IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

特許7409369樹脂組成物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂複合シート、および、プリント配線板
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂複合シート、および、プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20231226BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231226BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231226BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231226BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08L25/08
C08L101/00
C08J5/24 CER
B32B15/08 105A
H05K1/03 610N
H05K3/46 T
H05K3/46 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021502311
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007686
(87)【国際公開番号】W WO2020175537
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2019035456
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美香
(72)【発明者】
【氏名】小林 宇志
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 恵一
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-114823(JP,A)
【文献】特開平04-015215(JP,A)
【文献】特開平04-013756(JP,A)
【文献】特開平04-013751(JP,A)
【文献】特開平11-199718(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181842(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/115813(WO,A1)
【文献】特開2020-029504(JP,A)
【文献】THIOUNN, Timmy et al.,Thermally-healable network solids of sulfur-crosslinked poly(4-allyloxystyrene),RSC Advances,2018年,8,39074-39082,DOI:10.1039/c8ra06847j
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00-13/08;C08L1/00-101/14
B29B11/16;15/08-15/14;C08J5/04-5/10;5/24
B32B1/00-43/00
H05K1/03;3/46
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能ビニル芳香族重合体(A)と熱硬化性化合物(B)とを含み、ラジカル重合開始剤を含まない樹脂組成物であって、
前記多官能ビニル芳香族重合体(A)が、式(V)で表される構成単位を有する重合体でありプリント配線板の絶縁層形成用である、樹脂組成物。
【化1】
(式中、Arは芳香族炭化水素連結基を表す。*は、結合位置を表す。)
【請求項2】
前記熱硬化性化合物(B)がシアナト基、ビニル基、マレイミド基、およびナジイミド基からなる群より選ばれる1つ以上の官能基を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対する、前記熱硬化性化合物(B)の含有量が、5~95質量部である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対する、前記多官能ビニル芳香族重合体(A)の含有量が、5~95質量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記多官能ビニル芳香族重合体(A)が、ジビニル芳香族化合物由来の構成単位(a)、および、モノビニル芳香族化合物由来の構成単位(b)を有し、
前記ジビニル芳香族化合物由来の構成単位(a)が、式(V1)で表される構成単位、式(V2)で表される構成単位、および、式(V3)で表される構成単位の少なくとも1つを含み、
前記モノビニル芳香族化合物由来の構成単位(b)が、式(V4)で表される構成単位を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(V1)~(V3)中、L 1 は、炭素数6~22の芳香族炭化水素連結基である。*は、結合位置を表す。)
【化3】
(式(V4)中、L 2 は、炭素数6~22の芳香族炭化水素連結基であり、R V1 は、水素原子または炭素数1~12の炭化水素基である。*は、結合位置を表す。)
【請求項6】
前記ジビニル芳香族化合物が、ジビニルベンゼンであり、前記モノビニル芳香族化合物が、スチレン、o-エチルビニルベンゼン、m-エチルビニルベンゼン、および、p-エチルビニルベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに充填材(C)を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対する、前記充填材(C)の含有量が、10~500質量部である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
基材と、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物とから形成された、プリプレグ。
【請求項10】
請求項に記載のプリプレグから形成された少なくとも1つの層と、前記プリプレグから形成された層の片面または両面に配置された金属箔とを含む、金属箔張積層板。
【請求項11】
支持体と、前記支持体の表面に配置された請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された層とを含む、樹脂複合シート。
【請求項12】
絶縁層と、前記絶縁層の表面に配置された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された層および請求項に記載のプリプレグから形成された層の少なくとも一方を含む、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ならびに、これを用いたプリプレグ、金属箔張積層板、樹脂複合シート、および、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末をはじめ、電子機器や通信機器等に用いられる半導体素子の高集積化および微細化が加速している。これに伴い、半導体素子の高密度実装を可能とする技術が求められており、その重要な位置をしめるプリント配線板についても改良が求められている。
一方、電子機器等の用途は多様化し拡大をつづけている。これを受け、プリント配線板やこれに用いる金属箔張積層板、プリプレグなどに求められる諸特性も多様化し、かつ厳しいものとなっている。そうした要求特性を考慮しながら、改善されたプリント配線板を得るために、各種の材料や加工法が提案されている。その1つとして、プリプレグを構成する樹脂材料の改良開発が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリフェニレンエーテル骨格を有する2官能性フェニレンエーテルオリゴマーの末端ビニル化合物(a)、特定のマレイミド化合物(b)、ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂(c)およびナフタレン骨格変性したノボラック型のエポキシ樹脂(d)を含む樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2では、少なくとも一端にマレイミド基を有する樹脂(N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドとジアミンを原料とするアミノビスマレイミド系樹脂)と、式(c1)で示されるブロモ化スチレンと式(c2)で示されるジビニルベンゼンとの共重合体とからなる難燃性樹脂組成物が開示されている。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-138364号公報
【文献】特開平03-006293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した例を含め、その材料開発により、プリント配線板における諸特性の改良が進められてきているが、技術の進展やアプリケーションの拡大に鑑みると、さらなる性能の向上が求められる。特に近年、高い耐熱性を有しつつ、低誘電率・低誘電正接である材料が求められている。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、誘電率および誘電正接が低く、耐熱性が高い樹脂組成物、およびこれを用いたプリプレグ、金属箔張積層板、樹脂複合シート、プリント配線板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者らはプリプレグ等のプリント配線板の用途に特に適した樹脂組成物の成分組成を検討した結果、多官能ビニル芳香族重合体と熱硬化性化合物とを組み合わせた樹脂組成物は、低誘電率・低誘電正接を示し、かつ、耐熱性が高いことが分かった。しかしながら、ラジカル重合開始剤を添加すると、これらの性能が劣ることが分かった。本発明はかかる知見により完成されるに至ったものであり、具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>~<11>により、上記課題は解決された。
【0008】
<1>多官能ビニル芳香族重合体(A)と熱硬化性化合物(B)とを含み、ラジカル重合開始剤を含まない樹脂組成物。
<2>前記多官能ビニル芳香族重合体(A)が、式(V)で表される構成単位を有する重合体である、<1>に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式中、Arは芳香族炭化水素連結基を表す。*は、結合位置を表す。)
<3>前記熱硬化性化合物(B)がシアナト基、ビニル基、マレイミド基、およびナジイミド基からなる群より選ばれる1つ以上の官能基を有する、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対する、前記熱硬化性化合物(B)の含有量が、5~95質量部である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対する、前記多官能ビニル芳香族重合体(A)の含有量が、5~95質量部である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>さらに充填材(C)を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対する、前記充填材(C)の含有量が、10~500質量部である、<6>に記載の樹脂組成物。
<8>基材と、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物とから形成された、プリプレグ。
<9><8>に記載のプリプレグから形成された少なくとも1つの層と、前記プリプレグから形成された層の片面または両面に配置された金属箔とを含む、金属箔張積層板。
<10>支持体と、前記支持体の表面に配置された<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された層とを含む、樹脂複合シート。
<11>絶縁層と、前記絶縁層の表面に配置された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された層および<8>に記載のプリプレグから形成された層の少なくとも一方を含む、プリント配線板。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、誘電率および誘電正接が低く、耐熱性が高い樹脂組成物、およびこれを用いたプリプレグ、金属箔張積層板、樹脂複合シート、プリント配線板を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容をその好ましい実施形態に沿って詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0011】
本実施形態に係る樹脂組成物は、多官能ビニル芳香族重合体(A)と熱硬化性化合物(B)とを含み、ラジカル重合開始剤を含まないことを特徴とする。
このような構成とすることにより、誘電率および誘電正接が低く、耐熱性が高い樹脂組成物を提供可能になる。さらに、ピール強度を高くすることも可能になる。また、その他の各種性能も向上させることが可能になる。特に近年、通信や動作信号が高周波数化する傾向にあるが、本実施形態に係る樹脂組成物は、高周波数領域でも、低誘電率・低誘電正接を達成し、耐熱性を高くすることが可能である。
この理由は、以下に限定されないが、以下のとおりであると考えられる。すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物は、多官能ビニル芳香族重合体(A)や熱硬化性化合物(B)が有する熱硬化性基が熱によって硬化する熱硬化性樹脂組成物である。このような樹脂組成物が熱ラジカル重合開始剤を含まない場合、多官能ビニル芳香族重合体(A)の重合開始温度と熱硬化性化合物(B)の重合開始温度とが近くなり、多官能ビニル芳香族重合体(A)と熱硬化性化合物(B)が共に十分に硬化でき、その結果、低誘電率・低誘電正接、高耐熱性を達成できると考えられる。また、光ラジカル重合開始剤を含まないことにより、保存時に遮光をしなくても、多官能ビニル芳香族重合体(A)や熱硬化性化合物(B)の光硬化を効果的に抑制できる。
なお、本実施形態に係る樹脂組成物は、光によって硬化を進行させるのではなく、主に、熱によって硬化を進行させる非感光性熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0012】
<多官能ビニル芳香族重合体(A)>
本実施形態に係る樹脂組成物は、多官能ビニル芳香族重合体(A)を含有する。
多官能ビニル芳香族重合体(A)は、2つ以上のビニル基を分子内に有する芳香族化合物を重合させた重合体であることが好ましい。2つ以上のビニル基を分子内に有する芳香族化合物は、例えば、ビニル基について、各位置異性体のいずれであってもよく、また、そのような位置異性体の混合物であってもよい。より具体的には、多官能ビニル芳香族重合体(A)が2つのビニル基を分子内に有する芳香族化合物である場合、m-体、p-体、o-体またはこれらの位置異性体混合物のいずれであってもよく、m-体、p-体またはこれらの位置異性体混合物のいずれかであることが好ましい。
多官能ビニル芳香族重合体(A)を構成する単量体としては、1つまたは2つ以上のビニル基を有する芳香族化合物(以下、2つ以上のビニル基を有する芳香族化合物を多官能ビニル芳香族化合物ともいう)が挙げられ、1つまたは2つのビニル基を有する芳香族化合物であることが好ましい。例えば、多官能ビニル芳香族重合体(A)として、2つのビニル基を有する芳香族化合物(ジビニル芳香族化合物ともいう)に由来する構成単位(a)と、1つのビニル基を有する芳香族化合物に由来する構成単位(b)を含む重合体が例示される。
【0013】
構成単位(a)を形成するジビニル芳香族化合物は、炭化水素芳香族環を有する化合物であることが好ましく、ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、ビス(ビニルオキシ)ベンゼン、ビス(1-メチルビニル)ベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルアントラセン、ジビニルビフェニル、ジビニルフェナントレン、ビス(4-アリルオキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。中でもジビニルベンゼンが特に好ましい。ジビニル芳香族化合物に由来する構成単位の重合体中での形態は、(a-1)ビニル基の1つだけが重合反応し、もう1つのビニル基が未反応のまま残された形態と、(a-2)2つとも重合反応した形態とがあり得る。本実施形態においては、ビニル基の一方が反応せずに残された形態(a-1)が含まれることが好ましい。なお、多官能ビニル芳香族化合物(好ましくはジビニル芳香族化合物)は、本発明の効果を奏する範囲で任意の置換基Z(例えば、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる)を有していてもよい。
【0014】
上記の多官能ビニル芳香族化合物(好ましくはジビニル芳香族化合物)に由来する構成単位(a)は、下記式(V)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【化3】
式(V)中、Arは芳香族炭化水素連結基を表す。具体例としては、下記Lの例が挙げられる。式中の*は結合位置を表す。
芳香族炭化水素連結基とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素のみからなる基であってもよいし、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素と他の連結基の組み合わせからなる基であってもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素のみからなる基であることが好ましい。なお、芳香族炭化水素が有していてもよい置換基は、上述の置換基Zが挙げられる。また、上記芳香族炭化水素は、置換基を有さない方が好ましい。
芳香族炭化水素連結基は、通常、2価の連結基である。
【0015】
芳香族炭化水素連結基は、具体的には、置換基を有していてもよい、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ビフェニルジイル基、フルオレンジイル基が挙げられ、中でも置換基を有していてもよいフェニレン基が好ましい。置換基は、上述の置換基Zが例示されるが、上述したフェニレン基等の基は置換基を有さない方が好ましい。
【0016】
多官能ビニル芳香族化合物(好ましくはジビニル芳香族化合物)に由来する構成単位(a)は、下記式(V1)で表される構成単位、下記式(V2)で表される構成単位、および下記式(V3)で表される構成単位の少なくとも1つを含むことがより好ましい。なお、下記式中の*は結合位置を表す。
【0017】
【化4】
式(V1)~(V3)中、Lは芳香族炭化水素連結基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)である。具体的には、置換基を有していてもよい、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ビフェニルジイル基、フルオレンジイル基が挙げられ、中でも置換基を有していてもよいフェニレン基が好ましい。置換基は、上述の置換基Zが例示されるが、上述したフェニレン基等の基は置換基を有さない方が好ましい。
【0018】
多官能ビニル芳香族重合体(A)は、上述のとおり、構成単位(a)の単独重合体であってもよいが、構成単位(b)等との共重合体であってもよい。多官能ビニル芳香族重合体(A)は、共重合体であるとき、その共重合比は、構成単位(a)が5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましい。上限値としては、90モル%以下であることが実際的である。
【0019】
多官能ビニル芳香族重合体(A)が、モノビニル芳香族化合物に由来する構成単位(b)を含む共重合体であるとき、モノビニル芳香族化合物の例としては、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニルなどのビニル芳香族化合物;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルビニルベンゼン、m-エチルビニルベンゼン、p-エチルビニルベンゼン、メチルビニルビフェニル、エチルビニルビフェニルなどの核アルキル置換ビニル芳香族化合物などが挙げられる。ここで例示したモノビニル芳香族化合物は適宜上述の置換基Zを有していてもよい。また、これらのモノビニル芳香族化合物は、1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0020】
モノビニル芳香族化合物に由来する構成単位(b)は、下記式(V4)で表される構成単位であることが好ましい。
【0021】
【化5】
式(V4)中、Lは芳香族炭化水素連結基であり、好ましいものの具体例としては、上記Lの例が挙げられる。
V1は水素原子または炭素数1~12の炭化水素基(好ましくはアルキル基)である。RV1が炭化水素基であるとき、その炭素数は1~6が好ましく、1~3がより好ましい。RV1およびLは上述の置換基Zを有していてもよい。
【0022】
多官能ビニル芳香族重合体(A)が構成単位(b)を含む共重合体であるとき、構成単位(b)の共重合比は、10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましい。上限値としては、98モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましく、85モル%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
多官能ビニル芳香族重合体(A)は、その他の構成単位を有していてもよい。その他の構成単位としては、例えば、シクロオレフィン化合物に由来する構成単位(c)などが挙げられる。シクロオレフィン化合物としては、環構造内に二重結合を有する炭化水素類が挙げられる。具体的に、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィンの他、ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどのノルボルネン環構造を有する化合物、インデン、アセナフチレンなどの芳香族環が縮合したシクロオレフィン化合物などを挙げることができる。ノルボルネン化合物の例としては、特開2018-39995号公報の段落0037~0043に記載のものが挙げられ、これの内容は本明細書に組み込まれる。なお、ここで例示したシクロオレフィン化合物はさらに上述の置換基Zを有していてもよい。
【0024】
多官能ビニル芳香族重合体(A)が構成単位(c)を含む共重合体であるとき、構成単位(c)の共重合比は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましい。上限値としては、90モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましく、70モル%以下であることがさらに好ましく、50モル%以下であってもよく、30モル%以下であってもよい。
【0025】
多官能ビニル芳香族重合体(A)にはさらに異なる重合性化合物(以下、他の重合性化合物ともいう)に由来する構成単位(d)が組み込まれていてもよい。他の重合性化合物(単量体)としては、例えば、ビニル基を3つ含む化合物が挙げられる。具体的には、1,3,5-トリビニルベンゼン、1,3,5-トリビニルナフタレン、1,2,4-トリビニルシクロへキサンが挙げられる。あるいは、エチレングリコールジアクリレート、ブタジエン等が挙げられる。他の重合性化合物に由来する構成単位(d)の共重合比は、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
多官能ビニル芳香族重合体(A)の一実施形態として、構成単位(a)を必須とし、構成単位(b)~(d)の少なくとも1種を含む重合体が例示される。さらには、構成単位(a)~(d)の合計が、全構成単位の95モル%以上、さらには98モル%以上を占める態様が例示される。
多官能ビニル芳香族重合体(A)の他の一実施形態として、構成単位(a)を必須とし、末端を除く全構成単位のうち、芳香族環を含む構成単位が90モル%以上のものであることが好ましく、95モル%以上のものであることがより好ましく、100モル%のものであってもよい。
全構成単位当たりのモル%を算出するにあたり、1つ構成単位とは、多官能ビニル芳香族重合体(A)を構成する単量体1分子に由来するものとする。
【0027】
多官能ビニル芳香族重合体(A)の製造方法は特に限定されず常法によればよいが、例えば、ジビニル芳香族化合物を含むモノマーを(必要により、モノビニル芳香族化合物、シクロオレフィン化合物等を共存させ)、ルイス酸触媒の存在下で重合させることが挙げられる。ルイス酸触媒としては、金属フッ化物またはその錯体を用いることができる。
【0028】
多官能ビニル芳香族重合体(A)の鎖末端の構造は特に限定されないが、上記ジビニル芳香族化合物に由来する基について言うと、以下の式(E1)の構造を取ることが挙げられる。なお、式(E1)中のLは上記式(V1)で規定したものと同じである。*は結合位置を表す。
*-CH=CH-L-CH=CH (E1)
【0029】
モノビニル芳香族化合物に由来する基が鎖末端となったときには、下記式(E2)の構造を取ることが挙げられる。式中のLおよびRV1はそれぞれ前記の式(V4)で定義したものと同じ意味である。*は結合位置を表す。
*-CH=CH-L-RV1 (E2)
【0030】
多官能ビニル芳香族重合体(A)の分子量は、数平均分子量Mnで、300以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、1,000以上であることがさらに好ましい。上限としては、100,000以下であることが好ましく、10,000以下であることがより好ましく、5,000以下であることがさらに好ましく、4,000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される単分散度(Mw/Mn)は、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。下限値としては、1.1以上であることが実際的である。多官能ビニル芳香族重合体(A)は、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタンまたはクロロホルムに可溶であることが好ましい。
【0031】
本明細書において多官能ビニル芳香族重合体(A)については、国際公開第2017/115813号の段落0029~0058に記載の化合物およびその合成反応条件等、特開2018-039995号公報の段落0013~0058に記載の化合物およびその合成反応条件等、特開2018-168347号公報の段落0008~0043に記載の化合物およびその合成反応条件等、特開2006-070136号公報の段落0014~0042に記載の化合物およびその合成反応条件等、特開2006-089683号公報の段落0014~0061に記載の化合物およびその合成反応条件等、特開2008-248001号公報の段落0008~0036に記載の化合物およびその合成反応条件等を参照することができ、本明細書に組み込まれる。
【0032】
多官能ビニル芳香族重合体(A)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の総量を100質量部としたとき、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが一層好ましく、さらには、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上であってもよい。多官能ビニル芳香族重合体(A)の含有量を上記の下限値以上とすることで、特に、低誘電率を効果的に達成できる。他方、多官能ビニル芳香族重合体(A)の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂成分の総量を100質量部としたとき、95質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、85質量部以下であることがさらに好ましく、80質量部以下であることが一層好ましい。
多官能ビニル芳香族重合体(A)は、樹脂組成物中に、1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。2種以上含まれる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
なお、樹脂成分とは、多官能ビニル芳香族重合体(A)および熱硬化性化合物(B)並びに後述する他の樹脂を含む。
【0033】
<熱硬化性化合物(B)>
本実施形態に係る樹脂組成物は、熱硬化性化合物(B)を含有する。本明細書において熱硬化性化合物(B)とは、多官能ビニル芳香族重合体(A)以外の熱硬化性化合物を意味する。熱硬化性化合物(B)としては、シアナト基、ビニル基(ただし、多官能ビニル芳香族重合体となる基、マレイミド基、ナジイミド基は含まない。ビニルフェニル基が好ましい。)、マレイミド基、およびナジイミド基からなる群より選ばれる1つ以上の官能基を有する化合物が好ましく、シアナト基を有するシアン酸エステル化合物(B1)、ビニル基(好ましくはビニルフェニル基)を有する変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)、マレイミド基を有するマレイミド化合物(B3)、ナジイミド基を有するナジイミド化合物(B4)がより好ましく、シアナト基を有するシアン酸エステル化合物(B1)、ビニル基(好ましくはビニルフェニル基)を有する変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)、マレイミド基を有するマレイミド化合物(B3)がさらに好ましい。
【0034】
<<シアン酸エステル化合物(B1)>>
シアン酸エステル化合物はシアナト基を有する化合物の総称である。本発明で用いるシアン酸エステル化合物(B1)は、1分子中にシアナト基を1以上有することが好ましく、2以上有することがより好ましい。また、シアン酸エステル化合物(B1)1分子中のシアナト基の数の上限は、12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。また、上述したシアン酸エステル化合物(B1)のシアナト基は、芳香環に直接結合したシアナト基であることが好ましい。
シアン酸エステル化合物(B1)としては、例えば、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(ナフトールアラルキル型シアネート)、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物、ジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールM型シアン酸エステル化合物、キシレン樹脂型シアン酸エステル化合物、トリスフェノールメタン型シアン酸エステル化合物、およびアダマンタン骨格型シアン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、およびキシレン樹脂型シアン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物であることがより好ましい。これらのシアン酸エステル化合物は、公知の方法により調製してもよく、市販品を用いてもよい。
【0035】
シアン酸エステル化合物(B1)としては、下記式(S1)で示されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物が挙げられる。式(S1)で示されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物は、α-ナフトールあるいはβ-ナフトール等のナフトール類とp-キシリレングリコール、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とハロゲン化シアンとを縮合させて得られるものである。その製法は特に限定されず、シアン酸エステル合成として現存するいかなる方法で製造してもよい。
【化6】
式(S1)中、RC1~RC4はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。nは1から10の数である。nが異なる化合物が2種以上含まれていてもよい。
シアン酸エステル化合物(B1)については、特開2010-138364号公報の段落0024および0025を参照することができ、その内容は本明細書に組み込まれる。
【0036】
<<変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)>>
熱硬化性化合物(B)は、ビニル基(好ましくはビニルフェニル基)を含有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)であることが好ましい。本発明で用いる変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)は、1分子中にビニル基を1以上有することが好ましく、2以上有することがより好ましい。また、変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)1分子中のビニル基の数の上限は、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)は、例えば、ポリフェニレンエーテルの末端の全部または一部が、ビニル基ないしビニルフェニル基により末端変性された変性物である。本明細書に言う「ポリフェニレンエーテル」とは、下記式(X1)で表されるポリフェニレンエーテル骨格を有する化合物をいう。
【0037】
【化7】
式(X1)中、R24、R25、R26、およびR27は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、または水素原子を表す。*は結合位置を表す。
【0038】
変性ポリフェニレンエーテルは、式(X2)または式(X3)で表される繰返し単位をさらに含んでもよい。
【化8】
式(X2)中、R28、R29、R30、R34、R35は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R31、R32、R33は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。*は結合位置を表す。
【化9】
式(X3)中、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。Aは、炭素数1以上20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素である。*は結合位置を表す。
【0039】
変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)は、一部または全部を、ビニルベンジル基等のエチレン性不飽和基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、およびシリル基等で官能基化された変性ポリフェニレンエーテルを用いることもできる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。末端がヒドロキシ基であるポリフェニレンエーテルとしては例えば、SABICイノベーティブプラスチックス社製SA90等が挙げられる。
【0040】
変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)の製造方法は、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されない。例えば、ビニルベンジル基で官能基化されたものは、2官能フェニレンエーテルオリゴマーとビニルベンジルクロライドを溶剤に溶解させ、加熱撹拌下で塩基を添加して反応させた後、樹脂を固形化することで製造できる。カルボキシ基で官能基化されたものは、例えばラジカル開始剤の存在下または非存在下において、ポリフェニレンエーテルに不飽和カルボン酸やその官能基化された誘導体を溶融混練し、反応させることによって製造される。あるいは、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸やその官能的誘導体とをラジカル開始剤存在下または非存在下で有機溶剤に溶かし、溶液下で反応させることによって製造される。
【0041】
変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)は、少なくとも一方の末端(好ましくは両末端)にエチレン性不飽和基を有する変性ポリフェニレンエーテル(以下、「変性ポリフェニレンエーテル(g)」ということがある)を含むものであることが好ましい。エチレン性不飽和基としては、エテニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基およびオクテニル基等のアルケニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、ビニルフェニル基、ビニルベンジル基およびビニルナフチル基等のアルケニルアリール基が挙げられる。両末端の2つのエチレン性不飽和基は、同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。
【0042】
変性ポリフェニレンエーテル(g)として式(1)で表される構造が挙げられる。
【化10】
式(1)中、Xは芳香族基を表し、(Y-O)mはポリフェニレンエーテル部分を表し、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表し、mは1~100の数を表し、nは1~6の数を表し、qは1~4の数を表す。好ましくは、R、R、Rは水素原子である。好ましくは、mは1以上50以下の数であり、より好ましくは、1以上30以下の数である。好ましくは、nは1以上4以下の数であり、さらに好ましくは、nは1または2であり、一層好ましくは、nは1である。また、好ましくは、qは1以上3以下の数であり、さらに好ましくは、qは1または2であり、一層好ましくは、qは2である。
m、n、qがそれぞれ異なる化合物が2種以上含まれていてもよい。
【0043】
変性ポリフェニレンエーテル(g)は、式(2)で表されることが好ましい。
【化11】
式(2)におけるa、bは、少なくともいずれか一方が0でない、0~100の数を表す。aおよびbは、好ましくは1以上50以下の数であり、より好ましくは、1以上30以下の数である。
ここで、-(O-X-O)-は、式(3)または式(4)で表されることが好ましい。a、bが異なる化合物が2種以上含まれていてもよい。
【化12】
式(3)中、R、R、R、R10、R11は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R、R、Rは、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。*は結合位置を表す。
【化13】
式(4)中、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。Aは、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。*は結合位置を表す。
【0044】
また、式(2)における-(Y-O)-は、式(5)で表されることが好ましい。
【化14】
式(5)中、R22、R23は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R20、R21は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。
【0045】
式(4)におけるAとしては、例えば、メチレン、エチリデン、1-メチルエチリデン、1,1-プロピリデン、2,2-プロピリデン、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1-フェニルエチリデン等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
上記変性ポリフェニレンエーテルのなかでは、R、R、R、R10、R11、R20、R21が炭素数3以下のアルキル基であり、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22、R23が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるポリフェニレンエーテルが好ましく、特に式(3)または式(4)で表される-(O-X-O)-が、式(9)、式(10)、および/または式(11)であり、式(5)で表される-(Y-O)-が、式(12)または式(13)であるか、あるいは式(12)と式(13)がランダムに配列した構造であることがより好ましい。
【0047】
【化15】
式(10)中、R44、R45、R46、R47は、同一でも異なってもよく、水素原子またはメチル基である。Aは、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。*は結合位置である。式(10)、式(11)中のAは、式(4)におけるAの具体例と同じものが具体例として挙げられる。
【0048】
変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)のGPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量は、500以上3000以下であることが好ましい。数平均分子量が上記下限値以上であることにより、本実施形態の樹脂組成物を塗膜状にする際にべたつきがより一層抑制される傾向にある。数平均分子量が上記上限値以下であることにより、溶剤への溶解性がより一層向上する傾向にある。
また、変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、800以上10000以下であることが好ましく、800以上5000以下であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の誘電率および誘電正接がより低くなる傾向にあり、上記上限値以下とすることにより、溶剤への溶解性、低粘度および成形性がより向上する傾向にある。
さらに、変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)の末端の炭素-炭素不飽和二重結合当量は、炭素-炭素不飽和二重結合1つあたり400~5000gであることが好ましく、400g~2500gであることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、誘電率および誘電正接がより低くなる傾向にある。上記上限値以下とすることにより、溶剤への溶解性、低粘度および成形性がより向上する傾向にある。
【0049】
変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)の製造方法は、特に限定されず、例えば、2官能性フェノール化合物と1官能性フェノール化合物とを酸化カップリングして2官能性フェニレンエーテルオリゴマーを得る工程(酸化カップリング工程)と、得られる2官能性フェニレンエーテルオリゴマーの末端フェノール性水酸基をビニルベンジルエーテル化する工程(ビニルベンジルエーテル化工程)とにより製造できる。また、このような変性ポリフェニレンエーテル化合物(B2)としては、例えば、三菱ガス化学(株)製(OPE-2St1200など)を用いることができる。
【0050】
<<マレイミド化合物(B3)>>
マレイミド化合物(B3)は分子中に1個以上マレイミド基を有する化合物を指す。本発明で用いるマレイミド化合物(B3)は、1分子中にマレイミド基を1以上有することが好ましく、2以上有することがより好ましい。また、マレイミド化合物(B3)1分子中のマレイミド基の数の上限は、15以下であることが好ましく、13以下であることがより好ましい。中でも分子中に2個以上のマレイミド基を有するビスマレイミド化合物、ポリマレイミド化合物が好ましく、4,4’-ジフェニルメタンマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、下記式(31)~(34)のいずれかで表される構成単位を含む化合物であることが一層好ましい。
【化16】
式(31)中、R51、R52、R53およびR54はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはフェニル基を表す。
式(31)中、R51、R52、R53およびR54は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、フェニル基または水素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
n1は、1~10の数であり、1~4の数がより好ましい。n1が異なる化合物が2種以上含まれていてもよい。
【0051】
【化17】
式(32)中、R56はそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を表し、R57はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。
4つのR56のうち、1~3つがメチル基であり、残りの3~1つがエチル基であることが好ましく、4つのR56のうち、2つがメチル基であり、残りの2つがエチル基であることがより好ましい。さらに、2つの芳香族環について、それぞれ、置換している2つのR56がメチル基とエチル基であることがより好ましい。
【0052】
【化18】
式(33)中、R58はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
58はメチル基またはエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0053】
【化19】
式(34)中、R59はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
59はメチル基またはエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0054】
マレイミド化合物(B3)の不飽和イミド基の当量は、200g/eq以上であることが好ましく、また、400g/eq以下であることが好ましい。なおここでの当量は、2種以上のマレイミド化合物を含む場合、樹脂組成物に含まれる各マレイミド化合物の質量を考慮した加重平均の不飽和イミド基の当量とする。
【0055】
<<ナジイミド化合物(B4)>>
ナジイミド化合物(B4)は、分子内にナジイミド基を有する化合物である。本発明で用いるナジイミド化合物(B4)は、1分子中にナジイミド基を1以上有することが好ましく、2以上有することがより好ましい。また、ナジイミド化合物(B4)1分子中のナジイミド基の数の上限は、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。ナジイミド化合物(B4)は、より具体的には、下記式(N1)または(N2)で表される基を有することが好ましい。*は結合位置を表す。
【化20】
式(N1)および式(N2)において、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0056】
ナジイミド化合物としては、下記式(N3)で表される化合物がさらに好ましい。
【化21】
式(N3)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~6のアルキレン基または芳香環を含む2価の連結基を示す。芳香環を含む2価の連結基としては、フェニレン基、ビフェニレン基およびナフチレン基が例示される。
その他、ナジイミド化合物(B4)としては、国際公開第2015/105109号の段落0026~0035の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0057】
本実施形態に係る樹脂組成物における樹脂成分の総量100質量部に対する、熱硬化性化合物(B)の含有量は、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが一層好ましい。上限値としては、95質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましい。
また、多官能ビニル芳香族重合体(A)100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。上限値としては、1900質量部以下であることが好ましく、900質量部以下であることがより好ましく、400質量部以下であることがさらに好ましく、120質量部以下であってもよく、80質量部以下であってもよく、60質量部以下であってもよい。
樹脂組成物は、熱硬化性化合物(B)を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0058】
本実施形態に係る樹脂組成物は、後述する充填材(C)を含まない場合、樹脂成分が樹脂組成物の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、98質量%以上を占めることがさらに好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、充填材(C)を含む場合、樹脂成分が樹脂組成物の15質量%以上を占めることが好ましく、20質量%以上を占めることがより好ましく、30質量%以上を占めることがさらに好ましい。また、上限値としては、樹脂成分が樹脂組成物の90質量%以下を占めることが好ましく、85質量%以下を占めることがより好ましく、80質量%以下を占めることがさらに好ましい。
【0059】
<ラジカル重合開始剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤を含まない。ここで「含まない」とは、積極的に配合しないことを意味し、不純物等が意図せずに配合される場合まで含む趣旨ではない。不純物等意図せずに配合される場合とは、例えば、質量基準で、4ppm以下であり、さらには1ppm以下である。本発明では、0ppmであることが好ましい。
ラジカル重合開始剤の種類は特に限定されず、熱ラジカル重合開始剤および光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
ラジカル重合開始剤として具体的には、ペルオキシド(過酸化物)、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、ホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
ペルオキシドは分子内にペルオキシ基(-O-O-)を有する化合物が挙げられ、t-ブチルペルオキシ基を有する化合物やクミルペルオキシ基を有する化合物、ベンゾイルペルオキシ基を有する化合物が好ましい。具体例としては、ベンゾイルペルオキシド(BPO)、p-クロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド(dicup)、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキシン(DYBP)、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサンが挙げられる。市販品としては、日油社製の、パーブチルH、パーブチルP、パーブチルPV、パークミルH、パークミルP、パークミルD、パーオクタH、パーヘキサ25B、などが挙げられる。
アゾ化合物は分子内にアゾ基(-N=N-)を有する化合物を指し、具体的には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が挙げられる。市販品としては、富士フイルム和光純薬製のAIBN、V-70、V-65などが挙げられる。
また、過酸化物ではないが、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンもラジカル重合開始剤として挙げられる。市販品としてはノフマーBC-90などが挙げられる。
さらに、国際公開第2013/047305号の段落0042に記載のラジカル重合開始剤も例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
一方、本実施形態に係る樹脂組成物は、カチオン重合開始剤を含まない構成とすることもできる。さらに、本実施形態に係る樹脂組成物は、光重合開始剤を含まない構成とすることもできる。
【0060】
<充填材(C)>
本実施形態に係る樹脂組成物は、低誘電率、低誘電正接、耐燃性および低熱膨張性の向上のため、充填材(C)を含むことが好ましく、無機充填材が好ましい。使用される充填材(C)としては、公知のものを適宜使用することができ、その種類は特に限定されず、当業界において一般に使用されているものを好適に用いることができる。具体的には、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカ等のシリカ類、ホワイトカーボン、チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水和物、酸化モリブデンやモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E-ガラス、A-ガラス、NE-ガラス、C-ガラス、L-ガラス、D-ガラス、S-ガラス、M-ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラスなど無機系の充填材の他、スチレン型、ブタジエン型、アクリル型などのゴムパウダー、コアシェル型のゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーン複合パウダーなど有機系の充填材などが挙げられる。
これらの中でも、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される1種または2種以上が好適であり、シリカがより好ましい。シリカは、球状のシリカが好ましい。球状シリカは、また、中空シリカであってもよい。
これらの充填材を使用することで、樹脂組成物の熱膨張特性、寸法安定性、難燃性などの特性が向上する。
【0061】
本実施形態に係る樹脂組成物における充填材(C)の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂成分の総量を100質量部とした場合、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、50質量部以上であってもよい。上限値としては、500質量部以下であることが好ましく、400質量部以下であることがより好ましく、300質量部以下であることがさらに好ましく、250質量部以下であることが一層好ましく、200質量部以下であってもよい。
充填材(C)は1種を用いても2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合はその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0062】
<他の樹脂成分>
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述した多官能ビニル芳香族重合体(A)および熱硬化性化合物(B)以外の他の樹脂成分を含んでいてもよい。他の樹脂成分としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、重合可能な不飽和基を有する化合物、エラストマーおよび活性エステル化合物よりなる群から選択される1種以上が例示される。
本実施形態に係る樹脂組成物においては、樹脂成分中の多官能ビニル芳香族重合体(A)および熱硬化性化合物(B)の合計含有量が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であってもよく、97質量%以上であってもよく、98質量%以上であってもよい。
【0063】
<硬化促進剤(触媒)>
本実施形態に係る樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、有機金属塩類(例えば、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン等)、フェノール化合物(例えば、フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等)、アルコール類(例えば、1-ブタノール、2-エチルヘキサノール等)、イミダゾール類(例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等)、およびこれらのイミダゾール類のカルボン酸若しくはその酸無水類の付加体等の誘導体、アミン類(例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等)、リン化合物(例えば、ホスフィン系化合物、ホスフィンオキシド系化合物、ホスホニウム塩系化合物、ダイホスフィン系化合物等)、エポキシ-イミダゾールアダクト系化合物が挙げられる。
好ましい硬化促進剤は、イミダゾール類および有機金属塩であり、イミダゾール類がより好ましい。
【0064】
硬化促進剤の含有量は、含有する場合、下限値は、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対し、0.005質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。また、前記硬化促進剤の含有量の上限は、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましい。
硬化促進剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となる。
【0065】
<溶剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、溶剤を含有してもよく、有機溶剤を含有することが好ましい。この場合、本実施形態に係る樹脂組成物は、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部が溶剤に溶解または相溶した形態(溶液またはワニス)である。溶剤としては、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部を溶解または相溶可能な極性有機溶剤または無極性有機溶剤であれば特に限定されず、極性有機溶剤としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、セロソルブ類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、エステル類(例えば、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等)アミド類(例えば、ジメトキシアセトアミド、ジメチルホルムアミド類等)が挙げられ、無極性有機溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン等)が挙げられる。
溶剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
<その他の成分>
本実施形態に係る樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の成分の他、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、流動調整剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤、シランカップリング剤等を含んでもよい。これらの添加剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態に係る樹脂組成物は、1.6mm厚の板状の硬化物に成形したとき、10GHzにおける誘電率(Dk)を2.6以下とすることができ、2.5以下とすることもできる。前記誘電率の下限値は、1.0が理想であるが、2.1以上が実際的である。
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、1.6mm厚の板状の硬化物に成形したとき、10GHzにおける誘電正接(Df)を0.0030以下とすることができ、0.0025以下とすることもでき、0.0020以下とすることもでき、0.0015以下とすることもできる。前記誘電率の下限値は、0が理想であるが、0.0001以上が実際的である。
誘電率および誘電正接は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0068】
本発明の好ましい実施形態に係る樹脂組成物においては、低い熱膨張係数(CTE)を実現することができる。例えば、JlS C 6481 5.19 に規定されたCTE(ppm/℃)でいうと、75以下であることが好ましく、72以下であることがより好ましく、70以下であることがさらに好ましい。下限値は特に制限されないが、50以上であることが実際的である。
【0069】
本実施形態に係る樹脂組成物は、1.6mm厚の板状の硬化物に成形したとき、ガラス転移温度を230℃以上とすることができ、235℃以上とすることもでき、240℃以上とすることもできる。前記ガラス転移温度の上限値は、特に定めるものではないが、400℃以下、さらには、350℃以下が実際的である。
本実施形態に係る樹脂組成物は、また、1.6mm厚の板状の硬化物に成形したとき、ガラス転移温度が、かかる樹脂組成物に含まれる樹脂成分の1質量%に相当する量の熱ラジカル重合開始剤(例えば、日油社製、パーブチル P (商品名))を配合した樹脂組成物から形成される1.6mm厚の板状の硬化物のガラス転移温度よりも、8℃以上高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましい。上限値としては、例えば、25℃以下である。
ガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0070】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る樹脂組成物は、常法によって製造することができる。例えば、多官能ビニル芳香族重合体(A)と熱硬化性化合物(B)とを混合する態様が挙げられる。このときの好ましい含有量は上記で述べたとおりである。また、本実施形態に係る樹脂組成物においては、さらに、充填材(C)や他の樹脂成分、その他の添加剤を適宜共存させて混練等を行ってもよい。他の樹脂成分を配合することにより、外観を向上させたり、その他の特性を良化させたりしてもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物の一例は、溶剤を含むワニスである。また、本実施形態に係る樹脂組成物の他の一例は、板状の硬化物やフィルムである。さらに、本実施形態に係る樹脂組成物は、後述する用途に好ましく用いられる。
【0071】
<用途>
本実施形態に係る樹脂組成物は、硬化物として用いることができる。具体的には、本実施形態の樹脂組成物は、低誘電率材料および/または低誘電正接材料として、プリント配線板の絶縁層、半導体パッケージ用材料として好適に用いることができる。本実施形態の樹脂組成物は、プリプレグ、プリプレグから形成された金属箔張積層板、樹脂複合シート、およびプリント配線板を構成する材料として好適に用いることができる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、これを用いて層状の成形品としたとき、その厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。上限値としては、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。なお、上記層状の成形品の厚さは、例えば、本実施形態の樹脂組成物をガラスクロス等に含浸させたものである場合、ガラスクロスを含む厚さを意味する。
本実施形態に係る樹脂組成物から形成されるフィルム等の成形品は、露光現像してパターンを形成する用途に用いてもよいし、露光現像しない用途に用いてもよい。特に、露光現像しない用途に適している。
【0072】
<<プリプレグ>>
好ましい実施形態に係るプリプレグは、基材(プリプレグ基材)と、本実施形態に係る樹脂組成物とから形成される。本実施形態のプリプレグは、例えば、本実施形態に係る樹脂組成物を基材に適用(例えば、含浸または塗布)させた後、加熱(例えば、120~220℃で2~15分乾燥させる方法等)によって半硬化させることにより得られる。この場合、基材に対する樹脂組成物の付着量、すなわち半硬化後のプリプレグの総量に対する樹脂組成物量(充填材を含む)は、20~99質量%の範囲であることが好ましい。
【0073】
基材としては、各種プリント配線板材料に用いられている基材であれば特に限定されない。基材の材質としては、例えば、ガラス繊維(例えば、Eガラス、Dガラス、Lガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、UNガラス、NEガラス、球状ガラス等)、ガラス以外の無機繊維(例えば、クォーツ等)、有機繊維(例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、液晶ポリエステル等)が挙げられる。基材の形態としては、特に限定されず、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の層状の繊維から構成される基材が挙げられる。特に、ガラスクロス等の長繊維から構成される基材が好ましい。ここで、長繊維とは、例えば、数平均繊維長が6mm以上のものをいう。これらの基材は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの基材の中でも、寸法安定性の観点から、超開繊処理、目詰め処理を施した織布が好ましく、吸湿耐熱性の観点から、エポキシシラン処理、アミノシラン処理などのシランカップリング剤等により表面処理したガラス織布が好ましく、電気特性の観点から、L-ガラスやNE-ガラス、Q-ガラス等の低誘電率性、低誘電正接性を示すガラス繊維からなる、低誘電ガラスクロスが好ましい。基材の厚みは、特に限定されず、例えば、0.01~0.19mm程度であってもよい。
【0074】
<<金属箔張積層板>>
好ましい実施形態に係る金属箔張積層板は、本実施形態のプリプレグから形成された少なくとも1つの層と、前記プリプレグから形成された層の片面または両面に配置された金属箔とを含む。本実施形態の金属箔張積層板は、例えば、本実施形態のプリプレグを少なくとも1枚配置し(好ましくは2枚以上重ね)、その片面または両面に金属箔を配置して積層成形する方法で作製できる。より詳細には、プリプレグの片面または両面に銅、アルミニウム等の金属箔を配置して積層成形することにより作製できる。プリプレグの枚数としては、1~10枚が好ましく、2~10枚がより好ましく、2~7枚がさらに好ましい。金属箔としては、プリント配線板用材料に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が挙げられる。銅箔の厚さは、特に限定されず、1.5~70μm程度であってもよい。成形方法としては、プリント配線板用積層板および多層板を成形する際に通常用いられる方法が挙げられ、より詳細には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機等を使用して、温度180~350℃程度、加熱時間100~300分程度、面圧20~100kg/cm程度で積層成形する方法が挙げられる。また、本実施形態のプリプレグと、別途作製した内層用の配線板(内層回路板ともいう)とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることもできる。多層板の製造方法としては、例えば、本実施形態のプリプレグ1枚の両面に35μm程度の銅箔を配置し、上記の成形方法にて積層形成した後、内層回路を形成し、この回路に黒化処理を実施して内層回路板を形成し、この後、この内層回路板と本実施形態のプリプレグとを交互に1枚ずつ配置し、さらに最外層に銅箔を配置して、上記条件にて好ましくは真空下で積層成形することにより、多層板を作製することができる。本実施形態の金属箔張積層板は、プリント配線板として好適に使用することができる。
【0075】
<<プリント配線板>>
好ましい実施形態に係るプリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層の表面に配置された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、本実施形態に係る樹脂組成物から形成された層および上記実施形態に係るプリプレグから形成された層の少なくとも一方を含む。このようなプリント配線板は、常法に従って製造でき、その製造方法は特に限定されない。以下、プリント配線板の製造方法の一例を示す。まず上述した銅箔張積層板等の金属箔張積層板を用意する。次に、金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に上述したプリプレグを所要枚数重ね、さらにその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材および熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、さらに外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成することで、プリント配線板が製造される。
【0076】
上記の製造例で得られるプリント配線板は、絶縁層と、この絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、絶縁層が上述した本実施形態の樹脂組成物を含む構成となる。すなわち、上述した本実施形態のプリプレグ(例えば、基材およびこれに含浸または塗布された本実施形態の樹脂組成物から形成されたプリプレグ)、上述した本実施形態の金属箔張積層板の樹脂組成物から形成された層が、本実施形態の絶縁層となる。
【0077】
<<樹脂複合シート>>
好ましい実施形態に係る樹脂複合シートは、支持体と、前記支持体の表面に配置された本実施形態に係る樹脂組成物から形成された層とを含む。樹脂複合シートは、ビルドアップ用フィルムまたはドライフィルムソルダーレジストとして使用することができる。樹脂複合シートの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上記の本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を支持体に塗布(塗工)し乾燥することで樹脂複合シートを得る方法が挙げられる。
【0078】
ここで用いる支持体としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム、ポリイミドフィルム等の有機系のフィルム基材、銅箔、アルミ箔等の導体箔、ガラス板、SUS板、FRP等の板状のものが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0079】
塗布方法(塗工方法)としては、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で支持体上に塗布する方法が挙げられる。また、乾燥後に、支持体と樹脂組成物が積層された樹脂複合シートから支持体を剥離またはエッチングすることで、単層シートとすることもできる。なお、上記の本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、シート状のキャビティを有する金型内に供給し乾燥する等してシート状に成形することで、支持体を用いることなく単層シートを得ることもできる。
【0080】
本実施形態の樹脂複合シートの作製において、溶剤を除去する際の乾燥条件は、特に限定されないが、低温であると樹脂組成物中に溶剤が残りやすく、高温であると樹脂組成物の硬化が進行することから、20℃~200℃の温度で1~90分間が好ましい。また、樹脂複合シートにおいて、樹脂組成物は溶剤を乾燥しただけの未硬化の状態で使用することもできるし、必要に応じて半硬化(Bステージ化)の状態にして使用することもできる。さらに、本実施形態の樹脂複合シートの樹脂層の厚みは、本実施形態の樹脂組成物の溶液の濃度と塗布厚みにより調整することができ、特に限定されないが、一般的には塗布厚みが厚くなると乾燥時に溶剤が残りやすくなることから、0.1~500μmが好ましい。
【実施例
【0081】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
本実施例において、特に述べない限り、測定は23℃で行った。
【0082】
<実施例1>
下記で合成した多官能ビニルベンゼン重合体(ap)75質量部と、ビフェニルアラルキル型マレイミド(日本化薬社製、MIR-3000(商品名))25質量部と、イミダゾール触媒(四国化成社製、2E4MZ(商品名))0.5質量部とを、メチルエチルケトンで溶解して混合し、ワニスを得た。
【0083】
(多官能ビニルベンゼン重合体(ap)の合成)
ジビニルベンゼン2.25モル(292.9g)、エチルビニルベンゼン1.32モル(172.0g)、スチレン11.43モル(1190.3g)、酢酸n-プロピル15.0モル(1532.0g)を反応器内に投入し、70℃で600ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、4時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、多官能ビニルベンゼン重合体(ap)を回収した。得られた多官能ビニルベンゼン重合体(ap)を秤量して、多官能ビニルベンゼン重合体(ap)860.8gが得られたことを確認した。
【0084】
得られた多官能ビニルベンゼン重合体(ap)のMnは2060、Mwは30700、Mw/Mnは14.9であった。13C‐NMRおよびH‐NMR分析を行うことにより、多官能ビニルベンゼン重合体(ap)には、各単量体単位に由来する共鳴線が観察された。NMR測定結果、および、GC分析結果に基づき、多官能ビニルベンゼン重合体(ap)の構成単位の割合は以下のように算出された。
ジビニルベンゼン由来の構成単位:20.9モル%(24.3質量%)
エチルビニルベンゼン由来の構成単位:9.1モル%(10.7質量%)
スチレンに由来する構成単位:70.0モル%(65.0質量%)
また、ジビニルベンゼン由来の残存ビニル基をもつ構成単位は、16.7モル%(18.5質量%)であった。
【0085】
<<厚さ1.6mmの硬化板の試験片の製造>>
得られたワニスから溶剤を蒸発留去することで混合樹脂粉末を得た。混合樹脂粉末を1辺100mm、厚さ1.6mmの型に充填し、両面に12μm銅箔(3EC-M3-VLP、三井金属鉱業(株)製)を配置し、圧力30kg/cm、温度220℃で120分間真空プレスを行い、1辺100mm、厚さ1.6mmの硬化板を得た。
【0086】
得られた1.6mm厚の硬化板について、後述する方法に従って物性等(誘電特性(Dk、Df)、ピール強度、ガラス転移温度、熱膨張係数(CTE))の評価を行った。
【0087】
<実施例2>
ビフェニルアラルキル型マレイミド25質量部を12.5質量部とし、フェニルエーテル型マレイミド(ケイ・アイ化成社製、BMI-80(商品名))12.5質量部を追加した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを得た。得られたワニスより、実施例1と同様にして、1.6mm厚の硬化板を得た。得られた1.6mm厚の硬化板について、後述する方法に従って物性等の評価を行った。
【0088】
<実施例3>
ビフェニルアラルキル型マレイミド25質量部に代えて、BisM型マレイミド(ケイ・アイ化成社製、BMI-BisM(商品名))25質量部を用いた以外実施例1と同様にして、ワニスを得た。得られたワニスより、実施例1と同様にして、1.6mm厚の硬化板を得た。得られた1.6mm厚の硬化板について、後述する方法に従って物性等の評価を行った。
【0089】
<実施例4>
ビフェニルアラルキル型マレイミド25質量部に代えて、末端変成ポリフェニレンエーテル(三菱ガス化学社製、OPE-2St 1200(商品名))25質量部を用い、イミダゾール触媒を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、ワニスを得た。得られたワニスより、実施例1と同様にして、1.6mm厚の硬化板を得た。得られた1.6mm厚の硬化板について、後述する方法に従って物性等の評価を行った。
【0090】
<実施例5>
ビフェニルアラルキル型マレイミド25質量部に代えて、下記のナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂25質量部を用い、イミダゾール触媒0.5質量部に代えて、有機金属触媒(日本化学産業社製、Oct-Mn(商品名))0.1質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、ワニスを得た。得られたワニスより、実施例1と同様にして、1.6mm厚の硬化板を得た。得られた1.6mm厚の硬化板について、後述する方法に従って物性等の評価を行った。
【0091】
(α-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成)
α-ナフトールアラルキル樹脂(SN495V、OH基当量:236g/eq.、新日鐵化学(株)製:ナフトールアラルキルの繰り返し単位数は1~5のものが含まれる。)0.47モル(OH基換算)を、クロロホルム500mLに溶解させ、この溶液にトリエチルアミン0.7モルを添加し、溶液1を作成した。温度を-10℃に保ちながら、反応器内に仕込んだ0.93モルの塩化シアンのクロロホルム溶液300gに、溶液1を1.5時間かけて滴下し、滴下終了後、30分撹拌した。その後、さらに、0.1モルのトリエチルアミンとクロロホルム30gの混合溶液を反応器内に滴下し、30分撹拌して反応を完結させた。副生したトリエチルアミンの塩酸塩を反応液から濾別した後、得られた濾液を0.1N塩酸500mLで洗浄した後、水500mLでの洗浄を4回繰り返した。これを硫酸ナトリウムにより乾燥した後、75℃でエバポレートし、さらに90℃で減圧脱気することにより、褐色固形の式(S1)で表されるα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(式中のRC1~RC4はすべて水素原子であり、nは1~5の混合物である。)を得た。得られたα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物を赤外吸収スペクトルにより分析したところ、2264cm-1付近にシアン酸エステル基の吸収が確認された。
【化22】
【0092】
<参考例1>
熱ラジカル重合開始剤(日油社製、パーブチル P (商品名))1質量部を追加した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを得た。得られたワニスより、実施例1と同様にして、1.6mm厚の硬化板を得た。得られた1.6mm厚の硬化板について、後述する方法に従って物性等の評価を行った。
【0093】
<参考例2>
熱ラジカル重合開始剤(日油社製、パーブチル P (商品名))1質量部を追加した以外は、実施例4と同様にして、ワニスを得た。得られたワニスより、実施例4と同様にして、1.6mm厚の硬化板を得た。得られた1.6mm厚の硬化板について、後述する方法に従って物性等の評価を行った。
【0094】
<参考例3>
熱ラジカル重合開始剤(日油社製、パーブチル P (商品名))1質量部を追加した以外は、実施例5と同様にして、ワニスを得た。得られたワニスより、実施例5と同様にして、1.6mm厚の硬化板を得た。得られた1.6mm厚の硬化板について、後述する方法に従って物性等の評価を行った。
【0095】
<誘電特性(DkおよびDf)>
得られた1.6mm厚の硬化板の銅箔をエッチングにより除去した試験片について、摂動法空洞共振器を用いて、10GHzにおける比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)を測定した。測定温度は23℃とした。
摂動法空洞共振器は、アジレントテクノロジー社製品、Agilent8722ESを用いた。
【0096】
<ピール強度>
上記のようにして得られた硬化板を用い、JIS C6481の5.7 「引きはがし強さ」の規定に準じて、銅箔ピール強度(接着力)を2回測定し、平均値を求めた。測定温度は23℃とした。
【0097】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度(Tg)は、得られた1.6mm厚の硬化板の銅箔をエッチングにより除去した試験片について、JIS C6481 5.17.2に準拠して、動的粘弾性分析装置でDMA(動的機械分析:Dynamic Mechanical Analysis)曲げ法により測定した。得られたtanδのチャートからガラス転移温度を見積もった。
動的粘弾性分析装置は、TAインスツルメント製の装置を用いた。
【0098】
<熱膨張係数(CTE)>
(CTE:Coefficient of linear Thermal Expansion)
1.6mm厚の硬化板の銅箔をエッチングにより除去した試験片に対し、JlS C 6481 5.19 に規定されるTMA法(熱機械分析:Thermo-Mechanical Analysis)により硬化板の熱膨張係数を測定し、その値を求めた。具体的には、上記で得られた硬化板の両面の銅箔をエッチングにより除去した後に、熱機械分析装置(TAインスツルメント製)で40℃から340℃まで毎分10℃で昇温し、線熱膨張係数(ppm/℃)を測定した。ppmは、体積比である。その他の詳細については、上記JIS C 6481 5.19に準拠する。
【0099】
【表1】
(表の注記)
Dk:10GHzにおける比誘電率
Df:10GHzにおける誘電正接
ピール強度:銅箔の剥離試験の結果
ガラス転移温度:DMA法により測定されるtanδから見積もられたガラス転移温度
CTE:TMA法により測定された熱膨張係数
【0100】
上記表1の結果から、本実施形態に係る多官能ビニル芳香族重合体(A)(多官能ビニルベンゼン重合体(ap))と熱硬化性化合物(B)とを組み合わせた樹脂組成物は、誘電特性(低誘電率、低誘電正接)に優れ、かつ、高いガラス転移温度および低熱膨張係数を有していた。さらに、ピール強度も高かった。
一方、ラジカル重合開始剤を含有すると、参考例1と実施例1、参考例2と実施例4、参考例3と実施例5との対比から明らかなとおり、誘電正接が高くなり、ガラス転移温度が低下し、熱膨張係数も高くなった。さらに、ピール強度も低かった。