(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】コイル部品及びこれを備える回路基板
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20231226BHJP
H01F 19/00 20060101ALI20231226BHJP
H01F 19/04 20060101ALI20231226BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20231226BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20231226BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F19/00 A
H01F19/04 U
H01F27/06 103
H01F27/29 G
H05K3/34 501E
(21)【出願番号】P 2020010581
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正人
(72)【発明者】
【氏名】大井 康裕
(72)【発明者】
【氏名】木本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】土田 せつ
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-186996(JP,A)
【文献】特開2020-009903(JP,A)
【文献】特開2003-100531(JP,A)
【文献】特開2017-123365(JP,A)
【文献】特開2009-231797(JP,A)
【文献】特開2019-121791(JP,A)
【文献】特開2019-091889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 19/00
H01F 19/04
H01F 27/06
H01F 27/29
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の鍔部と、第2の鍔部と、前記第1の鍔部と前記第2の鍔部の間に位置する巻芯部とを含むコアと、
前記第1の鍔部に設けられた第1、第2、第3及び第4の端子電極と、
前記第2の鍔部に設けられた第5、第6、第7及び第8の端子電極と、
前記巻芯部にバイファイラ巻きされた第1及び第2のワイヤと、
前記巻芯部にバイファイラ巻きされた第3及び第4のワイヤと、を備え、
前記第1のワイヤの一端及び他端は、それぞれ前記第1及び第6の端子電極に接続され、
前記第2のワイヤの一端及び他端は、それぞれ前記第2及び第5の端子電極に接続され、
前記第3のワイヤの一端及び他端は、それぞれ前記第3及び第8の端子電極に接続され、
前記第4のワイヤの一端及び他端は、それぞれ前記第4及び第7の端子電極に接続され、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、第1の交差領域において交差し、
前記第3のワイヤと前記第4のワイヤは、前記第1の交差領域とは異なる第2の交差領域において交差
し、
前記第1の鍔部を始点とした前記第1の交差領域における前記第1及び第2のワイヤのターン数と、前記第1の鍔部を始点とした前記第2の交差領域における前記第3及び第4のワイヤのターン数が異なることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1の鍔部を始点とした前記第1の交差領域における前記第1及び第2のワイヤのターン数は1ターン目であり、
前記第2の鍔部を始点とした前記第2の交差領域における前記第3及び第4のワイヤのターン数は1ターン目であることを特徴とする請求項
1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記巻芯部は、複数の巻回面を有し、
前記第1の交差領域と前記第2の交差領域は、互いに異なる巻回面に位置することを特徴とする請求項
1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記複数の巻回面は、第1、第2及び第3の巻回面を含み、
前記第1の巻回面における前記第1、第2、第3及び第4のワイヤの延在距離は、前記第2及び第3の巻回面における前記第1、第2、第3及び第4のワイヤの延在距離よりも長く、
前記第1の交差領域は、前記第2の巻回面に位置し、
前記第2の交差領域は、前記第3の巻回面に位置することを特徴とする請求項
3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1及び第2のワイヤのターン数と、前記第3及び第4のワイヤのターン数が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1及び第2のワイヤのターン数は、前記第3及び第4のワイヤのターン数よりも多く、
前記第3及び第4のワイヤは、前記第1及び第2のワイヤを介して前記巻芯部に巻回されていることを特徴とする請求項
5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1、第2、第3及び第4の端子電極は、前記巻芯部の軸方向と直交する方向にこの順に配列され、
前記第5、第6、第7及び第8の端子電極は、前記巻芯部の軸方向と直交する方向にこの順に配列されていることを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
基板と、
前記基板に搭載された請求項1乃至
7のいずれか一項に記載のコイル部品と、を備え、
前記基板は、
それぞれ前記第1乃至第8の端子電極に接続された第1乃至第8のランドパターンと、
前記第1のランドパターンと前記第5のランドパターンを短絡する接続パターンと、
前記第4のランドパターンと前記第8のランドパターンを短絡する接続パターンと、を有することを特徴とする回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びこれを備える回路基板に関し、特に、パルストランスとして使用することができるコイル部品及びこれを備える回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
パルストランスとして使用することができるコイル部品としては、特許文献1に記載されたコイル部品が知られている。特許文献1に記載されたコイル部品は、両方の鍔部にそれぞれ4つの端子電極が設けられた8端子型のコイル部品であり、その巻芯部には4本のワイヤが巻回されている。そして、対を成す2本のワイヤの一端を回路基板上で短絡することによって1次側コイルのセンタータップを構成し、対を成す別の2本のワイヤの一端を回路基板上で短絡することによって2次側コイルのセンタータップを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたコイル部品では、センタータップを構成する2つの端子電極が同じ鍔部に設けられていることから、対を成す2本のワイヤを互いに逆方向に巻回する必要があり、巻回作業が複雑であるという問題があった。しかも、1次側コイルと2次側コイルのターン数が異なる場合、1次側コイルを構成する2本のワイヤの一方と、2次側コイルを構成する2本のワイヤの一方を同時に巻回することもできないことから、合計4本のワイヤを1本ずつ巻回せざるを得ず、巻回作業に時間がかかるという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、1次側コイルと2次側コイルのターン数が異なる場合であっても、ワイヤの巻回作業が容易なコイル部品及びこれを備える回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコイル部品は、第1の鍔部、第2の鍔部及び第1の鍔部と第2の鍔部の間に位置する巻芯部を含むコアと、第1の鍔部に設けられた第1、第2、第3及び第4の端子電極と、第2の鍔部に設けられた第5、第6、第7及び第8の端子電極と、巻芯部にバイファイラ巻きされた第1及び第2のワイヤと、巻芯部にバイファイラ巻きされた第3及び第4のワイヤとを備え、第1のワイヤの一端及び他端は、それぞれ第1及び第6の端子電極に接続され、第2のワイヤの一端及び他端は、それぞれ第2及び第5の端子電極に接続され、第3のワイヤの一端及び他端は、それぞれ第3及び第8の端子電極に接続され、第4のワイヤの一端及び他端は、それぞれ第4及び第7の端子電極に接続され、第1のワイヤと第2のワイヤは第1の交差領域において交差し、第3のワイヤと第4のワイヤは第1の交差領域とは異なる第2の交差領域において交差することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1及び第2のワイヤがバイファイラ巻きされ、第3及び第4のワイヤがバイファイラ巻きされていることから、ワイヤの巻回作業が容易となる。また、第1及び第2のワイヤが交差し、第3及び第4のワイヤが交差していることから、回路基板上で2つの端子電極を短絡することによってセンタータップを構成する場合に、2つの端子電極を短絡する接続パターンのパターン形状を単純化することが可能となる。しかも、第1及び第2のワイヤが交差する第1の交差領域と、第3及び第4のワイヤが交差する第2の交差領域が異なる位置に設けられていることから、2つの交差領域が干渉することによるワイヤの破損や巻崩れを防止することが可能となる。
【0008】
本発明において、第1の鍔部を始点とした第1の交差領域における第1及び第2のワイヤのターン数と、第1の鍔部を始点とした第2の交差領域における第3及び第4のワイヤのターン数が異なっていても構わない。これによれば、2つの交差領域の干渉を簡単に防止することが可能となる。この場合、第1の鍔部を始点とした第1の交差領域における第1及び第2のワイヤのターン数は1ターン目であり、第2の鍔部を始点とした第2の交差領域における第3及び第4のワイヤのターン数は1ターン目であっても構わない。これによれば、巻回作業がよりいっそう容易となる。
【0009】
本発明において、巻芯部は複数の巻回面を有し、第1の交差領域と第2の交差領域は、互いに異なる巻回面に位置していても構わない。これによれば、2つの交差領域の干渉を確実に防止することが可能となる。この場合、複数の巻回面は第1、第2及び第3の巻回面を含み、第1の巻回面における第1、第2、第3及び第4のワイヤの延在距離は、第2及び第3の巻回面における第1、第2、第3及び第4のワイヤの延在距離よりも長く、第1の交差領域は第2の巻回面に位置し、第2の交差領域は第3の巻回面に位置していても構わない。これによれば、ワイヤの延在距離が短い巻回面にて2つのワイヤが交差することから、交差の前後におけるワイヤの位置を巻芯部の角部によって固定することができる。
【0010】
本発明において、第1及び第2のワイヤのターン数と、第3及び第4のワイヤのターン数が互いに異なっていても構わない。このような場合であっても、第1及び第2のワイヤをバイファイラ巻きし、第3及び第4のワイヤをバイファイラ巻きすることができるため、ワイヤの巻回作業が容易となる。この場合、第1及び第2のワイヤのターン数は、第3及び第4のワイヤのターン数よりも多く、第3及び第4のワイヤは、第1及び第2のワイヤを介して巻芯部に巻回されていても構わない。これによれば、第1~第4のワイヤを整列して巻回することが可能となる。
【0011】
本発明において、第1、第2、第3及び第4の端子電極は、巻芯部の軸方向と直交する方向にこの順に配列され、第5、第6、第7及び第8の端子電極は、巻芯部の軸方向と直交する方向にこの順に配列されていても構わない。これによれば、対を成す2つのワイヤの距離を近接させることが可能となる。
【0012】
本発明による回路基板は、基板と、基板に搭載された上記のコイル部品とを備え、基板は、それぞれ第1乃至第8の端子電極に接続された第1乃至第8のランドパターンと、第1のランドパターンと第5のランドパターンを短絡する接続パターンと、第4のランドパターンと第8のランドパターンを短絡する接続パターンとを有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、2つの端子電極を短絡する接続パターンのパターン形状を単純化することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、1次側コイルと2次側コイルのターン数が異なる場合であっても、ワイヤの巻回作業が容易なコイル部品及びこれを備える回路基板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品1の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、ワイヤW1~W4と端子電極E1~E8の接続関係を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、巻芯部13上におけるワイヤW1~W4の巻回パターンを説明するための模式図である。
【
図4】
図4は巻芯部13の展開図であり、(a)はワイヤW1,W2の交差領域A1の位置を示し、(b)はワイヤW3,W4の交差領域A2の位置を示している。
【
図5】
図5は、コイル部品1が搭載される基板2aのパターン形状を示す略平面図である。
【
図6】
図6は、変形例による基板2bのパターン形状を示す略平面図である。
【
図7】
図7は、ワイヤW1~W4の第1の変形例による巻回パターンを説明するための模式図であり、(a)はワイヤW1,W2の巻回パターンを示し、(b)はワイヤW3,W4の巻回パターンを示している。
【
図8】
図8は、ワイヤW3,W4の第2の変形例による巻回パターンを説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、ワイヤW3,W4の第3の変形例による巻回パターンを説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、変形例によるワイヤW1~W4と端子電極E1~E8の接続関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品1の外観を示す略斜視図である。
【0018】
本実施形態によるコイル部品1はパルストランスであり、
図1に示すように、ドラム型コア10と、板状コア20と、端子電極E1~E8と、ワイヤW1~W4とを備えている。ドラム型コア10及び板状コア20の材料としては、フェライトなどの透磁率の高い磁性材料が用いられる。ここで、ドラム型コア10及び板状コア20に用いる磁性材料としては、互いに同じものであっても構わないし、互いに異なるものであっても構わないが、透磁率μが10~4000H/mである材料を用いることが好ましい。
【0019】
図1に示すように、ドラム型コア10は、x方向を軸方向とする巻芯部13と、巻芯部13のx方向における一端に設けられた鍔部11と、巻芯部13のx方向における他端に設けられた鍔部12とを含む。そして、端子電極E1~E4は鍔部11に設けられ、且つ、この順にy方向に配列される。また、端子電極E5~E8は鍔部12に設けられ、且つ、この順にy方向に配列される。さらに、ワイヤW1~W4は巻芯部13に巻回され、その一端及び他端は、それぞれ対応する端子電極E1~E8のいずれかに接続される。巻芯部13のyz断面は面取りされた矩形である。
【0020】
図2は、ワイヤW1~W4と端子電極E1~E8の接続関係を説明するための模式図である。
【0021】
図2に示すように、ワイヤW1の一端及び他端はそれぞれ端子電極E1,E6に接続され、ワイヤW2の一端及び他端はそれぞれ端子電極E2,E5に接続され、ワイヤW3の一端及び他端はそれぞれ端子電極E3,E8に接続され、ワイヤW4の一端及び他端はそれぞれ端子電極E4,E7に接続されている。これらワイヤW1~W4のうち、ワイヤW1とワイヤW2は対を成しており、巻芯部13にバイファイラ巻きされている。また、ワイヤW3とワイヤW4も対を成しており、巻芯部13にバイファイラ巻きされている。したがって、ワイヤW1とワイヤW2のターン数及び巻回方向は互いに同じであり、ワイヤW3とワイヤW4のターン数及び巻回方向は互いに同じである。特に限定されるものではないが、本実施形態においては、ワイヤW1,W2のターン数とワイヤW3,W4のターン数は異なっている。ワイヤW1,W2の巻回方向とワイヤW3,W4の巻回方向は同じである。
【0022】
さらに、
図2に示すように、ワイヤW1とワイヤW2は交差領域A1において交差し、ワイヤW3とワイヤW4は交差領域A2において交差している。交差領域A1と交差領域A2は、巻芯部13上において互いに異なる領域に位置する。
図2に示す例では、鍔部11(端子電極E1,E2)を始点としたワイヤW1,W2の1ターン目において両者が交差し、鍔部12(端子電極E7,E8)を始点としたワイヤW3,W4の1ターン目において両者が交差している。
【0023】
図3は、巻芯部13上におけるワイヤW1~W4の巻回パターンを説明するための模式図である。
【0024】
図3に示すように、本実施形態においては、ワイヤW1,W2のターン数の方がワイヤW3,W4のターン数よりも多い。また、ワイヤW1,W2が下層に巻回され、ワイヤW3,W4が上層に巻回されている。つまり、ワイヤW3,W4は、ワイヤW1,W2を介して巻芯部13に巻回されている。このような巻回パターンは、ターン数の多いワイヤW1,W2を先にバイファイラ巻きし、その後、ターン数の少ないワイヤW3,W4をバイファイラ巻きすることによって得られる。このような巻回パターンとすれば、ターン数の多いワイヤW1,W2を巻芯部13の表面上に整列して巻回することができるとともに、ワイヤW1とワイヤW2の谷線に沿ってターン数の少ないワイヤW3,W4を整列して巻回することができるため、巻崩れなどが生じにくくなる。
【0025】
図4は巻芯部13の展開図であり、(a)はワイヤW1,W2の交差領域A1の位置を示し、(b)はワイヤW3,W4の交差領域A2の位置を示している。
【0026】
図4(a),(b)に示すように、巻芯部13は4つの巻回面13a~13dを有している。このうち、巻回面13a,13cはxy面を構成し、巻回面13b,13dはxz面を構成する。本実施形態においては、巻回面13a,13cの方が巻回面13b,13dよりも面積が広く、このため、巻回面13a,13cにおけるワイヤW1~W4の延在距離は、巻回面13b,13dにおけるワイヤW1~W4の延在距離よりも長い。
【0027】
そして、ワイヤW1,W2の交差領域A1は巻回面13bに位置し、ワイヤW3,W4の交差領域A2は巻回面13dに位置する。上述の通り、巻回面13b,13dにおいてはワイヤW1~W4の延在距離が短いため、交差領域A1と巻芯部13の角部14a,14bとの距離や、交差領域A2と巻芯部13の角部14c,14dとの距離が短くなる。このため、交差の前後におけるワイヤW1~W4のx方向位置を角部14a~14dによって固定しやすくなる。また、端子電極E1,E2は巻回面13b側にオフセットして設けられており、且つ、端子電極E1,E2に接続されたワイヤW1,W2が巻回面13bにて交差していることから、交差角θ1が比較的大きくなる。同様に、端子電極E7,E8は巻回面13d側にオフセットして設けられており、且つ、端子電極E7,E8に接続されたワイヤW3,W4が巻回面13dにて交差していることから、交差角θ2が比較的大きくなる。これにより、ワイヤの交差に要する区間が短くなる。
【0028】
図5は、本実施形態によるコイル部品1が搭載される基板2aのパターン形状を示す略平面図である。
【0029】
図5に示す基板2aは、コイル部品1を搭載することによってパルストランスを含む回路基板として用いられるものであり、コイル部品1を搭載するための搭載領域3を有している。搭載領域3には、8つのランドパターンP1~P8が設けられている。搭載領域3にコイル部品1を搭載すると、ランドパターンP1~P8がそれぞれコイル部品1の端子電極E1~E8に接続される。このうち、ランドパターンP2,P6は一対の1次側端子を構成し、それぞれ1次側配線パターンL1a,L1bに接続されている。また、ランドパターンP3,P7は一対の2次側端子を構成し、それぞれ2次側配線パターンL2a,L2bに接続されている。但し、1次側と2次側の区別は相対的なものであり、両者を逆にして使用しても構わない。
【0030】
さらに、ランドパターンP1とランドパターンP5は、搭載領域3内に設けられた接続パターンC1を介して短絡され、1次側センタータップとして機能する。同様に、ランドパターンP4とランドパターンP8は、搭載領域3内に設けられた接続パターンC2を介して短絡され、2次側センタータップとして機能する。
【0031】
これにより、本実施形態によるコイル部品1を基板2aに搭載すれば、端子電極E1,E5が接続パターンC1を介して短絡され、端子電極E4,E8が接続パターンC2を介して短絡されることから、1次側センタータップ及び2次側センタータップを有するパルストランスとして機能する。
【0032】
図6は、変形例による基板2bのパターン形状を示す略平面図である。
【0033】
図6に示す基板2bは、ランドパターンP2とランドパターンP6が接続パターンC1によって短絡され、ランドパターンP3とランドパターンP7が接続パターンC2によって短絡されている。そして、ランドパターンP1,P5が一対の1次側端子を構成し、ランドパターンP4,P8が一対の2次側端子を構成する。このような構成を有する基板2bを用いた場合であっても、搭載領域3にコイル部品1を搭載すれば、1次側センタータップ及び2次側センタータップを有するパルストランスとして機能する。
【0034】
このように、本実施形態によるコイル部品1は、接続パターンC1,C2を有する基板2aに搭載することにより、パルストランスとして用いることが可能となる。また、ワイヤW1,W2のターン数とワイヤW3,W4のターン数が異なっているにもかかわらず、ワイヤW1,W2をバイファイラ巻きし、ワイヤW3,W4をバイファイラ巻きできることから、巻回作業が容易となる。さらに、ワイヤW1,W2を交差させ、ワイヤW3,W4を交差させていることから、接続パターンC1,C2をx方向に直線的な形状とすることができ、接続パターンC1,C2の配線長を短くすることができる。しかも、ワイヤW1,W2の交差領域A1とワイヤW3,W4の交差領域A2が異なる位置に設けられていることから、交差領域A1,A2が干渉することによるワイヤの破損や巻崩れを防止することも可能となる。
【0035】
図7は、ワイヤW1~W4の第1の変形例による巻回パターンを説明するための模式図であり、(a)はワイヤW1,W2の巻回パターンを示し、(b)はワイヤW3,W4の巻回パターンを示している。
【0036】
図7に示す巻回パターンは、鍔部12(端子電極E5,E6)を始点としたワイヤW1,W2の1ターン目であって、巻回面13dにおいて両者が交差し、鍔部11(端子電極E3,E4)を始点としたワイヤW3,W4の1ターン目であって、巻回面13bにおいて両者が交差している。このような巻回パターンであっても、
図4に示した巻回パターンとほぼ同じ効果が得られる。但し、巻回面13d上におけるワイヤW1,W2の交差角θ3や、巻回面13b上におけるワイヤW3,W4の交差角θ4は、交差角θ1,θ2と比べて小さくなり易く、この場合にはワイヤの交差に要する区間が長くなる。この点を考慮すれば、
図4に示した巻回パターンの方が望ましいと言える。
【0037】
図8は、ワイヤW3,W4の第2の変形例による巻回パターンを説明するための模式図である。ワイヤW1,W2の巻回パターンについては
図4(a)に示した通りである。
【0038】
図8に示す巻回パターンは、鍔部11(端子電極E3,E4)を始点としたワイヤW3,W4の1ターン目であって、巻回面13dにおいて両者が交差している。このように、交差領域A1,A2がいずれも鍔部11を始点とした1ターン目に位置する場合であっても、交差領域A1と交差領域A2が異なる巻回面に位置することから、交差領域A1,A2の干渉を防止することができる。
【0039】
図9は、ワイヤW3,W4の第3の変形例による巻回パターンを説明するための模式図である。ワイヤW1,W2の巻回パターンについては
図4(a)に示した通りである。
【0040】
図9に示す巻回パターンは、鍔部11(端子電極E3,E4)を始点としたワイヤW3,W4の2ターン目であって、巻回面13bにおいて両者が交差している。このように、交差領域A1,A2が同じ巻回面13bに位置する場合であっても、交差領域A1を構成するワイヤW1,W2のターン位置と、交差領域A2を構成するワイヤW3,W4のターン位置が異なれば、交差領域A1,A2の干渉を防止することができる。
【0041】
図10は、変形例によるワイヤW1~W4と端子電極E1~E8の接続関係を説明するための模式図である。
【0042】
図10に示す例では、ワイヤW1の一端及び他端がそれぞれ端子電極E1,E7に接続され、ワイヤW2の一端及び他端がそれぞれ端子電極E3,E5に接続され、ワイヤW3の一端及び他端がそれぞれ端子電極E2,E8に接続され、ワイヤW4の一端及び他端がそれぞれ端子電極E4,E6に接続されている。このような接続関係を有するコイル部品であっても、
図5に示した基板2a又は
図6に示した基板2bに搭載することにより、上記実施形態によるコイル部品1と同様、1次側センタータップ及び2次側センタータップを有するパルストランスとして機能する。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0044】
例えば、上記実施形態においては、ワイヤW1,W2のターン数とワイヤW3,W4のターン数が異なっているが、本発明においてこの点は必須でなく、ワイヤW1,W2のターン数とワイヤW3,W4のターン数が同じであっても構わない。
【0045】
また、上記実施形態においては、交差領域A1,A2が巻回面13b又は13dに位置しているが、交差領域A1,A2を巻回面13a又は13cに位置していても構わない。
【符号の説明】
【0046】
1 コイル部品
2a,2b 基板
3 搭載領域
10 ドラム型コア
11,12 鍔部
13 巻芯部
13a~13d 巻回面
14a~14d 角部
20 板状コア
A1,A2 交差領域
C1,C2 接続パターン
E1~E8 端子電極
L1a,L1b 1次側配線パターン
L2a,L2b 2次側配線パターン
P1~P8 ランドパターン
W1~W4 ワイヤ
θ1~θ4 交差角