(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231226BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020162514
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】小林 政徳
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-165107(JP,A)
【文献】特開2010-56489(JP,A)
【文献】特開2019-9912(JP,A)
【文献】特開2019-201120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
H05K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換を行う電力変換装置(10)であって、
板状の基板(30)と、
前記基板の一方の板面である実装面(30a)に実装された複数の実装部品(31a,31aX)と、
開口部(45a)が形成されたケース本体(45)と、前記開口部を覆うように前記ケース本体に取り付けられたカバー体(48)とを有し、前記基板を収容したケース(40)と、
前記実装面を前記カバー体に対向させた状態で前記基板を前記ケース本体に固定している固定部材(35,35A,38)と、
を備え、
前記固定部材は、前記実装面から前記カバー体に向けて突出した固定突出部(36)を有しており、
前記実装面からの前記固定突出部の突出寸法(H1)は、前記実装面からの複数の前記実装部品のいずれの突出寸法(H2)よりも大き
く、
前記ケース本体は、
前記ケースの外壁面(43)を形成する本体外壁部(51)と、
前記本体外壁部から延び、前記基板を支持する本体支持部(52)と、
前記本体支持部において前記本体外壁部からケース内側に離間した位置に設けられ、前記固定部材が固定された被固定部(55)と、
を有しており、
前記固定部材は複数設けられており、
複数の前記固定部材には、1つの前記実装部品(31aX)よりも前記本体外壁部から離間した位置に設けられた固定部材(35A)が含まれている、電力変換装置。
【請求項2】
前記実装部品を第1実装部品(31a)とし、前記実装面を第1実装面(30a)とすると、
前記基板における前記第1実装面とは反対側の第2実装面(30b)には、第2実装部品(32b,32bY)と、
が実装されており、
前記第2実装面からの前記第2実装部品の突出寸法(H3b)は、前記第1実装面からの前記固定突出部の前記突出寸法(H1)よりも大きい、請求項
1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記ケース本体は、前記ケースの内部空間を前記カバー体側の第1空間(40a)と、前記第1空間を介して前記カバー体とは反対側の第2空間(40b)とに仕切る仕切部(53)を有しており、
前記第1空間には、前記基板が収容されており、
前記第2空間には、自身の内部を流れる冷媒と自身の外部との熱交換を行う熱交換部(21)が設けられており、
前記第2実装部品は、前記仕切部に設けられた仕切孔(56)を通じて前記第2空間に入り込んだ状態になっている、請求項
2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
電力変換を行う電力変換装置(10)であって、
板状の基板(30)と、
前記基板の一方の板面である実装面(30a)に実装された複数の実装部品(31a,31aX)と、
開口部(45a)が形成されたケース本体(45)と、前記開口部を覆うように前記ケース本体に取り付けられたカバー体(48)とを有し、前記基板を収容したケース(40)と、
前記実装面を前記カバー体に対向させた状態で前記基板を前記ケース本体に固定している固定部材(35,35A,38)と、
を備え、
前記固定部材は、前記実装面から前記カバー体に向けて突出した固定突出部(36)を有しており、
前記実装面からの前記固定突出部の突出寸法(H1)は、前記実装面からの複数の前記実装部品のいずれの突出寸法(H2)よりも大き
く、
前記実装部品を第1実装部品(31a)とし、前記実装面を第1実装面(30a)とすると、
前記基板における前記第1実装面とは反対側の第2実装面(30b)には、第2実装部品(32b,32bY)と、
が実装されており、
前記第2実装面からの前記第2実装部品の突出寸法(H3b)は、前記第1実装面からの前記固定突出部の前記突出寸法(H1)よりも大きく、
前記ケース本体は、前記ケースの内部空間を前記カバー体側の第1空間(40a)と、前記第1空間を介して前記カバー体とは反対側の第2空間(40b)とに仕切る仕切部(53)を有しており、
前記第1空間には、前記基板が収容されており、
前記第2空間には、自身の内部を流れる冷媒と自身の外部との熱交換を行う熱交換部(21)が設けられており、
前記第2実装部品は、前記仕切部に設けられた仕切孔(56)を通じて前記第2空間に入り込んだ状態になっている、電力変換装置。
【請求項5】
前記ケース本体は、
前記ケースの外壁面(43)を形成する本体外壁部(51)と、
前記本体外壁部から延び、前記基板を支持する本体支持部(52)と、
前記本体支持部において前記本体外壁部からケース内側に離間した位置に設けられ、前記固定部材が固定された被固定部(55)と、
を有している、請求項
4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第2実装部品(32bY)は、前記ケースの外壁部(51)よりも前記固定部材(35A)に近い位置に設けられている、請求項
2~5のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記固定部材は,前記固定突出部を形成するネジ頭部(36)を有するネジ部材であり、
前記実装面からの前記固定突出部の前記突出寸法は、前記実装面からの前記ネジ頭部の突出寸法である、請求項1~
6のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の電子部品により電力変換を行う電力変換装置が開示されている。この電力変換装置においては、複数の電子部品のうち実装部品が実装された基板がケースに収容されている。このケースは、矩形筒状のケース本体と、このケース本体の各開口部を覆う一対の蓋体とを有している。基板は、一対の蓋体のうち下蓋に対向した状態でケースの内部に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基板がケースに収容された上記特許文献1では、例えば下蓋が変形してこの下蓋が基板の実装部品に接触することが懸念される。そこで、下蓋が変形したとしてもその下蓋が実装部品に接触しない程度に下蓋と実装部品との離間距離を大きくする、という構成が考えられる。ところが、この構成では、下蓋と実装部品との離間距離を大きくする分だけケースが大型化してしまう。
【0005】
本開示の主な目的は、ケースの小型化を実現できる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するため、開示された1つの態様は、
電力変換を行う電力変換装置(10)であって、
板状の基板(30)と、
基板の一方の板面である実装面(30a)に実装された複数の実装部品(31a,31aX)と、
開口部(45a)が形成されたケース本体(45)と、開口部を覆うようにケース本体に取り付けられたカバー体(48)とを有し、基板を収容したケース(40)と、
実装面をカバー体に対向させた状態で基板をケース本体に固定している固定部材(35,35A,38)と、
を備え、
固定部材は、実装面からカバー体に向けて突出した固定突出部(36)を有しており、
実装面からの固定突出部の突出寸法(H1)は、実装面からの複数の実装部品のいずれの突出寸法(H2)よりも大きく、
ケース本体は、
ケースの外壁面(43)を形成する本体外壁部(51)と、
本体外壁部から延び、基板を支持する本体支持部(52)と、
本体支持部において本体外壁部からケース内側に離間した位置に設けられ、固定部材が固定された被固定部(55)と、
を有しており、
固定部材は複数設けられており、
複数の固定部材には、1つの実装部品(31aX)よりも本体外壁部から離間した位置に設けられた固定部材(35A)が含まれている、電力変換装置である。
開示された1つの態様は、
電力変換を行う電力変換装置(10)であって、
板状の基板(30)と、
基板の一方の板面である実装面(30a)に実装された複数の実装部品(31a,31aX)と、
開口部(45a)が形成されたケース本体(45)と、開口部を覆うようにケース本体に取り付けられたカバー体(48)とを有し、基板を収容したケース(40)と、
実装面をカバー体に対向させた状態で基板をケース本体に固定している固定部材(35,35A,38)と、
を備え、
固定部材は、実装面からカバー体に向けて突出した固定突出部(36)を有しており、
実装面からの固定突出部の突出寸法(H1)は、実装面からの複数の実装部品のいずれの突出寸法(H2)よりも大きく、
実装部品を第1実装部品(31a)とし、実装面を第1実装面(30a)とすると、
基板における第1実装面とは反対側の第2実装面(30b)には、第2実装部品(32b,32bY)と、
が実装されており、
第2実装面からの第2実装部品の突出寸法(H3b)は、第1実装面からの固定突出部の突出寸法(H1)よりも大きく、
ケース本体は、ケースの内部空間をカバー体側の第1空間(40a)と、第1空間を介してカバー体とは反対側の第2空間(40b)とに仕切る仕切部(53)を有しており、
第1空間には、基板が収容されており、
第2空間には、自身の内部を流れる冷媒と自身の外部との熱交換を行う熱交換部(21)が設けられており、
第2実装部品は、仕切部に設けられた仕切孔(56)を通じて第2空間に入り込んだ状態になっている、電力変換装置である。
【0008】
上記態様によれば、基板の実装面からの固定突出部の突出寸法が、実装面からの複数の実装部品のいずれの突出寸法よりも大きい。この構成では、例えば、カバー体の変形などによりカバー体が基板に接近してきた時に、このカバー体が基板の実装部品よりも固定突出部に接触しやすくなっている。このため、カバー体を基板に極力近い位置に配置したとしても、カバー体が実装部品に接触することを固定突出部により規制できる。このように、カバー体が実装部品に接触しにくい構成を実現することでケースを小型化できる。
【0009】
しかも、実装部品へのカバー体の接触を規制するための部材として固定部材を利用している。これは、基板を支持するために必要なケース本体の強度や、基板を固定するために必要な固定部材の強度を、カバー体が基板に接近してきた時にカバー体を支える強度として利用できる。したがって、カバー体を支える強度が不足してカバー体が実装部品に接触するということをケース本体や固定部材により抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態における電力変換装置の上面図。
【
図3】上カバーを外した状態の電力変換装置を上から見た図。
【
図4】下カバーを外した状態の電力変換装置を下から見た図。
【
図9】第2実施形態における締結ネジ周辺の構成を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示す電力変換装置10は、例えば電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)、燃料電池車などの車両に搭載されている。この車両には、車両の駆動輪を駆動する駆動システムが搭載されている。この駆動システムは、電力変換装置10と、バッテリ等の直流電源と、三相交流モータ等の電動モータとを有している。電力変換装置10は、直流電源から供給される直流の電力を交流の電力に変換して電動モータに出力する。電力変換装置10は、電動モータにより発電された交流電力を直流電力に変換する機能も有する。
【0013】
電力変換装置10は、直流電源と電動モータとの間で双方向の電力変換を行う電力変換回路としてインバータ回路を有している。インバータ回路は、複数の半導体スイッチ及びコンデンサを含んで構成されている。インバータ回路においては、U相、V相、W相のそれぞれについて上アーム回路及び下アーム回路が設けられており、これらアーム回路のそれぞれに半導体スイッチが含まれている。
【0014】
半導体スイッチは、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)。半導体スイッチには、P端子、N端子、O端子及び信号端子が接続されている。P端子には、上アームのIGBTのコレクタ電極が接続されている。N端子には、下アームのIGBTのエミッタ電極が接続されている。O端子には、上アームのIGBTのエミッタ電極と、下アームのIGBTのコレクタ電極が接続されている。インバータ回路においては、P端子が高電位側の電力ラインに設けられ、N端子が低電位側の電力ラインに設けられている。高電位側の電力ラインは直流電源の正極に接続され、低電位側の電力ラインは直流電源の負極に接続されている。
【0015】
インバータ回路に含まれたコンデンサは、例えば平滑コンデンサである。平滑コンデンサは、インバータ回路において直流電源から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサは、直流電源に並列に接続されている。平滑コンデンサの正極は、直流電源とアーム回路との間において高電位側の電力ラインに接続されている。一方、平滑コンデンサの負極は、直流電源と電力変換部との間において低電位側の電力ラインに接続されている。
【0016】
電力変換装置10は、インバータ回路に加えて、制御部としての制御回路と、駆動部としての駆動回路とを有している。制御回路は、IGBTを動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路に出力する。制御回路は、例えば上位のECUから入力されるトルク要求、各種センサによって検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。各種センサには、電流センサ、回転角センサ、電圧センサがある。電流センサとしては、インバータ回路と電動モータとの間を流れる電流を検出する電流センサがある。この電流センサは、U相、V相、W相のそれぞれに対して設けられている。制御回路は、例えば、駆動指令としてPWM信号を出力する。制御回路は、マイクロコンピュータを備えている。
【0017】
駆動回路は、制御回路の駆動信号に基づいて、IGBTのゲートに駆動電圧を供給するドライバである。駆動回路は、駆動電圧の印加により、IGBTを駆動させる。電力変換装置10は、例えば1つのアームに対して1つの駆動回路を有している。
【0018】
図2~
図4に示すように、電力変換装置10は、半導体モジュール15、コンデンサユニット16、電流センサユニット17、冷却器20、制御基板30、ケース40を有している。半導体モジュール15やコンデンサユニット16、電流センサユニット17、制御基板30を電気部品と称することができる。
【0019】
半導体モジュール15は、半導体スイッチを形成するスイッチング素子としての半導体素子を含んで構成されている。半導体モジュール15は、全体として扁平状に形成されており、半導体モジュール15をパワーモジュールやパワーカードと称することもできる。半導体モジュール15は、半導体素子を保護したモジュール本体と、モジュール本体から突出した複数の端子とを有している。モジュール本体は樹脂等により形成されている。半導体モジュール15の複数の端子には、パワー端子と信号端子とが含まれている。パワー端子としては、直流電源に電気的に接続された入力端子と、電動モータに電気的に接続された出力端子とがある。信号端子は、制御回路に電気的に接続されている。
【0020】
コンデンサユニット16は、平滑コンデンサ等を形成するコンデンサ素子を含んで構成されている。コンデンサユニット16は、コンデンサ素子を保護したユニット本体と、このユニット本体から突出した複数の端子とを有している。ユニット本体は、コンデンサ素子を樹脂封止した封止部を有しており、この封止部は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂により形成されている。
【0021】
電流センサユニット17は、電流センサを形成するセンサ素子を含んで構成されている。電流センサユニット17は、センサ素子を保護したユニット本体と、このユニット本体から突出した複数の端子とを有している。
【0022】
冷却器20は、水等の冷媒により半導体モジュール15を冷却する。
図2、
図4に示すように、冷却器20は、熱交換部21、導入管部22及び排出管部23を有している。これら熱交換部21、導入管部22及び排出管部23は、熱伝導性に優れたアルミニウム系材料などの金属材料により形成されている。冷却器20は、冷媒が流れる流路を有しており、この流路は熱交換部21、導入管部22及び排出管部23のそれぞれに設けられている。冷却器20においては、導入管部22を通じて熱交換部21に導入された冷媒が排出管部23を通じて熱交換部21から排出される。
【0023】
熱交換部21は、冷媒と半導体モジュール15との間での熱交換を行う。熱交換部21の流路を流れる冷媒は、半導体モジュール15にて発生した熱を熱交換部21を介して吸収することで、熱交換部21を介して半導体モジュール15を冷却する。熱交換部21は、自身の内部を流れる冷媒と自身の外部との熱交換を行う。
【0024】
熱交換部21と半導体モジュール15とは複数ずつ設けられており、互いに交互に並べられている。熱交換部21は、半導体モジュール15と同様に扁平状に形成されており、熱交換部21と半導体モジュール15とは、それぞれの厚さ方向に積層されている。熱交換部21及び半導体モジュール15のそれぞれについて、厚さ方向に直交する方向に延びる面を扁平面と称すれば、熱交換部21と半導体モジュール15とは、互いの扁平面を対向させた状態で積層配置されている。半導体モジュール15を介して隣り合う熱交換部21は、これら熱交換部21の間にある半導体モジュール15の一対の扁平面の両方を冷却するという両面冷却を実現している。
【0025】
熱交換部21と半導体モジュール15とが並べられた積層方向において、導入管部22及び排出管部23は、いずれも複数の熱交換部21にかけ渡された状態になっている。導入管部22は、各熱交換部21のそれぞれに冷媒を導入し、排出管部23は、各熱交換部21のそれぞれから冷媒を排出する。導入管部22は、隣り合う熱交換部21を接続する接続管を有しており、この接続管が複数の熱交換部21と交互に積層方向に複数並べられていることで、全体として積層方向に延びた状態になっている。同様に、排出管部23は、隣り合う熱交換部21を接続する接続管を有しており、この接続管が複数の熱交換部21と交互に積層方向に複数並べられていることで、全体として積層方向に延びた状態になっている。
【0026】
図3において、制御基板30は、プリント基板等の回路基板であり、矩形板状に形成されている。制御基板30は、ガラスエポキシ基板等の絶縁基材と、この絶縁基材に設けられた配線パターン等の基板配線とを有している。制御基板30には制御回路が搭載されている。
【0027】
図1、
図2に示すように、ケース40は、全体として立方体形状に形成されている。ケース40は内部空間を有しており、この内部空間に制御基板30等の電気部品を収容している。ケース40は高さ寸法が小さくなるように扁平した低背の形状になっている。本実施形態では、ケース40の高さ方向をZ方向とし、縦方向及び横方向をX方向及びY方向とする。これらX方向とY方向とZ方向とは互いに直交している。この場合、ケース40の上面41及び下面42がZ方向に直交する方向に延びており、ケース40の外壁面43がX方向やY方向に直交する方向に延びている。
【0028】
ケース40は、ケース本体45、上カバー48及び下カバー49を有している。これらケース本体45及びカバー48,49はいずれも金属材料により形成されている。例えば、ケース本体45及びカバー48,49にはアルミダイカストにより成形された部位が含まれている。ケース本体45及びカバー48,49は導電性を有しており、車両ボディなどに電気的にアースされたアース部材になっている。
【0029】
ケース本体45は、全体として扁平状の矩形筒状に形成されている。ケース本体45は一対の開口部として上開口部45a及び下開口部45bを有している。これら開口部45a,45bは、Z方向に並べられており、それぞれケース本体45の内部空間をZ方向に開放する。上開口部45aは、Z方向においてケース本体45の上端部に設けられており、下開口部45bは、ケース本体45の下端部に設けられている。なお、上開口部45aが開口部に相当する。
【0030】
カバー48,49は、全体として板状に形成されており、Z方向に直交する方向に延びた向きでケース本体45に取り付けられている。上カバー48はケース40の上面41を形成し、下カバー49はケース40の下面42を形成している。上カバー48は上開口部45aを覆っており、下カバー49は下開口部45bを覆っている。上カバー48及び下カバー49は、いずれもケース40の内面を形成している。ケース40においては、上カバー48により形成された部分を上面部や天井部と称し、下カバー49により形成された部分を下面部や床部と称することができる。なお、上カバー48がカバー体に相当する。
【0031】
ケース40は、上カバー48をケース本体45に固定した上ネジ48aと、下カバー49をケース本体45に固定した下ネジ49aと、を有している。上ネジ48aは、上カバー48を貫通した状態でケース本体45に螺着されており、上カバー48の外周端に沿って複数並べられている。下ネジ49aは、下カバー49を貫通してケース本体45に螺着されており、下カバー49の外周端に沿って複数並べられている。
【0032】
上カバー48において外周端に近い位置は、上ネジ48aによりケース本体45に固定されているため変形しにくくなっている。その一方で、上カバー48において中央部分や中央寄り部分は上ネジ48aでは固定されていない。これに対して、上カバー48は、中央部分や中央寄り部分が下カバー49とは反対側に向けて膨らんだような形状になっている。これにより、中央部分や中央寄り部分がZ方向に凹んだり膨らんだりするように上カバー48が変形するということが生じにくくなっている。
【0033】
図5、
図6に示すように、ケース本体45は、本体外壁部51及び本体支持部52を有している。本体外壁部51は、ケース40の内部空間の四方を囲んだ状態になっており、ケース40の外壁面43を形成している。本体外壁部51の上端部は上開口部45aを形成しており、本体外壁部51の下端部は下開口部45bを形成している。ケース40においては、本体外壁部51により形成された部分が外壁部になっている。本実施形態では、本体外壁部51がケース40の外壁部に相当する。
【0034】
図2に示すように、本体支持部52は、ケース40の内部空間において制御基板30を支持している。本体支持部52は、本体外壁部51に設けられている。本体支持部52は、Z方向に直交する方向において、本体外壁部51の内壁面からケース内側に向けて延びている。本体支持部52は、ケース40の内部空間をZ方向に分割するように仕切っている。ケース40の内部空間のうち、本体支持部52と上カバー48との間の空間が上側空間40aであり、本体支持部52と下カバー49との間の空間が下側空間40bである。これら空間40a,40bは、いずれもZ方向に直交する方向に延びた扁平状の空間である。なお、上側空間40aが第1空間に相当し、下側空間40bが第2空間に相当する。
【0035】
図2、
図4に示すように、ケース40の下側空間40bには、半導体モジュール15、コンデンサユニット16、電流センサユニット17及び熱交換部21が収容されている。これら半導体モジュール15、コンデンサユニット16、電流センサユニット17及び熱交換部21は、Z方向に直交する方向に横並びに設けられている。例えば、半導体モジュール15と熱交換部21とは、X方向が積層方向になる向きで本体支持部52の下面に沿って並べられている。導入管部22及び排出管部23は、下側空間40bにおいていずれも本体支持部52の下面に沿ってX方向に延びており、本体外壁部51を貫通してケース外部に延びている。導入管部22及び排出管部23のそれぞれにおいて、熱交換部21と交互に並べられた接続管は、熱交換部21と共に下側空間40bに収容されている。熱交換部21は、下側空間40bに設けられていることで、自身の内部を流れる冷媒と自身の外部にある下側空間40bの空気との熱交換を行う。
【0036】
図2、
図3に示すように、ケース40の上側空間40aには制御基板30が収容されている。制御基板30は、上カバー48や本体支持部52と同様にZ方向に直交する方向に延びており、ケース本体45に固定されている。制御基板30は、平面視で上開口部45aよりも小さくなっており、本体外壁部51からケース内側に離間した位置に配置されている。制御基板30は、上開口部45aからケース本体45の内部に入り込んだ位置にある。具体的には、制御基板30は、Z方向においてケース本体45の上開口部45aと下開口部45bとの間にある。
【0037】
制御基板30は表面30a及び裏面30bを有している。表面30aと裏面30bとは一対の板面であり、X方向に直交する方向に延びている。表面30aは上カバー48に対向しており、裏面30bは本体支持部52に対向している。
【0038】
制御基板30は、本体支持部52の上に載せられた状態になっており、複数の締結ネジ35により本体支持部52に固定されている。締結ネジ35は、制御基板30をケース本体45にネジ止めするネジ部材である。締結ネジ35は、電力変換装置10を構成する部品の1つであり、金属材料により形成されている。締結ネジ35は、上カバー48側から制御基板30を貫通した状態で本体支持部52にネジ止めされており、制御基板30をケース本体45のうち本体支持部52に固定している。締結ネジ35は導電性を有しており、ネジ止めによってケース本体45に接触していることでケース本体45に電気的にアースされている。このように締結ネジ35がアースされていることで、制御回路などのノイズが締結ネジ35から放出されやすくなるため、電力変換装置10の耐ノイズ性を向上させることができる。
【0039】
締結ネジ35は、制御基板30の外周端に近い位置や、制御基板30の中央寄りの位置に配置されている。このため、制御基板30の外周端に近い部位や中央寄りの部位がZ方向に凹んだり膨らんだりするように制御基板30が変形する、ということが生じにくくなっている。上述したように、本体支持部52と制御基板30とが互いに対向した状態でZ方向に並べられているため、締結ネジ35の設置位置に関する自由度が高くなっている。したがって、制御基板30の変形が生じにくくなるような位置に締結ネジ35を配置することが可能になっている。
【0040】
図7に示すように、締結ネジ35は、ネジ頭部36及びネジ軸部37を有している。ネジ頭部36は、制御基板30の表面30aに引っ掛かった状態になっており、制御基板30の表面30aから上カバー48に向けて突出している。ネジ軸部37は、ネジ頭部36から延びて制御基板30を貫通している。ネジ軸部37には雄ネジ部が形成されている。雄ネジ部は、ネジ軸部37の先端部からネジ頭部36に向けて延びている。
【0041】
ネジ頭部36と表面30aとの間にはワッシャ38が設けられている。ワッシャ38は、座金であり、ネジ頭部36と制御基板30との間に挟み込まれた状態になっている。ワッシャ38は、ネジ頭部36と共に表面30aから上カバー48に向けて突出している。Z方向において、表面30aからのネジ頭部36の突出寸法H1は、ネジ頭部36の頂部と表面30aとの離間距離になっている。この突出寸法H1は、Z方向においてネジ頭部36の厚さ寸法とワッシャ38の厚さ寸法との和になっている。なお、締結ネジ35及びワッシャ38が固定部材を構成し、ネジ頭部36及びワッシャ38が固定突出部を構成している。
【0042】
ネジ頭部36は上カバー48から制御基板30側に離間している。締結ネジ35が設置された位置では、ネジ頭部36の突出寸法H1が、Z方向での制御基板30と上カバー48との離間距離よりも小さくなっている。
【0043】
本体支持部52は、ベース部53、受け部54、ネジ孔55及びベース開口56を有している。ベース部53は、全体として板状に形成されており、Z方向に直交する方向に延びた状態で上側空間40aと下側空間40bとを仕切っている。ベース部53の外周端は、Z方向において上開口部45aと下開口部45bとの間において本体外壁部51の内壁面に接続されている。ベース部53と本体外壁部51との接続部分は、Z方向において下開口部45bよりも上開口部45aに近い位置に配置されている。なお、ベース部53が仕切部に相当する。
【0044】
ベース部53と上カバー48との間に制御基板30が設置されている。制御基板30においては、表面30aが上カバー48に対向し、裏面30bがベース部53に対向している。制御基板30は、上カバー48及びベース部53のそれぞれに沿って延びた状態になっている。
【0045】
受け部54は、ベース部53から上カバー48に向けて突出した突出部である。受け部54は複数設けられている。複数の受け部54は、ベース部53の厚さ方向であるZ方向に直交する方向に複数並べられている。受け部54は、制御基板30を裏面30b側から支持している。制御基板30は、受け部54の先端部に載せられており、ベース部53から上カバー48側に離間した位置に配置されている。Z方向において制御基板30とベース部53との離間距離H4は、ベース部53からの受け部54の突出寸法になっている。
【0046】
ネジ孔55には、締結ネジ35のネジ軸部37がねじ込まれている。ネジ孔55は、受け部54に設けられており、受け部54の先端面からベース部53に向けて延びている。ネジ孔55は、締結ネジ35が固定された被固定部である。本実施形態では、1つの受け部54に1つのネジ孔55が設けられている。ただし、1つの受け部54に複数のネジ孔55が設けられていてもよい。また、本実施形態では、ネジ孔55が受け部54をZ方向に貫通しておらず、ベース部53に達していない。ただし、ネジ孔55は受け部54をZ方向に貫通してベース部53に達していてもよい。
【0047】
ベース開口56は、ベース部53に設けられた貫通孔や開口部であり、ベース部53をZ方向に貫通している。ベース開口56は、ベース部53に複数設けられている。なお、ベース開口56が仕切孔に相当する。
【0048】
制御基板30には、表部品31a及び裏部品32a,32bが実装されている。これら部品31a,32a,32bは、基板配線などと共に制御回路を構成する電子部品や電気部品である。
【0049】
表部品31aは、制御基板30の表面30aに複数実装されている。表部品31aとしては、例えば磁気カプラやASIC(Application-Specific Integ rated Circuit)などの電子部品がある。表部品31aは、ネジ頭部36よりも背が低い低背部品であり、表部品31aを低背表部品と称することもできる。Z方向において、表面30aからの表部品31aの突出寸法H2は、ネジ頭部36の突出寸法H1よりも小さくなっている。複数の表部品31aについてはそれぞれの突出寸法H2が同じであるとは限らないが、ネジ頭部36の突出寸法H1は、複数の表部品31aのいずれの突出寸法H2よりも大きい。表面30aにおいては、ネジ頭部36が複数の表部品31aのいずれよりも上カバー48側に向けて突出した状態になっている。
【0050】
裏部品32a,32bは、制御基板30の裏面30bに複数ずつ実装されている。裏部品32a,32bのうち、低背裏部品32aは、ネジ頭部36よりも背が低い低背部品である。Z方向において、裏面30bからの低背裏部品32aの突出寸法H3aは、ネジ頭部36の突出寸法H1よりも小さくなっている。低背裏部品32aとしては、例えばスイッチング素子等の電子部品がある。複数の低背裏部品32aについてはそれぞれの突出寸法H3aが同じであるとは限らないが、ネジ頭部36の突出寸法H1は、複数の低背裏部品32aのいずれの突出寸法H3aよりも大きい。
【0051】
裏部品32a,32bのうち高背裏部品32bは、ネジ頭部36よりも背が高い高背部品である。Z方向において、裏面30bからの高背裏部品32bの突出寸法H3bは、ネジ頭部36の突出寸法H1よりも大きくなっている。高背裏部品32bとしては、例えばトランスやコンデンサ、リアクトルなどの電子部品や、コネクタなどの電気部品がある。コネクタとしては、例えば制御回路を半導体モジュール15に接続するための接続端子があり、コネクタにはハーネス等の接続ケーブルが接続されている。複数の高背裏部品32bについてはそれぞれの突出寸法H3bが同じであるとは限らないが、ネジ頭部36の突出寸法H1は、複数の高背裏部品32bのいずれの突出寸法H3bよりも小さい。本実施形態では、ネジ頭部36と背の高さが同じ部品を高背部品として扱う。
【0052】
高背裏部品32bの突出寸法H3bが制御基板30とベース部53との離間距離H4よりも大きい場合、この高背裏部品32bは、Z方向においてベース開口56に重なる位置に配置されている。この構成では、高背裏部品32bがベース開口56に入り込んだ状態になっており、高背裏部品32bとベース部53とが接触しないようになっている。
【0053】
制御基板30については、表面30aが第1実装面に相当し、裏面30bが第2実装面に相当する。表面30aに実装された表部品31aが第1実装部品に相当し、裏面30bに実装された高背裏部品32bが第2実装部品に相当する。また、制御基板30が基板に相当する。
【0054】
なお、制御基板30に実装された部品のうち、表面30aから突出した部位及び裏面30bから突出した部位の両方を有している部品については、表部品31a及び裏部品32a,32bのそれぞれとして扱う。例えば、この部品を表部品31aとして扱う場合には、この部品の実装面が表面30aであるとし、この部品を裏部品32a,32bとして扱う場合には、この部品の実装面が裏面30bであるとする。
【0055】
表面30aについて、複数の締結ネジ35には、1つの表部品31aの周囲に設けられた締結ネジ35が含まれている。また、この締結ネジ35は、1つの表部品31aよりもケース内側に設けられている。
【0056】
例えば、
図8に示すように、締結ネジ35の一例として示す締結ネジ35Aは、表部品31aの一例として示す表部品31aXの周囲に設けられている。本体外壁部51において表部品31aXにとっても最も近い部位を周辺壁部51Xと称すると、表部品31aXは、周辺壁部51Xと締結ネジ35Aとの間において締結ネジ35A寄りの位置に設けられている。この場合、締結ネジ35Aと表部品31aXとの離間距離L1は、表部品31aXと周辺壁部51Xとの離間距離L2よりも小さくなっている。
【0057】
また、締結ネジ35Aは、表部品31aXよりもケース内側に設けられている。この場合、締結ネジ35Aは、表部品31aXよりも本体外壁部51から離間した位置にある。例えば、本体外壁部51において締結ネジ35Aに最も近い部位と締結ネジ35Aとの離間距離L3は、周辺壁部51Xと表部品31aXとの離間距離L2よりも大きくなっている。
【0058】
裏面30bについて、複数の締結ネジ35には、1つの高背裏部品32bの周囲に設けられた締結ネジ35が含まれている。例えば、
図8に示すように、締結ネジ35の一例として示す締結ネジ35Aは、高背裏部品32bの一例として示す高背裏部品32bYの周囲に設けられている。本体外壁部51において高背裏部品32bYにとって最も近い部位を周辺壁部51Yと称すると、高背裏部品32bYは、周辺壁部51Yと締結ネジ35Aとの間において締結ネジ35A寄りの位置に設けられている。この場合、締結ネジ35Aと高背裏部品32bYとの離間距離L4は、高背裏部品32bYと周辺壁部51Yとの離間距離L5よりも小さくなっている。
【0059】
なお、
図8には、表部品31aXの周囲に設けられた締結ネジ35と、高背裏部品32bYの周囲に設けられた締結ネジ35とが1つの締結ネジ35Aである例を示した。なお、表部品31aXの周囲に設けられた締結ネジ35と、高背裏部品32bYの周囲に設けられた締結ネジ35とが異なる締結ネジ35であってもよい。
【0060】
次に、電力変換装置10の製造方法について説明する。
【0061】
ケース本体45やカバー48,49を製造した後、表部品31aや裏部品32a,32bを実装した状態の制御基板30をケース本体45の内部に設置する。ここでは、ケース本体45の内部において、制御基板30を本体支持部52の上に載せ、締結ネジ35で制御基板30を本体支持部52に固定する。そして、ケース本体45の内部に設置した半導体モジュール15等と制御基板30とを電気的に接続する作業などが完了した後、ケース本体45に上カバー48を取り付ける作業を行う。この作業を行う際には、ケース本体45の内部では、締結ネジ35のネジ頭部36が表部品31aのいずれよりも制御基板30の表面30aから突出した状態になっている。このため、仮に作業者が上カバー48を上開口部45aからケース本体45の内部に入り込ませてしまったとしても、上カバー48が表部品31aに比べてネジ頭部36に接触しやすくなっている。したがって、上カバー48の取り付け時に上カバー48が表部品31aに接触するということがネジ頭部36により抑制される。
【0062】
また、ケース本体45に上カバー48を取り付ける前の状態においては、工具が落下などによりケース本体45の内部に入り込むことが懸念される。この場合でも、ネジ頭部36が表部品31aよりも突出していることで、ケース本体45の内部に入り込んだ工具が表部品31aよりもネジ頭部36に接触しやすくなっている。このため、工具が表部品31aに接触するということがネジ頭部36により抑制される。
【0063】
ここまで説明した本実施形態によれば、ネジ頭部36の突出寸法H1が複数の表部品31aのいずれの突出寸法H2よりも大きい。この構成では、例えば上カバー48が制御基板30に接近してきた時に、この上カバー48が表部品31aよりもネジ頭部36に接触しやすくなっている。このため、Z方向において上カバー48が制御基板30に極力近い位置に配置されるように上カバー48の形状や位置を設定したとしても、上カバー48が表部品31aに接触することをネジ頭部36により規制できる。このように、上カバー48が表部品31aに接触しにくい構成を実現することで、上側空間40aやケース40をZ方向に薄型化することが可能になり、その結果、ケース40の小型化を実現できる。
【0064】
ケース40をZ方向に薄型化する構成としては、Z方向において上カバー48の厚さ寸法を小さくした構成が考えられる。上カバー48の厚さ寸法を小さくした構成としては、Z方向において上カバー48の膨らみを小さくした構成や、上カバー48を補強するためのリブなどをZ方向に小さくした構成、上カバー48を形成する板材自体の厚さ寸法を小さくする構成などがある。
【0065】
電力変換装置10の完成後に上カバー48が制御基板30に接近してくる状況が生じる場合としては、上カバー48の中央部分や中央寄り部分が自重で制御基板30に向けて凹むように上カバー48が変形する場合がある。また、上カバー48の上に工具などの部材が落下してきた時に、この部材からの外力により上カバー48の一部が制御基板30に接近する場合がある。さらに、車両が走行時などに他の車両などと衝突した時に、この衝突による車両変形に伴って上カバー48の一部が制御基板30に接近する場合がある。
【0066】
しかも、表部品31aへの上カバー48の接触を規制するために締結ネジ35を利用している。これは、制御基板30を支持するために必要なケース本体45の強度や、制御基板30を固定するために必要な締結ネジ35の強度を、上カバー48が制御基板30に接近してきた時に上カバー48を支える強度として利用できる。したがって、上カバー48を支える強度が不足して上カバー48が表部品31aするということをケース本体45や締結ネジ35により抑制できる。例えば、制御基板30に接近してきた上カバー48を支えるために専用部品を設けた構成では、専用部品の強度不足により専用部品が上カバー48を支えきれずに変形して上カバー48が表部品31aに接触する、ということが懸念される。
【0067】
ケース本体45の上開口部45aを上カバー48が覆った構成では、上ネジ48aが上カバー48の外周端に沿って並べられていることなどに起因して、上カバー48の中央部分や中央寄り部分が変形しやすいと考えられる。これに対して、本実施形態によれば、本体支持部52において、締結ネジ35がねじ込まれたネジ孔55が本体外壁部51から離間した位置に配置されている。このため、上カバー48のうち変形しやすい中央部分や中央寄り部分にZ方向に重なる位置に締結ネジ35を配置することが可能になる。これにより、上カバー48の中央部分や中央寄り部分が表部品31aに接触することをネジ頭部36により規制する効果を高めることができる。
【0068】
また、上カバー48の中央部分や中央寄り部分が変形しやすいということは、Z方向に直交する方向において上カバー48のうち本体外壁部51から遠い部分ほど変形しやすいとも考えられる。これに対して、本実施形態によれば、
図8に示すように、1つの締結ネジ35Aが1つの表部品31aXよりも本体外壁部51から離間した位置に設けられている。このため、上カバー48において本体外壁部51から遠い部分に重なる位置に締結ネジ35Aを配置することが可能になる。したがって、上カバー48において本体外壁部51から遠い部分が表部品31aXに接触することを締結ネジ35Aにより規制する効果を高めることができる。
【0069】
本実施形態によれば、ネジ頭部36よりも背の高い高背部品は高背裏部品32bとして制御基板30の裏面30bに実装されている。このため、例えば高背部品よりも背の高い専用部品を表面30aに設けることや、高背部品よりも背の高いネジ頭部を有する専用のネジ部材を使って制御基板30をケース本体45に固定すること、などの必要がない。この場合、締結ネジ35として汎用品のネジ部材を用いても、汎用品のネジ部材の大きさに合わせて高背部品を裏面30bに配置すればよいため、上カバー48を汎用品のネジ部材の大きさに合わせて制御基板30に極力接近させた位置に配置できる。
【0070】
例えば車両走行時などにおいて、ネジ頭部36よりも背の高い高背部品は、ネジ頭部36よりも背の低い低背部品に比べて振動が生じやすいと考えられる。これに対して、本実施形態によれば、
図8に示すように、1つの締結ネジ35Aが本体外壁部51よりも1つの高背裏部品32bYに近い位置に設けられている。このように、高背裏部品32bに極力近い位置に締結ネジ35Aを配置することで、高背裏部品32bに振動が生じることを締結ネジ35Aの固定強度により抑制できる。つまり、高背裏部品32bの耐振性を向上させることができる。これにより、振動による高背裏部品32bの異常や動作精度低下が発生しにくい構成を締結ネジ35により実現できる。
【0071】
本実施形態によれば、本体支持部52のベース部53にベース開口56が設けられている。このため、高背裏部品32bの突出寸法H3bが、制御基板30とベース部53との離間距離H4より大きくても、高背裏部品32bをベース開口56に入り込む位置に配置することで、高背裏部品32bを裏面30bに実装することができる。換言すれば、制御基板30とベース部53との離間距離H4が高背裏部品32bの突出寸法H3bより小さくなるほどに、Z方向において制御基板30をベース部53に近い位置に配置することができる。このように、制御基板30をベース部53に極力近い位置に配置することで上側空間40aを薄型化でき、その結果、ケース40を薄型化することができる。
【0072】
しかも、下側空間40bには熱交換部21が設けられている。この構成では、高背裏部品32bがベース開口56を通じて下側空間40bに入り込んだ状態になっていることで、熱交換部21の冷却効果が高背裏部品32bに付与されやすくなっている。つまり、熱交換部21により高背裏部品32bを冷却することができる。このため、高背裏部品32bが駆動に伴って熱を発生する発熱部品だったとしても、高背裏部品32bの温度が上昇することを熱交換部21により抑制できる。
【0073】
本実施形態によれば、制御基板30の表面30aにおいて、複数の表部品31aのいずれよりも突出した部品として、締結ネジ35のネジ頭部36を用いている。この構成では、表面30aからのネジ頭部36の突出寸法H1が締結ネジ35ごとにばらつくということが生じにくくなっている。特に、締結ネジ35として汎用品のネジ部材を用いることで、ネジ頭部36の突出寸法H1を均一化しやすくなる。したがって、表面30aに実装した部品がネジ頭部36よりも意図せずに突出しているという状況が発生しにくい構成を実現できる。
【0074】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、制御基板30がケース本体45の内側に設けられていたが、第2実施形態では、制御基板30がケース本体45の外側に設けられている。本実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については第1実施形態と同様である。本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0075】
図9に示すように、上カバー48がケース本体45から離間する向きに膨らんだ形状になっている。ケース40の上側空間40aは、上カバー48の内側空間とケース本体45の内側空間により形成されている。本実施形態では、制御基板30が上側空間40aに収容されていることは上記第1実施形態と同じであるが、上記第1実施形態とは異なり、制御基板30がケース本体45において上開口部45aよりも外側に設けられている。この構成では、本体支持部52の受け部54が上開口部45aよりも外側に突出しており、この受け部54に制御基板30が載せられた状態になっている。この構成でも、Z方向において上カバー48が制御基板30に接近してきた場合に、上カバー48が表部品31aに接触することをネジ頭部36により抑制できる。
【0076】
なお、ケース40は、ケース本体45と上カバー48とを組み付けることで形成されていればよい。例えば、Z方向においてケース本体45の高さ寸法が上カバー48の高さ寸法より大きくなっていてもよく、大きくなっていなくてもよい。また、ケース40が下カバー49を有していなくてもよい。例えば、ケース本体45が、ケース40の下面42を形成する下面部を有していてもよい。
【0077】
<他の実施形態>
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0078】
制御基板30においては、裏面30bに低背裏部品32aや高背裏部品32bが実装されていなくてもよい。表面30a及び裏面30bのうち、少なくとも表面30aに表部品31aされていればよい。
【0079】
本体支持部52は、本体外壁部51から延びていれば、ケース40の内部空間を上側空間40aと下側空間40bとに仕切る形状になっていなくてもよい。例えば、本体支持部52は本体外壁部51により片持ち支持された形状になっていてもよい。また、本体支持部52は、本体外壁部51により四方が支持されているのではなく、隣り合う二方や互いに対向する二方が本体外壁部51により支持されていてもよい。
【0080】
本体支持部52において、受け部54はベース部53から上カバー48に向けて突出していなくてもよい。例えば、制御基板30がベース部53に重ねて設置されていてもよい。この構成でも、ベース部53にベース開口56が形成されていれば、制御基板30の裏面30bに裏部品32a,32bを実装できる。
【0081】
締結ネジ35に対してワッシャ38が設けられていなくてもよい。この場合、締結ネジ35が固定部材に相当し、ネジ頭部36が固定突出部に相当することになる。また、表面30aからのネジ頭部36の突出寸法H2は、ネジ頭部36の厚さ寸法と同じになる。
【0082】
固定部材は、締結ネジ35等のネジ部材でなくてもよい。例えば、ボルト部材により固定部材が構成されていてもよい。この構成では、固定突出部がボルト頭部ではなくナットやボルト軸部により形成されていてもよい。また、例えば、ネジ部分を有していない部材により固定部材が構成されていてもよい。この構成としては、本体支持部52に設けられた被固定部が凹部であり、固定部材の一部が制御基板30を貫通した状態で凹部に嵌合している、という構成がある。
【0083】
冷却器20は、半導体モジュール15を片側面において冷却する構成でもよい。冷却器20は、半導体モジュール15に接触する構成だけでなく、他の部材を介して半導体モジュール15に熱的に接触する構成でもよい。
【0084】
冷却器20は、ケース40の内部を冷却する構成であればよい。例えば、熱交換部21が半導体モジュール15よりもコンデンサユニット16や高背裏部品32bに近い位置に設けられていてもよい。
【0085】
ケース40は、樹脂材料など金属材料ではない材料により形成されていてもよい。ケース40が金属で形成されていない構成では、ケース40が、磁気をシールドする機能を持つ金属製のシールド層を有していることが好ましい。
【0086】
電力変換装置10が車両に搭載された状態では、この電力変換装置10は必ずしも上面41が上方を向いていなくてもよい。例えば、外壁面43の一部や下面42が上方を向いた向きで電力変換装置10が車両に搭載されていてもよい。
【0087】
電力変換装置10が搭載された車両としては、乗用車やバス、建設作業車、農業機械車両などがある。また、電力変換装置10は、電車や飛行機などに搭載されていてもよい。電力変換装置10としては、インバータ装置やコンバータ装置などがある。このコンバータ装置としては、交流入力直流出力の電源装置、直流入力直流出力の電源装置、交流入力交流出力の電源装置などがある。
【符号の説明】
【0088】
10…電力変換装置、21…熱交換部、30…基板としての制御基板、30a…実装面及び第1実装面としての表面、30b…第2実装面としての裏面、31a,31aX…実装部品及び第1実装部品としての表部品、32b,32bY…第2実装部品としての裏部品、35,35A…固定部材を構成する締結ネジ、36…固定突出部を構成するネジ頭部、38…固定部材及び固定突出部を構成するワッシャ、40…ケース、40a…第1空間としての上側空間、40b…第2空間としての下側空間、43…外壁面、45…ケース本体、45a…開口部としての上開口部、48…カバー体としての上カバー、51…外壁部としての本体外壁部、52…本体支持部、53…仕切部としてのベース部、55…被固定部としてのネジ孔、56…仕切孔としてのベース開口、H1,H2,H3b…突出寸法。