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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/22 20060101AFI20231226BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20231226BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20231226BHJP
   F02M 26/70 20160101ALI20231226BHJP
   F16K 11/076 20060101ALI20231226BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20231226BHJP
   F16K 25/00 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
F16K3/22 A
F02D9/02 C
F02M26/06 311
F02M26/70 301
F16K11/076 Z
F16K47/02 F
F16K25/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020017793
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021124165
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 将吾
(72)【発明者】
【氏名】守谷 勇一朗
(72)【発明者】
【氏名】菅原 岳大
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-091321(JP,A)
【文献】特開2018-096490(JP,A)
【文献】特開2017-061176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00- 3/36
F16K 11/00-11/24
F16K 47/00-47/16
F02M 26/70
F02D 9/02
B60L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ装置であって、
弁室(11)と、前記弁室に連通する収容空間(14)とを有するハウジング(10)と、
前記弁室に連通し前記弁室とは反対側から流体が流れる弁座流路(31)を含む筒部(32)と、前記筒部を覆うシール部材(40)とを有し、前記収容空間に配置されている弁座部材(30)と、
前記弁室に収容されており、回転軸(O)周りに回転することにより前記弁座流路を開閉する弁部材(20)と、
を備え、
前記シール部材は、前記筒部のうち前記弁座流路とは反対側を覆う側壁被覆部(41)と、前記側壁被覆部から前記シール部材の外側に向かって突出している突出部(42)と、前記筒部のうち前記回転軸側の端部を覆っている弁室側被覆部(411)と、を有し、
前記弁部材は、前記回転軸周りに回転して前記突出部と接触することにより前記弁部材と前記シール部材との隙間を塞いで前記弁座流路を閉じ、
前記弁室側被覆部は、前記回転軸側を向く被覆面(412、451、761)と、前記被覆面と交差して前記被覆面と前記突出部とに接続されている被覆段差面(415)と、前記被覆面と前記被覆段差面との境界である被覆端部(416、453、763)とを含み、
前記突出部は、前記筒部の軸(CL)を含んで前記筒部の軸方向に切ったときの断面において、前記被覆面に対して沿う方向に延びる直線(Li、Lc、Lc2)を基準として前記回転軸とは反対側に位置し、
前記弁室側被覆部は、前記回転軸側に向かう方向に突出する凸部(45)を含み、
前記被覆段差面は、階段状に形成されており、
前記凸部は、前記被覆面(451)と、前記被覆端部とを含むバルブ装置。
【請求項2】
バルブ装置であって、
弁室(11)と、前記弁室に連通する収容空間(14)とを有するハウジング(10)と、
前記弁室に連通し前記弁室とは反対側から流体が流れる弁座流路(31)を含む筒部(32)と、前記筒部を覆うシール部材(40)とを有し、前記収容空間に配置されている弁座部材(30)と、
前記弁室に収容されており、回転軸(O)周りに回転することにより前記弁座流路を開閉する弁部材(20)と、
を備え、
前記シール部材は、前記筒部のうち前記弁座流路とは反対側を覆う側壁被覆部(41)と、前記側壁被覆部から前記シール部材の外側に向かって突出している突出部(42)と、前記筒部のうち前記回転軸側の端部を覆っている弁室側被覆部(411)と、を有し、
前記弁部材は、前記回転軸周りに回転して前記突出部と接触することにより前記弁部材と前記シール部材との隙間を塞いで前記弁座流路を閉じ、
前記弁室側被覆部は、前記回転軸側を向く被覆面(412、451、761)と、前記被覆面と交差して前記被覆面と前記突出部とに接続されている被覆段差面(415)と、前記被覆面と前記被覆段差面との境界である被覆端部(416、453、763)とを含み、
前記突出部は、前記筒部の軸(CL)を含んで前記筒部の軸方向に切ったときの断面において、前記被覆面に対して沿う方向に延びる直線(Li、Lc、Lc2)を基準として前記回転軸とは反対側に位置し、
前記弁座流路を流れた流体は、前記被覆面のうち前記弁座流路側から前記弁座流路とは反対側に沿う方向に流れるバルブ装置。
【請求項3】
前記弁室側被覆部は、前記回転軸側に向かう方向に突出する凸部(45)を含み、
前記被覆段差面は、階段状に形成されており、
前記凸部は、前記被覆面(451)と、前記被覆端部とを含む請求項に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、ハウジングに対して相対回転するバルブのシール面と円筒状のシール部材に形成される突出部とが接触することによって、シール部材の内側に形成される流路を閉じるバルブ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-91321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者等の検討によれば、突出部がシール部材の外周部からシール部材の径方向外側の突出しているため、この突出部とシール部材の外周部との間には空間が形成される。これにより、流路の開度が比較的小さいときにシール部材の内側の流路を流れてシール部材の外周部に沿う流体の流れがこの空間によって剥離するため、渦が発生する。この発生した渦が突出部と接触するとき、音波が散乱されることにより音が発生する。このため、流路の開度が比較的小さいとき、騒音が発生することがある。
【0005】
本開示は、騒音の発生を抑制するバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、バルブ装置であって、弁室(11)と、弁室に連通する収容空間(14)とを有するハウジング(10)と、弁室に連通し弁室とは反対側から流体が流れる弁座流路(31)を含む筒部(32)と、筒部を覆うシール部材(40)とを有し、収容空間に配置されている弁座部材(30)と、弁室に収容されており、回転軸(O)周りに回転することにより弁座流路を開閉する弁部材(20)と、を備え、シール部材は、筒部のうち弁座流路とは反対側を覆う側壁被覆部(41)と、側壁被覆部からシール部材の外側に向かって突出している突出部(42)と、筒部のうち回転軸側の端部を覆っている弁室側被覆部(411)と、を有し、弁部材は、回転軸周りに回転して突出部と接触することにより弁部材とシール部材との隙間を塞いで弁座流路を閉じ、弁室側被覆部は、回転軸側を向く被覆面(412、451、761)と、被覆面と交差して被覆面と突出部とに接続されている被覆段差面(415)と、被覆面と被覆段差面との境界である被覆端部(416、453、763)とを含み、突出部は、筒部の軸(CL)を含んで筒部の軸方向に切ったときの断面において、被覆面に対して沿う方向に延びる直線(Li、Lc、Lc2)を基準として回転軸とは反対側に位置し、弁室側被覆部は、回転軸側に向かう方向に突出する凸部(45)を含み、被覆段差面は、階段状に形成されており、凸部は、被覆面(451)と、被覆端部とを含むバルブ装置である。
また、請求項2に記載の発明は、バルブ装置であって、弁室(11)と、弁室に連通する収容空間(14)とを有するハウジング(10)と、弁室に連通し弁室とは反対側から流体が流れる弁座流路(31)を含む筒部(32)と、筒部を覆うシール部材(40)とを有し、収容空間に配置されている弁座部材(30)と、弁室に収容されており、回転軸(O)周りに回転することにより弁座流路を開閉する弁部材(20)と、を備え、シール部材は、筒部のうち弁座流路とは反対側を覆う側壁被覆部(41)と、側壁被覆部からシール部材の外側に向かって突出している突出部(42)と、筒部のうち回転軸側の端部を覆っている弁室側被覆部(411)と、を有し、弁部材は、回転軸周りに回転して突出部と接触することにより弁部材とシール部材との隙間を塞いで弁座流路を閉じ、弁室側被覆部は、回転軸側を向く被覆面(412、451、761)と、被覆面と交差して被覆面と突出部とに接続されている被覆段差面(415)と、被覆面と被覆段差面との境界である被覆端部(416、453、763)とを含み、突出部は、筒部の軸(CL)を含んで筒部の軸方向に切ったときの断面において、被覆面に対して沿う方向に延びる直線(Li、Lc、Lc2)を基準として回転軸とは反対側に位置し、弁座流路を流れた流体は、被覆面のうち弁座流路側から弁座流路とは反対側に沿う方向に流れるバルブ装置である。
【0007】
これにより、突出部が上記直線を基準として回転軸とは反対側に位置するため、弁室側被覆部と突出部との間で発生する渦が突出部に衝突することが抑制される。このため、騒音の発生が抑制される。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のバルブ装置が適用されるエンジンシステムの模式図である。
図2】バルブ装置の外観図である。
図3図2中のIII-III断面図である。
図4図2中のIII-III断面図であって、図3とは弁部材の位置が異なる図である。
図5】バルブ装置の弁部材の斜視図である。
図6】バルブ装置の弁座部材の斜視図である。
図7】弁座部材の断面図である。
図8図7中のVIII-VIII断面図である。
図9図4の部分拡大図である。
図10図2中のIII-III断面図であって、図3とは弁部材の位置が異なる図である。
図11】排気が弁座流路を流れるときのバルブ装置のシール部材の模式断面図である。
図12】第2実施形態のバルブ装置のシール部材の模式断面図である。
図13】第3実施形態のバルブ装置のシール部材の模式断面図である。
図14】第4実施形態のバルブ装置のシール部材の模式断面図である。
図15】第5実施形態のバルブ装置の弁部材が弁座流路を閉じているときの弁部材および弁座部材の外観図である。
図16図15中のXVI-XVI断面図である。
図17図15中のXVII-XVII断面図である。
図18図15中のXVIII-XVIII断面図である。
図19図15中のXIX-XIX断面図である。
図20】比較例の断面図である。
図21】他の実施形態のバルブ装置のシール部材の模式断面図である。
図22】他の実施形態のバルブ装置のシール部材の模式断面図である。
図23】他の実施形態のバルブ装置の弁部材が弁座流路を閉じているときの弁部材および弁座部材の外観図である。
図24】他の実施形態のバルブ装置の弁部材が弁座流路を閉じているときの弁部材および弁座部材の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態のバルブ装置1は、例えば、エンジンシステム90に適用される。まず、このエンジンシステム90について説明する。
【0012】
エンジンシステム90は、図1に示すように、エンジン91、吸気系92、排気系93、過給器94、排気還流系95、バルブ装置1およびECU96を備える。
【0013】
エンジン91は、シリンダ911およびピストン912を有する。シリンダ911内にピストン912が収容されており、シリンダ911とピストン912とによって燃焼室910が区画形成されている。
【0014】
吸気系92は、外気からエンジン91に空気を供給する。具体的には、吸気系92は、吸気管921、吸気マニホールド922、エアクリーナ923、インタークーラ924、およびスロットル925等を有する。なお、ここでは、外気とは、エンジンシステム90の外側の空気のことである。また、以下では、便宜上、エンジン91に供給される空気を吸入空気と記載する。
【0015】
吸気管921は、吸気流路920を含み、燃焼室910に吸入空気を導く。また、吸気管921の一端は、外気に開放されている。さらに、吸気管921の他端は、吸気マニホールド922に接続されている。
【0016】
吸気マニホールド922は、吸気管921の他端とエンジン91とに接続されている。また、吸気マニホールド922は、エンジン91のシリンダ911の数と同数に分岐した流路を含む。
【0017】
エアクリーナ923は、吸気管921のうち外気に開放されている一端側に配置されている。また、エアクリーナ923は、外気からエンジンシステム90内に取り込む空気に含まれる異物を除去する。
【0018】
インタークーラ924は、吸気管921のうち後述の過給器94とスロットル925との間に配置されている。また、インタークーラ924は、後述の過給器94のコンプレッサ941により圧縮されて昇温した吸入空気を冷却する。
【0019】
スロットル925は、後述のECU96と電気的に接続されている。これにより、スロットル925は、ECU96からの信号に基づいて、エンジン91に供給される空気の量を調整する。
【0020】
排気系93は、エンジン91から排出される気体を外気に放出する。具体的には、排気系93は、排気管931、排気マニホールド932および排気浄化ユニット933を有する。また、以下では、便宜上、エンジン91から排出される気体を排気と記載する。
【0021】
排気管931は、排気流路930を含み、エンジン91からの排気を外気に導く。また、排気管931の一端は、外気に開放されている。さらに、排気管931の他端は、排気マニホールド932に接続されている。
【0022】
排気マニホールド932は、排気管931の他端とエンジン91とに接続されている。また、排気マニホールド932は、エンジン91のシリンダ911の数と同数に分岐した流路を含む。
【0023】
排気浄化ユニット933は、排気管931に配置されている。また、排気浄化ユニット933は、例えば、エンジン91からの排気に含まれる炭化水素を分解したり、エンジン91からの排気に含まれる微粒子状物質を捕捉したりする。
【0024】
過給器94は、エンジン91からの排気のエネルギーを利用することにより吸気管921内で吸入空気を圧縮する。また、過給器94は、この圧縮した吸入空気を、吸気管921、インタークーラ924、スロットル925および吸気マニホールド922を経由して、燃焼室910に供給する。具体的には、過給器94は、コンプレッサ941、タービン942およびシャフト943を有する。
【0025】
コンプレッサ941は、回転することにより吸入空気を圧縮する。
【0026】
タービン942は、排気流路930のうちエンジン91と排気浄化ユニット933との間に配置されている。また、タービン942は、エンジン91からの排気のエネルギーにより回転する。
【0027】
シャフト943は、コンプレッサ941とタービン942とに接続されている。このため、タービン942が回転すると、タービン942に接続されているシャフト943が回転するため、コンプレッサ941が回転する。したがって、コンプレッサ941とタービン942とが同期して回転する。
【0028】
排気還流系95は、タービン942を通過した後の排気を吸気流路920に還流する。具体的には、排気還流系95は、EGR管951およびEGRクーラ952を有する。
【0029】
EGR管951は、排気管931のうち排気浄化ユニット933の下流側と、吸気管921のうちコンプレッサ941の上流側とに接続されている。また、EGR管951は、EGR流路950を含み、排気浄化ユニット933を流れた後の排気をコンプレッサ941に導く。
【0030】
EGRクーラ952は、EGR管951に配置されている。また、EGRクーラ952は、EGR流路950を流れる排気を冷却する。
【0031】
バルブ装置1は、EGR管951と吸気管921とに接続されている。また、バルブ装置1は、後述のECU96と電気的に接続されている。これにより、バルブ装置1は、ECU96からの信号に基づいて、EGR流路950を開閉する。
【0032】
ECU96は、マイコン等を主体として構成されており、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ、I/Oおよびこれらの構成を接続するバスライン等を備えている。また、ECU96は、バルブ装置1を制御することにより、吸気流路920に対するEGR流路950の開度を制御する。これにより、EGR流路950を経由して吸気流路920に流入する排気の流量が調整される。
【0033】
以上のように、エンジンシステム90は構成されている。
【0034】
次に、バルブ装置1の構成の詳細について説明する。ここでは、バルブ装置1は、後述する弁部材20が回転することにより流路の開度を調整するロータリー式の弁である。これにより、バルブ装置1は、EGR流路950を経由して吸気流路920に流入する排気の流量を調整する。
【0035】
具体的には、バルブ装置1は、図2図8に示すように、ハウジング10、弁部材20および弁座部材30を備えている。
【0036】
ハウジング10は、例えば、アルミニウム合金等の金属で形成されている。また、ハウジング10は、筒状に形成されており、吸気流路920とEGR流路950との合流部を有する。さらに、ハウジング10は、図示しないモータ、後述の弁部材20および弁座部材30を収容している。具体的には、ハウジング10は、図2図4に示すように、弁室内壁101、弁室11、上流側内壁102、上流側流路12、下流側内壁103、下流側流路13、収容内壁104、収容空間14およびカバー105を有する。
【0037】
弁室内壁101は、図3および図4に示すように、弁室11を区画形成している。弁室11は、弁部材20を回転可能に収容している。上流側内壁102は、上流側流路12を区画形成している。上流側流路12は、エアクリーナ923と弁室11とに連通する。下流側内壁103は、下流側流路13を区画形成している。下流側流路13は、上流側流路12と同軸上に形成されている。また、下流側流路13は、弁室11と吸気流路920のうちコンプレッサ941側とに連通する。収容内壁104は、収容空間14を区画形成している。収容空間14は、後述の弁座部材30を収容している。カバー105は、図2に示すように、図示しないモータを収容している。
【0038】
弁部材20は、図3および図4に示すように、ハウジング10に対して相対回転可能に、弁室11に収容されている。また、弁部材20は、図示しないモータによって駆動される。これにより、弁部材20は、弁回転軸O周りに回転する。さらに、弁部材20は、弁回転軸O周りに回転することによって後述の弁座部材30の弁座流路31を開閉する。具体的には、弁部材20は、図5に示すように、弁部材本体部21、上アーム22、下アーム23、上シャフト24および下シャフト25を有する。
【0039】
弁部材本体部21は、例えば、ポリフェニレンスルフィド等の合成樹脂で形成されている。このため、弁部材本体部21は、比較的高い耐熱性を有する。また、弁部材本体部21は、筒状に形成されている。さらに、弁部材本体部21は、弁部材外面211、第1曲面部21a、第2曲面部21b、第1シール面212および第2シール面213を含む。
【0040】
弁部材外面211は、弁部材本体部21の外面である。第1曲面部21aは、曲面形状に形成されており、弁部材外面211よりも凹むように形成されている。第2曲面部21bは、曲面形状に形成されており、第1曲面部21aよりもさらに凹むように形成されている。第1シール面212は、弁部材外面211と第1曲面部21aとの段差に形成されている面である。また、第1シール面212は、中心角が180度の半円筒形に形成されている。第2シール面213は、第1曲面部21aと第2曲面部21bとの段差に形成されている。また、第2シール面213は、中心角が180度の半円筒形に形成されている。さらに、第2シール面213の半円の中心は、第1シール面212の半円の中心と一致する。また、この半円を中心とする第2シール面213の半径は、この半円を中心とする第1シール面212の半径と比較して小さくなっている。
【0041】
上アーム22は、弁部材本体部21と同様に、例えば、ポリフェニレンスルフィド等の合成樹脂材料で形成されている。また、上アーム22は、扇状に形成されており、弁部材本体部21のうち後述の上シャフト24側に配置されている。
【0042】
下アーム23は、弁部材本体部21および上アーム22と同様に、例えば、ポリフェニレンスルフィド等の合成樹脂材料で形成されている。また、下アーム23は、扇状に形成されており、弁部材本体部21のうち後述の下シャフト25側に配置されている。
【0043】
上シャフト24は、例えば、ステンレス等の金属で棒状に形成されている。また、上シャフト24は、上アーム22に配置されており、上アーム22から弁回転軸O方向かつ弁部材本体部21に対して離れる方向に延びている。さらに、上シャフト24は、ハウジング10に配置された図示しない軸受により回転可能に支持されている。
【0044】
下シャフト25は、上シャフト24と同様に、例えば、ステンレス等の金属で棒状に形成されている。また、下シャフト25は、下アーム23に配置されており、下アーム23から弁回転軸O方向かつ弁部材本体部21に対して離れる方向に延びている。さらに、下シャフト25は、ハウジング10に配置された図示しない軸受により上シャフト24とともに回転可能に支持されている。
【0045】
弁座部材30は、樹脂等で形成されている。また、弁座部材30は、図3および図4に示すように、ハウジング10のうち収容空間14に配置されている。また、弁座部材30は、筒状に形成されている。具体的には、弁座部材30は、図6および図7に示すように、筒部32、フランジ部33およびシール部材40を有する。
【0046】
筒部32は、ここでは、円筒状に形成されており、弁座流路31、軸線CL、第1側壁部321および第2側壁部322を有する。弁座流路31は、筒部32の内側に形成されており、図3および図4に示すように、弁室11とEGR流路950とに連通する。軸線CLは、図6および図7に示すように、筒部32の軸方向に延びている中心線である。第1側壁部321は、半円筒形状になっている。第2側壁部322は、半円筒形状になっている。また、第2側壁部322の半径は、第1側壁部321の半径と同じになっている。さらに、第2側壁部322の半径の中心と第1側壁部321の半径の中心とが一致するように、第2側壁部322と第1側壁部321とが筒部32の径方向に合わさっている。これにより、第2側壁部322の内周面は、第1側壁部321の内周面と連続している。また、第2側壁部322の外周面は、第1側壁部321の外周面と連続している。さらに、ここでは、第2側壁部322と第1側壁部321との境界部における第2側壁部322の軸線CL方向の長さは、第2側壁部322と第1側壁部321との境界部における第1側壁部321の軸線CL方向の長さよりも大きくなっている。
【0047】
フランジ部33は、筒部32のうち弁回転軸O側とは反対側に接続されており、弁座部材30のうちEGR流路950側に位置する。また、フランジ部33は、筒部32から筒部32の径方向外側に向かって突出している。なお、以下では、便宜上、フランジ部33側をEGR流路950側と記載する。また、フランジ部33とは反対側を弁回転軸O側と記載する。
【0048】
シール部材40は、天然ゴムおよび合成ゴム等で形成されている。また、シール部材40は、弁座部材30の大部分を覆っている。具体的には、シール部材40は、図7および図8に示すように、第1側壁被覆部41、第1突出部42、第1弁室側被覆部411、第2側壁被覆部43、第2弁室側被覆部431および第2突出部44を有する。
【0049】
第1側壁被覆部41は、弁座部材30の筒部32のうち第1側壁部321を覆っている。具体的には、第1側壁被覆部41は、第1側壁部321のうち弁座流路31側および弁座流路31とは反対側、ここでは、第1側壁部321のうち筒部32の径方向内側および径方向外側を覆っている。なお、以下では、便宜上、筒部32の弁座流路31側を筒部32の径方向内側と記載する。また、筒部32の弁座流路31とは反対側を筒部32の径方向外側と記載する。
【0050】
第1突出部42は、第1側壁被覆部41のうち弁回転軸O側かつ筒部32の径方向外側に接続されている。また、第1突出部42は、第1側壁被覆部41から、シール部材40の外側に突出している、ここでは、筒部32の軸線CL方向外側のうち弁回転軸O側かつ筒部32の径方向外側に突出している。
【0051】
第1弁室側被覆部411は、第1側壁部321のうち弁回転軸O側の端部を覆っている。また、ここでは、第1弁室側被覆部411は、弁室側被覆面412、被覆段差面415および被覆端部416を含む。
【0052】
弁室側被覆面412は、平面に形成されており、弁回転軸O側を向いている。
【0053】
被覆段差面415は、弁室側被覆面412と交差して弁室側被覆面412と、第1突出部42のうち第1側壁被覆部41との接続部とに接続されている。また、被覆段差面415は、第1突出部42に対向しており、被覆段差面415と第1突出部42との間には、第1シール用空間413が形成されている。
【0054】
被覆端部416は、弁室側被覆面412と被覆段差面415との境界部である。また、ここでは、弁室側被覆面412と被覆段差面415とが交差しているため、被覆端部416は、弁室側被覆面412と被覆段差面415とで形成される角部になっている。
【0055】
ここで、図8に示すように、筒部32の軸線CLを含んで筒部32の軸線CL方向に切ったときの断面において、弁室側被覆面412のうち弁座流路31側から弁座流路31とは反対側に沿う方向に延びており、被覆端部416を通る直線を仮想線Liとする。そして、ここでは、この仮想線Liは、第1突出部42よりも弁回転軸O側に位置している。すなわち、第1突出部42は、筒部32の軸線CLを含んで筒部32の軸線CL方向に切ったときの断面において、この仮想線Liを基準として弁回転軸Oとは反対側に位置している。
【0056】
第2側壁被覆部43は、図7に示すように、弁座部材30の筒部32のうち第2側壁部322を覆っている。具体的には、第2側壁被覆部43は、第2側壁部322のうち筒部32の径方向内側および径方向外側を覆っている。
【0057】
第2弁室側被覆部431は、第2側壁部322のうち弁回転軸O側の端部を覆っている。
【0058】
第2突出部44は、第2側壁被覆部43のうち弁回転軸O側かつ筒部32の径方向内側と、第2弁室側被覆部431のうち筒部32の径方向内側とに接続されている。また、第2突出部44は、第2側壁被覆部43および第2弁室側被覆部431から、弁回転軸Oとは反対側かつ筒部32の径方向内側に突出している。これにより、第2突出部44と第2側壁被覆部43との間には、第2シール用空間433が形成されている。
【0059】
以上のように、バルブ装置1は構成されている。
【0060】
次に、バルブ装置1の作動について説明する。このバルブ装置1は、バルブ装置1の弁部材20が回転することによりEGR流路950を開閉する。これにより、バルブ装置1は、EGR流路950を経由して吸気流路920に流入する排気の流量を調整する。
【0061】
具体的には、図3に示すように、弁部材20が回転して上流側流路12を閉じるとき、弁座流路31が開く。ここでは、上記したように、弁座流路31は、EGR流路950と弁室11とに連通している。また、弁室11は、下流側流路13に連通している。下流側流路13は、吸気流路920のうちコンプレッサ941側と連通している。したがって、このとき、EGR流路950を流れる排気は、弁座流路31、弁室11および下流側流路13を経由してコンプレッサ941に流れる。よって、このとき、EGR流路950を経由して吸気流路920に流入する排気の流量は、比較的大きくなる。
【0062】
また、図4に示すように、弁部材20が回転して弁座流路31を閉じるとき、上流側流路12が開く。ここで、上記したように、上流側流路12は、エアクリーナ923と弁室11とに連通する。このため、エアクリーナ923からの吸入空気が、上流側流路12、弁室11および下流側流路13を経由してコンプレッサ941に流れる。
【0063】
また、このとき、第1突出部42は、図9に示すように、弁部材20の第1シール面212と接触する。これにより、第1突出部42と第1シール面212との間の隙間が塞がれる。また、ここでは、第1突出部42は、ゴムで形成されている。さらに、弁部材20が回転して弁座流路31を閉じる前において第1突出部42と第1弁室側被覆部411との間には第1シール用空間413が形成されている。このため、弁部材20が回転して第1突出部42と第1シール面212と接触するとき、第1突出部42は、第1突出部42と第1弁室側被覆部411との接続部を起点にして第1シール用空間413を埋めるようにたわんで弾性変形する。これにより、第1突出部42が弾性変形するため、第1突出部42と第1シール面212とが密着しやすくなる。したがって、ここでは、第1突出部42と第1シール面212との接触面積が比較的高くなっており、第1突出部42と第1シール面212との間のシール性が比較的高くなっている。
【0064】
さらに、このとき、第2突出部44は、第1突出部42と同様に、弁部材20の第2シール面213と接触する。これにより、第2突出部44と第2シール面213との間の隙間が塞がれる。また、このとき、第2突出部44は、第2突出部44と第2弁室側被覆部431との接続部を起点にして第2シール用空間433を埋めるようにたわんで弾性変形する。これにより、上記と同様に、第2突出部44と第2シール面213との間のシール性が比較的高くなっている。
【0065】
したがって、このとき、弁部材20により弁座流路31が閉じられるため、EGR流路950からの排気は、弁座流路31に流れない。よって、EGR流路950を経由して吸気流路920に流入する排気の流量は、ゼロである。
【0066】
また、図10に示すように、弁部材20が回転することにより弁座流路31の開度が比較的小さい状態で弁座流路31を開く場合がある。このとき、上記と同様に、上流側流路12が開いているため、エアクリーナ923からの吸入空気は、上流側流路12、弁室11および下流側流路13を経由してコンプレッサ941に流れる。
【0067】
また、弁座流路31が開いているため、EGR流路950を流れる排気は、弁座流路31、弁室11および下流側流路13を経由してコンプレッサ941に流れる。この場合、弁座流路31の開度が比較的小さい状態であるため、EGR流路950を経由して吸気流路920に流入する排気の流量は、比較的小さくなる。
【0068】
以上のように、バルブ装置1は作動する。このバルブ装置1では、騒音の発生が抑制される。以下では、この騒音抑制について説明する。
【0069】
上記したように、弁座流路31の開度が比較的小さい状態で弁座流路31が開いているとき、EGR流路950を流れた排気は、弁座流路31を流れる。このとき、図11に示すように、弁座流路31を流れる排気のうち一部は、第1側壁被覆部41のうち筒部32の径方向内側の内面414に沿って流れる。また、この内面414に沿って流れる排気の一部は、弁室側被覆面412のうち弁座流路31側から弁座流路31とは反対側に沿う方向に流れる。さらに、ここでは、被覆段差面415および第1シール用空間413が形成されている。このため、この弁室側被覆面412に沿う排気の流れは、弁室側被覆面412と被覆段差面415との境界部である被覆端部416から剥離する。これにより、渦が発生する。この発生した渦は、弁室側被覆面412の延長上の直線である仮想線Liに沿って流れる。
【0070】
ここで、上記したように、第1突出部42は、筒部32の軸線CLを含んで筒部32の軸線CL方向に切ったときの断面において、仮想線Liを基準として弁回転軸Oとは反対側すなわちEGR流路950側に位置している。このため、仮想線Liに沿って流れる渦が第1突出部42に衝突することが抑制される。これにより、音波が散乱されることがないため、音の発生が抑制される。よって、騒音が抑制される。
【0071】
(第2実施形態)
第2実施形態では、シール部材の形態が異なる。これ以外は、第1実施形態と同様である。
【0072】
シール部材40の第1弁室側被覆部411は、図12に示すように、凸部45をさらに有する。
【0073】
凸部45は、弁室側被覆面412のうち筒部32の径方向内側に接続されている。また、凸部45は、弁室側被覆面412から弁回転軸O側に向かって突出している。さらに、凸部45における筒部32の軸線CL方向の断面は、四角形形状になっている。また、凸部45は、凸面451および凸端部453を含む。
【0074】
凸面451は、被覆面に対応しており、平面に形成されており、弁回転軸O側を向いている。また、ここでは、凸面451は、弁室側被覆面412と平行になっている。なお、凸面451は、弁室側被覆面412に対して傾斜してもよい。
【0075】
また、ここでは、被覆段差面415は、弁室側被覆面412と一体になって階段状に形成されており、凸面451と第1突出部42とに接続されている。また、被覆段差面415のうち凸面451と接続されている面は、凸面451に対して交差している。したがって、この被覆段差面415により、凸面451と第1突出部42との間には段差が形成されている。
【0076】
凸端部453は、被覆端部に対応しており、凸面451と被覆段差面415との境界部である。また、ここでは、被覆段差面415のうち凸面451と接続されている面と凸面451とが交差しているため、凸端部453は、凸面451と被覆段差面415とで形成される角部になっている。
【0077】
ここで、筒部32の軸線CLを含んで筒部32の軸線CL方向に切ったときの断面において、凸面451のうち弁座流路31側から弁座流路31とは反対側に沿う方向に延びており、凸端部453を通る直線を凸部仮想線Lcとする。そして、ここでは、凸部仮想線Lcは、第1突出部42よりも弁回転軸O側に位置している。すなわち、第1突出部42は、筒部32の軸線CLを含んで筒部32の軸線CL方向に切ったときの断面において、凸部仮想線Lcを基準として弁回転軸Oとは反対側に位置している。
【0078】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。具体的には、弁座流路31が開いているとき、弁座流路31を流れる排気のうち一部は、第1側壁被覆部41のうち筒部32の径方向内側の内面414に沿って流れる。また、この内面414に沿って流れる排気の一部は、凸面451のうち弁座流路31側から弁座流路31とは反対側に沿う方向に流れる。さらに、凸面451と第1突出部42との間には段差が形成されているため、この凸面451に沿う排気の流れは、凸面451と被覆段差面415との境界部である凸端部453から剥離する、これにより、渦が発生する。この渦は、凸面451の延長上の線である凸部仮想線Lcに沿って流れる。
【0079】
ここで、上記したように、第1突出部42は、凸部仮想線Lcを基準として弁回転軸Oとは反対側に位置している。このため、凸部仮想線Lcに沿って流れる渦が第1突出部42に衝突することが抑制される。よって、上記と同様に、騒音が抑制される。
【0080】
また、第2実施形態では、凸部45により第1弁室側被覆部411を比較的小さくすることができる。例えば、第2実施形態では、図12に示すように、第1突出部42は、仮想線Li上に位置してもよい。これにより、第1弁室側被覆部411に用いられるゴムの量を減らすことができるため、バルブ装置1の材料費を削減できる。
【0081】
(第3実施形態)
第3実施形態では、シール部材の凸部の形態が異なる。これ以外は、第2実施形態と同様である。
【0082】
図13に示すように、シール部材40の凸部45における筒部32の軸線CL方向の断面は、三角形形状になっている。また、凸面451は、第2実施形態と同様に、弁回転軸O側を向いており、弁室側被覆面412に対して傾斜している。
【0083】
第3実施形態においても、第2実施形態と同様の効果を奏する。また、第3実施形態では、金型等を用いたゴム成形によってシール部材40を製造する場合に、凸面451が延びている方向をゴム成形における抜き勾配方向とすることができる。これにより、シール部材40の製造が比較的しやすくなるため、シール部材40の生産性が向上する。
【0084】
(第4実施形態)
第4実施形態では、シール部材の形態が異なる。これ以外は、第1実施形態と同様である。
【0085】
図14に示すように、シール部材40の弁室側被覆面412は、弁回転軸Oとは反対側に凹む凹面を含む。この凹面が被覆段差面415と接続されており、この凹面と被覆段差面415との境界部である被覆端部416が形成されている。
【0086】
この場合、筒部32の軸線CL方向の断面において弁室側被覆面412の延長上の直線である仮想線Liは、被覆端部416を通り弁室側被覆面412の凹面との接線方向に延長した直線になっている。そして、この仮想線Liは、第1突出部42よりも弁回転軸O側に位置している、すなわち、第1突出部42は、この仮想線Liを基準として弁回転軸Oとは反対側に位置している。
【0087】
第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、仮想線Liに沿って流れる渦が第1突出部42に衝突することが抑制される。騒音が抑制される。
【0088】
(第5実施形態)
第5実施形態では、弁部材の形態が異なる。これ以外は、第1実施形態と同様である。
【0089】
図15に示すように、弁部材20が回転して弁座流路31を閉じるとき、上記したように、第2突出部44が弁部材20の第2シール面213と接触することにより第2突出部44と第2シール面213との間の隙間が塞がれる。なお、ここでは、図15において紙面上側がハウジング10のカバー105側になっている。また、図15において紙面下側がハウジング10のカバー105とは反対側になっている。さらに、以下では、便宜上、弁部材20が弁座流路31を閉じているときの弁部材20の回転方向を、単に、弁部材20の回転方向と記載する。また、この弁部材20の回転方向および筒部32の軸線CL方向と直交する方向をスラスト方向とする。
【0090】
また、このとき、図16に示すように、第2突出部44が配置されていることによって、第2シール面213のうちカバー105側と第2側壁被覆部43との間に第1空間481が形成される。また、この第1空間481において、第2シール面213のうちカバー105側と第2側壁被覆部43の第1被覆面471とがスラスト方向に対向する。
【0091】
さらに、このとき、図17に示すように、弁部材20の第1弁部材面201と第2側壁被覆部43の第2被覆面472とが、弁部材20の回転方向に互いに対向する。さらに、第1弁部材面201と第2被覆面472との間に、第2空間482が形成される。
【0092】
また、このとき、図18に示すように、第2突出部44が配置されていることによって、第2シール面213のうちカバー105とは反対側と第2側壁被覆部43との間に第3空間483が形成される。また、この第3空間483において、第2シール面213のうちカバー105とは反対側と第2側壁被覆部43の第3被覆面473とがスラスト方向に対向する。
【0093】
さらに、このとき、図19に示すように、弁部材20の第2弁部材面202と、第2側壁被覆部43の第4被覆面474とが弁部材20の回転方向に互いに対向する。さらに、第2弁部材面202と第4被覆面474との間に、第4空間484が形成される。
【0094】
また、ここでは、弁部材20は、図15図19に示すように、露出面500、第1弁部材凹部510、第2弁部材凹部520、第3弁部材凹部530および第4弁部材凹部540をさらに有する。
【0095】
露出面500は、弁部材20が弁座流路31を閉じているときに弁部材20のうちEGR流路950側に露出している。また、図16および図18に示すように、露出面500と第2シール面213との境界部は、R形状になっている。さらに、図17に示すように、露出面500と第1弁部材面201との境界部は、R形状になっている。また、図19に示すように、露出面500と第2弁部材面202との境界部は、R形状になっている。
【0096】
第1弁部材凹部510は、図15に示すように、弁部材20のうちカバー105側に形成されている。また、第1弁部材凹部510は、図16に示すように、露出面500から弁回転軸O側に凹んでいる。さらに、第1弁部材凹部510は、第1凹部底面511および第1凹部側面512を含む。
【0097】
第1凹部底面511は、図15に示すように、弁部材20の回転方向に延びている。
【0098】
第1凹部側面512は、図16に示すように、露出面500および第1凹部底面511に接続されている。また、第1凹部側面512は、露出面500から弁回転軸O側に向かって延びており、第1被覆面471と平行になっている。さらに、第1凹部側面512は、第1被覆面471と同一方向を向いて露出している。ここでは、第1凹部側面512と第1被覆面471とは、スラスト方向のうち一方側を向いて露出している。また、ここでは、第1凹部側面512に対する第1垂線Lp1上に、第2シール面213および第1被覆面471が位置している。さらに、第1凹部側面512と露出面500との境界部は、R形状になっている。また、第1凹部側面512と第1凹部底面511との境界部は、R形状になっている。
【0099】
第2弁部材凹部520は、図15に示すように、第1弁部材凹部510に接続されており、ここでは、第1弁部材凹部510と一体になっている。さらに、第2弁部材凹部520は、図17に示すように、弁部材20の露出面500から弁回転軸O側に凹んでいる。また、第2弁部材凹部520は、第2凹部底面521および第2凹部側面522を含む。
【0100】
第2凹部底面521は、図15に示すように、第1凹部底面511に接続されており、スラスト方向に延びている。
【0101】
第2凹部側面522は、第1凹部側面512に接続されている。また、第2凹部側面522は、図17に示すように、露出面500および第2凹部底面521に接続されている。さらに、第2凹部側面522は、露出面500から弁回転軸O側に向かって延びており、第2被覆面472と平行になっている。また、第2凹部側面522は、第2被覆面472と同一方向を向いて露出している。ここでは、第2凹部側面522と第2被覆面472とは、弁部材20の回転方向のうち一方側を向いて露出している。さらに、ここでは、第2凹部側面522に対する第2垂線Lp2上に、第1弁部材面201および第2被覆面472が位置している。また、第2凹部側面522と露出面500との境界部は、R形状になっている。さらに、第2凹部側面522と第2凹部底面521との境界部は、R形状になっている。
【0102】
第3弁部材凹部530は、図15に示すように、弁部材20のうちカバー105とは反対側に形成されている。また、第3弁部材凹部530は、図18に示すように、露出面500から弁回転軸O側に凹んでいる。さらに、第3弁部材凹部530は、第3凹部底面531および第3凹部側面532を含む。
【0103】
第3凹部底面531は、図15に示すように、弁部材20の回転方向に延びている。
【0104】
第3凹部側面532は、図16に示すように、露出面500および第3凹部底面531に接続されている。また、第3凹部側面532は、露出面500から弁回転軸O側に向かって延びており、第3被覆面473と平行になっている。さらに、第3凹部側面532は、第3被覆面473と同一方向を向いて露出している。ここでは、第3凹部側面532と第3被覆面473とは、スラスト方向のうち一方側を向いて露出している。また、ここでは、第3凹部側面532に対する第3垂線Lp3上に、第2シール面213および第3被覆面473が位置している。さらに、第3凹部側面532と露出面500との境界部は、R形状になっている。また、第3凹部側面532と第3凹部底面531との境界部は、R形状になっている。
【0105】
第4弁部材凹部540は、図15に示すように、第3弁部材凹部530に接続されており、ここでは、第3弁部材凹部530と一体になっている。さらに、第4弁部材凹部540は、図19に示すように、弁部材20の露出面500から弁回転軸O側に凹んでいる。また、第4弁部材凹部540は、第4凹部底面541および第4凹部側面542を含む。
【0106】
第4凹部底面541は、図15に示すように、第4凹部底面541に接続されており、スラスト方向に延びている。
【0107】
第4凹部側面542は、第3凹部側面532に接続されている。また、第4凹部側面542は、図19に示すように、露出面500および第4凹部底面541に接続されている。さらに、第4凹部側面542は、露出面500から弁回転軸O側に向かって延びており、第4被覆面474と平行になっている。また、第4凹部側面542は、第4被覆面474と同一方向を向いて露出している。ここでは、第4凹部側面542と第4被覆面474とは、弁部材20の回転方向のうち一方側を向いて露出している。さらに、ここでは、第4凹部側面542に対する第4垂線Lp4上に、第2弁部材面202および第4被覆面474が位置している。また、第4凹部側面542と露出面500との境界部は、R形状になっている。さらに、第4凹部側面542と第4凹部底面541との境界部は、R形状になっている。
【0108】
以上のように、第5実施形態は構成されている。第5実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0109】
また、第5実施形態では、バルブ装置1を製造する場合における弁部材20とシール部材40とを組み付けるときの弁部材20とシール部材40との位置関係の精度を向上させることができる。
【0110】
ここで、この弁部材20とシール部材40との位置関係の精度向上を説明するために、以下のように用語を定義する。
【0111】
図16に示すように、第2シール面213から第1被覆面471までのスラスト方向の距離を第1相対距離Dr1とする。さらに、第1凹部側面512から第1被覆面471までのスラスト方向の距離を第1測定用距離Dm1とする。また、図17に示すように、第1弁部材面201から第2被覆面472までの弁部材20の回転方向の距離を第2相対距離Dr2とする。さらに、第2凹部側面522から第2被覆面472までの弁部材20の回転方向の距離を第2測定用距離Dm2とする。また、図18に示すように、第2シール面213から第3被覆面473までのスラスト方向の距離を第3相対距離Dr3とする。さらに、第3凹部側面532から第3被覆面473までのスラスト方向の距離を第3測定用距離Dm3とする。また、図19に示すように、第2弁部材面202から第4被覆面474までの弁部材20の回転方向の距離を第4相対距離Dr4とする。さらに、第4凹部側面542から第4被覆面474までの弁部材20の回転方向の距離を第4測定用距離Dm4とする。また、弁部材20の弁回転軸Oとシール部材40の軸線CLとのスラスト方向の位置ずれをスラスト方向ずれΔDとする。さらに、シール部材40の軸線CL周りの弁部材20の位置ずれを回転方向ずれΔθとする。
【0112】
また、スラスト方向ずれΔDは、例えば、以下関係式(1)に示すように、第1相対距離Dr1と第3相対距離Dr3との差の絶対値に基づいて算出される。なお、スラスト方向ずれΔDは、以下関係式(2)に示すように、第1相対距離Dr1と弁部材20の外径Doと弁座部材30の内径Diとに基づいて算出してもよい。この場合、弁部材20の外径Doおよび弁座部材30の内径Diは、例えば、予め測定される。
【0113】
ΔD=|Dr1-Dr3|÷2 ・・・(1)
ΔD=|(Do-Di)÷2―Dr1| ・・・(2)
【0114】
また、回転方向ずれΔθは、例えば、以下関係式(3)に示すように、第2相対距離Dr2と第4測定用距離Dm4との差の絶対値と、弁座部材30の内径Diとに基づいて算出される。ここでは、回転方向ずれΔθの単位をラジアンとしている。なお、この場合、弁座部材30の内径Diは、内径Diのバラつきに対して十分大きいため、設計値になっている。
【0115】
Δθ=sin-1(|Dr2-Dr4|÷Di) ・・・(3)
【0116】
したがって、第1相対距離Dr1および第3相対距離Dr3の精度が向上することによりスラスト方向ずれΔDの精度が向上する。また、第2相対距離Dr2および第4測定用距離Dm4の精度が向上することにより回転方向ずれΔθの精度が向上する。
【0117】
ここで、図20に示すように、比較例として、互いに対向する第1面801から第2面802までの距離をレーザ等で測定する場合とする。この場合において、第1面801の端部にR形状等の面取りが施されているとき、第1面801のR形状部から第2面802の平面部までの距離と、第1面801の平面部から第2面802の平面部までの距離とは異なる。このため、レーザ等により第1面801のR形状部から第2面802の平面部までの距離が誤測定されると、第1面801から第2面802までの距離の精度は、低下する。
【0118】
そして、露出面500と第2シール面213のカバー105側との境界部は、R形状になっている。このため、第2シール面213から第1被覆面471までのスラスト方向の距離である第1相対距離Dr1の測定精度が低下することがある。同様に、第1弁部材面201から第2被覆面472までの弁部材20の回転方向の距離である第2相対距離Dr2の測定精度が低下することがある。また、第3凹部側面532から第3被覆面473までのスラスト方向の距離である第3相対距離Dr3の測定精度が低下することがある。さらに、第2弁部材面202から第4被覆面474までの弁部材20の回転方向の距離である第4相対距離Dr4の測定精度が低下することがある。
【0119】
しかし、ここでは、弁部材20は、第1弁部材凹部510を有する。また、この第1弁部材凹部510の第1凹部側面512は、図16に示すように、第1凹部側面512に平行な第1被覆面471と同一方向を向いて露出している。これにより、レーザ等により面同士を捉えることができるため、第1凹部側面512から第1被覆面471までのスラスト方向の距離である第1測定用距離Dm1を精度良く測定することができる。このため、例えば、この比較的精度が高い第1測定用距離Dm1から、第1凹部側面512から第2シール面213までのスラスト方向の距離の設計値等を減算することにより、比較的精度が高い第1相対距離Dr1を算出できる。したがって、スラスト方向ずれΔDの精度を向上させることができる。
【0120】
同様に、第2凹部側面522は、第2凹部側面522に平行な第2被覆面472と同一方向を向いて露出している。これにより、第2測定用距離Dm2を精度良く測定することができる。このため、第2相対距離Dr2の精度を向上させることができ、回転方向ずれΔθの精度を向上させることができる。また、第3凹部側面532は、第3凹部側面532に平行な第3被覆面473と同一方向を向いて露出している。これにより、第3測定用距離Dm3を精度良く測定することができる。このため、第3相対距離Dr3の精度を向上させることができ、スラスト方向ずれΔDの精度を向上させることができる。さらに、第4凹部側面542は、第4凹部側面542に平行な第4被覆面474と同一方向を向いて露出している。これにより、第4測定用距離Dm4を精度良く測定することができる。このため、第4相対距離Dr4の精度を向上させることができ、回転方向ずれΔθの精度を向上させることができる。
【0121】
したがって、スラスト方向ずれΔDおよび回転方向ずれΔθの精度を向上させることができるため、弁部材20とシール部材40とを組み付けるときの弁部材20とシール部材40との位置関係の精度を向上させることができる。
【0122】
(他の実施形態)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0123】
(1)上記実施形態では、筒部32は、円筒状に形成されている。これに対して、筒部32は、円筒状であることに限定されない。筒部32は、例えば、多角筒状に形成されてもよい。
【0124】
(2)上記第2実施形態および第3実施形態では、凸部45は、弁室側被覆面412のうち筒部32の径方向内側に接続されている。これに対して、凸部45は、弁室側被覆面412のうち筒部32の径方向内側に接続されていることに限定されないで、弁室側被覆面412に接続されていればよい。例えば、凸部45は、図21に示すように、弁室側被覆面412のうち筒部32の径方向外側に接続されていてもよい。この場合、被覆段差面415と弁室側被覆面412とは別体になっている。このような形態においても、上記と同様の効果を奏する。
【0125】
(3)上記第2実施形態および第3実施形態では、シール部材40は、凸部45を1つ有する。シール部材40の凸部45の数は、1つに限定されないで、複数であってもよい。例えば、図22に示すように、シール部材40は、上記した第1側壁被覆部41、第1突出部42、第1弁室側被覆部411、第2側壁被覆部43、第2弁室側被覆部431および第2突出部44に加えて、第1凸部701および第2凸部702を有する。
【0126】
第1凸部701は、上記した凸部45と同様に形成されている。具体的には、第1凸部701は、第1凸面751および第1凸端部753を含む。ここでは、第1凸面751は、上記した凸面451に対応する。また、第1凸端部753は、上記した凸端部453に対応する。また、第1凸面751のうち弁座流路31側から弁座流路31とは反対側に沿う方向に延びており、第1凸端部753を通る直線を第1凸部仮想線Lc1とする。第1凸部仮想線Lc1は、上記した凸部仮想線Lcに対応する。
【0127】
第2凸部702は、第1凸面751に接続されている。また、第2凸部702は、第1凸面751から弁回転軸O側に向かって突出している。さらに、第2凸部702は、第2凸面761および第2凸端部763を含む。
【0128】
第2凸面761は、被覆面に対応しており、平面に形成されており、弁回転軸O側を向いている。
【0129】
また、ここでは、被覆段差面415は、弁室側被覆面412と第1凸面751と階段状に形成されており、第2凸面761に接続されている。また、被覆段差面415のうち第2凸面761と接続されている面は、第2凸面761に対して交差している。したがって、この被覆段差面415により、第2凸面761と第1突出部42との間には段差が形成されている。
【0130】
第2凸端部763は、被覆端部に対応しており、第2凸面761と被覆段差面415との境界部である。また、ここでは、被覆段差面415のうち第2凸面761と接続されている面と第2凸面761とが第2凸面761に対して交差しているため、第2凸端部763は、被覆段差面415と第2凸面761とで形成される角部になっている。
【0131】
ここで、筒部32の軸線CLを含んで筒部32の軸線CL方向に切ったときの断面において、第2凸面761のうち弁座流路31側から弁座流路31とは反対側に沿う方向に延びており、第2凸端部763を通る直線を第2凸部仮想線Lc2とする。そして、ここでは、第2凸部仮想線Lc2は、第1突出部42よりも、弁回転軸O側に位置している。すなわち、第1突出部42は、筒部32の軸線CLを含んで筒部32の軸線CL方向に切ったときの断面において、第2凸部仮想線Lc2を基準として弁回転軸Oとは反対側に位置している。
【0132】
このような形態においても、第2実施形態と同様の効果を奏する。なお、このような形態の場合、第1突出部42は、第1凸部仮想線Lc1上に位置してもよい。
【0133】
(4)上記第2実施形態および第3実施形態では、シール部材40の凸部45の凸面451は、平面に形成されている。これに対して、凸面451が平面であることに限定されないで、凸面451は、上記第4実施形態と同様に、弁回転軸Oとは反対側に凹む凹面を含んでもよい。
【0134】
(5)上記第4実施形態では、第1弁部材凹部510と第2弁部材凹部520とは、一体に形成されている。また、第3弁部材凹部530と第4弁部材凹部540とは、一体に形成されている。これに対して、図23に示すように、第1弁部材凹部510と第2弁部材凹部520とは、別体に形成されていてもよい。また、第3弁部材凹部530と第4弁部材凹部540とは、別体に形成されていてもよい。このような形態においても、上記と同様の効果を奏する。
【0135】
(6)上記第4実施形態では、第2弁部材凹部520および第4弁部材凹部540が形成されている。これに対して、第2弁部材凹部520および第4弁部材凹部540が形成されていなくてもよい。
【0136】
例えば、図24に示すように、第1弁部材凹部510は、上記した凹部底面511および凹部側面512に加えて、第1測定用面513を有する。第1測定用面513は、凹部底面511および凹部側面512に接続されており、被覆面472と同一方向を向いて露出している。これにより、レーザ等により面同士を捉えることができるため、上記した第2測定用距離Dm2に代えて、第1測定用面513から被覆面472までの弁部材20の回転方向の距離を精度良く測定することができる。このため、第2相対距離Dr2の精度を向上させることができるため、回転方向ずれΔθの精度を向上させることができる。よって、上記と同様の効果を奏する。
【0137】
また、第3弁部材凹部530は、上記した凹部底面531および凹部側面532に加えて、第2測定用面533を有する。第2測定用面533は、凹部底面531および凹部側面532に接続されており、被覆面474と同一方向を向いて露出している。これにより、上記と同様に、上記した第4測定用距離Dm4に代えて、第2測定用面533から被覆面474までの弁部材20の回転方向の距離を精度良く測定することができる。このため、第4相対距離Dr4の精度を向上させることができるため、よって、上記と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0138】
1 バルブ装置
10 ハウジング
11 弁室
14 収容空間
20 弁部材
30 弁座部材
31 弁座流路
40 シール部材
41 側壁被覆部
42 突出部
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