(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】画像データの生成方法、表示体の製造方法、プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体及び表示体の製造装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/52 20060101AFI20231226BHJP
H04N 1/405 20060101ALI20231226BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20231226BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20231226BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20231226BHJP
B42D 25/40 20140101ALI20231226BHJP
【FI】
H04N1/52
H04N1/405 510A
G06T1/00 340A
G06T1/00 510
B41J2/525
B42D25/328
B42D25/40 100
(21)【出願番号】P 2020558304
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2019044315
(87)【国際公開番号】W WO2020110703
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2018221490
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】久保田 正志
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-038523(JP,A)
【文献】特開2001-157041(JP,A)
【文献】特開平10-155093(JP,A)
【文献】特開2011-121276(JP,A)
【文献】特開2017-060015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0245927(US,A1)
【文献】国際公開第2017/146199(WO,A1)
【文献】特開2017-184197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46-62
H04N 1/405
G06T 1/00
B41J 2/525
B42D 25/328
B42D 25/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の色で表現されるカラー画像のデータとして、階調値を各色について画素毎に有する第1画像データを取得することと、
前記第1画像データに基づいて、二値化された階調値を各色について画素毎に有する第2画像データを生成することと、
を備え、
前記第2画像データを生成することは、
前記第1画像データを構成する複数の画素から第1画素を選択することと、
前記第1画素の階調値を第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値の少なくとも何れか一方と比較することと、
前記第1画素の階調値が前記第1閾値よりも大きいことを示す比較結果に応じて第1二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化し、前記第1画素の階調値が前記第2閾値よりも小さいことを示す比較結果に応じて前記第1二値化処理とは異なる第2二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化し、前記第1画素の階調値が前記第1閾値以下かつ前記第2閾値以上であることを示す比較結果に応じて前記第1二値化処理及び前記第2二値化処理とは異なる第3二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化することと、
を含む、
画像データの生成方法。
【請求項2】
前記第1二値化処理は、前記第1画素の階調値を前記第1閾値よりも大きい第1階調値に設定することを含み、
前記第2二値化処理は、前記第1画素の階調値を前記第2閾値よりも小さい第2階調値に設定すること、及び、前記第1画素の階調値に相当する値を前記第1画素とは異なる1以上の第2画素に分配することを含み、
前記第3二値化処理は、前記第1画素とは異なる1以上の第3画素の階調値から所定値を差し引き、前記第1画素の階調値に前記所定値を加える調整処理を実行することと、前記調整処理後の前記第1画素の階調値を前記第1閾値と比較することと、前記調整処理後の前記第1画素の階調値が前記第1閾値を超えることを示す比較結果に応じて前記第1画素の階調値を前記第1階調値に設定することと、前記調整処理後の前記第1画素の階調値が前記第1閾値以下であることを示す比較結果に応じて前記第1画素の階調値を前記第2階調値に設定することを含む、
請求項1に記載の画像データの生成方法。
【請求項3】
前記第1画素を選択することは、前記第1画像データの上端のラインから下端のラインまで一ライン毎に、横方向に1画素ずつ順番に前記第1画素を選択することを含み、
前記第2二値化処理は、前記第1画像データを構成する前記複数の画素のうち前記第1階調値または前記第2階調値の設定により二値化された画素以外の画素から前記第2画素を選択することを含み、
前記第3二値化処理は、前記第1画像データを構成する前記複数の画素のうち前記第1階調値または前記第2階調値の設定により二値化された画素以外の画素から前記第3画素を選択することを含む、
請求項2に記載の画像データの生成方法。
【請求項4】
前記所定値は、前記第3画素の階調値が前記第1閾値以下である場合は0であり、前記第3画素の階調値が前記第1閾値よりも大きい場合は前記第3画素の階調値から前記第1閾値を差し引いた値よりも小さい正の値である、請求項2乃至3の何れか1項に記載の画像データの生成方法。
【請求項5】
前記第2画像データを生成する前に、各色について前記第2画像データの生成に用いる前記第1閾値の大きさ及び前記第2閾値の大きさを設定することをさらに備える請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像データの生成方法。
【請求項6】
前記第2画像データの生成に用いる前記第1閾値の大きさ及び前記第2閾値の大きさを設定することは、
前記第1画像データの一部に相当する第3画像データを取得することと、
前記第1閾値の大きさ及び前記第2閾値の大きさの組み合わせ毎に、前記第3画像データを構成する各画素の階調値を前記第1二値化処理、前記第2二値化処理及び前記第3二値化処理のうちの何れかにより二値化し、二値化された階調値を画素毎に有する第4画像データを生成することと、
前記第3画像データと前記第4画像データの画素毎の差分に基づく合計値が最も小さくなる前記第1閾値の大きさ及び前記第2閾値の大きさの組み合わせに基づいて、前記第2画像データの生成に用いる前記第1閾値の大きさ及び前記第2閾値の大きさを設定することと、
を備える請求項5に記載の画像データの生成方法。
【請求項7】
前記第1画像データは、顔画像のデータを含み、
前記第3画像データは、前記顔画像のデータの少なくとも一部を含む、
請求項6に記載の画像データの生成方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像データの生成方法によって得られた前記第2画像データに基づいて、回折構造を各々が含み、互いに異なる色を表示する2種以上の表示要素を、被転写材上へ転写することを含む表示体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法によって得られる表示体。
【請求項10】
2以上の色で表現されるカラー画像のデータとして、階調値を各色について画素毎に有する第1画像データを取得するステップと、
前記第1画像データに基づいて、二値化された階調値を各色について画素毎に有する第2画像データを生成するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記第2画像データを生成するステップは、
前記第1画像データを構成する複数の画素から第1画素を選択するステップと、
前記第1画素の階調値を第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値の少なくとも何れか一方と比較するステップと、
前記第1画素の階調値が前記第1閾値よりも大きいことを示す比較結果に応じて第1二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化し、前記第1画素の階調値が前記第2閾値よりも小さいことを示す比較結果に応じて前記第1二値化処理とは異なる第2二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化し、前記第1画素の階調値が前記第1閾値以下かつ前記第2閾値以上であることを示す比較結果に応じて前記第1二値化処理及び前記第2二値化処理とは異なる第3二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化するステップと、
を含む、
プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項12】
請求項10に記載のプログラムが読み込まれたコンピュータと、
前記第2画像データに基づいて、回折構造を各々が含み、互いに異なる色を表示する2種以上の表示要素を、被転写材上へ転写する転写装置とを備える表示体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データの生成方法、表示体の製造方法、プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体及び表示体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写による画像の記録は、例えば、ラスタ形式の画像データを用いたオンデマンドでの表示体の製造に利用可能である。熱転写によって画像を記録する方式としては、例えば、溶融型熱転写記録方式及び昇華型熱転写記録方式がある(特許文献1及び2)。
【0003】
溶融型熱転写記録方式では、基材と、これに剥離可能に支持された転写材層とを含み、この転写材層が最表面に接着層を有する転写箔を使用する。そして、この転写箔を、接着層が被転写材と接するように被転写材へ押し当てた状態で加熱し、次いで、基材を被転写材から引き離す。このようにして、転写材層のうち上記加熱を行った部分(以下、表示要素という)を、基材から被転写材へと転写する。
【0004】
転写材層には、多層構造を採用することができる。この場合、転写材層には、例えば、回折格子を設けることができる。回折格子は、格子定数や溝の長さ方向を適宜設計することにより、特定の照明及び観察条件下で、赤色、緑色、及び青色などの様々な色を表示することができる。従って、転写材層が回折格子を含んだ転写箔を使用すると、例えば、回折光でカラー画像を表示する表示体を得ることができる。
【0005】
回折格子でカラー画像を形成する場合は溶融型転写記録方式である必要がある。溶融型転写材は被転写材に転写した場合、表面は剥離性の高い材料がくることになる。表現したいカラー表現によっては転写材を重ねて転写する必要が出てくることがある。しかし転写した転写材表面は剥離性が高いため、小さな面積の転写材を転写することは困難である。従って回折格子によるカラー画像の形成では、なるべく大きなドットによる画像構成、つまり二値画像であることが好ましい。
【0006】
上述のようにホログラム画像として表示体に記録されるカラー画像は、二値画像であることが好ましい。ホログラム画像は、セキュリティ画像であるので、なるべく元画像に近い画像である必要がある。多値画像から二値画像への変換処理は、種々の方法が存在する(特許文献3)。また、二値画像の作成には、誤差拡散法が最もよく用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2011-230473号公報
【文献】日本国特開2014-8746号公報
【文献】日本国特開2004-304543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
誤差拡散法では、一般に、誤差の拡散方向は、画像の左上から右下へ向かう。右下の画素は、左上の画素と比較して、掃き出す誤差の量に対する引き受ける誤差の量の比がより大きい。そのため、画像の情報は、画像の左上から右下方向に向かって溜まるので、画像の左上部と右下部では、情報量に差が出る。情報量が画像の位置によって異なるので、二値化処理後の画像における元画像の再現性は、画像の位置によって異なる。三値以上の階調で誤差を拡散すればある程度はこのような情報量の差を緩和できるが、上述のようにホログラム画像用の画像では二値画像である必要があるため、二値のままでこのような情報量の差を緩和する必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、二値化処理後の画像において元画像の再現性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面によると、2以上の色で表現されるカラー画像のデータとして、階調値を各色について画素毎に有する第1画像データを取得することと、前記第1画像データに基づいて、二値化された階調値を各色について画素毎に有する第2画像データを生成することと、を備え、前記第2画像データを生成することは、前記第1画像データを構成する複数の画素から第1画素を選択することと、前記第1画素の階調値を第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値の少なくとも何れか一方と比較することと、前記第1画素の階調値が前記第1閾値よりも大きいことを示す比較結果に応じて第1二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化し、前記第1画素の階調値が前記第2閾値よりも小さいことを示す比較結果に応じて前記第1二値化処理とは異なる第2二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化し、前記第1画素の階調値が前記第1閾値以下かつ前記第2閾値以上であることを示す比較結果に応じて前記第1二値化処理及び前記第2二値化処理とは異なる第3二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化することと、を含む、画像データの生成方法が提供される。
【0011】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る画像データの生成方法によって得られた前記第2画像データに基づいて、回折構造を各々が含み、互いに異なる色を表示する2種以上の表示要素を、被転写材上へ転写することを含む表示体の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の第3側面によると、第2側面に係る製造方法によって得られる表示体が提供される。
【0013】
本発明の第4側面によると、2以上の色で表現されるカラー画像のデータとして、階調値を各色について画素毎に有する第1画像データを取得するステップと、前記第1画像データに基づいて、二値化された階調値を各色について画素毎に有する第2画像データを生成するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記第2画像データを生成するステップは、前記第1画像データを構成する複数の画素から第1画素を選択するステップと、前記第1画素の階調値を第1閾値及び前記第1閾値よりも小さい第2閾値の少なくとも何れか一方と比較するステップと、前記第1画素の階調値が前記第1閾値よりも大きいことを示す比較結果に応じて第1二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化し、前記第1画素の階調値が前記第2閾値よりも小さいことを示す比較結果に応じて前記第1二値化処理とは異なる第2二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化し、前記第1画素の階調値が前記第1閾値以下かつ前記第2閾値以上であることを示す比較結果に応じて前記第1二値化処理及び前記第2二値化処理とは異なる第3二値化処理により前記第1画素の階調値を二値化するステップと、を含む、プログラムが提供される。
【0014】
本発明の第5側面によると、第4側面に係るプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0015】
本発明の第6側面によると、第4側面に係るプログラムが読み込まれたコンピュータと、前記第2画像データに基づいて、回折構造を各々が含み、互いに異なる色を表示する2種以上の表示要素を、被転写材上へ転写する転写装置とを備えた表示体の製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、二値化処理後の画像において元画像の再現性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る表示体を概略的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の表示体の一部を拡大して示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の表示体のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、
図1乃至
図3の表示体が含んでいる表示要素に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1乃至
図3に示す表示体の製造に使用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る表示体の製造装置を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す製造装置の一部を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る画像データの生成方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る第1画像データに基づく第2画像データの生成方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係る第2二値化処理の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係る第3二値化処理の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係る第1閾値の大きさ及び第2閾値の大きさの設定方法を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施例で用いた画像データを示す図である。
【
図14】
図14は、実施例における第1閾値の大きさ毎の2値画像と元画像の差分合計の関係を示す表である。
【
図15】
図15は、実施例における第1閾値の大きさ毎の2値画像と元画像の差分合計の関係を示すグラフである。
【
図16】
図16は、実施例における第2閾値の大きさ毎の2値画像と元画像の差分合計の関係を示す表である。
【
図17】
図17は、実施例における第2閾値の大きさ毎の2値画像と元画像の差分合計の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る表示体を概略的に示す平面図である。
図2は、
図1の表示体の一部を拡大して示す平面図である。
図3は、
図2の表示体のIII-III線に沿った断面図である。
図4は、
図1乃至
図3の表示体が含んでいる表示要素に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。なお、X方向は表示体1の表示面に平行な方向であり、Y方向は表示体1の表示面に平行であり且つX方向に垂直な方向であり、Z方向はX方向及びY方向に垂直な方向である。
【0020】
図1乃至
図3に示す表示体1は、ID(identification)カードである。表示体1は、社員証、学生証又は免許証であってもよい。また、表示体1について説明する構成は、パスポートや、紙幣などの有価証券にも適用可能である。
【0021】
表示体1は、
図3に示すように、支持体11と、表示要素12R、12G、及び12Bと、図示しない印刷層と、樹脂層13と、保護層14とを含んでいる。
【0022】
支持体11は、被転写材である。支持体11としては、例えば、プラスチック板、紙、又はそれらの組み合わせを使用することができる。支持体11の表面には、熱転写を補助するための受像層を設けてもよい。また、支持体11は、IC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0023】
支持体11には、
図1に示すように、画像I1と画像I2と画像I3とが記録されている。
画像I1は、回折光によって表示される画像である。
支持体11上であって、画像I1が記録された領域では、
図2に示す画素PXがマトリクス状に配列している。ここでは、一例として、画素PXは、X方向及びY方向に配列しているとする。
【0024】
画素PXには、表示要素12R、12G、及び12Bの1種以上を含んでいるものと、表示要素12R、12G、及び12Bの何れも含んでいないものとがある。
【0025】
表示要素12R、12G、及び12Bの1種以上を含んでいる画素PXでは、同種の表示要素は1つのみ含んでいる。また、表示要素12R、12G、及び12Bの2種以上を含んでいる画素PXでは、
図3に示すように、それら表示要素は積層されている。ここでは、一例として、表示要素12R、12G、及び12Bは、この順序で、支持体11上に積層されていることとする。
【0026】
表示要素12R、12G、及び12Bは、互いに異なる色を表示するための表示要素である。各画素PXは、配置された表示要素が射出する回折光の加法混色により、様々な色を表示し得る。
【0027】
ここでは、一例として、表示要素12R、12G、及び12Bは、それぞれ、赤色、緑色及び青色を表示するための表示要素であるとする。即ち、ここでは、表示要素12R、12G、及び12Bは、それぞれ、特定の照明及び観察条件下で、観察者へ向けて、赤色、緑色及び青色の回折光を射出することとする。
【0028】
表示要素12Rは、互いに等しい形状及び寸法を有している。表示要素12Gは、互いに等しい形状及び寸法を有している。表示要素12Bは、互いに等しい形状及び寸法を有している。
【0029】
表示要素12R、12G及び、12Bは、等しい形状及び寸法を有している。表示要素12R、12G、及び12Bが等しい形状及び寸法を有している場合、第1画像I1の明るさを損なうことなしに、表示体1の製造において、表示要素12R、12G、及び12Bの転写を安定に行うことができる。ここでは、一例として、表示要素12R、12G、及び12Bは、Z方向から観察した場合に、直径が等しい円形状を有しているとする。なお、表示要素12R、12G、及び12Bは、形状又は寸法が異なっていても構わない。
【0030】
隣り合った画素PXの各々が表示要素12R、12G、及び12Bの1以上を含んでいる場合、
図2に示すように、一方の画素PXが含んでいる表示要素と、他方の画素PXが含んでいる表示要素とは、互いから離間していてもよい。或いは、この場合、一方の画素PXが含んでいる表示要素と、他方の画素PXが含んでいる表示要素とは、互いに接していてもよい。
【0031】
なお、画素PXにおける表示要素12R、12G、及び12Bの2種以上の配置は、
図3に示すように、Z方向に中心位置を揃えた積層に限定されるものではない。画素PXにおける表示要素12R、12G、及び12Bの2種以上は、部分的に重なり合うように、例えば互いに半分重なるように配置されていてもよい。或いは、画素PXにおける表示要素12R、12G、及び12Bの2種以上は、互いに重なり合わないように配置されていてもよい。
【0032】
表示要素12R、12G、及び12Bの各々は、
図3に示すように、レリーフ構造形成層122と、反射層123と、接着層124と、保護層125とを含んでいる。
【0033】
レリーフ構造形成層122は、透明樹脂層である。レリーフ構造形成層122の一方の主面には、レリーフ型の回折構造DGが設けられている。この回折構造DGは、例えば、回折格子又はホログラムである。一例によれば、この回折構造DGは、幅方向に配列した直線状又は円弧状の溝である。回折構造DGは、溝の長さ方向に垂直な断面が、
図3に示すように三角波状であってもよく、
図4に示すように矩形波状であってもよく、正弦波状であってもよい。
【0034】
溝のピッチ、即ち格子定数は、特定の照明及び観察条件下で回折構造DGが表示する色に影響を及ぼす。表示要素12R、12G及び12Bは、回折構造DGの格子定数が異なっている。表示要素12R、12G及び12Bは、回折構造DGが特定の照明及び観察条件下で可視域の光を観察者が知覚するように設計されており、格子定数は数100nm乃至数μmの範囲内にある。
【0035】
溝の深さは、回折構造DGの回折効率に影響を及ぼす。溝の深さは、例えば、数10nm乃至数100nmの範囲内にある。
【0036】
レリーフ構造形成層122は、例えば、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化樹脂またはその両方からなる。熱硬化性樹脂からなるレリーフ構造形成層122は、例えば、熱硬化性樹脂層に版を押し当て、この状態で樹脂層に紫外線を照射し、その後、樹脂層から版を剥がすことにより得ることができる。他方、熱硬化性樹脂からなるレリーフ構造形成層122は、例えば、熱硬化性樹脂層に版を押し当て、この状態で樹脂層を加熱し、その後、樹脂層から版を剥がすことにより得ることができる。
【0037】
反射層123は、レリーフ構造形成層122の回折構造DGが設けられた主面に設けられている。反射層123は、レリーフ構造形成層の回折構造DGに対応した表面形状を有している。反射層123は、回折構造DGの回折効率を高めるために設ける。
【0038】
反射層123は、可視域の光を透過させる透明反射層である。反射層123の材料としては、例えば、硫化亜鉛及びセレン化亜鉛などの透明誘電体を使用することができる。反射層123は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。後者の場合、反射層123として、複数の透明誘電体層を、隣り合ったものの屈折率が互いに異なるように積層してなる多層膜を使用することができる。
【0039】
表示要素12R、12G、及び12Bのうち、積層した場合に観察者から最も遠く位置するものについては、反射層123は透明である必要はない。そのような反射層123としては、例えば、アルミニウム、金及び銀などの単体金属又は合金からなる金属層を使用することができる。
【0040】
反射層123の成膜には、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などの気相堆積法を利用することができる。
【0041】
接着層124は、反射層123上に設けられている。接着層124は、透明樹脂層である。接着層124の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用することができる。接着層124に使用可能な材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル、塩化ビニル、及びポリ酢酸ビニルを挙げることができる。接着性の高い材料は粘性が高いことから、接着層124をそのような材料のみで形成した場合、優れた箔切れ性を達成できない可能性がある。接着層124の材料として、上記の樹脂とフィラー等の微粒子とを含んだ混合物を使用すると、樹脂のみを使用した場合と比較して、より優れた箔切れ性を達成できる。
【0042】
なお、反射層123と接着層124との密着性が不十分であることがある。そのような場合には、それらの密着性を高めるために、反射層123と接着層124との間にアンカーコート層を設けてもよい。
【0043】
保護層125は、レリーフ構造形成層122の主面のうち、回折構造DGが設けられた面とは反対側の面に設けられている。保護層125は、透明樹脂層である。保護層125は、レリーフ構造形成層122などを機械的損傷や薬品等から保護する。また、保護層125は、後述する転写箔の基材との密着性が低いものである場合には、表示要素の転写を容易にする役割も果たす。保護層125の材料としては、例えば、アクリル樹脂又はエポキシ樹脂を使用することができる。これら材料は、上記の密着性を調整するために、ポリエステルを混ぜて使用してもよい。
【0044】
図1に示す画像I2は、染料及び顔料の少なくとも一方によって表示される画像である。この例では、画像I2は、画像I1と形状が等しい。即ち、ここでは、画像I1及び画像I2は、同一人物の顔画像を含んでいる。
【0045】
画像I2は、画像I1とは異なる形状を有していてもよい。また、この例では、画像I2は、画像I1と比較してより大きな寸法を有しているが、それらは同じ寸法を有していてもよく、画像I2は画像I1と比較してより小さな寸法を有していてもよい。画像I2は省略することができる。
【0046】
画像I3は、染料及び顔料の少なくとも一方によって表示される画像である。この例では、画像I3は、画像I1及び画像I2が表示する人物の個人情報等を表す文字列を含んでいる。画像I3は、模様、図形、及び写真などの他の像を更に含んでいてもよい。画像I3は省略することができる。
【0047】
支持体11上であって、画像I2及び画像I3が記録された領域には、染料及び顔料の少なくとも一方を含んだ印刷層が設けられている。この印刷層が、画像I2及び画像I3を表示する。印刷層は、例えば、溶融型熱転写記録方式、昇華型熱転写記録方式、インクジェット記録方式、及びスクリーン印刷などの印刷インキを使用した記録方式の1以上を利用して形成することができる。
【0048】
なお、画像I2の一部は、レーザビーム照射による炭化を利用して記録してもよい。また、画像I3の一部又は全部は、レーザビーム照射による炭化を利用して記録してもよい。
【0049】
図3に示す樹脂層13は、支持体11の主面のうち、画像I1、画像I2、及び画像I3が記録された面の全体を覆っている。樹脂層13は、保護層14を支持体11に接着している。
【0050】
樹脂層13は、透明樹脂からなる。この透明樹脂としては、例えば、接着層124について例示した材料を使用することができる。
【0051】
樹脂層13は、上記主面の一部のみ、例えば、画像I1、画像I2及び画像I3が記録された領域並びにそれらの周囲の領域のみを覆っていてもよい。或いは、樹脂層13は、省略してもよい。
【0052】
保護層14は、支持体11の主面のうち、画像I1、画像I2及び画像I3が記録された面の全体と、樹脂層13を間に挟んで向き合っている。保護層14は、画像I1、画像I2及び画像I3を機械的損傷や薬品等から保護する。保護層14の材料としては、例えば、保護層125について例示したものを使用することができる。
【0053】
保護層14は、上記主面の一部のみ、例えば、画像I1、画像I2、及び画像I3が記録された領域並びにそれらの周囲の領域のみを覆っていてもよい。或いは、保護層14は、省略してもよい。
【0054】
次に、この表示体1の製造について説明する。
図5は、
図1乃至
図3に示す表示体の製造に使用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図である。
【0055】
図5に示す転写箔2は、基材21と、転写材層22と、バックコート層23とを含んでいる。
【0056】
基材21は、一方の主面が転写材層22を剥離可能に支持したフィルムである。基材21としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することができる。
【0057】
転写材層22は、レリーフ構造形成層222と、反射層223と、接着層224と、保護層225とを含んでいる。転写材層22の一部は、
図2及び
図3に示す表示要素12R、12G、及び12Bの何れかに対応している。即ち、
図3に示すレリーフ構造形成層122、反射層123、接着層124、及び保護層125は、それぞれ、レリーフ構造形成層222、反射層223、接着層224、及び保護層225の一部である。
【0058】
バックコート層23は、基材21の主面のうち、転写材層22が設けられた面の裏面に設けられている。バックコート層23は、サーマルヘッドと直接に接触するため、高い耐熱性が要求される。
【0059】
バックコート層23は、例えば、主材料として、紫外線硬化樹脂、アクリル樹脂、及びイソシアネート硬化剤を含んだ材料を塗工し、塗膜に紫外線を照射することにより得ることができる。バックコート層23の厚さは、約0.2μm乃至約2.0μmの範囲内にあることが好ましい。バックコート層23は、サーマルヘッドとの摩擦が小さいことが必要である。それ故、バックコート層23には、ワックスを含有させてサーマルヘッドに対する滑りをよくするか、又は、タルク若しくはフィラーを含有させてサーマルヘッドとの接触面積を小さくしてもよい。
【0060】
図6は、本発明の一実施形態に係る表示体の製造装置を概略的に示す図である。
図7は、
図6に示す製造装置の一部を示すブロック図である。
図6に示す製造装置3は、表示体1を製造するための装置である。
図6に示す製造装置3は、転写装置31とコンピュータ32とを含んでいる。
【0061】
転写装置31は、後述する画像データの生成方法によって得られた画像データに基づいて、回折構造DGを各々が含み、互いに異なる色を表示する2種以上の表示要素を、支持体11上へ転写する装置である。表示体1は、転写装置31によるこのような製造方法によって得られる。
【0062】
転写装置31は、巻出し部311と、サーマルヘッド312と、巻取り部313と、プラテンローラ314と、剥離板315と、ガイドローラ316a乃至316cとを含んでいる。
【0063】
巻出し部311は、巻出しコアに巻かれた転写箔2を巻き出す。巻出し部311は、転写箔2が巻かれた巻出しコアを着脱可能に支持し、転写動作時のトルクを一定とする仕組みを持つ巻出し軸を含んでいる。この巻出し軸は、転写箔2が巻き出されている間、転写箔2に張力を与える。トルクの制御には、例えば、一般的な固定値型のトルクリミッタを使用する。或いは、摩擦力等を制御することでトルクを変更可能な可変型トルクリミッタを使用してもよい。また、転写箔2の再利用等の理由から、巻出し軸にモータを取り付け、モータに流す電流を制御することなどにより、トルクを制御してもよい。
【0064】
巻取り部33は、巻出し部311から巻き出され、ガイドローラ316a及び316bなどによって案内された転写箔2を、巻取りコアに巻き取る。巻取り部313は、使用済みの転写箔2を巻き付けるための巻取りコアが着脱可能に取り付けられる巻取り軸と、この巻取り軸をモータ等によって回転させることにより転写箔2を巻取りコアに巻き取る機構とを含んでいる。巻取り部33には、通常、一定のトルクで巻取りが行われるように、巻取り軸と巻取りコアとの間にトルクリミッタを設ける。
【0065】
転写箔2の巻出し及び巻取りにおけるトルクの制御には、巻出しコアに巻かれた転写箔2の巻き径と、巻取りコアに巻き取られた転写箔2の巻き径とを利用することが好ましい。巻出し部311及び巻取り部313にロータリエンコーダを設置し、それらの出力を解析して上記巻き径を算出することにより、より正確にトルクを制御することができる。
【0066】
被転写材である支持体11がロールの形態にある場合は、その巻出し及び巻取りについて、転写箔2について上述したのと同様のトルク制御を行う。
【0067】
また、支持体11及び転写箔2の送り速度は、完全に一致させる必要がある。そのため、支持体11の巻出しを行う巻出し部などには、転写箔2について上述したのと同様にロータリエンコーダを設置し、巻き径を常に監視して、支持体11及び転写箔2の送り速度と同じになるような制御を行うことが好ましい。
【0068】
支持体11が紙のように或る程度の剛性を有している場合は、支持体11を枚葉形態で搬送する場合がある。この場合も、上記の搬送速度の制御を行うことが好ましい。
【0069】
このように同期させて搬送している転写箔2及び支持体11を、転写箔2の転写材層22が支持体11と接するようにサーマルヘッド312とプラテンローラ314とで挟み込み、それらに熱圧を加える。これにより、転写材層22の一部を支持体11へ転写する。
【0070】
サーマルヘッド312は、転写箔2を加熱する。サーマルヘッド312は、アレイ状に並んだ微小抵抗体を含んでいる。これら抵抗体の大きさは、一般に、数10μm乃至数100μmである。これら抵抗体には、互いから独立して電流を流すことができる。転写動作時には、データに従ってこれら抵抗体に電流を流し、抵抗体を瞬間的に発熱させる。この熱で転写材層22の一部を支持体11へ転写する。
【0071】
一般に、ヘッド表面には、抵抗体を保護するために、数10μm厚でセラミックが蒸着されている。蒸着材料としては、例えば、耐久性の高いSiC及びSiON、並びに、これら材料をベースに他材料を配合したものがある。
【0072】
プラテンローラ314は、転写箔2及び支持体11を間に挟んでサーマルヘッド312と隣接するように設置されている。プラテンローラ314は、サーマルヘッド312による上記加熱を補助する。更に、プラテンローラ314は、サーマルヘッド312とともに、転写箔2及び支持体11に圧力を加える。
【0073】
プラテンローラ314は、例えば、金属製の軸に樹脂層が巻かれた構造を有している。プラテンローラ314には、サーマルヘッド312の熱がほぼ直接に伝わる。それ故、プラテンローラ314の樹脂層には、耐熱性に優れた樹脂を使用することが望ましい。
【0074】
また、この転写装置31では、転写箔2及び支持体11の送り量を正確に制御する必要がある。例えば、300dpi(dots per inch)で1ライン毎に転写を行う場合には、送り量は84μmに維持する必要がある。なお、この場合、高画質化のため、送り量を、84μmの半分である42μmとすることもある。そのため、一般に、プラテンローラ314は、モータで駆動される。また、送り量を一定に維持するうえでは、支持体11とプラテンローラ314と摩擦が大きいことが望ましい。この要求から、プラテンローラ314には、ウレタン系の材料を使用することが好ましい。
【0075】
プラテンローラ314の表面には、摩耗し難い材料を使用することが好ましい。プラテンローラ314の表面には、高い形状精度が求められる。そのため、通常、プラテンローラ314の表面には精密研磨を行う。それ故、プラテンローラ314の表面に摩耗し易い材料を使用すると、研磨によって表面が荒れて、表面に凹凸が発生してしまう。凹凸ができると、転写が安定しないだけでなく、支持体11との接触面積も小さくなる。その結果、支持体11とプラテンローラ314との摩擦が小さくなる。
【0076】
先に説明した通り、プラテンローラ314の表面は、高い形状精度を有している。また、サーマルヘッド312のプラテンローラ314との対向面も、高い形状精度を有している。転写箔2及び支持体11は、サーマルヘッド312とプラテンローラ314とによって挟まれ、この状態で熱圧が加えられる。その結果、接着層224が溶融し、転写箔2及び支持体11は互いに密着する。
【0077】
剥離板315は、ガイドローラ316b及び316cとともに、支持体11の搬送方向と転写箔2の搬送方向とを互いから分岐させる。これにより、支持体11と転写箔2とは、互いから引き剥がされる。支持体11と転写箔とは、支持体11の搬送方向と転写箔2の搬送方向とを略垂直にすると、最も小さな力で互いから剥離することができる。
【0078】
転写箔2及び支持体11がサーマルヘッド312とプラテンローラ314との間を通過すると、転写材層22のうち熱圧が加えられた部分は、温度が低下し、支持体11との密着力が、基材21との密着力よりも大きくなる。次いで、支持体11と転写箔2とを互いから引き剥がすと、転写材層22のうち熱圧が加えられた部分は、支持体11と密着した状態を維持したまま、基材21から剥離する。また、転写材層22のうち熱圧が加えられなかった部分は、基材21と密着した状態を維持したまま、支持体11から剥離する。このようにして、支持体11に、
図1に示す画像I1が記録される。
【0079】
図6に示すコンピュータ32は、転写装置31に有線又は無線接続されている。
コンピュータ32は、
図7に示すように、コンピュータ本体321と、入力装置322と、出力装置323とを含んでいる。
【0080】
コンピュータ本体321は、中央演算処理装置(CPU)3211と、主記憶装置3212と、補助記憶装置3213とを含んでいる。コンピュータ本体321は、
図8、
図9、及び
図12を参照しながら説明する各ステップをコンピュータ本体321に実行させるためのプログラムが読み込まれる装置である。プログラムは、予めコンピュータ本体321に記憶されていてもよい。これに代えて、プログラムは、例えばCD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されて流通し、事後的にコンピュータ本体321に記憶されてもよい。
【0081】
中央演算処理装置3211は、所定のプログラムに従って、画像データの変換等の演算処理や全体の制御を行う。
【0082】
主記憶装置3212は、ランダムアクセスメモリ(RAM)を含んでいる。主記憶装置3212には、データやプログラムが読み込まれる。なお、このプログラムは、
図8、
図9、及び
図12を参照しながら説明する各ステップをコンピュータ32に実行させるためのプログラムを含んでいる。
【0083】
補助記憶装置3213は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)又はソリッドステートドライブ(SSD)である。補助記憶装置3213は、例えば、主記憶装置3212に読み込ませるプログラムやデータの一部を記憶している。補助記憶装置3213は、リムーバブルメディアを接続又は搭載可能な装置、例えば、メモリカードを接続可能なカードリーダ、又は、光ディスク又は磁気ディスクを搭載可能なディスクドライブを更に含むことができる。プログラムやデータは、これら記録媒体に記録されていてもよい。
【0084】
入力装置322は、例えば、キーボード、及びマウスを含んでいる。入力装置322は、他の装置、例えば、デジタルカメラを更に含むことができる。入力装置322は、他の装置と有線又は無線接続可能なインタフェースを含んでいる。入力装置322は、記録媒体を接続可能なインタフェースを含んでいる。
【0085】
出力装置323は、例えば、ディスプレイを含んでいる。コンピュータ本体321には、他の出力装置として、
図6に示す転写装置31が接続されている。
【0086】
この製造装置3を用いた表示体1の製造は、例えば、以下の方法により行う。
先ず、コンピュータ本体321は、元画像データである第1画像データに基づいて、後述する画像データの生成方法によって第2画像データを得る。元画像は、ラスタ画像であって、2以上の、好ましくは3以上の色で表現されるカラー画像である。
【0087】
第1画像データは、2以上の色で表現されるカラー画像のデータであり、階調値を各色について画素毎に有している。第1画像データは、画素の位置と画素の色毎の階調値とに関する情報を含んだデジタルデータである。第1画像データは、互いに異なる各々について、画素毎に、2段階以外の複数段階の何れかの階調値を有する。階調値が大きくなるにつれ、色は明るくなる。ここでは、一例として、第1画像データは、赤色、緑色、及び青色の各々について、画素毎に、0から255までの256段階の何れかの階調値を有するものとする。画素は、マトリクス状に、即ち、互いに交差する2つの方向に配列している。
【0088】
第1画像データは、例えば、デジタルカメラで人物を撮影した画像データである。第1画像データは、写真をスキャナで読み込むことにより取得される画像データであってもよい。コンピュータ本体321は、入力装置322を通じて第1画像データを取り込む。主記憶装置3212は、第1画像データを一時的に記憶する。中央演算処理装置3211は、第1画像データを補助記憶装置3213に保存してもよい。
【0089】
第2画像データは、2以上の色で表現されるカラー画像のデータであり、二値化された階調値を各色について画素毎に有している。第2画像データは、画素の位置と画素の色毎の階調値とに関する情報を含んだデジタルデータである。第2画像データは、赤色、緑色、及び青色の各々について、画素毎に、2段階の何れかの階調値を有する。ここでは、一例として、第1画像データは、赤色、緑色、及び青色の各々について、画素毎に、0又は255の2段階の何れかの階調値を有するものとする。画素は、マトリクス状に、即ち、互いに交差する2つの方向に配列している。
【0090】
次に、コンピュータ本体321は、入力装置322を通じて、オペレータによって入力された指令等を受け取る。この指令等がコンピュータ本体321に入力されると、主記憶装置3212は、補助記憶装置3213が記憶しているプログラムやデータを読み込む。中央演算処理装置3211は、このプログラムに従ってデータの変換等の演算処理を行う。具体的には、コンピュータ本体321は、第1画像データに基づいて第2画像データを生成し、これを転写装置31に適した形態へ変換する。また、コンピュータ本体321は、ディスプレイに表示される画像を通じて処理が正しく行われていることをオペレータが確認できるように、ディスプレイへ供給すべき信号を生成する。
【0091】
その後、
図6に示す転写装置31は、第2画像データに基づいて、回折構造を各々が含み、互いに異なる色を表示する2種以上の表示要素を支持体11上へ転写する。第2の画像データの各画素は、それぞれ、
図2に示す表示体1の各画素PXに対応する。これにより、転写装置31は、第2画像データに対応した画像I1を支持体11へ記録する。
【0092】
なお、上記の通り、転写装置31では、サーマルヘッド312は、転写箔2を、例えば1ライン毎に加熱する。従って、コンピュータ本体321は、第2画像データをラインデータの集合体へ変換し、これらラインデータを転写装置31へ順次供給する。コンピュータ本体321がラインデータの変換を行う構成を採用する代わりに、転写装置31に、ラインデータの変換を行うための専用ボードを設けてもよい。
【0093】
次に、画像データの生成方法について説明する。
図8は、画像データの生成方法を示すフローチャートである。
コンピュータ本体321は、例えば、オペレータによる入力装置322を用いた指示に基づいて、
図8に例示する画像データの生成方法の処理を実行する。
【0094】
コンピュータ本体321は、第1画像データを取得する(ステップS11)。ステップS11では、コンピュータ本体321は、例えば、入力装置322を通じて第1画像データを取得する。
【0095】
コンピュータ本体321は、第1画像データに基づいて、第2画像データを生成する(ステップS12)。ステップS12の具体例については、後述する。
【0096】
図9は、
図8に示すステップS12における第1画像データに基づく第2画像データの生成方法を示すフローチャートである。ステップS12は、
図9に示す各ステップの全部又は一部を含む。
【0097】
コンピュータ本体321は、第1画像データを構成する複数の画素から第1画素を選択する(ステップS21)。第1画素は、二値化処理の対象となる画素である。コンピュータ本体321は、第1画像データを構成する複数の画素の全てについて、1画素ずつ順番に二値化処理を実行する。そのため、ステップS21では、コンピュータ本体321は、第1画像データを構成する複数の画素から1画素ずつ順番に第1画素を選択する。
【0098】
一例では、コンピュータ本体321は、第1画像データの上端のラインから下端のラインまで一ライン毎に、横方向に1画素ずつ順番に第1画素を選択する。横方向は、例えば、左端から右端への方向である。これにより、コンピュータ本体321は、第1画像データを構成する複数の画素のうち左上に位置する画素から右下に位置する画素まで、1画素ずつ順番に第1画素を選択する。
【0099】
コンピュータ本体321は、以下に例示するように、第1画素の階調値fを第1閾値α及び第2閾値γの少なくとも何れか一方と比較する。階調値fは、2段階以外の複数段階の何れかの階調値である。ここでは、一例として、階調値fは、256段階の何れかの階調値であるものとする。
【0100】
コンピュータ本体321は、第1画素の階調値fを第1閾値αと比較する(ステップS22)。ステップS22では、コンピュータ本体321は、第1画素の各色の階調値fを各色用の第1閾値αと比較する。第1閾値αは、256段階の何れかの階調値であるものとする。各色用の第1閾値αの大きさは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。各色用の第1閾値αの大きさの設定例については後述する。
【0101】
コンピュータ本体321は、第1画素の階調値fが第1閾値αよりも大きいことを示す比較結果に応じて(ステップS22、Yes)、第1二値化処理により第1画素の階調値fを二値化する(ステップS23)。
【0102】
ステップS23では、コンピュータ本体321は、第1画素の赤色の階調値fが赤色用の第1閾値αよりも大きいことを示す比較結果に応じて第1二値化処理により第1画素の赤色の階調値fを二値化する。同様に、コンピュータ本体321は、第1画素の緑色の階調値fが緑色用の第1閾値αよりも大きいことを示す比較結果に応じて第1二値化処理により第1画素の緑色の階調値fを二値化する。同様に、コンピュータ本体321は、第1画素の青色の階調値fが青色用の第1閾値αよりも大きいことを示す比較結果に応じて第1二値化処理により第1画素の青色の階調値fを二値化する。第1二値化処理の例については後述する。
【0103】
コンピュータ本体321は、第1画素の階調値fが第1閾値α以下であることを示す比較結果に応じて(ステップS22、No)、第1画素の階調値fを第2閾値γと比較する(ステップS24)。ステップS24では、コンピュータ本体321は、第1画素の赤色の階調値fが赤色用の第1閾値α以下であることを示す比較結果に応じて、第1画素の赤色の階調値fを赤色用の第2閾値γと比較する。同様に、コンピュータ本体321は、第1画素の緑色の階調値fが緑色用の第1閾値α以下であることを示す比較結果に応じて、第1画素の緑色の階調値fを緑色用の第2閾値γと比較する。同様に、コンピュータ本体321は、第1画素の青色の階調値fが青色用の第1閾値α以下であることを示す比較結果に応じて、第1画素の青色の階調値fを青色用の第2閾値γと比較する。
【0104】
各色用の第2閾値γは、それぞれ、各色用の第1閾値αよりも小さい。各色用の第2閾値γは、それぞれ、256段階の何れかの階調値であるものとする。各色用の第2閾値γの大きさは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。各色用の第2閾値γの大きさの設定例については後述する。
【0105】
コンピュータ本体321は、第1画素の階調値fが第2閾値γよりも小さいことを示す比較結果に応じて(ステップS24、Yes)、第2二値化処理により第1画素の階調値fを二値化する(ステップS25)。
【0106】
ステップS25では、コンピュータ本体321は、第1画素の赤色の階調値fが赤色用の第2閾値γよりも大きいことを示す比較結果に応じて第2二値化処理により第1画素の赤色の階調値fを二値化する。同様に、コンピュータ本体321は、第1画素の緑色の階調値fが緑色用の第2閾値γよりも大きいことを示す比較結果に応じて第2二値化処理により第1画素の緑色の階調値fを二値化する。同様に、コンピュータ本体321は、第1画素の青色の階調値fが青色用の第2閾値γよりも大きいことを示す比較結果に応じて第2二値化処理により第1画素の青色の階調値fを二値化する。
【0107】
第2二値化処理は、第1二値化処理とは異なる二値化処理である。第2二値化処理の例については後述する。
【0108】
コンピュータ本体321は、第1画素の階調値fが第1閾値α以下かつ第2閾値γ以上であることを示す比較結果に応じて(ステップS24、No)、第3二値化処理により第1画素の階調値fを二値化する(ステップS26)。
【0109】
ステップS26では、コンピュータ本体321は、第1画素の赤色の階調値fが赤色用の第1閾値α以下かつ赤色用の第2閾値γ以上であることを示す比較結果に応じて、第3二値化処理により第1画素の赤色の階調値fを二値化する。同様に、コンピュータ本体321は、第1画素の緑色の階調値fが緑色用の第1閾値α以下かつ緑色用の第2閾値γ以上であることを示す比較結果に応じて、第3二値化処理により第1画素の緑色の階調値fを二値化する。同様に、コンピュータ本体321は、第1画素の青色の階調値fが青色用の第1閾値α以下かつ青色用の第2閾値γ以上であることを示す比較結果に応じて、第3二値化処理により第1画素の青色の階調値fを二値化する。
【0110】
第3二値化処理は、第1二値化処理及び第2二値化処理とは異なる二値化処理である。第3二値化処理の例については後述する。
【0111】
コンピュータ本体321は、第1画像データを構成する全ての画素に対する二値化処理を終了したか否かを判断する(ステップS27)。コンピュータ本体321は、第1画像データを構成する全ての画素に対する二値化処理を終了したことを示す判断結果に応じて(ステップS27、Yes)、処理を終了する。これにより、コンピュータ本体321は、第2画像データの生成を完了する。
【0112】
コンピュータ本体321は、第1画像データを構成する全ての画素に対する二値化処理を終了していないことを示す判断結果に応じて(ステップS27、No)、ステップS21の処理を繰り返し実行する。
【0113】
なお、コンピュータ本体321は、ステップS22及びステップS24の処理の順序を入れ替えてもよい。
【0114】
上述のように、コンピュータ本体321は、通常の誤差拡散法とは異なる二値化処理により、情報量が画像の位置によって偏ることを低減することができる。これにより、コンピュータ本体321は、第2画像データに基づく画像I1における元画像の再現性を向上させることができる。
【0115】
次に、第1二値化処理の例を説明する。
第1二値化処理は、第1画素の階調値を第1閾値αよりも大きい第1階調値に設定することを含む。一例では、コンピュータ本体321は、第1二値化処理により、第1画素の階調値を255に設定する。階調値255は、第1階調値の一例である。コンピュータ本体321は、第1画素の赤色の階調値を255に設定する。同様に、コンピュータ本体321は、第1画素の緑色の階調値を255に設定する。同様に、コンピュータ本体321は、第1画素の青色の階調値を255に設定する。
【0116】
次に、第2二値化処理の例を説明する。
図10は、第2二値化処理の一例を示す図である。
図10は、第1画像データD1の一部を示す。画素PXL1は、第1画素であるものとする。ここでは、赤色、緑色、及び青色のうちの任意の色における第2二値化処理について説明するが、第2二値化処理は、何れの色においても同様の処理である。
【0117】
第2二値化処理は、第1画素の階調値fを第2閾値γよりも小さい第2階調値に設定することを含む。一例では、コンピュータ本体321は、第2二値化処理により、画素PXL1の階調値を0に設定する。階調値0は、第2階調値の一例である。
【0118】
第2二値化処理は、第2画素を選択することを含む。第2画素は、第1画素とは異なる1以上の画素であって、第1画像データD1を構成する複数の画素のうち第1階調値または第2階調値の設定により二値化された画素以外の1以上の画素である。典型例では、第2画素は、第1階調値または第2階調値の設定により二値化された画素以外の画素であって、第1画素と隣接している1以上の画素である。この例では、コンピュータ本体321は、
図10に示すように、画素PXL1を囲む8つの画素のうち二値化された画素以外の4つの画素PXL2-1、PXL2-2、PXL2-3、及びPXL2-4を第2画素として選択する。なお、第2の画素の数及び位置は、
図10に示す例に限定されるものではない。
【0119】
第2二値化処理は、第1画素の階調値fに相当する値(例えば256段階の何れかの階調値に相当する値)を第2画素に分配することを含む。一例では、コンピュータ本体321は、画素PXL1の階調値fに相当する値と各重み係数との積によって得られる値を画素PXL2-1、PXL2-2、PXL2-3、及びPXL2-4に分配する。
【0120】
コンピュータ本体321は、画素PXL1の階調値fに相当する値と予め定められた重み係数i1との積によって得られるΔf1を画素PXL2-1の階調値g1に加算する。ここでは、一例として、階調値g1は、256段階の何れかの階調値であるものとする。そのため、第2二値化処理後の画素PXL2-1の階調値g1´は、階調値g1にΔf1を加えた値である。コンピュータ本体321は、画素PXL1の階調値fに相当する値と予め定められた重み係数i2との積によって得られるΔf2を画素PXL2-2の階調値g2に加算する。ここでは、一例として、階調値g2は、256段階の何れかの階調値であるものとする。そのため、第2二値化処理後の画素PXL2-2の階調値g2´は、階調値g2にΔf2を加えた値である。コンピュータ本体321は、画素PXL1の階調値fに相当する値と予め定められた重み係数i3との積によって得られるΔf3を画素PXL2-3の階調値g3に加算する。ここでは、一例として、階調値g3は、256段階の何れかの階調値であるものとする。そのため、第2二値化処理後の画素PXL2-3の階調値g3´は、階調値g3にΔf3を加えた値である。コンピュータ本体321は、画素PXL1の階調値fに相当する値と予め定められた重み係数i4との積によって得られるΔf4を画素PXL2-4の階調値g4に加算する。ここでは、一例として、階調値g4は、256段階の何れかの階調値であるものとする。そのため、第2二値化処理後の画素PXL2-4の階調値g4´は、階調値g4にΔf4を加えた値である。
【0121】
重み係数i1、i2、i3、及びi4の和は1である。Floyd‐Steinberg法では、重み係数i1は7/16、重み係数i2は3/16、重み係数i3は5/16、重み係数i4は1/16である。そのため、Δf1、Δf2、Δf3、及びΔf4の和は、画素PXL1の階調値fに相当する値と等しい。
【0122】
次に、第3二値化処理の例を説明する。
図11は、第3二値化処理の一例を示す図である。
図11は、第1画像データD1の一部を示す。画素PXL1は、第1画素であるものとする。ここでは、赤色、緑色、及び青色のうちの任意の色における第3二値化処理について説明するが、第3二値化処理は、何れの色においても同様の処理である。
【0123】
第3二値化処理は、第3画素を選択することを含む。第3画素は、第1画素とは異なる1以上の画素であって、第1画像データD1を構成する複数の画素のうち第1階調値または第2階調値の設定により二値化された画素以外の1以上の画素である。典型例では、第3画素は、第1階調値または第2階調値の設定により二値化された画素以外の画素であって、第1画素と隣接している1以上の画素である。この例では、コンピュータ本体321は、
図11に示すように、画素PXL1を囲む8つの画素のうち二値化された画素以外の4つの画素PXL3-1、PXL3-2、PXL3-3、及びPXL3-4を第3画素として選択する。なお、第3の画素の数及び位置は、
図11に示す例に限定されるものではない。第3画素は、第2画素と同じであっても異なっていてもよい。
【0124】
第3二値化処理は、第3画素の階調値から所定値を差し引き、第1画素の階調値fに所定値を加える調整処理を実行することを含む。一例では、コンピュータ本体321は、画素PXL3-1の階調値h1から所定値Δf1´を差し引き、画素PXL1の階調値fに所定値Δf1´を加える。ここでは、一例として、階調値h1は、256段階の何れかの階調値であるものとする。調整処理後の画素PXL3-1の階調値h1´は、階調値h1からにΔf1´を差し引いた値である。
【0125】
これとともに、コンピュータ本体321は、画素PXL3-2の階調値h2から所定値Δf2´を差し引き、画素PXL1の階調値fに所定値Δf2´を加える。ここでは、一例として、階調値h2は、256段階の何れかの階調値であるものとする。調整処理後の画素PXL3-2の階調値h2´は、階調値h2からにΔf2´を差し引いた値である。
【0126】
これとともに、コンピュータ本体321は、画素PXL3-3の階調値h3から所定値Δf3´を差し引き、画素PXL1の階調値fに所定値Δf3´を加える。ここでは、一例として、階調値h3は、256段階の何れかの階調値であるものとする。調整処理後の画素PXL3-3の階調値h3´は、階調値h3からにΔf3´を差し引いた値である。
【0127】
これとともに、コンピュータ本体321は、画素PXL3-4の階調値h4から所定値Δf4´を差し引き、画素PXL1の階調値fに所定値Δf4´を加える。ここでは、一例として、階調値h4は、256段階の何れかの階調値であるものとする。調整処理後の画素PXL3-4の階調値h4´は、階調値h4からにΔf4´を差し引いた値である。
【0128】
そのため、調整処理後の第1画素の階調値f´は、階調値fに所定値Δf1´、所定値Δf2´、所定値Δf3´及び所定値Δf4´を加えた値である。
【0129】
所定値は、第3画素の階調値が第1閾値α以下である場合は0である。他方、所定値は、第3画素の階調値が第1閾値αよりも大きい場合は第3画素の階調値から第1閾値αを差し引いた値よりも小さい正の値である。
【0130】
一例では、Δf1´は、画素PXL3-1の階調値h1が第1閾値α以下である場合は0である。Δf1´は、階調値h1が第1閾値αよりも大きい場合は階調値h1から第1閾値αを差し引いた値よりも小さい正の値である。典型例では、Δf1´は、階調値h1から第1閾値αを差し引いた値と予め定められた重み係数k1との積によって得られる値である。
【0131】
Δf2´は、画素PXL3-2の階調値h2が第1閾値α以下である場合は0である。Δf2´は、階調値h2がαよりも大きい場合は階調値h2から第1閾値αを差し引いた値よりも小さい正の値である。典型例では、Δf2´は、階調値g2から第1閾値αを差し引いた値と予め定められた重み係数k2との積によって得られる値である。
【0132】
Δf3´は、画素PXL3-3の階調値h3が第1閾値α以下である場合は0である。Δf3´は、階調値h3が第1閾値αよりも大きい場合は階調値g3から第1閾値αを差し引いた値よりも小さい正の値である。典型例では、Δf3´は、階調値h3から第1閾値αを差し引いた値と予め定められた重み係数k3との積によって得られる値である。
【0133】
Δf4´は、画素PXL3-4の階調値h4が第1閾値α以下である場合は0である。Δf4´は、階調値h4が第1閾値αよりも大きい場合は階調値h4から第1閾値αを差し引いた値よりも小さい正の値である。典型例では、Δf4´は、階調値h4から第1閾値αを差し引いた値と予め定められた重み係数k4との積によって得られる値である。
【0134】
重み係数k1、k2、k3、及びk4の和は1である。重み係数k1、k2、k3、及びk4は、それぞれ、重み係数i1、i2、i3、及びi4と等しくてもいいし、異なっていてもよい。
【0135】
上述のように、調整処理前の第3画素の画素値が第1閾値αよりも大きい場合、調整処理後の第3画素の画素値は、第1閾値α以下になることはない。そのため、第1閾値αよりも大きい階調値を有する画素は、調整処理により第2階調値に設定される事態は生じない。これにより、第2画像データに基づく画像I1における元画像の再現性を向上させることができる。
【0136】
第3二値化処理は、調整処理後の第1画素の階調値f´を第1閾値αと比較することを含む。一例では、コンピュータ本体321は、画素PXL1の階調値f´を第1閾値αと比較する。
【0137】
第3二値化処理は、調整処理後の第1画素の階調値f´が第1閾値αを超えることを示す比較結果に応じて第1画素の階調値を第1階調値に設定することを含む。一例では、コンピュータ本体321は、画素PXL1の階調値f´がαを超えることを示す比較結果に応じて、画素PXL1の階調値を第1階調値の一例である階調値255に設定する。他方、第3二値化処理は、調整処理後の第1画素の階調値f´が第1閾値α以下であることを示す比較結果に応じて第1画素の階調値を第2階調値に設定することを含む。一例では、コンピュータ本体321は、画素PXL1の階調値f´が第1閾値α以下であることを示す比較結果に応じて、画素PXL1の階調値を第2階調値の一例である階調値0に設定する。
【0138】
上述のように、コンピュータ本体321は、互いに性質の異なる3つの二値化処理を用いることで、情報量が画像の位置によって偏ることを低減することができる。これにより、第2画像データに基づく画像I1における元画像の再現性を向上させることができる。
【0139】
次に、各色用の第1閾値αの大きさ及び各色用の第2閾値γの大きさの設定例について説明する。
コンピュータ本体321は、第2画像データを生成する前に、各色について第2画像データの生成に用いる第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさを設定する。一例では、コンピュータ本体321は、第1画像データ毎に、第1画像データに基づいて各色について第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさを逐一設定する。
【0140】
第2画像データに基づく画像I1における元画像の再現性は、第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさによって大きく異なる。コンピュータ本体321は、第1画像データ毎に適した第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさを設定することで、第2画像データに基づく画像I1における元画像の再現性を向上させることができる。
【0141】
図12は、第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさの設定方法を示すフローチャートである。第2画像データの生成に用いる第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさを設定することは、
図12に示す各ステップの全部又は一部を含む。
【0142】
コンピュータ本体321は、第1画像データの一部に相当する第3画像データを取得する(ステップS31)。ステップS31では、コンピュータ本体321は、オペレータが指定する元画像の再現性を向上させたいと望む部分のデータを第3画像データとして取得する。
【0143】
第1画像データが顔画像のデータを含む場合、コンピュータ本体321は、顔画像のデータの少なくとも一部を含む第3画像データを取得することが好ましい。この場合、コンピュータ本体321は、顔検出アルゴリズムにより、第1画像データにおける顔の中心位置を特定する。顔の中心位置は、一般的に鼻の近傍である。コンピュータ本体321は、顔の中心位置を参照し、顔の中心位置近傍から目及び口を特定する。コンピュータ本体321は、例えば、顔の中心位置の近傍から目の白部分及び唇の赤部分を検出することで、目及び口を特定することができる。これにより、コンピュータ本体321は、顔画像のデータの少なくとも一部を含む第3画像データを取得することができる。
【0144】
コンピュータ本体321は、第3画像データに基づいて、第4画像データを生成する(ステップS32)。ステップS32では、コンピュータ本体321は、各色について、第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさの組み合わせ毎に、第3画像データを構成する各画素の階調値を第1二値化処理、第2二値化処理、及び第3二値化処理のうちの何れかにより二値化し、第4画像データを生成する。そのため、第4画像データは、二値化された階調値を画素毎に有する画像データでる。第4画像データは、第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさの組み合わせ応じて生成された画像データである。
【0145】
一例では、先ず、コンピュータ本体321は、第2閾値γを0に設定する。次に、コンピュータ本体321は、第1閾値αの大きさを変化させて、第1閾値αの大きさ毎に第3画像データを任意の通常の誤差拡散法により二値化し、二値化された階調値を画素毎に有する第5画像データを生成する。次に、コンピュータ本体321は、第1閾値αの大きさ毎に、第5画像データと第3画像データとの画素毎の差分に基づく合計値を計算する。画素毎の差分に基づく合計値は、例えば、画素毎の差分の平方和である。次に、コンピュータ本体321は、第5画像データと第3画像データとの画素毎の差分に基づく合計値が最も小さくなる第1閾値αの大きさを抽出する。次に、コンピュータ本体321は、抽出した第1閾値αの大きさの近傍で第1閾値αの大きさを変化させながら第2閾値γの大きさも変化させて、第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさの組み合わせ毎に、第3画像データに基づいて第4画像データを生成する。なお、コンピュータ本体321は、抽出した第1閾値αの大きさを固定し、第2閾値γの大きさを変化させて、第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさの組み合わせ毎に、第3画像データに基づいて第4画像データを生成してもよい。
【0146】
コンピュータ本体321は、各色について、第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさの組み合わせ毎に、第4画像データと第3画像データとの画素毎の差分に基づく合計値を計算する。画素毎の差分に基づく合計値は、例えば、画素毎の差分の平方和である。
【0147】
コンピュータ本体321は、第4画像データと第3画像データとの画素毎の差分に基づく合計値が最も小さくなる第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさの組み合わせに基づいて、第2画像データの生成に用いる第1閾値のα大きさ及び第2閾値γの大きさを設定する。これにより、コンピュータ本体321は、各色について、第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさを設定する。
【0148】
コンピュータ本体321は、適切な第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさを決定するために、多くの繰り返し演算を実行することになる。コンピュータ本体321は、第1画像データの一部に相当する第3画像データを抜き出すことで、繰り返し演算の数を減らし、適切な第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさを決定するのに要する時間を短縮することができる。その結果、コンピュータ本体321は、適切な第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさの組み合わせにより、情報量が画像の位置によって偏ることを低減することができる。
【0149】
さらに、コンピュータ本体321は、顔画像のデータの少なくとも一部を含む第3画像データを取得することで、適切な第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさを決定し、元画像の再現性を向上させることができる。
【実施例】
【0150】
以下に、本発明の実施例を記載する。 ここでは、
図12を用いて説明した設定方法に沿って第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさを設定した例について説明する。
【0151】
図13は、実施例で用いた画像データを示す図である。
ここでは、元画像データである第1画像データとして、
図13に示す画像データを用いた。
図13に示す画像データは、赤色、緑色及び青色の各々の階調数が256段階のラスタデータである。
【0152】
コンピュータ本体321は、
図13に示す画像データの一部に相当する目と唇を含む領域の第3画像データを取得した。コンピュータ本体321は、第2閾値γを0に設定した。コンピュータ本体321は、第1閾値αの大きさを変化させて第3画像データを二値化し、二値化された階調値を画素毎に有する第5画像データを生成した。コンピュータ本体321は、第1閾値αの大きさを10間隔で変化させた。コンピュータ本体321は、Floyd‐Steinberg法を用いた。コンピュータ本体321は、第1閾値αの大きさ毎に、第5画像データと第3画像データとの画素毎の差分の平方和を計算した。以下では、画素毎の差分の平方和は、差分合計と称する。
【0153】
図14は、第1閾値αの大きさ毎の第5画像データと第3画像データとの差分合計の関係を示す表である。
図15は、第1閾値αの大きさ毎の第5画像データと第3画像データとの差分合計の関係を示すグラフである。
第5画像データと第3画像データとの差分合計は、赤色、緑色及び青色の各々において、第1閾値αの大きさによって変化することが分かる。
【0154】
コンピュータ本体321は、赤色用の第1閾値αの大きさとして、第5画像データと第3画像データとの画素毎の差分合計が最も小さくなる160を抽出した。コンピュータ本体321は、緑色用の第1閾値αの大きさとして、第5画像データと第3画像データとの画素毎の差分合計が最も小さくなる170を抽出した。コンピュータ本体321は、青色用の第1閾値αの大きさとして、第5画像データと第3画像データとの画素毎の差分合計が最も小さくなる210を抽出した。
【0155】
コンピュータ本体321は、抽出した第1閾値αの大きさを固定し、第2閾値γの大きさを変化させた。コンピュータ本体321は、第2閾値γの大きさを10間隔で変化させた。コンピュータ本体321は、第3画像データを構成する各画素の階調値を第1二値化処理、第2二値化処理、及び第3二値化処理のうちの何れかにより二値化し、第4画像データを生成した。
【0156】
図16は、第2閾値αの大きさ毎の第4画像データと第3画像データとの差分合計の関係を示す表である。
図17は、第2閾値γの大きさ毎の第4画像データと第3画像データとの差分合計の関係を示すグラフである。
第4画像データと第3画像データとの差分合計は、赤色、緑色及び青色の各々において、第2閾値γの大きさによって変化することが分かる。
【0157】
コンピュータ本体321は、赤色用の第2閾値γの大きさとして、第4画像データと第3画像データとの画素毎の差分合計が最も小さくなる30を抽出した。コンピュータ本体321は、緑色用の第2閾値γの大きさとして、第4画像データと第3画像データとの画素毎の差分合計が最も小さくなる20を抽出した。コンピュータ本体321は、青色用の第2閾値γの大きさとして、第4画像データと第3画像データとの画素毎の差分合計が最も小さくなる30を抽出した。
【0158】
コンピュータ本体321は、赤色について、第1閾値αの大きさを160に設定し、第2閾値γの大きさを30に設定した。コンピュータ本体321は、緑色について、第1閾値αの大きさを170に設定し、第2閾値γの大きさを20に設定した。コンピュータ本体321は、青色について、第1閾値αの大きさを210に設定し、第2閾値γの大きさを30に設定した。
【0159】
差分合計は、元画像の再現性の指標の一つであり、差分合計が小さければ、元画像の再現性が高いといえる。本実施例からも分かるように、第1閾値αの大きさ及び第2閾値γの大きさを適宜設定することで、差分合計を小さくすることができる。これにより、元画像の再現性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0160】
1…表示体、2…転写箔、3…製造装置、11…支持体、12B…表示要素、12G…表示要素、12R…表示要素、13…樹脂層、14…保護層、21…基材、22…転写材層、23…バックコート層、31…転写装置、32…コンピュータ、122…レリーフ構造形成層、123…反射層、124…接着層、125…保護層、222…レリーフ構造形成層、223…反射層、224…接着層、225…保護層、311…巻出し部、312…サーマルヘッド、313…巻取り部、314…プラテンローラ、315…剥離板、316a…ガイドローラ、316b…ガイドローラ、316c…ガイドローラ、321…コンピュータ本体、322…入力装置、323…出力装置、3211…中央演算処理装置、3212…主記憶装置、3213…補助記憶装置、D1…第1画像データ、DG…回折構造、I1…画像、I2…画像、I3…画像、PX…画素、PXL1…画素、PXL2-1…画素、PXL2-2…画素、PXL2-3…画素、PXL2-4…画素、PXL3-1…画素、PXL3-2…画素、PXL3-3…画素、PXL3-4…画素。