(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/28 20060101AFI20231226BHJP
H01P 5/12 20060101ALI20231226BHJP
H01P 5/16 20060101ALI20231226BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20231226BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01Q21/28
H01P5/12 A
H01P5/16 C
H01Q13/08
H01Q1/52
(21)【出願番号】P 2022141355
(22)【出願日】2022-09-06
(62)【分割の表示】P 2020104608の分割
【原出願日】2020-06-17
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】原 康之
(72)【発明者】
【氏名】宇井 裕
(72)【発明者】
【氏名】芦田 裕太
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/210979(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0219272(US,A1)
【文献】特開2013-034184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0234908(US,A1)
【文献】特開2019-102885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/28
H01P 5/12
H01P 5/16
H01Q 13/08
H01Q 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の放射導体を有するアンテナ層と、
前記アンテナ層に積層され、第1のアンテナ信号を前記第1及び第2の放射導体に分配する第1のディバイダー回路を有するディバイダー層と、
前記ディバイダー層と前記アンテナ層の間に設けられたグランドパターンと、を備え、
前記アンテナ層は、積層方向から見た平面視で、前記第1の放射導体を取り囲む複数の第1のグランドピラーと、前記第2の放射導体を取り囲む前記複数の第1グランドピラーとは別の複数の第2のグランドピラーとをさらに有し、
前記グランドパターンは、積層方向から見た平面視で、前記複数の第1のグランドピラーに囲まれた第1の空間と重なる第1の領域と、前記複数の第2のグランドピラーに囲まれた第2の空間と重なる第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域を接続する第3の領域を有
し、
前記第1及び第2の領域の配列方向と直交する幅方向における前記第3の領域の幅は、前記幅方向における前記第1及び第2の領域の幅よりも狭い、アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ層は、前記第1の放射導体と容量結合する第1の給電導体と、前記第2の放射導体と容量結合する第2の給電導体をさらに有する、請求項
1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1の放射導体に対する前記第1の給電導体の給電位置は、前記第1の給電導体の、前記第2の放射導体に対する前記第2の給電導体の給電位置に対応する位置と180°異なっており、
前記第1のディバイダー回路は、第1の共通配線区間と、前記第1の共通配線区間から分岐し、それぞれ前記第1及び第2の給電導体に接続された第1及び第2の分岐配線区間を有し、
前記第1の分岐配線区間は、前記第2の分岐配線区間よりも短い、請求項
2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の共通配線区間から前記第1及び第2の分岐配線区間に分岐する第1の分岐点は、積層方向から見た平面視で、前記第1の領域と重なる位置に設けられている、請求項
3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
第1及び第2の放射導体を有するアンテナ層と、
前記アンテナ層に積層され、第1のアンテナ信号を前記第1及び第2の放射導体に分配する第1のディバイダー回路と、第2のアンテナ信号を前記第1及び第2の放射導体に分配する第2のディバイダー回路
とを有するディバイダー層と、
前記ディバイダー層と前記アンテナ層の間に設けられたグランドパターンと、を備え、
前記アンテナ層は、積層方向から見た平面視で、前記第1の放射導体を取り囲む複数の第1のグランドピラーと、前記第2の放射導体を取り囲む前記複数の第1グランドピラーとは別の複数の第2のグランドピラーと、前記第1の放射導体と容量結合する第1の給電導体と、前記第2の放射導体と容量結合する第2の給電導体と、前記第1の放射導体と容量結合する第3の給電導体と、前記第2の放射導体と容量結合する第4の給電導体とをさらに有し、
前記第1及び第3の給電導体は、積層方向に互いに異なる平面位置に配置されており、
前記第2及び第4の給電導体は、積層方向に互いに異なる平面位置に配置されて
おり、
前記グランドパターンは、積層方向から見た平面視で、前記複数の第1のグランドピラーに囲まれた第1の空間と重なる第1の領域と、前記複数の第2のグランドピラーに囲まれた第2の空間と重なる第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域を接続する第3の領域を有する、アンテナ装置。
【請求項6】
前記第1の放射導体に対する前記第3の給電導体の給電位置は、前記第1の放射導体に対する前記第1の給電導体の給電位置と90°異なっており、
前記第2の放射導体に対する前記第4の給電導体の給電位置は、前記第2の放射導体に対する前記第2の給電導体の給電位置と90°異なっており、
前記第1の放射導体に対する前記第3の給電導体の給電位置は、前記第1の給電導体の、前記第2の放射導体に対する前記第4の給電導体の給電位置に対応する位置と180°異なっており、
前記第2のディバイダー回路は、第2の共通配線区間と、前記第2の共通配線区間から分岐し、それぞれ前記第3及び第4の給電導体に接続された第3及び第4の分岐配線区間を有し、
前記第4の分岐配線区間は、前記第3の分岐配線区間よりも短い、請求項
5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第2の共通配線区間から前記第3及び第4の分岐配線区間に分岐する第2の分岐点は、積層方向から見た平面視で、前記第2の領域と重なる位置に設けられている、請求項
6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記アンテナ層は、前記複数の第1のグランドピラーを相互に接続する複数の第1のグランドリングと、前記複数の第2のグランドピラーを相互に接続する複数の第2のグランドリングをさらに有し、
前記複数の第1のグランドリングは、積層方向に配列され、
前記複数の第2のグランドリングは、積層方向に配列される、請求項1乃至
7のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記アンテナ層は、第1の誘電体と、前記第1の誘電体と前記ディバイダー層との間に配置される第2の誘電体を含み、
前記第1及び第2の放射導体は、前記第1の誘電体に埋め込まれている、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ装置に関し、特に、放射導体を含むアンテナ層とフィルター回路を含むフィルター層が一体化された構成を有するアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射導体を含むアンテナ層とフィルター回路を含むフィルター層が一体化されたアンテナ装置としては、特許文献1に記載されたアンテナ装置が知られている。特許文献1の
図5には、複数の放射導体をアレイ状に配列したアンテナモジュールが開示されている。特許文献1の
図5に記載されたアンテナモジュールは、9個の放射導体に対してそれぞれ個別にフィルター回路を割り当てている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の放射導体に対してそれぞれ個別にフィルター回路を割り当てると、信号端子数が多くなり、制御が複雑になってしまう。これを解決するためには、複数の放射導体に対して1つのフィルター回路を共用する方法が考えられるが、この場合、1つのフィルター回路から出力されるアンテナ信号をどのようにして複数の放射導体に分配するかが問題となる。
【0005】
したがって、本発明の目的は、複数の放射導体に対して1つのフィルター回路を共用するタイプのアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるアンテナ装置は、第1のフィルター回路を有するフィルター層と、第1及び第2の放射導体を有するアンテナ層と、フィルター層とアンテナ層の間に積層され、第1のフィルター回路から給電される第1のアンテナ信号を第1及び第2の放射導体に分配する第1のディバイダー回路を有するディバイダー層と、フィルター層とディバイダー層の間に設けられた第1のグランドパターンと、ディバイダー層とアンテナ層の間に設けられた第2のグランドパターンとを備え、アンテナ層は、積層方向から見た平面視で、第1の放射導体を取り囲む複数の第1のグランドピラーと、第2の放射導体を取り囲む複数の第2のグランドピラーとをさらに有し、第1及び第2のグランドパターンはいずれも、積層方向から見た平面視で、複数の第1のグランドピラーに囲まれた第1の空間と重なる第1の領域と、複数の第2のグランドピラーに囲まれた第2の空間と重なる第2の領域と、第1の領域と第2の領域を接続する第3の領域を有し、第1及び第2の領域の配列方向と直交する幅方向における第3の領域の幅は、幅方向における第1及び第2の領域の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ディバイダー層を挟む第1及び第2のグランドパターンが第3の領域において狭くなっていることから、第1の放射導体と第2の放射導体の独立性を高めることができる。
【0008】
本発明において、フィルター層は、積層方向から見た平面視で、第1のフィルター回路を取り囲む複数の第3のグランドピラーをさらに有し、複数の第3のグランドピラーで囲まれた第3の空間の幅方向における幅は、第1及び第2の空間の幅方向における幅よりも狭くても構わない。これによれば、第1及び第2のグランドピラーから第3のグランドピラーに流れる電流が減少することから、アンテナ特性が向上する。
【0009】
本発明において、アンテナ層は、第1の放射導体と容量結合する第1の給電導体と、第2の放射導体と容量結合する第2の給電導体をさらに有し、第1の放射導体に対する第1の給電導体の給電位置は、第2の放射導体に対する第2の給電導体の給電位置と180°異なっており、第1のディバイダー回路は、第1のフィルター回路に接続された第1の共通配線区間と、第1の共通配線区間から分岐し、それぞれ第1及び第2の給電導体に接続された第1及び第2の分岐配線区間を有し、第1の分岐配線区間は、第2の分岐配線区間よりも短くても構わない。これによれば、第1の放射導体から放射されるエネルギーと第2の放射導体から放射されるエネルギーが打ち消し合うことがない。
【0010】
本発明において、第1の共通配線区間から第1及び第2の分岐配線区間に分岐する第1の分岐点は、積層方向から見た平面視で、第1の領域と重なる位置に設けられていても構わない。これによれば、第3の領域の幅をより狭くすることが可能となる。
【0011】
本発明において、フィルター層は、第2のフィルター回路をさらに有し、ディバイダー層は、第2のフィルター回路から給電される第2のアンテナ信号を第1及び第2の放射導体に分配する第2のディバイダー回路をさらに有し、アンテナ層は、第1の放射導体と容量結合する第3の給電導体と、第2の放射導体と容量結合する第4の給電導体をさらに有し、第1の放射導体に対する第3の給電導体の給電位置は、第1の放射導体に対する第1の給電導体の給電位置と90°異なっており、第2の放射導体に対する第4の給電導体の給電位置は、第2の放射導体に対する第2の給電導体の給電位置と90°異なっており、第1の放射導体に対する第3の給電導体の給電位置は、第2の放射導体に対する第4の給電導体の給電位置と180°異なっており、第2のディバイダー回路は、第2のフィルター回路に接続された第2の共通配線区間と、第2の共通配線区間から分岐し、それぞれ第3及び第4の給電導体に接続された第3及び第4の分岐配線区間を有し、第4の分岐配線区間は、第3の分岐配線区間よりも短くても構わない。これによれば、第1の放射導体から放射されるエネルギーと第2の放射導体から放射されるエネルギーが打ち消し合うことがない。
【0012】
本発明において、第2の共通配線区間から第3及び第4の分岐配線区間に分岐する第2の分岐点は、積層方向から見た平面視で、第2の領域と重なる位置に設けられていても構わない。これによれば、第3の領域の幅をより狭くすることが可能となる。
【0013】
本発明において、アンテナ層を構成する誘電体材料は、フィルター層及びディバイダー層を構成する誘電体材料と異なっていても構わない。これによれば、アンテナ特性とフィルター特性を両立させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、少なくとも2つの放射導体に対して1つのフィルター回路を共用するタイプのアンテナ装置において、2つの放射導体の独立性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるアンテナ装置1の外観を示す略斜視図であり、放射面側から見た状態を示している。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態によるアンテナ装置1の外観を示す略斜視図であり、実装面側から見た状態を示している。
【
図3】
図3は、アンテナ装置1の内部構造を説明するための模式図であり、マザーボード5に実装した状態を模式的に示している。
【
図5】
図5は、複数のアンテナ装置1をマザーボード5上にアレイ状に配列した状態を示す略平面図である。
【
図6】
図6は、アンテナ装置1から誘電体2~4を削除した状態を示す略斜視図である。
【
図7】
図7は、アンテナ装置1から誘電体2~4を削除した状態をx方向から見た略側面図である。
【
図8】
図8は、ディバイダー層DIVの構成を説明するための略平面図である。
【
図9】
図9は、フィルター層FILの構成を説明するための略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1及び
図2は、本発明の一実施形態によるアンテナ装置1の外観を示す略斜視図であり、
図1は放射面側から見た状態、
図2は実装面側から見た状態を示している。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本実施形態によるアンテナ装置1は、アンテナ層ANTと、フィルター層FILと、フィルター層FILとアンテナ層ANTの間に積層されたディバイダー層DIVとを有している。
【0019】
アンテナ層ANTは、誘電体2,3と、誘電体3に埋め込まれた放射導体10A,10Bを有している。また、アンテナ層ANTは、積層方向(z方向)から見た平面視で、放射導体10Aを取り囲む複数のグランドピラー11Aと、放射導体10Bを取り囲む複数のグランドピラー11Bを有している。グランドピラー11A,11Bは、誘電体2を貫通するよう、z方向に延在するピラー状の導体である。複数のグランドピラー11Aは、所定のxy平面にてリング状のグランドリング12Aに接続され、複数のグランドピラー11Bは、所定のxy平面にてリング状のグランドリング12Bに接続されている。複数のグランドピラー11A,11Bに囲まれた空間には、後述する給電導体が設けられる。
【0020】
フィルター層FIL及びディバイダー層DIVは、誘電体4と、誘電体4に埋め込まれた導体パターンによって構成される。フィルター層FIL及びディバイダー層DIVの詳細については後述する。誘電体4を構成する誘電体材料は、誘電体2を構成する誘電体材料よりも高い誘電率を有している。誘電体3を構成する誘電体材料は、誘電体4を構成する誘電体材料と同じであっても構わない。フィルター層FILはマザーボードに対する実装面を構成する。実装面には、信号端子40V,40Hと、複数のグランド端子40Gが設けられている。信号端子40Vは垂直偏波のアンテナ信号を入出力するための端子であり、信号端子40Hは水平偏波のアンテナ信号を入出力するための端子である。グランド端子40Gにはグランド電位が与えられる。
【0021】
図3は、本実施形態によるアンテナ装置1の内部構造を説明するための模式図であり、マザーボード5に実装した状態を模式的に示している。
【0022】
図3に示すように、フィルター層FILとディバイダー層DIVの間には、グランドパターンG1が設けられ、ディバイダー層DIVとアンテナ層ANTの間には、グランドパターンG2が設けられている。グランドパターンG1は誘電体4に埋め込まれている。グランドパターンG2は、誘電体4と誘電体2の界面に設けられている。
【0023】
フィルター層FILにはフィルター回路30Vが設けられている。フィルター回路30Vはバンドパスフィルターであり、信号端子40Vに接続される。フィルター回路30Vは、積層方向から見た平面視で複数のグランドピラー31に取り囲まれている。
図3には示されていないが、フィルター層FILには、信号端子40Hに接続された別のフィルター回路も含まれている。
【0024】
ディバイダー層DIVは、ディバイダー回路20Vが設けられている。ディバイダー回路20Vは、フィルター回路30Vから給電されるアンテナ信号を放射導体10A,10Bに分配する回路である。ディバイダー回路20Vは、積層方向から見た平面視で複数のグランドピラー21に取り囲まれている。
図3には示されていないが、ディバイダー層DIVには、別のフィルター回路に接続された別のディバイダー回路も含まれている。
【0025】
図4は、本実施形態によるアンテナ装置1の回路図である。
【0026】
図4に示すように、信号端子40Vに供給されるアンテナ信号SVは、フィルター回路30Vを介してディバイダー回路20Vに供給される。ディバイダー回路20Vは、アンテナ信号SVを放射導体10A,10Bに分配する。一方、信号端子40Hに供給されるアンテナ信号SHは、フィルター回路30Hを介してディバイダー回路20Hに供給される。ディバイダー回路20Hは、アンテナ信号SHを放射導体10A,10Bに分配する。
【0027】
放射導体10Aに対するアンテナ信号SVとアンテナ信号SHの給電位置は互いに90°異なっている。同様に、放射導体10Bに対するアンテナ信号SVとアンテナ信号SHの給電位置は互いに90°異なっている。これにより、アンテナ信号SV,SHは、いずれも2つの放射導体10A,10Bから空間に放射されることになる。本実施形態によるアンテナ装置1は、
図5に示すように、マザーボード5上にアレイ状に配列しても構わない。このように、複数のアンテナ装置1をアレイ状に配列すれば、いわゆるフェーズドアレイを構成することができ、ビームの方向を任意に変化させることが可能となる。
【0028】
以下、本実施形態によるアンテナ装置1の内部構造についてより詳細に説明する。
【0029】
図6は、アンテナ装置1から誘電体2~4を削除した状態を示す略斜視図である。
【0030】
図6に示すように、複数のグランドピラー11Aに囲まれた空間には、z方向から見て放射導体10Aと重なる給電導体13V,13Hが設けられている。このうち、給電導体13Vはy方向を長手方向とする導体パターンであり、放射導体10Aに垂直偏波のアンテナ信号SVを供給する。一方、給電導体13Hはx方向を長手方向とする導体パターンであり、放射導体10Aに水平偏波のアンテナ信号SHを供給する。放射導体10Aに対する給電導体13Vの給電位置は、放射導体10Aに対する給電導体13Hの給電位置と90°異なっている。
【0031】
同様に、複数のグランドピラー11Bに囲まれた空間には、z方向から見て放射導体10Bと重なる給電導体14V,14Hが設けられている。このうち、給電導体14Vはy方向を長手方向とする導体パターンであり、放射導体10Bに垂直偏波のアンテナ信号SVを供給する。一方、給電導体14Hはx方向を長手方向とする導体パターンであり、放射導体10Bに水平偏波のアンテナ信号SHを供給する。放射導体10Bに対する給電導体14Vの給電位置は、放射導体10Bに対する給電導体14Hの給電位置と90°異なっている。
【0032】
アンテナ層ANTの下方には、大面積のグランドパターンG1~G3が設けられている。グランドパターンG1とグランドパターンG2に挟まれた領域はディバイダー層DIVである。グランドパターンG1とグランドパターンG2は、複数のグランドピラー21によって接続されている。ここで、グランドパターンG1,G2はいずれも、z方向から見た平面視で、複数のグランドピラー11Aに囲まれた空間と重なる領域S1と、複数のグランドピラー11Bに囲まれた空間と重なる領域S2と、領域S1と領域S2を接続する領域S3を有している。そして、領域S3のy方向における幅は、領域S1,S2のy方向における幅よりも狭い。これにより、グランドパターンG1,G2を介した放射導体10A,10Bの相互干渉が低減することから、放射導体10Aと放射導体10Bの独立性が高められる。
【0033】
グランドパターンG1とグランドパターンG3に挟まれた領域はフィルター層FILである。グランドパターンG1とグランドパターンG3は、複数のグランドピラー31によって接続されている。グランドパターンG3のy方向における幅は一定であっても構わない。
【0034】
図7は、アンテナ装置1から誘電体2~4を削除した状態をx方向から見た略側面図である。
【0035】
図7に示すように、グランドピラー11A,11B,21で囲まれた空間のy方向における幅をW1とし、グランドピラー31で囲まれた空間のy方向における幅をW2とした場合、本実施形態においてはW1>W2に設計されている。これにより、グランドピラー11A,11Bからグランドピラー31を介してグランド端子40Gに流れる電流が減少することから、アンテナ特性が向上する。
【0036】
図8は、ディバイダー層DIVの構成を説明するための略平面図である。
【0037】
図8に示すように、ディバイダー層DIVには、ディバイダー回路20V,20Hが設けられている。このうち、ディバイダー回路20Hは共通配線区間22と分岐配線区間23,24からなり、ディバイダー回路20Vは共通配線区間25と分岐配線区間26,27からなる。ディバイダー回路20Hを構成する共通配線区間22の一端22aは、グランドパターンG1に設けられた開口部を介してフィルター回路30Hに接続される。同様に、ディバイダー回路20Vを構成する共通配線区間25の一端25aは、グランドパターンG1に設けられた開口部を介してフィルター回路30Vに接続される。
【0038】
ディバイダー回路20Hを構成する分岐配線区間23,24は、共通配線区間22の他端22bを起点として分岐した配線である。分岐配線区間23の端部は、アンテナ層ANTに含まれる容量パターン15Hに接続され、分岐配線区間24の端部は、アンテナ層ANTに含まれる容量パターン16Hに接続される。同様に、ディバイダー回路20Vを構成する分岐配線区間26,27は、共通配線区間25の他端25bを起点として分岐した配線である。分岐配線区間26の端部は、アンテナ層ANTに含まれる容量パターン15Vに接続され、分岐配線区間27の端部は、アンテナ層ANTに含まれる容量パターン16Vに接続される。また、ディバイダー層DIVには、共通配線区間22,25及び分岐配線区間23,24,26,27に沿ってこれらを取り囲むように配置された複数のグランドピラー28も設けられている。
【0039】
ここで、容量パターン15Hは給電導体13Hと容量結合し、これによってフィルター回路30H、共通配線区間22、分岐配線区間23を介して供給されるアンテナ信号SHが給電導体13Hに供給される。容量パターン16Hは給電導体14Hと容量結合し、これによってフィルター回路30H、共通配線区間22、分岐配線区間24を介して供給されるアンテナ信号SHが給電導体14Hに供給される。放射導体10Aに対する給電導体13Hの給電位置は、放射導体10Bに対する給電導体14Hの給電位置と180°異なっている。このため、放射導体10A,10Bに同相のアンテナ信号SHを供給すると、放射導体10Aから放射されるエネルギーと放射導体10Bから放射されるエネルギーが打ち消し合ってしまう。しかしながら、本実施形態においては、分岐配線区間23が分岐配線区間24よりも短く、これにより放射導体10A,10Bには位相が互いに180°反転したアンテナ信号SHが供給されることから、放射導体10Aから放射されるエネルギーと放射導体10Bから放射されるエネルギーは、互いに強め合うことになる。
【0040】
同様に、容量パターン15Vは給電導体13Vと容量結合し、これによってフィルター回路30V、共通配線区間25、分岐配線区間26を介して供給されるアンテナ信号SVが給電導体13Vに供給される。容量パターン16Vは給電導体14Vと容量結合し、これによってフィルター回路30V、共通配線区間25、分岐配線区間27を介して供給されるアンテナ信号SVが給電導体14Vに供給される。放射導体10Aに対する給電導体13Vの給電位置は、放射導体10Bに対する給電導体14Vの給電位置と180°異なっている。このため、放射導体10A,10Bに同相のアンテナ信号SVを供給すると、放射導体10Aから放射されるエネルギーと放射導体10Bから放射されるエネルギーが打ち消し合ってしまう。しかしながら、本実施形態においては、分岐配線区間27が分岐配線区間26よりも短く、これにより放射導体10A,10Bには位相が互いに180°反転したアンテナ信号SVが供給されることから、放射導体10Aから放射されるエネルギーと放射導体10Bから放射されるエネルギーは、互いに強め合うことになる。
【0041】
ここで、ディバイダー回路20Hの分岐点である共通配線区間22の他端22bは、z方向から見た平面視で、グランドピラー11Aに囲まれた空間と重なる位置、つまり、グランドパターンG1,G2の領域S1と重なる位置に設けられている。これに対し、ディバイダー回路20Vの分岐点である共通配線区間25の他端25bは、z方向から見た平面視で、グランドピラー11Bに囲まれた空間と重なる位置、つまり、グランドパターンG1,G2の領域S2と重なる位置に設けられている。これにより、グランドパターンG1,G2の領域S3と重なる位置には、分岐配線区間24,26がx方向に直線的に延在するのみとなることから、領域S3のy方向における幅を十分に狭くすることが可能となる。
【0042】
図9は、フィルター層FILの構成を説明するための略平面図である。
【0043】
図9に示すように、フィルター層FILには、フィルター回路30V,30Hが設けられている。このうち、フィルター回路30Vは導体パターン301V~313Vを含み、フィルター回路30Hは導体パターン301H~313Hを含む。
【0044】
導体パターン301Vは信号端子40Vに接続されるとともに、導体パターン302Vと容量結合している。導体パターン302Vはインダクタとして機能する。導体パターン304V,306V,308V,310V,312Vもインダクタとして機能し、導体パターン303V,305V,307V,309V,311Vを介して容量結合している。そして、導体パターン312Vと容量結合する導体パターン313Vは、グランドパターンG1に設けられた開口部を介して、ディバイダー回路20Vに含まれる共通配線区間25の一端25aに接続される。
【0045】
同様に、導体パターン301Hは信号端子40Hに接続されるとともに、導体パターン302Hと容量結合している。導体パターン302Hはインダクタとして機能する。導体パターン304H,306H,308H,310H,312Hもインダクタとして機能し、導体パターン303H,305H,307H,309H,311Hを介して容量結合している。そして、導体パターン312Hと容量結合する導体パターン313Hは、グランドパターンG1に設けられた開口部を介して、ディバイダー回路20Hに含まれる共通配線区間22の一端22aに接続される。
【0046】
以上が本実施形態によるアンテナ装置1の構造である。このように、本実施形態によるアンテナ装置1は、2つの放射導体10A,10Bにアンテナ信号SV,SHが共通に給電されることから、アンテナ信号SV,SHを入力するための2つの信号端子40V,40Hを設ければ足りる。また、アンテナ信号SV,SHを分配するディバイダー層DIVをグランドパターンG1,G2によって挟み込み、且つ、グランドパターンG1,G2の領域S3の幅を狭くしていることから、放射導体10A,10Bの独立性を高めることが可能となる。しかも、フィルター回路30V,30Hの周囲に設けられたグランドピラー31で囲まれた空間のy方向における幅を狭くしていることから、高いアンテナ特性を得ることも可能となる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 アンテナ装置
2~4 誘電体
5 マザーボード
10A,10B 放射導体
11A,11B,21,28,31 グランドピラー
12A,12B グランドリング
13V,13H,14V,14H 給電導体
15H,15V,16H,16V 容量パターン
20V,20H ディバイダー回路
22,25 共通配線区間
22a,25a 共通配線区間の一端
22b,25b 共通配線区間の他端
23,24,26,27 分岐配線区間
30V,30H フィルター回路
40G グランド端子
40H,40V 信号端子
301H~313H,301V~313V 導体パターン
ANT アンテナ層
DIV ディバイダー層
FIL フィルター層
G1~G3 グランドパターン
S1~S3 領域
SV,SH アンテナ信号