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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】電力変換器の制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231226BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020022528
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021129401
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】西端 幸一
(72)【発明者】
【氏名】蘭 明文
(72)【発明者】
【氏名】山村 雅紀
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502633(JP,A)
【文献】特開2012-253837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電部(24)と、
相の回転電機(10)と、
前記回転電機に電気的に接続された電力変換器(20)と、
前記蓄電部に接続されるとともに前記電力変換器と電源(30)とを接続する電気経路(22H,22L)と、
前記蓄電部に並列接続される放電抵抗体(26)及び放電スイッチ(27)の直列接続体と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、
前記電力変換器は、上,下アームスイッチ(SWH,SWL)の直列接続体を3相分有し、
3相それぞれにおいて、前記上,下アームスイッチの接続点と、前記回転電機の巻線(11)の第1端とが電気的に接続され、
3相それぞれにおいて、前記巻線の第2端が電気的に接続され、
前記上,下アームスイッチのゲートに供給する電力を生成する絶縁電源(80)と、
前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部(87)と、
前記蓄電部から給電されて電力を生成する異常用電源(90,160)と、
前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記異常用電源により生成された電力を用いて、前記システムに対する保護制御を行う保護制御部(91,120)と、を備え、
前記異常判定部は、前記異常が発生したと判定した場合に前記絶縁電源を停止させ、
前記異常用電源は、前記異常用電源を制御する制御部であって、前記蓄電部から給電されることにより動作可能に構成される電源制御部(90b)を有し、
前記電源制御部は、前記蓄電部から給電されて入力電圧が上昇し始めてから、該入力電圧が前記電源の電圧に到達するよりも前までの期間のうち、該入力電圧が規定電圧(Vα)に到達するタイミングで前記異常用電源を起動させ、
前記異常用電源は、前記蓄電部から供給される電圧の降下量を調整する電圧調整部(90a)を有し、
前記電源制御部は、前記電圧調整部を操作して電圧の降下量を調整することにより、前記異常用電源の出力電圧を制御し、
前記保護制御部は、前記保護制御として、
前記下アームスイッチ(SWL)又は前記上アームスイッチ(SWH)のいずれかをオン側スイッチとする場合、3相分の前記オン側スイッチをオン状態にする短絡制御と、
前記蓄電部から放電させるための前記放電スイッチの駆動制御である放電制御と、を実行可能であり、
前記保護制御部により前記短絡制御を正常に実施できるか否かと、前記保護制御部により前記放電制御を正常に実施できるか否かとを判定する保護判定部(60)と、
前記異常用電源を電力供給源として動作可能に構成され、3相分の前記オン側スイッチに対してオン駆動が指示されている場合における3相分の前記オン側スイッチの状態信号の検出結果を前記保護判定部に通知する通知部(130,112)と、を備え、
前記オン側スイッチの状態信号は、前記オン側スイッチのゲート電圧信号又は前記オン側スイッチの高電位側端子及び低電位側端子の間の電圧信号であり、
前記通知部は、3相分の前記オン側スイッチの状態信号の検出結果を通知する場合と前記放電スイッチの駆動に関わる信号の検出結果を通知する場合とで共通に用いられ、前記放電スイッチの駆動に関わる信号の検出結果を、3相分の前記オン側スイッチの状態信号の検出結果の通知期間とは重複しない期間において前記保護判定部に通知し、
前記保護判定部は、前記通知部により通知された3相分の前記オン側スイッチの状態信号の検出結果に基づいて、前記短絡制御を正常に実施できるか否かを判定し、前記通知部により通知された前記放電スイッチの駆動に関わる信号の検出結果に基づいて、前記放電制御を正常に実施できるか否かを判定する電力変換器の制御回路。
【請求項2】
電源(30)と、
蓄電部(24)と、
電気負荷(10)と、
前記電気負荷に電気的に接続された電力変換器(20)と、
前記電源と前記電力変換器とを接続する電気経路(22H,22L)と、
前記電気経路に設けられた遮断スイッチ(23a,23b)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、
前記蓄電部は、前記電気経路のうち前記遮断スイッチに対して前記電源とは反対側に接続され、
前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部(87)と、
前記蓄電部から給電されて電力を生成する異常用電源(90,160)と、
前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記異常用電源により生成された電力を用いて、前記システムに対する保護制御を行う保護制御部(91,120)と、を備え、
前記異常用電源は、前記異常用電源を制御する制御部であって、前記蓄電部から給電されることにより動作可能に構成される電源制御部(90b)を有し、
前記電源制御部は、前記蓄電部から給電されて入力電圧が上昇し始めてから、該入力電圧が前記電源の電圧に到達するよりも前までの期間のうち、該入力電圧が規定電圧(Vα)に到達するタイミングで前記異常用電源を起動させ、
前記異常用電源は、前記蓄電部から供給される電圧の降下量を調整する電圧調整部(90a)を有し、
前記電源制御部は、前記電圧調整部を操作して電圧の降下量を調整することにより、前記異常用電源の出力電圧を制御し、
前記保護制御部により前記保護制御を正常に実施できるか否かを判定する保護判定部(60)と、
前記異常用電源を電力供給源として動作可能に構成され、前記保護制御を正常に実施できるか否かの判定に用いられる信号を前記保護判定部に通知する通知部(130,112)と、を備え、
前記通知部は、前記遮断スイッチがオフ状態にされた状態で、前記異常用電源の入力電圧が、前記電源の電圧よりも低い所定値になったことを条件として、前記保護制御を正常に実施できるか否かの判定に用いられる信号を前記保護判定部に通知し、
前記保護判定部は、前記通知部により通知された信号に基づいて、前記保護制御を正常に実施できるか否かを判定する電力変換器の制御回路。
【請求項3】
前記電気負荷は、相の回転電機であり、
前記電力変換器は、上,下アームスイッチ(SWH,SWL)の直列接続体を3相分有し、
3相それぞれにおいて、前記上,下アームスイッチの接続点と、前記回転電機の巻線(11)の第1端とが電気的に接続され、
3相それぞれにおいて、前記巻線の第2端が電気的に接続され、
前記上,下アームスイッチのゲートに供給する電力を生成する絶縁電源(80)を備え、
前記異常判定部は、前記異常が発生したと判定した場合に前記絶縁電源を停止させ、
前記下アームスイッチ(SWL)又は前記上アームスイッチ(SWH)のいずれかをオン側スイッチとする場合、前記保護制御部(91)は、前記保護制御として、3相分の前記オン側スイッチをオン状態にする短絡制御を行う請求項2に記載の電力変換器の制御回路。
【請求項4】
前記回転電機を駆動制御するためのスイッチング指令を生成して出力するスイッチ指令生成部(60)と、
前記スイッチング指令に基づいて、前記上,下アームスイッチを駆動するスイッチ駆動部(81a,82a)と、を備え、
前記スイッチ駆動部を介さずに前記異常用電源から3相分の前記オン側スイッチのゲートに給電可能とされている請求項3に記載の電力変換器の制御回路。
【請求項5】
前記システムには、前記蓄電部に並列接続された放電抵抗体(26)及び放電スイッチ(27)の直列接続体が備えられ、
前記保護制御部(120)は、前記保護制御として、前記蓄電部から放電させるための前記放電スイッチの駆動制御である放電制御を行う請求項2に記載の電力変換器の制御回路。
【請求項6】
前記規定電圧は、前記電源制御部の起動電圧である請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換器の制御回路。
【請求項7】
蓄電部(24)と、
相の回転電機(10)と、
前記回転電機に電気的に接続された電力変換器(20)と、
前記蓄電部に接続されるとともに前記電力変換器と電源(30)とを接続する電気経路(22H,22L)と、
前記蓄電部に並列接続される放電抵抗体(26)及び放電スイッチ(27)の直列接続体と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、
前記電力変換器は、上,下アームスイッチ(SWH,SWL)の直列接続体を3相分有し、
3相それぞれにおいて、前記上,下アームスイッチの接続点と、前記回転電機の巻線(11)の第1端とが電気的に接続され、
3相それぞれにおいて、前記巻線の第2端が電気的に接続され、
前記上,下アームスイッチのゲートに供給する電力を生成する絶縁電源(80)と、
前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部(87)と、
前記蓄電部から給電されて電力を生成する異常用電源(90)と、
前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記異常用電源により生成された電力を用いて、前記システムに対する保護制御を行う保護制御部(91,120)と、を備え、
前記異常判定部は、前記異常が発生したと判定した場合に前記絶縁電源を停止させ、
前記異常用電源は、
前記蓄電部から供給される電圧の降下量を調整する電圧調整部(90a)と、
前記電圧調整部を操作して電圧の降下量を調整することにより、前記異常用電源の出力電圧を制御する電源制御部(90b)と、を有し、
前記下アームスイッチ(SWL)又は前記上アームスイッチ(SWH)のいずれかをオン側スイッチとする場合、前記保護制御部は、前記保護制御として、
3相分の前記オン側スイッチをオン状態にする短絡制御と、
前記蓄電部から放電させるための前記放電スイッチの駆動制御である放電制御と、を実行可能であり、
前記保護制御部により前記短絡制御を正常に実施できるか否かと、前記保護制御部により前記放電制御を正常に実施できるか否かとを判定する保護判定部(60)と、
前記異常用電源を電力供給源として動作可能に構成され、3相分の前記オン側スイッチに対してオン駆動が指示されている場合における3相分の前記オン側スイッチの状態信号の検出結果を前記保護判定部に通知する通知部(130,112)と、を備え、
前記オン側スイッチの状態信号は、前記オン側スイッチのゲート電圧信号又は前記オン側スイッチの高電位側端子及び低電位側端子の間の電圧信号であり、
前記通知部は、3相分の前記オン側スイッチの状態信号の検出結果を通知する場合と前記放電スイッチの駆動に関わる信号の検出結果を通知する場合とで共通に用いられ、前記放電スイッチの駆動に関わる信号の検出結果を、3相分の前記オン側スイッチの状態信号の検出結果の通知期間とは重複しない期間において前記保護判定部に通知し、
前記保護判定部は、前記通知部により通知された3相分の前記オン側スイッチの状態信号の検出結果に基づいて、前記短絡制御を正常に実施できるか否かを判定し、前記通知部により通知された前記放電スイッチの駆動に関わる信号の検出結果に基づいて、前記放電制御を正常に実施できるか否かを判定する電力変換器の制御回路。
【請求項8】
前記通知部は、前記放電スイッチの駆動に関わる信号の検出結果と、3相分の前記オン側スイッチの状態信号の検出結果とをパルス信号により前記保護判定部に通知する請求項7に記載の電力変換器の制御回路。
【請求項9】
前記回転電機を駆動制御するためのスイッチング指令を生成して出力するスイッチ指令生成部(60)と、
前記スイッチング指令に基づいて、前記上,下アームスイッチを駆動するスイッチ駆動部(81a,82a)と、
前記スイッチ駆動部を介さずに、前記異常用電源と3相分の前記オン側スイッチのゲートとを接続する充電経路と、
前記充電経路に設けられ、アノードを前記異常用電源側に向けた複数のダイオード(95)の並列接続体と、を備える請求項7又は8に記載の電力変換器の制御回路。
【請求項10】
電源(30)と、
蓄電部(24)と、
電気負荷(10)と、
前記電気負荷に電気的に接続された電力変換器(20)と、
前記電源と前記電力変換器とを接続する電気経路(22H,22L)と、
前記電気経路に設けられた遮断スイッチ(23a,23b)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、
前記蓄電部は、前記電気経路のうち前記遮断スイッチに対して前記電源とは反対側に接続され、
前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部(87)と、
前記蓄電部から給電されて電力を生成する異常用電源(90)と、
前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記異常用電源により生成された電力を用いて、前記システムに対する保護制御を行う保護制御部(91,120)と、を備え、
前記異常用電源は、
前記蓄電部から供給される電圧の降下量を調整する電圧調整部(90a)と、
前記電圧調整部を操作して電圧の降下量を調整することにより、前記異常用電源の出力電圧を制御する電源制御部(90b)と、を有し、
前記保護制御部により前記保護制御を正常に実施できるか否かを判定する保護判定部(60)と、
前記異常用電源を電力供給源として動作可能に構成され、前記保護制御を正常に実施できるか否かの判定に用いられる信号を前記保護判定部に通知する通知部(130,112)と、を備え、
前記通知部は、前記遮断スイッチがオフ状態にされた状態で、前記異常用電源の入力電圧が、前記電源の電圧よりも低い所定値になったことを条件として、前記保護制御を正常に実施できるか否かの判定に用いられる信号を前記保護判定部に通知し、
前記保護判定部は、前記通知部により通知された信号に基づいて、前記保護制御を正常に実施できるか否かを判定する電力変換器の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器の制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御回路としては、電源と、多相の回転電機と、回転電機の各相の巻線に電気的に接続された上下アームのスイッチを有する電力変換器とを備えるシステムに適用されるものが知られている。また、制御回路としては、システムに異常が発生したと判定した場合、上下アームのスイッチを強制的にオフ状態に切り替えるシャットダウン制御を行うものも知られている。シャットダウン制御が行われる場合において、回転電機を構成するロータの回転によって巻線に逆起電圧が発生していると、巻線の線間電圧が、上下アームのスイッチの直列接続体に並列接続される電源の電圧よりも高くなっていることがある。線間電圧が高くなる状況は、例えば、ロータの界磁磁束量が大きかったり、ロータの回転速度が高かったりする場合に発生し得る。
【0003】
巻線の線間電圧が電源の電圧よりも高くなる場合、シャットダウン制御が行われていたとしても、スイッチに逆並列に接続されたダイオード、巻線及び電源を含む閉回路に巻線で発生した誘起電流が流れるいわゆる回生が実施されることとなる。その結果、電力変換器の電源側の直流電圧が大きく上昇し、電源、電力変換器及び電源に接続された電力変換器以外の機器のうち少なくとも1つが故障する懸念がある。
【0004】
このような問題に対処すべく、特許文献1に記載されているように、上下アームのうちいずれか一方のアームにおけるスイッチをオン状態にし、他方のアームにおけるスイッチをオフ状態にする短絡制御を行う制御回路が知られている。詳しくは、この制御回路は、電源から給電されて電力を生成する異常用電源を備え、異常用電源により生成された電力を用いて短絡制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2013-506390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
システムに異常が発生した時点で短絡制御を行うための電力を異常用電源から確保できていないと、システムに異常が発生してから短絡制御を行うまでの時間が長くなり、システムを保護できなくなる懸念がある。
【0007】
なお、短絡制御に限らず、異常用電源により生成された電力を用いてシステムに対する保護制御を行う制御回路であれば、システムに異常が発生してから保護制御を行うまでの時間が長くなるといった問題は同様に発生し得る。また、この問題は、電力変換器に電気的に接続される回転電機を備えるシステムに限らず、電力変換器に電気的に接続される電気負荷を備えるシステムであれば同様に発生し得る。
【0008】
本発明は、システムに異常が発生してから保護制御を行うまでの時間を短縮できる電力変換器の制御回路を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、蓄電部と、
電気負荷と、
前記電気負荷に電気的に接続された電力変換器と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路において、
前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、
前記蓄電部から給電されて電力を生成する異常用電源と、
前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記異常用電源により生成された電力を用いて、前記システムに対する保護制御を行う保護制御部と、を備え、
前記異常用電源は、前記異常用電源を制御する制御部であって、前記蓄電部から給電されることにより動作可能に構成される電源制御部を有し、
前記電源制御部は、前記蓄電部から給電されて入力電圧が上昇し始めてから、該入力電圧が前記蓄電部の電圧に到達するよりも前までの期間のうち、該入力電圧が規定電圧に到達するタイミングで前記異常用電源を起動させる。
【0010】
本発明では、蓄電部から給電されることにより動作可能に構成され、異常用電源を制御する電源制御部が備えられている。電源制御部は、蓄電部から給電されて入力電圧が上昇し始めてから、その入力電圧が蓄電部の電圧に到達するよりも前までの期間のうち、その入力電圧が規定電圧に到達するタイミングで異常用電源を起動させる。この起動により、異常用電源は電力を出力可能な状態とされ、保護制御部は、システムの保護制御を行うための電力を異常用電源から確保できるようになる。このため、その後、異常判定部によりシステムに異常が発生したと判定された場合において、保護制御部により保護制御が迅速に行われる。以上説明した本発明によれば、システムに異常が発生してから保護制御を行うまでの時間を短縮することができる。これにより、電力変換器や電力変換器に接続された機器をより安全に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る制御システムの全体構成図。
図2】制御回路及びその周辺構成を示す図。
図3】上,下アームドライバ及びその周辺構成を示す図。
図4】制御回路及びその周辺構成を示す図。
図5】OR回路、電源停止部及びそれらの周辺構成を示す図。
図6】3相短絡制御の処理手順を示すフローチャート。
図7】3相短絡制御の一例を示すタイムチャート。
図8】放電指令及び駆動指令の推移の一例を示すタイムチャート。
図9】チェック信号等の推移を示すタイムチャート。
図10】放電制御及び3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定処理の手順を 示すフローチャート。
図11】放電制御及び3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定処理の手順を 示すフローチャート。
図12】ASCチェック処理の手順を示すフローチャート。
図13】放電制御及び3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定処理の一例を 示すタイムチャート。
図14制御回路への入力電圧等の推移を示すタイムチャート。
図15】第2実施形態に係る制御回路及びその周辺構成を示す図。
図16】放電制御及び3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定処理の一例を 示すタイムチャート。
図17】第3実施形態に係る上,下アームドライバ及びその周辺構成を示す図。
図18】3相短絡制御の処理手順を示すフローチャート。
図19】その他の実施形態に係る異常用電源を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御回路を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る制御回路は、電力変換器としての3相インバータに適用される。本実施形態において、インバータを備える制御システムは、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載される。
【0013】
図1に示すように、制御システムは、回転電機10及びインバータ15を備えている。回転電機10は、車載主機であり、そのロータが図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、回転電機10として、同期機が用いられており、より具体的には、永久磁石同期機が用いられている。
【0014】
インバータ15は、スイッチングデバイス部20を備えている。スイッチングデバイス部20は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備えている。各相において、上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点には、回転電機10の巻線11の第1端が接続されている。各相巻線11の第2端は、中性点で接続されている。各相巻線11は、電気角で互いに120°ずらされて配置されている。ちなみに、本実施形態では、各スイッチSWH,SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的には、IGBTが用いられている。上,下アームスイッチSWH,SWLには、フリーホイールダイオードである上,下アームダイオードDH,DLが逆並列に接続されている。
【0015】
各上アームスイッチSWHの高電位側端子であるコレクタには、高電位側電気経路22Hを介して、高圧電源30の正極端子が接続されている。各下アームスイッチSWLの低電位側端子であるエミッタには、低電位側電気経路22Lを介して、高圧電源30の負極端子が接続されている。本実施形態において、高圧電源30は、2次電池であり、その出力電圧(定格電圧)が例えば百V以上である。
【0016】
高電位側電気経路22Hには、第1遮断スイッチ23aが設けられ、低電位側電気経路22Lには、第2遮断スイッチ23bが設けられている。各スイッチ23a,23bは、例えば、リレー又は半導体スイッチング素子である。ここで、各スイッチ23a,23bは、制御回路50によって駆動されてもよいし、図示しない上位ECUによって駆動されてもよい。上位ECUは、制御回路50に対して上位の制御装置である。
【0017】
インバータ15は、「蓄電部」としての平滑コンデンサ24を備えている。平滑コンデンサ24は、高電位側電気経路22Hのうち第1遮断スイッチ23aよりもスイッチングデバイス部20側と、低電位側電気経路22Lのうち第2遮断スイッチ23bよりもスイッチングデバイス部20側とを電気的に接続している。
【0018】
制御システムは、車載電気機器25を備えている。電気機器25は、例えば、電動コンプレッサ及びDCDCコンバータのうち少なくとも一方を含む。電動コンプレッサは、車室内空調装置を構成し、車載冷凍サイクルの冷媒を循環させるべく、高圧電源30から給電されて駆動される。DCDCコンバータは、高圧電源30の出力電圧を降圧して車載低圧負荷に供給する。低圧負荷は、図2に示す低圧電源31を含む。本実施形態において、低圧電源31は、その出力電圧(定格電圧)が高圧電源30の出力電圧(定格電圧)よりも低い電圧(例えば12V)の2次電池であり、例えば鉛蓄電池である。
【0019】
インバータ15は、放電抵抗体26と、図4に示す放電スイッチ27とを備えている。放電抵抗体26及び放電スイッチ27は直列接続されている。この直列接続体は、高電位側電気経路22Hのうち第1遮断スイッチ23aよりもスイッチングデバイス部20側と、低電位側電気経路22Lのうち第2遮断スイッチ23bよりもスイッチングデバイス部20側とを電気的に接続している。詳しくは、放電スイッチ27の高電位側端子であるドレインは、放電抵抗体26の一端に接続され、放電スイッチ27の低電位側端子であるソースは、低電位側電気経路22Lに接続されている。放電スイッチ27は、インバータ15が備える制御回路50からの指示により駆動される。
【0020】
続いて、図2を用いて、制御回路50の構成について説明する。制御回路50は、入力回路61、中間電源回路62及び第1~第5低圧電源回路63~67を備えている。入力回路61には、ヒューズ32及び電源スイッチ33を介して低圧電源31の正極端子が接続されている。低圧電源31の負極端子には、接地部位としてのグランドが接続されている。
【0021】
制御システムは、角度センサ41を備えている。角度センサ41は、回転電機10の電気角に応じた角度信号を出力する。角度センサ41は、例えば、レゾルバ、エンコーダ又は磁気抵抗効果素子を有するMRセンサであり、本実施形態ではレゾルバである。
【0022】
中間電源回路62は、入力回路61の出力電圧VBを降圧することにより、中間電圧Vm(例えば6V)を生成する。第1低圧電源回路63は、中間電源回路62の出力電圧Vmを降圧することにより、第1電圧V1r(例えば5V)を生成する。第2低圧電源回路64は、第1低圧電源回路63から出力された第1電圧V1rを降圧することにより、第2電圧V2r(例えば3.3V)を生成する。第3低圧電源回路65は、第1低圧電源回路63から出力された第1電圧V1rを降圧することにより、第3電圧V3rを生成する。本実施形態において、第3電圧V3rは、第2電圧V2rよりも低い電圧(例えば1.2V)とされている。
【0023】
第4低圧電源回路66は、入力回路61の出力電圧VBを降圧することにより、第4電圧V4r(例えば5V)を生成する。本実施形態において、第4電圧V4rは、第1電圧V1rと同じ値である。第5低圧電源回路67は、入力回路61の出力電圧VBを昇圧することにより、第5電圧V5r(例えば30V)を生成する。入力回路61、各電源回路62~67及びマイコン60は、制御回路50の低圧領域に設けられている。
【0024】
制御回路50は、励磁回路71、FBインターフェース部72及びレゾルバデジタルコンバータ73を備えている。励磁回路71は、第5低圧電源回路67の第5電圧V5rが供給されることにより動作可能に構成されている。励磁回路71は、角度センサ41を構成するレゾルバステータに正弦波状の励磁信号を供給する。レゾルバステータから出力された角度信号は、FBインターフェース部72を介してレゾルバデジタルコンバータ73に入力される。FBインターフェース部72及びレゾルバデジタルコンバータ73は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。レゾルバデジタルコンバータ73は、FBインターフェース部72からの角度信号に基づいて、回転電機10の電気角を算出する。算出された電気角は、マイコン60に入力される。マイコン60は、入力された電気角に基づいて、回転電機10の電気角速度を算出する。
【0025】
なお、励磁回路71、FBインターフェース部72及びレゾルバデジタルコンバータ73は、制御回路50の低圧領域に設けられている。
【0026】
マイコン60は、CPUと、それ以外の周辺回路とを備えている。周辺回路には、例えば、外部と信号をやり取りするための入出力部と、AD変換部とが含まれている。マイコン60には、第1低圧電源回路63の第1電圧V1r、第2低圧電源回路64の第2電圧V2r及び第3低圧電源回路65の第3電圧V3rが供給される。
【0027】
制御回路50は、電圧センサ77、過電圧検出部78及び状態判定部79を備えている。電圧センサ77は、高電位側電気経路22H及び低電位側電気経路22Lに電気的に接続され、入力回路61の出力電圧VB及び第5低圧電源回路67の第5電圧V5rが供給されることにより動作可能に構成されている。電圧センサ77は、平滑コンデンサ24の端子電圧を検出する。電圧センサ77の検出値は、マイコン60及び過電圧検出部78に入力される。
【0028】
過電圧検出部78は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。過電圧検出部78は、電圧センサ77により検出された平滑コンデンサ24の端子電圧VHdがその上限電圧を超えているか否かを判定する。過電圧検出部78は、その端子電圧が上限電圧を超えていると判定した場合、マイコン60及び状態判定部79に対して過電圧信号を出力する。
【0029】
状態判定部79は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。また、本実施形態において、状態判定部79は、ロジック回路で構成されている。電圧センサ77、過電圧検出部78及び状態判定部79は、制御回路50の低圧領域に設けられている。
【0030】
制御システムは、始動スイッチ28を備えている。始動スイッチ28は、例えばイグニッションスイッチ又はプッシュ式のスタートスイッチであり、車両のユーザにより操作される。上位ECUは、始動スイッチ28がオン状態に切り替えられたと判定した場合、電源スイッチ33をオン状態に切り替える。これにより、低圧電源31から制御回路50への給電が開始される。一方、上位ECUは、始動スイッチ28がオフ状態に切り替えられたと判定した場合、電源スイッチ33をオフ状態に切り替える。具体的には、上位ECUは、始動スイッチ28がオフ状態に切り替えられたと判定した場合、所定の終了シーケンス処理の後、電源スイッチ33をオフ状態に切り替える。これにより、低圧電源31から制御回路50への給電が停止される。
【0031】
マイコン60は、回転電機10の制御量をその指令値に制御すべく、スイッチングデバイス部20の各スイッチSWH,SWLに対するスイッチング指令を生成する。制御量は、例えばトルクである。マイコン60は、角度センサ41の出力信号等に基づいて、スイッチング指令を生成する。スイッチング指令は、スイッチのオン駆動を指示するオン指令又はスイッチのオフ駆動を指示するオフ指令のいずれかである。なお、マイコン60は、各相において、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとが交互にオン状態にされるようなスイッチング指令を生成する。また、本実施形態において、マイコン60が「スイッチ指令生成部」を含む。
【0032】
制御回路50は、絶縁電源80、上アームドライバ81及び下アームドライバ82を備えている。本実施形態において、上アームドライバ81は、各上アームスイッチSWHに対応して個別に設けられ、下アームドライバ82は、各下アームスイッチSWLに対応して個別に設けられている。このため、ドライバ81,82は合わせて6つ設けられている。
【0033】
絶縁電源80は、入力回路61から供給された電圧に基づいて、上アームドライバ81に供給する上アーム駆動電圧VdHと、下アームドライバ82に供給する下アーム駆動電圧VdLとを生成して出力する。絶縁電源80及び各ドライバ81,82は、制御回路50において、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。具体的には、絶縁電源80は、3相の上アームドライバ81それぞれに対して個別に設けられた上アーム絶縁電源と、3相の下アームドライバ82に共通の下アーム絶縁電源とを備えている。本実施形態では、各上アーム絶縁電源と下アーム絶縁電源とが共通の制御部により制御される。なお、下アーム絶縁電源は、3相の下アームドライバ82それぞれに対して個別に設けられていてもよい。
【0034】
続いて、図3を用いて、上,下アームドライバ81,82について説明する。
【0035】
上アームドライバ81は、「スイッチ駆動部」としての上アーム駆動部81aと、上アーム絶縁伝達部81bとを備えている。上アーム駆動部81aは、高圧領域に設けられている。上アーム絶縁伝達部81bは、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。上アーム絶縁伝達部81bは、低圧領域及び高圧領域の間を電気的に絶縁しつつ、マイコン60から出力されたスイッチング指令を上アーム駆動部81aに伝達する。上アーム絶縁伝達部81bは、例えば、フォトカプラ又は磁気カプラである。
【0036】
上アームドライバ81のうち、上アーム駆動部81a、及び上アーム絶縁伝達部81bの高圧領域側の構成等は、絶縁電源80の上アーム駆動電圧VdHが供給されることにより動作可能に構成されている。上アームドライバ81のうち、上アーム絶縁伝達部81bの低圧領域側の構成等は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。
【0037】
上アーム駆動部81aは、入力されたスイッチング指令がオン指令である場合、上アームスイッチSWHのゲートに充電電流を供給する。これにより、上アームスイッチSWHのゲート電圧が閾値電圧Vth以上となり、上アームスイッチSWHがオン状態とされる。一方、上アーム駆動部81aは、入力されたスイッチング指令がオフ指令である場合、上アームスイッチSWHのゲートからエミッタ側へと放電電流を流す。これにより、上アームスイッチSWHのゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、上アームスイッチSWHがオフ状態とされる。
【0038】
上アーム駆動部81aは、自身及び上アームスイッチSWHの少なくとも一方に異常が発生している旨の情報であるフェール信号Sgfailと、上アームスイッチSWHの温度Tswdの情報とを、上アーム絶縁伝達部81bを介してマイコン60に伝達する。上アームスイッチSWHの異常には、過熱異常、過電圧異常及び過電流異常の少なくとも1つが含まれる。
【0039】
下アームドライバ82は、「スイッチ駆動部」としての下アーム駆動部82aと、下アーム絶縁伝達部82bとを備えている。本実施形態において、各ドライバ81,82の構成は基本的には同じである。このため、以下では、下アームドライバ82の詳細な説明を適宜省略する。
【0040】
下アームドライバ82のうち、下アーム駆動部82a、及び下アーム絶縁伝達部82bの高圧領域側の構成等は、絶縁電源80の下アーム駆動電圧VdLが供給されることにより動作可能に構成されている。下アームドライバ82のうち、下アーム絶縁伝達部82bの低圧領域側の構成等は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。
【0041】
下アーム駆動部82aは、入力されたスイッチング指令がオン指令である場合、下アームスイッチSWLのゲートに充電電流を供給する。これにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧が閾値電圧Vth以上となり、下アームスイッチSWLがオン状態とされる。一方、下アーム駆動部82aは、入力されたスイッチング指令がオフ指令である場合、下アームスイッチSWLのゲートからエミッタ側へと放電電流を流す。これにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、下アームスイッチSWLがオフ状態とされる。
【0042】
下アーム駆動部82aは、自身又は下アームスイッチSWLの少なくとも一方に異常が発生している旨の情報であるフェール信号Sgfailと、下アームスイッチSWLの温度Tswdの情報とを、下アーム絶縁伝達部82bを介してマイコン60に伝達する。下アームスイッチSWLの異常には、過熱異常、過電圧異常及び過電流異常の少なくとも1つが含まれる。
【0043】
図2の説明に戻り、制御回路50は、フェール検知部83を備えている。フェール検知部83は、低圧領域に設けられ、各ドライバ81,82からのフェール信号Sgfailが入力されるようになっている。本実施形態において、フェール検知部83は、各ドライバ81,82のいずれかからフェール信号Sgfailが入力された場合、論理Hの異常信号SgFをマイコン60及び状態判定部79に出力する。一方、フェール検知部83は、各ドライバ81,82からフェール信号Sgfailが入力されない場合、論理Lの異常信号SgFをマイコン60及び状態判定部79に出力する。
【0044】
制御回路50は、低圧側ASC指令部84、監視部85、OR回路86、及び「異常判定部」としての電源停止部87を備えている。低圧側ASC指令部84、監視部85、OR回路86及び電源停止部87は、低圧領域に設けられている。監視部85は、入力回路61の出力電圧VBが供給されることにより動作可能に構成され、電源停止部87は、第4低圧電源回路66の第4電圧V4rが供給されることにより動作可能に構成されている。
【0045】
低圧側ASC指令部84は、状態判定部79から低圧側ASC指令CmdASCが入力された場合、3相分の下アームドライバ82に入力されるスイッチング指令を、マイコン60から出力されるスイッチング指令にかかわらず強制的にオン指令にする。
【0046】
図4を用いて、制御回路50のうち高圧領域の構成について説明する。
【0047】
制御回路50は、異常用電源90と、「保護制御部」としての高圧側ASC指令部91とを備えている。高圧側ASC指令部91には、絶縁電源80の下アーム駆動電圧VdLが供給されるようになっている。
【0048】
異常用電源90は、平滑コンデンサ24の出力電圧VHが供給されることにより異常用駆動電圧Vepsを生成する。本実施形態において、異常用電源90は、シリーズ電源であり、「電圧調整部」としての制御スイッチ90aと、制御スイッチ90aの駆動制御を行う電源制御部90bとを備えている。本実施形態において、制御スイッチ90aはNチャネルMOSFETである。異常用電源90の入力側(具体的には、制御スイッチ90aのドレイン側)には、平滑コンデンサ24の高電位側が接続されている。電源制御部90bは、異常用電源90の出力側(具体的には、制御スイッチ90aのソース側)から出力される異常用駆動電圧Vepsがその目標電圧に制御されるように制御スイッチ90aのゲート電圧を操作する。
【0049】
電源制御部90bは、平滑コンデンサ24から給電されて自身の入力電圧が上昇し始めてから、その入力電圧が平滑コンデンサ24の出力電圧に到達するよりも前の期間のうち、その入力電圧が規定電圧Vαに到達するタイミングで異常用電源90を起動させる。本実施形態において、異常用電源90の起動とは、電源制御部90bが異常用駆動電圧Vepsを目標電圧に制御し始めることである。この制御が開始されることにより、異常用駆動電圧Vepsが目標電圧に向かって上昇し始める。規定電圧Vαに到達するタイミングで異常用電源90を起動させることにより、異常用電源90の異常用駆動電圧Vepsが早期に制御可能な状態とされる。本実施形態では、規定電圧Vαが電源制御部90bの起動電圧に設定されている。
【0050】
なお、電源制御部90bが抵抗体及びツェナーダイオード等で構成され、制御スイッチ90aのゲートが制御される場合、入力電圧とは、例えば、抵抗体及びツェナーダイオード等で構成される電源制御部に入力される電圧のことである。
【0051】
制御回路50の高圧領域において、下アーム駆動部82aと下アームスイッチSWLのゲートとを接続するゲート充電経路には、第1規制ダイオード92が設けられている。第1規制ダイオード92は、アノードが下アーム駆動部82a側に接続された状態で設けられている。なお、図4では、下アームスイッチSWLのゲート放電経路の図示を省略している。
【0052】
制御回路50は、異常用スイッチ93を備えている。異常用スイッチ93は、異常用電源90の出力側と、共通経路94とを接続する。共通経路94には、各第2規制ダイオード95を介して各下アームスイッチSWLのゲートが接続されている。第2規制ダイオード95は、アノードが共通経路94側に接続された状態で設けられている。第2規制ダイオード95は、下アーム駆動部82aから下アームスイッチSWLのゲートに対して出力された充電電流が共通経路94側に流れるのを防止するためのものである。本実施形態では、各下アームスイッチSWLのゲートに対して複数の第2規制ダイオード95の並列接続体が設けられている。図2には、各下アームスイッチSWLのゲートに対して2つの第2規制ダイオード95の並列接続体が設けられる例を示す。
【0053】
続いて、図5を用いて、OR回路86、電源停止部87及びその周辺構成について説明する。OR回路86は、第1~第4抵抗体86a~86d及び第1,第2スイッチ86e,86fを備えている。第1抵抗体86aの第1端には、マイコン60と、第2抵抗体86bの第1端とが接続されている。第2抵抗体86bの第2端は、グランドに接続されている。第1抵抗体86aの第2端には、第3抵抗体86cを介して監視部85に接続されている。
【0054】
第4抵抗体86dの第1端には、第4低圧電源回路66が接続され、第4抵抗体86dの第2端には、第1スイッチ86eを介してグランドが接続されている。第1スイッチ86eのベースには監視部85からの第1判定信号Sg1が供給される。第1抵抗体86aの第2端には、第2スイッチ86fを介してグランドが接続されている。第2スイッチ86fのベースには、第4抵抗体86dと第1スイッチ86eとの接続点が接続されている。
【0055】
マイコン60は、自己監視機能を有している。マイコン60は、自身に異常が発生していないと判定した場合、第2判定信号Sg2の論理をHにする。この場合、OR回路86の出力信号である異常通知信号FMCUの論理がHになる。一方、マイコン60は、自身に異常が発生していると判定した場合、第2判定信号Sg2の論理をLにする。この場合、異常通知信号FMCUの論理がLになる。
【0056】
監視部85は、マイコン60に異常が発生しているか否かを監視する機能を有し、例えば、ウォッチドックカウンタ(WDC)又はファンクションウォッチドックカウンタ(F-WDC)で構成されている。監視部85は、マイコン60に異常が発生していないと判定した場合、第1判定信号Sg1の論理をLにする。この場合、第1,第2スイッチ86e,86fがオフ状態に維持され、異常通知信号FMCUの論理がHになる。一方、監視部85は、マイコン60に異常が発生していると判定した場合、第1判定信号Sg1の論理をHにする。この場合、第1,第2スイッチ86e,86fがオン状態に切り替えられ、異常通知信号FMCUの論理がLにされる。
【0057】
異常通知信号FMCUは、電源停止部87に入力される。電源停止部87は、異常検知回路87aと、切替スイッチ87bとを備えている。切替スイッチ87bの第1端には、グランドが接続され、切替スイッチ87bの第2端には、制御回路50が備える第1,第2分圧抵抗体96a,96bの接続点が接続されている。第1,第2分圧抵抗体96a,96bの直列接続体の第1端には、入力回路61が接続され、この直列接続体の第2端には、グランドが接続されている。第1,第2分圧抵抗体96a,96bの接続点には、絶縁電源80のUVLO端子が接続されている。絶縁電源80の制御部は、この接続点に入力される電圧である判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回ったと判定した場合、絶縁電源80を停止させる低電圧誤動作防止処理を実施する。一方、絶縁電源80の制御部は、入力された判定電圧Vjinが、低電圧閾値VUVLOよりも高い解除閾値(<VB)を超えたと判定した場合、低電圧誤動作防止処理を停止し、絶縁電源80の動作を再開させる。
【0058】
異常検知回路87aは、第4低圧電源回路66の第4電圧V4rが供給されることにより動作可能に構成されている。異常検知回路87aは、異常通知信号FMCUの論理がHであると判定した場合、切替スイッチ87bをオフ状態にする。この場合、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLO以上とされる。一方、異常検知回路87aは、異常通知信号FMCUの論理がLであると判定した場合、切替スイッチ87bをオン状態にする。この場合、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLO未満となり、低電圧誤動作防止処理が実施される。この処理が実施されると、絶縁電源80は停止され、上アーム駆動電圧VdH及び下アーム駆動電圧VdLは0Vに向かって徐々に低下し始める。
【0059】
本実施形態では、従来ではシャットダウン状態となるような制御回路50内の異常が発生した場合であっても、3相短絡制御(ASC:Active Short Circuit)が実施可能となっている。シャットダウン状態とは、3相分の上,下アームスイッチSWH,SWLがオフ状態になることである。ここで、制御回路50内の異常には、マイコン60の異常と、中間電源回路62及び第1~第3低圧電源回路63~65の少なくとも1つの異常と、マイコン60から上,下アームドライバ81,82へとスイッチング指令を正常に伝達できなくなる異常と、絶縁電源80から電圧を出力できなくなる異常とが含まれる。絶縁電源80から電圧を出力できなくなる異常には、絶縁電源80の異常と、低圧電源31から絶縁電源80に給電できなくなる異常とが含まれる。ここで、低圧電源31から絶縁電源80に給電できなくなる異常は、例えば、入力回路61等、低圧電源31から絶縁電源80までの電気経路が断線することで発生する。また、下アームドライバ82を例に説明すると、スイッチング指令を正常に伝達できなくなる異常には、マイコン60から下アーム絶縁伝達部82bまでの信号経路が断線する異常が含まれる。なお、上述した異常は、例えば車両の衝突により発生する。
【0060】
図6を用いて、制御回路50内に異常が発生した場合に実施される3相短絡制御について説明する。
【0061】
ステップS10では、電源停止部87の異常検知回路87aは、入力される異常通知信号FMCUの論理がLであるか否かを判定する。マイコン60から出力される第2判定信号Sg2の論理がLの場合、又は監視部85から出力される第1判定信号Sg1の論理がHの場合、異常通知信号FMCUの論理がLとなる。中間電源回路62やマイコン60の電源となる第1~第3低圧電源回路63~65に異常が発生した場合にも、マイコン60から出力される第2判定信号Sg2の論理がLとなる。
【0062】
異常検知回路87aは、異常通知信号FMCUの論理がLであると判定した場合、切替スイッチ87bをオン状態に切り替える。これにより、絶縁電源80のUVLO端子に入力される判定電圧Vjinがグランド電位である0Vに向かって低下する。
【0063】
ステップS11では、絶縁電源80の電源制御部は、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回るまで待機する。電源制御部は、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回ったと判定した場合、ステップS12において、低電圧誤動作防止処理を行い、絶縁電源80を停止させる。これにより、絶縁電源80から出力される上,下アーム駆動電圧VdH,VdLは0Vに向かって低下し始める。
【0064】
ステップS13では、高圧側ASC指令部91は、絶縁電源80から出力される下アーム駆動電圧VdLを検出し、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、異常用スイッチ93をオン状態に切り替える。これにより、異常用電源90から、異常用スイッチ93、共通経路94及び第2規制ダイオード95を介して各下アームスイッチSWLのゲートへと異常用駆動電圧Vepsが直接供給され始める。
【0065】
具体的には、高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過してから異常用スイッチ93をオン状態に切り替える。これは、上下アーム短絡の発生を防止するためである。
【0066】
例えば、高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、検出した下アーム駆動電圧VdLが所定電圧Vpを下回ったと判定した場合に異常用スイッチ93をオン状態に切り替えてもよい。ここで、所定電圧Vpは、上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過したことを判定できる値に設定され、例えば、上記閾値電圧Vthと同じ値又は閾値電圧Vth未満の値に設定されていればよい。
【0067】
また、例えば、高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めてから所定期間経過したタイミングで異常用スイッチ93をオン状態に切り替えてもよい。ここで、上記所定期間は、上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過したことを判定できる値に設定されていればよい。
【0068】
異常用スイッチ93がオン状態に切り替えられることにより、3相分の下アームスイッチSWLがオン状態にされる。つまり、3相分の「オン側スイッチ」としての下アームスイッチSWLがオン状態にされる。また、上アーム駆動部81aに供給される上アーム駆動電圧VdHの低下により、3相分の「オフ側スイッチ」としての上アームスイッチSWHがオフ状態にされる。その結果、ステップS14において3相短絡制御が実施される。
【0069】
図7を用いて、図6の処理についてさらに説明する。図7(a)はマイコン60の異常の有無の推移を示し、図7(b)は監視部85から出力される第1判定信号Sg1の推移を示し、図7(c)は異常通知信号FMCUの推移を示し、図7(d)は絶縁電源80の動作状態の推移を示す。図7(e),(f)は絶縁電源80から出力される上,下アーム駆動電圧VdH,VdLの推移を示し、図7(g)は異常用スイッチ93の駆動状態の推移を示し、図7(h)は各相の下アームスイッチSWLの駆動状態の推移を示す。また、図7(i)は異常用電源90の異常用駆動電圧Vepsの推移を示す。
【0070】
時刻t1において、マイコン60の異常が発生する。このため、時刻t2において、監視部85から出力される第1判定信号Sg1の論理がHに反転し、時刻t3において、異常通知信号FMCUの論理がLに反転する。その結果、切替スイッチ87bがオン状態に切り替えられ、絶縁電源80の低電圧誤動作防止処理が実施される。これにより、時刻t4において、絶縁電源80が停止され、上,下アーム駆動電圧VdH,VdLが低下し始める。
【0071】
下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、時刻t4から上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過した時刻t5において、高圧側ASC指令部91により異常用スイッチ93がオン状態に切り替えられる。図7に示す時間帯にわたって、異常用駆動電圧Vepsが目標電圧に制御されているため、異常用スイッチ93のオン状態への切り替えにより、異常用電源90から各下アームスイッチSWLのゲートに電力が供給され始める。このため、時刻t6において3相分の下アームスイッチSWLがオン状態にされる。ここで、十分な期間が経過したか否かは、上述したように、例えば、検出された下アーム駆動電圧VdLが所定電圧Vpを下回ったか否か、又は下アーム駆動電圧VdLが低下し始めてから所定期間経過したか否かで判定されればよい。
【0072】
なお、低圧電源31に異常が発生したり、入力回路61に異常が発生したり、低圧電源31と制御回路50とを電気的に接続する給電経路が断線したり、絶縁電源80に異常が発生したりする場合にも、ステップS11~S14の処理により、3相短絡制御が行われる。つまり、この場合、低電圧誤動作防止処理により絶縁電源80が停止され、上,下アーム駆動電圧VdH,VdLが0Vに向かって低下し、3相短絡制御が行われる。
【0073】
また、過電圧異常が発生した場合にも、3相短絡制御が実施される。詳しくは、状態判定部79は、過電圧検出部78から過電圧信号が入力されたか否かを判定する。状態判定部79は、過電圧信号が入力されたと判定した場合、低圧側ASC指令部84に対して低圧側ASC指令CmdASCを出力する。
【0074】
低圧側ASC指令部84は、低圧側ASC指令CmdASCが入力された場合、3相分の上アームドライバ81に入力されるスイッチング指令を、マイコン60から出力されるスイッチング指令にかかわらず強制的にオフ指令にするシャットダウン指令CmdSDNを出力する。また、低圧側ASC指令部84は、3相分の下アームドライバ82に入力されるスイッチング指令を、マイコン60から出力されるスイッチング指令にかかわらず強制的にオン指令にする。これにより、3相短絡制御が実施される。
【0075】
先の図4の説明に戻り、制御回路50は、「保護制御部」としての放電処理部120を備えている。放電処理部120は、制御回路50の高圧領域に設けられ、放電スイッチ27の駆動による平滑コンデンサ24の放電制御を実施するための構成である。
【0076】
放電処理部120は、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及びドライブ回路123を備えている。入力インターフェース部121及びパルス指令生成部122は、制御回路50の高圧領域に備えられる駆動電源140の駆動電圧Vsbが供給されることにより動作可能に構成されている。駆動電源140は、異常用電源90から供給される電力により駆動電圧Vsbを生成する。駆動電源140は、例えば、異常用電源90の異常用駆動電圧Vepsを降圧することにより、駆動電圧Vsb(例えば5V)を生成する。
【0077】
ドライブ回路123は、異常用電源90の異常用駆動電圧Vepsが供給されることにより動作可能に構成されている。このため、低圧電源31から制御回路50へと給電できなくなる異常が発生した場合であっても、放電スイッチ27の駆動制御が可能となっている。
【0078】
制御回路50は、入力側絶縁伝達部110を備えている。入力側絶縁伝達部110は、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。入力側絶縁伝達部110は、低圧領域及び高圧領域の間を電気的に絶縁しつつ、マイコン60から出力された放電指令CmdADを入力インターフェース部121に伝達する。入力側絶縁伝達部110は、例えば、フォトカプラ又は磁気カプラである。入力側絶縁伝達部110の高圧領域側の構成は、例えば、絶縁電源80の下アーム駆動電圧VdLが供給されることにより動作可能に構成されている。入力側絶縁伝達部110の低圧領域側の構成は、例えば、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。
【0079】
パルス指令生成部122は、入力インターフェース部121を介して入力される放電指令CmdADと、後述する発振器133の出力信号とに基づいて、ドライブ回路123に出力する駆動指令SgGを生成する。本実施形態では、パルス指令生成部122は、図8に示すように、放電指令CmdADが入力されている期間において、複数のオンパルス指令が含まれる駆動指令SgGを生成する。ここで、オンパルス指令が複数用いられるのは、第1,第2遮断スイッチ23a,23bに対してオフ指令がなされているにもかかわらず第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオン状態である状況において、平滑コンデンサ24の放電制御が実施される場合に備えるためである。この状況は、例えば、第1,第2遮断スイッチ23a,23bに対してオフ指令がなされてから第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオフ状態に切り替えられるまでのオフ遅延時間が長くなる場合に発生する。
【0080】
第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオン状態である場合に放電スイッチ27がオン状態にされると、平滑コンデンサ24から放電させることができず、また、高圧電源30から放電抵抗体26に連続的に直流電流が流れる。その結果、放電抵抗体26の発熱量が大きくなり、放電抵抗体26が故障し得る。この問題に対処するには、抵抗値の大きな放電抵抗体26が必要となる。しかしながら、この場合、放電抵抗体26が大型化してしまう。
【0081】
このような問題に対処すべく、複数のオンパルス指令が含まれる駆動指令SgGが用いられる。このような駆動指令SgGにより、駆動指令SgGにオフ指令期間を含ませることができる。その結果、第1,第2遮断スイッチ23a,23bに対してオフ指令がなされているにもかかわらず、第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオン状態である状況に平滑コンデンサ24の放電制御が実施される場合であっても、平滑コンデンサ24に対する放電要求を満足させつつ放電抵抗体26を極力安全状態に維持できる。
【0082】
図8(b)に、本実施形態に係る駆動指令SgGの推移を示す。Tgonは、オンパルス指令のパルス幅を示し、Tgoffは、隣り合うオンパルス指令の時間間隔を示す。また、Tdisは、パルス継続期間Tdisであり、1回目のオンパルス指令から最後のオンパルス指令までの期間である。パルス継続期間Tdisは、例えば、想定される上記オフ遅延時間に基づいて設定され、具体的には、想定されるオフ遅延時間の最大値よりも長い値に設定されればよい。また、パルス継続期間Tdisは、平滑コンデンサ24の通常放電期間よりも長い期間に設定されている。本実施形態において、通常放電期間は、パルス指令生成部122から1回目のオンパルス指令が出力されてから、そのオンパルス指令に従って放電スイッチ27がオン状態にされることにより平滑コンデンサ24の放電が完了する場合において、1回目のオンパルス指令が出力されてから平滑コンデンサ24の放電が完了するまでの期間(具体的には例えば、想定されるこの期間の最大値)である。なお、発振器133の出力信号の周期は、例えばパルス幅Tgоnよりも短い周期に設定されていればよい。
【0083】
パルス幅Tgonは、放電指令CmdADが出力されて放電制御が開始されてから平滑コンデンサ24の放電が完了するまでの時間と、放電抵抗体26の発熱量とに関係する。オンパルス指令の時間間隔Tgoffは、放電抵抗体26の温度低下の調整に関係する。パルス幅Tgon及び時間間隔Tgoffは、例えば、平滑コンデンサ24の容量、高圧電源30の電圧、放電要求時間、及び放電抵抗体26の熱設計に基づいて設定されればよい。放電要求時間は、放電制御が開始されてから平滑コンデンサ24の放電の完了までに要求される時間であり、具体的には例えば、放電制御が開始されてから、平滑コンデンサ24の電圧が低下して所定の電圧に到達するまでの時間の要求値である。
【0084】
図4の説明に戻り、ドライブ回路123は、入力された駆動指令SgGがオン指令である場合、放電スイッチ27のゲートに充電電流を供給する。これにより、放電スイッチ27のゲート電圧がその閾値電圧以上となり、放電スイッチ27がオン状態とされる。一方、ドライブ回路123は、入力された駆動指令SgGがオフ指令である場合、放電スイッチ27のゲートから放電電流を流す。これにより、放電スイッチ27のゲート電圧がその閾値電圧未満となり、放電スイッチ27がオフ状態とされる。
【0085】
制御回路50は、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認するための構成として、第1ダイオード111a、動作検出部130、出力側絶縁伝達部112及び復調部113を備えている。また、制御回路50は、放電スイッチ27の駆動による平滑コンデンサ24の放電制御を正常に実施できるか否かを確認するための構成として、第2ダイオード111b、動作検出部130、出力側絶縁伝達部112及び復調部113を備えている。つまり、本実施形態では、動作検出部130、出力側絶縁伝達部112及び復調部113が、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認するための構成と、放電制御を正常に実施できるか否かを確認するための構成とで共通化されている。なお、本実施形態において、動作検出部130及び出力側絶縁伝達部112が「通知部」に相当する。
【0086】
第1ダイオード111aは、アノードが共通経路94に接続された状態で設けられている。第1ダイオード111aは、放電スイッチ27のゲート電圧が共通経路94側に伝達されるのを防止するためのものである。第2ダイオード111bは、カソードが放電スイッチ27のゲートに接続された状態で設けられている。第2ダイオード111bは、異常用電源90から共通経路94へと供給された異常用駆動電圧Vepsが放電スイッチ27のゲート側に伝達されるのを防止するためのものである。
【0087】
動作検出部130は、コンパレータ131、変調部132及び発振器133を備えている。コンパレータ131は、異常用電源90の異常用駆動電圧Vepsが供給されることにより動作可能に構成され、変調部132は、駆動電源140の駆動電圧Vsbが供給されることにより動作可能に構成されている。
【0088】
コンパレータ131の非反転入力端子には、第1ダイオード111a及び第2ダイオード111bそれぞれのカソードが接続されている。コンパレータ131の反転入力端子には、基準電圧Vrefが入力されている。
【0089】
変調部132は、コンパレータ131の出力信号Soutと発振器133の出力信号とに基づいて、図9に示すように、コンパレータ131の出力信号の変調信号であるチェック信号Sgcheckを出力する。
【0090】
出力側絶縁伝達部112は、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。出力側絶縁伝達部112は、低圧領域及び高圧領域の間を電気的に絶縁しつつ、変調部132から出力されたチェック信号Sgcheckを、低圧領域に設けられた復調部113に伝達する。出力側絶縁伝達部112は、例えば、フォトカプラ又は磁気カプラである。出力側絶縁伝達部112の高圧領域側の構成は、例えば、絶縁電源80の下アーム駆動電圧VdLが供給されることにより動作可能に構成されている。出力側絶縁伝達部112の低圧領域側の構成は、例えば、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。図9に示すように、チェック信号Sgcheckがパルス信号とされることにより、出力側絶縁伝達部112における消費電流を低減できる。その結果、出力側絶縁伝達部112の電力供給源となる異常用電源90の出力電流の低減を図っている。
【0091】
復調部113は、入力されたチェック信号Sgcheckの復調信号Sginを生成してマイコン60に出力する。
【0092】
本実施形態では、3相短絡制御を正常に実施できるか否かの確認と、平滑コンデンサ24の放電制御を正常に実施できるか否かの確認とが時期をずらして実施される。これは、上述したように、動作検出部130、出力側絶縁伝達部112及び復調部113が、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認するための構成と、放電制御を正常に実施できるか否かを確認するための構成とで共通化されているためである。
【0093】
まず、3相短絡制御を正常に実施できるか否かの確認方法について説明する。
【0094】
コンパレータ131は、その非反転入力端子に入力された電圧が基準電圧Vrefよりも大きい場合に論理Hの信号を出力し、入力された電圧が基準電圧Vref未満の場合に論理Lの信号を出力する。基準電圧Vrefは、例えば、下アームスイッチSWLの閾値電圧、又は下アームスイッチSWLの閾値電圧よりも高くてかつ異常用駆動電圧Vepsよりも低い値に設定されている。
【0095】
変調部132は、コンパレータ131の出力信号Soutを変調してチェック信号Sgcheckとして出力し、復調部113は、入力されたチェック信号Sgcheckを復調して復調信号Sginを出力する。マイコン60は、異常用スイッチ93がオン状態にされている場合において、入力された復調信号Sginに基づいて、コンパレータ131の出力信号Soutの論理がHであると判定した場合、異常用駆動電圧Vepsが異常用スイッチ93、共通経路94及び第2規制ダイオード95を介して下アームスイッチSWLのゲートに供給されていると判定する。つまり、マイコン60は、3相短絡制御を正常に実施できると判定する。
【0096】
続いて、放電制御を正常に実施できるか否かの確認方法について説明する。
【0097】
マイコン60は、入力された復調信号Sginに基づいて、入力側絶縁伝達部110、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及びドライブ回路123が正常であるか否かを判定する。本実施形態において、正常であるか否かは、以下(A)~(C)の条件で判定される。
【0098】
(A)駆動指令SgGがオン指令に切り替わったことに伴い放電スイッチ27がオン状態に切り替わり、駆動指令SgGがオフ指令に切り替わったことに伴い放電スイッチ27がオフ状態に切り替わること。
【0099】
(B)オンパルス指令のパルス幅Tgonと、放電スイッチ27がオン状態とされる期間とが同等であること。
【0100】
(C)パルス継続期間Tdisにおいて駆動指令SgGに含まれるオンパルス指令の数と、各オンパルス指令に従った放電スイッチ27のオン回数とが等しいこと。
【0101】
本実施形態において、マイコン60は、復調信号Sginに基づいて、上記(A)~(C)の条件が成立していると判定した場合、入力側絶縁伝達部110、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及びドライブ回路123が正常であると判定する。一方、マイコン60は、上記(A)~(C)の条件のうち少なくとも1つの条件が成立していないと判定した場合、入力側絶縁伝達部110、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及びドライブ回路123のうち少なくとも1つが正常でないと判定する。以下、この判定方法の具体例について説明する。
【0102】
コンパレータ131は、その非反転入力端子に入力されたゲート電圧Vgsが基準電圧Vrefよりも大きい場合に論理Hの信号を出力し、入力されたゲート電圧Vgsが基準電圧Vref未満の場合に論理Lの信号を出力する。基準電圧Vrefは、例えば、放電スイッチ27の閾値電圧、又は放電スイッチ27の閾値電圧よりも高くてかつ異常用駆動電圧Vepsよりも低い値に設定されている。マイコン60は、放電指令CmdADを出力する期間においてパルス指令生成部122から出力される駆動指令SgGの推移を予め把握している。
【0103】
上記(A)の条件について説明すると、マイコン60は、復調信号Sginの論理がLに切り替わってから第1判定期間内に復調信号Sginの論理がHに切り替わったと判定した場合、駆動指令SgGがオン指令に切り替わったことに伴い放電スイッチ27がオン状態に切り替わったと判定し、その第1判定期間内に復調信号Sginの論理がHに切り替わらないと判定した場合、駆動指令SgGがオン指令に切り替わったにもかかわらず放電スイッチ27がオン状態に切り替わらないと判定する。第1判定期間は、例えば、パルス幅Tgonよりも長くて、かつ、パルス幅Tgon及び時間間隔Tgoffの合計期間「Tgon+Tgoff」以下の値に設定され、具体的には上記合計期間に設定されればよい。
【0104】
また、マイコン60は、復調信号Sginの論理がHに切り替わってから第2判定期間内に復調信号Sginの論理がLに切り替わったと判定した場合、駆動指令SgGがオフ指令に切り替わったことに伴い放電スイッチ27がオフ状態に切り替わったと判定し、その第2判定期間内に復調信号Sginの論理がLに切り替わらないと判定した場合、駆動指令SgGがオフ指令に切り替わったにもかかわらず放電スイッチ27がオン状態に切り替わらないと判定する。第2判定期間は、例えば、時間間隔Tgoffよりも長くて、かつ、パルス幅Tgon及び時間間隔Tgoffの合計期間以下の値に設定され、具体的には上記合計期間に設定されればよい。
【0105】
上記(B)の条件について説明すると、マイコン60は、入力された復調信号Sginの論理がHとなる期間と、オンパルス指令のパルス幅Tgonとが同等であると判定した場合、上記(B)の条件が成立していると判定する。
【0106】
上記(C)の条件について説明すると、マイコン60は、入力された復調信号Sginに基づいて、パルス継続期間Tdisにおいて駆動指令SgGに含まれるオンパルス指令の数と、パルス継続期間Tdisにおいてチェック信号Sgcheckの論理がHに切り替わる回数とが等しいと判定した場合、上記(C)の条件が成立していると判定する。
【0107】
図10図12を用いて、放電制御及び3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認する処理の手順について説明する。
【0108】
図10に示すように、ステップS20では、制御システムの起動指令がなされる。本実施形態では、始動スイッチ28がオン状態にされたと上位ECUが判定した場合、上位ECUが電源スイッチ33をオン状態に切り替えることをもって制御システムの起動指令がなされるとする。ステップS21では、第1遮断スイッチ23a及び第2遮断スイッチ23bがオン状態に切り替えられる。
【0109】
ステップS22では、制御回路50の制御準備が完了するまで待機する。制御準備が完了したと判定された場合、ステップS23に進み、マイコン60は、通常制御を開始する。通常制御とは、例えば、回転電機10の制御量をその指令値に制御するためのスイッチング指令を生成して出力する制御のことである。
【0110】
本実施形態では、通常制御が開始されてから制御システムが停止されるまでの1トリップにおいて、平滑コンデンサ24の放電制御が正常に実施できるか否かの確認と、3相短絡制御が正常に実施できるか否かの確認とが1回実施される。1トリップ中においては、任意のタイミングでその確認を実施できる。マイコン60は、例えば、1トリップ中のうち通常制御の開始とともに、放電指令CmdADをパルス指令生成部122に対して出力して上記確認を行う。
【0111】
ステップS24では、マイコン60は、復調部113から出力された復調信号Sginに基づいて、上述した(A)~(C)の条件を用いる方法により、入力側絶縁伝達部110、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及びドライブ回路123が正常であるか否かを判定する。例えば、ドライブ回路123から放電スイッチ27のゲートに電圧を出力できなくなる異常が発生した場合、コンパレータ131の出力信号Soutの論理がLに固定されるため、復調信号Sginの論理がLに固定される。この場合、マイコン60は、入力側絶縁伝達部110、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及びドライブ回路123の少なくとも1つに異常が発生したと判定する。
【0112】
マイコン60は、ステップS24において正常であると判定した場合には、ステップS25に進み、通常制御を継続する。
【0113】
本実施形態では、通常制御と並行して、平滑コンデンサ24の放電制御が正常に実施できるか否かの確認が実施される。これに対し、通常制御の終了後、第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオフ状態に切り替えられた後にこの確認が実施される場合、以下に説明する不都合が発生し得る。
【0114】
つまり、第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオフ状態にされると、高圧電源30と平滑コンデンサ24とが電気的に遮断される。この場合、異常用電源90及び駆動電源140の電力供給源は、高圧電源30ではなく平滑コンデンサ24となる。
【0115】
ここで、放電制御により放電スイッチ27がオン状態にされると、平滑コンデンサ24から放電され、異常用電源90及び駆動電源140の電力供給源がなくなる。その結果、異常用電源90からドライブ回路123及びコンパレータ131へと異常用駆動電圧Vepsを供給できず、また、駆動電源140から入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及び変調部132へと駆動電圧Vsbを供給できなくなる。これにより、ドライブ回路123、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及び変調部132が動作できなくなる。
【0116】
ここで、駆動指令SgGに複数のオンパルス指令が含まれる場合において、1回目のオンパルス指令に従った放電スイッチ27のオンにより平滑コンデンサ24の放電が完了し得る。この場合、ドライブ回路123、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及び変調部132が動作できなくなることから、2回目以降のオンパルス指令に従って放電スイッチ27が意図どおりに駆動しているか否かを確認することができなくなってしまう。
【0117】
この点、本実施形態では、通常制御と並行して、平滑コンデンサ24の放電制御が正常に実施できるか否かの確認が実施される。つまり、第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオン状態にされた状況で放電制御が正常に実施できるか否かの確認が実施される。このため、高圧電源30を電力供給源として異常用電源90及び駆動電源140を動作させることができ、ドライブ回路123、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及び変調部132を動作させることができる。これにより、2回目以降のオンパルス指令に従って放電スイッチ27が意図どおりに駆動しているか否かを確認することができる。
【0118】
なお、平滑コンデンサ24の放電制御が正常に実施できるか否かの確認は、高圧電源30の電圧が所定以上であることを条件に実施されてもよい。これは、放電制御により放電スイッチ27がオン状態にされると、高圧電源30から放電抵抗体26へと電流が流れ、高圧電源30の電力を消費してしまうことに鑑みたものである。
【0119】
ちなみに、マイコン60は、ステップS24において正常に実施できないと判定した場合、ステップS26に進み、その旨をユーザに通知する警告表示処理を行い、また、車両の走行モードを退避走行モードに切り替える。ステップS27では、マイコン60は、スイッチングデバイス部20により巻線11に電流を流して平滑コンデンサ24の放電を実施する。そして、ステップS28では、第1遮断スイッチ23a及び第2遮断スイッチ23bがオフ状態に切り替えられ、その後ステップS29に進む。
【0120】
ステップS29では、マイコン60は、発生した異常内容をマイコン60が備える記憶部としてのメモリ60aに記憶する。メモリ60aは、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。そして、ステップS30では、上位ECUにより電源スイッチ33がオフ状態に切り替えられる。これにより、低圧電源31から制御回路50への給電が停止される。
【0121】
図11に示すように、通常制御が実施される状況下、ステップS41では、制御システムの停止指令がなされたか否かが判定される。本実施形態では、始動スイッチ28がオフ状態にされたと上位ECUが判定したことをもって停止指令がなされたとする。
【0122】
ステップS41において否定判定された場合には、マイコン60は、通常制御を継続する。
【0123】
一方、ステップS41において肯定判定された場合、上位ECUは、マイコン60に対してその後の終了シーケンスの実施を指示する。詳しくは、ステップS42~S46において、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認する処理が行われる。
【0124】
ステップS42では、マイコン60は、回転電機10の停止処理を行う。本実施形態では、始動スイッチ28がオフ状態にされたと上位ECUが判定した場合、上位ECUがマイコン60に対してこの停止処理の実行指示を行う。
【0125】
マイコン60は、回転電機10の停止処理を行った後、ステップS43において、回転電機10のロータの回転が停止するまで待機する。ここで、ロータの回転が停止したか否かは、例えば電気角速度に基づいて判定すればよい。
【0126】
ロータの回転が停止したとマイコン60により判定された場合には、ステップS44に進み、ASCチェック処理が実施される。図12に、ASCチェック処理の手順を示す。
【0127】
ステップS60では、マイコン60は、監視部85からのマイコン60のリセットを無効にした上で、自身に異常が発生していると監視部85が判定する動作を意図的に行う。ステップS60の処理は、絶縁電源80の停止をトリガとして下アームスイッチSWLにオン駆動を指示するための処理である。
【0128】
ステップS61では、監視部85は、マイコン60に異常が発生していると判定し、第1判定信号Sg1の論理をHにする。その結果、異常通知信号FMCUの論理がLにされる。異常検知回路87aは、異常通知信号FMCUの論理がLであると判定した場合、切替スイッチ87bをオン状態にする。これにより、絶縁電源80のUVLO端子に入力される判定電圧Vjinが0Vに向かって低下する。
【0129】
ステップS62では、絶縁電源80の制御部は、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回るまで待機する。絶縁電源80の制御部は、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回ったと判定した場合、ステップS63において、低電圧誤動作防止処理を行い、絶縁電源80を停止させる。これにより、絶縁電源80から出力される上,下アーム駆動電圧VdH,VdLは0Vに向かって低下し始める。
【0130】
ステップS64では、高圧側ASC指令部91は、絶縁電源80から出力される下アーム駆動電圧VdLを検出し、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、異常用スイッチ93をオン状態に切り替える。なお、ステップS64における異常用スイッチ93のオン状態への切り替えタイミングは、先の図6のステップS13における異常用スイッチ93のオン状態への切り替えタイミングと同様のタイミングであればよい。
【0131】
図11の説明に戻り、ステップS45では、マイコン60は、入力された復調信号Sginに基づいて、上述した方法を用いて、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできるか否かを判定する。詳しくは、マイコン60は、復調信号Sginに基づいて、下アームスイッチSWLの状態信号であるチェック信号Sgcheckの論理がHであると判定した場合、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできると判定し、チェック信号Sgcheckの論理がLであると判定した場合、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできないと判定する。
【0132】
マイコン60は、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできないと判定した場合には、3相短絡制御を正常に実施できないと判定し、ステップS46に進む。ステップS46では、ASCチェック処理において正常に実施できなかった旨の情報をメモリ60aに記憶する。その後、ステップS47に進む。
【0133】
一方、マイコン60は、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできると判定した場合には、3相短絡制御を正常に実施できると判定し、ステップS47に進む。ステップS47では、第1遮断スイッチ23a及び第2遮断スイッチ23bがオフ状態に切り替えられる。
【0134】
ステップS48では、マイコン60は、パルス指令生成部122に対して放電指令CmdADを出力する。パルス指令生成部122は、放電指令CmdADが入力される期間において、先の図8(b)に示した駆動指令SgGをドライブ回路123に対して出力する。そして、この駆動指令SgGに基づいて放電スイッチ27の駆動制御が行われ、平滑コンデンサ24の放電が実施される。
【0135】
ステップS49では、マイコン60は、放電制御の実施により平滑コンデンサ24の端子電圧が0に向かって低下する期間において、電圧センサ77により検出された平滑コンデンサ24の端子電圧VHdに基づいて、放電抵抗体26を用いた平滑コンデンサ24の放電が正常に実施されているか否かを判定する。詳しくは、マイコン60は、検出された平滑コンデンサ24の端子電圧VHdの低下態様と、平滑コンデンサ24の放電が正常に実施される場合の平滑コンデンサ24の端子電圧の低下態様とが同等であると判定した場合、平滑コンデンサ24の放電が正常に実施されている、つまり、ドライブ回路123、放電スイッチ27及び放電抵抗体26が正常であると判定する。
【0136】
一方、マイコン60は、検出された平滑コンデンサ24の端子電圧VHdの低下態様と、平滑コンデンサ24の放電が正常に実施される場合の平滑コンデンサ24の端子電圧の低下態様とが同等でないと判定した場合、平滑コンデンサ24の放電が正常に実施されていない、つまり、ドライブ回路123、放電スイッチ27及び放電抵抗体26の少なくとも1つが正常でないと判定する。マイコン60は、先の図10のステップS24と、ステップS49とのそれぞれにおいて正常であると判定することにより、放電制御を正常に実施できると判定する。
【0137】
先の図10のステップS24において放電制御が正常であるか否かを確認することに加え、ステップS49において放電制御が正常であるか否かを確認するのは、以下に説明する理由のためである。
【0138】
ステップS24の確認処理では、マイコン60からの放電指令CmdADをトリガとして、パルス指令生成部122からドライブ回路123に駆動指令SgGが出力される。そして、放電スイッチ27のゲート電圧Vgsに基づく復調信号Sginがマイコン60に入力される。このため、復調信号Sginは、マイコン60からドライブ回路123を介して放電スイッチ27のゲートまでの経路が正常であるか否かを把握できるパラメータとなる。
【0139】
ただし、ゲート電圧Vgsに基づく復調信号Sginの推移が駆動指令SgGの推移と同等であったとしても、必ずしも放電スイッチ27が駆動指令SgGどおりにオン状態及びオフ状態になっていることを担保できない。
【0140】
そこで、本実施形態では、ステップS49において、電圧センサ77により検出された平滑コンデンサ24の端子電圧VHdに基づいて、放電抵抗体26を用いた平滑コンデンサ24の放電が正常に実施されているか否かが確認される。平滑コンデンサ24の端子電圧VHdの低下態様と、平滑コンデンサ24の放電が正常に実施される場合の平滑コンデンサ24の端子電圧の低下態様とが同等の場合、放電スイッチ27が駆動指令SgGどおりにオン状態及びオフ状態になっていると考えられる。したがって、ステップS24の処理に加え、ステップS49の処理を実施することにより、放電制御を正常に実施できるか否かの判定精度を高めることができる。なお、本実施形態において、ステップS24、S45,S49の処理が「保護判定部」を構成する。
【0141】
なお、ステップS49の処理により平滑コンデンサ24の放電が完了すると、異常用電源90及び駆動電源140は電力を出力できなくなる。このため、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122、ドライブ回路123、コンパレータ131及び変調部132は動作できなくなる。また、本実施形態では、第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオフ状態に切り替えられた状況でステップS49の処理が実施されると、1回目のオンパルス指令に従った放電スイッチ27のオンにより、平滑コンデンサ24の放電が完了する。
【0142】
ステップS50では、マイコン60は、ステップS24,S49の少なくとも一方で正常でないと判定した場合において、発生した異常内容をメモリ60aに記憶する。
【0143】
所定の終了シーケンスが完了すると、ステップS51では、上位ECUにより電源スイッチ33がオフ状態に切り替えられる。これにより、低圧電源31から制御回路50への給電が停止される。
【0144】
図13を用いて、図10図12の処理態様について説明する。図13(a)は低圧電源31から制御回路50への入力電圧の推移を示し、図13(b)は平滑コンデンサ24の端子電圧VHの推移を示し、図13(c)は第1~第3低圧電源回路63~65の出力電圧の推移を示す。なお、第1~第3低圧電源回路63~65それぞれの出力電圧の推移は実際には異なるが、図13(c)ではその推移を簡略化して示している。
【0145】
また、図13(d)はマイコン60の動作状態の推移を示し、図13(e)は上,下アーム駆動電圧VdH,VdLの推移を示し、図13(f)は異常用駆動電圧Vepsの推移を示し、図13(g)は異常用スイッチ93の駆動状態の推移を示す。図13(h)は放電指令CmdADの推移を示し、図13(i)はスイッチングデバイス部20の動作状態の推移を示し、図13(j)は平滑コンデンサ24の放電制御に係る構成の動作状態の推移を示し、図13(k)は動作検出部130の動作状態の推移を示す。
【0146】
図13に示す例では、通常制御中の時刻t1~t3において、放電制御が正常に実施できるか否かの確認処理が実施される。詳しくは、時刻t1において、この確認処理が開始された後、時刻t2~t3において、上述した(A)~(C)の条件を用いる方法により、入力側絶縁伝達部110、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及びドライブ回路123が正常であるか否かを判定する処理が実施される。
【0147】
正常であると判定されることにより、時刻t3以降において通常制御が継続される。その後、時刻t4において、制御システムの停止指令がなされたと判定され、回転電機10の停止処理が開始される。その後、回転電機10のロータの回転が停止すると、時刻t5からステップS44のASCチェック処理が開始される。この処理が開始されると、まず、マイコン60に異常が発生していると監視部85が判定するような動作をマイコン60が意図的に実施することにより、その後、絶縁電源80の制御部により低電圧誤動作防止処理が実施され、絶縁電源80が停止させられる。これにより、絶縁電源80から出力される上,下アーム駆動電圧VdH,VdLは、時刻t5において低下し始める。高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、時刻t6において異常用スイッチ93をオン状態に切り替える。
【0148】
その後、時刻t7において、3相分の下アームスイッチSWLがオン状態に切り替えられるため、マイコン60は、3相短絡制御を正常に実施できると判定する。
【0149】
その後、時刻t8において、第1遮断スイッチ23a及び第2遮断スイッチ23bがオフ状態に切り替えられ、時刻t9~t11において、平滑コンデンサ24の放電制御が正常に実施できるか否かの確認処理が実施される。詳しくは、この確認処理は、検出された平滑コンデンサ24の端子電圧VHdの規定時間における低下態様と、平滑コンデンサ24の放電が正常に実施される場合の平滑コンデンサ24の端子電圧の規定時間における低下態様とが同等であるか否かを判定する処理である。同等であると判定された場合、ドライブ回路123、放電スイッチ27及び放電抵抗体26が正常であると判定される。この確認処理による判定結果と、時刻t2~t3において実施された放電制御の確認処理による判定結果とを組み合わせることにより、平滑コンデンサ24の放電制御に係る構成全体が正常に動作することを担保できる。
【0150】
なお、時刻t9~t10においては、3相短絡制御と平滑コンデンサ24の放電制御とが同時実施され、動作検出部130による動作状態のモニタも実施されるが、3相短絡制御及び放電制御それぞれを正常に実施できるか否かの確認は実施されない。3相短絡制御を正常に実施できるか否かの確認と、放電制御を正常に実施できるか否かの確認とは、上述したように、別々のタイミングで実施される。ちなみに、時刻t9から、放電制御の実施により平滑コンデンサ24の端子電圧VHが低下し始めることに伴い、時刻t10において、異常用駆動電圧Vepsが低下し始める。
【0151】
その後、時刻t11において、異常用スイッチ93がオフ状態に切り替えられ、また、放電制御を正常に実施できるか否かを確認する処理が完了する。その後、上位ECUにより電源スイッチ33がオフ状態に切り替えられる。これにより、低圧電源31から制御回路50への給電が停止され、時刻t12において、第1~第3低圧電源回路63~65の出力電圧が低下し始める。これにより、時刻t13において、マイコン60の動作が停止される。
【0152】
14(a)~(j)は、先の図13(a)~(j)に対応している。
【0153】
電源スイッチ33がオン状態に切り替えられることにより、低圧電源31から制御回路50に給電される。その結果、時刻t1において、第1~第3低圧電源回路63~65の出力電圧が0から上昇し始める。また、第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオン状態に切り替えられることにより、平滑コンデンサ24の端子電圧VHが0から上昇し始める。
【0154】
その後、平滑コンデンサ24の端子電圧が上昇し始めた後、その端子電圧VHが高圧電源30の出力電圧になるタイミングよりも前の時刻t2において、平滑コンデンサ24の端子電圧VHが規定電圧Vαに到達する。つまり、異常用電源90を構成する電源制御部90bの入力電圧が規定電圧Vα(具体的には、電源制御部90bの起動電圧)に到達する。これにより、異常用電源90の出力電圧が制御可能な状態となる。その後、時刻t3において、マイコン60が起動し、時刻t4において、マイコン60による通常制御が開始される。
【0157】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0158】
電源制御部90bは、平滑コンデンサ24から給電されて入力電圧が上昇し始めてから、その入力電圧が平滑コンデンサ24の出力電圧に到達するよりも前までの期間のうち、その入力電圧が規定電圧Vαに到達するタイミングで異常用電源90を起動させる。この起動により、異常用電源90の出力電圧が制御可能な状態となり、3相短絡制御を実施するための電力を異常用電源90から確保できるようになる。このため、その後、制御システムの異常が発生した場合において、3相短絡制御を迅速に実施することができる。このため、平滑コンデンサ24に過電圧が発生すること等を好適に防止できる。また、制御システムの異常が発生した場合において、平滑コンデンサ24の放電制御を迅速に実施することもできる。
【0159】
異常用電源90と下アームスイッチSWLのゲートとが、下アーム駆動部82aを介すことなく、異常用スイッチ93、共通経路94及び第2規制ダイオード95を介して接続されている。この構成によれば、制御システムに異常が発生した場合において、下アーム駆動部82aの動作なしで3相短絡制御を行うことができる。これにより、3相短絡制御を行う場合において、下アーム駆動部82aの消費電力を低減でき、異常用電源90の出力電流を低減できる。その結果、異常用電源90の発熱を低減することができる。
【0160】
異常用電源90としてシリーズ電源が用いられる。この構成によれば、異常用電源90の出力電圧の制御のためのインダクタ等が不要となり、異常用電源90の構成を簡素化でき、ひいては異常用電源90のコストを低減できる。
【0161】
コンパレータ131は、第2ダイオード111bを介して入力される放電スイッチ27のゲート電圧Vgsに基づいて、放電制御を正常に実施できるか否かを判定するためのコンパレータ131の出力信号Soutを出力する。また、コンパレータ131は、第1ダイオード111aを介して入力される下アームスイッチSWLのゲート電圧Vgeに基づいて、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを判定するためのコンパレータ131の出力信号Soutを出力する。コンパレータ131の出力信号Soutは、変調部132、出力側絶縁伝達部112及び復調部113を介してマイコン60に入力される。
【0162】
この構成によれば、放電スイッチ27のゲート電圧Vgsに関する信号と下アームスイッチSWLのゲート電圧Vgeに関する信号とが共通の動作検出部130によりマイコン60に通知される。このため、放電スイッチ27のゲート電圧Vgsに関する信号と下アームスイッチSWLのゲート電圧Vgeに関する信号とが個別の動作検出部によりマイコン60に通知される構成と比較して、動作検出部130、及び出力側絶縁伝達部112の高圧領域側の構成で消費される電力を低減でき、異常用電源90の出力電流を低減できる。その結果、異常用電源90の発熱量を低減できる。
【0163】
また、動作検出部130が共通化されているため、動作検出部130は、放電制御を正常に実施できるか否かを判定するためのコンパレータ131の出力信号Soutを変調部132、出力側絶縁伝達部112及び復調部113を介してマイコン60に通知する期間以外の期間に、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを判定するためのコンパレータ131の出力信号Soutを変調部132、出力側絶縁伝達部112及び復調部113を介してマイコン60に通知する。以上説明した構成によれば、各制御を正常に実施できるか否かの判定に用いる信号をマイコン60に適正に通知しつつ、異常用電源90の発熱量を低減できる。
【0164】
本実施形態では、異常用駆動電圧Vepsが生成される場合において平滑コンデンサ24の端子電圧に対する異常用電源90の出力電圧の差が大きい。この場合、異常用電源90の過熱異常を防止するために、異常用電源90の出力電流を小さくすることが要求される。このため、異常用電源90の出力電流を小さくできる動作検出部130及び出力側絶縁伝達部112の共通化のメリットが大きい。
【0165】
動作検出部130は、3相短絡制御及び放電制御それぞれを正常に実施できるか否かを判定するためのコンパレータ131の出力信号Soutを、変調部132によりパルス信号に変換して出力する。その結果、出力側絶縁伝達部112の高圧領域側の構成のオン期間を減らすこと等ができ、動作検出部130及び出力側絶縁伝達部112の高圧領域側の構成の消費電力を低減できる。これにより、異常用電源90の発熱を低減することができる。また、上述したように、異常用電源90の出力電流を小さくすることが要求されるため、パルス信号を用いてマイコン60に通知する構成を採用するメリットが大きい。
【0166】
下アームスイッチSWLのゲートからの電流逆流防止のために第2規制ダイオード95が設けられている。ここで、第2規制ダイオード95のオープン異常が発生することがある。この場合、第2規制ダイオード95が1つしか設けられていないと、ASCチェック処理において、異常用電源90の出力電力が下アームスイッチSWLのゲートに供給されない。つまり、コンパレータ131の非反転入力端子の入力電圧が異常用駆動電圧Vepsになっているにもかかわらず、下アームスイッチSWLのゲートには実際には電力が供給されていない。その結果、下アームスイッチSWLをオン状態にできない異常が発生していたとしても、3相短絡制御を正常に実施できるとマイコン60により誤判定されることとなる。そこで、本実施形態では、複数の第2規制ダイオード95の並列接続体を介して、共通経路94と下アームスイッチSWLのゲートとが接続されている。このため、各第2規制ダイオード95のうちいずれかにオープン異常が発生する場合であっても、共通経路94と下アームスイッチSWLのゲートとの間の電流流通経路を確保でき、上述した誤判定の発生を防止できる。
【0167】
<第1実施形態の変形例>
・3相短絡制御を正常に実施できるか否かを判定する処理に先立ち、放電制御を正常に実施できるか否かを判定する処理が実施されてもよい。つまり、図11のステップS44,S45の処理に先立ち、図10のステップS24の処理が実施されてもよい。この場合、動作検出部130は、放電制御を正常に実施できるか否かを判定するためのコンパレータ131の出力信号Soutの出力期間の後、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを判定するためのコンパレータ131の出力信号Soutを出力すればよい。
【0168】
・規定電圧Vαは、電源制御部90bの起動電圧に限らず、この起動電圧よりも高くて、かつ、高圧電源30の出力電圧よりも低い電圧に設定されていてもよい。
【0169】
・放電制御を正常に実施できるか否かの判定に用いられる信号としては、放電スイッチ27のゲート電圧に限らない。例えば、この信号として、パルス指令生成部122から出力される駆動指令SgG、又は放電抵抗体26と放電スイッチ27のドレインとの接続点の電圧が用いられてもよい。
【0170】
・3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定に用いられる信号としては、第1ダイオード111aを介して供給される電圧(つまり、下アームスイッチSWLのゲート電圧)に限らない。例えば、この信号として、下アームスイッチSWLのコレクタ及びエミッタ間電圧が用いられてもよい。
【0171】
図4に示す構成のうち、平滑コンデンサ24の放電制御を実施するための構成が制御回路50に備えられていなくてもよい。また、図4に示す構成のうち、3相短絡制御を実施するための構成が制御回路50に備えられていなくてもよい。
【0172】
図5において、絶縁電源80を停止させるための異常通知信号FMCUの生成源としては、第1判定信号Sg1及び第2判定信号Sg2のいずれか一方であってもよい。
【0173】
・監視部85に供給される電圧としては、入力回路61の出力電圧VBに限らず、第1~第3低圧電源回路63~65の出力電圧以外であれば他の電源の電圧であってもよい。
【0174】
・絶縁電源80を構成する制御部が、上アーム絶縁電源及び下アーム絶縁電源それぞれに対して個別に設けられていてもよい。この場合、低電圧誤動作防止処理により、上アーム絶縁電源に対応して設けられた制御部と、下アーム絶縁電源に対応して設けられた制御部との双方を停止させることにより絶縁電源80を停止させればよい。
【0175】
・3相短絡制御として、3相分の上アームスイッチSWHをオンし、3相分の下アームスイッチSWLをオフする制御が実施されてもよい。この場合、異常用電源90は、3相分の上アームスイッチSWHそれぞれに対して個別に備えられればよい。
【0176】
・上,下アームドライバ81,82を構成する上,下アーム絶縁伝達部81b,82bの低圧領域側の構成に第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されなくなるカプラ異常が発生すると、マイコン60からのスイッチング指令を上,下アーム駆動部81a,82aに伝達できなくなる。この場合、シャットダウン状態になってしまう。この問題に対処すべく、以下に説明する構成を採用することができる。
【0177】
下アーム絶縁伝達部82bの低圧領域側の構成に対する電力供給源を、第1低圧電源回路63とは別の電源回路(以下、別電源回路)とする。別電源回路としては、例えば、第1低圧電源回路63に異常が発生した場合であって従属故障が発生しない電源を用いることができ、具体的には例えば、中間電源回路62の出力電圧Vmを降圧することにより第5電圧V5r(例えば5V)を生成する第5電源回路を用いることができる。
【0178】
この構成において、別電源回路の出力電圧が低下した場合に絶縁電源80を停止させ、高圧側ASC指令部91により異常用スイッチ93をオン状態に切り替えればよい。具体的には例えば、電源停止部87の異常検知回路87aは、別電源回路の出力電圧を検出し、検出した出力電圧が低下した場合に切替スイッチ87bをオンに切り替えればよい。以上説明した構成によれば、カプラ異常が発生した場合であっても、3相短絡制御を行うことができる。
【0179】
・パルス指令生成部122から出力される駆動指令SgGとしては、図8に示したものに限らない。例えば、パルス指令生成部122は、放電指令CmdADが入力された後、パルス継続期間Tdisに1つ又は2つのオンパルス指令を含む駆動指令SgGを出力してもよい。なお、駆動指令SgGが1つのオンパルス指令を含む場合、上記(C)の条件は不要である。
【0180】
また、駆動指令SgGとしては、オンパルス指令を含むものに限らず、放電指令CmdADが入力されている期間において常時オン指令となる駆動指令SgGであってもよい。
【0181】
図10のステップS24で説明した確認処理及び図11のステップS45で説明した確認処理の実行タイミングは、例えば、1トリップ中のうち、通常制御開始後の車両の停車時であってもよい。また、これら確認処理は、1トリップ中に複数回実施されてもよい。
【0182】
・放電抵抗体26の熱設計に余裕がある場合、上記(B)の条件が削除されてもよい。
【0183】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図15に示すように、制御回路50の高圧領域側の構成が一部変更されている。なお、図15において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0184】
動作検出部130には、平滑コンデンサ24の端子電圧が入力される。具体的には、動作検出部130には、電圧変換部により降圧された平滑コンデンサ24の端子電圧が入力される。
【0185】
本実施形態では、放電制御を正常に実施できるか否かの判定に用いられる第2ダイオード111bからの電圧が動作検出部130に入力された場合であっても、その電圧に関する情報は、すぐにはマイコン60に通知されず、動作検出部130にラッチされる。また、3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定に用いられる第1ダイオード111aからの電圧が動作検出部130に入力された場合であっても、その電圧に関する情報は、すぐにはマイコン60に通知されず、動作検出部130にラッチされる。動作検出部130は、図11のステップS48の処理により平滑コンデンサ24の放電が開始された後、ラッチした各電圧信号を、出力側絶縁伝達部112及び復調部113を介してマイコン60に通知する。そして、マイコン60は、通知された電圧信号、つまり復調信号Sginに基づいて、3相短絡制御及び放電制御それぞれが正常に実施できるか否かを判定する。
【0186】
図16を用いて、ラッチした信号の通知期間について説明する。図16(k)は動作検出部130による3相短絡制御及び放電制御の機能モニタ状態の推移を示し、図16(L)は動作検出部130による機能モニタの通知状態の推移を示す。図16(a)~(j)は、先の図13(a)~(j)に対応している。また、図16の時刻t1,t2,…,t9は、図13の時刻t1,t2,…,t9に対応している。
【0187】
時刻t2~t3において、入力側絶縁伝達部110、入力インターフェース部121、パルス指令生成部122及びドライブ回路123が正常であるか否かの判定に用いられる第2ダイオード111bからの電圧信号が動作検出部130に入力され、動作検出部130は、入力された電圧信号をラッチする。このラッチは、時刻t3以前に実施されればよい。また、時刻t7~t8において、3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定に用いられる第1ダイオード111aからの電圧信号が動作検出部130に入力され、動作検出部130は、入力された電圧信号をラッチする。このラッチは、時刻t8以前に実施されればよい。
【0188】
時刻t9から、放電制御の実施により平滑コンデンサ24の端子電圧VHが低下し始める。その後、時刻t10において、動作検出部130は、平滑コンデンサ24の端子電圧VHが、高圧電源30の出力電圧よりも低い所定値になったと判定する。上記所定値は、例えば、異常用電源90の過熱異常を発生させないとの観点から定められる。平滑コンデンサ24の端子電圧VHが所定値になったと判定されると、時刻t11において放電制御が停止され、平滑コンデンサ24の端子電圧VHが低下しなくなる。時刻t10から時刻t14までの通知期間が過ぎるまでに、動作検出部130は、ラッチした第2ダイオード111bからの電圧信号と、ラッチした第1ダイオード111aからの電圧信号とをパルス信号によりマイコン60に順次通知する。時刻t12において、放電制御が再開され、平滑コンデンサ24の端子電圧VHが低下し始める。
【0189】
なお、図16の時刻t14,t15,t16は、先の図13の時刻t11,t12,t13に対応している。また、時刻t8~t14においては、3相短絡制御及び放電制御それぞれを正常に実施できるか否かの確認は実施されず、また、第2ダイオード111bからの電圧信号及び第1ダイオード111aからの電圧信号それぞれのラッチも実施されない。
【0190】
平滑コンデンサ24の端子電圧VHが、高圧電源30の出力電圧よりも低い所定値になったことを条件として、動作検出部130から出力側絶縁伝達部112及び復調部113を介してマイコン60に電圧信号が通知されるのは、異常用電源90の発熱を抑制するためである。つまり、異常用駆動電圧Vepsが生成される場合において平滑コンデンサ24の端子電圧に対する異常用電源90の出力電圧の差を小さくすると、異常用電源90の発熱量が低減される。これにより、異常用電源90の過熱異常が発生することを防止できる。
【0191】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図17に示すように、制御回路50の高圧領域側の構成が一部変更されている。なお、図17において、先の図3に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0192】
制御回路50は、通常用電源経路150、通常用ダイオード151、異常用電源経路152及び異常用スイッチ93を備えている。通常用電源経路150は、絶縁電源80の出力側と下アーム駆動部82aとを接続し、下アーム駆動電圧VdLを下アーム駆動部82aに供給する。通常用ダイオード151は、アノードが絶縁電源80の出力側に接続された状態で、通常用電源経路150の中間位置に設けられている。
【0193】
通常用電源経路150のうち通常用ダイオード151よりも下アーム駆動部82a側と、異常用電源90の出力側とは、異常用電源経路152により接続されている。異常用電源経路152には、異常用スイッチ93が設けられている。異常用電源経路152は、異常用駆動電圧Vepsを下アーム駆動部82aに供給する。
【0194】
高圧側ASC指令部91には、通常用電源経路150を介して絶縁電源80の下アーム駆動電圧VdLが供給されるようになっている。高圧側ASC指令部91は、高圧側ASC指令SgASCを下アーム駆動部82aに対して出力する。
【0195】
図18を用いて、制御回路50内に異常が発生した場合に実施される3相短絡制御について説明する。なお、図18において、先の図6に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0196】
ステップS13の処理により、異常用電源90の異常用駆動電圧Vepsが3相分の下アーム駆動部82aに対して供給され始める。
【0197】
その後、ステップS15において、高圧側ASC指令部91は、高圧側ASC指令SgASCを3相分の下アーム駆動部82aに対して出力する。これにより、ステップS16において、各相の下アーム駆動部82aは、下アームスイッチSWLをオン状態にする。これにより、3相短絡制御が実施される。
【0198】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0199】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0200】
・異常用電源としては、制御スイッチ90aを1つ備える一段構成のものに限らず、例えば図19に示すように、制御スイッチ160aを2つ備える2段構成の異常用電源160であってもよい。各制御スイッチ160aのゲート電圧は、電源制御部160bにより操作される。図19に示す構成は、例えば、制御スイッチにおける発熱が大きくなると想定される場合に用いられる。
【0201】
また、異常用電源としては、シリーズ電源に限らず、例えば、スイッチング電源(具体的には、絶縁型又は非絶縁型スイッチング電源)、又はツェナーダイオードで構成された電源であってもよい。ここで、異常用電源としてスイッチング電源が用いられる場合、例えば、異常用電源を構成する電源制御部のUVLO端子に入力される電圧が上昇して規定電圧Vαに到達することにより、異常用電源の異常用駆動電圧Vepsが目標電圧に制御し始められる。なお、UVLO端子に入力電圧を抵抗体等により分圧して入力する構成が採用される場合、例えば、UVLO閾値時の入力電圧(分圧部への入力電圧)が規定電圧Vαに相当する。
【0202】
ちなみに、シリーズ電源が電源IC等のコントローラで制御される場合、スイッチング電源と同様に、UVLO端子に入力電圧を抵抗体等により分圧して入力する構成が採用されるとき、例えば、UVLO閾値時の入力電圧(分圧部への入力電圧)が規定電圧Vαに相当する。
【0203】
図4において、各下アームスイッチSWLのゲートに対して設けられる第2規制ダイオード95の数は、複数に限らず1つであってもよい。
【0204】
・異常用電源90は、高圧電源30から給電されて電源制御部90bの入力電圧が上昇し、その入力電圧が高圧電源30の出力電圧に到達したタイミング以降に起動されてもよい。
【0205】
・高圧電源30に電気的に接続される電気負荷としては、インバータ15に限らない。
【0206】
・放電スイッチ27としては、NチャネルMOSFETに限らない。
【0207】
・各ドライバ81,82として、低圧領域及び高圧領域の境界を跨がず、高圧領域のみに設けられるドライバが用いられてもよい。
【0208】
・先の図1に示す構成において、平滑コンデンサ24と各遮断スイッチ23a,23bとの間に昇圧コンバータが備えられていてもよい。
【0209】
・インバータを構成するスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばボディダイオードを内蔵するNチャネルMOSFETであってもよい。
【0210】
・インバータを構成する各相各アームのスイッチとしては、互いに並列接続された2つ以上のスイッチであってもよい。この場合、互いに並列接続されたスイッチの組み合わせとしては、例えば、SiCのスイッチング素子及びSiのスイッチング素子の組み合わせ、又はIGBT及びMOSFETの組み合わせであってもよい。
【0211】
・回転電機の制御量としては、トルクに限らず、例えば、回転電機のロータの回転速度であってもよい。
【0212】
・回転電機としては、3相以上のものであってもよい。また、回転電機としては、永久磁石同期機に限らず、例えば巻線界磁型同期機であってもよい。また、回転電機としては、同期機に限らず、例えば誘導機であってもよい。さらに、回転電機としては、車載主機として用いられるものに限らず、電動パワーステアリング装置や空調用電動コンプレッサを構成する電動機等、他の用途に用いられるものであってもよい。
【0213】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0214】
10…回転電機、15…インバータ、24…平滑コンデンサ、50…制御回路、60…マイコン、90…異常用電源。
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