(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20231226BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20231226BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231226BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20231226BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20231226BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20231226BHJP
C08L 23/22 20060101ALI20231226BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20231226BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20231226BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20231226BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231226BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20231226BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20231226BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20231226BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20231226BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20231226BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08G59/40
C08K3/013
C08K5/3415
C08L9/00
C08L23/00
C08L23/22
C08L33/08
C08L71/00
C08L83/04
C08J5/18 CFC
B32B27/38
H01L23/12 501P
H01L23/14 R
H01L23/30 R
H05K1/03 610L
(21)【出願番号】P 2020141247
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池平 秀
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-063392(JP,A)
【文献】特開2018-002886(JP,A)
【文献】特開2018-070668(JP,A)
【文献】特開2017-043767(JP,A)
【文献】特開2020-083898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00-63/10
C08G 59/00-59/72
C08L 9/00
C08L 83/04
C08L 33/08
C08L 23/22
C08L 71/00
C08L 23/00
C08K 3/013
C08K 5/3415
B32B 27/38
C08J 5/18
H05K 1/03
H01L 23/29
H01L 23/12
H01L 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂
、
(B)応力緩和材
(C)無機充填材、及び
(E)マレイミド化合物を含み、
樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、(C)成分の含有量が50質量%以上であり、
下記<Stud pull試験条件>にて5回試験した際、下記<剥離モードの判定基準>のうち剥離モードI又は剥離モードIIIを示し、かつ、剥離時の荷重値が180kgf/cm
2以上である、樹脂組成物。
<Stud pull試験(鋲状冶具による引張試験)条件>
粗化処理した銅張積層板に該樹脂組成物の層を設け、温度T
1(℃)で90分間加熱して樹脂組成物を硬化させ評価基板を得る。該評価基板の樹脂組成物の硬化物層上に、スタッドピン(鋲状冶具;接着面の直径2.7mm)をエポキシ接着剤で固定し150℃1時間加熱して接着する。Stud pull試験機にて2kgf/秒の速度でスタッドピンを評価基板の主面に鉛直方向に引っ張り、硬化物層が剥離した時点の荷重値(kgf/cm
2)と剥離モードを観察する。なお、温度T
1(℃)とは、示差走査熱量計を用いて昇温速度5℃/分の条件下で30℃から350℃まで昇温した際に該樹脂組成物が呈する発熱ピークの温度をT(℃)としたとき(T+10)(℃)以上の温度を意味する。
<剥離モードの判定基準>
剥離モードI:銅張積層板-硬化物層の界面で剥離(層間剥離)したのが3回以上
剥離モードII:硬化物層が凝集破壊(層内剥離)したのが3回以上
剥離モードIII:硬化物層-スタッドピンの界面で剥離(層間剥離)したのが3回以上
【請求項2】
(B)成分に対する(E)成分の質量比((E)成分/(B)成分)が0.15~5である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、(B)成分の含有量が、
3~20質量
%である、請求項1
又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物中の樹脂成分の合計を100質量%としたとき、(B)成分の含有量が15~50質量%である、請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分の数平均分子量(Mn)が1,000以上である、請求項1
~4の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分が、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の樹脂、及び、25℃で液状である樹脂から選択される1種以上である、請求項1~
5の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(B)成分が、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂である、請求項1~
6の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(E)成分が、(E1)マレイミドの窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、を含む、請求項1~7の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(E1)成分が、下記式(E1-1)で表される化合物を含む、請求項8に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(E1-1)中、
A
1
は、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上の脂肪族基を表し、
L
1
は、単結合又は2価の連結基を表し、
nB1は0~20の整数を表す。A
1
が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、L
1
が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【請求項10】
(E)成分が、(E2)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物、を含む、請求項1~9の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
(E2)成分が、式(E2-2)で表される構造を含む、請求項10に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(E2-2)中、
Ar
a1
は、置換基を有していてもよい2価の芳香族環基を表し、
R
a1
及びR
a2
は、それぞれ独立に、置換基を表し、
R
a3
は、2価の脂肪族炭化水素基を表し、
n
a1
は、正の整数を表し、
n
a2
は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し、
n
a3
は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。R
a1
が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、R
a2
が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、複数あるR
a3
は互いに同一でも相異なってもよい。)
【請求項12】
さらに(D)硬化剤を含む、請求項1~
11の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(A)成分と(D)成分の合計に対する(B)成分の質量比((B)成分/[(A)成分+(D)成分])が0.2~1.5である、請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
さらに(F)硬化促進剤を含む、請求項1~13の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
プリント配線板の絶縁層用である、請求項1~
14の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
封止用である、請求項1~
14の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
支持体と、該支持体上に設けられた請求項1~
16の何れか1項に記載の樹脂組成物の層とを含む、樹脂シート。
【請求項18】
請求項1~
15の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項19】
請求項1~
14、
16の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる封止層を含む、半導体チップパッケージ。
【請求項20】
ファンアウト(Fan-Out)型パッケージである、請求項
19に記載の半導体チップパッケージ。
【請求項21】
請求項1~
16の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる層を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を用いて得られる、樹脂シート、プリント配線板、半導体チップパッケージ及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット型デバイスといった小型の高機能電子機器の需要が増大しており、それに伴い、これら小型の電子機器に用いられるプリント配線板や半導体パッケージ用の絶縁材料も更なる高機能化が求められている。このような絶縁材料として、例えば、特許文献1に開示される樹脂組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器の小型化に伴い、それに用いられるプリント配線板や半導体パッケージの薄型化が進められている。プリント配線板や半導体パッケージの薄型化が進むにつれて、熱履歴等に起因した反りが発生する場合がある。反りを抑制すべく、応力緩和材を絶縁材料に配合することが考えられるが、斯かる場合、絶縁材料の機械強度や導体との密着強度などの物性が経時的に低下し長期信頼性が損なわれることを見出した。電子機器の高機能化・高性能化に伴い、絶縁材料は高温にさらされるようになっており、長期信頼性の悪化はますます顕著となる傾向にある。
【0005】
本発明の課題は、反りを抑制し得ると共に、良好な長期信頼性を呈する絶縁材料をもたらす樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
応力緩和材を配合した絶縁材料の経時的な物性の低下は、絶縁材料中に存在する応力緩和材が空気中の酸素で酸化され、その分子鎖が切断されてしまうことに起因すると推察される。特に導体(銅など)との界面近傍では導体の触媒作用により酸化反応が促進され、これが、密着強度が低下する主な原因と考えられる。高温環境下では、応力緩和材の酸化劣化はより顕著に進行することとなる。
【0007】
絶縁材料の長期信頼性の良否を、初期の特性評価により判断することは困難である。例えば、絶縁材料の機械強度や導体との密着強度は、一般的な引張試験やピール試験により評価することができるものの、これらの評価における初期特性の値と長期信頼性の良否とは対応せず、また、初期特性の値から長期信頼性の良否を予測することも困難である。
【0008】
絶縁材料を構成する樹脂組成物の組成の観点からのアプローチでは、長期信頼性に与える各成分の影響の有無やその度合いが異なり、また、成分の組み合わせによって長期信頼性に与える影響の度合いが増大したり減衰したりすることから、配合成分の種類や含有量によって、良好な長期信頼性を呈する絶縁材料をもたらす対象(樹脂組成物)を特定することは困難である。
【0009】
本発明者らは、反りを抑制すべく応力緩和材を配合した絶縁材料について良好な長期信頼性を実現すべく鋭意検討した結果、Stud pull試験(鋲状冶具による引張試験)において特定の剥離モードを示すと共に剥離時の荷重値が所定値以上である樹脂組成物であれば、応力緩和材を配合したことによる反り抑制の効果はそのままに、長期信頼性も良好な絶縁材料を実現し得ることを見出した。Stud pull試験では、基材(銅)上に設けた樹脂組成物の硬化物(絶縁材料)にスタッドピン(鋲状冶具)を固定し、該スタッドピンを基材に対し鉛直方向に引っ張り絶縁材料の剥離状態や剥離時の荷重値を測定する。Stud pull試験では、一般的な引張試験やピール試験とは異なり、応力緩和成分と他成分とのミクロな密着性や導体との密着性を複合的に評価することができ、これにより、初期特性(Stud pull試験特性)から長期信頼性の精確な評価が可能となったものと推察される。応力緩和成分と他成分とのミクロな密着性(共有結合、水素結合、分子間力など)が強いほど、空気中の酸素による酸化を抑制できるものと考えられる。
【0010】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、及び
(B)応力緩和材
を含み、下記<Stud pull試験条件>にて5回試験した際、下記<剥離モードの判定基準>のうち剥離モードI又は剥離モードIIIを示し、かつ、剥離時の荷重値が180kgf/cm2以上である、樹脂組成物。
<Stud pull試験(鋲状冶具による引張試験)条件>
粗化処理した銅張積層板に該樹脂組成物の層を設け、温度T1(℃)で90分間加熱して樹脂組成物を硬化させ評価基板を得る。該評価基板の樹脂組成物の硬化物層上に、スタッドピン(鋲状冶具;接着面の直径2.7mm)をエポキシ接着剤で固定し150℃1時間加熱して接着する。Stud pull試験機にて2kgf/秒の速度でスタッドピンを評価基板の主面に鉛直方向に引っ張り、硬化物層が剥離した時点の荷重値(kgf/cm2)と剥離モードを観察する。なお、温度T1(℃)とは、示差走査熱量計を用いて昇温速度5℃/分の条件下で30℃から350℃まで昇温した際に該樹脂組成物が呈する発熱ピークの温度をT(℃)としたとき(T+10)(℃)以上の温度を意味する。
<剥離モードの判定基準>
剥離モードI:銅張積層板-硬化物層の界面で剥離(層間剥離)したのが3回以上
剥離モードII:硬化物層が凝集破壊(層内剥離)したのが3回以上
剥離モードIII:硬化物層-スタッドピンの界面で剥離(層間剥離)したのが3回以上
[2] 樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、(B)成分の含有量が、1質量%以上である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (B)成分の数平均分子量(Mn)が1,000以上である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (B)成分が、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の樹脂、及び、25℃で液状である樹脂から選択される1種以上である、[1]~[3]の何れかに記載の樹脂組成物。
[5] (B)成分が、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂である、[1]~[4]の何れかに記載の樹脂組成物。
[6] さらに(C)無機充填材を含む、[1]~[5]の何れかに記載の樹脂組成物。
[7] さらに(D)硬化剤を含む、[1]~[6]の何れかに記載の樹脂組成物。
[8] さらに(E)マレイミド化合物を含む、[1]~[7]の何れかに記載の樹脂組成物。
[9] 樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、(C)成分の含有量が40質量%以上である、[6]~[8]の何れかに記載の樹脂組成物。
[10] プリント配線板の絶縁層用である、[1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物。
[11] 封止用である、[1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物。
[12] 支持体と、該支持体上に設けられた[1]~[11]の何れかに記載の樹脂組成物の層とを含む、樹脂シート。
[13] [1]~[10]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む、プリント配線板。
[14] [1]~[9]、[11]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる封止層を含む、半導体チップパッケージ。
[15] ファンアウト(Fan-Out)型パッケージである、[14]に記載の半導体チップパッケージ。
[16] [1]~[11]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる層を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反りを抑制し得ると共に、良好な長期信頼性を呈する絶縁材料をもたらす樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、Stud pull試験を説明するための概略図である。
【
図2】
図2は、Stud pull試験における剥離モードを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0014】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、
(A)エポキシ樹脂、及び
(B)応力緩和材
を含み、下記<Stud pull試験条件>にて5回試験した際、下記<剥離モードの判定基準>のうち剥離モードI又は剥離モードIIIを示し、かつ、剥離時の荷重値が180kgf/cm2以上であることを特徴とする。
<Stud pull試験条件>
粗化処理した銅張積層板に該樹脂組成物の層を設け、温度T1(℃)で90分間加熱して樹脂組成物を硬化させ評価基板を得る。該評価基板の樹脂組成物の硬化物層上に、スタッドピン(接着面の直径2.7mm)をエポキシ接着剤で固定し150℃1時間加熱して接着する。Stud pull試験機にて2kgf/秒の速度でスタッドピンを評価基板の主面に鉛直方向に引っ張り、硬化物層が剥離した時点の荷重値(kgf/cm2)と剥離モードを観察する。なお、温度T1(℃)とは、示差走査熱量計を用いて昇温速度5℃/分の条件下で30℃から350℃まで昇温した際に該樹脂組成物が呈する発熱ピークの温度をT(℃)としたとき(T+10)(℃)以上の温度を意味する。
<剥離モードの判定基準>
剥離モードI:銅張積層板-硬化物層の界面で剥離(層間剥離)したのが3回以上
剥離モードII:硬化物層が凝集破壊(層内剥離)したのが3回以上
剥離モードIII:硬化物層-スタッドピンの界面で剥離(層間剥離)したのが3回以上
【0015】
Stud pull試験は、鋲状冶具(スタッドピン)を用いた引張試験であり、薄膜の密着強度の測定方法として知られている。基材に接合して薄膜を設けた後、薄膜の露出面にスタッドピンを固定する。スタッドピンは、一定値以上の接着力(例えば700kgf/cm2以上)を有する接着剤にて、薄膜の露出面に固定する。そして、基材を固定した上で、スタッドピンに垂直引張荷重を加えて、破断・剥離時の荷重を測定することにより、基材に対する薄膜の密着強度の情報が得られる。基材の種類や、スタッドピンの寸法(接着面の面積・直径)、スタッドピンに加える垂直引張荷重の速度等を変更することにより、測定対象である薄膜について、基材に対する密着強度をはじめとする特性を複合的に評価することが可能となる。
【0016】
本発明におけるStud pull試験の条件について、
図1を参照して説明する。
【0017】
-評価基板の準備-
まず、基材1として、粗化処理した銅張積層板を用意する。銅張積層板の銅箔や基板の各厚さは、Stud pull試験の際に基板自体の破壊が生じることなく後述の剥離モードI、II、IIIの何れかを呈する限りにおいて特に限定されず、片面銅張積層板を用いてもよく、両面銅張積層板を用いてもよい。片面銅張積層板を用いる場合、樹脂組成物の層は銅箔面に設ける。樹脂組成物との接合に先立ち、銅張積層板の銅箔を粗化処理に付す。粗化処理の条件は、銅張積層板の銅箔の下地処理(粗化処理)として通常使用される条件を採用してよい。本発明において、Stud pull試験の剥離モードや剥離時の荷重は、基材1として、両面銅張積層板(パナソニック社製「R―1766」、銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm)の両面を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)を用いて、銅エッチング量2μmとなるようにエッチングしたものを用いて測定した。
【0018】
次いで、粗化処理した銅張積層板(すなわち、基材1)に、樹脂組成物の層を設ける。詳細には、銅張積層板の銅箔の粗化処理面に樹脂組成物の層を設ける。樹脂組成物の層は、例えば、後述の樹脂シートを用いて、樹脂組成物層が銅張積層板の銅箔の粗化処理面と接合するように、銅張積層板に積層して設けてよい。積層は、ラミネート処理により実施してよく、ラミネート処理の条件は、プリント配線板の製造方法に関連して後述するラミネート処理条件を採用してよい。本発明において、Stud pull試験の剥離モードや剥離時の荷重は、樹脂組成物の層を含む樹脂シートを用いて、下記条件により、ラミネート処理及び平滑化処理を実施して準備した評価基板について測定した。
【0019】
ラミネート処理:30秒間減圧して気圧を3hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着する。
平滑化処理:ラミネート処理の後、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスする。
【0020】
樹脂組成物の層を設けた後、温度T1(℃)で90分間加熱して樹脂組成物を硬化させる。こうして、粗化処理した銅張積層板(すなわち、基材1)に樹脂組成物の硬化物層2が設けられた評価基板が得られる。ここで、温度T1(℃)とは、示差走査熱量計を用いて昇温速度5℃/分の条件下で30℃から350℃まで昇温した際に樹脂組成物が呈する発熱ピークの温度をT(℃)としたとき(T+10)(℃)以上の温度を意味する。発熱ピークが複数存在する場合、最も高温域にある発熱ピークの温度をT(℃)として、温度T1(℃)を決定する。温度T1は、(T+10)(℃)以上である限り特に限定されないが、上限は、(T+100)(℃)以下(但し、360℃以下)に設定することが好適である。
【0021】
樹脂組成物の硬化物層2の厚さは特に限定されない。Stud pull試験を用いる本発明においては、樹脂組成物の硬化物層2の厚さによらず、剥離モードや剥離時の荷重値に基づき、長期信頼性の良否を判断することが可能である。樹脂組成物の硬化物層2の厚さは、例えば、5μm以上、10μm以上などとし得、また、200μm以下、150μm以下などとし得る。
【0022】
-Stud pull試験-
得られた評価基板の樹脂組成物の硬化物層2上に、スタッドピン11をエポキシ接着剤10で固定し150℃1時間加熱して接着する。本発明において、スタッドピン11としては、接着面の直径が2.7mmであるスタッドピンを用いる。これにより、剥離モードや剥離時の荷重値に基づき、長期信頼性の良否を判断することが可能である。また、エポキシ接着剤10としては、一定値以上の接着力を有するエポキシ接着剤を用いることが必要であり、接着力が700kgf/cm2以上のエポキシ接着剤を用いることが好適である。本発明において、Stud pull試験の剥離モードや剥離時の荷重は、Stud pull試験機の付属品である、接着力が700kgf/cm2以上のエポキシ接着剤を用いて測定した。
【0023】
スタッドピンの固定後、Stud pull試験機にてスタッドピンを評価基板の主面に鉛直方向に引っ張り、硬化物層が剥離した時点の荷重値(kgf/cm2)と剥離モードを観察する。引っ張り荷重の速度は、2kgf/秒とする。これにより、剥離モードや剥離時の荷重値に基づき、長期信頼性の良否を判断することが可能である。
【0024】
本発明においては、上記のStud pull試験条件にて5回試験した際、<剥離モードの判定基準>のうち剥離モードI又は剥離モードIIIを示し、かつ、剥離時の荷重値が180kgf/cm2以上である樹脂組成物が、応力緩和材を配合したことによる反り抑制の効果はそのままに、長期信頼性も良好な絶縁材料を実現し得ることを見出したものである。
【0025】
剥離モードについて、
図2を参照して説明する。「剥離モードI」は、上記のStud pull試験条件にて5回試験した際、銅張積層板-硬化物層の界面で剥離(層間剥離)したのが3回以上である場合である(
図2の左)。「剥離モードII」は、硬化物層が凝集破壊(層内剥離)したのが3回以上である場合であり(
図2の真ん中)、「剥離モードIII」は、硬化物層-スタッドピンの界面で剥離(層間剥離)したのが3回以上である場合である(
図2の右)。
【0026】
銅張積層板-硬化物層の界面で剥離(層間剥離)したとは、銅張積層板-硬化物層の界面で剥離した場合のほか、銅張積層板の銅箔表面に凹凸が存在する場合(ひいては銅張積層板-硬化物層の界面が直線ではない場合)にあっては、その凹凸の中心線(中心線から下の谷の部分の面積の和をS1、中心線から上の山の部分の面積の和をS2としたとき、S1=S2になるような近似直線)を「銅張積層板の表面」の基準位置とし、この中心線より硬化物層側(
図2において上方向)に4μm離間した平行線よりも離れた位置に硬化物層由来成分が一様に残留していない場合も、銅張積層板-硬化物層の界面で剥離(層間剥離)したと判定する。この点、破断・剥離後の評価基板をスタッドピン側から観察し、銅張積層板の銅箔が観察されれば銅張積層板-硬化物層の界面で剥離したと判定してよい。
【0027】
また、硬化物層-スタッドピンの界面で剥離(層間剥離)したとは、硬化物層-エポキシ接着剤の界面で剥離した場合のほか、エポキシ接着剤が凝集破壊(層内剥離)した場合も含む。硬化物層-エポキシ接着剤の界面での剥離(層間剥離)については、銅張積層板-硬化物層の界面での剥離と同様に判定してよい。
【0028】
例えば、5回試験した際、銅張積層板-硬化物層の界面で剥離したのが4回で、硬化物層が凝集破壊したのが1回である場合、「剥離モードI」と判定する。5回試験した際、銅張積層板-硬化物層の界面で剥離したのが2回で、硬化物層が凝集破壊したのが3回である場合、「剥離モードII」と判定する。5回試験した際、銅張積層板-硬化物層の界面で剥離したのが2回で、硬化物層-スタッドピンの界面で剥離したのが3回である場合、「剥離モードIII」と判定する。なお、銅張積層板-硬化物層の界面で剥離したのが2回、硬化物層が凝集破壊したのが1回、硬化物層-スタッドピンの界面で剥離したのが2回というように、剥離モードの判定ができない場合、硬化物層-スタッドピンの界面で剥離することがなくなるように接着力がより高いエポキシ接着剤に代えて改めて試験する。そして、銅張積層板-硬化物層の界面で剥離した回数と硬化物層が凝集破壊した回数とに基づき剥離モードを判定する。
【0029】
剥離時の荷重値は、5回の試験の平均値が180kgf/cm2以上であればよく、長期信頼性により一層優れる絶縁材料を実現する観点から、5回の試験の平均値は、好ましくは190kgf/cm2以上、より好ましくは200kgf/cm2以上である。
【0030】
以下、本発明の樹脂組成物の組成について説明する。ここで、樹脂組成物を構成する各成分の長期信頼性に与える影響の有無やその度合いは異なり、また、成分の組み合わせによって長期信頼性に与える影響の度合いが増大したり減衰したりすることは先述のとおりである。以下において、各成分の種類や含有量につき好適例を示す場合があるが、成分の組み合わせによって好適な種類や好適な含有量範囲は変化する。上記<Stud pull試験条件>にて5回試験した際、剥離モードI又は剥離モードIIIを示し、かつ、剥離時の荷重値が180kgf/cm2以上である限りにおいて、樹脂組成物を構成する成分の種類(その組み合わせ)や含有量は、以下に示す特定の種類や範囲に限定されない。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、及び、(B)応力緩和材を含む。
【0032】
-(A)エポキシ樹脂-
本発明の樹脂組成物は、(A)成分として、エポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール構造を有するエポキシ樹脂を指し、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂が挙げられる。ビフェニル型エポキシ樹脂は、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂を指し、ここでビフェニル構造はアルキル基、アルコキシ基、アリール基等の置換基を有していてもよい。したがって、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂もビフェニル型エポキシ樹脂に含まれる。(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(A)成分としては、芳香族系のエポキシ樹脂が好ましい。ここで、芳香族系のエポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂を意味する。芳香環には、ベンゼン環等の単環構造だけでなく、ナフタレン環等の多環芳香族構造及び芳香族複素環構造も含まれる。
【0034】
(A)成分は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。(A)成分の不揮発成分を100質量%とした場合、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0035】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とがある。
【0036】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0037】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP-4032」、「HP-4032D」、「HP-4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0039】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0040】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0041】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP-4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、(A)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでもよい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.01~1:20、より好ましくは1:0.05~1:10、特に好ましくは1:0.1~1:1である。
【0043】
(A)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0044】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。エポキシ樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0045】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上又は2質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下又は20質量%以下である。
【0046】
-(B)応力緩和材-
本発明の樹脂組成物は、(B)成分として、応力緩和材を含む。(B)成分を含むことにより、反りを抑制可能な絶縁材料を実現することができる。
【0047】
(B)成分としては、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂であることが好ましく、ポリブタジエン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種または2種以上の構造を有する樹脂であることがより好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートの双方を包含する用語である。これらの構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0048】
(B)成分は、反りを抑制し得る絶縁材料を実現する観点から高分子量であることが好ましい。(B)成分の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上、さらに好ましくは2,000以上、2,500以上、3,000以上、4,000以上又は5,000以上である。Mnの上限は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは900,000以下、800,000以下又は700,000以下である。数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0049】
(B)成分は、反りを抑制し得る絶縁材料を実現する観点から、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の樹脂、及び25℃で液状である樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。ここで、Tgが複数観測される樹脂について、最も低温のTgが25℃以下であれば「Tgが25℃以下の樹脂」に該当する。
【0050】
Tgが25℃以下である樹脂について、Tgは、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下である。Tgの下限は特に限定されないが、通常-50℃以上とし得る。また、25℃で液状である樹脂について、好ましくは20℃以下で液状であり、より好ましくは15℃以下で液状である。
【0051】
(B)成分は、(A)成分等と反応して凝集力(層内密着強度)の高い絶縁材料を実現する観点から、(A)成分等と反応し得る官能基を有することが好ましい。なお、(A)成分等と反応し得る官能基としては、加熱によって現れる官能基も包含する。
【0052】
好適な一実施形態において、(A)成分等と反応し得る官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基である。中でも、当該官能基としては、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基が好ましく、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基がより好ましい。ただし、官能基としてエポキシ基を含む場合、数平均分子量(Mn)は、5,000以上であることが好ましい。
【0053】
好適な一実施形態において、(B)成分は、ポリブタジエン構造を含有する樹脂(以下、「ポリブタジエン樹脂」ともいう。)を含む。なお、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。
【0054】
ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(エポキシ化ポリブタジエン)、「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ダイセル社製の「PB3600」、「PB4700」(ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)、「エポフレンドA1005」、「エポフレンドA1010」、「エポフレンドA1020」(スチレンとブタジエンとスチレンブロック共重合体のエポキシ化物)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)、「R-45EPT」(ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等が挙げられる。ポリブタジエン樹脂としてはまた、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリマー(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリマー)、フェノール性水酸基含有ブタジエン等が挙げられる。該ポリマーのブタジエン構造の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%~95質量%である。該ポリマーの詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0055】
好適な一実施形態において、(B)成分は、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂(以下、「ポリ(メタ)アクリル樹脂」ともいう。)を含む。ポリ(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン「SG-70L」、「SG-708-6」、「WS-023」、「SG-700AS」、「SG-280TEA」(カルボキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂、酸価5~34mgKOH/g、重量平均分子量40万~90万、Tg-30~5℃)、「SG-80H」、「SG-80H-3」、「SG-P3」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂、エポキシ当量4761~14285g/eq、重量平均分子量35万~85万、Tg11~12℃)、「SG-600TEA」、「SG-790」(ヒドロキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂、水酸基価20~40mgKOH/g、重量平均分子量50万~120万、Tg-37~-32℃)、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」(カルボキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂)、「W-197C」(水酸基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂)、「KG-25」、「KG-3000」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂)等が挙げられる。
【0056】
好適な一実施形態において、(B)成分は、ポリカーボネート構造を含有する樹脂(以下、「ポリカーボネート樹脂」ともいう。)を含む。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。またヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミドを使用することもできる。該ポリイミド樹脂のカーボネート構造の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%~95質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0057】
好適な一実施形態において、(B)成分は、ポリシロキサン構造を含有する樹脂(以下、「ポリシロキサン樹脂」ともいう。)を含む。ポリシロキサン樹脂の具体例としては、例えば、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
【0058】
好適な一実施形態において、(B)成分は、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂(以下、それぞれ「ポリアルキレン樹脂」、「ポリアルキレンオキシ樹脂」ともいう。)を含む。ポリアルキレン樹脂、ポリアルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」等が挙げられる。
【0059】
好適な一実施形態において、(B)成分は、ポリイソプレン構造を含有する樹脂(以下、「ポリイソプレン樹脂」ともいう。)を含む。ポリイソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
【0060】
好適な一実施形態において、(B)成分は、ポリイソブチレン構造を含有する樹脂(以下、「ポリイソブチレン樹脂」ともいう。)を含む。ポリイソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0061】
他の好適な一実施形態において、(B)成分は、有機充填材を含む。有機充填材としては、ゴム成分を含む有機充填材を広く用いることができる。有機充填材に含まれるゴム成分としては、例えば、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系エラストマー;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソブチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、イソプレン-イソブチレン共重合体、イソブチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等のアクリル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。さらにゴム成分には、ポリオルガノシロキサンゴム等のシリコーン系ゴムを混合してもよい。ゴム粒子に含まれるゴム成分は、Tgが例えば0℃以下であり、-10℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましい。
【0062】
一実施形態において、有機充填材は、上記で挙げたゴム成分を含むコア粒子と、コア粒子に含まれるゴム成分と共重合可能なモノマー成分をグラフト共重合させたシェル部からなるコア-シェル型ゴム粒子である。ここでコア-シェル型とは、必ずしもコア粒子とシェル部が明確に区別できるもののみを指しているわけではなく、コア粒子とシェル部の境界が不明瞭なものも含み、コア粒子はシェル部で完全に被覆されていなくてもよい。
【0063】
ゴム成分を含む有機充填材の具体例としては、例えば、チェイルインダストリーズ社製の「CHT」;UMGABS社製の「B602」;呉羽化学工業社製の「パラロイドEXL-2602」、「パラロイドEXL-2603」、「パラロイドEXL-2655」、「パラロイドEXL-2311」、「パラロイド-EXL2313」、「パラロイドEXL-2315」、「パラロイドKM-330」、「パラロイドKM-336P」、「パラロイドKCZ-201」、三菱レイヨン社製の「メタブレンC-223A」、「メタブレンE-901」、「メタブレンS-2001」、「メタブレンW-450A」「メタブレンSRK-200」、カネカ社製の「カネエースM-511」、「カネエースM-600」、「カネエースM-400」、「カネエースM-580」、「カネエースMR-01」、アイカ工業社製の「スタフィロイドAC3355」、「スタフィロイドAC3816」、「スタフィロイドAC3832」、「スタフィロイドAC4030」、「スタフィロイドAC3364」等が挙げられる。これらは、コア-シェル型ゴム粒子である。
【0064】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、反りを抑制し得る絶縁材料を実現する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらにより好ましくは4質量%以上又は5質量%以上である。該含有量の上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、20質量%以下又は15質量%以下である。
【0065】
また、樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらにより好ましくは5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上又は30質量%以上である。該含有量の上限は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、55質量%以下又は50質量%以下である。本発明において、「樹脂成分」とは、樹脂組成物を構成する成分のうち、後述する(C)無機充填材を除いた成分をいう。
【0066】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量はまた、(A)成分と後述する(D)硬化剤の合計に対する(B)成分の質量比、すなわち、(B)成分/[(A)成分+(D)成分]として、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.8以上又は1以上である。該質量比の上限は、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、2以下、1.8以下、1.6以下又は1.5以下である。
【0067】
先述のとおり、反りを抑制すべく、応力緩和材を絶縁材料に配合すると、得られる絶縁材料の機械強度や導体との密着強度などの信頼性に直結する物性が経時的に低下し、長期信頼性が損なわれることを本発明者らは見出した。この点、上記<Stud pull試験条件>にて5回試験した際、剥離モードI又は剥離モードIIIを示し、かつ、剥離時の荷重値が180kgf/cm2以上である本発明の樹脂組成物によれば、応力緩和材を上記のように一定量以上含む場合であっても、物性の経時的な低下(悪化)を抑制することができる。これにより、本発明の樹脂組成物は、応力緩和材を配合したことによる反り抑制の効果はそのままに、長期信頼性も良好な絶縁材料を実現し得る。
【0068】
本発明の樹脂組成物は、さらに(C)無機充填材、(D)硬化剤、(E)マレイミド化合物、(F)硬化促進剤からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0069】
-(C)無機充填材-
本発明の樹脂組成物は、(C)成分として、無機充填材を含んでもよい。(C)成分を含むことにより、熱特性の良好な絶縁材料を実現することができる。
【0070】
(C)成分の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(C)成分の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」などが挙げられる。
【0072】
(C)成分の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、2μm以下、1μm以下又は0.7μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上、0.1μm以上又は0.2μm以上である。(C)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0073】
(C)成分の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、3m2/g以上又は5m2/g以上である。該比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは80m2/g以下、さらに好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。(C)成分の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0074】
(C)成分は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、(C)成分の耐湿性及び分散性を高めることができる。表面処理剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアヌレート系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、酸無水物系シランカップリング剤等のシランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の非シランカップリング-アルコキシシラン化合物;シラザン化合物等が挙げられる。表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0076】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、好ましくは0.2~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。
【0077】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。(C)成分の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0078】
本発明の樹脂組成物が(C)成分を含む場合、樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、低い線熱膨張係数など熱特性の良好な絶縁材料を実現する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上又は65質量%以上である。(C)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下又は75質量%以下である。
【0079】
-(D)硬化剤-
本発明の樹脂組成物は、(D)成分として、硬化剤を含んでもよい。(D)成分は、通常、(A)成分と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。
【0080】
(D)成分としては、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、アミン系硬化剤などが挙げられ、中でも、上記の剥離モードや剥離時の荷重値を好適な態様・範囲に調整し易い観点から、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤を含むことが好ましい。(D)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0082】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0083】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0084】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0085】
活性エステル化合物の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」、(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」(DIC社製)、;リン含有活性エステル化合物として、「EXB9401」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル化合物として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0086】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤、含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。
【0087】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0088】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「MH-700」等が挙げられる。
【0089】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0090】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216g/eq.)、V-05(カルボジイミド基当量:262g/eq.)、V-07(カルボジイミド基当量:200g/eq.);V-09(カルボジイミド基当量:200g/eq.);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302g/eq.)が挙げられる。
【0091】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0092】
(A)成分と(D)成分との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:10の範囲が好ましく、1:0.05~1:5がより好ましく、1:0.1~1:3がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。
【0093】
-(E)マレイミド化合物-
本発明の樹脂組成物は、(E)成分として、マレイミド化合物を含んでもよい。(E)成分を含むことにより、上記の剥離モードや剥離時の荷重値を好適な態様・範囲により調整し易いことを確認している。
【0094】
(E)成分としては、
(E1)マレイミドの窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、
(E2)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物、及び
(E3)マレイミドの窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物、
から選択される1種以上であることが好ましい。
【0095】
ここで、用語「直接」とは、(E1)成分にあっては、マレイミドの窒素原子と炭素原子数5以上の脂肪族基との間に他の基がないことをいい、(E3)成分にあっては、マレイミドの窒素原子と芳香族環との間に他の基がないことをいう。
【0096】
(E)成分は、(E1)成分であるか、(E2)成分であるか、(E3)成分であるかの別を問わず、1分子中に2つ以上のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を有することが好ましい。
【0097】
以下、(E)成分の好適な態様である(E1)成分、(E2)成分、(E3)成分について説明するが、以下において、用語「置換基」は、特に説明のない限り、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールチオ基、1価の複素環基、アルキリデン基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基及びオキソ基を意味する。置換基として用いられるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。置換基として用いられるアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、さらに好ましくは1~12、さらにより好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、等が挙げられる。置換基として用いられるシクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。該シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。置換基として用いられるアルコキシ基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~6である。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。置換基として用いられるシクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。該シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。置換基として用いられるアルキルチオ基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、さらに好ましくは1~12、さらにより好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。置換基として用いられるアリール基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を1個除いた基である。置換基として用いられるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。置換基として用いられるアリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。置換基として用いられるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、及び2-ナフチルオキシ基が挙げられる。置換基として用いられるアリールアルキル基の炭素原子数は、好ましくは7~25、より好ましくは7~19、さらに好ましくは7~15、さらにより好ましくは7~11である。該アリールアルキル基としては、例えば、フェニル-C1~C12アルキル基、ナフチル-C1~C12アルキル基、及びアントラセニル-C1~C12アルキル基が挙げられる。置換基として用いられるアリールアルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは7~25、より好ましくは7~19、さらに好ましくは7~15、さらにより好ましくは7~11である。該アリールアルコキシ基としては、例えば、フェニル-C1~C12アルコキシ基、及びナフチル-C1~C12アルコキシ基が挙げられる。置換基として用いられるアリールチオ基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。置換基として用いられる1価の複素環基とは、複素環式化合物の複素環から水素原子1個を除いた基をいう。該1価の複素環基の炭素原子数は、好ましくは3~21、より好ましくは3~15、さらに好ましくは3~9である。該1価の複素環基には、1価の芳香族複素環基(ヘテロアリール基)も含まれる。該1価の複素環としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フラニル基、フリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、及びイソキノリル基が挙げられる。置換基として用いられるアルキリデン基とは、アルカンの同一の炭素原子から水素原子を2個除いた基をいう。該アルキリデン基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、さらに好ましくは1~12、さらにより好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。置換基として用いられるアシル基は、式:-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基)をいう。Rで表されるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。Rで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。該アシル基の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~13、さらに好ましくは2~7である。置換基として用いられるアシルオキシ基は、式:-O-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基)をいう。Rで表されるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。Rで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。該アシルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~13、さらに好ましくは2~7である。上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0098】
<(E1)成分>
(E1)成分は、マレイミドの窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物である。斯かるマレイミド化合物は、例えば、脂肪族アミン化合物(ダイマージアミン化合物など)と、マレイン酸無水物と、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物とを含む成分をイミド化反応させることにより得ることができる。
【0099】
一実施形態において、(E1)成分は、下記式(E1-1)で表される化合物を含む。
【0100】
【0101】
式(E1-1)中、
A1は、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上の脂肪族基を表し、
L1は、単結合又は2価の連結基を表し、
nB1は0~20の整数を表す。A1が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、L1が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0102】
A1で表される脂肪族基の炭素原子数は、5以上であり、好ましくは10以上、15以上又は20以上である。該炭素原子数の上限は特に限定されないが、例えば、100以下、80以下、60以下又は50以下などとし得る。なお、該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
【0103】
一実施形態において、A1は、下記式(E1-2)で表される2価の基である。
【0104】
【0105】
式(E1-2)中、
A11は、単結合、アルキレン基又はアルケニレン基(好ましくはアルキレン基又はアルケニレン基)を表し、
環Z1は、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる基を有していてもよい非芳香族環(好ましくはアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基を有していてもよいシクロアルカン環又はシクロアルケン環)を表し、
nB11は、0~3の整数(好ましくは0又は1、より好ましくは1)を表し、
*は、結合部位を示す。A11や環Z1は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。A11が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、環Z1が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0106】
L1で表される2価の連結基としては、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる2個以上(例えば2~3000個、2~1000個、2~100個、2~50個)の骨格原子からなる2価の有機基(好ましくは2価の環(例えば芳香族環又は非芳香族環)含有有機基)が挙げられ、中でも、下記式(E1-3)で表される2価の基が好ましい。
【0107】
【0108】
式(E1-3)中、
A12は、単結合、又は炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の基を表し、
RB1及びRB2は、それぞれ独立に、置換基を表し、
nB12は、0又は1を表し、
nB13及びnB14は、それぞれ独立に、0~3の整数(好ましくは0又は1)を表し、
*は、結合部位を示す。RB1が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、RB2が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0109】
なお、nB12が0であるとき、式(E1-3)で表される2価の基は、下記式(E1-4)で表される構造を有する2価の基を示す。式中、RB1、nB13及び*は、式(E1-3)にて説明したとおりである。
【0110】
【0111】
式(E1-3)中、nB12が1である実施形態において、A12で表される2価の基としては、下記式(E1-5)で表される2価の基が好ましい。
【0112】
【0113】
式(E1-5)中、
Y1は、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を表し、
環Z2は、置換基を有していてもよい非芳香族環、又は置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
nB15は、0~5の整数(好ましくは0~3)を表し、
*は、結合部位を示す。Y1や環Z2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。Y1が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、環Z2が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0114】
A
12で表される2価の基の具体例としては、特に限定されるものではないが、-CH
2-、-CH(CH
3)-、-CH(CH
2CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-C(CH
3)(CH
2CH
3)-、-C(CH
2CH
3)
2-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、及び-SO
2-に加えて、下記で表される2価の有機基を挙げることができる。
【化6】
【0115】
(E1)成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは150~50000、より好ましくは300~20000であり、より詳細には、式(E1-1)中のnB1が1以上の整数である態様では、好ましくは500~50000、より好ましくは1000~20000であり、nB1が0である態様では、好ましくは150~5000、より好ましくは300~1000である。(E1)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0116】
また、(E1)成分について、マレイミド基の官能基当量は、好ましくは50~20000g/eq.、より好ましくは100~20000g/eq.であり、より詳細には、式(E1-1)中のnB1が1以上の整数である態様では、好ましくは300g/eq.~20000g/eq.、より好ましくは500g/eq.~10000g/eq.であり、nB1が0である態様では、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.さらに好ましくは200g/eq.~600g/eq.、特に好ましくは300g/eq.~400g/eq.である。
【0117】
(B)成分を含む絶縁材料において、上記の剥離モードや剥離時の荷重値を好適な態様・範囲により調整し易い観点から、(E1)成分は、下記式(E1-6)で表される構造、下記式(E1-7)で表される構造、又は下記式(E1-8)で表される構造の何れかを有するマレイミド化合物を含むことが好ましい。
【0118】
【0119】
式(E1-6)中、A11及び環Z1は、先に説明したとおりであり、A11-環Z1-A11の1ブロック当たりの炭素原子数は好ましくは20~100(より好ましくは30~60又は30~50)であり、いわゆるダイマー酸骨格(C36骨格;ダイマージアミン由来のC36アルキレン骨格)であることが特に好ましい。nB16は1~10の整数を表す。
【0120】
【化8】
式(E1-7)中、A
11、Y
1、環Z
1、環Z
2及びnB15は、先に説明したとおりであり、A
11-環Z
1-A
11の1ブロック当たりの炭素原子数は好ましくは20~100(より好ましくは30~60又は30~50)であり、いわゆるダイマー酸骨格(C36骨格;ダイマージアミン由来のC36アルキレン骨格)であることが特に好ましい。また、nB15+1個のY1とnB15個の環Z2からなるブロックは、先に説明した2価の基A
12に対応するが、中でも、酸素原子を含む2価の基であることが好ましい。nB17は1~10の整数を表す。
【0121】
【0122】
式(E1-8)中、A11及び環Z1は、先に説明したとおりであり、A11-環Z1-A11の1ブロック当たりの炭素原子数は好ましくは20~100(より好ましくは30~60又は30~50)であり、いわゆるダイマー酸骨格(C36骨格;ダイマージアミン由来のC36アルキレン骨格)であることが特に好ましい。nB11は0~10の整数を表す。
【0123】
式(E1-6)で表される構造を有するマレイミド化合物の市販品としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社(デジグナーモレキュールズ社)製の「BMI-3000J」、「BMI-5000」等が挙げられる。式(E1-7)で表される構造を有するマレイミド化合物の市販品としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-1400」、「BMI-1500」、「BMI-1700」等が挙げられる。式(E1-8)で表される構造を有するマレイミド化合物の市販品としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-689」等が挙げられる。
【0124】
<(E2)成分>
(E2)成分は、トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物である。トリメチルインダン骨格とは、下記式(E2-1)に示す骨格を表す。
【0125】
【0126】
トリメチルインダン骨格中のベンゼン環は、置換基を有していてもよい。トリメチルインダン骨格中のベンゼン環が置換基を有する場合、該置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。トリメチルインダン骨格中のベンゼン環が有する置換基の数の上限は、通常、3以下である。置換基の数が2以上である場合、それらは、互いに同一でも相異なってもよい。中でも、トリメチルインダン骨格中のベンゼン環は、置換基を有していないことが好ましい。
【0127】
(E2)成分が1分子中に含むトリメチルインダン骨格の数は、1でもよく、2以上でもよい。上限は、例えば、10以下、8以下、7以下、又は6以下とし得る。
【0128】
(E2)成分は、上述したトリメチルインダン骨格に加えて、さらに芳香族環骨格を含むことが好ましい。芳香族環骨格としては、炭素環骨格及び複素環骨格の何れであってもよいが、炭素環骨格がより好ましい。該芳香族環骨格の環構成炭素の数は、好ましくは3~20、より好ましくは4~16、5~14又は6~10である。芳香族環骨格としては、例えば、ベンゼン環骨格、ナフタレン環骨格、アントラセン環骨格等が挙げられる。(E2)成分が1分子中に含む芳香族環骨格の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。(E2)成分が、トリメチルインダン骨格に加えて、2以上の芳香族環骨格を含む場合、それら芳香族環骨格は、互いに同一でも相異なってもよい。
【0129】
芳香族環骨格は、置換基を有していてもよい。芳香族環骨格が置換基を有する場合、該置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。芳香族環骨格が有する置換基の数の上限は、通常、4以下である。置換基の数が2以上である場合、それらは、互いに同一でも相異なってもよい。
【0130】
(E2)成分は、トリメチルインダン骨格に加えて、さらに2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。特に、(E2)成分が、トリメチルインダン骨格中のベンゼン環とは別に芳香族環骨格を含む場合、(E2)成分は2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。この場合、2価の脂肪族炭化水素基は、トリメチルインダン骨格中のベンゼン環と芳香族環骨格との間を連結することが好ましい。また、2価の脂肪族炭化水素基は、芳香族環骨格同士を連結することが好ましい。
【0131】
2価の脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。2価の脂肪族炭化水素基としては、2価の飽和炭化水素基及び2価の不飽和炭化水素基の何れであってもよいが、2価の飽和炭化水素基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖アルキレン基;エチリデン基(-CH(CH3)-)、プロピリデン基(-CH(CH2CH3)-)、イソプロピリデン基(-C(CH3)2-)、エチルメチルメチレン基(-C(CH3)(CH2CH3)-)、ジエチルメチレン基(-C(CH2CH3)2-)等の分岐鎖アルキレン基等が挙げられる。(E2)成分が、トリメチルインダン骨格に加えて、2以上の2価の脂肪族炭化水素基を含む場合、それら2価の脂肪族炭化水素基は、互いに同一でも相異なってもよい。
【0132】
(B)成分を含む絶縁材料において、上記の剥離モードや剥離時の荷重値を好適な態様・範囲により調整し易い観点から、(E2)成分は、下記式(E2-2)で表される構造を含むことが好ましい。(E2)成分の全体が式(E2-2)で表される構造を有していてもよく、(E2)成分の一部が式(E2-2)で表される構造を有していてもよい。
【0133】
【0134】
式(E2-2)中、
Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族環基を表し、
Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、置換基を表し、
Ra3は、2価の脂肪族炭化水素基を表し、
na1は、正の整数を表し、
na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し、
na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。Ra1が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、Ra2が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、複数あるRa3は互いに同一でも相異なってもよい。
【0135】
Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族環基を表す。2価の芳香族環基の炭素原子数は、好ましくは6以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、14以下又は10以下である。2価の芳香族環基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。2価の芳香族環基が有していてもよい置換基としては、先述の置換基が挙げられ、中でも、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、及びメルカプト基が好ましい。各置換基の水素原子は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい。2価の芳香族環基が置換基を有する場合、置換基の数は、好ましくは1~4である。2価の芳香族環基が有する置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、互いに同一でも相異なってもよい。中でも、Ara1は、置換基を有していない2価の芳香族環基であることが好ましい。
【0136】
Ra1は、置換基を表す。Ra1で表される置換基としては、先述の置換基が挙げられ、中でも、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基が好ましい。各置換基の水素原子は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0137】
中でも、Ra1は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選ばれる1種類以上の基であることがより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基がさらに好ましい。
【0138】
Ra2は、置換基を表す。Ra2で表される置換基としては、先述の置換基が挙げられ、中でも、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、及びメルカプト基が好ましい。各置換基の水素原子は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0139】
中でも、Ra2は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選択される1種類以上の基であることがより好ましい。
【0140】
Ra3は、2価の脂肪族炭化水素基を表す。好ましい2価の脂肪族炭化水素基の範囲は、上述したとおりである。
【0141】
na1は、正の整数を表す。na1は、好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
【0142】
na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。na2は、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。複数のna2は、相異なってもよいが、互いに同一であることが好ましい。na2が2以上の場合、複数のRa1は、互いに同一でも相異なってもよい。
【0143】
na3は、0~3の整数を表す。na3が複数ある場合、それらは相異なってもよいが、互いに同一であることが好ましい。na3は、好ましくは0である。
【0144】
(B)成分を含む絶縁材料において、上記の剥離モードや剥離時の荷重値を好適な態様・範囲により調整し易い観点から、(E2)成分は、下記式(E2-3)で表される構造を含むことがさらに好ましい。(E2)成分の全体が式(E2-3)で表される構造を有していてもよく、(E2)成分の一部が式(E2-3)で表される構造を有していてもよい。
【0145】
【0146】
式(E2-3)中、Ra1、Ra2、na1、na2及びna3は、式(E2-2)にて説明したとおりである。
【0147】
(E2)成分は、さらに、下記式(E2-4)で表される構造を含んでいてもよい。
【0148】
【0149】
式(E2-4)中、Ra1、Ra2、na2及びna3は、式(E2-2)にて説明したとおりである。またnc1は、繰り返し単位数であり、1~20の整数を表す。*は、結合手を表す。
【0150】
例えば、(E2)成分は、式(E2-2)において、na2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基結合位置に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、Ra1が結合していない場合に、式(E2-2)で表される構造に組み合わせて上記式(E2-4)で表される構造を含みうる。
【0151】
また、例えば、(E2)成分は、式(E2-3)において、na2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基結合位置に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、Ra1が結合していない場合に、式(E2-3)で表される構造に組み合わせて上記式(E2-4)で表される構造を含みうる。
【0152】
(E2)成分の製造方法は、特に制限はなく、例えば、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の方法によって製造してよい。この発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数に分布があるマレイミド化合物を得ることができる。この方法で得られるマレイミド化合物は、下記式(E2-5)で表される構造を含む。よって、(E)成分は、式(E2-5)で表される構造を含むマレイミド化合物を含んでいてもよい。
【0153】
【0154】
式(E2-5)中、R1、R2、n2及びn3は、それぞれ、式(E2-2)におけるRa1、Ra2、na2及びna3と同じであり、好適な種類や範囲もまた同じである。n1は、0.95~10.0の平均繰り返し単位数を表す。
【0155】
式(E2-5)において、n1は、平均繰り返し単位数を表し、その範囲は0.95~10.0である。発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、式(E2-5)で表される構造を含む一群のマレイミド化合物が得られる。式(E2-5)中の平均繰り返し単位数n1が1.00より小さくなりうることから分かるように、こうして得られる式(E2-5)で表される構造を含むマレイミド化合物には、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物が含まれうる。そこで、式(E2-5)で表される構造を含むマレイミド化合物から、精製により、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除いて(E2)成分を得て、その得られた(E2)成分のみを樹脂組成物が含んでもよいし、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除くことなく、式(E2-5)で表される構造を含むマレイミド化合物を樹脂組成物が含むことが好ましい。
【0156】
式(E2-5)において、平均繰り返し単位数n1は、好ましくは0.95以上、より好ましくは0.98以上、さらに好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.1以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.0以下、特に好ましくは6.0以下である。平均繰り返し単位数n1がこの範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0157】
中でも、(B)成分を含む絶縁材料において、上記の剥離モードや剥離時の荷重値を好適な態様・範囲により調整し易い観点から、(E2)成分の具体的な構造の例としては、以下が挙げられる。
【0158】
【0159】
式(E2-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、さらに、上記式(E2-4)で示す構造を含んでいてもよい。例えば、式(E2-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、式(E2-5)において、n2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基結合位置に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、R1が結合していない場合に、式(E2-5)で表される構造に組み合わせて式(E2-4)で表される構造を含みうる。
【0160】
式(E2-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出される分子量分布Mw/Mnが、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、式(E2-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の分子量分布Mw/Mnは、好ましくは1.0~4.0、より好ましくは1.1~3.8、さらに好ましくは1.2~3.6、特に好ましくは1.3~3.4である。
【0161】
(E2)成分について、マレイミド基の官能基当量は、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは100g/eq.以上、さらに好ましくは200g/eq.以上であり、好ましくは2000g/eq.以下、より好ましくは1000g/eq.以下、さらに好ましくは800g/eq.以下である。
【0162】
<(E3)成分>
(E3)成分は、マレイミドの窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物である。斯かるマレイミド化合物は、例えば、芳香族アミン化合物(芳香族ジアミン化合物など)と、マレイン酸無水物とを含む成分をイミド化反応させることにより得ることができる。
【0163】
一実施形態において、(E3)成分は、下記式(E3-1)で表される化合物を含む。
【0164】
【0165】
式(E3-1)中、
環Ar1は、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
L2は、単結合又は2価の連結基を表し、
nB2は、1~100の整数を表す。複数ある環Ar1は同一でも相異なってもよく、L2が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0166】
環Ar1で表される芳香族環としては、炭素環及び複素環の何れであってもよいが、炭素環がより好ましい。環Ar1で表される芳香族環の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは5~14又は6~10である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
【0167】
L2で表される2価の連結基としては、炭素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の基であれば特に限定されず、例えば、先述の式(E1-3)中のA12として記載した2価の基が挙げられる。
【0168】
中でも、(B)成分を含む絶縁材料において、上記の剥離モードや剥離時の荷重値を好適な態様・範囲により調整し易い観点から、環Ar1は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~10の芳香族炭素環(より好ましくは置換基を有していてもよいベンゼン環で)あることが好ましく、また、L2は(L2が複数ある場合、少なくとも1つのL2は)、ビフェニル骨格を有する2価の基であることが好ましい。したがって一実施形態において、(E3)成分はビフェニル骨格を有する。
【0169】
なお、(E3)成分において、マレイミドの窒素原子と芳香族環は直接結合している。マレイミドと芳香族環の結合位置は、芳香族環と結合しているL2を基準として、任意の位置であってよい。例えば、芳香族環がベンゼン環である場合、マレイミドと該ベンゼン環の結合位置は、該ベンゼン環と結合しているL2を基準として、オルト位、メタ位、及びパラ位のいずれであってもよいが、パラ位に結合していることが本発明の効果をより享受し得る観点から好ましい。
【0170】
好適な一実施形態において、(E3)成分は、下記式(E3-2)で表される化合物を含む。
【0171】
【0172】
式(E3-2)中、
RB3、RB4、RB5及びRB6は、それぞれ独立に、置換基を表し、
nB21は1~100の整数を表し、
nB22及びnB23は、それぞれ独立に、1~10の整数を表し、
nB24及びnB25は、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、
nB26及びnB27は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。RB3が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、これは、RB4、RB5及びRB6についても同様である。
【0173】
nB21は、好ましくは1~50、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~5である。
【0174】
nB22及びnB23は、それぞれ独立に、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1又は2である。
【0175】
nB24及びnB25は、それぞれ独立に、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1である。nB24、nB25が1以上である場合、RB3及びRB4で表される置換基は、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0176】
nB26及びnB27は、それぞれ独立に、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1である。nB26、nB27が1以上である場合、RB5及びRB6で表される置換基は、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0177】
中でも、nB26及びnB27は0であることが好ましい。したがって好適な一実施形態において、(E3)成分は、下記式(E3-3)で表される化合物を含む。
【0178】
【0179】
式(E3-3)中、RB3、RB4、nB21、nB22、nB23、nB24及びnB25は、式(E3-2)にて説明したとおりである。
【0180】
(E3)成分の分子量は、分子量分布を有する場合、重量平均分子量(Mw)にて、500以上であり、好ましくは550以上である。該Mwの上限は、特に限定されないが、好ましくは5000以下、より好ましくは2500以下である。(E3)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0181】
また、(E3)成分について、マレイミド基の官能基当量は、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.さらに好ましくは150g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは200g/eq.~300g/eq.である。
【0182】
(B)成分を含む絶縁材料において、上記の剥離モードや剥離時の荷重値を好適な態様・範囲により調整し易い観点から、(E3)成分は、下記式(E3-4)で表される構造を有するマレイミド化合物を含むことが好ましい。
【0183】
【0184】
式(E3-4)中、nB21は、先に説明したとおりである。
【0185】
式(E3-4)で表される構造を有するマレイミド化合物の市販品としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」等が挙げられる。(E3)成分としてはまた、式(E3-1)で表される化合物として、大和化成社製の「BMI-4000」、ケイアイ化成社製の「BMI-80」等を使用してもよい。
【0186】
本発明の樹脂組成物が(E)成分を含む場合、樹脂組成物中の(E)成分の含有量は、(B)成分の含有量が比較的高い場合であっても上記の剥離モードや剥離時の荷重値を好適な態様・範囲により調整し易い観点から、樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、2質量%、3質量%以上又は5質量%以上である。(E)成分の含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、20質量%以下又は15質量%以下である。
【0187】
(B)成分の含有量が比較的高い場合であっても上記の剥離モードや剥離時の荷重値を好適な態様・範囲により調整し易い観点から、(B)成分に対する(E)成分の配合量比、すなわち(E)成分/(B)成分の質量比は、不揮発成分換算で、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上又は0.4以上である。該質量比の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、10以下、8以下、6以下又は5以下などとし得る。
【0188】
-(F)硬化促進剤-
本発明の樹脂組成物は、(F)成分として、硬化促進剤を含んでもよい。
【0189】
(F)成分としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤等が挙げられる。(F)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0190】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。
【0191】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。
【0192】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0193】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0194】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0195】
過酸化物系硬化促進剤としては、例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートt-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物が挙げられる。過酸化物系硬化促進剤の市販品としては、例えば、日油社製の「パーブチルC」、「パーブチルA」、「パーブチルP」、「パーブチルL」、「パーブチルO」、「パーブチルND」、「パーブチルZ」、「パーヘキシルD」、「パークミルP」、「パークミルD」等が挙げられる。
【0196】
本発明の樹脂組成物が(F)成分を含む場合、樹脂組成物中の(F)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、0.6質量%以下又は0.4質量%以下である。
【0197】
-その他の成分-
本発明の樹脂組成物は、さらに任意の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0198】
本発明の樹脂組成物は、上述した不揮発成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0199】
本発明の樹脂組成物は、例えば、任意の調製容器に(A)成分、(B)成分、また、必要に応じて、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、その他の添加剤や有機溶剤を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、加えて混合する過程において又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置又は振盪装置を用いて撹拌又は振盪し、均一に分散させてもよい。また、撹拌又は振盪と同時に、真空下等の低圧条件下で脱泡を行ってもよい。
【0200】
本発明の樹脂組成物は、絶縁材料を形成するための樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶層間縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、部品埋め込み性の良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、その上に導体層(再配線層を含む)が設けられる絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、有機EL装置や半導体等の電子機器を封止するための樹脂組成物(封止用の樹脂組成物)として好適に使用することができ、特に、半導体を封止するための樹脂組成物(半導体封止用の樹脂組成物)、好ましくは半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はさらに、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途で広範囲に使用できる。
【0201】
[樹脂シート]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には一般に、該樹脂組成物を含有するシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0202】
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0203】
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物の層(以下、単に「樹脂組成物層」という。)とを含んでなり、樹脂組成物層が本発明の樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【0204】
樹脂組成物層の厚さは、用途によって好適な厚さは異なり、用途に応じて適宜決定してよい。本発明の樹脂組成物を用いて得られる絶縁材料は厚さによらず、反りを抑制可能であり、また、長期信頼性が良好であるという優れた効果を奏する。例えば、樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板や半導体パッケージの薄型化、及び当該樹脂組成物が薄膜であっても反りを抑制可能な硬化物を提供できるという観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、120μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下又は50μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0205】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0206】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0207】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0208】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0209】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0210】
支持体としてはまた、薄い金属箔に剥離が可能な支持基材を張り合わせた支持基材付き金属箔を用いてよい。一実施形態において、支持基材付き金属箔は、支持基材と、該支持基材上に設けられた剥離層と、該剥離層上に設けられた金属箔とを含む。支持体として支持基材付き金属箔を用いる場合、樹脂組成物層は、金属箔上に設けられる。
【0211】
支持基材付き金属箔において、支持基材の材質は、特に限定されないが、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、銅合金箔等が挙げられる。支持基材として、銅箔を用いる場合、電解銅箔、圧延銅箔であってよい。また、剥離層は、支持基材から金属箔を剥離できれば特に限定されず、例えば、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pからなる群から選択される元素の合金層;有機被膜等が挙げられる。
【0212】
支持基材付き金属箔において、金属箔の材質としては、例えば、銅箔、銅合金箔が好ましい。
【0213】
支持基材付き金属箔において、支持基材の厚さは、特に限定されないが、10μm~150μmの範囲が好ましく、10μm~100μmの範囲がより好ましい。また、金属箔の厚さは、例えば、0.1μm~10μmの範囲としてよい。
【0214】
一実施形態において、樹脂シートは、必要に応じて、任意の層をさらに含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0215】
樹脂シートは、例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0216】
有機溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した有機溶剤と同様のものが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0217】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0218】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0219】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0220】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されない。通常、10μm以上である。
【0221】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0222】
プリプレグの厚さは、上述の樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0223】
本発明のシート状積層材料は、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の層間絶縁層用)により好適に使用することができる。本発明のシート状積層材料はまた、有機EL装置や半導体等の電子機器を封止するための樹脂組成物(封止用)として好適に使用することができ、特に、半導体を封止するための樹脂組成物(半導体封止用)、好ましくは半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用)として好適に使用することができる。
【0224】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む。
【0225】
プリント配線板は、例えば、上記の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して絶縁層を形成する工程
【0226】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0227】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスしてもよく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスしてもよい。
【0228】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0229】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0230】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0231】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。なお、支持体として、金属箔を使用した場合、支持体を剥離することなく、該金属箔を用いて導体層を形成してよい。また、支持体として、支持基材付き金属箔を使用した場合、支持基材(と剥離層)を剥離すればよい。そして、金属箔を用いて導体層を形成することができる。
【0232】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0233】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~250℃、より好ましくは150℃~240℃、さらに好ましくは180℃~230℃である。硬化時間は好ましくは5分間~240分間、より好ましくは10分間~150分間、さらに好ましくは15分間~120分間とすることができる。なお、熱硬化の温度を決定するにあたっては、樹脂組成物層を十分に硬化させて所期の硬化度(ひいては所期の凝集力(層内密着強度))を達成する観点から、対象とする樹脂組成物について、示差走査熱量計を用いて発熱ピークを確認し、該発熱ピークの温度に基づき熱硬化の温度を決定することが好適である。例えば、対象とする樹脂組成物を昇温速度5℃/分の条件下で30℃から350℃まで昇温した際に該樹脂組成物が呈する発熱ピークの温度をT(℃)としたとき、熱硬化の温度は(T+10)(℃)以上の温度であることが好適である。発熱ピークが複数存在する場合、最も高温域にある発熱ピークの温度をT(℃)として、熱硬化の温度を決定すればよい。
【0234】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0235】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0236】
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様である。
【0237】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0238】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0239】
粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0240】
粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0241】
また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0242】
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0243】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0244】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0245】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0246】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0247】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0248】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0249】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0250】
あるいは、樹脂シートの支持体として、金属箔や、支持基材付き金属箔を使用した場合、該金属箔を用いて導体層を形成してよいことは先述のとおりである。
【0251】
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる封止層を含む。本発明の半導体パッケージはまた、先述のとおり、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる、再配線層を形成するための絶縁層(再配線形成層)を含んでもよい。
【0252】
半導体パッケージは、例えば、本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて、下記(1)乃至(6)の工程を含む方法により製造することができる。工程(3)の封止層あるいは工程(5)の再配線形成層を形成するために、本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いればよい。以下、樹脂組成物や樹脂シートを用いて封止層や再配線形成層を形成する一例を示すが、半導体パッケージの封止層や再配線形成層を形成する技術は公知であり、当業者であれば、本発明の樹脂組成物や樹脂シートを用いて、公知の技術に従って半導体パッケージを製造することができる。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0253】
-工程(1)-
基材に使用する材料は特に限定されない。基材としては、シリコンウェハ;ガラスウェハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板(例えばFR-4基板);ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)からなる基板などが挙げられる。
【0254】
仮固定フィルムは、工程(4)において半導体チップから剥離することができると共に、半導体チップを仮固定することができれば材料は特に限定されない。仮固定フィルムは市販品を用いることができる。市販品としては、日東電工社製のリヴァアルファ等が挙げられる。
【0255】
-工程(2)-
半導体チップの仮固定は、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の公知の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体パッケージの生産数等に応じて適宜設定することができ、例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に整列させて仮固定することができる。
【0256】
-工程(3)-
本発明の樹脂シートの樹脂組成物層を、半導体チップ上に積層、又は本発明の樹脂組成物を半導体チップ上に塗布し、熱硬化させて封止層を形成する。
【0257】
例えば、半導体チップと樹脂シートの積層は、樹脂シートの保護フィルムを除去した後支持体側から樹脂シートを半導体チップに加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを半導体チップに加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、半導体チップの表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。半導体チップと樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してもよく、その積層条件は、プリント配線板の製造方法に関連して説明した積層条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0258】
積層の後、樹脂組成物を熱硬化させて封止層を形成する。熱硬化の条件は、プリント配線板の製造方法に関連して説明した熱硬化の条件と同様である。
【0259】
樹脂シートの支持体は、半導体チップ上に樹脂シートを積層し熱硬化した後に剥離してもよく、半導体チップ上に樹脂シートを積層する前に支持体を剥離してもよい。
【0260】
本発明の樹脂組成物を塗布して封止層を形成する場合、その塗布条件としては、本発明の樹脂シートに関連して説明した樹脂組成物層を形成する際の塗布条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0261】
-工程(4)-
基材及び仮固定フィルムを剥離する方法は、仮固定フィルムの材質等に応じて適宜変更することができ、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡(又は膨張)させて剥離する方法、及び基材側から紫外線を照射させ、仮固定フィルムの粘着力を低下させ剥離する方法等が挙げられる。
【0262】
仮固定フィルムを加熱、発泡(又は膨張)させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100~250℃で1~90秒間又は5~15分間である。また、基材側から紫外線を照射させ、仮固定フィルムの粘着力を低下させ剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。
【0263】
-工程(5)-
再配線形成層(絶縁層)を形成する材料は、再配線形成層(絶縁層)形成時に絶縁性を有していれば特に限定されず、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂、熱硬化性樹脂が好ましい。本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて再配線形成層を形成してもよい。
【0264】
再配線形成層を形成後、半導体チップと後述する導体層を層間接続するために、再配線形成層にビアホールを形成してもよい。ビアホールは、再配線形成層の材料に応じて、公知の方法により形成してよい。
【0265】
-工程(6)-
再配線形成層上への導体層の形成は、プリント配線板の製造方法に関連して説明した工程(V)と同様に実施してよい。なお、工程(5)及び工程(6)を繰り返し行い、導体層(再配線層)及び再配線形成層(絶縁層)を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0266】
半導体パッケージを製造するにあたって、(7)導体層(再配線層)上にソルダーレジスト層を形成する工程、(8)バンプを形成する工程、(9)複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程をさらに実施してもよい。これらの工程は、半導体パッケージの製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0267】
反りを抑制し得ると共に長期信頼性が良好である絶縁材料をもたらす本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて封止層を形成することにより、半導体パッケージが、ファンイン(Fan-In)型パッケージであるかファンアウト(Fan-Out)型パッケージであるかの別を問わず、反りを抑制し得ると共に長期信頼性に優れる半導体パッケージを実現することができる。一実施形態において、本発明の半導体パッケージは、ファンアウト(Fan-Out)型パッケージである。本発明の樹脂組成物、樹脂シートは、ファンアウト型パネルレベルパッケージ(FOPLP)、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FOWLP)の別を問わず、適用できる。一実施形態において、本発明の半導体パッケージは、ファンアウト型パネルレベルパッケージ(FOPLP)である。他の一実施形態において、本発明の半導体パッケージは、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FOWLP)である。
【0268】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の樹脂組成物層の硬化物からなる層を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板又は半導体パッケージを用いて製造することができる。
【0269】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例】
【0270】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)である。
【0271】
まず各種測定方法・評価方法について説明する。
【0272】
<Stud pull試験>
1.評価基板の調製
(1)銅箔の下地処理
表面に銅箔を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック社製「R―1766」)を用意した。マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)を用いて、銅エッチング量2μmとなるようにエッチングして、両面の粗化処理を行った。こうして得られた銅張積層板を「粗化銅張積層板」という。
【0273】
(2)樹脂シートの積層
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が粗化銅張積層板と接合するように、粗化銅張積層板の片面に積層した。この積層は、30秒間減圧して気圧を3hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。ラミネート処理の後、樹脂シートを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間、熱プレスして平滑化した。平滑化処理の後、200℃のオーブンに投入して90分間加熱し樹脂組成物層を硬化した。こうして、粗化銅張積層板上に樹脂組成物の硬化物層が設けられた「評価基板A」を得た。各樹脂組成物について5つの評価基板Aを用意した。
【0274】
2.Stud pull試験
(1)試験条件
Stud pull試験機(ROMULUS、Quad Group Inc.社製)を用いて、下記手順で剥離モードと剥離時の荷重値(kgf/cm2)とを評価した。
すなわち、評価基板Aの樹脂組成物の硬化物層上に、エポキシ接着剤付きのアルミ製スタッドピン(接着面の直径2.7mmφ;P/N 901106)を固定し、オーブンで150℃、1時間加熱してスタッドピンを硬化物層に接着させた。そして上記Stud pull試験機にて、2kgf/秒の速度でスタッドピンを評価基板の主面に鉛直方向に引っ張り、硬化物層が剥離した時点の荷重値(kgf/cm2)を測定し、また、剥離モードを光学顕微鏡で観察した。各樹脂組成物について用意した5つの評価基板Aについて試験を行った(N=5)。
【0275】
(2)剥離モードの判定
5回の試験の結果、銅張積層板-硬化物層の界面で剥離(層間剥離)したのが3回以上の場合を「剥離モードI」、硬化物層が凝集破壊(層内剥離)したのが3回以上の場合を「剥離モードII」、硬化物層-スタッドピンの界面で剥離(層間剥離)したのが3回以上の場合を「剥離モードIII」と判定した。「剥離モードI」もしくは「剥離モードIII」の場合は、硬化物層の凝集力(層内密着強度)が、硬化物層-銅箔の界面密着強度、もしくは、硬化物層-スタッドピン(エポキシ接着剤)の界面密着強度よりも高く、Stud pull測定値(剥離時の荷重値)よりも大きいことを表す。これに対し、「剥離モードII」の場合は、硬化物層の凝集力が、硬化物層-銅箔あるいは硬化物層-スタッドピン(エポキシ接着剤)の界面密着強度よりも低いことを表す。
【0276】
<反りの評価>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層がシリコンウェハと接合するように、12インチシリコンウェハ(厚さ775μm)の片面全体に積層した。支持体を剥離し、露出した樹脂組成物層の表面に、さらに樹脂シートを同様に積層し、支持体を剥離した。これにより、12インチシリコンウェハの片面に2層の樹脂組成物層(合計厚さ100μm)を形成した。なお、積層(ラミネート処理及び平滑化処理)は、上記1.(2)と同じ条件にて実施した。
得られた積層体をオーブンにて180℃、90分間加熱し、樹脂組成物層を硬化させて絶縁層を形成した。得られた絶縁層付きシリコンウェハの端部を水平な台に押さえつけ、押さえつけた箇所の逆側のウエハ端部と台との距離を反り量として測定した。そして、以下の基準で反りを評価した。
【0277】
反りの評価基準:
○:反り量が0mm以上2mm(2000μm)以下
×:反り量が2mmより大きい
【0278】
<長期信頼性の評価>
1.評価用硬化物の作製
実施例及び比較例で作製した樹脂シートの一部を切り出し、200℃にて90分間加熱して、樹脂組成物層を硬化させた。その後、支持体を剥離し、評価用硬化物Aを得た。
【0279】
2.長期信頼性の評価
長期信頼性の評価は、評価用硬化物Aに対してHTS試験を施し、HTS(High Thermal Storage)試験の前後において破断点強度を測定し、破断点強度の変化度(%)を算出することにより行った。
【0280】
(1)HTS試験
評価用硬化物AをHTS試験に供した。HTS試験では、評価用硬化物Aを150℃にて1000時間保持した。これにより、HTS試験後の評価用硬化物A’を得た。
【0281】
(2)HTS試験前後の破断点強度の測定
評価用硬化物Aを、平面視ダンベル形状の1号形に切り出すことにより5個の試験片Bを得た。同様に、評価用硬化物A’を、平面視ダンベル形状の1号形に切り出すことにより5個の試験片B’を得た。試験片B、B’の各々につき、オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて、23℃、試験速度5mm/minの測定条件で引張試験を行い、応力-ひずみ曲線から引張破断点強度(単に「破断点強度」ともいう。)を求めた。測定は、JIS K7127:1999に準拠して実施した。5個の試験片Bの破断点強度の平均値をHTS試験前の引張破断点強度σ0とした。5個の試験片B’の破断点強度の平均値をHTS試験後の引張破断点強度σ1とした。そして、HTS試験前後における引張破断点強度の変化度(%)を下記式に基づき算出した。
変化度(%)={(σ1-σ0)/σ0}×100
算出した変化度(%)に基づき、下記基準に従って長期信頼性を評価した。
【0282】
長期信頼性の評価基準:
○:変化度(%)の絶対値が10%未満である場合(変化度が小さく、長期信頼性に優れている)
×:変化度(%)の絶対値が10%以上である場合(変化度が大きく、長期信頼性に劣る)
【0283】
なお、長期信頼性に劣ると評価された比較例1の試験片B’を観察すると、酸化による劣化が認められた。また、実施例及び比較例で調製した各樹脂組成物について、樹脂組成物層の厚さを25μm、100μm等に変更した樹脂シートについても評価したが、Stud pull試験の剥離モードや測定強度に変化はなく、長期信頼性も同様の傾向を示すことを確認した。
【0284】
<合成例1>(応力緩和材Aの合成)
反応容器に、2官能性ヒドロキシ基末端ポリブタジエン(日本曹達社製「G-3000」、数平均分子量:3000、ヒドロキシ基当量:1800g/eq.)69gと、芳香族炭化水素系混合溶剤(出光石油化学社製「イプゾール150」)40gと、ジブチル錫ラウレート0.005gとを入れ、混合して均一に溶解させた。得られた溶液を60℃に昇温し、更に撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(エボニックデグサジャパン社製「IPDI」、イソシアネート基当量:113g/eq.)8gを添加し、約3時間反応を行った。これにより、第1の反応溶液を得た。
【0285】
次いで、第1の反応溶液に、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、水酸基当量:117g/eq.)23gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル社製)60gとを添加し、攪拌しながら150℃まで昇温し、約10時間反応を行った。これにより、第2の反応溶液を得た。FT-IRによって2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピークの消失の確認をもって反応の終点とみなし、第2の反応溶液を室温まで降温した。そして、第2の反応溶液を、100メッシュの濾布で濾過した。これにより、濾液として、反応性官能基を有する応力緩和材A(フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂)を不揮発成分として含む溶液(不揮発成分50質量%)を得た。応力緩和材Aの数平均分子量は5,900、ガラス転移温度は-7℃であった。
【0286】
<合成例2>(マレイミド化合物Aの合成)
発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1に記載の方法に準拠してマレイミド化合物AのMEK溶液(不揮発成分70質量%)を調製した。このマレイミド化合物Aは、下記式で表される構造を有する。
【0287】
【0288】
マレイミド化合物A1のFD-MSスペクトルを測定すると、M+=560、718及び876のピークが確認される。これらのピークは、それぞれ、n1が0、1及び2の場合に相当する。また、マレイミド化合物A1をGPCによって分析して、インダン骨格部分の繰り返し単位数n1の値を数平均分子量に基づいて求めると、n1=1.47であり、分子量分布(Mw/Mn)=1.81である。さらに、マレイミド化合物A1の全量100面積%中、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の含有割合は、26.5面積%である。
【0289】
マレイミド化合物AのFD-MSスペクトルは、下記の測定装置及び測定条件で測定されたものを表す。
(FD-MSスペクトルの測定装置及び測定条件)
測定装置:JMS-T100GC AccuTOF
測定条件
測定範囲:m/z=4.00~2000.00
変化率:51.2mA/min
最終電流値:45mA
カソード電圧:-10kV
記録間隔:0.07sec
【0290】
マレイミド化合物AのGPCは、下記の測定装置及び測定条件で測定されたものを表す。
測定装置:東ソー社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー社製ガードカラム「HXL-L」、東ソー社製「TSK-GEL G2000HXL」、東ソー社製「TSK-GEL G2000HXL」、東ソー社製「TSK-GEL G3000HXL」、及び、東ソー社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いる。
試料:マレイミド化合物の不揮発成分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0291】
マレイミド化合物Aの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))、及び、マレイミド化合物中のインダン骨格に寄与する平均繰り返し単位数「n1」は、前記のGPC測定により得られたGPCチャートから算出されたものを表す。また、平均繰り返し単位数「n1」は、数平均分子量(Mn)に基づき算出されたものを表す。具体的には、n1が0~4の化合物について、理論分子量と、GPCにおける実測値分子量とを散布図上にプロットし、その近似直線を引く。そして、この直線上の実測値Mn(1)が示す点より数平均分子量(Mn)を求め、更に平均繰り返し単位する「n1」を算出する。さらに、GPC測定の結果に基づき、マレイミド化合物A1の全量100面積%中、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の含有割合(面積%)が、算出される。詳細については、発明協会公開技報公技番号2020-500211号を参照しうる。
【0292】
[実施例1]
(1)樹脂組成物の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量189g/eq.)3部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP6000」、エポキシ当量250g/eq.)1部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「630」、エポキシ当量:95g/eq.)2部、応力緩和材Aを20部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)65部、マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部、フェノール系硬化剤(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq)2部、硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.05部、及びメチルエチルケトン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物のワニスを調製した。
【0293】
(2)樹脂シートの作製
支持体として、離型層を備えたPETフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、調製したワニスを、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが50μmとなるように均一に塗布した。その後、ワニスを80℃~120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて、支持体と該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含む樹脂シートを作製した。
【0294】
[実施例2]
(1)樹脂組成物の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量189g/eq.)4部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP6000」、エポキシ当量250g/eq.)1部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「630」、エポキシ当量:95g/eq.)4部、応力緩和材Aを12部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)60部、マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)1部、フェノール系硬化剤(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq)1部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量223g/eq、固形分65質量%のトルエン溶液)6.2部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.05部、及びメチルエチルケトン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物のワニスを調製した。
【0295】
(2)樹脂シートの作製
得られたワニスを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0296】
[実施例3]
(1)樹脂組成物の調製
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032」、エポキシ当量144g/eq.)4部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「630」、エポキシ当量:95g/eq.)2部、応力緩和材Aを20部、エポキシ化ポリブタジエン樹脂(日本曹達社製「JP-100」)1部、アクリルゴム粒子(呉羽化学工業社製「EXL2655」)1部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(デンカ社製「UFP-30」、平均粒径0.3μm、比表面積30.7m2/g)45部、マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)2部、フェノール系硬化剤(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq)2部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量223g/eq、固形分65質量%のトルエン溶液)3.1部、硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.05部、及びメチルエチルケトン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物のワニスを調製した。
【0297】
(2)樹脂シートの作製
得られたワニスを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0298】
[実施例4]
(1)樹脂組成物の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量189g/eq.)3部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032」、エポキシ当量144g/eq.)2部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP6000」、エポキシ当量250g/eq.)2部、ナフトール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN475V」、エポキシ当量330g/eq.)1部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7200」)0.5部、エポキシ化ポリブタジエン樹脂(日本曹達社製「JP-100」)2部、アクリルゴム粒子(呉羽化学工業社製「EXL2655」)2部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)80部、マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)3部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量223g/eq、固形分65質量%のトルエン溶液)15.4部、硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.2部、硬化促進剤(DMAP)0.01部、及びメチルエチルケトン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物のワニスを調製した。
【0299】
(2)樹脂シートの作製
得られたワニスを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0300】
[実施例5]
マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部に代えて、合成例2で調製したマレイミド化合物A4部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、樹脂シートを作製した。
【0301】
[比較例1]
(i)応力緩和材Aの配合量を10部から18部に変更した点、(ii)アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)の配合量を65部から95部に変更した点、(iii)さらに活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量223g/eq、固形分65質量%のトルエン溶液)1.6部を配合した点を除いて、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、樹脂シートを作製した。
【0302】
[比較例2]
(i)応力緩和材Aを配合しなかった点、(ii)アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)の配合量を65部から45部に変更した点、(iii)フェノール系硬化剤(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq)2部に代えて活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量223g/eq、固形分65質量%のトルエン溶液)9.2部を配合した点を除いて、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、樹脂シートを作製した。
【0303】
[比較例3]
(1)樹脂組成物の調製
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032」、エポキシ当量144g/eq.)3部、ナフトール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN475V」、エポキシ当量330g/eq.)1部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7200」)0.5部、コア-シェル型ゴム粒子(カネカ社製「MR-01」)10部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)65部、フェノール系硬化剤(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq)1部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量223g/eq、固形分65質量%のトルエン溶液)9.2部、硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.4部、硬化促進剤(DMAP)0.01部、及びメチルエチルケトン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物のワニスを調製した。
【0304】
(2)樹脂シートの作製
得られたワニスを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0305】
[比較例4]
さらにベンゾオキサジン化合物(四国化成工業社製P-d型ベンゾオキサジン化合物)5部を配合した以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物のワニスを調製し、樹脂シートを作製した。
【0306】
実施例1~5及び比較例1~4で調製した樹脂組成物について、示差走査熱量計を用いて昇温速度5℃/分の条件下で30℃から350℃まで昇温した際に該樹脂組成物が呈する発熱ピークの温度は120~190℃の範囲であった。
【0307】
実施例1~5及び比較例1~4の結果を表1に示す。
【0308】
【符号の説明】
【0309】
1 基材(粗化処理した銅張積層板)
2 樹脂組成物の硬化物層
10 エポキシ接着剤
11 スタッドピン