(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】外科用移動型X線装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20231226BHJP
【FI】
A61B6/00 310
(21)【出願番号】P 2022145154
(22)【出願日】2022-09-13
(62)【分割の表示】P 2020537333の分割
【原出願日】2018-08-16
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【氏名又は名称】妹尾 明展
(74)【代理人】
【識別番号】100189566
【氏名又は名称】岸本 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100228865
【氏名又は名称】吉見 優人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 剛
(72)【発明者】
【氏名】森 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 慶己
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-200436(JP,A)
【文献】特開2016-049009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線管と、
前記X線管を搭載し、走行可能に構成された走行台車と、
X線画像を表示するモニタと、
前記モニタを搭載し、走行可能に構成された外科用モニタ台車と、
前記外科用モニタ台車に搭載されたX線管給電用バッテリと、
前記X線管給電用バッテリの電力を前記外科用モニタ台車から前記走行台車に供給するケーブルと、
前記走行台車に搭載され、前記ケーブルにより供給される前記X線管給電用バッテリからの電力を直流から交流に変換するインバータと、
前記インバータと前記X線管との間に設けられ、前記X線管用の管電圧を発生する高電圧発生ユニットと
を備え、
前記X線管はCアームの一端側に保持されており、
前記走行台車はX線管給電用バッテリを搭載せず、
前記インバータで変換された交流は前記高電圧発生ユニットに供給される
外科用移動型X線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の外科用移動型X線装置において、
電源コンセントに接続可能な電源ケーブルを前記外科用モニタ台車に電気的に接続し、
当該電源コンセントに当該電源ケーブルを電気的に接続することで得られた電力を前記X線管給電用バッテリに充電する制御を行う制御手段を前記外科用モニタ台車に搭載する
外科用移動型X線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管を搭載し、走行可能に構成された走行台車を備えた移動型X線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動型X線装置は、X線による透視・撮影を主目的として行わない手術室などの部屋にて使用するために、装置使用時の前後では本来の目的作業の邪魔にならないように移動可能な台車構造として設計されている。具体的には、X線を照射するX線管と、当該X線管を搭載し、走行可能に構成された走行台車とを備えている。走行台車の底部には車輪が設けられている。さらに、走行台車には、手動操作用のハンドルを設けており、操作者が手動操作用のハンドルを握って、走行台車を動かすことで、任意の場所に移動させて当該場所にて透視・撮影を行うことができる。
【0003】
また、装置の性質上、コンパクトさが求められる。そこで、被検体にX線を照射するX線管を搭載したユニット(X線台車)と、X線照射(透視・撮影)にて得られるX線画像を表示するモニタを搭載したユニット(モニタ台車)との2つのユニットにて構成される場合が多い(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
移動型X線装置としては、入院中の患者(被検体)の病室で回診を行う回診用X線装置や、特許文献1、2のように手術室にて透視・撮影を行う外科用X線装置などがある。回診用X線装置の場合には、走行台車に支柱および支柱に支持されたアームを備え、アームにX線管を支持し、回診時に可搬型のX線検出器を病室のベッドに装填して透視・撮影を行う。外科用X線装置の場合には、走行台車にCアームを備え、X線管およびX線検出器が互いに対向するようにCアームにX線管およびX線検出器を支持し、Cアームを回転させることで、任意の位置や方向から透視・撮影を行う。
【0005】
従来の移動型X線装置においては、装置システムを稼働させる電力は、装置に付属する電源ケーブルを、電力を供給する商用電源コンセントに電気的に接続することで得ている。そのために、電源事情が悪い、または電源が近くにない場所での装置の使用は不可能である。このような場所において装置を使用しようとする場合には、装置付近に簡易型の発
電機を用意するか、電力を事前に蓄積しておいたバッテリ等を装置に電気的に接続するか、またはバッテリを内蔵した装置を使用する必要がある。特許文献1、2ではX線管を搭載した走行台車(X線台車)にバッテリを内蔵している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-200436号公報
【文献】特開2010-63586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、バッテリを装置に内蔵する場合、ある程度の期間に大容量の電力を継続して供給することができるように大型のバッテリを使用する必要があるという問題点がある。特に、X線管からのX線の照射(曝射)に大容量の電力が必要となる。
大型のバッテリは寸法および重量が大きい。よって、X線管を搭載した走行台車(X線台車)に大型のバッテリを内蔵すると、その重量から走行台車の移動が困難となる。また、大型のバッテリを内蔵することによって走行台車(X線台車)自体の寸法が大きくなり被検体への接近が困難となる。このように大型のバッテリを内蔵すると走行台車の操作性が低くなる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、走行台車の操作性を保ちつつ、大容量の電力を継続して供給することができる移動型X線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る外科用移動型X線装置は、X線を照射するX線管と、当該X線管を搭載し、走行可能に構成された走行台車と、X線画像を表示するモニタと、当該モニタを搭載し、走行可能に構成された外科用モニタ台車と、当該外科用モニタ台車に搭載されたX線管給電用バッテリと、前記走行台車と前記外科用モニタ台車とを電気的に接続し、前記X線管給電用バッテリの電力を前記外科用モニタ台車から前記走行台車に供給するケーブルとを備え、前記X線管はCアームの一端側に保持されており、前記走行台車はX線管給電用バッテリを搭載しないものである。
【0010】
本発明に係る移動型X線装置によれば、X線管を搭載し、走行可能に構成された走行台車と、モニタを搭載し、走行可能に構成されたモニタ台車とにユニットを2つに分ける。走行台車にはX線管給電用バッテリを搭載せずに、モニタ台車のみにX線管給電用バッテリを搭載する。走行台車とモニタ台車とを電気的に接続し、X線管給電用バッテリの電力をモニタ台車から走行台車に供給するケーブルを備える。ケーブルを備え、X線管給電用バッテリの電力をモニタ台車から走行台車に供給することにより、大容量の電力を走行台車に継続して供給することができる。また、走行台車にはX線管給電用バッテリが搭載されていないので、走行台車の寸法・重量を小さくすることができ、走行台車の操作性が低くなることはない。その結果、走行台車の操作性を保ちつつ、大容量の電力を継続して供給することができる。
【0011】
また、本発明に係る外科用移動型X線装置において、電源コンセントに接続可能な電源ケーブルを外科用モニタ台車に電気的に接続し、当該電源コンセントに当該電源ケーブルを電気的に接続することで得られた電力をX線管給電用バッテリに充電する制御を行う制御手段を外科用モニタ台車に搭載するのが好ましい。
また、本発明に係る外科用移動型X線装置において、前記走行台車に搭載され、当該ケーブルに電気的に接続され、前記X線管給電用バッテリからの電力を直流から交流に変換するインバータを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る移動型X線装置によれば、走行台車にはX線管給電用バッテリを搭載せずに、モニタ台車のみにX線管給電用バッテリを搭載する。走行台車とモニタ台車とを電気的に接続し、X線管給電用バッテリの電力をモニタ台車から走行台車に供給するケーブルを備える。ケーブルを備え、X線管給電用バッテリの電力をモニタ台車から走行台車に供給することにより、大容量の電力を走行台車に継続して供給することができる。また、走行台車にはX線管給電用バッテリが搭載されていないので、走行台車の寸法・重量を小さくすることができ、走行台車の操作性が低くなることはない。その結果、走行台車の操作性を保ちつつ、大容量の電力を継続して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例に係る外科用X線装置の概略構成を示した側面図である。
【
図2】外科用X線装置に備えられたモニタ台車の概略構成を示した側面図である。
【
図3】外科用X線装置に備えられたX線台車およびモニタ台車の概略構成を示した側面図である。
【
図4】実施例に係る外科用X線装置のブロック図である。
【
図5】実施例に係る外科用X線装置を用いる際の一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る外科用X線装置の概略構成を示した側面図であり、
図2は、外科用X線装置に備えられたモニタ台車の概略構成を示した側面図であり、
図3は、外科用X線装置に備えられたX線台車およびモニタ台車の概略構成を示した側面図であり、
図4は、実施例に係る外科用X線装置のブロック図である。本実施例では、移動型X線装置として、外科用X線テレビシステムのような侵襲的な検査(外科に準じた検査)に使用される外科用X線装置を例に採って説明するとともに、X線管およびX線検出器を保持する保持アームとしてCアームを例に採って説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施例に係る外科用X線装置1は、被検体Mを載置する載置台2(手術台やベッドや天板)とは独立して、X線管3およびX線検出器4が移動するように構成されている。X線管3は被検体MにX線を照射し、X線検出器4は被検体Mを透過したX線を検出する。
図1では、X線検出器4は、イメージインテンシファイア(I.I)で構成されているが、通常において用いられるX線検出器であれば、フラットパネル型X線検出器(FPD: Flat Panel Detector) などに例示されるように特に限定されない。外科用X線装置1は、本発明における移動型X線装置に相当する。
【0016】
この他に、外科用X線装置1は、一端でX線管3を保持し、他端でX線検出器4を保持するCアーム5と、X線管3,X線検出器4およびCアーム5を搭載し、走行可能に構成されたX線台車6と、X線検出器3で得られたX線画像を表示するモニタ7(
図2および
図3を参照)を搭載し、走行可能に構成されたモニタ台車8(
図2および
図3を参照)と、X線管3やX線検出器4やX線台車6とモニタ台車8とを電気的に接続するケーブル9とを備えている。X線台車6は、本発明における走行台車に相当する。
【0017】
Cアーム5は、X線台車6に保持され当該X線台車6に対して移動可能に構成されている。Cアーム5は、回転中心軸x方向に湾曲状に形成されている。Cアーム5は、本実施例では、Cアーム5自身に沿って回転中心軸xと直交する軸yの軸心周りに(矢印RA方向に)回転することで、Cアーム5に保持されたX線管3およびX線検出器4も同方向に回転することが可能である。さらに、Cアーム5は回転中心軸xの軸心周りに(矢印RB方向に)回転することで、X線管4およびX線検出器5も同方向に回転することが可能であり、Cアーム5は鉛直軸の軸心周りに(矢印RC方向に)回転(すなわち旋回)するこ
とで、X線管4およびX線検出器5も同方向に回転(旋回)することが可能である。
【0018】
具体的に、Cアーム5は、
図1に示すように、支柱11,水平支持部12およびアーム保持部13を介して、X線台車6に保持されている。支柱11は鉛直軸に沿って上下に昇降移動可能に回転可能で、支柱11に保持されたCアーム5ごとX線管4およびX線検出器5を昇降移動させることができる。水平支持部12は、回転中心軸x方向に平行な水平方向に進退移動可能であり、水平支持部12に保持されたCアーム5ごとX線管4およびX線検出器5を進退移動させることができる。
【0019】
また、水平支持部12に対してアーム保持部13を回転中心軸xの軸心周りに回転可能に保持することで、アーム保持部13に保持されたCアーム5ごとX線管3およびX線検出器4を回転中心軸xの軸心周りに(矢印RA方向に)回転させることができる。アーム保持部13に対してCアーム5を回転中心軸xと直交する軸yの軸心周りに回転可能に保持することで、Cアーム5ごとX線管3およびX線検出器4を軸yの軸心周りに(矢印RB方向に)回転させることができる。支柱11に対して水平保持部12を鉛直軸の軸心周りに保持することで、水平保持部12およびアーム保持部13に保持されたCアーム5ごとX線管3およびX線検出器4を鉛直軸の軸心周りに(矢印RC方向に)回転(旋回)させることができる。
【0020】
また、Cアーム5には、手動操作用のハンドル14を設けており、操作者が手動操作用のハンドル14を握って、Cアーム5ごとX線管3およびX線検出器4を軸yの軸心周りに(矢印RA方向に)手動で回転させ、Cアーム5ごとX線管3およびX線検出器4を回転中心軸xの軸心周りに(矢印RB方向に)手動で回転させ、Cアーム5ごとX線管4およびX線検出器5を鉛直軸の軸心周りに(矢印RC方向に)手動で回転(旋回)させることができる。また、支柱11を鉛直軸に沿って上下に手動で昇降移動させて、支柱11に保持されたCアーム5ごとX線管4およびX線検出器5を手動で昇降移動させ、水平支持部12を水平方向に手動で進退移動させて、水平支持部12に保持されたCアーム5ごとX線管4およびX線検出器5を手動で進退移動させることができる。
【0021】
なお、これらのX線管3,X線検出器4,Cアーム5,X線台車6,支柱11,水平支持部12およびアーム保持部13はパワーバランス(重量バランス)が保たれるようにそれぞれが設計されており、これらがどの位置に移動しても重量により軸が傾くことがない。よって、操作者はこれらを手動で簡単に動かすことができる。
【0022】
X線台車6の底部には前輪6aおよび後輪6bが設けられている。モータ6Mにより前輪6aを駆動させて、操作者がX線台車6を押し引きして後輪6bを転がすことで、床面に対してCアーム5ごとX線管3およびX線検出器4を水平方向に自在に移動させることができる。このように、本実施例に係るX線台車6は、モータ6Mにより手動をアシスト(支援)するように構成されている。もちろん、X線検出器4,Cアーム5,X線台車6,支柱11,水平支持部12およびアーム保持部13を含んだ外科用X線装置1の総重量が軽ければ、必ずしもモータにより手動をアシスト(支援)しなくてもよい。なお、モータや駆動軸やピニオン等(いずれも図示省略)を備えて、X線管3,X線検出器4およびCアーム5などの手動をアシスト(支援)するように構成してもよい。
【0023】
このようにCアーム5およびX線台車6が手動で動くことにより、X線管3,X線検出器4の両方が被検体Mに対して手動により動く。また、X線検出器4で検出されたX線に基づいて透視あるいは撮影を行う。撮影を行う場合には、通常の線量でX線管3から照射されて被検体Mを透過したX線をX線検出器4が検出して得られたX線検出信号に対してラグ補正やゲイン補正などの各種の処理を行ってX線画像を出力して、RAM(Random-Access Memory)などで形成された記憶媒体(図示省略)に書き込んで記憶し、適宜必要に
応じて、記憶媒体から読み出して、モニタ7(
図2および
図3を参照)に表示あるいはプリンタやフィルム等(図示省略)に印刷する。一方、透視を行う場合には、撮影のときよりも少ない線量でX線管3から連続的に照射されて被検体Mを透過したX線をX線検出器4が検出して得られた各々のX線検出信号に対してラグ補正やゲイン補正などの各種の処理をそれぞれ行って各々のX線画像を逐次に連続的にモニタ7に表示する。このように記憶媒体を介さずにモニタ7に直接的に表示することで、透視で得られた各々のX線画像を動画としてリアルタイムに表示することができる。なお、透視で得られた各々のX線画像を記憶媒体に書き込んで記憶してもよい。本実施例では、侵襲的な検査に使用される外科用X線装置1であるので、透視を専ら行うために用いられる。
【0024】
図2および
図3に示すように、モニタ台車8はモニタ7を搭載している。本実施例では、モニタ7を2つ設置しており、一方がリアルタイムにX線画像を表示する透視用のライブモニタであり、他方が過去に得られたX線画像を参照用に表示するリファレンスモニタである。もちろん、モニタの数については特に限定されず、透視用のライブモニタのみを備えてもよい。X線台車6と同様に、モニタ台車8についても、底部に前輪8aおよび後輪8bが設けられており、これらの前輪8aおよび後輪8bを転がすことで床面に対してモニタ台車8を水平方向に自在に移動させることができる。モニタ台車8についても、モータなどによりモニタ台車8の手動をアシスト(支援)するように構成してもよい。
【0025】
図3に示すように、ケーブル9は、X線管3やX線検出器4やX線台車6とモニタ台車8とを電気的に接続している。ケーブル9は、電源ケーブルおよび通信ケーブルで構成されている。
【0026】
透視・撮影で得られたX線検出信号を、通信ケーブルを介してX線台車6からモニタ台車8に送信する。そして、モニタ台車8に搭載(内蔵)された画像処理部(図示省略)にてX線検出信号に対してラグ補正やゲイン補正などの各種の画像処理を行ってX線画像を出力して、当該X線画像をモニタ7やプリンタやフィルム等に送信する。本実施例では画像処理部をモニタ台車8に搭載することで、X線台車6の寸法・重量を小さくしている。ただし、後述するX線管給電用バッテリ85(
図4を参照)と比較すると画像処理部の寸法・重量は小さいので、X線台車6に画像処理部を搭載してもよいし、X線台車6およびモニタ台車8の両方に画像処理部をそれぞれ搭載してもよい。
【0027】
商用電源コンセントCに接続可能な電源ケーブル81(
図4も参照)をモニタ台車8に電気的に接続している。電源ケーブル81を商用電源コンセントCに電気的に接続することにより、電源ケーブル81からの電力をX線管給電用バッテリ85に充電する。一方、ケーブル9の電源ケーブルは、X線管給電用バッテリ85の電力をモニタ台車8からX線台車6に供給する。
【0028】
図4に示すように、モニタ台車8は絶縁トランス82と充放電制御ユニット83とバッテリユニット84とを備えている。絶縁トランス82は、一次コイルと二次コイルとで構成されており、電源ケーブル81に電気的に接続されている。このように絶縁トランス82を構成することにより、商用電源コンセントC(
図3を参照)からのノイズを絶縁トランス82は遮断する。充放電制御ユニット83は、本発明における制御手段に相当する。
【0029】
また、絶縁トランス82は充放電制御ユニット83に電気的に接続されている。充放電制御ユニット83はシステム電源(図示省略)を備えており、システム電源はAC/DC変換器(図示省略)を備えている。これによって、商用電源コンセントCからの商用電力をAC/DC変換器は交流(AC)から直流(DC)に変換する。
【0030】
また、充放電制御ユニット83は、バッテリユニット84およびケーブル9に電気的に
接続されている。バッテリユニット84は、複数のX線管給電用バッテリ85が直列に接続されて構成されている。充放電制御ユニット83をバッテリユニット84に電気的に接続することにより、商用電源コンセントCに電源ケーブル81を電気的に接続することで得られた電力をX線管給電用バッテリ85に充電する制御を充放電制御ユニット83は行う。
図4では、充放電制御ユニット83はシステム電源の機能をも有していたが、システム電源と充放電制御ユニットとを別々にしてもよい。
【0031】
また、
図4に示すように、ケーブル9は後述するパワーインバータ61および制御ユニット62に電気的に接続されている。X線台車6はパワーインバータ61と制御ユニット62と高電圧発生ユニット63とを備えている。パワーインバータ61は、DC/AC変換器(図示省略)で構成されており、ケーブル9に電気的に接続されている。このようにパワーインバータ61を構成することにより、パワーインバータ61は直流(DC)から交流(AC)に変換する。
【0032】
制御ユニット62は電源回路(図示省略)を備えており、ケーブル9に電気的に接続されている。また、制御ユニット62はパワーインバータ61に電気的に接続されている。X線管給電用バッテリ85からの電力供給時に、制御ユニット62はパワーインバータ61を制御する。
図4では、制御ユニット62は電源回路の機能をも有していたが、電源回路と制御ユニット62とを別々にしてもよい。
【0033】
また、パワーインバータ61は高電圧発生ユニット63に電気的に接続されている。高電圧発生ユニット63はX線管3(
図1および
図3も参照)に電気的に接続されている。X線管給電用バッテリ85からの電力供給時に、ケーブル9の電源ケーブルを介して、X線管給電用バッテリ85からの電力をパワーインバータ61は直流(DC)から交流(AC)に変換する。パワーインバータ61で交流(AC)に変換した電力を高電圧発生ユニット63に供給し、高電圧発生ユニット63はX線管用の高電圧(管電圧)を発生する。そして、管電圧をX線管3に付与することにより、X線管3はX線を発生する。
【0034】
バッテリユニット84は、複数のX線管給電用バッテリ85からなるので、X線管給電用バッテリ85からの電力は、高電圧発生ユニット63を介してX線管3に供給されるが、X線管3以外の構成(例えば、画像処理部や
図1のモータ6M)にも給電してもよい。つまり、X線管給電用バッテリ85は、少なくともX線管3に給電さえすれば、X線管3以外の構成にも給電してもよい。
【0035】
制御ユニット62および充放電制御ユニット83は、集積回路(IC: Integrated Circuit)などで構成されている。
図4の構成から明らかなように、従来ではX線台車に搭載されていたバッテリユニット(X線管給電用バッテリも含む)および充放電制御ユニット(システム電源も含む)を、モニタ台車6に搭載することに技術的特徴がある。
【0036】
次に、一連の処理について、
図5を参照して説明する。
図5は、実施例に係る外科用X線装置を用いる際の一連の処理の流れを示すフローチャートである。
図5のフローチャートでは、X線台車6(
図1,
図3および
図4を参照)およびモニタ台車8(
図2~
図4を参照)の移動先の目的の場所に商用電源コンセントC(
図3を参照)が設置されているものとして説明する。
【0037】
(ステップS1)台車の移動
X線台車6およびモニタ台車8をそれぞれ目的の場所(例えば手術室)にまで移動させる。このとき、各台車6,8を繋ぐケーブル9(
図1,
図3および
図4を参照)を各台車6,8から取り外した状態で、個々の台車6,8をそれぞれ移動させてもよいし、ケーブル9を各台車6,8に電気的に接続した状態で、個々の台車6,8をそれぞれ移動させて
もよい。
【0038】
台車6,8の移動時には、商用電源コンセントCに電源ケーブル81(
図3および
図4を参照)が電気的に接続されていない。商用電源コンセントCに電源ケーブル81が電気的に接続されているか否かを検出する接続検出回路(図示省略)を備える。例えば、電源ケーブル81に電流が流れているか否かを検出する電流検出アンプで接続検出回路を構成し、電源ケーブル81に流れる電流の有無によって接続の有無を検出する。なお、台車6,8の移動時には、商用電源コンセントCに電源ケーブル81が電気的に接続されていないのが明らかであるので、必ずしも接続検出回路を備える必要はない。
【0039】
モータ6M(
図1を参照)によりX線台車6の手動がアシスト(支援)され、モータによりモニタ台車8の手動がアシスト(支援)されている場合、各モータに給電される電力はX線管3(
図1,
図3および
図4を参照)に給電される電力と比べると極めて小さい。したがって、上述したようにX線管給電用バッテリ85(
図4を参照)から各モータにそれぞれ給電してもよい。もちろん、X線管給電用バッテリ85とは別の小型のバッテリを用意し、各々の小型のバッテリが、当該バッテリを搭載した台車の手動をアシスト(支援)するために、同一の台車に搭載されたモータにそれぞれ給電してもよい。
【0040】
(ステップS2)商用電源コンセントに接続?
操作者が商用電源コンセントCに電源ケーブル81のプラグを差し込むことで、商用電源コンセントCに電源ケーブル81を電気的に接続したのか否かを判断する。なお、上述した接続検出回路によって、接続の有無を自動的に認識してもよい。商用電源コンセントCに電源ケーブル81のプラグを差し込んだ場合には、ステップS3に進む。商用電源コンセントCに電源ケーブル81のプラグを差し込んでない場合には、商用電源コンセントCに電源ケーブル81のプラグを差し込むまで、ステップS2をループ待機する。
【0041】
(ステップS3)照射?
X線管3からX線を照射するか否かを判断する。具体的には、X線照射開始のコマンドがモニタ台車8の充放電制御ユニット83(
図4を参照)に入力されたか否かを、充放電制御ユニット83がチェックする。X線照射開始のコマンドが充放電制御ユニット83に入力された場合には、X線管3からX線を照射すると判断する。X線照射開始のコマンドが充放電制御ユニット83に入力されていない場合には、X線管3からX線を照射しないと判断する。X線管3からX線を照射すると判断した場合には、ステップS4に進む。X線管3からX線を照射しないと判断した場合には、ステップS5に進む。
【0042】
(ステップS4)バッテリ放電
ステップS3でX線管3からX線を照射すると判断した場合には、X線管給電用バッテリ85からの電力を、ケーブル9の電源ケーブルを介してX線台車6のX線管3に給電するために、X線管給電用バッテリ85の放電を行う。X線管給電用バッテリ85の放電によって、X線管給電用バッテリ85からの電力をX線管3に供給して、X線管3からX線を照射する。そして、被検体M(
図1および
図3を参照)を透過したX線をX線検出器4(
図1および
図3を参照)が検出することによる透視・撮影を行う。透視・撮影で得られたX線検出信号を、ケーブル9の通信ケーブルを介してモニタ台車8に送信して、モニタ台車8の画像処理部(図示省略)にてX線検出信号に対して画像処理を行ってX線画像を出力する。そして、当該X線画像をモニタ7(
図2および
図3を参照)に送信してモニタ7に表示する。
【0043】
(ステップS5)バッテリ充電
ステップS3でX線管3からX線を照射しないと判断した場合には、ステップS2で商用電源コンセントCに電源ケーブル81のプラグを差し込んだ状態であるので、商用電源
コンセントCに電源ケーブル81を電気的に接続することで得られた電力をX線管給電用バッテリ85に充電する。そして、ステップS3に戻って、X線管3からX線を照射するまでステップS3,S5を繰り返す。
【0044】
ステップS3,S5から明らかなように、X線管給電用バッテリ85への充電を完了する必要はない。X線照射開始のコマンドが充放電制御ユニット83に入力されたか否かを、予め設定された時間毎に充放電制御ユニット83がチェックし(ステップS3での照射の判断を行い)、X線管3からX線を照射する(X線照射開始のコマンドが入力される)までX線管給電用バッテリ85への充電を引き続き行い、X線照射開始のコマンドが入力された時点でX線管給電用バッテリ85への充電を中断すればよい。
【0045】
本実施例に係る外科用X線装置1によれば、X線管3を搭載し、走行可能に構成された走行台車(X線台車6)と、モニタ7を搭載し、走行可能に構成されたモニタ台車8とにユニットを2つに分ける。X線台車6にはX線管給電用バッテリを搭載せずに、モニタ台車8のみにX線管給電用バッテリ85を搭載する。X線台車6とモニタ台車8とを電気的に接続し、X線管給電用バッテリ85の電力をモニタ台車8からX線台車6に供給するケーブル9を備える。ケーブル9を備え、X線管給電用バッテリ85の電力をモニタ台車8からX線台車6に供給することにより、大容量の電力をX線台車6に継続して供給することができる。また、X線台車6にはX線管給電用バッテリが搭載されていないので、X線台車6の寸法・重量を小さくすることができ、X線台車6の操作性が低くなることはない。その結果、X線台車6の操作性を保ちつつ、大容量の電力を継続して供給することができる。
【0046】
また、本実施例では、電源コンセント(商用電源コンセントC)に接続可能な電源ケーブル81をモニタ台車8に電気的に接続し、当該商用電源コンセントCに当該電源ケーブル81を電気的に接続することで得られた電力をX線管給電用バッテリ85に充電する制御を行う制御手段(本実施例では充放電制御ユニット83)をモニタ台車8に搭載するのが好ましい。
【0047】
ここで、先行技術文献および本発明の特徴部分について述べる。
特許文献1:特開2014-200436号公報では、段落番号「0012」に「…モニタ台車11には、後に詳述するが、モニタ12やモニタ制御部13等の負荷回路をバッテリ駆動するためのバッテリが搭載されている。」と記載されている。一方、段落番号「0024」に「…Cアーム台車31側で比較的大きな電力が必要な動作をする場合に、モニタ台車内のバッテリを使って、モニタ台車内をバッテリ駆動にし、モニタ台車11に供給予定だった電力を、Cアーム台車31に分配することで、Cアーム台車31に使用可能な電力を増加させる。…」と記載されている。このように、特許文献1では、走行台車(特許文献1ではCアーム台車)に搭載されたバッテリ(特許文献1では曝射バッテリ)の電力を増やすために、モニタ台車にもバッテリを搭載して、当該バッテリの電力を走行台車(Cアーム台車)に供給することを特徴としている。
【0048】
これに対し、本発明では、走行台車にはX線管給電用バッテリを搭載せずに、走行台車の寸法・重量を小さくするという点で特許文献1:特開2014-200436号公報と相違する。これによって、特許文献1における各モードに応じて各スイッチング回路のON/OFFを切り替えるという制御を行わずに、本発明では、照射時にはバッテリの放電を行い、それ以外の時にはバッテリの充電を行うという簡易な制御のみで済む効果をも奏する。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0050】
(1)上述した実施例では、外科用X線テレビシステムのような侵襲的な検査に使用される外科用X線装置を例に採って説明したが、回診用X線装置などに例示されるように、X線管を搭載し、走行可能に構成された走行台車(X線台車)と、モニタを搭載し、走行可能に構成されたモニタ台車とを備えた移動型X線装置であれば、特に限定されない。
【0051】
(2)上述したように、X線管給電用バッテリは、少なくともX線管に給電さえすればよく、X線管以外の構成(例えば、画像処理部や
図1のモータ6M)にも給電してもよい。
【0052】
(3)上述した実施例では、走行台車(X線台車)にはX線管給電用バッテリを含めて他のバッテリを搭載しなかったが、
図5のフローチャートでも述べたように、X線管給電用バッテリとは別の小型のバッテリをX線台車に搭載してもよい。そして、当該小型のバッテリがX線管以外の構成に給電してもよい。
【0053】
(4)上述した実施例では、電源コンセント(商用電源コンセント)に接続可能な電源ケーブルをモニタ台車に電気的に接続し、当該商用電源コンセントに当該電源ケーブルを電気的に接続することで得られた電力をX線管給電用バッテリに充電する制御を行う制御手段(実施例では充放電制御ユニット83)をモニタ台車に搭載したが、必ずしも商用電源コンセントに接続可能な電源ケーブルを備える必要はない。「背景技術」の欄でも述べたような簡易型の発電機をモニタ台車の付近に用意して、発電機で得られた電力をX線管給電用バッテリに充電してもよい。また、電力を事前に蓄積しておいた、X線管給電用バッテリとは別のバッテリをモニタ台車に電気的に接続して、当該別のバッテリからの電力をX線管給電用バッテリに充電してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明は、外科用X線装置や回診用X線装置に適している。
【符号の説明】
【0055】
1 … 外科用X線装置
3 … X線管
6 … X線台車
7 … モニタ
8 … モニタ台車
81 … 電源ケーブル
83 … 充放電制御ユニット
85 … X線管給電用バッテリ
9 … ケーブル