(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20231226BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20231226BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20231226BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03H9/17 H
H01L23/02 K
H04R17/00 330B
(21)【出願番号】P 2020038914
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】松村 湧
(72)【発明者】
【氏名】太田 佳生
(72)【発明者】
【氏名】菅原 潤
(72)【発明者】
【氏名】武田 明丈
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-284100(JP,A)
【文献】特開2019-180786(JP,A)
【文献】特開平02-021850(JP,A)
【文献】特開2008-078575(JP,A)
【文献】特開平11-266498(JP,A)
【文献】特開2000-241532(JP,A)
【文献】実開平03-042532(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/76
H01L 23/02
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を画成するケースと、
前記収容空間内に配置されている圧電素子と、
前記収容空間内で前記圧電素子上に配置されており、前記圧電素子と接している緩衝材と、
前記収容空間内に前記圧電素子と離間して配置されており、前記圧電素子と電気的に接続されている基板と、を備え、
前記緩衝材が、
樹脂と、
前記樹脂内に分散されており、内部空間を画成している殻を有している複数の中空粒子と、を含
み、
前記基板が、前記緩衝材内に配置されている、圧電デバイス。
【請求項2】
樹脂からなり、前記収容空間を封止する蓋材を更に備えており、
前記蓋材が、前記緩衝材と接している、請求項
1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
収容空間を画成するケースと、
前記収容空間内に配置されている圧電素子と、
前記収容空間内で前記圧電素子上に配置されており、前記圧電素子と接している緩衝材と、
樹脂からなり、前記収容空間を封止する蓋材と、を備え、
前記緩衝材が、
樹脂と、
前記樹脂内に分散されており、内部空間を画成している殻を有している複数の中空粒子と、を含
み、
前記蓋材が、前記緩衝材と接している、圧電デバイス。
【請求項4】
前記収容空間内に前記圧電素子と離間して配置されており、前記圧電素子と電気的に接続されている基板を更に備えており、
前記基板が、前記緩衝材内に配置されている、請求項
3に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記中空粒子が、ガラスバルーンである、請求項1
~4のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記樹脂と前記ガラスバルーンとの含有量の合計が100質量%であるとき、前記ガラスバルーンの含有量の割合が、10質量%以上20質量%以下である、請求項
5に記載の圧電デバイス。
【請求項7】
前記中空粒子が、プラスチックバルーンである、請求項1
~4のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項8】
前記樹脂と前記プラスチックバルーンとの含有量の合計が100質量%であるとき、前記プラスチックバルーンの含有量の割合は、10質量%以上20質量%以下である、請求項
7に記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
収容空間を画成するケースと、収容空間内に配置されている圧電素子と、圧電素子上に配置されている緩衝材と、を備えている圧電デバイスが知られている(たとえば、特許文献1参照)。緩衝材は、圧電素子と接しており、フェルトからなる。圧電デバイスは、たとえば、超音波センサを構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電デバイスには、超音波成分の残響の更なる低減が求められている。しかしながら、上述されたような圧電デバイスは、超音波成分の残響を十分に低減しがたい。
【0005】
本発明の一つの態様は、超音波成分の残響をより一層低減する圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様に係る圧電デバイスは、収容空間を画成するケースと、収容空間内に配置されている圧電素子と、圧電素子上に配置されており、圧電素子と接している緩衝材と、を備えている。緩衝材が、樹脂と、樹脂内に分散されており、内部空間を画成している殻を有している複数の中空粒子と、を含んでいる。
【0007】
上記一つの態様では、複数の中空粒子が、緩衝材を構成する樹脂内に分散されている。中空粒子は、内部空間を画成する殻を有している。この場合、超音波成分は、樹脂と中空粒子の殻との界面と、中空粒子の殻と上記内部空間との界面と、で散乱される。したがって、上記一つの態様では、中空粒子を含まない構成に比して、中空粒子による超音波成分の散乱減衰が大きい。上記一つの態様は、超音波成分の残響をより一層低減する。
【0008】
上記一つの態様では、中空粒子が、ガラスバルーンであってもよい。
中空粒子がガラスバルーンである構成では、環境温度が変化する場合でも、中空粒子が膨張又は収縮しがたい。したがって、本構成では、環境温度が変化する場合でも、超音波成分の残響を低減する効果が変化しがたい。
【0009】
上記一つの態様では、中空粒子が、プラスチックバルーンであってもよい。
中空粒子がプラスチックバルーンである構成は、圧電デバイスを軽量化し得る。
【0010】
上記一つの態様は、収容空間内に圧電素子と離間して配置されており、圧電素子と電気的に接続されている基板を備えていてもよい。基板が、緩衝材内に配置されていてもよい。
基板が緩衝材内に配置されている構成では、基板が制振される。
【0011】
上記一つの態様は、樹脂からなり、収容空間を封止する蓋材を備えていてもよい。蓋材が、緩衝材と接していてもよい。
蓋材が緩衝材と接している構成では、超音波成分がより一層散乱しやすい。したがって、本構成は、超音波成分の残響をより一層確実に低減する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、超音波成分の残響をより一層低減する圧電デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る圧電デバイスの断面構成を示す図である。
【
図3】
図3は、中空粒子の端面構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の変形例に係る圧電デバイスの断面構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の変形例に係る圧電デバイスの断面構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の変形例に係る圧電デバイスの断面構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の変形例に係る圧電デバイスの断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
図1を参照して、本実施形態に係る圧電デバイス1の構成を説明する。
図1は、一実施形態に係る圧電デバイスの断面構成を示す図である。
圧電デバイス1は、
図1に示されるように、ケース10と、圧電素子20と、基板30と、複数の接続部材41,43と、緩衝材60と、蓋材70と、複数のピン81,83と、を備えている。本実施形態では、圧電デバイス1は、二つの接続部材41,43と、二つのピン81,83と、を備えている。本実施形態では、圧電デバイス1は、超音波センサを構成する。圧電デバイス1は、たとえば、超音波を送受信する。
【0016】
ケース10は、収容空間S1を画成している。圧電素子20、基板30、複数の接続部材41,43、緩衝材60、及び蓋材70は、収容空間S1内に配置されている。ケース10は、底壁11と、側壁13とを有している。側壁13は、底壁11と交差する方向に延在している。底壁11と側壁13とが、収容空間S1を画成している。底壁11と側壁13とは、一体形成されている。ケース10は、一端が開口している有底筒状の部材である。底壁11は、収容空間に臨む底面12を有している。底壁11と交差する方向は、たとえば、底壁11と直交する方向であってもよい。底面12は、底面12と交差する方向から見て、たとえば、円形状を呈している。円形状は、真円形状、長円形状、又は楕円形状を含んでいる。ケース10は、たとえば、アルミニウム(Al)からなる。ケース10は、Al以外の金属からなっていてもよい。ケース10は、たとえば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、又は銅合金からなっていてもよい。アルミニウム合金は、たとえば、ジュラルミンを含む。銅合金は、たとえば、真鍮を含む。
【0017】
圧電素子20は、
図2にも示されるように、圧電素体21と、複数の電極23,25とを有している。本実施形態では、圧電素子20は、二つの電極23,25を有している。圧電素子20は、底壁11上に配置されている。圧電素子20は、たとえば、接着により底壁11上に固定されている。
図2は、圧電素子を示す平面図である。
【0018】
圧電素体21は、互いに対向している一対の主面21a,21bと、少なくとも一つの側面21cと、を有している。側面21cは、一対の主面21a,21bを連結するように、一対の主面21a,21bが対向している方向に延在している。主面21bは、底面12と対向している。圧電素子20は、主面21bと底面12とが対向するように、底壁11(底面12)上に配置されている。一対の主面21a,21bが対向している方向は、底壁11(底面12)と交差する方向である。一対の主面21a,21bが対向している方向は、底壁11(底面12)と直交する方向であってもよい。
【0019】
圧電素体21は、直方体形状を呈している。圧電素体21は、側面21c以外に、三つの側面21dを有している。各側面21dも、一対の主面21a,21bを連結するように、一対の主面21a,21bが対向している方向に延在している。本実施形態では、圧電素体21は、平面視で、正方形状を呈している。本実施形態では、圧電素体21は、角板状を呈している。圧電素体21は、円板状を呈していてもよい。本明細書での「直方体形状」は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。
【0020】
圧電素体21は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料は、たとえば、PZT[Pb(Zr、Ti)O3]、PT(PbTiO3)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O3]、又はチタン酸バリウム(BaTiO3)を含む。圧電素体21は、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体により構成される。圧電素体21の厚みは、たとえば、150~500μmである。本実施形態では、圧電素体21の厚みは、200μmである。
【0021】
電極23は、主面21bと側面21cと主面21aとに設けられている。電極23は、主面21b上に位置している部分23aと、側面21c上に位置している部分23bと、主面21a上に位置している部分23cと、を有している。部分23aと部分23bとは、主面21bと側面21cとの間に位置している稜部で互いに連結されている。部分23bと部分23cとは、主面21aと側面21cとの間に位置している稜部で互いに連結されている。各部分23a,23b,23cは、一体に形成されている。電極23の部分23aが底壁11(底面12)に接合されている。
【0022】
主面21bに直交する方向から見て、電極23の部分23aは、側面21cと対向している側面21dと主面21bとの間に位置している稜部から離間している。主面21bは、側面21cと対向している側面21dと主面21bとの間に位置している稜部に沿って、露出している。電極23の部分23bは、側面21c全体を覆っている。各側面21dは、電極23から露出している。
【0023】
電極25は、主面21aに設けられている。電極25は、主面21a上のみに配置されている。電極25は、電極23の部分23cと離間している。主面21aは、電極23の部分23cと電極25との間で露出している。主面21aに直交する方向から見て、電極25は、側面21cと対向している側面21dと主面21aとの間に位置している稜部から離間している。主面21aは、側面21cと対向している側面21dと主面21aとの間に位置している稜部に沿って、露出している。各側面21dは、電極25からも露出している。圧電素体21は、一対の主面21a,21bが対向している方向で電極23の部分23aと電極25とに重なる領域R1を有している。領域R1は、一対の主面21a,21bが対向している方向で、電極23の部分23aと電極25とで挟まれている。圧電素子20では、領域R1が、圧電的に活性な領域を構成する。
【0024】
各電極23,25は、圧電素体21の表面と接している。各電極23,25の厚みは、たとえば、1.5μm以下である。各電極23,25は、たとえば、クロム(Cr)層、ニッケル銅合金(Ni-Cu)層、及び金(Au)層からなる積層体を含む。各電極23,25は、銀(Ag)、チタン(Ti)、白金(Pt)、銀パラジウム合金(Ag-Pd)、又はニッケルクロム合金(Ni-Cr)を含んでいてもよい。各電極23,25は、たとえば、スパッタリング法により圧電素体21の表面に形成される。
【0025】
基板30は、収容空間S1内に、圧電素子20と離間して配置されている。基板30は、圧電素子20と電気的に接続されている。基板30は、基体31と、複数の導体33,35とを有している。本実施形態では、基板30は、二つの導体33,35を有している。
【0026】
基体31は、互いに対向している一対の主面31a,31bを有している。基板30は、主面31bが圧電素体21と対向するように、ケース10内に配置されている。基体31は、平面視で、たとえば、略矩形状を呈している。基体31は、平面視で、たとえば、略円形状を呈していてもよい。基体31は、たとえば、ガラスエポキシ基板からなる。基体31には、ピン81が挿通される貫通孔と、ピン83が挿通される貫通孔とが形成されている。
【0027】
各導体33,35は、主面31a上に配置されている。各導体33,35は、たとえば、銅(Cu)からなる。各導体33,35の厚みは、たとえば、約80μmである。各導体33,35は、たとえば、めっきにより形成される。
【0028】
接続部材41は、電極23と導体33とを電気的に接続している。接続部材41は、電極23と導体33とに物理的に接続されている。接続部材41は、電極23に物理的かつ電気的に接続される部分41aと、導体33に物理的かつ電気的に接続される部分41bと、部分41aと部分41bとを接続している部分41cと、を有している。部分41aは、電極23の部分23cと重なる領域を有している。部分41aは、部分23cと重なる領域で、部分23cにはんだ接続されている。部分41bの一端は、基板30から突出している。部分41bは、基板30から突出している一端で、導体33にはんだ接続されている。
【0029】
接続部材41の部分41aは、圧電素子20と沿うように延在している。接続部材41の部分41bは、部分41aが延在している方向と交差する方向に延在している。本実施形態では、部分41aが延在している方向と、部分41bが延在している方向とは、略直交している。部分41cは、湾曲している。各部分41a,41b,41cは、一体に形成されている。接続部材41は、部分41cを有していなくてもよい。この場合、部分41aと部分41bとが直接的に接続されており、接続部材41はL字状に折れ曲がっている。
【0030】
接続部材43は、電極25と導体35とを電気的に接続している。接続部材43は、電極25と導体35とに物理的に接続されている。接続部材43は、電極25に物理的かつ電気的に接続される部分43aと、導体35に物理的かつ電気的に接続される部分43bと、部分43aと部分43bとを接続している部分43cと、を有している。部分43aは、電極25と重なる領域を有している。部分43aは、電極25と重なる領域で、電極25にはんだ接続されている。部分43bの一端は、基板30から突出している。部分43bは、基板30から突出している一端で、導体35にはんだ接続されている。
【0031】
接続部材43の部分43aは、圧電素子20と沿うように延在している。接続部材43の部分43bは、部分43aが延在している方向と交差する方向に延在している。本実施形態では、部分43aが延在している方向と、部分43bが延在している方向とは、略直交している。部分43cは、湾曲している。各部分43a,43b,43cは、一体に形成されている。接続部材43は、部分43cを有していなくてもよい。この場合、部分43aと部分43bとが直接的に接続されており、接続部材43はL字状に折れ曲がっている。
【0032】
各接続部材41,43は、板状の部材である。各接続部材41,43の厚みは、たとえば、約150μmである。各接続部材41,43は、たとえば、金属板からなる。この場合、各接続部材41,43は、たとえば、真鍮、りん青銅、又は銅からなる。各接続部材41,43の表面には、めっき層(不図示)が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、錫めっきにより形成されていてもよい。
【0033】
接続部材41と電極23とは、導電性接着剤により物理的かつ電気的に接続されていてもよい。接続部材41と導体33とは、導電性接着剤により物理的かつ電気的に接続されていてもよい。接続部材43と電極25とは、導電性接着剤により物理的かつ電気的に接続されていてもよい。接続部材43と導体35とは、導電性接着剤により物理的かつ電気的に接続されていてもよい。
【0034】
緩衝材60は、圧電素子20上に配置されている。緩衝材60は、圧電素子20と接している。緩衝材60は、ケース10とも接している。基板30は、緩衝材60内に配置されている。緩衝材60は、基板30とも接している。緩衝材60は、樹脂61と、樹脂61内に分散されている複数の中空粒子63と、を含んでいる。樹脂61は、たとえば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、又はウレタン樹脂からなる。各中空粒子63は、
図3に示されるように、殻63aを有している。殻63aは、内部空間63bを画成している。
図3は、中空粒子の端面構成を示す図である。
【0035】
各中空粒子63は、たとえば、ガラスバルーンである。この場合、殻63aは、ガラスからなる。殻63aを構成するガラスは、たとえば、ホウケイ酸ガラスを含む。各中空粒子63は、プラスチックバルーンであってもよい。この場合、殻63aは、プラスチックからなる。殻63aのシェル組成は、たとえば、アクリロニトリル系コポリマーである。複数の中空粒子63は、複数のガラスバルーンと、複数のプラスチックバルーンと、を含んでいてもよい。
【0036】
各中空粒子63がガラスバルーンである場合、ガラスバルーンの含有量の割合は、たとえば、以下の通りである。樹脂61とガラスバルーンとの含有量の合計が100質量%であるとき、ガラスバルーンの含有量の割合は、たとえば、10質量%以上20質量%以下である。
各中空粒子63がプラスチックバルーンである場合、プラスチックバルーンの含有量の割合は、たとえば、以下の通りである。樹脂61とプラスチックバルーンとの含有量の合計が100質量%であるとき、プラスチックバルーンの含有量の割合は、たとえば、10質量%以上20質量%以下である。
【0037】
中空粒子63は、たとえば、略球殻形状を呈している。中空粒子63の外径D1は、たとえば、15~65μmである。外径D1は、たとえば、メジアン径で規定してもよい。中空粒子63の内径D2は、たとえば、13.5~63.5μmである。殻63aの厚みT1は、たとえば、0.5~1.5μmである。複数の中空粒子63は、同じ外形形状を呈していてもよく、同じ外形形状を呈していなくてもよい。
【0038】
蓋材70は、圧電素子20、基板30、接続部材41,43、及び緩衝材60がケース10内に収容されている状態で、ケース10の開口を封止している。蓋材70は、収容空間S1を封止している。蓋材70は、緩衝材60と接している。本実施形態では、蓋材70は、樹脂からなる。蓋材70は、たとえば、シリコーンゴムからなる。蓋材70は、たとえば、RTV(Room Temperature Vulcanizing)シリコーンゴムからなる。各ピン81,83の他端は、蓋材70から露出している。蓋材70は、中空粒子63を含んでいない。
【0039】
本実施形態では、蓋材70は、収容空間S1のうち、緩衝材60が存在していない領域全体に設けられている。蓋材70は、
図4に示されるように、収容空間S1のうち、緩衝材60が存在していない領域の一部のみに設けられていてもよい。
蓋材70は、
図5に示されるように、複数の部分71,73を有していてもよい。
図5に示されている蓋材70は、二つの部分71,73を有している。蓋材70は、緩衝材60と接している部分71と、部分71と接している部分73と、を有している。部分71は、部分73と緩衝材60との間に位置している。この場合、部分71は、たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、又はシリコーン樹脂からなり、部分73は、たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、又はシリコーン樹脂からなる。蓋材70は、三つ以上の部分を有していてもよい。
【0040】
ピン81は、基板30(基体31)に形成されている貫通孔に挿通されている一端と、ケース10外に露出している他端とを有している。ピン81は、上記貫通孔に挿通されている状態で、導体33に物理的かつ電気的に接続されている。ピン81は、導体33にはんだ接続されている。ピン81と導体33とは、導電性接着剤により物理的かつ電気的に接続されていてもよい。ピン81は、導体33及び接続部材41を通して、電極23と電気的に接続されている。
【0041】
ピン83は、基板30(基体31)に形成されている貫通孔に挿通されている一端と、ケース10外に露出している他端とを有している。ピン83は、上記貫通孔に挿通されている状態で、導体35に物理的かつ電気的に接続されている。ピン83は、導体35にはんだ接続されている。ピン83と導体35とは、導電性接着剤により物理的かつ電気的に接続されていてもよい。ピン83は、導体35及び接続部材43を通して、電極25と電気的に接続されている。
【0042】
各ピン81,83は、たとえば、金属からなる。ピン81,83は、たとえば、真鍮からなる。各ピン81,83の表面には、めっき層(不図示)が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、ニッケルめっき及び錫めっきにより形成されていてもよい。この場合、めっき層は、二層構造である。各ピン81,83は、圧電デバイス1の外部端子を構成する。
【0043】
以上のように、本実施形態では、圧電デバイス1が、緩衝材60を備えている。緩衝材60は、超音波成分の残響を抑制する。
複数の中空粒子63が、緩衝材60を構成する樹脂61内に分散されている。中空粒子63は、内部空間63bを画成する殻63aを有している。この場合、超音波成分は、樹脂61と中空粒子63の殻63aとの界面と、中空粒子63の殻63aと内部空間63bとの界面と、で散乱される。したがって、圧電デバイス1では、中空粒子63を含まない構成に比して、中空粒子63による超音波成分の散乱減衰が大きい。圧電デバイス1は、超音波成分の残響をより一層低減する。
【0044】
中空粒子63がガラスバルーンである構成では、環境温度が変化する場合でも、中空粒子63が膨張又は収縮しがたい。したがって、圧電デバイス1は、環境温度が変化する場合でも、超音波成分の残響を低減する効果が変化しがたい。
中空粒子63がプラスチックバルーンである構成は、圧電デバイス1を軽量化し得る。
【0045】
圧電デバイス1は、基板30を備えている。基板30は、収容空間S1内に圧電素子20と離間して配置されており、圧電素子20と電気的に接続されている。基板30は、緩衝材60内に配置されている。
基板30が緩衝材60内に配置されている構成では、基板30が制振される。
【0046】
圧電デバイス1は、蓋材70を備えている。蓋材70は、樹脂からなり、収容空間S1を封止している。蓋材70は、緩衝材60と接している。
蓋材70が緩衝材60と接している構成では、超音波成分がより一層散乱しやすい。したがって、圧電デバイス1は、超音波成分の残響をより一層確実に低減する。
【0047】
ガラスバルーンの含有量の割合が、上述したように、10質量%以上20質量%以下である構成では、緩衝材60がケース10に充填される場合、ケース10と緩衝材60との間に間隙が生じがたい。更に、樹脂61と各中空粒子63との間にも隙間が生じがたい。したがって、圧電デバイス1は、超音波成分の残響をより一層確実に低減する。
プラスチックバルーンの含有量の割合は、上述したように、10質量%以上20質量%以下である。この場合にも、ケース10と緩衝材60との間に間隙が生じがたく、樹脂61と各中空粒子63との間にも隙間が生じがたい。したがって、圧電デバイス1は、超音波成分の残響をより一層確実に低減する。
【0048】
圧電デバイス1では、接続部材41,43が、緩衝材60と接している。圧電デバイス1が接続部材41,43を備えている場合、圧電素子20の振動が接続部材41,43に伝わり、接続部材41,43が微小に振動するおそれがある。接続部材41,43の微小振動は、残響振動を生じさせるおそれがある。接続部材41,43が緩衝材60と接している構成では、緩衝材60が接続部材41,43の微小振動を抑制する。したがって、圧電デバイス1は、接続部材41,43の微小振動が要因である残響振動を生じさせがたい。
【0049】
圧電デバイス1では、接続部材41が、電極23に物理的かつ電気的に接続される部分41aと、導体33に物理的かつ電気的に接続される部分41bと、を有している。接続部材43が、電極25に物理的かつ電気的に接続される部分43aと、導体35に物理的かつ電気的に接続される部分43bと、を有している。各部分41a,43aが、圧電素子20に沿うように延在しており、各部分43a,43bが、部分41a,43aが延在している方向と交差する方向に延在している。したがって、圧電素子20の振動が基板30に伝わりがたい。圧電デバイス1は、基板30と接続部材41,43との電気的な接続を確実に維持し、電気的な接続の信頼性が低下するのをより一層抑制する。
【0050】
圧電デバイス1では、接続部材41が、側面21c寄りに配置されており、接続部材43が、側面21cと対向している側面21d寄りに配置されている。接続部材41と接続部材43とが、離間している。したがって、圧電デバイス1は、接続部材41と接続部材43との短絡を防ぐ。
【0051】
電極23,25の各厚みが1.5μm以下である構成では、電極23,25の各厚みが1.5μmより大きい構成に比して、電極23,25が、圧電素子20(圧電素体21)の変位を阻害しがたい。したがって、圧電デバイス1は、振動特性をより一層向上する。
【0052】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0053】
圧電デバイス1は、
図6に示されるように、蓋材70を備えていなくてもよい。圧電デバイス1が蓋材70を備えていない構成では、たとえば、収容空間S1の全体が緩衝材60(樹脂61)で満たされていてもよい。
圧電デバイス1は、
図7に示されるように、基板30及び蓋材70を備えていなくてもよい。圧電デバイス1が基板30及び蓋材70を備えていない構成では、たとえば、収容空間S1の全体が緩衝材60(樹脂61)で満たされていてもよい。
【0054】
圧電デバイス1は、超音波の送信のみを行ってもよい。圧電デバイス1は、超音波の受信のみを行ってもよい。
圧電素子20は、圧電素体21内に配置される一つ又は複数の内部電極を有していてもよい。この場合、圧電素体21は複数の圧電体層を有していてもよく、内部電極と圧電体層とが交互に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…圧電デバイス、10…ケース、20…圧電素子、30…基板、60…緩衝材、61…樹脂、63…中空粒子、63a…殻、63b…内部空間、70…蓋材、S1…収容空間。