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特許7409319ガラス微粒子堆積体製造用の原料供給装置および原料供給方法
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  • 特許-ガラス微粒子堆積体製造用の原料供給装置および原料供給方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ガラス微粒子堆積体製造用の原料供給装置および原料供給方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20231226BHJP
   C03B 8/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C03B20/00 Z
C03B8/04 Z
C03B20/00 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020559974
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047456
(87)【国際公開番号】W WO2020116522
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2018227116
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】守屋 知巳
【審査官】菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-029389(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187915(WO,A1)
【文献】特許第3077106(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
C03B 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス微粒子堆積体を製造する原料をバーナに供給する原料供給装置であって、
液体原料タンクと、
前記液体原料タンクに一端が接続された液体原料配管と、
前記液体原料タンクから前記液体原料配管を介して液体原料を液体用MFCに圧送する液体原料圧送ポンプと、
前記液体原料配管における前記液体原料圧送ポンプの二次側に設けられた第一圧力調整弁と、
前記液体原料圧送ポンプの二次側に設けられ、前記液体原料配管の他端に接続された前記液体用MFCと、
前記液体用MFCの二次側に接続され前記液体原料を気化する気化装置と、
を備え、
前記液体原料は、シロキサンであり、
前記第一圧力調整弁の二次側の配管が、一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続された系とされており
前記バーナが複数あり、前記液体原料配管の他端は前記複数のバーナのそれぞれに向かう複数の分岐配管に分岐されており、
前記複数の分岐配管に前記液体用MFCがそれぞれ接続されており、
前記複数の分岐配管における前記液体用MFCの一次側にそれぞれ第二圧力調整弁が設けられ、
前記第二圧力調整弁の二次側の配管が、一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続された系とされている、
原料供給装置。
【請求項2】
ガラス微粒子堆積体を製造する際に原料をバーナに供給する原料供給方法であって、
液体のシロキサンからなる液体原料が収容された液体原料タンクに一端が接続された液体原料配管を介して、前記液体原料を液体原料圧送ポンプによって液体用MFCに圧送すると共に、前記液体原料配管における前記液体原料圧送ポンプの二次側に第一圧力調整弁を設け、前記第一圧力調整弁の二次側配管を一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続し、
前記バーナが複数あり、前記液体原料配管の他端は前記複数のバーナのそれぞれに向かう複数の分岐配管に分岐されており、
前記複数の分岐配管に前記液体用MFCをそれぞれ接続し、
前記複数の分岐配管における前記液体用MFCの一次側にそれぞれ第二圧力調整弁を設け、
前記第二圧力調整弁の二次側の配管を一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続し、
前記液体原料圧送ポンプと、前記第一圧力調整弁により、前記液体用MFCの一次圧力を調整し、
前記液体用MFCの二次側で前記液体原料を気化して前記バーナに供給する、
原料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス微粒子堆積体製造用の原料供給装置および原料供給方法に関する。
本出願は、2018年12月4日出願の日本国特許出願第2018-227116号に基づく優先権を主張し、当該出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バーナに供給するガラス原料をシロキサンとするガラス微粒子堆積体の製造方法が記載されている。
特許文献2には、原料にシロキサンを用いた石英ガラスの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2015-113259号公報
【文献】日本国特開2006-327916号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係るガラス微粒子堆積体製造用の原料供給装置は、
ガラス微粒子堆積体を製造する原料をバーナに供給する原料供給装置であって、
液体原料タンクと、
前記液体原料タンクに一端が接続された液体原料配管と、
前記液体原料タンクから前記液体原料配管を介して液体原料を液体用MFCに圧送する液体原料圧送ポンプと、
前記液体原料配管における前記液体原料圧送ポンプの二次側に設けられた第一圧力調整弁と、
前記液体原料圧送ポンプの二次側に設けられ、前記液体原料配管の他端に接続された液体用MFCと、
前記液体用MFCの二次側に接続され前記液体原料を気化する気化装置と、
を備え、
前記液体原料は、シロキサンであり、
前記第一圧力調整弁の二次側の配管が、一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続された系とされており、
前記バーナが複数あり、前記液体原料配管の他端は前記複数のバーナのそれぞれに向かう複数の分岐配管に分岐されており、
前記複数の分岐配管に前記液体用MFCがそれぞれ接続されており、
前記複数の分岐配管における前記液体用MFCの一次側にそれぞれ第二圧力調整弁が設けられ、
前記第二圧力調整弁の二次側の配管が、一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続された系とされている
【0005】
また、本開示の一態様に係る原料供給方法は、
ガラス微粒子堆積体を製造する際に原料をバーナに供給する原料供給方法であって、
液体のシロキサンからなる液体原料が収容された液体原料タンクに一端が接続された液体原料配管を介して、前記液体原料を液体原料圧送ポンプによって液体用MFCに圧送すると共に、前記液体原料配管における前記液体原料圧送ポンプの二次側に第一圧力調整弁を設け、前記第一圧力調整弁の二次側配管を一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続し、
前記バーナが複数あり、前記液体原料配管の他端は前記複数のバーナのそれぞれに向かう複数の分岐配管に分岐されており、
前記複数の分岐配管に前記液体用MFCをそれぞれ接続し、
前記複数の分岐配管における前記液体用MFCの一次側にそれぞれ第二圧力調整弁を設け、
前記第二圧力調整弁の二次側の配管を一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続し、
前記液体原料圧送ポンプと、前記第一圧力調整弁により、前記液体用MFCの一次圧力を調整し、
前記液体用MFCの二次側で前記液体原料を気化して前記バーナに供給する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本開示の実施形態に係る原料供給装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(本開示が解決しようとする課題)
ガラス微粒子堆積体を製造する原料をバーナに供給する原料供給装置において、原料がシロキサンである場合は、沸点が高いため(例えば、シロキサンの一つであるオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)の沸点は175℃)、気化させてから、気体用MFC(Mass Flow Controller)を使用して流量を制御することが難しい。また、シロキサンは危険物であるため、原料タンクに高い一次圧を加えて液体のシロキサンを圧送することも難しい。これを解決する方法の一つとして、液体の状態のシロキサンを、ポンプを用いて液体用MFCに送り、流量を制御する方法がある。
【0008】
ところが、ポンプを用いると、ポンプによる脈動(圧力変動)によって液体用MFCの一次圧力が変動し、液体用MFCに流れる液体のシロキサンの流量も変動することが分かった。流量が変動すると、液体のシロキサンを気化し、ガラス原料ガスをバーナに供給する際、ガスの流量が変動してしまい、ガラス微粒子堆積体の製造装置において堆積されるガラス微粒子の特性が変動するおそれがある。
【0009】
そこで、本開示は、ガラス微粒子堆積体に堆積されるガラス微粒子の特性の変動を抑制できるガラス微粒子堆積体製造用の原料供給装置および原料供給方法を提供することを目的とする。
【0010】
(本開示の効果)
本開示に係るガラス微粒子堆積体製造用の原料供給装置および原料供給方法によれば、ガラス微粒子堆積体に堆積されるガラス微粒子の特性の変動を抑制することができる。
【0011】
(本開示の実施形態の説明)
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係るガラス微粒子堆積体製造用の原料供給装置は、
(1)ガラス微粒子堆積体を製造する原料をバーナに供給する原料供給装置であって、
液体原料タンクと、
前記液体原料タンクに一端が接続された液体原料配管と、
前記液体原料タンクから前記液体原料配管を介して液体原料を液体用MFCに圧送する液体原料圧送ポンプと、
前記液体原料配管における前記液体原料圧送ポンプの二次側に設けられた第一圧力調整弁と、
前記液体原料圧送ポンプの二次側に設けられ、前記液体原料配管の他端に接続された前記液体用MFCと、
前記液体用MFCの二次側に接続され前記液体原料を気化する気化装置と、
を備え、
前記液体原料は、シロキサンであり、
前記第一圧力調整弁の二次側の配管が、一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続された系とされており、
前記バーナが複数あり、前記液体原料配管の他端は前記複数のバーナのそれぞれに向かう複数の分岐配管に分岐されており、
前記複数の分岐配管に前記液体用MFCがそれぞれ接続されており、
前記複数の分岐配管における前記液体用MFCの一次側にそれぞれ第二圧力調整弁が設けられ、
前記第二圧力調整弁の二次側の配管が、一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続された系とされている
圧力調整弁の開度は、高圧側(一次側)の圧力の変化に応じて調整されるので、高圧側(一次側)の圧力変動が平坦化される。これにより、液体原料圧送ポンプによる液体原料の脈動(圧力変動)を抑えることができる。このため、液体用MFCの一次側圧力の変動が抑えられて、液体用MFCに流れる液体原料の流量変動が抑えられる。よって、バーナから噴出するガスの流量変動が抑えられるので、ガラス微粒子堆積体に堆積されるガラス微粒子の特性の変動を抑制できる。
また、液体原料圧送ポンプなどによって発生した溶存ガスの気泡は、圧力調整弁の高圧側から低圧側(二次側配管側)に流れるので、液体用MFCへ供給される液体原料から溶存ガスを取り除くことができる。さらに、各分岐配管に液体原料が分流される際に、分岐配管内の圧力が減圧されて発生した溶存ガスの気泡は、第二圧力調整弁の高圧側から低圧側(二次側配管側)に流れる。これにより、液体用MFCへ供給される液体原料から溶存ガスを取り除くことができる。溶存ガスが取り除かれることで、液体用MFCに流れる液体原料の流量変動や気化装置で気化された原料の気化状態への影響を抑えることができる。これにより、ガラス微粒子堆積体に堆積されるガラス微粒子の特性の変動をさらに抑制できる。
【0013】
また、本開示の一態様に係る原料供給方法は、
)ガラス微粒子堆積体を製造する際に原料をバーナに供給する原料供給方法であって、
液体のシロキサンからなる液体原料が収容された液体原料タンクに一端が接続された液体原料配管を介して、前記液体原料を液体原料圧送ポンプによって液体用MFCに圧送すると共に、前記液体原料配管における前記液体原料圧送ポンプの二次側に第一圧力調整弁を設け、前記第一圧力調整弁の二次側配管を一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続し、
前記バーナが複数あり、前記液体原料配管の他端は前記複数のバーナのそれぞれに向かう複数の分岐配管に分岐されており、
前記複数の分岐配管に前記液体用MFCをそれぞれ接続し、
前記複数の分岐配管における前記液体用MFCの一次側にそれぞれ第二圧力調整弁を設け、
前記第二圧力調整弁の二次側の配管を一次側の圧力よりも低い圧力の箇所に接続し、
前記液体原料圧送ポンプと、前記第一圧力調整弁により、前記液体用MFCの一次圧力を調整し、
前記液体用MFCの二次側で前記液体原料を気化して前記バーナに供給する。
圧力調整弁の開度は、高圧側(一次側)の圧力の変化に応じて調整されるので、高圧側(一次側)の圧力変動が平坦化される。これにより、液体原料圧送ポンプによる液体原料の脈動(圧力変動)を抑えることができる。このため、液体用MFCの一次側圧力の変動が抑えられて、液体用MFCに流れる液体原料の流量変動が抑えられる。よって、バーナから噴出するガスの流量変動が抑えられるので、ガラス微粒子堆積体に堆積されるガラス微粒子の特性の変動を抑制できる。
また、液体原料圧送ポンプなどによって発生した溶存ガスの気泡は、圧力調整弁の高圧側から低圧側(二次側配管側)に流れるので、液体用MFCへ供給される液体原料から溶存ガスを取り除くことができる。さらに、各分岐配管に液体原料が分流される際に、分岐配管内の圧力が減圧されて発生した溶存ガスの気泡は、第二圧力調整弁の高圧側から低圧側(二次側配管側)に流れる。これにより、液体用MFCへ供給される液体原料から溶存ガスを取り除くことができる。溶存ガスが取り除かれることで、液体用MFCに流れる液体原料の流量変動や気化装置で気化された原料の気化状態への影響を抑えることができる。これにより、ガラス微粒子堆積体に堆積されるガラス微粒子の特性の変動をさらに抑制できる。
【0014】
(本開示の実施形態の詳細)
本開示の実施形態に係るガラス微粒子堆積体製造用の原料供給装置および原料供給方法の具体例を、図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
図1は、本開示の実施形態に係る原料供給装置の一例を示す概略構成図である。原料供給装置は、ガラス微粒子堆積体を製造するための原料をガラス微粒子生成用のバーナに供給する装置である。なお、本実施形態の原料供給装置では、複数のバーナ(本例では三つのバーナ)に供給する例を挙げて説明する。
【0016】
図1に示すように、原料供給装置1は、原料タンク10と、液体原料配管20と、液体原料圧送ポンプ30と、第一圧力調整弁40と、液体用MFC50と、第二圧力調整弁60と、気化装置70と、を備えている。
【0017】
原料タンク10には、液状のガラス原料である液体原料11が密閉状態で貯留されている。液体原料11は、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(HMCTS)、デカメチルシクロペンタンシロキサン(DMCPS)などのシロキサン液である。ガラス原料となるシロキサンとしては、OMCTSが最も望ましいので、本実施形態では、液体原料11としてOMCTSのシロキサン液を用いた場合を例に挙げて説明をする。
【0018】
また、原料タンク10内の液体原料11上部には窒素等のガスが入っている。これにより、隙間から埃や外気が入らないように、原料タンク10内の圧力P1は、0.1MPa程度に与圧されている。
【0019】
液体原料配管20は、原料タンク10から液体用MFC(Mass Flow Controller)50へ液体原料11を供給するための配管である。液体原料配管20の一方側の端部は、原料タンク10に接続されている。
【0020】
液体原料圧送ポンプ30は、原料タンク10から液体原料配管20および分岐配管21を介して、液体原料11を液体用MFC50へ圧送するためのポンプである。液体原料圧送ポンプ30は、液体原料配管20における原料タンク10寄りの位置に設けられている。液体原料圧送ポンプ30のストローク数は、例えば最大190回/分程度である。液体原料圧送ポンプ30の二次側における液体原料配管20内の圧力は、上記原料タンク10内の圧力P1よりも高い圧力P2である。なお、二次側とは、ガラス原料が流れる方向における下流側を意味する。また、上記二次側に対して、ガラス原料が流れる方向における上流側を一次側として以下説明する。
【0021】
第一圧力調整弁40は、その一次側配管42が液体原料配管20に接続され、二次側配管43が原料タンク10に接続されている。このため、第一圧力調整弁40の一次側圧力は圧力P2となり、第一圧力調整弁40の二次側圧力は圧力P2よりも低い圧力P1となっている。第一圧力調整弁40は、その高圧側(一次側配管42内の)圧力と低圧側(二次側配管43内の)圧力の圧力差(差圧)に応じて開度調整部41により弁の開度が調整される。
【0022】
液体原料配管20における他方側は、分岐点Aにおいて、複数系統(本例では、3系統)の分岐配管21に分岐されている。各系統における分岐配管21には、それぞれ減圧弁90が設けられている。減圧弁90は、液体原料配管20が分岐されることにより圧力に差が発生した分岐配管21内の圧力を、例えば、所定の圧力P3に調整するための調整弁である。調整される圧力P3は、原料タンク10内の圧力P1よりも高い圧力である。
【0023】
液体用MFC50は、分岐配管21を流れてくる液体原料11の流量を制御するためのコントローラである。液体用MFC50は、制御した所定量の液体原料11を、分岐配管22(液体用MFC50の2次側の配管)を介して気化装置70に送り出す。
【0024】
第二圧力調整弁60は、分岐配管21において、液体用MFC50の一次側であって、かつ減圧弁90の二次側に設けられている。第二圧力調整弁60の一次側配管62は、分岐配管21に接続されており、二次側配管63は、原料タンク10に接続されている。このため、第二圧力調整弁60の一次側圧力は圧力P3となり、第二圧力調整弁60の二次側圧力は圧力P3よりも低い圧力P1となっている。第二圧力調整弁60は、その高圧側(一次側配管62内の)圧力と低圧側(二次側配管63内の)圧力の圧力差(差圧)に応じて開度調整部61により弁の開度が調整される。
【0025】
気化装置70は、液体用MFC50の二次側に接続されている。気化装置70は、液体用MFC50から送られてきた液体原料11を気化させるための装置である。気化装置70は、例えば高速で噴射されるキャリアガスに液体原料11を滴下することにより、ガラス原料ガスを生成する。また、液体原料11がOMCTSのシロキサン液である場合には、175℃~200℃程度に加熱する。
キャリアガスとしては、例えば、窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。
【0026】
ガラス原料ガスは、原料ガス供給管23を介して、反応容器2に設けられているバーナ80に供給される。
【0027】
次に、原料供給装置1を用いた原料供給方法について説明する。
液体原料圧送ポンプ30を駆動させることにより、原料タンク10内の液体原料11を、液体原料配管20を介して液体用MFC50へ向けて圧送する。液体原料圧送ポンプ30の圧送により、液体原料圧送ポンプ30の二次側における液体原料配管20内の圧力は、原料タンク10内の圧力P1よりも高い圧力P2になる。また、液体原料圧送ポンプ30の圧送により、液体原料圧送ポンプ30の二次側における液体原料配管20内の圧力P2に脈動が発生する。
【0028】
第一圧力調整弁40の開度は、一次側配管42の圧力P2の変化に応じて調整されるので、圧力P2の脈動(変動)が平坦化される。これにより、液体原料配管20内の圧力P2に生じた上記脈動は、液体原料配管20に設けられた第一圧力調整弁40によって抑制される。
また、液体原料11の一部は、第一圧力調整弁40の二次側配管43を介して原料タンク10に戻される。
【0029】
液体原料配管20を流れる液体原料11は、分岐点Aにおいて三つの分岐配管21に分岐して流される。液体原料配管20を分岐することで三つの分岐配管21の圧力間にばらつきが発生する。各分岐配管21間における圧力のばらつきをなくすために減圧弁90によって各分岐配管21の圧力を調整する。
【0030】
また、液体原料11が減圧されることにより、液体原料11に溶存していたガスが気泡となって分岐配管21内に発生するおそれがある。
【0031】
分岐配管21において、液体用MFC50の一次側であって、かつ減圧弁90の二次側に、第二圧力調整弁60が設けられている。第二圧力調整弁60の一次側配管62は、分岐配管21に接続され、二次側配管63は、原料タンク10に接続されている。これにより、第二圧力調整弁60の一次側圧力は圧力P3となり、第二圧力調整弁60の二次側圧力は圧力P3よりも低い圧力P1となる。第二圧力調整弁60は、その一次側(高圧側)圧力と二次側(低圧側)圧力の圧力差(差圧)に応じて開度調整部61により弁の開度が調整される。これにより、分岐配管21内に発生した上記気泡は、分岐配管21に設けた第二圧力調整弁60によって低圧(圧力P3より低い圧力)の二次側配管63側に流れるので、取り除くことができる。気泡と共に液体原料11の一部も第二圧力調整弁60の二次側に流れるが、二次側に流れた液体原料11は、二次側配管63を介して原料タンク10に戻される。
【0032】
気泡が除去された液体原料11は、液体用MFC50に送られる。続いて、液体用MFC50により液体原料11の流量が制御され、制御された所定量の液体原料11は気化装置70に送られる。続いて、気化装置70によりガラス原料ガスが生成され、生成されたガラス原料ガスは、バーナ80に供給される。
【0033】
以上詳述したように、本実施形態に係る原料供給装置1および原料供給方法によれば、液体原料圧送ポンプ30の二次側に第一圧力調整弁40を設け、第一圧力調整弁40の二次側を一次側より低い圧力P1の原料タンク10に接続している。第一圧力調整弁40の開度は、高圧側(一次側)の圧力の変化に応じて調整されるので、高圧側(一次側)の圧力変動が平坦化される。これにより、液体原料圧送ポンプ30により生じる脈動(圧力変動)を抑えることができる。このため、液体用MFC50における一次側の圧力の変動が抑えられて、液体用MFC50に流れる液体原料11の流量変動が抑えられる。これにより、気化装置70で気化されるガラス原料ガスの流量変動を抑えることができ、バーナ80から噴出するガラス原料ガスの流量変動を抑えられるので、ガラス微粒子堆積体に堆積されるガラス微粒子の特性の変動を抑制できる。
【0034】
また、液体原料圧送ポンプ30などによって発生した溶存ガスの気泡は、第一圧力調整弁40の高圧側から低圧側(二次側配管43側)に流れるので、液体用MFC50へ供給される液体原料11から溶存ガスを取り除くことができる。溶存ガスが取り除かれることで、液体用MFC50に流れる液体原料11の流量変動や気化装置70で気化されたガラス原料ガスの気化状態への影響を抑えることができる。これにより、ガラス微粒子堆積体に堆積されるガラス微粒子の特性の変動をさらに抑制できる。
【0035】
また、本実施形態に係る原料供給装置1は、各バーナ80に接続される分岐配管21において液体用MFC50の一次側にそれぞれ第二圧力調整弁60が設けられ、第二圧力調整弁60の二次側が一次側より低い圧力P1の原料タンク10に接続されている。各分岐配管21に液体原料11が分流される際に、分岐配管21内の圧力が減圧されて発生した溶存ガスの気泡は、第二圧力調整弁60の高圧側から低圧側(二次側配管63側)に流れる。これにより、液体用MFC50へ供給される液体原料11から溶存ガスを取り除くことができる。溶存ガスが取り除かれることで、液体用MFC50に流れる液体原料11の流量変動や気化装置70で気化されたガラス原料ガスの気化状態への影響を抑えることができる。したがって、バーナ80から噴出するガスの流量変動が抑えられ、ガラス微粒子堆積体に堆積されるガラス微粒子の特性の変動をさらに抑えることができる。
【0036】
上記実施形態では図1で示したように、分岐点Aにおいて複数系統(図1の例では、三系統)に分岐して系統毎にそれぞれ一つのバーナにガラス原料ガスを供給しているが、液体用MFC50までを一系統としてもよい。この場合、液体原料配管20における他方側は、分岐せず液体用MFCに接続され、この液体原料配管20に第二圧力調整弁60が設けられる(なお、この場合は減圧弁90を設けなくてもよい。)そして、液体用MFC50の二次側で複数系統に分岐して、それぞれの系統が、気化装置70、原料ガス供給管23を介してバーナ80に接続される。或いは、液体用MFC50の二次側で複数系統に分岐せずに、気化装置70、原料ガス供給管23を介してバーナ80に接続されるようにして、一つのバーナのみにガラス原料ガスを供給する構成としてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、第一圧力調整弁40の二次側配管43および第二圧力調整弁60の二次側配管63を原料タンク10に接続しているが、これに限定されず、(第一圧力調整弁40、第二圧力調整弁60の)一次側よりも低い圧力の箇所に接続されていればよい。例えば、一次側より低い圧力(大気圧等)が与圧された別の容器に接続して、二次側配管43,63を流れる液体原料11をこの容器内に排出するようにしてもよい。
【0038】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:原料供給装置
10:原料タンク
11:液体原料
20:液体原料配管
21:分岐配管
30:液体原料圧送ポンプ
40:第一圧力調整
42,62:一次側配管
43,63:二次側配管
50:液体用MFC
60:第二圧力調整弁
70:気化装置
80:バーナ
90:減圧弁
図1