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特許7409367電子機器、記憶動作制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】電子機器、記憶動作制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 12/06 20060101AFI20231226BHJP
   G06F 12/00 20060101ALI20231226BHJP
   G06F 11/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G06F12/06 515J
G06F12/00 597Z
G06F11/00 602Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021207805
(22)【出願日】2021-12-22
(65)【公開番号】P2023092655
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 宗隆
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-303382(JP,A)
【文献】特開2011-61374(JP,A)
【文献】米国特許第10249814(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 12/00 - 12/06
G06F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を有さない磁気方式による第1の不揮発性メモリと、
磁気方式ではない第2の不揮発性メモリと、
周囲の磁場の情報を取得する取得部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1の不揮発性メモリへのデータの書き込み時に前記取得部が取得した前記情報に基づいて自機における基準以上の磁場強度に係る強磁場がかかっていると判別した場合に、前記データの前記第1の不揮発性メモリへの書き込みを中止して当該データを前記第2の不揮発性メモリに書き込み、
前記取得部が取得した前記情報に基づいて前記強磁場がかかっていないと判別した場合に、前記第2の不揮発性メモリに書き込まれた前記データがある場合には、当該データを前記第1の不揮発性メモリへ書き込む
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記取得部は、当該電子機器の充電動作及び通信動作のうち少なくとも一方の動作の有無を前記情報として取得し、
前記制御部は、前記動作がなされている場合に前記強磁場がかかっていると判別する
ことを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記取得部は、磁場センサを有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2の不揮発性メモリに前記データを書き込む際に、当該データの前記第1の不揮発性メモリにおける書込み位置に係る情報を併せて記憶させ、
前記強磁場がかかっていないと判別した場合に、前記第2の不揮発性メモリに書き込まれたデータがある場合には、前記書込み位置に係る情報に基づいて当該データを前記第1の不揮発性メモリへ書き込む
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、保持するデータを前記第1の不揮発性メモリに記憶させるか前記第2の不揮発性メモリに記憶させるかを決定し、
前記第2の不揮発性メモリには、当該第2の不揮発性メモリに保持させるデータの第1の記憶領域と、前記第1の不揮発性メモリに保持させるデータを一時的に書き込む第2の記憶領域とが各々定められている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
可動部を有さない磁気方式による第1の不揮発性メモリと、磁気方式ではない第2の不揮発性メモリと、を用いた前記第1の不揮発性メモリへの記憶動作制御方法であって、
前記第1の不揮発性メモリへのデータの書き込み時に自機における基準以上の磁場強度に係る強磁場がかかっていると判別した場合に、前記データの前記第1の不揮発性メモリへの書き込みを中止して当該データを前記第2の不揮発性メモリに書き込み、
前記強磁場がかかっていないと判別した場合に、前記第2の不揮発性メモリに書き込まれた前記データがある場合には、当該データを前記第1の不揮発性メモリへ書き込む
ことを特徴とする記憶動作制御方法。
【請求項7】
可動部を有さない磁気方式による第1の不揮発性メモリと、磁気方式ではない第2の不揮発性メモリと、を備えるコンピュータを、
前記第1の不揮発性メモリへのデータの書き込み時に自機における基準以上の磁場強度に係る強磁場がかかっていると判別した場合に、前記データの前記第1の不揮発性メモリへの書き込みを中止して当該データを前記第2の不揮発性メモリに書き込む第1制御手段、
前記強磁場がかかっていないと判別した場合に、前記第2の不揮発性メモリに書き込まれた前記データがある場合には、当該データを前記第1の不揮発性メモリへ書き込む第2制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器、記憶動作制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子計算機などのデジタル処理において、データの読み書きの高速化、大容量化及び低コスト化は重要な問題であり、従来の揮発性メモリ(RAM)や不揮発性メモリに加えて他の方式が考案、開発されている。MRAM(Magnetic Random Access Memory)のような磁気メモリは、リフレッシュ動作を不要としつつ、RAM同様の高速な読み書きが可能かつフラッシュメモリなどと比較して印加電圧が低く寿命も長い記憶方式の一つとして知られている。
【0003】
磁気メモリは、電流により磁化の向きを反転制御することで0、1の値を表す技術であり、従来のメモリと比較して強磁場の影響を受けやすい。これに対し、特許文献1では、強磁場が検出された場合に、磁気メモリから他の記憶部にデータを退避させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-61374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気メモリは、データの書き込み時に最も磁場の影響を受けやすい。一方で、磁場状態によらず新たなデータが発生し得る場合、発生したデータをそのまま放置すると、揮発性メモリの容量を圧迫して安定動作に問題が生じる課題がある。
【0006】
この発明の目的は、外部磁場に対してより安定して動作させることのできる電子機器、記憶動作制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
可動部を有さない磁気方式による第1の不揮発性メモリと、
磁気方式ではない第2の不揮発性メモリと、
周囲の磁場の情報を取得する取得部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1の不揮発性メモリへのデータの書き込み時に前記取得部が取得した前記情報に基づいて自機における基準以上の磁場強度に係る強磁場がかかっていると判別した場合に、前記データの前記第1の不揮発性メモリへの書き込みを中止して当該データを前記第2の不揮発性メモリに書き込み、
前記取得部が取得した前記情報に基づいて前記強磁場がかかっていないと判別した場合に、前記第2の不揮発性メモリに書き込まれた前記データがある場合には、当該データを前記第1の不揮発性メモリへ書き込む
ことを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、電子機器を外部磁場に対してより安定して動作させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電子機器の機能構成を示すブロック図である。
図2】磁気メモリにおける外部磁場の影響について説明する図である。
図3】書込み制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の電子機器1の機能構成を示すブロック図である。
【0011】
電子機器1は、例えば、電子時計やスマートウォッチなどの小型携帯型端末装置(コンピュータ)であって、CPU11(Central Processing Unit)(制御部)と、RAM12(Random Access Memory)と、磁気メモリ13(第1の不揮発性メモリ)と、不揮発性メモリ14(第2の不揮発性メモリ)と、表示部15と、操作受付部16と、通信部17と、磁場センサ18と、電力供給部19などを備える。
【0012】
CPU11は、演算処理を行い電子機器1の動作を統括制御するハードウェアプロセッサである。CPU11は、複数が並列に処理を行うものであってもよい。並列の処理は、単一の処理内容を分散処理するものであってもよいし、各々別個の処理を独立して行うものであってもよい。
【0013】
RAM12は、CPU11に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。RAMは、例えば、DRAMであり、また、RAMの一部又は全部がSRAMであってもよい。
【0014】
磁気メモリ13は、磁気方式による記憶媒体(可動部を有さない)であって、例えば、周知の磁気抵抗メモリ(MRAM;MTJ(Magnetic Tunnel Junction)を用いるものを含む)であり、不揮発性メモリではあるが、電子機器1では、従来の不揮発性メモリとしての使い方、すなわちデータの保持と、従来の揮発性メモリとしての使い方の一部、すなわち処理などでの一時データとしてのアクセスとを兼用して利用される。不揮発性メモリ14は、磁気方式ではない不揮発性メモリであり、例えばフラッシュメモリ(SSD;Solid State Driveを含む)である。
【0015】
通常、磁気メモリ13によるデータの読み書きは、フラッシュメモリなどの一般的な不揮発性メモリ14よりも高速であり、特に書き込み時の消費電力が小さいので、磁気メモリ13には参照、更新頻度が高いと想定されるデータなどが磁気メモリ13に記憶され、読み出されるとしばらくRAM12に展開されるプログラム131や、変更設定が別途記憶されて、初期化時以外には参照されることの少ない初期設定データなどが不揮発性メモリ14に記憶される。記憶保持させるデータを磁気メモリ13と不揮発性メモリ14とのうちいずれに書き込むかは、内容ごとに各々設定(決定)されてよい。
【0016】
不揮発性メモリ14には、通常記憶部141(第1の記憶領域)と、代替記憶部142(第2の記憶領域)とで領域が区分けされて(各々定められて)いる。通常記憶部141は、上記のように、不揮発性メモリ14に記憶させる選択がなされたデータを記憶保持する。代替記憶部142は、後述のように、磁気メモリ13に記憶させる選択がなされたデータを一時的に記憶する。
【0017】
表示部15は、表示画面を有し、CPU11の制御に従って表示画面に各種情報を表示する。表示画面は、特には限られないが、例えば液晶表示画面(LCD)や有機EL画面である。また、表示部15は、LEDランプなどを有して、その点灯動作や点滅動作などにより予め定められた内容を報知することが可能であってもよい。
【0018】
操作受付部16は、外部からの入力操作を受け付けて、受け付け内容を入力信号としてCPU11へ出力する。操作受付部16は、例えば、押しボタンスイッチ、回転スイッチ、スライドスイッチ、ロッカースイッチ、表示画面に重ねられたタッチパネルなどのうち一部又は全部を有している。
【0019】
通信部17は、アンテナと送受信回路とを有し、外部機器との通信を制御してデータの送受信を行う。通信部17が制御可能な通信の規格としては、特には限られないが、例えば、ブルートゥース(登録商標)、無線LAN、赤外線通信などが挙げられ、複数種類の通信規格による通信が併用又は選択的に実行可能であってもよい。送受信回路は、送受信データの変復調及びデジタルデータの符号化、復号などの処理を行う。
【0020】
磁場センサ18は、磁場を計測して計測結果をCPU11に出力する。磁場センサ18は、少なくとも磁気メモリ13の書き込み動作に問題が生じ得るレベルより若干低い基準磁場強度を検出可能な計測範囲を有する。磁場センサ18は、磁場強度のみが得られるものであってもよいし、互いに直交する3軸方向の磁場ベクトル成分を各々計測可能なものであってもよい。3軸は、磁気メモリ13において印加される磁場の方向に応じて定められていてもよい。磁場センサ18は、磁気メモリ13の直近に位置していてもよいし、外部磁場を計測しやすい図示略の筐体付近に位置していてもよい。
【0021】
電力供給部19は、電子機器1の各部に予め定められた電圧で電力を供給する。電力供給部19は、特には限られないが二次電池191を有して、当該二次電池191の出力電力を適宜な電圧などに変換して出力する。二次電池191は、外部からの電力供給により充電可能であってよく、例えば、電力供給端子と外部端子との接続有無や所定の電圧印加の有無などに応じて電力充電制御部192により充放電が制御される。
【0022】
次に、本実施形態の電子機器1における磁気メモリ13の記憶動作制御について説明する。
本実施形態の磁気メモリ13であるMRAMは、強磁性体層の磁化を電流により反転させることでデータの書き込みを行う。磁化の状態は、外部から強い磁場がかかると(強い磁界があると)影響を受けるが、特に、データの書き込み時に余計な磁場がかかると、不正確に磁化した状態となって、誤ったデータが書き込まれる場合が生じる。
【0023】
図2は、磁気メモリ13における外部磁場の影響について説明する図である。
磁気メモリ13へのデータの書き込み時に悪影響を与える磁場強度の下限値BLは、読出しや、記憶されているデータそのものに悪影響を与える磁場強度の下限値BHに比べて顕著に低い。その結果、積極的に強い磁石などを近づけないと生じにくい下限値BH以上の磁場強度と比べて、前者の下限値BL以上の磁場強度は、携帯型の電子機器の使用時にもしばしば生じ得る範囲に含まれ得る。下限値BLは、磁気メモリ13に依存するが、例えば、磁界が2000A/m程度(磁束密度が約2.6mT、地磁場の約50-120倍)である。書き込みの危険性を判断する磁場の基準強度Bth(基準の磁場強度)は、下限値BLよりも低くてもよく、例えば、下限値BLの5-9割程度であってもよい。すなわち、基準強度Bthは、磁気メモリ13に既に記憶されているデータについては問題(異常)を生じさせないレベルの磁場強度である。
【0024】
本実施形態の電子機器1では、このように磁気メモリ13に対する書き込みに影響を与え得る磁場を計測、又はこのような磁場(強磁場)を生じ得る状態(動作)の有無を磁場情報として取得し、当該磁場情報に基づいて磁気メモリ13への書き込みを中止させる。
【0025】
この場合、磁気メモリ13に書き込みを中止した状態が継続すると、その間に磁気メモリ13に記憶させるデータとしてRAMに一時記憶されるデータが増大していく状況、例えば、継続的又は断続的な計測結果の履歴の取得時では、RAMの容量が圧迫されて、最終的に通常のRAM12の動作に問題を来す場合があり得る。そこで、磁気メモリ13に書き込みを中止する間、不揮発性メモリ14の代替記憶部142にRAM12に保持されるデータを一時記憶させ、磁気メモリ13への書き込みが可能になった後に、当該データを代替記憶部142から読み出して磁気メモリ13へ書き込む。
【0026】
ここで考慮される磁場としては、例えば、外部の永久磁石や強い磁場を発生する製品や工場などとの接近の他、電子機器1自身での磁場を発生する動作、例えば、通信動作や充電動作などが含まれてもよい。また、これらの組み合わせ、例えば、外部機器の充電コネクタが磁石を有していて充電動作時に当該充電コネクタにより電子機器1が固定されるというような場合には、充電動作自体が強い磁場を生じるわけではないが、充電動作が充電コネクタの磁石への接近と等価となることから、充電動作が強磁場に接近する動作として考慮され得る。したがって、電子機器1では、磁場センサ18による直接的な磁場の計測に加えて、通信動作の実行有無や充電動作の実行有無なども、周囲の磁場の情報(磁場情報)に含まれ得る。したがって、磁場センサ18とともに、通信部17及び電力供給部19から動作状況を取得するCPU11も本実施形態の取得部を構成する。
また、このような動作有無に係る情報は、実際に動作を開始してからではなく、動作を開始する直前から予告情報を含めて磁場情報としてCPU11が取得することができてもよい。これにより、より確実に強磁場による磁気メモリ13への書き込みエラーの発生を抑制しながら安定してデータの記憶動作を含む各種処理を行うことができる。
【0027】
図3は、本実施形態の記憶動作制御方法を含む書込み制御処理のCPU11による制御手順を示すフローチャートである。この処理は、磁気メモリ13への書込みデータが生じた場合にプログラム131が読み出されて起動される。
【0028】
書込み制御処理が開始されると、CPU11は、磁場センサ18の計測結果などの磁場情報を取得する(ステップS101)。CPU11は、磁場が基準以上の強度と見込まれる(自機、特に磁気メモリ13に強磁場がかかっている)か否かを判別する(ステップS102)。上記のように、通信動作や充電動作の実行時の磁場は直接計測されなくてもよく、電子機器1の製品についての事前に行われた実験の結果などに基づいて強磁場がかかっているものと予め設定されていればよい。
【0029】
強磁場がかかっていると判別された場合には(ステップS102で“YES”)、CPU11は、書き込み対象のデータがRAM12にあるか否かを判別する(ステップS103)。書き込み対象のデータがRAM12にないと判別された場合には(ステップS103で“NO”)、CPU11は、書込み制御処理を終了する。
【0030】
書き込み対象のデータがRAM12にあると判別された場合には(ステップS103で“YES”)、CPU11は、磁気メモリ13への書き込み動作を中止して、書き込み対象のデータを不揮発性メモリ14の代替記憶部142に書き込む処理を開始する(ステップS104;第1制御手段)。なお、磁場強度が急激に上昇した場合などには、最後の磁気メモリ13に書き込んだデータが既に強磁場の影響を受けている可能性があるので、CPU11は、磁気メモリ13に書き込んだデータに若干遡って代替記憶部142に書き込む処理を行ってもよい。CPU11は、不揮発性メモリ14への代替書込みデータがある旨設定する(ステップS105)。このとき、CPU11は、代替書込みデータの磁気メモリ13における書き込み対象アドレス(書込み位置)などの情報を併せて書込み、記憶させる。それから、CPU11の処理は、ステップS101へ戻る。
【0031】
ステップS102の判別処理で、強磁場がかかっていないと判別された場合には(ステップS102で“NO”)、CPU11は、代替書込みデータがある設定がなされているか否かを判別する(ステップS111)。代替書込みデータがある設定がなされていると判別された場合には(ステップS111で“YES”)、代替書込みデータを不揮発性メモリ14の代替記憶部142から読み出して、ステップS105の処理で記憶された書込み対象アドレスに基づて磁気メモリ13の設定位置に書き込む動作を開始する(ステップS112;第2制御手段)。それから、CPU11の処理は、ステップS101に戻る。
【0032】
代替書込みデータがある設定がなされていないと判別された場合には(ステップS111で“NO”)、CPU11は、RAM12に書き込み対象のデータがあるか否かを判別する(ステップS113)。RAM12に書き込み対象データがないと判別された場合には(ステップS113で“NO”)、CPU11は、書込み制御処理を終了する。
【0033】
書き込み対象データがRAM12にあると判別された場合には(ステップS113で“YES”)、CPU11は、書き込み対象データを磁気メモリ13へ書き込む(ステップS114)。CPU11は、代替書込みデータがない旨設定する(ステップS115)。それから、CPU11の処理は、ステップS101に戻る。
【0034】
以上のように、本実施形態の電子機器1は、磁気メモリ13と、磁気方式ではない不揮発性メモリ14と、自機内及び/又は周囲の磁場の情報を取得する取得部(磁場センサ18と、自機の磁場を発生させる通信部17や電力供給部19などの動作に係る情報を取得するCPU11)と、CPU11と、を備える。CPU11は、磁気メモリ13へのデータの書き込み時に取得部が取得した情報に基づいて基準以上の磁場強度の存在に係る強磁場がかかっていると判別した場合に、書き込み対象のデータの磁気メモリ13への書き込みを中止して当該データを不揮発性メモリ14に書き込み、取得部が取得した情報に基づいて強磁場がかかっていないと判別した場合に、不揮発性メモリ14に書き込まれたデータがある場合には、当該データを磁気メモリ13へ書き込む。
このように、磁気メモリ13におけるデータの保持や読出しと比較して、動作に異常をきたす磁場強度の低い書き込み動作及び書込みデータの記憶保持を一時的に代替させる処理を実行可能とすることで、磁気メモリ13に対する磁場遮蔽能力を適宜なレベルに留めることができるので、電子機器1の製造コスト、サイズや重量の増加を抑えることができる。特に、書き込み動作を一時中止させることを可能とすることで、磁気メモリ13と電力供給部19や通信部17との電子機器1内での位置関係の制限を弱めることができるので、より効率的に電子機器1の小型化や多機能化などを図ることができる。
【0035】
また、取得部は、電子機器1の充電動作及び通信動作のうち少なくとも一方の動作の有無を情報として取得し、CPU11は、動作がなされている場合に強磁場がかかっていると判別する。自機の動作や当該動作に関係した外部磁石への接近であって位置関係や発生磁場の大きさが概ね定まっている場合には、その動作の有無だけで問題となり得る磁場の発生が分かるので、磁場計測をするまでもなく適切に強磁場の有無に係る情報を得ることができる。また、この場合には実際に強磁場が発生する前、すなわちこれら通信動作や充電動作を開始する前に強磁場の発生予告情報を得ることが可能になる場合を含むので、より確実に磁気メモリ13への書き込みエラーの発生を抑制することができる。
【0036】
また、取得部は、磁場センサ18を有する。実際に磁場を計測することで、外部磁場などの想定外の強磁場の影響を速やかに検出して、磁気メモリ13への書き込み処理を中止させることができる。
【0037】
また、CPU11は、不揮発性メモリ14に磁気メモリ13への書き込み対象のデータを書き込む際に、当該データの磁気メモリ13における書込み位置に係る情報を併せて記憶させ、強磁場がかかっていないと判別した場合に、不揮発性メモリ14に書き込まれたデータがある場合には、上記の書込み位置に係る情報に基づいて不揮発性メモリ14に書き込まれたデータを磁気メモリ13へ書き込む。これにより、磁気メモリ13に直接書き込まれたデータと、不揮発性メモリ14を経由して書き込まれたデータの書き込み順などを適切に整合させて、その後の磁気メモリ13からのデータの読み出しを容易に行わせることを可能とすることができる。
【0038】
また、CPU11は、保持するデータを磁気メモリ13に記憶させるか不揮発性メモリ14に記憶させるかを決定し、不揮発性メモリ14には、当該不揮発性メモリ14に保持させるデータの通常記憶部141と、磁気メモリ13に保持させるデータを一時的に書き込む代替記憶部142とが各々定められていてもよい。このように、不揮発性メモリ14を磁気メモリ13の予備としてのみ用いるのではなく、データに応じて適切に磁気メモリ13と使い分けて当該データを記憶保持することで、より効率よくデータを記憶させ、また、電子機器1に安定動作を行わせることができる。
【0039】
また、磁気メモリ13と不揮発性メモリ14とを用いた本実施形態の磁気メモリ13への記憶動作制御方法では、磁気メモリ13へのデータの書き込み時に自機における基準以上の磁場強度に係る強磁場がかかっていると判別した場合に、書き込み対象データの磁気メモリ13への書き込みを中止して当該データを不揮発性メモリ14に書き込み、強磁場がかかっていないと判別した場合に、不揮発性メモリ14に書き込まれた書き込み対象データがある場合には、当該データを磁気メモリ13へ書き込む。
このように、磁気メモリ13への書き込み時に磁場強度に応じて選択的に当該磁気メモリ13への書き込みを中止して不揮発性メモリ14に代替記憶させ、磁場強度が十分に落ちてから代替記憶データを磁気メモリ13に書き込むことで、RAM12の容量を圧迫せずに安定動作させながら、磁気メモリ13に書き込むデータを適切に保持することが可能となる。
【0040】
また、上記記憶動作制御方法に係るプログラム131をインストールしてソフトウェア的に実行することで、特殊な追加のハードウェア構成を必要とせず、磁気メモリ13を備える電子機器1を容易により安定して動作させることができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、磁気メモリ13に書き込まれた代替書込みデータを不揮発性メモリ14にそのまま放置する(他のデータの書き込みがあった場合に上書きされる)ものとして説明したが、磁気メモリ13に書き込まれた代替書込みデータを不揮発性メモリ14から消去する動作を行ってもよい。
【0042】
また、上記実施の形態では、不揮発性メモリ14において通常記憶部141と代替記憶部142とを完全に区分けしたが、必ずしも完全に区分けしなくてもよい。この場合には、代替書込みデータを記憶させる領域として、磁気メモリ13の記憶容量と同程度の容量が確保されるように通常の書き込み動作が制限されればよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、通信動作及び充電動作を磁場情報に含めることとしたが、これらの一方又は両方が磁場情報に含まれなくてもよい。また、通信動作のうち一部の通信規格に係るもののみを磁場情報に含んでもよい。また、通信動作及び充電動作以外にも強磁場を発生する動作を行う電子機器の場合には、当該動作の実行に係る情報を磁場情報に含めてもよい。
【0044】
また、強磁場でなくなった場合に、代替記憶部142に記憶された代替書込みデータと、引き続きRAM12から磁気メモリ13に記憶させるデータとの両方がある場合、上記実施の形態では、先に代替書込みデータを磁気メモリ13に書き込むものとして説明したが、これに限られない。先にRAM12に記憶されているデータを磁気メモリ13に書き込むことで、当該磁気メモリ13への書込みデータをRAM12に留めて記憶容量を占有しないようにしてもよい。また、RAM12の磁気メモリ13への書込みデータが断続的に生じる場合などには、RAM12から磁気メモリ13への書き込みの間に代替書込みデータを磁気メモリ13に書き込んでもよい。
【0045】
また、磁場センサ18には、必要な計測強度幅が得られれば、通常の地磁場センサと併用されてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、電子機器1を携帯型であるものとして説明したが、これに限られるものではない。据え置き型(必要に応じて持ち運びされるものを含む)の電子機器であってもよい。
【0047】
また、以上の説明では、本発明の磁気メモリ13への書き込み制御に係るプログラム131を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体として磁気メモリ13を例に挙げて説明したが、これに限られない。SSDを含むフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ14に記憶されてもよい。その他の磁気方式ではないコンピュータ読み取り可能な媒体として、FeRAM(強誘電体メモリ)などの他の不揮発性メモリや、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0049】
[付記]
<請求項1>
可動部を有さない磁気方式による第1の不揮発性メモリと、
磁気方式ではない第2の不揮発性メモリと、
周囲の磁場の情報を取得する取得部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1の不揮発性メモリへのデータの書き込み時に前記取得部が取得した前記情報に基づいて自機における基準以上の磁場強度に係る強磁場がかかっていると判別した場合に、前記データの前記第1の不揮発性メモリへの書き込みを中止して当該データを前記第2の不揮発性メモリに書き込み、
前記取得部が取得した前記情報に基づいて前記強磁場がかかっていないと判別した場合に、前記第2の不揮発性メモリに書き込まれた前記データがある場合には、当該データを前記第1の不揮発性メモリへ書き込む
ことを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記取得部は、当該電子機器の充電動作及び通信動作のうち少なくとも一方の動作の有無を前記情報として取得し、
前記制御部は、前記動作がなされている場合に前記強磁場がかかっていると判別する
ことを特徴とする請求項1記載の電子機器。
<請求項3>
前記取得部は、磁場センサを有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
<請求項4>
前記制御部は、
前記第2の不揮発性メモリに前記データを書き込む際に、当該データの前記第1の不揮発性メモリにおける書込み位置に係る情報を併せて記憶させ、
前記強磁場がかかっていないと判別した場合に、前記第2の不揮発性メモリに書き込まれたデータがある場合には、前記書込み位置に係る情報に基づいて当該データを前記第1の不揮発性メモリへ書き込む
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項5>
前記制御部は、保持するデータを前記第1の不揮発性メモリに記憶させるか前記第2の不揮発性メモリに記憶させるかを決定し、
前記第2の不揮発性メモリには、当該第2の不揮発性メモリに保持させるデータの第1の記憶領域と、前記第1の不揮発性メモリに保持させるデータを一時的に書き込む第2の記憶領域とが各々定められている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項6>
可動部を有さない磁気方式による第1の不揮発性メモリと、磁気方式ではない第2の不揮発性メモリと、を用いた前記第1の不揮発性メモリへの記憶動作制御方法であって、
前記第1の不揮発性メモリへのデータの書き込み時に自機における基準以上の磁場強度に係る強磁場がかかっていると判別した場合に、前記データの前記第1の不揮発性メモリへの書き込みを中止して当該データを前記第2の不揮発性メモリに書き込み、
前記強磁場がかかっていないと判別した場合に、前記第2の不揮発性メモリに書き込まれた前記データがある場合には、当該データを前記第1の不揮発性メモリへ書き込む
ことを特徴とする記憶動作制御方法。
<請求項7>
可動部を有さない磁気方式による第1の不揮発性メモリと、磁気方式ではない第2の不揮発性メモリと、を備えるコンピュータを、
前記第1の不揮発性メモリへのデータの書き込み時に自機における基準以上の磁場強度に係る強磁場がかかっていると判別した場合に、前記データの前記第1の不揮発性メモリへの書き込みを中止して当該データを前記第2の不揮発性メモリに書き込む第1制御手段、
前記強磁場がかかっていないと判別した場合に、前記第2の不揮発性メモリに書き込まれた前記データがある場合には、当該データを前記第1の不揮発性メモリへ書き込む第2制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0050】
1 電子機器
11 CPU
12 RAM
13 磁気メモリ
131 プログラム
14 不揮発性メモリ
141 通常記憶部
142 代替記憶部
15 表示部
16 操作受付部
17 通信部
18 磁場センサ
19 電力供給部
191 二次電池
192 電力充電制御部
図1
図2
図3