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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20231226BHJP
   B60K 35/00 20240101ALI20231226BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231226BHJP
   G09F 9/40 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G09F9/00 313
B60K35/00 Z
G09F9/30 362
G09F9/40 301
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020083047
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021179457
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 純可
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-525685(JP,A)
【文献】特開2018-080954(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2068729(KR,B1)
【文献】特開2018-010091(JP,A)
【文献】特開平11-002805(JP,A)
【文献】特開2001-175204(JP,A)
【文献】特開2019-111929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K35/00-37/06
G09F9/00-9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の隙間を設けて配列され、情報を表示する複数の表示器と、
これら表示器を透視可能にそれぞれ覆う透光性のカバープレートと、
これらカバープレートの端面同士を接着することで一体化する重合性接着剤と、
前記重合性接着剤と複数の前記カバープレートを覆う透光性かつ可撓性のフィルムと、を備え
前記重合性接着剤は、前記フィルムの屈折率よりも前記カバープレートの屈折率に近い屈折率である
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
所定の隙間を設けて配列され、情報を表示する複数の表示器と、
これら表示器を透視可能にそれぞれ覆う透光性のカバープレートと、
これらカバープレートの端面同士を接着することで一体化する重合性接着剤と、
前記重合性接着剤と複数の前記カバープレートを覆う透光性かつ可撓性のフィルムと、を備え、
前記フィルムは、少なくとも前記重合性接着剤と重なる箇所に、有色の印刷層を設ける
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
前記フィルムは、反射防止層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記カバープレートとともに前記表示器を収容する空間を形成するケースと、
前記ケースに固定保持される回路基板と、
前記回路基板に実装され前記表示器を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報などを表示する車両用表示装置に関し、例えば、インストルメントパネルに搭載される表示装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に開示されるように、隣り合う複数の表示器(表示ユニット)の表示面側にそれぞれ対応するカバープレート(保護板)を設ける構成がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-130779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数のカバープレートを隣り合うように配置した場合、その継ぎ目が視認されてしまうため、外観品質を損なう虞があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、上記した課題に着目し、複数のカバープレートを連結した場合であっても、カバープレート間の継ぎ目が目立たない車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用表示装置は、
所定の隙間を設けて配列され、情報を表示する複数の表示器と、
これら表示器を透視可能にそれぞれ覆う透光性のカバープレートと、
これらカバープレートの端面同士を接着することで一体化する重合性接着剤と、
前記重合性接着剤と複数の前記カバープレートを覆う透光性かつ可撓性のフィルムと、を備え
前記重合性接着剤は、前記フィルムの屈折率よりも前記カバープレートの屈折率に近い屈折率である
ことを特徴とする。
【0007】
また、前記フィルムは、反射防止層を有することを特徴とする。
【0009】
また、所定の隙間を設けて配列され、情報を表示する複数の表示器と、
これら表示器を透視可能にそれぞれ覆う透光性のカバープレートと、
これらカバープレートの端面同士を接着することで一体化する重合性接着剤と、
前記重合性接着剤と複数の前記カバープレートを覆う透光性かつ可撓性のフィルムと、を備え、
前記フィルムは、少なくとも前記重合性接着剤と重なる箇所に、有色の印刷層を
設けることを特徴とする。

【0010】
また、前記カバープレートとともに前記表示器を収容する空間を形成するケースと、
前記ケースに固定保持される回路基板と、
前記回路基板に実装され前記表示器を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カバープレートを連結した場合であっても、カバープレート間の継ぎ目が目立たない車両用表示装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両用表示装置の車載状態を示す図。
図2】車両用表示装置を示す断面図。
図3図2の要部iiiを拡大した図。
図4図3に示すフィルムの別例を示す図。
図5】曲面カバープレートを適用した場合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態として、自動車に搭載される車両用表示装置に適用したものを例に挙げて、添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、車両用表示装置Aが、自動車(車両)Bに実装されたものを示す。車両用表示装置Aは、車両利用者が運転状態で表示を視認できるように、運転席に対向して設けられる。この場合、車両用表示装置Aは、インストルメントパネルCの上部に一部が突出するように設けられる。また、車両用表示装置Aは、車両の走行速度や積算走行距離などの車両情報、経路案内、音響機器関連情報などの表示出力を行うことができる。また、車両利用者は、車両用表示装置Aによる表示内容に従って、ステアリングDに設けられるスイッチD1への操作や図示しないマイクを用いた音声入力によって、表示操作(画面切り換え)や各種設定を行うこともできる。
【0015】
車両用表示装置Aは、図2,3に示すように、表示ユニット(表示器)1と、カバープレート2と、重合性接着剤3と、フィルム4と、回路基板5と、ケース6と、を備えている。
【0016】
表示ユニット1は、画像を表示出力する表示デバイスであり、表示パネル11と、ベゼル12と、バックライト部13と、を設けている。
【0017】
表示パネル11は、透明電極が印刷された二枚の透明ガラス基板(透明板)と、これらの透明ガラス基板間に挟み込まれるように封止される液晶と、各透明ガラス基板の外側に配置する偏光板とを設けた液晶表示素子を適用できる。表示パネル11は、FPC(可撓性配線板)11aを介して回路基板5と接続され、FPC11aを介して印加される電気を該透明電極に印加することで、液晶を作用させ、所望の表示像を形成できる。表示パネル11には、透明ガラス基板間の透明電極から外部に延びる透明配線が連続的に形成されている。この配線には異方性導電膜を介してFPC11aや駆動ドライバが実装されている。
【0018】
ベゼル12は、例えばSUS(ステンレス鋼)のような金属製の板材を所定形状にプレス加工されてなる。ベゼル12は、表示パネル11の枠状に形成され、表示パネル11やこれに積層するバックライト部13の側面側を囲うとともに、これら表示パネル11などを保持する。
【0019】
バックライト部13は、複数の発光ダイオードやライトガイド、光拡散シートを用いて面発光するための部材であり、表示パネル11の背面側から表示パネル11を透過照明することで、表示パネル11が形成した表示像を出力できる。バックライト部13の光源は、回路基板5からの配線(この場合、FPC11a)を介して電源供給されるとともに、後述する制御回路による駆動電力やPWM(パルス幅変調)制御によって、出力輝度が調整される。
【0020】
表示ユニット1は、複数用意されている。この場合、車両BのピラーE側(運転席ドア側)の表示ユニット1は、車両Bの外を撮像した映像や距離センサに基づく他の車両の接近を知らせる注意喚起表示を主に行い、車両利用者(運転者)の正面側でステアリングDの内側から臨む表示ユニット1は、車両Bの走行速度や航続可能距離、各種インジケータなど車両状態を主に表示し、インストルメントパネルCの中央側の表示ユニット1は、経路案内や音響情報、空気調和器の設定情報などを主に表示し、場合によって複数の表示ユニット1が連携した表示も行うことができる。なお、表示ユニット1の少なくとも一部に重なるようにタッチパネルを介在させて、車両利用者によるタッチ操作を行うように構成することもできる。
【0021】
カバープレート2は、アクリル等の樹脂ガラスを適用でき、表示ユニット1の全体を覆い、表示ユニット1の表示面に対向した光透過領域を有する板材の保護パネルである。カバープレート2は、複数の表示ユニット1毎に設けられて、それぞれの表示ユニット1と所定間隔おいて配置されるように、ケース6内に保持されている。
【0022】
なお、カバープレート2は、この場合、透明なものを適用しているが、カバープレート2の外側面、または、表示パネル11の表示領域1aに対応する該光透過領域に有色顔料を含む光透過性の印刷(所謂、スモーク印刷)を設けたり、カバープレート2の基材に同様の顔料を含ませることで、表示ユニット1が表示していない時にケース6内部が見えてしまうことを防止したり表示ユニット1の表示輝度を調整することもできる。
【0023】
表示ユニット1毎に設けられる各カバープレート2は、重合性接着剤3によって、その端面21同士が接続される。この場合、3つのカバープレート2は、車両Bに実装された際に水平方向に並ぶように接続される。なお、カバープレート2の端面21は、車両用表示装置Aが車両Bに搭載された状態で、車両利用者からみて、端面21や重合性接着剤3の一部が車両BのステアリングDによって隠れる位置に配置されるように寸法設計される。このため、端面21や重合性接着剤3からなるカバープレート2の連結箇所が車両利用者から目立たなくなる。
【0024】
重合性接着剤3は、カバープレート2の端面21と他のカバープレート2の端面21とを接続するものであり、重合性モノマーを含む組成からなる。この場合、重合性接着剤3は、フィルム4の材質の屈折率よりもカバープレート2の材質の屈折率に近い屈折率のもので、光重合開始剤を含む光硬化型を適用でき端面21間に塗布(充填)された状態のまま、紫外線照射による硬化によって、カバープレート2同士が接続される。重合性接着剤3は、この場合、カバープレート2と同様の透明材であるが、カバープレート2間の突合せ接着線を目立たなくするため、色目や光拡散性が合うように着色顔料や、無機系シリカ等の光拡散ビーズを添加することもできる。
【0025】
また、カバープレート2の端面21間における重合性接着剤3の露出面は、治具やマスキングテープ、研磨などの何れかの手段によって、段差なく平滑形状にすることで、さらに目立たなくしている。さらに、重合性接着剤3によって接続されたカバープレート2の表面には、重合性接着剤3や複数のカバープレート2を覆うようにしてフィルム4が接着されている。
【0026】
フィルム4は、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主材とする透光性でかつ可撓性の合成樹脂シートを適用でき、透明な粘着剤によってカバープレート2及び重合性接着剤3と隙間無く接着される。この場合、フィルム4は、車両利用者側の面には、衝撃や傷を防止するハードコート層や反射防止層、指紋防止層等の機能層を有する。なお、フィルム4は、ポリエチレンテレフタレートの他に、トリアセチルセルロースやポリカーボネートなどの合成樹脂材を主材として適用することもできる。
【0027】
フィルム4を設けることによって、車両用表示装置Aに外光が入射した際、この機能層と空気との界面における反射率が、フィルム4とカバープレート2との間、またはフィルム4と重合性接着剤3との間、カバープレート2と重合性接着剤3との間の反射率よりも大きくなる。このため、フィルム4(機能層)の表面による一様な反射光によって、カバープレート2と重合性接着剤3との間の境界が更に目立たなくなる。従って、各カバープレート2間をシームレスにみせることができ、表示ユニット1やカバープレート2が分かれていても、全体的に一体感のある車両用表示装置Aとなる。また、フィルム4が複数のカバープレート2と接着されるため、カバープレート2同士の接合強度を大きくできる。
【0028】
回路基板5は、表示ユニット1の背面側に並行にして設けられる平板状の硬質プリント配線基板を適用でき、例えば、ガラスエポキシ樹脂を用いた電気絶縁基材の表裏面に形成される銅箔からなる導電パターンによって配線やランドが形成され、さらに電子部品の実装面となるランド以外を保護する絶縁被膜(ソルダーレジスト層)などが設けられている。回路基板5には、例えば、外部機器からの入力信号に基づいて演算し、表示ユニット1の表示パネル11やバックライト部13を駆動制御する制御回路(マイクロコンピュータ)51や、図示しない外部機器とケーブル接続するためのコネクタが実装されている。
【0029】
ケース6は、有色の合成樹脂または金属材を適用でき、カバープレート2に嵌め合されて内部に収容空間を形成する。ケース6は、表示ユニット1や回路基板5を保持して収容している。
【0030】
斯かる車両用表示装置Aは、所定の隙間を設けて配列され、情報を表示する複数の表示ユニット1と、これら表示ユニット1を透視可能にそれぞれ覆う透光性のカバープレート2と、これらカバープレート2の端面21同士を接着することで一体化する重合性接着剤3と、重合性接着剤3と複数のカバープレート2を覆う透光性かつ可撓性のフィルム4とを備える。
【0031】
従って、フィルム4によって、複数のカバープレートを連結した場合であっても、カバープレート間の継ぎ目が目立たない車両用表示装置Aとなる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用可能である。上述実施形態では、図4に示すように、フィルム40には、少なくとも重合性接着剤3と重なる箇所に、有色の印刷層40aを設けることによって、重合性接着剤3による繋ぎ目を目立たなくするだけでなく、複数の表示ユニット1間の内部構造を車両用表示装置Aの外側から見えないように目隠しできる。この有色の印刷層40aは、遮光性であってもよいし、光の一部を透過、一部を反射する所謂スモーク層であってもよい。なお、印刷層40aには、光透過領域(表示領域1a)との境界部分に、ドット形状や色のトーンを変えたグラデーションを形成して、境界が目立たないようにしている。また、図4は、図3で示すフィルム4の別例を示し、他の同様の構成に同じ符号を付して詳細な説明を省く。
【0033】
また、上述実施形態では、平板形状のカバープレート2を適用するものを示したが、例えば、図5に示す車両用表示装置A1のように、曲形状のカバープレート200に上述実施形態と同様の連結構造を適用することもでき、上述実施形態と同様の効果を得ることができる。また、図5において、カバープレート200は、左右方向(水平方向)において屈曲するものを示したが、上下方向において屈曲する形状や、S字状に屈曲する形状であっても上述実施形態を適用でき、上述実施形態と同様の効果を得ることができる。また、この際、フィルム400は、上述実施形態と同様に可撓性を有するために、上述同様の効果を得ながら適用できる。
【0034】
また、図5に示すように、表示ユニット1とカバープレート200とが、シート状のOCA(Optical Clear Adhesive)や液体状のOCR(Optical Clear Resin)等の透明接着部材700にて接着される構成であっても適用できる。透明接着部材700は、例えば、紫外線硬化型の変性シリコーン系の接着剤であり、硬化後に弾性を有する。透明接着部材700は、紫外線硬化型接着剤に限らず、熱硬化型、湿気硬化型、または、それらと紫外線硬化のハイブリッド硬化型(紫外線硬化+熱硬化、紫外線硬化+湿気硬化)の接着剤でも良い。また、透明接着部材700の主成分はシリコーン系でなく、アクリル系やウレタン系等の別のタイプでも良いが、極性基を有する材料を含み、屈折率がカバープレート2と同等のものを使用することが好ましい。極性基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、シアノ基、シラノール基の少なくとも1つを含むことが好ましい。なお、透明接着部材700として、両面接着型の透明接着シートを適用することもできる。これら透明接着部材700による接着工程は、カバープレート200間の重合性接着剤300の重合接続前に行うことで治具等の設備が小型で容易となる。
【0035】
また、表示パネル11として、バックライト部13から照明される液晶表示素子ではなく、有機ELパネルを適用することもできる。この場合、バックライト部を省くことができるため、より薄型になる。
【0036】
また、本発明は、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される車両用表示装置として好適である。
【符号の説明】
【0037】
1 表示ユニット(表示器)
1a 表示領域
11 表示パネル
11a FPC
12 ベゼル
13 バックライト部
2 カバープレート
21 端面
3 重合性接着剤
4 フィルム
5 回路基板
51 制御回路
6 ケース
図1
図2
図3
図4
図5