IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許-物体認識装置 図1
  • 特許-物体認識装置 図2
  • 特許-物体認識装置 図3
  • 特許-物体認識装置 図4
  • 特許-物体認識装置 図5
  • 特許-物体認識装置 図6
  • 特許-物体認識装置 図7
  • 特許-物体認識装置 図8
  • 特許-物体認識装置 図9
  • 特許-物体認識装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】物体認識装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/521 20170101AFI20231226BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20231226BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231226BHJP
【FI】
G06T7/521
G05D1/02 J
G06T7/00 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020036073
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021140340
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】細川 翔太郎
【審査官】吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-271166(JP,A)
【文献】特開2010-086418(JP,A)
【文献】特開2018-173707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0114919(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/521
G05D 1/02
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを用いて走行体を走行させる際に、前記地図データ上に存在しない物体を認識する物体認識装置であって、
前記走行体の周囲にレーザを照射し、前記レーザの反射光を受光することにより、前記走行体の周囲に位置する物体を検出するレーザセンサと、
前記地図データ上の特徴物に相当するマスク領域を有するマスクデータを取得するマスクデータ取得部と、
前記レーザの反射光を受光して得られたレーザデータと前記マスクデータ取得部により取得された前記マスクデータとを照合して、前記レーザセンサにより検出された物体が前記地図データ上に存在するかどうかを判定する物体判定部とを備え
前記マスクデータは、前記地図データ上の特徴物に相当する前記マスク領域を膨張させたデータであり、
前記マスクデータ取得部は、前記走行体の起動時にのみ、前記地図データ上の特徴物に相当する前記マスク領域を膨張させることで前記マスクデータを作成する物体認識装置。
【請求項2】
前記地図データにマスク指定範囲を追加設定する設定部を更に備え、
前記マスクデータは、前記地図データ上の特徴物に相当する第1マスク領域と、前記設定部により追加設定された前記マスク指定範囲に相当する第2マスク領域とを有する請求項1記載の物体認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の物体認識装置としては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載の物体認識装置は、レーザを照射して移動体の周囲の物体との距離を計測する距離センサと、移動体を走行させるモータの回転数を検出するエンコーダと、モータの回転数データに基づいて移動体の位置及び向きを算出し、移動体の位置及び向きに基づいて物体との距離データを2次元の位置データに変換し、その位置データを所定のルールでクラスタリングし、クラスタの特徴量に基づいてクラスタが地図データ上に存在する静的物体に対応するか地図データ上に存在しない動的物体に対応するかを判別するコンピュータとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-178789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、地図データ上に存在しない物体を認識することができるが、クラスタリング処理の計算負荷が大きいため、コンピュータの処理速度が遅くなる。従って、高速で且つ高価なコンピュータが必要とならざるを得ない。
【0005】
本発明の目的は、地図データ上に存在しない物体の認識を高速で且つ安価に実現することができる物体認識装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、地図データを用いて走行体を走行させる際に、地図データ上に存在しない物体を認識する物体認識装置であって、走行体の周囲にレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、走行体の周囲に位置する物体を検出するレーザセンサと、地図データ上の特徴物に相当するマスク領域を有するマスクデータを取得するマスクデータ取得部と、レーザの反射光を受光して得られたレーザデータとマスクデータ取得部により取得されたマスクデータとを照合して、レーザセンサにより検出された物体が地図データ上に存在するかどうかを判定する物体判定部とを備える。
【0007】
このような物体認識装置においては、レーザセンサによって、走行体の周囲にレーザを照射し、そのレーザの反射光を受光することにより、走行体の周囲に位置する物体が検出される。また、地図データ上の特徴物に相当するマスク領域を有するマスクデータが取得される。そして、レーザの反射光を受光して得られたレーザデータとマスクデータとを照合して、レーザセンサにより検出された物体が地図データ上に存在するかどうかが判定される。ここで、レーザデータがマスクデータのマスク領域に位置するときは、レーザセンサにより検出された物体が地図データ上に存在すると判定される。レーザデータがマスクデータのマスク領域に位置しないときは、レーザデータにより検出された物体が地図データ上に存在しないと判定される。従って、クラスタリング処理のような複雑な演算処理が不要となる。これにより、地図データ上に存在しない物体の認識が高速で且つ安価に実現される。
【0008】
マスクデータは、地図データ上の特徴物に相当するマスク領域を膨張させたデータであってもよい。このような構成では、地図データ上の特徴物に相当するマスク領域の範囲が広がるため、レーザセンサの検出データや走行体の位置データ等に多少の誤差があっても、地図データ上に存在しない物体が精度良く認識される。
【0009】
マスクデータ取得部は、走行体の起動時に、地図データ上の特徴物に相当するマスク領域を膨張させることでマスクデータを作成してもよい。このような構成では、例えば走行体の自己位置の推定に使用される地図データを使用してマスクデータを作成することができる。このため、地図データとは別にマスクデータを記憶しておかなくて済むため、容量が小さい安価なメモリを使用することができる。また、マスクデータの作成は走行体の起動時のみ行われるため、物体認識に関する処理を簡素化することができる。
【0010】
物体認識装置は、地図データとは別のマスク指定範囲を設定する設定部を更に備え、マスクデータは、地図データ上の特徴物に相当する第1マスク領域と、設定部により設定されたマスク指定範囲に相当する第2マスク領域とを有してもよい。このような構成では、地図データの作成時から環境が変化した場合には、新たな物体が存在する範囲をマスク指定範囲として設定することにより、レーザデータとマスクデータとを照合したときに、レーザセンサにより検出された物体が地図データ上またはマスク指定範囲に存在すると判定される。従って、地図データの作成時から環境が変化するたびに、地図データを作成し直す必要がない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地図データ上に存在しない物体の認識を高速で且つ安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る物体認識装置が適用される環境を示す概略斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る物体認識装置を含む走行制御装置を示す概略構成図である。
図3】地図データ及びマスクデータの一例を示す図である。
図4図2に示された物体認識装置により地図データ上に存在しない移動物体を認識する様子を示す概念図である。
図5図2に示されたコントローラにより実行される物体認識処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
図6】比較例として、レーザデータとマスクデータとの照合処理を実施せずに、物体認識装置により地図データ上に存在しない移動物体を認識する様子を示す概念図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る物体認識装置を含む走行制御装置を示す概略構成図である。
図8】地図データにマスク指定範囲が追加された状態を示す図である。
図9】マスク指定範囲が追加された地図データ及びマスクデータの一例を示す図である。
図10図7に示された物体認識装置により地図データ上に存在しない移動物体を認識する様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る物体認識装置が適用される環境を示す概略斜視図である。図1において、本実施形態の物体認識装置1は、地図データを用いて走行体2を走行させる際に、地図データ上に存在しない物体を認識する装置である。
【0015】
走行体2は、作業者Sに追尾して走行する走行ロボットである。走行体2が走行する周囲には、例えば壁3A及び柱3B等の物体が設置されている。壁3Aは、左右両側に設置された静止物体である。柱3Bは、左右片側に設置された静止物体である。作業者Sは、移動物体である。移動物体は、地図データ上に存在しない物体である。
【0016】
図2は、本発明の第1実施形態に係る物体認識装置を含む走行制御装置を示す概略構成図である。図2において、物体認識装置1を含む走行制御装置5は、走行体2に搭載されている(図1参照)。走行制御装置5は、走行スイッチ6と、駆動部7と、レーザセンサ8と、コントローラ9とを具備している。
【0017】
走行スイッチ6は、走行体2の起動及び停止を指示するスイッチである。駆動部7は、特に図示はしないが、走行体2を走行させる走行モータと、走行体2を転舵させる転舵モータとを有している。
【0018】
レーザセンサ8は、走行体2の周囲にレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、走行体2の周囲に位置する物体を検出する。レーザセンサ8は、走行体2の前方を含む領域に所定の角度範囲(例えば270度)でレーザを照射する(図4のL0参照)。レーザセンサ8としては、例えば2次元のレーザレンジファインダが用いられる。なお、レーザセンサ8は、走行体2の後方を含む領域に所定の角度範囲でレーザを照射してもよい。
【0019】
コントローラ9は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ9は、走行制御部10と、記憶部11と、マスクデータ取得部12と、物体判定部13とを有している。
【0020】
走行制御部10は、走行スイッチ6の指示信号を入力し、所定の処理を実行し、駆動部7を制御する。具体的には、走行制御部10は、走行スイッチ6により走行体2の起動が指示された後、レーザセンサ8によりレーザの反射光を受光して得られたレーザデータ(以下、レーザセンサ8のレーザデータということがある)に基づいて、走行体2が作業者Sに追尾するように駆動部7を制御する。このとき、走行制御部10は、例えばレーザセンサ8のレーザデータ及び地図データに基づいて、走行体2の自己位置を推定する。
【0021】
記憶部11は、図3(a)に示されるような初期状態の地図データ20を記憶する。地図データ20は、例えば占有格子地図(OGMap)として作成されている。占有格子地図は、環境を小さな格子(グリッド)毎の領域に分割し、グリッド毎に物体の存在確率を保有する地図である。地図データ20上に存在する特徴物は、占有されたグリッドとして表される。ここで、地図データ20上において、特徴物21Aは壁3Aに相当し、特徴物21Bは柱3Bに相当する。
【0022】
マスクデータ取得部12は、図3(b)に示されるようなマスクデータ22を取得する。マスクデータ22は、初期状態の地図データ20の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23を有している。マスクデータ22は、レーザセンサ8のレーザデータと照合して、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上に存在するかどうかを判別するための比較用データである。
【0023】
マスクデータ22は、図3(b)に示されるように、レーザセンサ8の検出誤差及び走行体2の位置推定誤差等を考慮して、初期状態の地図データ20上の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23を膨張させたデータである。具体的には、マスクデータ22は、地図データ20上の特徴物21A,21Bである占有されたグリッドの幅を膨張させている。このため、膨張処理が行われたマスクデータ22では、初期状態の地図データ20上において占有されたグリッドから一定距離内のグリッドも、占有されたグリッドとみなされる。
【0024】
マスクデータ取得部12は、走行体2の起動時に、記憶部11に保存された地図データ20を読み込み、地図データ20上の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23を膨張させることでマスクデータ22を作成する。
【0025】
物体判定部13は、レーザセンサ8によりレーザの反射光を受光して得られたレーザデータとマスクデータ取得部12により取得されたマスクデータ22とを照合して、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上に存在するかどうかを判定する。
【0026】
物体判定部13は、レーザセンサ8のレーザデータがマスクデータ22のマスク領域23に位置するときは、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上に存在する静止物体であると判定する。物体判定部13は、レーザセンサ8のレーザデータがマスクデータ22のマスク領域23に位置しないときは、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上に存在しない移動物体であると判定する。
【0027】
具体的には、図4に示されるように、レーザセンサ8のレーザデータLは、物体である壁3A及び柱3Bで反射したレーザ点として表される。レーザデータLにおいてマスクデータ22のマスク領域23に位置するレーザ点は、静止物体であると判定される。レーザデータLにおいてマスクデータ22のマスク領域23に位置しないレーザ点は、移動物体であると判定される。
【0028】
本実施形態の物体認識装置1は、走行スイッチ6と、レーザセンサ8と、コントローラ9の記憶部11、マスクデータ取得部12及び物体判定部13とを備えている。
【0029】
図5は、コントローラ9により実行される物体認識処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【0030】
図5において、コントローラ9は、まず走行スイッチ6により走行体2の起動が指示されたかどうかを判断する(手順S101)。コントローラ9は、走行体2の起動が指示されたと判断したときは、記憶部11に保存された地図データ20(図3(a)参照)を読み込む(手順S102)。そして、コントローラ9は、地図データ20上の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23を膨張処理してマスクデータ22(図3(b)参照)を作成する(手順S103)。
【0031】
続いて、コントローラ9は、レーザセンサ8のレーザデータL(図4参照)を取得する(手順S104)。そして、コントローラ9は、レーザデータLとマスクデータ22とを照合して、レーザデータLがマスクデータ22のマスク領域23に位置するかどうかを判断する(手順S105)。
【0032】
コントローラ9は、レーザデータLがマスクデータ22のマスク領域23に位置すると判断したときは、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上に存在する静止物体であると判定する(手順S106)。コントローラ9は、レーザデータLがマスクデータ22のマスク領域23に位置しないと判断したときは、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上に存在しない移動物体であると判定する(手順S107)。
【0033】
コントローラ9は、手順S106または手順S107を実行した後、走行スイッチ6により走行体2の起動停止が指示されたかどうかを判断する(手順S108)。コントローラ9は、走行体2の起動停止が指示されていないと判断したときは、手順S104を再度実行する。コントローラ9は、走行体2の起動停止が指示されたと判断したときは、本処理を終了する。
【0034】
ここで、マスクデータ取得部12は、上記の手順S101~S103を実行する。物体判定部13は、上記の手順S104~S107を実行する。
【0035】
図6は、比較例として、レーザセンサ8のレーザデータLとマスクデータ22との照合処理を実施せずに、地図データ20上に存在しない移動物体を認識する様子を示す概念図である。
【0036】
図6において、走行体2の走行によってレーザセンサ8のレーザデータLは刻々と変化するため、静止物体が移動物体と誤認識されてしまうことがある。具体的には、作業者Sは、移動物体と認識される(X1参照)。しかし、柱3Bも、移動物体と誤認識される可能性がある(Y1参照)。また、壁3Aにおける柱8Bに隠れる部分は、レーザL0が反射されないため、レーザ点が無い領域となる。このため、レーザ点が無い領域よりも走行体2の前方に位置する壁3Aの部分は、移動物体と誤認識される可能性がある(Z1参照)。
【0037】
この場合には、走行体2が壁3Aの一部及び柱3Bを作業者Sであると認識して追尾しようとしたり、走行体2が壁3Aの一部及び柱3Bを移動していると認識して回避したりすることがある。
【0038】
そのような不具合に対し、本実施形態では、レーザセンサ8のレーザデータLとマスクデータ22との照合処理によって、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上に存在するかどうかが判定される。そして、レーザデータLがマスクデータ22のマスク領域23に位置するときは、レーザセンサ8により検出された物体が静止物体であると判定され、レーザデータLがマスクデータ22のマスク領域23に位置しないときは、レーザセンサ8により検出された物体が移動物体であると判定される。
【0039】
例えば図4に示されるように、レーザデータLにおいて作業者Sから反射されたレーザ点は、マスクデータ22のマスク領域23に位置しない。このため、作業者Sは、移動物体であると認識される(X2参照)。レーザデータLにおいて柱3Bから反射されたレーザ点は、マスクデータ22のマスク領域23に位置する。このため、柱3Bは、静止物体であると認識される(Y2参照)。レーザデータLにおいて壁3Aの一部から反射されたレーザ点は、マスクデータ22のマスク領域23に位置する。このため、壁3Aの一部も、静止物体であると認識される(Z2参照)。これにより、地図データ20上に存在しない移動物体が精度良く認識される。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、レーザセンサ8によって、走行体2の周囲にレーザL0を照射し、そのレーザL0の反射光を受光することにより、走行体2の周囲に位置する物体が検出される。また、地図データ20上の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23を有するマスクデータ22が取得される。そして、レーザL0の反射光を受光して得られたレーザデータLとマスクデータ22とを照合して、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上に存在するかどうかが判定される。ここで、レーザデータLがマスクデータ22のマスク領域23に位置するときは、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上に存在すると判定される。レーザデータLがマスクデータ22のマスク領域23に位置しないときは、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上に存在しないと判定される。従って、クラスタリング処理のような複雑な演算処理が不要となる。これにより、地図データ20上に存在しない物体の認識が高速で且つ安価に実現される。
【0041】
また、本実施形態では、マスクデータ22は、地図データ20上の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23を膨張させたデータである。従って、地図データ20上の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23の範囲が広がるため、レーザセンサ8の検出データや走行体2の位置データ等に多少の誤差があっても、地図データ20上に存在しない物体がより精度良く認識される。
【0042】
また、本実施形態では、走行体2の起動時に、地図データ20上の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23を膨張させることでマスクデータ22が作成される。従って、走行体2の自己位置の推定に使用される地図データ20を使用してマスクデータ22を作成することができる。このため、地図データ20とは別にマスクデータ22を記憶しておかなくて済むため、記憶部11として容量が小さい安価なメモリを使用することができる。また、マスクデータ22の作成は走行体2の起動時のみ行われるため、コントローラ9による物体認識に関する処理を簡素化することができる。また、コントローラ9のリアルタイム処理に与える影響を最小限に抑えることができる。
【0043】
図7は、本発明の第2実施形態に係る物体認識装置を含む走行制御装置を示す概略構成図である。図7において、走行制御装置5は、上記の走行スイッチ6、駆動部7、レーザセンサ8及びコントローラ9に加え、入力器30を具備している。
【0044】
入力器30は、図8に示されるように、ユーザが地図データ20とは別のマスク指定範囲31を任意に設定入力する機器である。入力器30は、マスク指定範囲31を設定する設定部を構成している。マスク指定範囲31は、地図データ20上に存在していない。マスク指定範囲31は、レーザセンサ8のレーザデータLとマスクデータ22との照合処理が実施される範囲である。マスク指定範囲31としては、例えば荷物が置かれる荷物置き場等が挙げられる。入力器30は、例えばユーザがマスク指定範囲31の位置座標を入力してもよいし、或いはユーザが画面表示された地図にマスク指定範囲31を手書き入力してもよい。
【0045】
コントローラ9は、上記の走行制御部10、記憶部11及び物体判定部13と、マスクデータ取得部32とを有している。
【0046】
マスクデータ取得部32は、図9に示されるようなマスクデータ22を取得する。マスクデータ22は、初期状態の地図データ20の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23(第1マスク領域)と、入力器30により設定入力されたマスク指定範囲31に相当するマスク領域34(第2マスク領域)とを有している。
【0047】
マスクデータ取得部32は、走行体2の起動時に、マスク領域23,34を有するマスクデータ22を作成する。このとき、マスクデータ取得部32は、マスクデータ22のマスク領域23,34を膨張させる。なお、マスクデータ取得部32は、マスクデータ22のマスク領域23のみを膨張させてもよい。
【0048】
物体判定部13は、上述したように、レーザセンサ8のレーザデータLとマスクデータ取得部32により取得されたマスクデータ22とを照合して、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上またはマスク指定範囲31に存在するかどうかを判定する。
【0049】
物体判定部13は、レーザセンサ8のレーザデータLがマスクデータ22のマスク領域23及びマスク領域34の少なくとも一方に位置するときは、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上またはマスク指定範囲31に存在する静止物体であると判定する。物体判定部13は、レーザセンサ8のレーザデータLがマスクデータ22のマスク領域23及びマスク領域34の何れにも位置しないときは、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上及びマスク指定範囲31の何れにも存在しない移動物体であると判定する。
【0050】
例えば図10に示されるように、マスク指定範囲31として設定された荷物置き場35に荷物36が置かれている場合、レーザデータLにおける荷物36から反射されたレーザ点は、マスクデータ22のマスク領域34に位置する。従って、レーザセンサ8により検出された荷物36は、地図データ20上またはマスク指定範囲31に存在する静止物体であると判定される(W参照)。
【0051】
本実施形態の物体認識装置1は、走行スイッチ6と、レーザセンサ8と、入力器30と、コントローラ9の記憶部11、マスクデータ取得部32及び物体判定部13とを備えている。
【0052】
以上のような本実施形態においては、地図データ20の作成時から環境が変化した場合には、新たな物体が存在する範囲をマスク指定範囲31として設定することにより、レーザデータLとマスクデータ22とを照合したときに、レーザセンサ8により検出された物体が地図データ20上またはマスク指定範囲31に存在すると判定される。従って、地図データ20の作成時から環境が変化するたびに、地図データ20を作成し直す必要がない。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、走行体2の起動時に、地図データ20上の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23を有するマスクデータ22が作成されているが、マスクデータ22の作成時期としては、特に走行体2の起動時には限られない。例えば、マスクデータ22を予め作成して記憶部11に保存してもよい。この場合には、記憶部11に保存されたマスクデータ22を読み込み、レーザセンサ8のレーザデータLとマスクデータ22とを照合すればよいため、コントローラ9によるマスクデータ22の取得処理を簡素化することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、地図データ20上の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23を膨張させたマスクデータ22が使用されているが、マスクデータ22としては、特に地図データ20上の特徴物21A,21Bに相当するマスク領域23を膨張させなくてもよい。この場合にも、コントローラ9によるマスクデータ22の取得処理を簡素化することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、走行スイッチ6により走行体2が起動されているが、走行体2の起動方法としては、特にスイッチには限られず、タイマー等を用いてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、走行体2は作業者Sに追尾して走行する走行ロボットであるが、走行体2としては、特に走行ロボットには限られず、フォークリフト等の産業車両や無人搬送車等であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…物体認識装置、2…走行体、3A…壁(物体)、3B…柱(物体)、8…レーザセンサ、12…マスクデータ取得部、13…物体判定部、20…地図データ、21A,21B…特徴物、22…マスクデータ、23…マスク領域(第1マスク領域)、30…入力器(設定部)、31…マスク指定範囲、32…マスクデータ取得部、34…マスク領域(第2マスク領域)、36…荷物(物体)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10