(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】シート空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20231226BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20231226BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20231226BHJP
B60N 2/56 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B60H1/00 102V
B60H1/34 651A
A47C7/74 Z
A47C7/74 C
B60N2/56
(21)【出願番号】P 2020113131
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生田 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 周治
(72)【発明者】
【氏名】村上 広宣
(72)【発明者】
【氏名】小原 章治
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-077760(JP,A)
【文献】特開2013-184625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/34
A47C 7/74
B60N 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設置されるシートに適用されるシート空調装置において、
前記シートに着座する乗員(3)の背部または臀部を支持するクッション材(6)と、
前記クッション材を覆い、パーフォレーション(10)を有する表皮(7)と、
前記クッション材のうち前記乗員の背部または臀部に対向する部位に設けられ、空気を吸い込みまたは吹き出すことの可能な通風孔(13)と、
前記クッション材のうち前記表皮
に接する部位に設けられ、前記通風孔のうち前記表皮側の部位に連通すると共に、前記通風孔から前記クッション材のうち前記乗員の背部の中心または臀部の中心から離れる方向
へ延びる表溝(14)と、を備えるシート空調装置。
【請求項2】
前記シートは、前記乗員の背部または臀部に対向する部位に設けられる中央部(4、41)と、前記中央部の両サイドに設けられるサイドサポート(5、51)とを有しており、
前記中央部と前記サイドサポートとの境界には、前記クッション材と前記表皮とを接続するための吊り溝(11)が設けられており、
前記通風孔および前記表溝は、前記中央部に設けられ、
前記表溝は、前記通風孔から前記サイドサポートまたは前記吊り溝に向かって延びている、請求項1に記載のシート空調装置。
【請求項3】
前記表溝は、前記吊り溝と前記通風孔とを連通している、請求項2に記載のシート空調装置。
【請求項4】
前記表溝(14d)は、前記通風孔から前記サイドサポートまたは前記吊り溝に向かって前記シートの面方向の幅が次第に拡がる形状である、請求項2または3に記載のシート空調装置。
【請求項5】
前記表溝(14e)は、前記サイドサポートまたは前記吊り溝から前記通風孔に向かって前記シートの厚み方向の深さが次第に拡がる部位を有している、請求項2ないし4のいずれか1つに記載のシート空調装置。
【請求項6】
前記表溝は、1つの前記通風孔に対して1本または複数本設けられている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載のシート空調装置。
【請求項7】
前記クッション材は、シートパッド(8)、および、前記シートパッドの前記表皮側に設けられる軟質ウレタンフォーム層(9)または三次元ネットにより構成されており、
前記表溝は、前記軟質ウレタンフォーム層または前記三次元ネットの一部を
板厚方向に貫通した状態で無しにすることで形成されている、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のシート空調装置。
【請求項8】
前記クッション材は、シートパッド(8)により構成されており、
前記表溝は、前記シートパッドのうち前記表皮側の部位の一部を凹状にして形成されている、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のシート空調装置。
【請求項9】
前記表溝は、前記通風孔から前記クッション材のうち前記乗員の着座圧の高い側に延びることなく、前記乗員の着座圧の低い側に延びている、請求項1ないし8のいずれか1つに記載のシート空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に設置されるシートに適用されるシート空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内に設置されるシートに設けた複数の通風孔から空気を吸い込みまたは吹き出すことで、そのシートに着座する乗員の快適感を向上するシート空調装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載のシート空調装置は、シートを構成するバックパッドに対し複数の楕円形の通風孔を設け、その通風孔から空気を吸い込む構成である。なお、特許文献1では、通風孔は、通気孔と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシート空調装置は、シートに着座する乗員の背部によって通風孔が塞がれると、乗員の背部近傍から通風孔に吸い込まれる風量が減少し、乗員が涼しさを感じられずに快適感が低下するといった問題がある。
その問題を解決するため、仮に、通風孔の内径を大きくするか、または、通風孔の数を増加すれば、乗員がシートに着座した際に、バックパッドのうち通風孔を設けた部位が凹むなどして、座り心地が悪化する恐れがある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、乗員の座り心地に影響を与えることなく、乗員の快適感を向上することの可能なシート空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、車室内に設置されるシートに適用されるシート空調装置において、次の構成を備える。クッション材(6)は、シートに着座する乗員(3)の背部または臀部を支持する。表皮(7)は、クッション材を覆い、パーフォレーション(10)を有する。通風孔(13)は、クッション材のうち乗員の背部または臀部に対向する部位に設けられ、空気を吸い込みまたは吹き出すことの可能な孔である。表溝(14)は、クッション材のうち表皮に接する部位に設けられ、通風孔のうち表皮側の部位に連通すると共に、通風孔からクッション材のうち乗員の背部の中心または臀部の中心から離れる方向へ延びている。
【0008】
これによれば、クッション材のうち乗員の背部の中心または臀部の中心から離れる方向は、クッション材のうち乗員の着座圧が小さい部位である。すなわち、表溝は、通風孔から、クッション材のうち乗員の着座圧が小さい側へ延びる構成である。そのため、通風孔の軸方向にあるパーフォレーションが乗員の体によって塞がれた場合でも、表溝に対応する位置にあるパーフォレーションから表溝を経由して通風孔へ風が流れる。したがって、乗員の体の近傍を流れる風量の減少が抑制されるので、乗員がより涼しさを感じることができ、乗員の快適感を向上することができる。
さらに、表溝は、乗員の着座圧が小さい側へ延びており、その深さも通風孔より浅いので、乗員の座り心地に殆ど影響を与えることがない。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るシート空調装置が適用されるシートバックの表皮を除いた状態を示す正面図である。
【
図2】第1実施形態に係るシート空調装置が適用されるシートバックを示す正面図である。
【
図5】第1実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図7】第1実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図8】第1実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図9】第1実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図10】第1実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図11】第2実施形態に係るシート空調装置が適用されるシートバックの表皮を除いた状態を示す正面図である。
【
図13】第2実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図14】第2実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図15】第2実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図16】第2実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図17】第2実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図18】第2実施形態に係るシート空調装置が備える表溝の例を示す斜視図である。
【
図19】第2実施形態のシート空調装置と比較例のシート空調装置に関し、送風機のモータに通電する電流のデューティ比と風量との関係を示すグラフである。
【
図20】第3実施形態に係るシート空調装置が適用されるシートクッションの表皮を除いた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複数の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。なお、各図面に記載した上下の矢印、前後の矢印、および以下の説明における上、下、前、後の用語は、シート空調装置の一例を説明するために便宜上使用するものであり、本発明を限定するものではない。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態のシート空調装置は、車室内に設置されるシートに適用されるものである。
【0013】
図1~
図4に示すように、シートは、乗員の背部を支持するシートバック1と、乗員の臀部を支持するシートクッション2と、乗員の頭部を支持する図示しないヘッドレストを備えている。
【0014】
本実施形態のシート空調装置は、シートが備えるシートバック1に適用されるものである。シートバック1は、シートに着座する乗員3の背部に対向する部位に設けられる中央部4と、その中央部4の両サイドに設けられるサイドサポート5とを備えている。なお、シートバック1の中央部4は、背凭れ面または座面とも呼ばれる。
【0015】
また、本実施形態のシートバック1は、シートに着座する乗員3の背部を支持するクッション材6と、そのクッション材6を覆う表皮7などを有している。本実施形態のクッション材6は、シートパッド8および軟質ウレタンフォーム層9により構成されている。なお、
図1は、シートバック1の表皮7を除いた状態を示しており、軟質ウレタンフォーム層9に複数のドットを付している。
【0016】
シートパッド8は、発泡ウレタンなどで形成されており、中央部4とサイドサポート5の大部分を構成している。シートパッド8は、例えばモールド成型により形成される。
【0017】
軟質ウレタンフォーム層9は、シートパッド8よりも硬度が小さい発泡ウレタン材料で形成されたものであり、シートパッド8の表皮7側に設けられる。軟質ウレタンフォーム層9は、例えば、ウレタンを発泡した後に、切り出し成型(すなわち、スラブ成型)されるものであり、スラブウレタンとも呼ばれる。軟質ウレタンフォーム層9の厚みは、比較的薄く、例えば1~5mm程度である。
【0018】
なお、軟質ウレタンフォーム層9に代えて、三次元ネットを使用してもよい。三次元ネットとは、クッション性、通気性、体圧分散性に優れる立体編物の構造をもった緩衝材である。
【0019】
表皮7は、例えばファブリックまたは皮などにより形成され、クッション材6のうち少なくとも乗員3側の面および側面を覆うものである。
図4に示すように、本実施形態の表皮7は、少なくとも中央部4にパーフォレーション10と呼ばれる複数の細かい穴を有している。
【0020】
シートには、クッション材6と表皮7とを接続するための吊り溝11が設けられている。吊り溝11は、シートパッド8に埋め込んだワイヤ12に、表皮7に設けた紐などを係止する部位である。吊り溝11は、シートバック1のうち凹となる部位に設けられている。そのため、吊り溝11の一部は、中央部4とサイドサポート5との境界に設けられている。
【0021】
本実施形態のシート空調装置は、シートバック1を構成するクッション材6に、複数の通風孔13および複数の表溝14などを備えている。
【0022】
複数の通風孔13は、クッション材6を構成するシートパッド8のうち、シートに着座する乗員3の背部に対向する部位(すなわち中央部4)に設けられている。具体的には、複数の通風孔13は、中央部4のうちの左と右に3個ずつ上下方向に配置され、中央に3個上下方向に配置されている。複数の通風孔13はいずれも、シート前後方向(すなわち、シートバック1の厚み方向)に延びている。
【0023】
シートパッド8のうち後方側の部位には、裏溝15が設けられている。裏溝15は、複数の通風孔13を連通する通風路である。具体的には、裏溝15は、略上下方向に延びる3本の溝15a~15cと、その3本の溝15a~15cに連通する略矩形状の空間15dを有している。略上下方向に延びる3本の溝15a~15cは、複数の通風孔13に連通している。そのため、略矩形状の空間15dも、その3本の溝15a~15cを介して複数の通風孔13に連通している。
【0024】
シートパッド8の後側には、裏溝15に対応する部位に裏蓋16が設けられている。裏蓋16は、例えば、硬質フェルトやポリプロピレン、POM等の樹脂などで形成され、裏溝15の開放面を塞ぐようにシートパッド8の後面に貼り付けられている。裏蓋16の後方には、送風機17が設けられている。裏蓋16には、その送風機17の空気吸込口に対応する位置に開口穴18が設けられている。
【0025】
送風機17の後方には、バックフレーム19が設けられている。バックフレーム19の外縁は、シートパッド8に接続されている。裏蓋16とバックフレーム19との間に空間が形成されている。この空間をシートバック空間20と呼ぶこととする。
【0026】
送風機17は、そのシートバック空間20に設けられている。送風機17は、図示しない電気モータの駆動により羽根車を回転させることで気流を発生させるファンである。羽根車として、遠心ファンが用いられる。なお、羽根車として、軸流ファンまたは斜流ファンまたはターボファンを用いてもよい。送風機17は、表皮7の有するパーフォレーション10から表溝14、通風孔13および裏溝15を経由して吸い込んだ空気を、シートバック空間20に吹き出すように構成されている。
【0027】
複数の表溝14は、クッション材6のうち表皮7側の部位に設けられている。本実施形態では、複数の表溝14は、クッション材6を構成する軟質ウレタンフォーム層9の一部を無しにすることで(すなわち、切り欠くことで)形成されている。そのため、複数の表溝14は、比較的浅い溝である。
なお、軟質ウレタンフォーム層9に代えて、三次元ネットが使用される場合、その三次元ネットの一部を無しにすることで(すなわち、切り欠くことで)複数の表溝14を形成してもよい。
【0028】
複数の表溝14はそれぞれ対応する通風孔13に連通している。具体的には、複数の表溝14は、左と右に3個ずつ配置された通風孔13にそれぞれ連通するように設けられている。なお、中央に配置された3個の通風孔13に表溝14は設けられていない。
【0029】
そして、表溝14は、通風孔13から、クッション材6のうちシートに着座する乗員3の背中の中心から離れる方向へ延びている。具体的には、複数の表溝14のうち、最上部の通風孔13に連通する表溝14は、その通風孔13からサイドサポート5に向かって延びている。また、複数の表溝14のうち、最上部の通風孔13よりも下側の通風孔13に連通する表溝14は、その通風孔13から吊り溝11に向かって延びている。すなわち、複数の表溝14は、通風孔13からサイドサポート5または吊り溝11に向かって延びている。そして、最上部の通風孔13よりも下側の通風孔13に連通する表溝14は、その通風孔13と吊り溝11とを連通している。
【0030】
クッション材6のうちシートに着座する乗員3の背部の中心から離れる方向にある部位は、乗員3の背部の中心を支持する部位に比べて、乗員3の着座圧が小さい部位である。具体的には、サイドサポート5または吊り溝11は、中央部4に比べて乗員3の着座圧が小さい部位である。したがって、複数の表溝14は、通風孔13からクッション材6のうち乗員3の着座圧の高い側に延びることなく、乗員3の着座圧の低い側に延びている。
【0031】
次に、上述したシート空調装置の構成において、送風機17を駆動した際の風の流れを説明する。
図4に示すように、シートに乗員3が着座すると、通風孔13の軸方向にあるパーフォレーション10は、乗員3の背部により塞がれることがある。しかし、その場合でも、本実施形態では、表溝14に対応する位置にあるパーフォレーション10と、その表溝14とを介して、車室内空間と通風孔13とが連通した状態となる。なお、表溝14が吊り溝11に連通している場合、その吊り溝11と、吊り溝11および表溝14に対応する位置にあるパーフォレーション10と、表溝14とを介して、車室内空間と通風孔13とが連通した状態となる。
【0032】
そのため、送風機17を駆動すると、
図4の矢印AF1、AF2、AF3に示すように、車室内の空気は、車室内空間→吊り溝11→パーフォレーション10→表溝14→通風孔13→裏溝15→送風機17→シートバック空間20の順に流れる。なお、空気の一部は、吊り溝11を経由することなく、車室内空間→パーフォレーション10→表溝14→通風孔13→裏溝15→送風機17→シートバック空間20の順に流れるものもある。このように、車室内の空気が乗員3の背部近傍のパーフォレーション10から表溝14を経由して通風孔13へ流れることで、乗員3の背部近傍を風が十分に流れることになる。したがって、本実施形態では、通風孔13の軸方向にあるパーフォレーション10が乗員3の背部によって塞がれた場合でも、乗員3の背部近傍を流れる風量の減少が抑制されるので、乗員3がより涼しさを感じることができる。
また、
図3および
図4に示すように、表溝14は、乗員3の着座圧が高い側へ延びることなく、乗員3の着座圧が低い側へ延びており、その深さも通風孔13より浅いので、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることがない。
【0033】
続いて、シート空調装置が備える表溝14の形状に関する複数の例を
図5~
図10を参照して説明する。なお、
図5~
図10も、シートバック1の表皮7を除いた状態を示しており、軟質ウレタンフォーム層9に複数のドットを付している。表溝14の形状に関する複数の例の説明では、各表溝14の形状を区別するために、表溝14の符号の末尾にアルファベットを付すこととする。
【0034】
図5に示す例では、表溝14aは、通風孔13から吊り溝11へ直線状に延びている。表溝14aにおけるシートの面方向の幅W1は、通風孔13の直径D1の半分以下に設定することが好ましい。なお、シートの面方向とは、シートの厚み方向に対して垂直な面に沿う方向である。また、シートバック1においてシートの厚み方向とは、シートバック1を起こした状態で車両前後方向と略一致する方向である。表溝14aにおけるシートの面方向の幅W1を小さくすることで、乗員3の座り心地に与える影響を小さくすることができる。
【0035】
また、表溝14aは、軟質ウレタンフォーム層9の一部を無しにすることで形成されている。そのため、表溝14aは、シートの厚み方向の深さH1が浅い溝である。表溝14におけるシートの厚み方向の深さH1を浅くすることによっても、乗員3の座り心地に与える影響を小さくすることができる。なお、このことは、次の
図6~
図10に示す例でも同様である。
【0036】
図6に示す例でも、表溝14bは、通風孔13から吊り溝11へ直線状に延びている。また、表溝14bは、その表溝14bが延びる方向に垂直な断面形状がU字状に形成されている。なお、表溝14bにおけるシートの面方向の幅W1は、通風孔13の直径D1の半分以下に設定することが好ましい。
【0037】
図7に示す例でも、表溝14cは、通風孔13から吊り溝11へ直線状に延びている。また、表溝14cは、その表溝14cが延びる方向に垂直な断面形状がV字状に形成されている。なお、表溝14cにおけるシートの面方向の幅W1は、通風孔13の直径D1の半分以下に設定することが好ましい。
【0038】
図8に示す例では、表溝14dは、通風孔13から吊り溝11へ向かってシートの面方向の幅が次第に拡がる形状である。これにより、表溝14dは、着座圧が高い側から低い側に向かって流路面積が次第に大きくなる。したがって、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることなく、表溝14dから通風孔13へ流れる風量をより増加することができる。
【0039】
図9に示す例では、表溝14eは、吊り溝11から通風孔13に向かってシートの厚み方向の深さが次第に拡がる部位を有している。これにより、表溝14eから通風孔13へ流れる空気の圧力損失を低減することが可能である。したがって、表溝14eにおけるシートの面方向の幅W1を小さくしたまま、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることなく、表溝14から通風孔13へ流れる風量をより増加することができる。
【0040】
図10に示す例では、1つの通風孔13に対して3本の表溝14f、14g、14hが設けられている。3本の表溝14f、14g、14hはそれぞれ、通風孔13から吊り溝11へ直線状に延びている。各表溝14f、14g、14hおけるシートの面方向の幅W1、W2、W3は、通風孔13の直径D1の半分以下に設定することが好ましい。これにより、各表溝14f、14g、14hにおけるシートの面方向の幅W1、W2、W3を小さくしたまま、複数本の表溝14f、14g、14hを合わせた流路面積を大きくすることが可能である。したがって、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることなく、複数本の表溝14f、14g、14hから通風孔13へ流れる総風量をより増加することができる。
【0041】
上記
図5~
図10を参照して説明したように、本実施形態のシート空調装置が備える表溝14として、種々の形状のものを採用することが可能である。
【0042】
以上説明した本実施形態のシート空調装置は、次の作用効果を奏するものである。
(1)本実施形態では、シート空調装置は、クッション材6、表皮7、通風孔13および表溝14を備えている。その表溝14は、クッション材6のうち表皮7側の部位に設けられ、通風孔13に連通すると共に、通風孔13からクッション材6のうちシートに着座する乗員3の背部の中心から離れる方向へ延びている。
これによれば、シートバック1を構成するクッション材6のうち乗員3の背部の中心から離れる方向は、クッション材6のうち乗員3の着座圧が小さい部位である。すなわち、表溝14は、通風孔13から、クッション材6のうち乗員3の着座圧が小さい側へ延びる構成である。そのため、通風孔13の軸方向にあるパーフォレーション10が乗員3の背部によって塞がれた場合でも、表溝14に対応する位置にあるパーフォレーション10から表溝14を経由して通風孔13へ風が流れる。したがって、乗員3の背部近傍を流れる風量の減少が抑制されるので、乗員3がより涼しさを感じることができ、乗員3の快適感を向上することができる。
さらに、表溝14は、小さい乗員3の着座圧が小さい側へ延びており、その深さも通風孔13より浅いので、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることがない。
【0043】
(2)本実施形態では、表溝14は、通風孔13からサイドサポート5または吊り溝11に向かって延びている。
これによれば、シートバック1の中で、サイドサポート5または吊り溝11は、乗員3の着座圧が小さい部位である。そのため、表溝14は乗員3の着座圧が小さい側へ延びており、その深さも通風孔13より浅いので、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることがない。
また、通風孔13の軸方向にあるパーフォレーション10が乗員3の背部によって塞がれた場合でも、着座圧が小さい部位に設けられる表溝14に対応する位置にあるパーフォレーション10から表溝14を経由して通風孔13へ風が流れる。そのため、乗員3の背部近傍を流れる風量の減少を抑制することができる。
【0044】
(3)本実施形態では、表溝14は、吊り溝11と通風孔13とを連通している。
これによれば、通風孔13の軸方向にあるパーフォレーション10が乗員3の背部によって塞がれた場合でも、吊り溝11を経由して、その吊り溝11に連通する表溝14に対応する位置にあるパーフォレーション10から表溝14および通風孔13へ風が流れる。そのため、乗員3の背部近傍を流れる風量の減少を抑制することができる。
【0045】
(4)本実施形態では、表溝14は、通風孔13からサイドサポート5または吊り溝11に向かってシートの面方向に次第に拡がる形状を採用してもよい。
これによれば、表溝14のうち着座圧の小さい側の流路面積を大きくすることで、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることなく、表溝14から通風孔13へ流れる風量をより増加することができる。
【0046】
(5)本実施形態では、表溝14は、サイドサポート5または吊り溝11から通風孔13に向かってシートの厚み方向に次第に拡がる部位を有する形状を採用してもよい。
これによれば、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることなく、表溝14から通風孔13へ流れる空気の圧力損失を低減することで、表溝14から通風孔13へ流れる風量をより増加することができる。
【0047】
(6)本実施形態では、1つの通風孔13に対して1本の表溝14を設けてもよく、または、1つの通風孔13に対して複数本の表溝14を設けてもよい。
これによれば、1つの通風孔13に対して1本の表溝14を設けることで、構成を簡素にするともに、乗員3の座り心地に与える影響をより小さくすることができる。
また、1つの通風孔13に対して複数本の表溝14を設けることで、各表溝14におけるシートの面方向の幅W1、W2、W3を小さくしたまま、複数本の表溝14を合わせた流路面積を大きくすることが可能である。そのため、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることなく、複数本の表溝14から通風孔13へ流れる総風量をより増加することができる。
【0048】
(7)本実施形態では、表溝14は、軟質ウレタンフォーム層9または三次元ネットの一部を無しにすることで形成されている。
これによれば、軟質ウレタンフォーム層9または三次元ネットの加工により表溝14を容易に形成することができる。
【0049】
(8)本実施形態では、表溝14は、通風孔13からクッション材6のうち乗員3の着座圧の高い側に延びることなく、乗員3の着座圧の低い側に延びている。
これによれば、通風孔13の軸方向にあるパーフォレーション10が乗員3の背部によって塞がれた場合でも、表溝14に対応する位置にあるパーフォレーション10から表溝14を経由して通風孔13へ風が流れる。そのため、乗員3の背部近傍を流れる風量の減少が抑制されるので、乗員3がより涼しさを感じることができ、乗員3の快適感を向上することができる。
また、表溝14は、乗員3の着座圧の高い側に延びておらず、その深さも通風孔13より浅いので、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることがない。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対してシートバック1が有するクッション材6の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、第2実施形態で参照する図のうち、
図11、
図13~
図18は、シートバック1の表皮7を除いた状態を示したものである。
【0051】
図11および
図12に示すように、第2実施形態では、シートバック1の有するクッション材6は、シートパッド8により構成されており、軟質ウレタンフォーム層9および三次元ネットを備えていない。なお、シートパッド8は、第1実施形態と同じく、例えば、発泡ウレタンなどで形成されている。そのため、第2実施形態では、表溝14は、シートパッド8のうち表皮7側の部位の一部を凹状にして形成されている。なお、シートパッド8をモールド成型する際に、通風孔13と表溝14を一緒に形成することが可能である。
【0052】
第2実施形態においても、複数の表溝14は、通風孔13からクッション材6のうち乗員3の着座圧の高い側に延びることなく、乗員3の着座圧の低い側に延びている。具体的には、複数の表溝14は、通風孔13からサイドサポート5または吊り溝11に向かって延びている。
【0053】
第2実施形態のシート空調装置が備える表溝14の形状の例を
図13~
図18に示す。
図13~
図18に示した例は、いずれも、第1実施形態で
図5~
図10に示した例と同一の形状であるので、その説明を省略する。第2実施形態のシート空調装置が備える表溝14も、第1実施形態と同様に、種々の形状のものを採用することが可能である。
【0054】
ただし、第1実施形態の表溝14は、軟質ウレタンフォーム層9の一部を切り欠くなどして、軟質ウレタンフォーム層9の一部を無しにすることで形成した。それに対して、第2実施形態の表溝14は、シートパッド8のうち表皮7側の部位の一部を凹状に加工成形するものである。
【0055】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、表溝14は、シートの厚み方向の深さH1が、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えない程度に浅く設定される。また、表溝14は、シートの面方向の幅W1が、通風孔13の直径D1の半分以下とすることが好ましい。
【0056】
次に、第2実施形態のシート空調装置と比較例のシート空調装置に関し、風量の変化について実験した結果について説明する。
【0057】
ここで、実験に用いた比較例のシート空調装置は、図示は省略するが、シートバック1に適用されるものであり、クッション材6、表皮7、および通風孔13などを備えるものである。なお、クッション材6は、シートパッド8により構成されている。比較例と第2実施形態との違いとして、比較例のシート空調装置は、表溝14を備えていない構成である。
【0058】
一方、実験に用いた第2実施形態のシート空調装置は、
図18で説明した形状の表溝14f、14g、14hを備えるものとした。すなわち、1つの通風孔13に対して3本の表溝14f、14g、14hが設けられたものである。また、この実験では、シートに人体ダミーを着座させた状態で行った。
【0059】
そして、第2実施形態のシート空調装置と比較例のシート空調装置に対してそれぞれ、送風機17の電気モータに対して通電する電流のデューティ比を変えつつ、送風機17により送風される風量を計測した結果をプロットした。
【0060】
図19では、第2実施形態のシート空調装置に関する実験結果を実線Aに示し、比較例のシート空調装置に関する実験結果を実線Bに示している。
【0061】
図19のグラフから、第2実施形態のシート空調装置は、比較例のシート空調装置に対し、送風機17の電気モータに通電した電流の各デューティ比において、風量が約20%増加することが見て取れる。このことから、第2実施形態のシート空調装置は、通風孔13の軸方向にあるパーフォレーション10が乗員3の背部によって塞がれた場合、比較例のシート空調装置と比較して、乗員3の背部近傍を流れる風量を増加することが可能である。
【0062】
以上説明した第2実施形態のシート空調装置も、第1実施形態のシート空調装置と同様の作用効果を奏することが可能である。すなわち、クッション材6に表溝14を設けることで、乗員3がより涼しさを感じることができ、乗員3の快適感が向上することができる。また、表溝14は、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることがない。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1実施形態等に対して、シート空調装置をシートに設置する部位を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
図20に示すように、第3実施形態のシート空調装置は、シートクッション2に設置されるものである。シートクッション2は、シートに着座する乗員3の臀部に対向する部位に設けられる中央部41と、その中央部41の両サイドに設けられるサイドサポート51とを備えている。
【0065】
また、第3実施形態のシートクッション2は、シートに着座する乗員3の臀部を支持するクッション材6と、そのクッション材6を覆う表皮(不図示)などを有している。なお、
図20は、シートクッション2の表皮を除いた状態を示したものである。
【0066】
クッション材6は、シートパッド8および軟質ウレタンフォーム層9により構成されている。なお、軟質ウレタンフォーム層9に代えて、三次元ネットを使用してもよい。或いは、クッション材6は、シートパッド8のみで構成されていてもよい。
【0067】
図示は省略するが、表皮は、少なくとも中央部41にパーフォレーションを有している。また、吊り溝11の一部は、中央部41とサイドサポート51との境界に設けられている。
【0068】
第3実施形態のシート空調装置は、シートクッション2を構成するクッション材6に、複数の通風孔13および複数の表溝14などを備えている。
複数の通風孔13は、クッション材6のうち中央部41に設けられている。複数の通風孔13はいずれも、上下方向(すなわち、シートクッション2の厚み方向)に延びている。
複数の表溝14は、クッション材6のうち表皮側の部位に設けられている。複数の表溝14は、乗員3の座り心地に影響を与えない程度の比較的浅い溝である。
【0069】
表溝14は、通風孔13から、クッション材6のうちシートに着座する乗員3の臀部の中心から離れる方向へ延びている。すなわち、複数の表溝14は、通風孔13からサイドサポート51または吊り溝11に向かって延びている。そして、表溝14は、通風孔13と吊り溝11とを連通している。
【0070】
クッション材6のうちシートに着座する乗員3の臀部の中心から離れる方向にある部位は、乗員3の臀部が当たる部位に比べて、乗員3の着座圧が小さい部位である。具体的には、サイドサポート51または吊り溝11は、中央部41に比べて乗員3の着座圧が小さい部位である。したがって、第3実施形態でも、複数の表溝14は、通風孔13からクッション材6のうち乗員3の着座圧の高い側に延びることなく、乗員3の着座圧の低い側に延びている。
【0071】
以上説明した第3実施形態のシート空調装置も、第1実施形態等のシート空調装置と同様の作用効果を奏することが可能である。すなわち、シートクッション2を構成するクッション材6に表溝14を設けることで、乗員3がより涼しさを感じることができ、乗員3の快適感が向上することができる。また、表溝14は、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えることがない。
【0072】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、シート空調装置は、送風機17を駆動すると、表皮7の有するパーフォレーション10から表溝14および通風孔13を経由して空気を吸い込むものについて説明したが、これに限らない。シート空調装置は、送風機17を駆動すると、通風孔13および表溝14を経由して表皮7の有するパーフォレーション10から空気を吹き出すようにしてもよい。
【0073】
(2)上記各実施形態では、シート空調装置は、裏蓋16とバックフレーム19との間のシートバック空間20に送風機17を設置する構成について説明したが、これに限らない。シート空調装置は、例えばシートクッション2の下部など、シートバック空間20以外の場所に送風機17を設置する構成としてもよい。
【0074】
(3)上記各実施形態では、シート空調装置が備える表溝14の形状として、
図5~
図10、
図13~
図18を参照して説明したが、それに限らず、表溝14の形状は種々の形状を採用することが可能である。また、表溝14の数についても、任意に設定することが可能である。
なお、通風孔13や裏溝15の形状および数等についても、種々のものを採用することが可能である。
【0075】
(4)上記各実施形態では、表溝14は、シートの面方向の幅W1が、通風孔13の直径D1の半分以下とすることが好ましいと説明したが、これに限らず、乗員3の座り心地に殆ど影響を与えない範囲で、シートの面方向の幅W1を通風孔13の直径D1の半分以上に設定してもよい。
【0076】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0077】
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、車室内に設置されるシートに適用されるシート空調装置は、クッション材、表皮、通風孔および表溝を備える。クッション材は、シートに着座する乗員の背部または臀部を支持する。表皮は、クッション材を覆い、パーフォレーションを有する。通風孔は、クッション材のうち乗員の背部または臀部に対向する部位に設けられ、空気を吸い込みまたは吹き出すことが可能である。表溝は、クッション材のうち表皮側の部位に設けられ、通風孔に連通すると共に、通風孔からクッション材のうち乗員の背部の中心または臀部の中心から離れる方向へ延びている。
【0078】
第2の観点によれば、シートは、乗員の背部または臀部に対向する部位に設けられる中央部と、中央部の両サイドに設けられるサイドサポートとを有している。中央部とサイドサポートとの境界には、クッション材と表皮とを接続するための吊り溝が設けられている。通風孔および表溝は、中央部に設けられている。そして、表溝は、通風孔からサイドサポートまたは吊り溝に向かって延びている。
これによれば、シートバックの中で、サイドサポートまたは吊り溝は、乗員の着座圧が小さい部位である。そのため、表溝は乗員の着座圧が小さい側へ延びており、その深さも通風孔より浅いので、乗員の座り心地に殆ど影響を与えることがない。
また、通風孔の軸方向にあるパーフォレーションが乗員の体によって塞がれた場合でも、表溝に対応する位置にあるパーフォレーションから表溝を経由して通風孔へ風が流れる。そのため、乗員の体の近傍を流れる風量の減少を抑制することができる。
【0079】
第3の観点によれば、表溝は、吊り溝と通風孔とを連通している。
これによれば、通風孔の軸方向にあるパーフォレーションが乗員の体によって塞がれた場合でも、吊り溝を経由して、その吊り溝に連通する表溝に対応する位置にあるパーフォレーションから表溝および通風孔へ風が流れる。そのため、乗員の体の近傍を流れる風量の減少を抑制することができる。
【0080】
第4の観点によれば、表溝は、通風孔からサイドサポートまたは吊り溝に向かってシートの面方向の幅が次第に拡がる形状である。
これによれば、表溝のうち着座圧の小さい側の流路面積を大きくすることで、乗員の座り心地に殆ど影響を与えることなく、表溝から通風孔へ流れる風量をより増加することができる。
【0081】
第5の観点によれば、表溝は、サイドサポートまたは吊り溝から通風孔に向かってシートの厚み方向の深さが次第に拡がる部位を有している。
これによれば、表溝から通風孔へ流れる空気の圧力損失を低減することで、乗員の座り心地に殆ど影響を与えることなく、表溝から通風孔へ流れる風量をより増加することができる。
【0082】
第6の観点によれば、表溝は、1つの通風孔に対して1本または複数本設けられている。
これによれば、1つの通風孔に対して1本の表溝を設けることで、構成を簡素にするともに、乗員の座り心地に与える影響をより小さくすることができる。
また、1つの通風孔に対して複数本の表溝を設けることで、各表溝におけるシートの面方向の幅を小さくしたまま、複数本の表溝を合わせた流路面積を大きくすることが可能である。そのため、乗員の座り心地に殆ど影響を与えることなく、複数本の表溝から通風孔へ流れる総風量をより増加することができる。
【0083】
第7の観点によれば、クッション材は、シートパッド、および、シートパッドの表皮側に設けられる軟質ウレタンフォーム層または三次元ネットにより構成されている。そして、表溝は、軟質ウレタンフォーム層または三次元ネットの一部を無しにすることで形成されている。
これによれば、軟質ウレタンフォーム層または三次元ネットの加工により表溝を容易に形成することができる。
【0084】
第8の観点によれば、クッション材は、シートパッドにより構成されている。そして、表溝は、シートパッドのうち表皮側の部位の一部を凹状にして形成されている。
これによれば、シートパッドの成型時に、表溝、通風孔などを一緒に形成することができる。
【0085】
第9の観点によれば、表溝は、通風孔からクッション材のうち乗員の着座圧の高い側に延びることなく、乗員の着座圧の低い側に延びている。
これによれば、通風孔の軸方向にあるパーフォレーションが乗員の体によって塞がれた場合でも、表溝に対応する位置にあるパーフォレーションから表溝を経由して通風孔へ風が流れる。そのため、乗員の体の近傍を流れる風量の減少が抑制されるので、乗員がより涼しさを感じることができ、乗員の快適感を向上することができる。
また、表溝は、乗員の着座圧の高い側に延びておらず、その深さも通風孔より浅いので、乗員の座り心地に殆ど影響を与えることがない。
【符号の説明】
【0086】
3 乗員
6 クッション材
7 表皮
10 パーフォレーション
13 通風孔
14 表溝