(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】電子装置の検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20231226BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G01N21/956 A
H01L21/66 R
(21)【出願番号】P 2020047229
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】押本 敦
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-215704(JP,A)
【文献】特開2011-112361(JP,A)
【文献】国際公開第2013/132638(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0361782(US,A1)
【文献】特開平11-190703(JP,A)
【文献】特開2011-122820(JP,A)
【文献】特開2010-271165(JP,A)
【文献】特開2002-076071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
H01L 21/64 - H01L 21/66
G01B 11/00 - G01B 11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子と基板との接合部の画像を撮像する撮像機構と、
前記撮像機構の光軸方向に対して斜方から前記接合部を照明する斜方照明と、
前記斜方照明を用いて前記撮像機構が撮像した斜方照明画像の中で、輝度が所定値以上である反射領域を特定し、前記反射領域に基づいて、前記接合部における、くびれの有無を判定する画像処理機構と、
を有する特徴とする電子装置の検査装置。
【請求項2】
前記画像処理機構は、前記接合部における前記反射領域に、前記電子素子と前記基板を結ぶ方向における分断があるか否かに基づいて前記くびれの有無を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置の検査装置。
【請求項3】
前記画像処理機構は、前記くびれの有無に基づいて前記接合部の良否を判定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置の検査装置。
【請求項4】
前記画像処理機構は、前記接合部における前記反射領域の輝度重心座標に、さらに基づいて前記接合部の良否を判定する
ことを特徴とする請求項3に記載の電子装置の検査装置。
【請求項5】
前記画像処理機構は、
前記斜方照明画像における、隣接する前記接合部間の反射に基づいて、前記接合部間のブリッジの有無を判定する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子装置の検査装置。
【請求項6】
開口を有し、凹面を前記接合部に向けて配されたドームをさらに備え、
前記斜方照明は、前記ドームの凹面から前記接合部を照明するように配され、
前記撮像機構は、前記開口から前記接合部を撮像するように配されていることを特徴と
する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子装置の検査装置。
【請求項7】
前記接合部が配置された接合面と垂直な方向を軸として、前記電子装置を回転させる回転機構をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電子装置の検査装置。
【請求項8】
撮像機構の光軸方向に対して斜方から電子素子と基板との接合部を照明する斜方照明で前記接合部を照明して斜方照明画像を撮像し、
前記斜方照明画像の中で輝度が所定値以上である反射領域を特定し、
前記反射領域に基づいて、前記接合部における、くびれの有無を判定する
ことを特徴とする電子装置の検査方法。
【請求項9】
前記接合部における前記反射領域に、前記電子素子と前記基板を結ぶ方向における分断があるか否かに基づいて前記くびれの有無を判定する
ことを特徴とする請求項8に記載の電子装置の検査方法。
【請求項10】
撮像機構の光軸方向に対して斜方から電子素子と基板との接合部を照明する斜方照明で前記接合部を照明して斜方照明画像を撮像するように前記斜方照明と前記撮像機構とを制御するステップと、
前記斜方照明画像の中で輝度が所定値以上である反射領域を特定するステップと、
前記反射領域に基づいて、前記接合部における、くびれの有無を判定するステップと、
を電子装置の検査装置に実行させることを特徴とする電子装置の検査装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ実装技術を用いたBGA(Ball Grid Array)等における半導体チップ接合部の検査として、テスト用の半導体チップを接合した後、該半導体チップを取り外して接合箇所を目視検査する方法が一般的に実施されている。
【0003】
また、近年では、X線、赤外線、超音波等を検査対象の半導体チップに照射し、半導体のシリコン、配線部、接合部のそれぞれの透過特性の違いによって形成される透過画像の特長により欠陥の有無を検知する手段が考えられている。電子装置における電子素子の接合部における検査方法又は検査装置は、例えば特許文献1~特許文献4に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の電子部品の接合部の検査方法においては、赤外線を透過する材料からなる部品本体を備える電子部品を使用する。そして、部品本体に赤外線を透過させながら、部品本体とパッド電極との界面において反射した赤外線に基づいて金属間化合物の生成状態を評価することによって、接合部の良否を判定する。
【0005】
特許文献2に記載の表面実装部品半田付外観検査方法においては、画像取り込みの手段としてハロゲン照明とカメラとファイバースコープとを一体に取付けた光学系のシステムを用いる。そして、ファイバースコープの先端より外観検査の対象物へハロゲン照明を照射し、その反射光をファイバースコープの先端よりカメラに取り込み、その画像処理により良否の判定を行っている。
【0006】
特許文献3に記載の半導体装置の検査方法は、BGAパッケージを基板に実装した際に、基板の電極と接続されるBGAパッケージのハンダボールの接合部の間隙に光線を照射する。そして、光線を受光素子により受光する工程と、光線を受光素子により受光することによってハンダボールの接合部のショートや位置ずれを判断する工程とを含む。
【0007】
特許文献4に記載の物体形状検査装置は、移動ステージを有し、ウエハ上のバンプを所定位置に順次設定し、上面からバンプを撮像した映像信号を画像処理することによりバンプの判定を行ないバンプの形状検査をする。この物体形状検査装置は、検査対象物に対する照射角度が異なるように配置され、所要の検査項目に合わせ切換え点灯される複数の照明手段と、該照明手段により照明されたバンプを撮像し、映像信号を出力する撮像手段とを有する。また画像処理判定手段を有し、画像処理手段は、入力される映像信号をディジタル化したデータと、あらかじめ記憶した基準データと比較し、記憶した所要の検査項目ごとに処理、判定し、検査結果データを出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-060605号公報
【文献】特開平06-094429号公報
【文献】特開2006-041167号公報
【文献】特開2000-131037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以下の分析は、本発明の観点から与えられる。
【0010】
テスト用の半導体チップを接合した後に取り剥がす検査方法では、検査時には欠陥が見つからなかったとしても、実際の製造工程において欠陥が発生しないという保証は得られない。また、この方法は、接合した半導体チップを取り剥がすという破壊手段を伴うので、近年の全数検査の要求に合う方法ではない。
【0011】
X線や赤外線を用いる検査方法では、X線や赤外線は金属をほとんど透過しないので、この検査方法は、配線密度の高い近年の半導体チップの接合検査には適用しにくい。また、特許文献1に記載の電子部品の接合部の検査方法においては、部品本体に赤外線を透過する材料を用いなければならないという制約も生じる。超音波を用いる検査方法では、検査対象を水中に沈めることが必要となる上、その検査時間が1分から数分程度とかかるので、全数検査が困難という問題点がある。
【0012】
特許文献2においては、接合部の撮像手段の技術は開示されているが、判定方法に関する技術は開示されていない。また、特許文献2に記載の表面実装部品半田付外観検査方法においては、1回の撮像で検査できる接合部の数はファイバースコープの視野を考えると数個程度である点、及び照明が同軸落射照明に限られることから、その効果が定かではない点に問題がある。
【0013】
特許文献3に記載の半導体装置の検査方法においては、受光素子は、検査対象であるBGAパッケージを挟んで光源とは反対側に配置されている。そのため、光路上に複数の、ハンダボールが存在すると、個々の接合の良否を判定できないという点に問題がある。
【0014】
特許文献4に記載の物体形状検査装置は、基板に接合する前のウエハ上のバンプの検査をするものであり、基板に接合した後の接合部の形状は検査することができない。特に、特許文献4に記載の物体形状検査装置は、バンプ上面からの画像によりバンプの良否を判定するものであり、基板との接合部の良否について判定することはできない。
【0015】
本発明の目的は、電子素子接合部の良否検査を容易にする電子装置の検査装置及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
電子装置の検査装置は、電子素子と基板との接合部の画像を撮像する撮像機構と、撮像機構の光軸方向に対して斜方から接合部を照明する斜方照明と、を有する。また、斜方照明を用いて撮像された斜方照明画像に基づいて接合部の良否を判定する画像処理機構とを備える。画像処理機構は、斜方照明画像における反射領域を特定する。そして、反射領域に基づいて、接合部における、くびれの有無を判定し、くびれの有無に基づいて接合部の良否を判定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果は、電子素子接合部の良否検査を容易にする電子装置の検査装置及び検査方法を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の検査装置のブロック図。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る電子装置の検査装置の概略構成図。
【
図3】斜方照明の正面、上面及び側面を示す概略三面図。
【
図4】
図3とは別形態の斜方照明の正面、上面及び側面を示す概略三面図。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る電子装置の検査装置の動作を説明するためのフローチャート。
【
図6】撮像機構の視野領域の一例を示す電子装置の概略部分平面図。
【
図7】良好な接合部の形状を示す接合部の概略平面図。
【
図8】斜方照明画像における良好な接合部の反射領域を示す接合部の概略平面図。
【
図9】不良な接合部(未溶融又は這い上がり不良)の形状を示す接合部の概略平面図。
【
図10】斜方照明画像における不良な接合部(未溶融又は這い上がり不良)の反射領域を示す接合部の概略平面図。
【
図11】不良な接合部(吸い上がり不良)の形状を示す接合部の概略平面図。
【
図12】斜方照明画像における不良な接合部(吸い上がり不良)の反射領域を示す接合部の概略平面図。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る電子装置の検査装置の動作の一実施形態を説明するためのフローチャート。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る電子装置の検査装置の概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の電子装置の検査装置10000の構成を示すブロック図である。電子装置の検査装置10000は、撮像機構1000と、斜方照明2000と、画像処理機構3000とを有する。
【0021】
撮像機構1000は、電子素子と基板との接合部の画像を撮像する。斜方照明2000は、撮像機構1000の光軸方向に対して斜方から接合部を照明する。
【0022】
画像処理機構3000は、斜方照明2000を用いて撮像された斜方照明画像に基づいて接合部の良否を判定する。画像処理機構3000は、斜方照明画像における反射領域を特定する。そして、反射領域に基づいて、接合部における、くびれの有無を判定し、くびれの有無に基づいて前記接合部の良否を判定する。
【0023】
上記した本実施形態の電子装置の検査装置によれば、斜方照明を用いることにより、接合部の輪郭を明確にして画像を撮像することができる。このため、電子素子接合部のくびれが容易に検出できる。そして、くびれの有無に基づいて電子素子接合部の良否検査を容易に行うことができる。
【0024】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る電子装置の検査装置について説明する。
図2に、本発明の第1実施形態に係る電子装置の検査装置の概略構成図を示す。電子装置の検査装置1は、ステージ部10と、照明部11と、撮像部12と、判定部13と、を備える。
【0025】
ステージ部10は、被検査体である電子装置20を搭載する搭載ステージ101と、搭載ステージを101所定の角度に軸回転させる回転機構102とを有する。また、撮像部12に対する位置及び距離を調節するように搭載ステージ101を平面方向に移動させる移動機構103と、回転機構102及び移動機構103を制御する機構制御部100と、を有する。ステージ部10は、焦点合わせや撮像領域の設定のために、撮像部12に対する電子装置20の位置を調節する。
【0026】
照明部11は、斜方照明111と、落射照明112と、斜方照明111及び落射照明112を制御する照明制御部110と、を有する。被検査体である電子装置20に対して、斜方照明111は撮像部12の光軸に対する斜方照明光となり、落射照明112は撮像部12の光軸に対する同軸照明光となる。
【0027】
図3に、斜方照明の正面、上面及び側面を示す概略三面図を示す。斜方照明111は、中央部分に開口111bを有し、半球殻状である。また、斜方照明111は、凹面(半球の内面)が被検査体に向いているドーム111aと、ドーム111aの凹面に配された少なくとも1つの第1光源111cと、を有する。ドーム111a及び第1光源111cは、電子装置20の接合部を照射するドーム照明を構成する。このドーム照明は、電子装置20の接合部の輪郭を抽出するために、撮像機構122及び光学系121の光軸に対して斜方照明となっている。ドーム照明としては、第1光源111cとして複数の小型の発光体(例えばLED)をドーム111aの凹面(半球殻内部)に(例えば格子状に)配置したダイレクトドーム照明を用いることができる。又は、ドーム111aの凹面に、光を反射ないし拡散する塗料を塗布し、第1光源(例えばLED)111cをドーム111aの凹面に向けて、ドーム111aの凹面によって反射された光によって間接的に電子装置20を照射する拡散ドーム照明であってもよい。第1光源111cは、電子装置20の接合部を照射できるように配置すればよく、例えば、ダイレクトドーム照明においては、第1光源111cをドーム111aの凹面に沿って円弧状に、かつ電子装置20を指向して発光するように配置すると好ましい。斜方照明111により、撮像部12の光軸に対して接合部の側方から照明することができる。これにより、接合部の輪郭が明確になり、外形やくびれの有無を判定することができる。
【0028】
図4に、
図3とは別形態の斜方照明の正面、上面及び側面を示す概略三面図を示す。
図3に示す形態においては、ドームの凹面全面に第1光源を配置したが、電子装置20の接合部の照射に影響のない位置であれば第1光源を配置しなくてもよい。例えば、ダイレクトドーム照明において、
図3に示すドーム111aのうち電子装置の接合部の照射に影響しない上部と下部において第1光源211cを配置しないような形態としてもよい。すなわち、
図4に示すような、上部と下部に凹面がないドーム211aのような形状に第1光源211cを配置する形態のものを使用してもよい。
【0029】
落射照明112は、第2光源(不図示)を有し、ドーム111aの開口111bから電子装置20の接合部を照明できるように配されている。例えば、落射照明112は、撮像部12の光軸と落射照明112の光軸とを一致させるように配置されている。落射照明112により、撮像部12の光軸を接合部の正面に合わせることが容易になるため、撮像の位置決めを容易に行うことができる。
【0030】
照明制御部110は、斜方照明111及び落射照明112のON/OFF、各照明の出力(照度)等を制御する。
【0031】
撮像部12は、斜方照明111の開口111bから電子装置20の接合部を撮像できるようになっている。そのために、光学系121及び撮像機構122と、光学系121及び撮像機構122を制御するカメラ制御部120と、撮像機構122が撮像した画像を記憶する画像記憶部123と、を有する。光学系121と撮像機構122は連結されている。落射照明112は、撮像機構122の光軸と落射照明112の光軸とが一致するように、光学系121に接続されている。
【0032】
判定部13は、撮像機構122が撮像した画像から電子装置20の接合部を抽出し、接合部の良否を判定する画像処理部130を有する。画像処理部130は、以下において説明するような接合部の反射領域に基づいて、接合部の良否を判定する。例えば、画像処理部130は、反射領域が基板側と電子素子側に分断されているか否かによって接合部のくびれの有無を判定し、くびれの有無によって接合部の良否を判定することができる。また、画像処理部130は、接合部間のブリッジの有無を判定することができる。
【0033】
次に、
図2に示す本発明の第1実施形態に係る電子装置の検査装置の動作の一実施形態について説明する。
図5に、本発明の第1実施形態に係る電子装置の検査装置の動作の一実施形態を説明するためのフローチャートを示す。被検査体は、例えば、電子素子202(例えばベアチップ)を基板201にフリップチップ実装した電子装置20であり、被検査部分は、電子装置20における電子素子202と基板201との接合部である。以下の説明においては、電子装置20において、基板201が下側、電子素子202が上側になっているものとする。
【0034】
まず、搭載ステージ101上に被検査体である電子装置20を供給する(S1)。ステージ部10により電子装置20の搭載が検知されると(S2)、機構制御部100により移動機構を作動させ、搭載ステージ101を移動させて、電子装置20を、最初に検査する電子装置20の辺の検査位置に移動させる(S3)。次に、この辺の中で最初に検査する接合部の検査位置に電子装置20を移動する(S4)。次に、この結合部の検査を行う(S5)。このフローチャートでは、検査の内容は定義済み処理として扱い、詳細は後述する。検査対象の接合部の検査を完了したら、検査対象の位置が辺の端に達したか判定する(S6)。辺の端に達していない、すなわち、その辺に、まだ検査対象の接合部が残っている場合には(S6_No)、隣の接合部の検査位置に、電子装置20を移動させ(S7)S5に戻り検査を行う。一方、検査が完了した接合部が、その辺の端に達した場合は(S6_Yes)、未検査の辺があるか判定する(S8)。未検査の辺がある場合は(S8_Yes)、ステージを、例えば90度回転させて(S9)、次の辺が検査できる位置に、電子装置20を配置する。そして、S4に戻り、その辺にある接合部の検査を行う。一方、未検査の辺がない、すなわち全ての辺の検査を完了したら(S8_No)、終了する。終了したら、例えば、搭載ステージ101を初期の位置に戻しても良い。
【0035】
次に接合部の検査について説明する。検査においては、まず検査対象の接合部が、撮像機構122の視野領域に入るようにステージ101の位置を調整する。
図6は、電子素子202の一辺の左端202aを撮像した例を示す概略部分平面図である。撮像機構122の位置調整が完了したら、撮像機構のフォーカスを接合部203に合わせる。フォーカス調整は、ステージ101の移動、撮像機構122のフォーカス調整のいずれか、あるいは両方を用いて行うことができる。
【0036】
次に、照明制御部110により、斜方照明111を点灯させて、所定の明るさに設定する。次に、斜方照明111のみの照明によって(落射照明112を使用せずに)電子装置20の接合部203を含む画像(以下「斜方照明画像」という)をカメラ制御部120により撮像機構122で撮像する。斜方照明画像の撮像が終了したら斜方照明111による照明も終了する。なお、斜方照明画像は、斜方照明111の明るさ等の条件を変えて、複数枚撮像してもよい。斜方照明画像は、画像記憶部123に格納される。
【0037】
次に斜方照明画像に対して検査領域を設定する。検査領域205の設定は、例えば、電子装置20の実装設計情報に基づいて、少なくとも1つの接合部が入るように行う。
図6の例では、接合部203における上下方向の中心線204を基準として、接合部203(特に電子素子202のバンプに相当する部分)を含む所定の大きさの領域を少なくとも1つ抽出し、この抽出領域を検査領域205としている。
【0038】
接合部203間のブリッジの有無を検査する場合には、接合部203間の領域を検査領域205とする。1つの撮像領域(斜方画像)に複数の接合部203及び接合部203間領域が含まれている場合、できる限り多くの接合部203ないし接合部203間領域を検査領域205として抽出すると良い。
【0039】
次に、撮像された画像と接合部の状態との関係について説明する。
図7は、良好な接合部203の形状を表す概略平面図である。接合部203が電子素子202に形成された球形のバンプと基板201に形成された予備ハンダとの接合によって形成されている。この場合、良好な接合部203は、接合工程において基板201の予備ハンダが溶融し、電子素子202のバンプに這い上がることによって形成される。したがって、良好な接合部203の形状は、くびれのない樽形状又は円柱形状となる。
【0040】
斜方照明111は撮像機構122の光軸に対し斜めに、接合部に光を照射する。
図8に、斜方照明画像における良好な接合部の反射領域を示す接合部の概略平面図を示す。
図8においては、反射領域を白、暗い部分をハッチングで示している。
【0041】
反射領域を画像内で所定値より輝度の高い領域と定義すると、斜方照明画像においては、
図8に示すように、反射領域203aは、接合部203の内側になり、接合部203の輪郭周辺部分203bは暗部となる。したがって、斜方照明画像において、反射領域203aが、接合部203の広い範囲に連続して存在している場合には、接合部を良好と判定することができる。
【0042】
図9に、不良な接合部207の形状の一例の概略平面図を示す。このような不良は、予備ハンダの未溶融(未溶融不良)や不十分な予備ハンダの這い上がり(這い上がり不良)によって生じる。
図9の例では、不良な接合部207は、くびれ207cを有する形状となっている。
図10に、斜方照明画像における不良な接合部207の反射領域207bの概略平面図を示す。
図10においては、各照明からの反射領域207aを白、輪郭周辺部分207bの暗部をハッチングで示している。斜方照明画像においては、
図10に示すように、反射領域207aは、接合部207のくびれ207cを境に上下に分断された形状となっている。すなわち、斜方照明画像において、反射領域207aに上下の分断がある場合には、くびれがあると判定し、接合部を不良と判定することができる。なお、反射領域207aの分断は、輝度分布をグラフ化したときに、輝度が閾値より低い領域の幅が所定位置以上であることをもって検出することができる。
【0043】
図11に、
図9とは別の態様の不良な接合部の概略平面図を示す。
図11の接合部208では、接合部208と基板201の間に予備ハンダのない隙間ができてしまっている。このような不良は、例えば、基板201の予備ハンダの粘度が低かったり、その量が少なかったりした場合に、溶融した予備ハンダが電子素子202のバンプ側に完全に吸い取られてしまうことによって生じる(吸い上がり不良)。
図12に、斜方照明画像における不良な接合部208と反射領域208aを示す。
図12では、反射領域208aを白、輪郭周辺部分206をハッチングで表している。この場合、不良な接合部208は、接合部208の下端(基板201側の端部)が基板201と接していない状態となっている。この時、反射領域208aの輝度重心は、良好な接合部に比べて電子素子202寄りとなる。したがって、輝度重心座標が所定の範囲から外れていることをもって、この不良を検出することができる。所定の範囲は、例えば電子素子202と基板201とのギャップの中央を基準にして定めることができる。なお、反射領域の重心座標は、例えば反射領域を画素に分割して、画素の座標の全平均を取ることによって得ることができる。そして、この輝度重心の座標が、所定の範囲より上方であれば、予備ハンダがバンプに吸い上げられた吸いあがり不良と判定することができる。逆に重心座標が基準範囲より下にある場合は、接合部208が電子素子から脱落していることを意味する。したがって、このように、重心位置についての規格を定めておき、規格を満足しない場合は、未接続の不良があると判定することができる。
【0044】
また接合不良には、ある接合部と隣の接合部とがハンダによってショートされるブリッジがある。ブリッジの検出は、例えば、隣接する接合部間に、所定面積以上の反射領域が存在するかを検出することで行うことができる。反射領域が存在すれば、ブリッジ有りと判断するようにすればよい。なお、接合部間のブリッジの有無を検査する場合には、接合部間の領域を検査領域として設定すればよい。
【0045】
図13は、以上に説明した検査の動作を示すフローチャートである。この処理は、
図5のフローチャートのS5「接合部を検査」の詳細動作である。
【0046】
まず斜方照明で接合部を照明し、斜方照明画像を撮像する(S501)。次に、各画像から検査領域を抽出する(S502)。次に、抽出した検査領域の接合部の画像の反射領域に上下の分断があるか判定する(S503)。上下の分断があった場合は(S503_Yes)、くびれ有りと判定し(S504)、接合不良と判定して(S510)終了する。一方、分断がなかったら(S503_No)、S505に進む。
【0047】
S505では、輝度重心が規格内であるか判定する。ここで規格内でなかった場合は(S505_No)、未接続ありと判定し(S506)、接合不良と判定して(S510)終了する。一方、輝度重心位置が規格内であった場合は(S505_Yes)、S507に進む。
【0048】
S507では、抽出した検査領域の中の、隣接する2つの接合部の間に反射領域があるか判定する。ここで、反射領域があったら(S507_Yes)、ブリッジ有りと判定し(S508)、接合不良と判定して(S510)終了する。一方、接合部の間に反射領域がなかったら(S507_No)、接合良品と判定し終了する(S509)。
【0049】
以上のような動作により、本実施形態の電子装置の検査装置は接合部の接合不良を検出することができる。なお上記のフローチャートでは、反射領域における分断の有無の判定、輝度重心位置が規格を満たすかの判定、接合部間における反射領域の有無の判定を、この記載の順に行ったが、これらの判定の順番は順不同でよい。また斜方照明画像の撮像、落射照明画像の撮像に続けて、接合部の良否判定を行う動作として説明したが、撮像だけを先に行い、画像の検査をまとめて行う動作としても良い。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、斜方照明と同軸照明とを併用することにより、接合部の良否判定を容易に実施することができる。そして、良否判定の精度を高めることができる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る電子装置の検査装置について説明する。第2実施形態においては、回転機構により電子装置を回転させて、各方向から接合部を検査した。本実施形態においては、検査装置は、回転機構を有さず、電子装置を移送する際に各方向から検査を実施する。
図14に、本発明の第3実施形態に係る電子装置の検査装置の概略平面図を示す。
【0052】
検査装置3は、第1~第4ステージユニット301,304,307,310と、各ステージユニットに対応する第1~第4撮像ユニット302,305,308,311とを有する。また、各ステージユニット間で電子装置20を搬送する第1~第3コンベア303,306,309を有する。さらに、電子装置20をステージユニットからコンベアに載せる第1プッシャ(不図示)及び電子装置20をコンベアからステージユニットに載せる第2プッシャ(不図示)と、を有する。
【0053】
第1~第4ステージユニット301,304,307,310は、それぞれ、第1実施形態において説明した搭載ステージと、移動機構と、機構制御部と、を有する。第1~第4ステージユニット301,304,307,310は、第1ステージユニット301と第2ステージユニット304とを結ぶ線と第2ステージユニット304と第3ステージユニット307とを結ぶ線とが直交するように配されている。また、第1ステージユニット301と第2ステージユニット304とを結ぶ線と第3ステージユニット307と第4ステージユニット310とを結ぶ線とが平行となるように配されている。
【0054】
第1~第4撮像ユニット302,305,308,311は、それぞれ、第1実施形態において説明した、斜方照明と、落射照明と、照明制御部と、光学系と、撮像機構と、カメラ制御部と、を有する。第1~第4撮像ユニット302,305,308,311は、電子装置20を回転せずに各側面(各辺)を撮像できるように、それぞれ異なる方向を向いている。
【0055】
第2実施形態において説明した画像処理部及び画像記憶部は、第1~第4撮像ユニット302,305,308,311に対して一括して処理できるように1つ設けてもよいし、それぞれのユニットに設けてもよい。
【0056】
また、検査装置3は、検査前の電子装置20を第1ステージユニット301に移送するローダ300及び検査が終了した電子装置20を排出するアンローダ312を設けてもよい。
【0057】
次に、第3実施形態に係る検査装置の動作及び検査方法について説明する。本実施形態のおいては、第1~第4ステージユニット301,304,307,310において、それぞれ、電子装置の一側面(一辺)の撮像及び検査を実施し、各ステージユニット間はコンベア303,306,309を用いて電子装置20を搬送する。したがって、電子装置を回転機構により回転させるのか、それともコンベアにより搬送するか、を除けば、本実施形態に係る検査装置の動作及び検査方法は、第2実施形態と同様である。つまり、1箇所で撮像及び検査するのか、それとも複数個所で撮像及び検査するのかの違いである。
【0058】
本実施形態によれば、被検査体である電子装置20を回転させることなく、すべての側面(辺)の検査をインラインで行うことができ、また、ラインの構造を単純化することができる。
【0059】
第2実施形態及び第3実施形態においては、被検査体である電子装置20を移動させた
り回転させたりしたが、撮像部を移動させたり回転させたりするようにしてもよい。
【0060】
上述した第1乃至第3施形態の処理を、コンピュータに実行させるプログラムおよび該プログラムを格納した記録媒体も本発明の範囲に含む。記録媒体としては、例えば、磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、などを用いることができる。
【0061】
以上、上記の第1乃至第3実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【0062】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
電子素子と基板との接合部の画像を撮像する撮像機構と、
前記撮像機構の光軸方向に対して斜方から前記接合部を照明する斜方照明と、
前記斜方照明を用いて前記撮像機構が撮像した斜方照明画像の中で、輝度が所定値以上である反射領域を特定し、前記反射領域に基づいて、前記接合部における、くびれの有無を判定する画像処理機構と、
を有することを特徴とする電子装置の検査装置。
(付記2)
前記画像処理機構は、前記接合部における前記反射領域に、前記電子素子と前記基板を結ぶ方向における分断があるか否かに基づいて前記くびれの有無を判定する
ことを特徴とする付記1に記載の電子装置の検査装置。
(付記3)
前記画像処理機構は、前記くびれの有無に基づいて前記接合部の良否を判定する
ことを特徴とする付記1または2に記載の電子装置の検査装置。
(付記4)
前記画像処理機構は、前記接合部における前記反射領域の輝度重心座標に、さらに基づいて前記接合部の良否を判定する
ことを特徴とする付記3のいずれかに記載の電子装置の検査装置。
(付記5)
前記画像処理機構は、
前記斜方照明画像における、隣接する前記接合部間の反射に基づいて、前記接合部間のブリッジの有無を判定する
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか一つに記載の電子装置の検査装置。
(付記6)
開口を有し、凹面を前記接合部に向けて配されたドームをさらに備え、
前記斜方照明は、前記ドームの凹面から前記接合部を照明するように配され、
前記撮像機構は、前記開口から前記接合部を撮像するように配されている
ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか一つに記載の電子装置の検査装置。
(付記7)
前記接合部が配置された接合面と垂直な方向を軸として、前記電子装置を回転させる回転機構をさらに備える
ことを特徴とする付記1乃至6のいずれか一つに記載の電子装置の検査装置。
(付記8)
前記画像処理装置は、前記電子装置の設計情報に基づき、前記落射照明画像から検査領域を決定する
ことを特徴とする付記1乃至7のいずれか一つに記載の電子装置の検査装置。
(付記9)
前記撮像機構と、前記斜方照明と、を有する4つの撮像ユニットを有し、
4つの前記撮像ユニットは、それぞれ、異なる方向を向いていることを特徴とする付記1乃至8のいずれか一つに記載の電子装置の検査装置。
(付記10)
撮像機構の光軸方向に対して斜方から電子素子と基板との接合部を照明する斜方照明で前記接合部を照明して斜方照明画像を撮像し、
前記斜方照明画像の中で輝度が所定値以上である反射領域を特定し、
前記反射領域に基づいて、前記接合部における、くびれの有無を判定する、
ことを特徴とする電子装置の検査方法。
(付記11)
前記反射領域が分断されているか否かに基づいて前記くびれの有無を判定する
ことを特徴とする付記10に記載の電子装置の検査方法。
(付記12)
前記くびれの有無に基づいて前記接合部の良否を判定する
ことを特徴とする付記10または11に記載の電子装置の検査方法。
(付記13)
前記接合部における前記反射領域の輝度重心座標に、さらに基づいて前記接合部の良否を判定する
ことを特徴とする付記12に記載の電子装置の検査方法。
(付記14)
前記斜方照明画像における、隣接する前記接合部間の反射に基づいて、前記接合部間のブリッジの有無を判定する
ことを特徴とする付記10乃至13のいずれか一つに記載の電子装置の検査方法。
(付記15)
前記電子装置の設計情報を基づいて、前記斜方照明画像における検査領域を決定する
ことを特徴とする付記10乃至14のいずれか一つに記載の電子装置の検査方法。
(付記16)
撮像機構の光軸方向に対して斜方から電子素子と基板との接合部を照明する斜方照明で前記接合部を照明して斜方照明画像を撮像するように前記斜方照明と前記撮像機構とを制御するステップと、
前記斜方照明画像の中で輝度が所定値以上である反射領域を特定するステップと、
前記反射領域に基づいて、前記接合部における、くびれの有無を判定するステップと、
を電子装置の検査装置に実行させることを特徴とする電子装置の検査装置の制御プログラム。
【符号の説明】
【0063】
1、10000 電子装置の検査装置
10 ステージ部
11 照明部
12 撮像部
13 判定部
20 電子装置
100 機構制御部
101 搭載ステージ
102 回転機構
103 移動機構
110 照明制御部
111 斜方照明
112 落射照明
120 カメラ制御部
121 光学系
122 撮像機構
123 画像記憶部
130 画像処理部
201 基板
202 電子素子
203 接合部
205 検査領域
207、208 不良な接合部
207c くびれ
1000 撮像機構
2000 斜方照明