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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/198 20210101AFI20231226BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20231226BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20231226BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20231226BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20231226BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20231226BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20231226BHJP
   H01M 50/103 20210101ALN20231226BHJP
【FI】
H01M50/198
H01M50/184 A
H01M50/193
H01M10/04 Z
H01M10/30 Z
H01G11/12
H01G11/80
H01M50/103
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020076149
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021174632
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【弁理士】
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】山田 正博
(72)【発明者】
【氏名】田丸 耕二郎
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-018698(JP,A)
【文献】特開2018-049743(JP,A)
【文献】特開2019-079677(JP,A)
【文献】特開2018-106962(JP,A)
【文献】国際公開第2019/151193(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/10-50/198
H01M10/00-10/39
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の金属板を有する積層体と、
前記複数の金属板のうちの互いに隣り合う2つの金属板の間に形成される内部空間を封止するための封止体と、を備え、
前記複数の金属板は、正極終端電極の金属板と、負極終端電極の金属板と、前記正極終端電極及び前記負極終端電極の間に設けられた複数のバイポーラ電極の金属板と、を有し、
前記封止体は、前記金属板の周縁部に接合された矩形環状の第1封止部と、積層された前記第1封止部の周囲に設けられた第2封止部と、を有し、
前記第2封止部は、前記第1封止部の周囲に設けられた第1樹脂部と、前記第1樹脂部の周囲に設けられた第2樹脂部と、を有し、
前記第1封止部の線膨張係数と前記第1樹脂部の線膨張係数との差は、前記第1封止部の線膨張係数と前記第2樹脂部の線膨張係数との差よりも小さく、
前記第1樹脂部の線膨張係数は、前記第1封止部の線膨張係数と前記第2樹脂部の線膨張係数との間に設定されている、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第1樹脂部の線膨張係数は、前記第1封止部の線膨張係数よりも小さく、かつ、前記第2樹脂部の線膨張係数よりも大きい、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記第1樹脂部のメルトフローレートは、前記第2樹脂部のメルトフローレートよりも大きい、請求項1又は2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記第2封止部は、前記第2樹脂部の周囲に設けられた第3樹脂部を更に有し、
前記第3樹脂部の線膨張係数は、前記第2樹脂部の線膨張係数と同じである、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、金属板の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。バイポーラ電池は、バイポーラ電極とセパレータとが積層方向に沿って交互に積層された積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向において互いに隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電モジュールでは、封止体が、互いに異なる樹脂材料からなる複数の樹脂部を有する場合がある。この場合、環境温度の変化により、樹脂部間の接合強度が低下し、封止体による電解液の封止性が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は、封止体の封止性の低下を抑制可能な蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る蓄電モジュールは、積層された複数の金属板を有する積層体と、複数の金属板のうちの互いに隣り合う2つの金属板の間に形成される内部空間を封止するための封止体と、を備え、複数の金属板は、正極終端電極の金属板と、負極終端電極の金属板と、正極終端電極及び負極終端電極の間に設けられた複数のバイポーラ電極の金属板と、を有し、封止体は、金属板の周縁部に接合された矩形環状の第1封止部と、積層された第1封止部の周囲に設けられた第2封止部と、を有し、第2封止部は、第1封止部の周囲に設けられた第1樹脂部と、第1樹脂部の周囲に設けられた第2樹脂部と、を有し、第1封止部の線膨張係数と第1樹脂部の線膨張係数との差は、第1封止部の線膨張係数と第2樹脂部の線膨張係数との差よりも小さい。
【0007】
この蓄電モジュールでは、第1封止部の線膨張係数と第1樹脂部の線膨張係数との差は、第1封止部の線膨張係数と第2樹脂部の線膨張係数との差よりも小さい。このため、封止体の線膨張係数は、内側から外側に向かって二段階で変化する。よって、封止体の線膨張係数が一段階で変化する構成に比べて、封止体の各部間における線膨張係数差をそれぞれ抑制することができる。したがって、環境温度の変化により、封止体の各部間の接合強度が低下することが抑制される。この結果、封止体の封止性の低下を抑制することができる。
【0008】
第1樹脂部の線膨張係数は、第1封止部の線膨張係数よりも小さく、かつ、第2樹脂部の線膨張係数よりも大きくてもよい。この場合、封止体の線膨張係数を内側から外側に向かって二段階で小さくすることができる。
【0009】
第1樹脂部のメルトフローレートは、第2樹脂部のメルトフローレートよりも大きくてもよい。この場合、第1樹脂部を射出成形により第1封止部の周囲に形成する際、樹脂材料が第1封止部の表面形状に追従し易い。よって、第1封止部と第1樹脂部との間の界面にボイドが発生することが抑制される。
【0010】
第2封止部は、第2樹脂部の周囲に設けられた第3樹脂部を更に有し、第3樹脂部の線膨張係数は、第2樹脂部の線膨張係数と同等である。この場合、第2樹脂部と第3樹脂部との間の接合強度は、環境温度の変化によって低下し難い。したがって、封止体の封止性の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、封止体の封止性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一本実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、図1に示される蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3図3は、図1に示された蓄電モジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0014】
図1は、一実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置の一例を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、又は電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、モジュール積層体2と、拘束部材3と、を備えている。
【0015】
モジュール積層体2は、複数(本実施形態では4つ)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では3つ)の導電板5と、を含む。複数の蓄電モジュール4は、積層方向Dに沿って積層されている。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向Dから見て矩形状を呈している。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池及びリチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0016】
積層方向Dにおいて互いに隣り合う2つの蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して互いに電気的に接続されている。ここでは、モジュール積層体2の積層端には、いずれも蓄電モジュール4が配置されており、導電板5は、積層方向Dにおいて互いに隣り合う2つの蓄電モジュール4の間にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の積層方向Dにおける外側には、導電板5とは異なる導電板Pが配置されている。積層下端に位置する導電板Pには、正極端子6が接続されている。積層上端に位置する導電板Pには、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板Pの縁部から積層方向Dと交差(直交)する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0017】
導電板5には、複数の流路5aが設けられている。流路5aは、空気等の冷却用流体を流通させるための貫通孔である。流路5aは、例えば、積層方向Dと、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とにそれぞれ交差(直交)する方向に延在し、導電板5を貫通している。導電板5は、積層方向Dにおいて互いに隣り合う2つの蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷却用流体を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放出する放熱板としての機能を併せ持つ。図1の例では、積層方向Dから見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0018】
拘束部材3は、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向Dに拘束荷重を付加する部材である。拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向Dに挟む一対のエンドプレート8と、一対のエンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10と、を含んでいる。エンドプレート8は、積層方向Dから見た蓄電モジュール4、導電板5、及び導電板Pの面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8と導電板Pとの間には、電気絶縁性を有する絶縁板Fが設けられている。絶縁板Fにより、エンドプレート8と導電板Pとの間が絶縁されている。
【0019】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側の位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4、導電板5、及び導電板Pが一対のエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化される。モジュール積層体2に対し、積層方向Dに拘束荷重が付加されている。
【0020】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向Dに沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、負極終端電極18と、正極終端電極19と、負極終端電極18及び正極終端電極19の間に設けられた複数のバイポーラ電極14と、を含む。
【0021】
複数のバイポーラ電極14は、負極終端電極18と、正極終端電極19との間に設けられている。バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む金属板15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有している。正極16は、正極活物質が金属板15に塗工されることにより形成されている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17は、負極活物質が金属板15に塗工されることにより形成されている。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。
【0022】
本実施形態では、金属板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、金属板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0023】
負極終端電極18は、金属板15と、金属板15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18は、複数の電極における積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0024】
正極終端電極19は、金属板15と、金属板15の一方面15aに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19は、複数の電極における積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の一方面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0025】
本実施形態では、電極積層体11は、負極終端電極18及び正極終端電極19の外側に配置され、電極積層体11の最外層を構成する一対の金属板15を更に有している。負極終端電極18の外側に配置された金属板15の一方面15aは、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5又は導電板P(図1参照)と電気的に接続されている。正極終端電極19の外側に配置された金属板15の他方面15bは、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5又は導電板P(図1参照)と電気的に接続されている。
【0026】
電極積層体11は、積層方向Dに沿って積層された複数の金属板15を有している。複数の金属板15は、負極終端電極18の金属板15と、正極終端電極19の金属板15と、複数のバイポーラ電極14の金属板15と、負極終端電極18及び正極終端電極19の外側に配置された一対の金属板15と、を有する。
【0027】
金属板15は、例えば表面にめっきが施されたニッケル板や、表面にめっきが施された鋼板などからなる。ここでは、金属板15は、鋼板の表面にニッケルによるめっきを施してなるめっき鋼板によって構成されている。めっき鋼板の基材となる鋼板には、例えば圧延鋼などの普通鋼や、ステンレス鋼などの特殊鋼が用いられる。バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19の金属板15の周縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。負極終端電極18及び正極終端電極19の外側に配置された一対の金属板15では、周縁部15cを含む全体が未塗工領域となっている。
【0028】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。
【0029】
図3は、図1に示された蓄電モジュールの斜視図である。図3に示されるように、封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成され、4つの辺部12a,12b,12c,12dを有している。辺部12a,12bは、互いに対向している。辺部12c,12dは、互いに対向している。辺部12aには、複数の貫通孔12eが設けられている。
【0030】
図2に示されるように、封止体12は、金属板15の周縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて周縁部15cを保持している。封止体12は、金属板15の周縁部15cに接合された複数の第1封止部21と、積層方向Dに沿って延び、積層された複数の第1封止部21の周囲に設けられた第2封止部22とを有している。第1封止部21及び第2封止部22は、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂によって構成されている。封止体12の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0031】
第1封止部21は、金属板15の一方面15aにおいて周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形環状又は矩形枠状をなしている。第1封止部21は、バイポーラ電極14の金属板15のみならず、負極終端電極18の金属板15、正極終端電極19の金属板15、負極終端電極18及び正極終端電極19の外側に配置された一対の金属板15にも設けられている。正極終端電極19の外側に配置された金属板15では、一方面15a及び他方面15bの双方の周縁部15cに第1封止部21が設けられている。
【0032】
第1封止部21は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムを用いて形成されている。第1封止部21は、金属板15の周縁部15cに重ねられ、重なり部分Kが形成されている。重なり部分Kにおいて、第1封止部21は、例えば超音波又は熱圧着によって金属板15に気密に溶着されている。金属板15の表面は、重なり部分Kにおいて、粗面化されている。本実施形態では、金属板15の全面が粗面化されている。粗面化は、例えば電解メッキによる複数の突起の形成により実現し得る。重なり部分Kでは、溶融状態の樹脂が粗面化により形成された複数の突起間に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、金属板15と第1封止部21との間の接合強度を向上させることができる。粗面化の際に形成される突起は、例えば基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。これにより、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となり、アンカー効果を高めることが可能となる。
【0033】
第1封止部21の内側部分は、積層方向Dに互いに隣り合う2つの金属板15の周縁部15c同士の間に位置している。バイポーラ電極14及び正極終端電極19に溶着された第1封止部21の内側部分には、セパレータ13の縁部を載置するための段部23が設けられている。複数の第1封止部21の外側部分は、金属板15の縁よりも外側に張り出している。辺部12b,12c,12dでは、複数の第1封止部21の先端部は、溶着部24を形成している。溶着部24は、例えば、熱板溶着又は赤外線溶着により溶融された複数の第1封止部21の先端部同士が互いに結合して形成されている。溶着部24は、第2封止部22の射出成形前に形成される。
【0034】
辺部12b,12c,12dでは、溶着部24が形成されることで、複数の第1封止部21の先端部の位置を揃えることができる。辺部12aでは、溶着部24が形成されていない。金属板15に第1封止部21が溶着されてなるユニットは、ユニットにおける辺部12aに対応する辺を基準として積層される。これにより、辺部12aでは、辺部12b,12c,12dに比べて、複数の第1封止部21の先端部の位置が揃っている。
【0035】
第2封止部22は、電極積層体11及び第1封止部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2封止部22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2封止部22は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形筒状をなしている。第2封止部22は、例えば射出成形時の熱によって第1封止部21に溶着されている。
【0036】
第2封止部22は、第1封止部21の周囲に設けられた第1樹脂部26と、第1樹脂部26の周囲に設けられた第2樹脂部27と、第2樹脂部27の周囲に設けられた第3樹脂部28とを備える。
【0037】
第1樹脂部26は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形筒状をなしている。第1樹脂部26は、第1封止部21と第2樹脂部27との間に配置されている。第1樹脂部26は、第2封止部22の内側面を構成している。第1樹脂部26は、例えば、射出成形時の熱によって第1封止部21の先端部(辺部12b,12c,12dでは、溶着部24)に溶着され、第1封止部21の先端部との間に相溶部分25を形成している。相溶部分25では、第1樹脂部26及び第1封止部21の先端部が互いに熱溶融されて相溶している。辺部12aでは、相溶部分25において、複数の第1封止部21の先端部同士が互いに結合している。
【0038】
第2樹脂部27は、本体部27Aと、オーバーハング部27Bと、を有している。本体部27Aは、積層方向Dを軸方向として延在する矩形筒状をなし、第1樹脂部26の外側面26aを覆っている。本体部27Aは、第1樹脂部26と第3樹脂部28との間に配置されている。オーバーハング部27Bは、本体部27Aの積層方向Dの一端部から電極積層体11の内側に張り出している。第2樹脂部27は、本体部27Aと、オーバーハング部27Bとによって、断面L字状に形成されている。
【0039】
例えば射出成形時の熱によって、本体部27Aは、外側面26aに溶着されている。オーバーハング部27Bは、負極終端電極18の外側に配置された金属板15の一方面15aに設けられた第1封止部21に溶着されている。オーバーハング部27Bは、第1樹脂部26の積層方向Dの一端面にも溶着されている。図示を省略するが、第2樹脂部27と、第1樹脂部26及び第1封止部21のそれぞれとの間に相溶部分が形成されている。
【0040】
第3樹脂部28は、本体部28Aと、オーバーハング部28Bと、を有している。本体部28Aは、積層方向Dを軸方向として延在する矩形筒状をなし、第2樹脂部27の外側面27aを覆っている。本体部28Aは、第2封止部22の外側面を構成している。オーバーハング部28Bは、本体部28Aの積層方向Dの他端部から電極積層体11の内側に張り出している。第3樹脂部28は、本体部28Aと、オーバーハング部28Bとによって、断面L字状に形成されている。
【0041】
例えば射出成形時の熱によって、本体部28Aは、外側面27aに溶着されている。オーバーハング部28Bは、正極終端電極19の外側に配置された金属板15の他方面15bに設けられた第1封止部21に溶着されている。オーバーハング部28Bは、第1樹脂部26の積層方向Dの他端面、及び、本体部27Aの積層方向Dの他端面にも溶着されている。オーバーハング部27Bは、第3樹脂部28から露出している。図示を省略するが、第3樹脂部28と、第2樹脂部27、第1樹脂部26、及び第1封止部21のそれぞれとの間にも相溶部分が形成されている。
【0042】
封止体12は、複数の金属板15のうちの互いに隣り合う2つの金属板15の間に形成される内部空間Vを封止する。これにより、互いに隣り合う2つの金属板15の間には、気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む水系の電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。内部空間Vは、辺部12aに設けられた貫通孔12e(図3参照)と連通している。
【0043】
第1封止部21の線膨張係数と第1樹脂部26の線膨張係数との差は、第1封止部21の線膨張係数と第2樹脂部27の線膨張係数との差よりも小さい。第1樹脂部26の線膨張係数は、第1封止部21の線膨張係数よりも小さく、かつ、第2樹脂部27の線膨張係数よりも大きい。第2樹脂部27及び第3樹脂部28の線膨張係数は、互いに同等である。各線膨張係数は、例えば、各部を構成する構成材料によって調整される。本実施形態では、第2樹脂部27及び第3樹脂部28の構成材料として、同じ材料が用いられている。
【0044】
第1封止部21は、例えば、酸変性ポリプロピレンにより構成されている。第1樹脂部26は、例えば、ポリプロピレンにより構成されている。第2樹脂部27及び第3樹脂部28は、例えば、高い強度を有する変性ポリフェニレンエーテルがポリプロピレンに混合されて構成されている。第1封止部21の線膨張係数は、例えば12×10-5/K以上25×10-5/K以下であってもよく、18×10-5/K以上23×10-5/K以下であってもよい。第1樹脂部26の線膨張係数は、例えば5×10-5/K以上15×10-5/K以下であってもよく、8×10-5/K以上11×10-5/K以下であってもよい。第2樹脂部27及び第3樹脂部28の線膨張係数は、例えば3×10-5/K以上12×10-5/K以下であってもよく、5×10-5/K以上10×10-5/K以下であってもよい。
【0045】
本実施形態では、第2樹脂部27及び第3樹脂部28には、引張強度の高い樹脂として、例えばPPEが使用されている。第2樹脂部27及び第3樹脂部28の引張強度は、互いに同等である。第2樹脂部27及び第3樹脂部28の引張強度は、例えば37MPaである。
【0046】
第1樹脂部26のメルトフローレートは、第2樹脂部27及び第3樹脂部28のメルトフローレートよりも大きい。本実施形態では、第2樹脂部27及び第3樹脂部28のメルトフローレートは、互いに同等である。メルトフローレートは、JIS K7210に準じて求められる。第1樹脂部26のメルトフローレートは、例えば、温度230℃及び荷重2.16kgfにおいて、3g/10min以上15g/10min以下であってもよく、5g/10min以上11g/10min以下であってもよい。第2樹脂部27及び第3樹脂部28のメルトフローレートは、例えば、温度230℃及び荷重10kgfにおいて、11g/10min以上25g/10min以下であってもよく、13g/10min以上23g/10min以下であってもよい。各メルトフローレートは、例えば、各樹脂部を構成する構成材料の分子量によって調整される。なお、第1封止部21のメルトフローレートは、第1樹脂部26のメルトフローレートよりも大きい。第1封止部21のメルトフローレートは、例えば、温度230℃及び荷重2.16kgfにおいて、11g/10min以上25g/10min以下であってもよく、13g/10min以上23g/10min以下であってもよい。
【0047】
第1封止部21の成形収縮率と第1樹脂部26の成形収縮率との差は、第1封止部21の成形収縮率と第2樹脂部27の成形収縮率との差よりも小さい。第1樹脂部26の成形収縮率は、第1封止部21の成形収縮率よりも大きく、かつ、第2樹脂部27及び第3樹脂部28の成形収縮率よりも小さい。本実施形態では、第2樹脂部27及び第3樹脂部28の成形収縮率は、互いに同等である。第1封止部21の成形収縮率は、例えば0.4以上1.8以下である。第1樹脂部26の成形収縮率は、例えば0.8以上2.0以下であってもよく、0.9以上1.2以下であってもよい。第2樹脂部27及び第3樹脂部28の成形収縮率は、例えば1.8以上2.8以下であってもよく、2.0以上2.5以下であってもよい。
【0048】
第1封止部21には、強アルカリ性の電解液による樹脂の劣化を防ぐための添加剤(酸化防止剤)が添加されている。第1封止部21及び第1樹脂部26は相溶されているので、第1封止部21に添加された添加剤は、いわゆるブリード現象により、第1樹脂部26へ拡散される。このため、第1封止部21における添加剤が徐々に減少するおそれがある。そこで、本実施形態では、第1樹脂部26及び第1封止部21に同じ添加剤を予め添加する。これにより、添加剤が第1封止部21から第1樹脂部26へ一方的に拡散することが抑制される。また、第1封止部21及び第1樹脂部26の添加剤が電解液と接することで消費された場合、添加剤が第1封止部21及び第1樹脂部26間を拡散により双方向に行き来する。このように、第1封止部21及び第1樹脂部26では、添加剤を補い合うことができるので、耐電解液性が向上する。
【0049】
第2封止部22は、蓄電モジュール4の外壁を構成しているため、高い強度を有する必要がある。このため、第2封止部22では、強度を重視して構成材料が選択される。一方、第1封止部21では、金属板15及び第2封止部22との溶着性等を考慮し、第2封止部22とは異なる構成材料が選択される。仮に、第1樹脂部26を含めた第2封止部22の全体が同じ材料で構成され、第1樹脂部26の線膨張係数が、第2樹脂部27及び第3樹脂部28の線膨張係数と同程度の大きさであるとすると、第1樹脂部26と第1封止部21との間の線膨張係数差が大きくなる。したがって、環境温度の変化により、第1樹脂部26と第1封止部21との間で接合強度が低下し、封止体12による電解液の封止性が低下するおそれがある。
【0050】
これに対し、蓄電モジュール4では、第1樹脂部26は、第2樹脂部27及び第3樹脂部28の構成材料とは異なる材料で構成され、第1封止部21の線膨張係数と第1樹脂部26の線膨張係数との差は、第1封止部21の線膨張係数と第2樹脂部27の線膨張係数との差よりも小さくなっている。このように第1樹脂部26の線膨張係数が、第1封止部21の線膨張係数と、第2樹脂部27及び第3樹脂部28の線膨張係数との間に設定されているので、封止体12の線膨張係数は、内側から外側に向かって二段階で変化する。このため、封止体12の線膨張係数が一段階で変化する構成に比べて、封止体12の各部間の界面における線膨張係数差を抑制することができる。したがって、環境温度の変化により、封止体12の各部間の接合強度が低下することが抑制される。この結果、封止体12の封止性の低下を抑制することができる。
【0051】
第1樹脂部26の線膨張係数が、第1封止部21の線膨張係数よりも大きく、かつ、第2樹脂部27及び第3樹脂部28の線膨張係数よりも小さくなっている。よって、封止体12の線膨張係数を内側から外側に向かって二段階で小さくすることができる。
【0052】
第1樹脂部26のメルトフローレートは、第2樹脂部27及び第3樹脂部28のメルトフローレートよりも大きい。このため、第1樹脂部26を射出成形により第1封止部21の周囲に形成する際、樹脂材料が第1封止部21の表面形状に追従し易い。よって、第1封止部21と第1樹脂部26との間の界面にボイドが発生することが抑制される。第1樹脂部26を射出成形により形成する際、辺部12aでは、辺部12b,12c,12dと異なり、溶着部24が形成されていないので、複数の第1封止部21の先端部からなる外側面に微小な隙間が存在する。よって、第1樹脂部26のメルトフローレートが低いと、特に、辺部12aにおいて、隙間に樹脂材料が充填されず、第1封止部21と第1樹脂部26との間の界面にボイドが発生し易い。本実施形態では、辺部12aにおいてもボイドの発生を抑制することができる。
【0053】
第3樹脂部28の線膨張係数は、第2樹脂部27の線膨張係数と同等である。このため、第2樹脂部27と第3樹脂部28との間の接合強度は、環境温度の変化によって低下し難い。したがって、封止体12の封止性の低下を抑制することができる。
【0054】
以上、実施形態に係る蓄電モジュール4について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0055】
負極終端電極18の外側には、金属板15が配置されておらず、負極終端電極18の金属板15の一方面15aが、導電板5又は導電板Pと直接に接続されていてもよい。正極終端電極19の外側には、金属板15が配置されておらず、正極終端電極19の金属板15の他方面15bが、導電板5又は導電板Pと直接に接続されていてもよい。
【0056】
オーバーハング部27Bが、本体部27Aの積層方向Dの他端部から電極積層体11の内側に張り出していると共に、オーバーハング部28Bが、本体部28Aの積層方向Dの一端部から電極積層体11の内側に張り出していてもよい。
【0057】
第2封止部22は、第3樹脂部28を備えなくてもよい。この場合、オーバーハング部28Bの代わりに、第1樹脂部26がオーバーハング部を有していてもよい。もしくは、第2樹脂部27が一対のオーバーハング部27Bを有していてもよい。
【0058】
第2樹脂部27及び第3樹脂部28の線膨張係数は、互いに異なっていてもよい。この場合、第2樹脂部27の線膨張係数は、第1樹脂部26の線膨張係数よりも大きく、かつ、第3樹脂部28の線膨張係数よりも小さくてもよい。封止体12の線膨張係数が、内側から外側に向かって三段階で変化する構成となるので、封止体12の各部間における線膨張係数差が更に抑制される。よって、封止体12の封止性の低下を更に抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
4…蓄電モジュール、11…電極積層体(積層体)、12…封止体、14…バイポーラ電極、15…金属板、15c…周縁部、18…負極終端電極、19…正極終端電極、21…第1封止部、22…第2封止部、26…第1樹脂部、27…第2樹脂部、28…第3樹脂部、V…内部空間。

図1
図2
図3