発生した正負イオンを媒体Sの表面電荷部分に引き寄せ、媒体Sの表面電荷を除電するようにしたものである。
尚、針状電極300の設置数については、媒体Sの幅方向の全域に亘って除電動作が可能になるように適宜選定して差し支えなく、また、
図24(c)に示すように、針状電極300と媒体Sとの間に遮蔽部材270を設置し、針状電極300に対応する箇所のみに通孔271を開設し、媒体Sが針状電極300に触れることを防止しつつ、針状電極300による放電動作を確保するようにしてもよい。
【実施例】
【0063】
◎実施例1
実施例1は、実施の形態1に係る除電装置100(接触型除電器101、非接触型除電器102)を用い、接触型除電器101による除電状態、及び、非接触型除電器102による除電状態を可視化して評価したものである。
図25(a)はマイナス帯電トナー(M:マゼンタトナー)とプラス帯電トナー(C:シアントナー)とを媒体S上に噴霧し、媒体S上の帯電電荷分布(静電気パターン)を可視化する一例を示す。
同図において、符号330はトナーの噴霧室であり、この噴霧室330内には接地された金属板金331を設置し、この金属板金331上に樹脂フィルム等の媒体Sを乗せ、噴霧室330内に配置したメッシュ容器332内のトナーに向かってエアを噴射し、噴霧室300内にトナークラウド状態を作製するようにすればよい。このようにすれば、クラウド化したトナーが媒体Sの表面の電荷に引き寄せられてトナーが付着して可視化に至る。
図25(b)には、左から右にかけて順に、除電前の媒体Sを可視化したもの、接触型除電器101による除電後(2Roll除電後)の媒体Sを可視化したもの、接触型除電器101による除電及び非接触型除電器102による除電(コロトロン除電、電極ギャップ3mm)後の媒体Sを可視化したもの、接触型除電器101による除電及び非接触型除電器102による除電(コロトロン除電、電極ギャップ0mm)後の媒体Sを可視化したものが示されている。
図25(b)によれば、除電前は媒体Sの表面上に負極性の電荷が均一に存在するのに対し、接触型除電器101による除電後は負極性の電荷の大半が除電されているものの、負極性の電荷が除電前と比べて不均一な塊として存在し、かつ、負極性の電荷と比べて小さい領域に正極性の電荷が発生していることが確認される。これに対し、非接触型除電器102による除電後では媒体Sの表面電荷はほとんど除電されていることが理解される。
【0064】
◎実施例2
図26(a)は接触型除電器101を定電圧制御した場合における印加電圧と除電後電位との関係を示す。
図26(b)は接触型除電器101を定電流制御した場合における印加電流値と除電後電位との関係を示す。
実験条件は以下の通り。
・環境:22度55%
・媒体:PETフィルム、100μm、A3判
・媒体搬送速度:546mm/s
・二次転写電圧:-3kV
・媒体表面側の除電ロール:アスカーC65度、直径20mm、体積抵抗率10
6.5Ω・cm
・媒体裏面側の除電ロール:アスカーC75度、直径24mm、体積抵抗率10
7Ω・cm
図26(a)の定電圧制御では、放電開始電圧以下になると放電が止まるため、除電後の表面電位は入力表面電位に拘わらずある範囲に収束する。
これに対し、
図26(b)の定電流制御では、昇温や経時によりロール抵抗が変化しても、電流値に変化がないため、システム抵抗変動には強いが、一定量の電荷を媒体Sに供給するため、入力表面電位によって除電後の表面電位がばらつく虞がある。
【0065】
◎実施例3
図27は接触型除電器101による対構成の除電ロール111,112のニップ変動の影響を調べたものである。
実験条件は以下の通り、
・媒体搬送速度:182mm/s
・定電圧制御
・除電バイアス:1500V
・媒体表面側の除電ロール:アスカーC70度、直径20mm、体積抵抗率10
6Ω・cm
・媒体裏面側の除電ロール:アスカーC75度、直径24mm、体積抵抗率10
7Ω・cm
図27において、In側食い込み量とは、除電ロールの手前側に位置する金属製シャフトの軸中心位置の相手側の除電ロール側への食い込み量を意味し、Out側食い込み量とは、除電ロールの奥側に位置する金属製シャフトの軸中心位置の相手側の除電ロール側への食い込み量を意味する。
図27において、○は媒体に対する搬送性、ニップ性、除電動作性(Δ電位:除電可能電位)が良好であることを意味し、×はいずれがNGであることを意味する。
ここで、除電ロールのIn側、Out側での食い込み量が相違するということは、対構成の除電ロールが軸方向に対して傾斜配置されていることを意味するが、除電ロールが弾性体を有する態様であることで、媒体に対する搬送性、ニップ性、除電動作性に関して良好な範囲が存在することが確認された。
【0066】
◎実施例4
図28(a)は非接触型除電器において、媒体の搬送速度v、除電バイアスVd2の周波数f、除電パラメータf/vの数値、媒体の貼り付き評価結果を夫々示すものである。尚、評価結果のうち、「○-」は良好な除電結果を示し、「○」は「○-」に比べて更に良好な除電結果を示し、「×」は除電結果が不十分であることを示す。
図28(b)は良好な除電結果が得られたときの除電パラメータとしての周波数と他のパラメータとの関係を示す説明図、同図(c)は良好な除電結果が得られたときの除電パラメータf/vと他のパラメータとの関係を示す説明図、同図(d)は良好な除電結果が得られたときの除電パラメータf/v*L(Lは除電筐体の開口幅)と他のパラメータとの関係を示す説明図である。
本例において、媒体の貼り付き評価方法の一例を
図29(a)に示す。
同図において、樹脂フィルムからなる媒体S5枚を積層し、下の4枚を板金401に固定し、除電後24h放置した後、最上位の媒体Sに治具402を取付け、媒体Sの貼り付きの程度を測定し、その測定値に基づいて評価した。
ここで、周波数と引張荷重との関係を見てみると、
図29(b)に示す結果が得られる。
媒体A(OZK100、平和紙業製)、媒体B(OZK188、平和紙業製)を用い、除電がない条件、周波数fを100Hz、800Hzに代えて除電した条件で、媒体の貼り付き評価を実施したところ、除電がない条件では測定不能であったが、周波数を適切に選定した除電を実施したところ、いずれの媒体A,Bについても、媒体の貼り付き評価は目標以下の引張荷重になり、良好であった。尚、引張荷重の目標を1.4Nと定めているのは、目標以下の水準であれば、媒体が媒体排出受け86上に積層された後に一般的な媒体搬送ロールによって後処理装置へ媒体を搬送することが容易なことが確認されているためである。
【0067】
図28(a)~(d)によれば、
f/v≧0.8……(式1)
f/v≧1.5……(式2)
f/v*L≧30……(式3)
が良好であることが理解された。
【0068】
◎実施例5
図30(a)は非接触型除電器を用い、除電パラメータf/vが規定値以上の場合における媒体の除電効果を示す説明図である。
図30(b)は非接触型除電器を用い、除電パラメータf/vが規定値未満の場合における媒体の除電効果を示す説明図である。
いずれの場合も、実施例1で用いた方法により媒体の帯電状態を可視化したものである。
図30(b)によれば、除電パラメータf/vが規定値未満ではイオンの発生周期毎に残留電荷が残ってしまうことが理解される。これに対し、除電パラメータf/vが規定値以上であれば、媒体上に残留電荷はほとんど残存せずに、除電されていることが理解される。
【0069】
◎実施例6
図31は非接触型除電器において、電極距離(放電ワイヤと媒体との間の距離)による除電効果を検証したものである。
図31において、2Roll除電後は、接触型除電器を通過後の媒体の除電状態を示すもので、一枚あたりの帯電量はまだ多く残存していることを示している。
この後、電極距離を変化させて非接触型除電器による除電を行ったところ、電極距離が3mm以内であれば、非接触型除電器による除電効果は良好であることが理解される。尚、電極距離が9mmの例では、放電ワイヤと媒体との間が広すぎで非接触型除電器による除電効果が不十分であることが把握される。
【符号の説明】
【0070】
1…第1の除電部材,2…第2の除電部材,3…電源,4…弾性体,5…表面電位計,6…制御手段,10…除電装置,11…接触型除電手段,12…非接触型除電手段,13…搬送手段,14…帯電手段,15…電源,S…媒体