(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】物体認識装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/931 20200101AFI20231226BHJP
G01S 17/66 20060101ALI20231226BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G01S17/931
G01S17/66
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020102523
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 高志
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-66716(JP,A)
【文献】特開2008-2817(JP,A)
【文献】特開2009-42181(JP,A)
【文献】特開2017-129446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0317219(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される物体認識装置(1)であって、
あらかじめ設定された測定サイクルごとに、前記車両の周囲の所定領域に送信波を送信し、前記送信波の反射波を受信するように構成されたレーダ部(2)と、
前記反射波の受信結果に基づく反射点ごとに、前記反射点が車両で反射した点に見られる特徴である車両特徴を有しているか、及び、前記反射点が車両以外で反射した点に見られる特徴である非車両特徴を有しているか、の少なくとも一方を判定するように構成された特徴判定部(4,S101)と、
前記反射点をクラスタリングして、前記反射点の結合であるクラスタを形成するように構成されたクラスタ形成部(5,S102)と、
追跡対象としている物標である追跡物標ごとに、前記追跡物標と同一の物標を示す前記クラスタとの対応付けをして、前記クラスタを前記追跡物標として認識するように構成されたトラッキング処理部(6,S103)と、
を備え、
前記トラッキング処理部は、
前記追跡物標ごとに、位置関係に基づき同一の物標を示すと推測される前記クラスタである仮対応クラスタを抽出するように構成された第1対応付け処理部(10,S301~S303)と、
前記仮対応クラスタと前記追跡物標とが同一の物標を示すと仮定した場合に当該物標が車両である確率を表す事後確信度を算出し、算出された前記事後確信度に基づいて前記対応付けをするか否かを判定するように構成された第2対応付け処理部(30,S305,S306)と、
前記第2対応付け処理部により前記対応付けをすると判定された場合、前記仮対応クラスタを前記追跡物標として認識するように構成された物標認識部(40,S309,S310)と、
前記クラスタと、前記特徴判定部により判定された結果と、に基づき、前記クラスタの車両らしさを表すクラスタ車両尤度を、前記クラスタごとに算出するように構成された車両尤度算出部(20,S304)と、を備え、
前記第2対応付け処理部は、前記追跡物標について前回の測定サイクルで算出した前記事後確信度と、前記車両尤度算出部により算出された前記クラスタの前記クラスタ車両尤度と、に基づき、前記事後確信度を算出するように構成される、物体認識装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体認識装置であって、
前記車両尤度算出部は、前記クラスタにおける、前記車両特徴を有する前記反射点の存在割合及び前記非車両特徴を有する前記反射点の存在割合の少なくとも一方に基づき、前記クラスタごとに前記クラスタ車両尤度を算出するように構成される、物体認識装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の物体認識装置であって、
前記特徴判定部は、前記反射点ごとに、前記反射点が前記車両特徴を有しているか、及び、前記反射点が前記非車両特徴を有しているかを判定するように構成される、物体認識装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の物体認識装置であって、
前記トラッキング処理部は、前記第2対応付け処理部により前記対応付けをすると判定された前記仮対応クラスタが1つも存在しない前記追跡物標を追跡対象から排除するように構成された物標管理部(50,S313)を更に備える、物体認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信した送信波の反射波を受信することにより検出された複数の反射点に基づいて物体を認識する物体認識の技術が知られている。このような物体認識の技術として、車両以外の物体を車両であると誤認識すること、あるいは、車両を車両以外の物体であると誤認識することを抑制する技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、物体認識装置が搭載された車両のワイパが動作しているとき、物体認識装置が、水分を含む空間浮遊物に起因するノイズデータの削除処理を行う技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示された技術では、ワイパが動作していない状況下では上述したノイズデータの削除処理が行われないため、例えば、フロントガラスに撥水コーティングを施しており雨天時でもワイパを使用しない場合等において発生するノイズに対しては削除処理がなされない。したがって、車両が走行している状況によっては、車両以外の物体を車両であると誤認識しやすくなることが考えられる。
【0005】
そこで、物体が車両であるか車両以外の物体であるかを、ワイパ等の外部機器の使用状況によらずに認識する手法が考えられる。例えば特許文献2には、監視装置が、物体の特徴を判定し、判定結果に基づき物体が車両であるか車両以外の物体であるかを認識する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-40138号公報
【文献】特開2015-22541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されている技術では、ある一時点における物体の特徴の判定結果に基づき、物体が車両であるか車両以外の物体であるかの認識がなされている。そのため、発明者の詳細な検討の結果、ある一時点における物体の特徴の判定がたまたま誤ってなされた場合、実際には車両以外の物体であるにもかかわらず車両であると誤認識される、あるいは、実際には車両であるにもかかわらず車両以外の物体であると誤認識される、という課題が見出された。
【0008】
本開示の一局面は、複数の時点における物体の特徴の判定結果に基づき、物体が車両であるか車両以外の物体であるかの認識をすることにより、車両以外の物体が車両であると誤認識されること、及び、車両が車両以外の物体であると誤認識されることを回避できる物体認識装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、車両に搭載される物体認識装置(1)であって、レーダ部(2)と、特徴判定部(4,S101)と、クラスタ形成部(5,S102)と、トラッキング処理部(6,S103)と、を備える。レーダ部は、あらかじめ設定された測定サイクルごとに、車両の周囲の所定領域に送信波を送信し、送信波の反射波を受信するように構成される。特徴判定部は、反射波の受信結果に基づく反射点ごとに、反射点が車両で反射した点に見られる特徴である車両特徴を有しているか、及び、反射点が車両以外で反射した点に見られる特徴である非車両特徴を有しているか、の少なくとも一方を判定するように構成される。クラスタ形成部は、反射点をクラスタリングして、反射点の結合であるクラスタを形成するように構成される。トラッキング処理部は、追跡対象としている物標である追跡物標ごとに、追跡物標と同一の物標を示すクラスタとの対応付けをして、クラスタを追跡物標として認識するように構成される。トラッキング処理部は、第1対応付け処理部(10,S301~S303)と、第2対応付け処理部(30,S305,S306)と、物標認識部(40,S309,S310)と、車両尤度算出部(20,S304)と、を備える。第1対応付け処理部は、追跡物標ごとに、位置関係に基づき同一の物標を示すと推測されるクラスタである仮対応クラスタを抽出するように構成される。第2対応付け処理部は、仮対応クラスタと追跡物標とが同一の物標を示すと仮定した場合に当該物標が車両である確率を表す事後確信度を算出し、算出された事後確信度に基づいて対応付けをするか否かを判定するように構成される。物標認識部は、第2対応付け処理部により対応付けをすると判定された場合、仮対応クラスタを追跡物標として認識するように構成される。車両尤度算出部は、クラスタと、特徴判定部により判定された結果と、に基づき、クラスタの車両らしさを表すクラスタ車両尤度を、クラスタごとに算出するように構成される。第2対応付け処理部は、追跡物標について前回の測定サイクルで算出した事後確信度と、車両尤度算出部により算出されたクラスタのクラスタ車両尤度と、に基づき、事後確信度を算出するように構成される。
【0010】
このような構成によれば、複数の時点における物体の特徴の判定結果に基づき、物体が車両であるか車両以外の物体であるかの認識をすることにより、車両以外の物体が車両であると誤認識されること、及び、車両が車両以外の物体であると誤認識されることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】物体認識装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】物体認識処理の内容を示すフローチャートである。
【
図3】特徴判定処理において注目反射点が立体性を有しているかの判定を行う際の一例を示す模式図である。
【
図4】特徴判定処理において注目反射点が至近性を有しているかの判定を行う際の一例を示す模式図である。
【
図5】特徴判定処理において注目反射点が中反射性を有しているか及び注目反射点が低反射性を有しているかの判定を行う際の一例を示す模式図である。
【
図6】トラッキング処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本開示は下記の実施形態に限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
[1.構成]
実施形態の物体認識装置1について、
図1を参照しながら説明する。物体認識装置1は、送信波としてレーザ光を照射し、照射したレーザ光の反射波である反射光を受信することにより物体を認識する、いわゆるLIDARである。LIDARは、Light Detection and Rangingの略である。物体認識装置1は、車両に搭載して使用され、車両の周囲の所定領域に存在する他の車両を認識するために用いられる。以下、物体認識装置1を搭載した車両を自車両という。本実施形態では、物体認識装置1は、自車両の前方の所定領域に存在する他の車両を認識するために用いられる。
図1に示されるとおり、物体認識装置1は、レーダ部2と、制御部3と、を備える。
【0013】
レーダ部2は、照射部と、受信部と、反射点情報出力部と、を備える。照射部は、あらかじめ設定された測定サイクルごとに、レーザ光を自車両の前方の所定領域に照射する。受信部は、照射部によって照射されたレーザ光の反射光を受信する。反射点情報出力部は、照射部によるレーザ光の照射方向及び照射タイミングと、受信部による反射光の受信タイミング及び受信強度と、に基づく反射点情報を制御部3に出力する。反射点情報とは、レーザ光が反射された点である反射点についての情報である。反射点情報には、反射点の三次元位置を示す情報のほか、反射光の強度を示す情報等が含まれる。
【0014】
制御部3は、図示しないCPUと、図示しないRAM、ROM、フラッシュメモリ等の記憶部と、を有する周知のマイクロコンピュータを中心に構成される。CPUは、非遷移的実体的記録媒体であるROMに格納されたプログラムを実行する。当該プログラムが実行されることで、当該プログラムに対応する方法が実行される。具体的には、制御部3は、当該プログラムに従って後述する
図2に示す物体認識処理を実行する。なお、制御部3は、1つのマイクロコンピュータを備えてもよいし、複数のマイクロコンピュータを備えてもよい。
【0015】
制御部3は、CPUがプログラムを実行することで実現される機能ブロック、すなわち、仮想的な構成要素として、特徴判定部4と、クラスタ形成部5と、トラッキング処理部6と、を備える。制御部3に含まれる各部の機能を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の機能は、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0016】
特徴判定部4は、レーダ部2から入力した反射点情報が示す反射点が、車両で反射した点に見られる特徴である車両特徴を有しているか否か、及び、車両以外の物体で反射した点に見られる特徴である非車両特徴を有しているか否か、を反射点ごとに判定する。なお、車両以外の物体としては、例えば、水や埃などの空間浮遊物が挙げられる。
【0017】
クラスタ形成部5は、レーダ部2から入力した反射点情報に基づいて反射点をクラスタリングし、複数の反射点から構成されるクラスタを形成する。なお、1回の測定サイクルにおいて複数のクラスタが形成されてもよい。
【0018】
トラッキング処理部6は、追跡対象としている物標である追跡物標ごとに、追跡物標と同一の物標を示すクラスタを探索し、そのようなクラスタがあれば、追跡物標と当該クラスタとを同一の物標であるとして対応付けをすることで、当該クラスタを追跡物標として認識する。トラッキング処理部6は、第1対応付け処理部10と、車両尤度算出部20と、第2対応付け処理部30と、物標認識部40と、物標管理部50と、を備える。
【0019】
第1対応付け処理部10は、追跡物標とクラスタ形成部5により形成されたクラスタとの位置関係に基づき、追跡物標ごとに、同一の物標を示すと推測されるクラスタである仮対応クラスタを抽出する。仮対応クラスタは、1つの追跡物標に対して、複数抽出されてもよい。
【0020】
車両尤度算出部20は、特徴判定部4により反射点が車両特徴を有しているか否かについて判定された結果と、特徴判定部4により反射点が非車両特徴を有しているか否かについて判定された結果と、第1対応付け処理部10により抽出された仮対応クラスタと、に基づき、仮対応クラスタごとに、クラスタの車両らしさを表すクラスタ車両尤度を算出する。
【0021】
第2対応付け処理部30は、追跡物標と、第1対応付け処理部10により抽出された仮対応クラスタと、が同一の物標を示すと仮定した場合に当該物標が車両である確率を表す事後確信度を算出し、算出された事後確信度がしきい値よりも高い場合には、当該仮対応クラスタを当該追跡物標に対する対応付け候補として登録する。事後確信度の算出は、追跡物標ごとに抽出されたすべての仮対応クラスタに対して行う。
【0022】
物標認識部40は、第2対応付け処理部30により対応付け候補として登録された仮対応クラスタが1つである場合には、当該仮対応クラスタが、追跡物標と同一の物標を示すとして対応付けをする。第2対応付け処理部30により対応付け候補として登録された仮対応クラスタが複数ある場合には、所定の条件に基づいて当該仮対応クラスタから1つの仮対応クラスタを抽出し、追跡物標と抽出された1つの仮対応クラスタとが同一の物標を示すとして対応付けをする。物標認識部40は、当該対応付けがされた仮対応クラスタを追跡物標として認識する。
【0023】
物標管理部50は、前回の測定サイクルまでに追跡対象とされていた追跡物標のうち、第1対応付け処理部10で仮対応クラスタが1つも抽出されなかった追跡物標、及び、第2対応付け処理部30で対応付け候補として登録された仮対応クラスタが1つも存在しない追跡物標を、追跡対象から排除し、追跡物標ではないものとする。
【0024】
[2.処理]
次に、制御部3が実行する物体認識処理について、
図2に示すフローチャートを用いて説明する。物体認識処理は、レーダ部2から反射点情報を入力したことを契機に実行される。なお、制御部3は、1回の測定サイクル分のレーザ光の照射により得られた全ての反射点についての反射点情報をレーダ部2から入力する。
【0025】
まず、S101で、制御部3は、レーダ部2から入力した反射点情報に基づいて、反射点が上述した車両特徴を有しているか、及び、反射点が上述した非車両特徴を有しているかを判定する、特徴判定処理を実行する。
【0026】
車両特徴の例として、立体性、中反射性が挙げられる。
立体性とは、車両等の立体物で反射した反射点に見られる特徴である。車両等の立体物を示すクラスタにおいては、反射点が鉛直方向に並んで位置することが考えられる。そこで、ある反射点に対して鉛直方向に他の反射点が存在している場合に、当該反射点が立体性を有していると判定される。したがって、立体性を有する反射点は、車両で反射した反射点である可能性が高いと考えられる。
【0027】
中反射性とは、車両の表面で反射した反射点に見られる特徴である。一般的に、車両の表面で反射した反射光は、水や埃などの空間浮遊物の表面で反射した反射光と比較して、強度が高いことが考えられる。そこで、ある反射点の反射光の強度が一定の値以上である場合に、当該反射点が中反射性を有していると判定される。したがって、中反射性を有する反射点は、車両で反射した反射点である可能性が高いと考えられる。
【0028】
以下、車両特徴をラベルiとする。ここで、iとは、車両特徴の種類を表す。本実施形態では、i=1は立体性、i=2は中反射性を示す。
非車両特徴の例として、至近性、低反射性が挙げられる。
【0029】
至近性とは、自車両から至近距離にある物体で反射した反射点に見られる特徴である。ここでいう至近距離とは、他の車両が存在するとは通常考えにくい程度に極めて近い距離を表す。したがって、至近性を有する反射点は、車両以外の物体で反射した反射点である可能性が高いと考えられる。
【0030】
低反射性とは、空間浮遊物の表面で反射した反射点に見られる特徴である。一般的に、水や埃などの空間浮遊物の表面で反射した反射光は、車両の表面で反射した反射光と比較して、反射光の強度が低いことが考えられる。そこで、ある反射点の反射光の強度が一定の値以下である場合に、当該反射点が低反射性を有していると判定される。したがって、低反射性を有する反射点は、車両以外の物体で反射した反射点である可能性が高いと考えられる。
【0031】
以下、非車両特徴をラベルjとする。ここで、jとは、非車両特徴の種類を表す。本実施形態では、j=1は至近性、j=2は低反射性を示す。
制御部3は、レーダ部2から入力した反射点情報のうち、反射点の三次元位置を示す情報から、反射点が立体性を有しているか及び反射点が至近性を有しているかを判定する。また、反射光の強度を示す情報から、反射点が中反射性を有しているか及び反射点が低反射性を有しているかを判定する。S101の特徴判定処理は、反射点ごとに実行される。以下、処理の対象となっている反射点を注目反射点とする。
【0032】
注目反射点が立体性を有しているかの判定について、
図3に示す模式図を用いて説明する。まず、注目反射点V1を中心とする水平な二次元領域R1を考える。本実施形態では、二次元領域R1は、注目反射点V1を対角線の交点とする正方形が示す領域である。そして、二次元領域R1を地面に対して垂直方向に伸ばした三次元領域である局所領域R2を設定する。本実施形態では、局所領域R2の形状は所定の大きさの直方体となる。局所領域R2内に他の反射点が存在し、かつ、当該他の反射点が所定の条件を満たす場合に、制御部3は、注目反射点が立体性を有していると判定する。
【0033】
なお、当該所定の条件は、本実施形態では、局所領域R2内に存在する他の反射点の数がしきい値を上回ること、かつ、局所領域R2内に存在する反射点のうち最も高い位置に存在する反射点Vhと、最も低い位置に存在する反射点Vlとの距離がしきい値を上回ることである。
【0034】
続いて、注目反射点が至近性を有しているかの判定について、
図4に示す模式図を用いて説明する。注目反射点V2が、自車両C1の前方にあらかじめ設定された三次元領域である至近領域R3に存在している場合、制御部3は、注目反射点が至近性を有していると判定する。至近領域R3は、他の車両が存在するとは通常考えにくい程度に、自車両C1から極めて近い範囲を表す領域である。なお、当該範囲は、自車両C1の車速に応じて変化してもよい。
【0035】
続いて、注目反射点が中反射性を有しているか及び注目反射点が低反射性を有しているかの判定について
図5に示す模式図を用いて説明する。注目反射点の反射光の強度I1が中反射値B1よりも高い場合、制御部3は、注目反射点が中反射性を有していると判定する。中反射値B1は、反射光が車両の表面で反射した反射光である可能性が一定以上となるように設定された、反射光の強度のしきい値である。
【0036】
一方、注目反射点の反射光の強度I2が低反射値B2よりも低い場合、制御部3は、注目反射点が低反射性を有していると判定する。低反射値B2は、反射光が空間浮遊物の表面で反射した反射光である可能性が一定以上となるように設定された、反射光の強度のしきい値である。低反射値B2は、中反射値B1よりも低い値となるように設定される。
【0037】
なお、本実施形態では、中反射値B1及び低反射値B2は、自車両から注目反射点までの距離に依存して定められる値であり、自車両から注目反射点までの距離が長いほど、中反射値B1及び低反射値B2は低く設定される。
【0038】
図2に戻り、S102で、制御部3は、レーダ部2から入力した反射点情報に基づいて反射点をクラスタリングしてクラスタを形成する。本実施形態では、制御部3は、レーダ部2から入力した反射点情報に基づくすべての反射点のうち、反射点情報に基づいて明らかにノイズであると推測される反射点を除外した反射点を、有効な反射点として検出する。そして、制御部3は、当該有効な反射点をクラスタリングしてクラスタを形成する。
【0039】
続いて、S103で、制御部3は、トラッキング処理を実行する。トラッキング処理とは、追跡物標ごとに、追跡物標と同一の物標を示すクラスタを探索し、そのようなクラスタがあれば、追跡物標と当該クラスタとを同一の物標であるとして対応付けをして、当該クラスタを追跡物標として認識する処理である。以下、トラッキング処理について、
図6に示すフローチャートを用いて説明する。
【0040】
まず、S301で、制御部3は、現在の測定サイクルにおいてまだトラッキング処理がされていない追跡物標の中から、1つの追跡物標を注目追跡物標として抽出する。
続いて、S302で、制御部3は、S102で形成されたクラスタのうち、まだS303~S307の処理がされていないクラスタの中から、1つのクラスタを注目クラスタとして抽出する。
【0041】
続いて、S303で、制御部3は、S302で抽出された注目クラスタが、注目追跡物標が現在の測定サイクルにおいて存在すると予測される位置である予測位置を中心とする所定領域に存在するか否かを判定する。注目追跡物標の予測位置は、前回の測定サイクルにおける注目追跡物標の位置及び速度に基づいて算出される。なお、注目追跡物標の予測位置は、前回の測定サイクルにおける注目追跡物標の位置及び速度に加え、加速度に基づいて算出されてもよい。制御部3は、注目クラスタが予測位置を中心とする所定領域に存在すると判定した場合、S304へ移行する。一方、制御部3は、注目クラスタが予測位置を中心とする所定領域に存在しないと判定した場合、S308へ移行する。なお、以下、予測位置を中心とする所定領域に存在すると判定された注目クラスタを仮対応クラスタとする。
【0042】
S304で、制御部3は、S303で判定された仮対応クラスタのクラスタ車両尤度を算出する。以下、具体的な算出方法を説明する。
まず、制御部3は、仮対応クラスタについて、ラベルiによる車両の尤もらしさLi
Pを算出する。ラベルiによる車両の尤もらしさLi
Pは、仮対応クラスタを構成する反射点の総数NPに対するラベルiを有する反射点の数ni
Pを表すラベルiの存在割合に基づき、式1に従って算出される。なお、ラベルiによる車両の尤もらしさLi
Pは、車両特徴の種類ごとに算出される。すなわち、本実施形態では、立体性による車両の尤もらしさと、中反射性による車両の尤もらしさと、がそれぞれ算出される。
【0043】
【0044】
また、制御部3は、仮対応クラスタについて、ラベルjによる車両の尤もらしさLj
Nを算出する。ラベルjによる車両の尤もらしさLj
Nは、仮対応クラスタで形成された領域に存在するすべての反射点の総数NNに対するラベルjを有する反射点の数nj
Nを表すラベルjの存在割合に基づき、式2に従って算出される。なお、ラベルjによる車両の尤もらしさLj
Nは、非車両特徴の種類ごとに算出される。すなわち、本実施形態では、至近性による車両の尤もらしさと、低反射性による車両の尤もらしさと、がそれぞれ算出される。
【0045】
【0046】
さらに、制御部3は、上述した方法で算出されたラベルiによる車両の尤もらしさLi
P、及び、上述した方法で算出されたラベルjによる車両の尤もらしさLj
Nを合成して正規化することで、当該仮対応クラスタのクラスタ車両尤度Lkを算出する。具体的には、クラスタ車両尤度Lkは、車両特徴の種類ごとに算出されたラベルiによる車両の尤もらしさLi
Pの総乗と、非車両特徴の種類ごとに算出されたラベルjによる車両の尤もらしさLj
Nの総乗と、に基づき、式3に従って算出される。
【0047】
【0048】
続いて、S305で、制御部3は、仮対応クラスタと注目追跡物標とが同一の物標を示すと仮定した場合に当該物標が車両である確率を表す事後確信度を算出する。以下、具体的な算出方法を説明する。
【0049】
制御部3は、前回の測定サイクルにおけるS312で登録された事後確信度を現在の測定サイクルでの事前確信度として、当該事前確信度と、S304で算出された仮対応クラスタのクラスタ車両尤度Lkと、に基づき、ベイズ推定を用いて事後確信度を算出する。
【0050】
本実施形態では、前回の測定サイクルで算出された事後確信度が、前回の測定サイクルからの時間の経過を加味して値が更新された上で、現在の測定サイクルでの事前確信度として用いられる。具体的には、制御部3は、前回の測定サイクルで算出された事後確信度Pk-1|k-1に、行列式である時間遷移モデルTを掛け合わせ、式4に従って事後確信度を更新する。式4に従って更新された事後確信度が、現在の測定サイクルでの事前確信度Pk|k-1として用いられる。
【0051】
【0052】
なお、時間遷移モデルTは式5で表される。当該行列を構成する値は、あらかじめ設定された値である。本実施形態では、式4に従って事後確信度を更新することで事後確信度が0.5に近づくように、時間遷移モデルTを構成する値を設定する。例えば、tpp=0.9、tnp=0.1とすることが考えられる。
【0053】
【0054】
次に、事後確信度Pk|kを、S304により算出されたクラスタ車両尤度Lkと、事前確信度Pk|k-1と、から式6に従って算出する。
【0055】
【0056】
続いて、S306で、制御部3は、S305で算出された事後確信度が、しきい値よりも高いか否かを判定する。制御部3は、事後確信度がしきい値よりも高いと判定した場合、S307へ移行する。一方、制御部3は、事後確信度がしきい値よりも高くないと判定した場合、S308へ移行する。
【0057】
S307で、制御部3は、当該仮対応クラスタを、注目追跡物標に対する対応付け候補として記憶部に登録し、登録後、S308へ移行する。
S308で、制御部3は、S102で形成されたすべてのクラスタについてS303~S307の処理がされたか否かを判定する。制御部3は、S102で形成されたクラスタのうち、S303~S307の処理がされていないクラスタが存在すると判定した場合、S302へ戻る。制御部3は、当該すべてのクラスタについてS303~S307の処理がされたと判定した場合、S309へ移行する。
【0058】
S309で、制御部3は、S307で注目追跡物標に対する対応付け候補として記憶部に登録された仮対応クラスタが存在するか否かを判定する。制御部3は、注目追跡物標に対する対応付け候補として記憶部に登録された仮対応クラスタが存在すると判定した場合、S310へ移行する。制御部3は、注目追跡物標に対する対応付け候補として記憶部に登録された仮対応クラスタが1つも存在しないと判定した場合、S313へ移行する。
【0059】
S310で、対応付け候補として記憶部に登録された仮対応クラスタが1つである場合には、制御部3は、当該仮対応クラスタが注目追跡物標と同一の物標を示すとして対応付けをする。対応付け候補として登録された仮対応クラスタが複数ある場合には、制御部3は、所定の条件に基づいて当該仮対応クラスタから1つの仮対応クラスタを抽出し、抽出された1つの仮対応クラスタが注目追跡物標と同一の物標を示すとして対応付けをする。なお、対応付け候補として記憶部に登録された複数の仮対応クラスタから1つの仮対応クラスタを抽出する方法としては、例えば、注目追跡物標からの距離が最も近い仮対応クラスタを抽出する、といった方法がある。
【0060】
続いて、S311で、制御部3は、S310で対応付けがされた仮対応クラスタのクラスタ車両尤度をS304における処理と同様の方法で算出し、算出された当該クラスタ車両尤度を用いて、S310で対応付けがされた注目追跡物標の事後確信度をS305における処理と同様の方法で算出する。
【0061】
続いて、S312で、制御部3は、S311で算出された注目追跡物標の事後確信度を記憶部に登録し、S314へ移行する。
S313で、制御部3は、S309で仮対応クラスタが1つも存在しないと判定された注目追跡物標に対して物標管理処理をする。物標管理処理は、外挿処理と物標排除処理とを含む。本実施形態における外挿処理は、注目追跡物標が、現在の測定サイクルにおいて、S301で算出した予測位置まで移動したものと仮定し、制御部3が、注目追跡物標の位置を更新する処理である。本実施形態における物標排除処理は、注目追跡物標が物標管理処理をされる回数の上限をあらかじめ設定しておき、制御部3が、上限の回数を超えてS313の物標管理処理に移行した注目追跡物標を追跡対象から排除する処理である。換言すれば、本実施形態における物標排除処理は、制御部3が、仮対応クラスタが所定の時間以上1つも存在しない注目追跡物標を追跡対象から排除する処理であるともいえる。なお、上限の回数は0回でもよい。すなわち、S313に移行した注目追跡物標をすぐに追跡対象から排除してもよい。その後、制御部3は、S314へ移行する。
【0062】
S314で、制御部3は、すべての追跡物標についてS309~S312の処理を実行したか否かを判定する。制御部3は、S309~S312の処理が実行されていない追跡物標があると判定した場合、S301へ戻る。制御部3は、すべての追跡物標についてS309~S312の処理が実行されたと判定した場合、トラッキング処理を終了する。
【0063】
図2に戻り、制御部3は、S103のトラッキング処理が終了すると、物体認識処理を終了する。
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0064】
(3a)物体認識装置1は、追跡物標ごとに、追跡物標と同一の物標を示すと推測される仮対応クラスタと、追跡物標と、の対応付けをして、仮対応クラスタを追跡物標として認識するように構成される。また、物体認識装置1は、仮対応クラスタと追跡物標とが同一の物標を示すと仮定した場合に物標が車両である確率を表す事後確信度を算出し、算出された事後確信度に基づいて対応付けをするか否かを判定するように構成される。具体的には、物体認識装置1は、追跡物標について前回の測定サイクルで算出した事後確信度と、仮対応クラスタのクラスタ車両尤度と、に基づき、事後確信度を算出するように構成される。
【0065】
このような構成によれば、物体認識装置1は、ある一時点における仮対応クラスタのクラスタ車両尤度のみに基づいて、仮対応クラスタが車両であるか車両以外の物体であるかの認識をする方法を仮定した場合、当該方法と比較して、認識のロバスト性を向上させることができる。
【0066】
例えば、仮対応クラスタが、実際には車両以外の物体を示すクラスタであるにもかかわらず、算出されたクラスタ車両尤度が高い場合、上述した方法では当該仮対応クラスタは車両を示すクラスタであると認識されてしまう。一方で、本開示の実施形態によれば、算出された事後確信度がしきい値よりも高くない場合には、当該仮対応クラスタが車両を示すクラスタであると誤認識されることを回避できる。また、仮対応クラスタが、実際には車両を示すクラスタであるにもかかわらず、算出されたクラスタ車両尤度が低い場合、上述した方法では当該仮対応クラスタは車両以外の物体を示すクラスタであると認識されてしまう。一方で、本開示の実施形態によれば、算出された事後確信度がしきい値よりも高い場合には、当該仮対応クラスタが車両以外の物体を示すクラスタであると認識されることを回避できる。
【0067】
(3b)物体認識装置1は、反射点ごとに、反射点が車両で反射した点に見られる特徴である車両特徴を有しているか、及び、反射点が車両以外の物体で反射した点に見られる特徴である非車両特徴を有しているかを判定するように構成される。
【0068】
このような構成によれば、物体認識装置1は、車両特徴による車両の尤もらしさと非車両特徴による車両の尤もらしさとを結合してクラスタ車両尤度を算出することができるため、クラスタ車両尤度を算出する精度を向上させることができる。
【0069】
(3c)物体認識装置1は、対応付けをすると判定された仮対応クラスタが1つも存在しない追跡物標を追跡対象から排除するように構成される。
このような構成によれば、車両以外の物体を示すクラスタを追跡し続けることを回避できる。
【0070】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0071】
(4a)上記実施形態では、送信波としてレーザ光を照射し、照射したレーザ光の反射波である反射光を受信することにより物体を認識する、いわゆるLIDARを物体認識装置1として例示したが、物体認識装置1は、これに限定されるものではない。物体認識装置1は、例えば、他の測距センサであってもよい。他の測距センサとしては、例えば、ステレオカメラが挙げられる。
【0072】
(4b)上記実施形態では、車両尤度算出部20により、特徴判定部4による判定結果と仮対応クラスタとに基づきクラスタ車両尤度が算出される構成を例示した。つまり、上記実施形態では、クラスタ形成部5により形成されたクラスタのうち仮対応クラスタのみについてクラスタ車両尤度が算出された。ただし、クラスタ車両尤度が算出されるクラスタは仮対応クラスタのみに限定されるものではない。例えば、クラスタ形成部5により形成された全てのクラスタについて、クラスタごとに、クラスタ車両尤度が算出されてもよい。
【0073】
(4c)上記実施形態では、特徴判定処理を、制御部3が、反射点が車両特徴を有しているか、及び、反射点が非車両特徴を有しているかを判定する処理として例示したが、これに限定されるものではない。制御部3は、特徴判定処理において、反射点が非車両特徴を有しているかを判定せず、反射点が車両特徴を有しているかのみを判定してもよい。あるいは、制御部3は、特徴判定処理において、反射点が車両特徴を有しているかを判定せず、反射点が非車両特徴を有しているかのみを判定してもよい。
【0074】
(4d)上記実施形態では、立体性、中反射性を車両特徴として例示したが、これに限定されるものではない。車両で反射した点に見られ、かつ、車両以外の物体で反射した点に見られない他の特徴を、車両特徴としてもよい。また、上記実施形態では、車両特徴を2種類例示したが、これに限定されるものではない。例えば、車両特徴は1種類でもよく、また、3種類以上であってもよい。
【0075】
(4e)上記実施形態では、至近性、低反射性を非車両特徴として例示したが、これに限定されるものではない。車両以外の物体で反射した点に見られ、かつ、車両で反射した点に見られない他の特徴を、非車両特徴としてもよい。また、上記実施形態では、非車両特徴を2種類例示したが、これに限定されるものではない。例えば、非車両特徴は1種類でもよく、また、3種類以上であってもよい。
【0076】
(4f)上記実施形態では、注目反射点が立体性を有しているかを判定するにあたり、注目反射点V1を中心とする水平な二次元領域R1として、注目反射点V1を対角線の交点とする正方形が示す領域を設定したが、二次元領域R1はこれに限定されるものではない。例えば、二次元領域R1は、注目反射点V1を中心とする円が示す領域としてもよい。
【0077】
(4g)上記実施形態では、注目反射点が立体性を有しているかを判定するにあたり、局所領域R2の形状は所定の大きさの直方体と設定したが、局所領域R2の形状は、直方体以外であってもよい。
【0078】
(4h)上記実施形態では、S102を、制御部3が有効な反射点をクラスタリングしてクラスタを形成する処理として例示したが、これに限定されるものではない。例えば、制御部3は、S102で、レーダ部2から入力した反射点情報に基づくすべての反射点をクラスタリングしてクラスタを形成してもよい。
【0079】
(4i)上記実施形態では、制御部3は、ラベルiによる車両の尤もらしさLi
Pを、式1に従って算出しているが、開示されている式1は一例であり、これに限定されるものではない。式1では、仮対応クラスタを構成する反射点を母集団として、母集団内の反射点の総数NPに対する母集団内のラベルiを有する反射点の数ni
Pを表すラベルiの存在割合を算出しているが、例えば、仮対応クラスタを構成する反射点及び仮対応クラスタの近傍領域に存在する有効な反射点を1つの母集団としてラベルiの存在割合を算出してもよい。また、制御部3は、ラベルiによる車両の尤もらしさLi
Pを、ラベルiを有する反射点の存在点数の増加に伴いラベルiによる車両の尤もらしさLi
Pも増加するような他の関係式に従って算出してもよい。例えば、ラベルiを有する反射点の存在点数を、ラベルiによる車両の尤もらしさLi
Pとしてもよい。
【0080】
(4j)上記実施形態では、制御部3は、ラベルjによる車両の尤もらしさLj
Nを、式2に従って算出しているが、開示されている式2は一例であり、これに限定されるものではない。式2では、仮対応クラスタで形成された領域に存在するすべての反射点を母集団として、母集団内の反射点の総数NNに対する母集団内のラベルjを有する反射点の数nj
Nを表すラベルjの存在割合を算出しているが、例えば、仮対応クラスタで形成された領域及びその近傍領域に存在するすべての反射点を母集団としてラベルjの存在割合を算出してもよい。また、制御部3は、ラベルjによる車両の尤もらしさLj
Nを、ラベルjを有する反射点の存在点数の増加に伴いラベルjによる車両の尤もらしさLj
Nが減少するような他の関係式に従って算出してもよい。例えば、ラベルjを有する反射点の存在点数を、ラベルjによる車両の尤もらしさLj
Nとしてもよい。
【0081】
(4k)上記実施形態では、制御部3は、前回の測定サイクルで算出された事後確信度Pk-1|k-1に時間遷移モデルTを掛け合わせて事後確信度を更新し、更新された事後確信度を現在の測定サイクルでの事前確信度Pk|k-1として用いているが、これに限定されるものではない。例えば、制御部3は、前回の測定サイクルで算出された事後確信度を更新せずに、現在の測定サイクルでの事前確信度Pk|k-1として用いてもよい。
【0082】
(4l)上記実施形態では、時間遷移モデルTを構成する値を、tpp=0.9、tnp=0.1として例示したが、これに限定されるものではない。例えば、時間遷移モデルTを構成する値は、式4に従って事後確信度を更新することで事後確信度が0.5に近づくように設定された他の値であってもよい。
【0083】
(4m)上記実施形態では、S310で、制御部3が対応付け候補として記憶部に登録された複数の仮対応クラスタから1つの仮対応クラスタを抽出する方法として、注目追跡物標からの距離が最も近い仮対応クラスタを抽出する方法を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、制御部3が対応付け候補として記憶部に登録された複数の仮対応クラスタから1つの仮対応クラスタを抽出する方法として、S305で算出された事後確信度が最も高い仮対応クラスタを抽出する方法であってもよい。
【0084】
(4n)上記実施形態では、S312を、制御部3がS311で算出された注目追跡物標の事後確信度を記憶部に登録する処理として例示したが、これに限定されるものではない。例えば、制御部3は、S312で、S305で算出された注目追跡物標の事後確信度を記憶部に登録してもよい。この場合、S311で注目追跡物標の事後確信度を算出する必要がなくなるため、S311における処理を省略することができる。
【0085】
(4o)上記実施形態におけるS313で、制御部3が注目追跡物標を追跡対象から排除する処理の具体的処理内容は、特に限定されない。例えば、制御部3が、記憶部に登録されている追跡対象のリストから注目追跡物標を消去することで、当該注目追跡物標を追跡対象から排除するようにしてもよい。また例えば、制御部3が注目追跡物標を消去せず、当該注目追跡物標にラベル等を付与して識別できるようにしてもよい。このようにすれば、後段のアプリケーション等が、当該注目追跡物標を追跡対象から消去するかを決定できる。
【0086】
(4p)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0087】
(4q)本開示は、上述した物体認識装置1の他、当該物体認識装置1が備える制御部3、当該制御部3としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、物体認識方法など、種々の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0088】
1…物体認識装置、2…レーダ部、4…特徴判定部、5…クラスタ形成部、6…トラッキング処理部、10…第1対応付け処理部、20…車両尤度算出部、30…第2対応付け処理部、40…物標認識部