(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ケーブル類保護案内装置
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20231226BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20231226BHJP
F16G 13/16 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04 075
F16G13/16
(21)【出願番号】P 2022164840
(22)【出願日】2022-10-13
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅之
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-119485(JP,A)
【文献】国際公開第2009/075069(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/16
H02G 11/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に沿うように直列に配置された状態で順次に連結される複数のリンクを有し、前記各リンクは、前記長さ方向と直交する幅方向に離れて対向する一対の側板を含んで構成され、複数対の前記側板同士の間を前記長さ方向に沿うように形成される収容空間内にケーブル類を収容した状態で、複数の前記リンクが直線状に並んだ直線状態と湾曲状に並んだ湾曲状態との間で変位可能に構成されたケーブル類保護案内装置であって、
前記側板は、
複数の前記リンクが前記直線状態と前記湾曲状態との間で変位したときに前記長さ方向で隣り合う他の前記リンクの前記側板である隣接側板に当接する当接部と、
前記隣接側板に対して前記当接部が当接する直前に前記隣接側板及び前記当接部の少なくとも一方に当接して弾性変形することで前記隣接側板と前記当接部との当接時の衝撃力を緩和可能とされた衝撃緩和部と、
を備えたことを特徴とするケーブル類保護案内装置。
【請求項2】
前記側板は、
成形材料が硬質樹脂である高剛性の硬質部と、成形材料が軟質樹脂である弾性変形可能な軟質部とが、二色成形により一体成形された構成であり、
前記当接部は、前記硬質部に設けられ、
前記衝撃緩和部は、前記軟質部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のケーブル類保護案内装置。
【請求項3】
前記側板は、
側板本体部と、前記長さ方向で隣り合う前記隣接側板の前記側板本体部に連結される側板連結部と、前記側板本体部と前記側板連結部との間に一体化されて介在する撓み変形可能な撓み部と、を含んで構成され、
前記側板本体部は、前記硬質部により構成される一方、
前記側板連結部及び前記撓み部は、前記軟質部により構成される
ことを特徴とする請求項2に記載のケーブル類保護案内装置。
【請求項4】
前記衝撃緩和部は、
前記リンクが前記長さ方向で隣り合う他の前記リンクに連結された場合に、前記側板の前記当接部及び前記隣接側板の少なくとも一方側から他方側に向けて張り出した状態となるように、前記側板の一部に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のケーブル類保護案内装置。
【請求項5】
前記衝撃緩和部は、
複数の前記リンクが前記湾曲状態から前記直線状態に変位したときに前記長さ方向で隣り合う他の前記リンクの前記隣接側板に対して前記当接部が当接する直前に当接する第1衝撃緩和部、及び、複数の前記リンクが前記直線状態から前記湾曲状態に変位したときに前記長さ方向で隣り合う他の前記リンクの前記隣接側板に対して前記当接部が当接する直前に当接する第2衝撃緩和部、のうちの少なくとも一方で構成される
ことを特徴とする請求項1~請求項4のうち何れか一項に記載のケーブル類保護案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工作機械等が有する移動体に給電や給液を行う可撓性のあるケーブルやホース等のケーブル類を移動体の移動に合わせて保護しながら案内するケーブル類保護案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のケーブル類保護案内装置が知られている。この装置は、直列に配置された状態で順次に連結される複数のリンクを有している。各リンクは、左右方向に離間配置されて対向する一対の側板と、左右の両側板同士の間に架設される結合アームと、を有している。そして、直列方向に連続する複数のリンクにおける左右の側板と結合アームとに囲まれて直列方向へ延びるように形成される収容空間にケーブル類が直列方向に沿うように収容されている。
【0003】
側板は、直列方向で先行する他のリンクの側板に連結される前方側板部と、直列方向で後続する他のリンクの側板に連結される後方側板部と、前方側板部と後方側板部との間に介在する屈曲自在な継手部と、を有する。前方側板部及び後方側板部は、それぞれ高剛性樹脂により形成されている。一方、継手部は、前方側板部と後方側板部との間に軟質性の耐疲労性樹脂により二色成形で一体化するように形成されている。
【0004】
このケーブル類保護案内装置では、移動体の移動に伴い複数のリンクが直線状に並んだ直線状態と湾曲状に並んだ湾曲状態との間で変位する。このとき、継手部が撓み変形することにより、直列方向で隣り合うリンク同士の位置関係が相対的に変動する。すなわち、直列方向で隣り合うリンク同士は、継手部の撓み変形に伴い、互いの側板同士が部分的に当接する当接状態と互いに離間する離間状態との間で変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のケーブル類保護案内装置の場合、各リンクの側板が高剛性樹脂により形成されている。そのため、継手部の撓み変形に伴い、直列方向で隣り合うリンクの側板同士が離間状態から接近して当接状態となったときに、大きな衝撃力が互いの側板に加わってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのケーブル類保護案内装置の各態様を記載する。
[態様1]
長さ方向に沿うように直列に配置された状態で順次に連結される複数のリンクを有し、前記各リンクは、前記長さ方向と直交する幅方向に離れて対向する一対の側板を含んで構成され、複数対の前記側板同士の間を前記長さ方向に沿うように形成される収容空間内にケーブル類を収容した状態で、複数の前記リンクが直線状に並んだ直線状態と湾曲状に並んだ湾曲状態との間で変位可能に構成されたケーブル類保護案内装置であって、
前記側板は、複数の前記リンクが前記直線状態と前記湾曲状態との間で変位したときに前記長さ方向で隣り合う他の前記リンクの前記側板である隣接側板に当接する当接部と、前記隣接側板に対して前記当接部が当接する直前に前記隣接側板及び前記当接部の少なくとも一方に当接して弾性変形することで前記隣接側板と前記当接部との当接時の衝撃力を緩和可能とされた衝撃緩和部と、を備えたケーブル類保護案内装置。
【0008】
この構成によれば、複数のリンクが直線状態と湾曲状態との間で変位して側板の当接部が長さ方向で隣り合う他のリンクの隣接側板に当接する直前に、衝撃緩和部が当接部及び隣接側板の少なくとも一方に当接する。そして、その当接に伴い衝撃緩和部が弾性変形することで、隣接側板と当接部とが当接する方向へのリンクの変位速度が減速される。そのため、その直後に隣接側板と当接部とが当接する際の衝突速度が減速されると共に当接時の衝撃力が緩和される。
【0009】
[態様2]
前記側板は、成形材料が硬質樹脂である高剛性の硬質部と、成形材料が軟質樹脂である弾性変形可能な軟質部とが、二色成形により一体成形された構成であり、前記当接部は、前記硬質部に設けられ、前記衝撃緩和部は、前記軟質部に設けられている[態様1]に記載のケーブル類保護案内装置。
【0010】
この構成によれば、硬質樹脂と軟質樹脂とを用いた二色成形によって、当接部を有する硬質部と衝撃緩和部を有する軟質部とが一体化された側板を容易に製造できる。
[態様3]
前記側板は、側板本体部と、前記長さ方向で隣り合う前記隣接側板の前記側板本体部に連結される側板連結部と、前記側板本体部と前記側板連結部との間に一体化されて介在する撓み変形可能な撓み部と、を含んで構成され、
前記側板本体部は、前記硬質部により構成される一方、前記側板連結部及び前記撓み部は、前記軟質部により構成される[態様2]に記載のケーブル類保護案内装置。
【0011】
この構成によれば、側板本体部を硬質部で構成したことで、外力による側板の変形を抑制できると共に、長さ方向で隣り合う他のリンクとの連結時には、側板連結部を弾性変形させることで、連結作業を容易にできる。また、側板連結部と撓み部を同一の軟質樹脂を用いて容易に一体成形できる。
【0012】
[態様4]
前記衝撃緩和部は、前記リンクが前記長さ方向で隣り合う他の前記リンクに連結された場合に、前記側板の前記当接部及び前記隣接側板の少なくとも一方側から他方側に向けて張り出した状態となるように、前記側板の一部に形成されている[態様1]~[態様3]の何れか一つに記載のケーブル類保護案内装置。
【0013】
この構成によれば、側板の一部を張り出した形状にすることで、衝撃緩和部を容易に形成できる。
[態様5]
前記衝撃緩和部は、複数の前記リンクが前記湾曲状態から前記直線状態に変位したときに前記長さ方向で隣り合う他の前記リンクの前記隣接側板に対して前記当接部が当接する直前に当接する第1衝撃緩和部、及び、複数の前記リンクが前記直線状態から前記湾曲状態に変位したときに前記長さ方向で隣り合う他の前記リンクの前記隣接側板に対して前記当接部が当接する直前に当接する第2衝撃緩和部、のうちの少なくとも一方で構成される[態様1]~[態様4]の何れか一つに記載のケーブル類保護案内装置。
【0014】
この構成によれば、必要に応じて第1衝撃緩和部及び第2衝撃緩和部を選択的に備えることで、複数のリンクが直線状態と湾曲状態との間で変位したときに適宜に衝撃力を緩和できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のリンクが直線状態と湾曲状態との間で変位して側板の当接部が長さ方向で隣り合う他のリンクの隣接側板に当接したときの衝撃力を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態のケーブル類保護案内装置の要部を概略的に示す斜視図である。
【
図2】ケーブル類保護案内装置の側板を外側から見た場合の斜視図である。
【
図3】ケーブル類保護案内装置の側板を内側から見た場合の斜視図である。
【
図4】側板を隣接側板に連結した状態を外側から見た場合の斜視図である。
【
図5】側板を隣接側板に連結した状態を内側から見た場合の斜視図である。
【
図7】
図1における7-7線矢視の側断面図である。
【
図8】
図6中の二点鎖線の円で囲ったA部分を拡大して示す側面図である。
【
図9】第1当接部と第1衝撃緩和部とが当接した状態を示す側面図である。
【
図10】
図7中の二点鎖線の円で囲ったA部分を拡大して示す側面図である。
【
図11】隣接側板と第2衝撃緩和部とが当接した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、ケーブル類保護案内装置の一実施形態について、図を参照して説明する。
<ケーブル類保護案内装置>
図1に示すように、ケーブル類保護案内装置11は、可撓性のあるケーブル類12を延ばされた状態にして収容可能な収容空間13を内側に形成する長尺の保護案内部14を有する。保護案内部14は、長さ方向Xに沿うように直列に配置された複数のリンク15が順次に連結されることで形成される。保護案内部14は、その長さ方向Xの中途を湾曲させることにより複数のリンク15が湾曲状に並んだ湾曲状態となる湾曲部16を形成する。なお、以下では、長さ方向Xにおいて
図1中の湾曲部16の上端から保護案内部14が左斜め上方に向けて延びる方向を第1方向X1とすると共に、その反対方向を第2方向X2とする。
【0018】
保護案内部14の長さ方向Xにおいて
図1では湾曲部16の上端から第1方向X1側に延びた部分の端部には、図示略の移動体が保護案内部14の長さ方向Xに沿って往復移動可能に取り付けられている。一方、保護案内部14の長さ方向Xにおいて
図1では湾曲部16の下端から第2方向X2側に延びた部分の端部は、例えばケーブル類保護案内装置11が設置される床面上等に設けられた図示略の固定部に固定されている。そして、ケーブル類保護案内装置11は、上述の移動体の移動に伴い湾曲部16が第1方向X1及び第2方向X2の何れかに変位することにより複数のリンク15が直線状に並ぶ直線状態と湾曲状に並ぶ湾曲状態との間で変位可能に構成されている。
【0019】
なお、保護案内部14の収容空間13に収容されるケーブル類12としては、例えば、移動体に給電や信号の伝送を行うケーブル、移動体に空気等の気体や油等の液体を供給するホースなどが挙げられる。すなわち、ケーブル類12は、保護案内部14の内側の収容空間13に保護案内部14の長さ方向Xに沿うように延ばされた状態で収容可能な可撓性を有する長尺の部材であればよい。
【0020】
<リンク>
リンク15は、保護案内部14の長さ方向Xと直交する幅方向Yに離れて対をなす側板17と、対向する両側板17同士の間に架設される帯板状の第1アーム部材18及び第2アーム部材19を有している。第1アーム部材18は、対向する両側板17の湾曲部16では外周側に位置する部位同士の間に架設される。一方、第2アーム部材19は、対向する両側板17の湾曲部16では内周側に位置する部位同士の間に架設される。そして、これら複数対の側板17と第1アーム部材18及び第2アーム部材19で囲まれる空間領域により、上述のケーブル類12を延ばした状態で収容可能な収容空間13が保護案内部14の長さ方向Xに沿って延びるように形成される。
【0021】
<側板>
図2及び
図3に示すように、側板17は、その成形材料が硬質樹脂である高剛性の硬質部20と、その成形材料が軟質樹脂である軟質部21とが、二色成形により一体成形された構成をしている。硬質樹脂としては、例えばガラス繊維強化樹脂、炭素繊維強化樹脂、ポリアミドなどが採用可能である。一方、軟質樹脂としては、硬質樹脂よりも軟質であって繰り返しの曲げに耐える靱性を有した、例えば非強化樹脂、エラストマー、高靱性ポリアミドなどが採用可能である。なお、
図2は側板17の内外両側面のうち保護案内部14の外側に露出する面である外側面を示している。その一方、
図3は側板17の内外両側面のうち保護案内部14の内側の収容空間13に臨む面である内側面を示している。
【0022】
また、側板17は、板状の側板本体部22と、側板本体部22よりも小さな形状の側板連結部23と、側板本体部22と側板連結部23との間に一体化されて介在する撓み変形可能な撓み部24と、を有している。側板本体部22は、成形材料が硬質樹脂である上述の硬質部20で構成されることにより、高剛性を有している。その一方、側板連結部23と撓み部24は、成形材料が軟質樹脂である上述の軟質部21で構成されることにより、弾性変形可能とされている。すなわち、側板17は、硬質樹脂と軟質樹脂を用いた二色成形により、側板本体部22と側板連結部23と撓み部24とが一体成形されている。
【0023】
<側板本体部>
図2及び
図3に示すように、側板本体部22は、側板17が湾曲部16に位置するときに湾曲部16の外周側に位置する第1側板部25と内周側に位置する第2側板部26とを有する。第1側板部25の湾曲部16では外周側に位置する端面には第1アーム部材18の端部を嵌合させる嵌合溝部27が形成されている。一方、
図3に示すように、第2側板部26の内側面における内周寄りの部位からは、第2アーム部材19を架設状態にして支持可能な片持ち梁部28がリンク15の幅方向Yでもある水平方向に突設されている。
【0024】
なお、
図2及び
図3に図示した側板17とリンク15の幅方向Yで対をなして対向する他方の側板17の第2側板部26の内側面にも、同様の片持ち梁部28が水平方向に突設されている。そして、対向する両側板17の嵌合溝部27に第1アーム部材18の端部が嵌合されると共に、両片持ち梁部28の間に第2アーム部材19が架設されることで、側板17と第1アーム部材18と第2アーム部材19とで収容空間13が囲み形成される。
【0025】
<第1側板部>
図2に示すように、第1側板部25の外側面のほぼ中央部には、長さ方向Xで隣り合う他のリンク15における側板17の側板連結部23を嵌め込み可能とする嵌合凹部30が形成されている。嵌合凹部30は、
図2では上側となる外周側の縁部分が嵌合溝部27に連通している。また、嵌合凹部30は、嵌合溝部27と連通する箇所よりも
図2では少し下方となる箇所に直壁状をなす係止部31を有している。また、嵌合凹部30は、係止部31よりも
図2では更に下方となる箇所に、口縁の一部が円弧状である挿入穴32と口縁が矩形状である係止孔33とを横並びで有している。
図3に示すように、係止孔33は、その内壁面における第1側板部25の厚さ方向の中途となる位置に係止段部34を有している。
【0026】
第1側板部25における嵌合凹部30が形成された部位よりも側板連結部23から遠い第2方向X2側の部位は、その板厚が幅方向Yの中途から
図2では奧側の側面である内側面までとなる第2方向側第1薄板部35とされている。そして、その第2方向側第1薄板部35の
図2では手前側の側面となる外側面には、口縁が略扇形状の第1係止凹部36が形成されている。また、第1側板部25における嵌合凹部30が形成された部位よりも側板連結部23に近い第1方向X1側の部位は、その板厚が幅方向Yの中途から
図3では奧側の側面である外側面までとなる第1方向側第1薄板部37とされている。そして、その第1方向側第1薄板部37の
図3では手前側の側面となる内側面の第1方向X1側の縁辺には、その縁辺に沿う形状の第1係止凸部38が形成されている。
【0027】
<第2側板部>
図2及び
図3に示すように、第2側板部26における長さ方向Xの中途よりも第2方向X2側で内側面に片持ち梁部28が形成された部位は、その板厚が幅方向Yの中途から
図2では奧側の側面である内側面までとなる第2方向側第2薄板部39とされている。そして、その第2方向側第2薄板部39の
図2では手前側の側面となる外側面の第2方向X2側の縁辺には、その縁辺に沿う形状の第2係止凸部40が形成されている。また、第2側板部26における長さ方向Xの中途よりも第1方向X1側の部位は、その板厚が幅方向Yの中途から
図3では奧側の側面である外側面までとなる第1方向側第2薄板部41とされている。そして、その第1方向側第2薄板部41の
図3では手前側の側面となる内側面には、口縁が略扇形状の第2係止凹部42が形成されている。
【0028】
<側板連結部>
図2及び
図3に示すように、側板連結部23は、幅方向Yから見た場合の外形状が側板本体部22における第1側板部25の外側面に形成された嵌合凹部30の口縁と同一形状に形成されている。そして、側板連結部23における
図3では手前側の側面となる内側面には、第1側板部25の嵌合凹部30に形成された直壁状の係止部31を係止可能とする係止溝43が形成されている。また、側板連結部23の内側面における係止溝43の形成箇所よりも
図3では下方となる箇所には、第1側板部25の嵌合凹部30内の挿入穴32に挿入される挿入軸部44と係止孔33に挿入されて係止段部34に係止可能な係止爪部45が形成されている。
【0029】
<撓み部>
図2及び
図3に示すように、撓み部24は、幅方向Yから見た場合の外形状がS字形状をなすように形成されている。撓み部24は、
図2及び
図3で上端部となる先端部が側板連結部23の基端部に一体化される一方、
図2及び
図3で下端部となる基端部が側板本体部22の第2側板部26に一体化されている。詳しくは、第2側板部26の
図2及び
図3での上端縁における第1方向側第2薄板部41と第2方向側第2薄板部39との境目となる箇所に撓み部24の基端部は一体化されている。
【0030】
<隣接側板>
図4及び
図5に示すように、長さ方向Xで隣り合うリンク15の側板17同士は一方の側板17である基準側板17Aの側板連結部23が隣り合う他のリンク15の側板17である隣接側板17Bの側板本体部22に係合されることで互いに連結される。すなわち、第2方向X2側に位置する基準側板17(17A)の側板連結部23が第1方向X1側に位置する隣接側板17(17B)の側板本体部22の嵌合凹部30に嵌合されることで、長さ方向Xで隣り合う複数のリンク15の側板17同士が連結される。そして、
図4及び
図5に二点鎖線で示すように、その状態において幅方向Yで対向する両側板17同士の間に第1アーム部材18及び第2アーム部材19が架設されることにより、内側にケーブル類12の収容空間13を有した長尺の保護案内部14が形成される。
【0031】
<当接部>
図4及び
図5に示す状態において、第2方向X2側に位置する基準側板17Aと第1方向X1側に位置する隣接側板17Bとは、互いの側板本体部22の側端面同士が当接していない。しかし、第2方向X2側の基準側板17Aは、
図4及び
図5に示す状態から撓み部24の撓み変形に伴い外周側の第1側板部25と内周側の第2側板部26とが長さ方向Xで互いに逆方向に移動する態様で変位したとき、第1方向X1側の隣接側板17Bに当接する。すなわち、第2方向X2側の基準側板17Aは、複数のリンク15が長さ方向Xで隣り合う他のリンク15と直線状に並ぶ直線状態と湾曲状に並ぶ湾曲状態との間で変位したときに、その側板本体部22が第1方向X1側の隣接側板17Bに対して当接する。
【0032】
具体的には、長さ方向Xに連結された複数のリンク15が湾曲状態から直線状態に変位するとき、第2方向X2側の基準側板17Aは、その側板本体部22における第1側板部25が第1方向X1側の隣接側板17Bに当接する。より詳しくは、第1側板部25の第1方向側第1薄板部37における第1方向X1側の側端面で構成される第1当接部51が長さ方向Xで隣り合う他のリンク15の隣接側板17Bにおける第1側板部25の第2方向X2側の側端面25aに当接する。
【0033】
その一方、長さ方向Xに連結された複数のリンク15が直線状態から湾曲状態に変位するときには、第2方向X2側の基準側板17Aは、その側板本体部22における第2側板部26が第1方向X1側の隣接側板17Bに当接する。より詳しくは、第2側板部26の第1方向側第2薄板部41における第1方向X1側の側端面で構成される第2当接部52が長さ方向Xで隣り合う他のリンク15の隣接側板17Bにおける第2側板部26の第2方向X2側の側端面26aに当接する。
【0034】
<衝撃緩和部>
図2~
図5に示すように、側板17における側板連結部23の第2方向X2側の側面には、幅方向Yから見た場合の外形状が略横T字状である凸部53が第1当接部51の位置する第2方向X2側に向けて突設されている。一方、側板17における第1側板部25の第2方向X2側の側面には、凸部53を幅方向Yの外側から嵌め込み可能な切欠凹部54が嵌合凹部30と連通するように切欠形成されている。
【0035】
なお、凸部53は、切欠凹部54に嵌め込まれた状態では、切欠凹部54が形成された第1側板部25の第2方向X2側の側端面25aよりも凸部53の第2方向X2側の面が第1当接部51側に向けて張り出した凸面形状をなすように形成されている。ここで、凸部53は、軟質部21で構成された側板連結部23の一部であるため、弾性変形が可能である。そのため、本実施形態では、この凸部53における弾性変形が可能な凸面形状の第2方向X2側の面により、隣り合う両側板17の第1側板部25同士が当接したときの衝撃力を緩和可能な第1衝撃緩和部55が構成されている。
【0036】
一方、第2側板部26には、撓み部24と同じ弾性変形可能な軟質部21で構成される筒部56が、その外周面の一部を第2方向側第2薄板部39の第1方向X1側の側端面である第2当接部52から露出させるようにして一体成形されている。なお、筒部56における第2当接部52から第1方向X1側に露出した外周面部分は、第1方向X1側の隣接側板17Bにおける第2側板部26の第2方向X2側の側端面26aに向けて張り出した凸面形状をなすように形成されている。そのため、本実施形態では、弾性変形可能な筒部56の外周面における第2当接部52よりも第1方向X1側に張り出した面部分により、隣り合う両側板17の第2側板部26同士が当接したときの衝撃力を緩和可能な第2衝撃緩和部57が構成されている。
【0037】
<作用>
次に、本実施形態のケーブル類保護案内装置11の作用について説明する。
図6及び
図7に示すように、ケーブル類保護案内装置11の保護案内部14を構成する複数のリンク15は、湾曲部16ではそれらが湾曲状に並んだ湾曲状態となる。そして、不図示の移動体が第1方向X1側に移動すると、その移動に伴い、湾曲部16も第1方向X1側に移動する。すると、それまで湾曲部16で湾曲状に並んでいた複数のリンク15は、
図6及び
図7では反時計回り方向の回動となる変位を伴いながら隣り合うリンク15同士が直線状に並ぶ直線状態となる。
【0038】
その一方、
図6及び
図7に示す状態から、不図示の移動体が第2方向X2側に移動すると、湾曲部16も第2方向X2側に移動する。すると、それまで湾曲部16よりも第1方向X1側で直線状に並んでいた複数のリンク15は、順次に湾曲部16に至り、
図6及び
図7では時計回り方向の回動となる変位を伴いながら隣り合うリンク15同士が湾曲状に並ぶ湾曲状態となる。
【0039】
そこで、以下では、複数のリンク15が直線状に並ぶ直線状態と湾曲状に並ぶ湾曲状態との間で変位するときに長さ方向Xで隣り合う両リンク15の側板17同士が相互に変位する態様について説明する。すなわち、両リンク15が長さ方向Xに沿って移動する際に第1方向X1側の側板17である隣接側板17Bと第2方向X2側の側板17である基準側板17Aとが当接状態と離間状態との間で変位する態様に着目して以下説明する。
【0040】
<当接状態と離間状態>
図6中の二点鎖線の円で囲ったA部分に示すように、第2方向X2側の基準側板17Aは、湾曲部16に位置するとき、外周側の第1当接部51が第1方向X1側の隣接側板17Bにおける第2方向X2側の側端面25aから離れた離間状態にある。その一方、
図7中の二点鎖線の円で囲ったB部分に示すように、そのとき第2方向X2側の側板17は、内周側の第2当接部52が第1方向X1側の側板17における第2方向X2側の側端面26aに当接した当接状態にある。
【0041】
そして、その状態から、不図示の移動体の第1方向X1側への移動に伴い基準側板17A及び隣接側板17Bを含む複数の側板17が直線状に並ぶ直線状態になると、第2方向X2側の側板17である基準側板17Aは、次のように変位する。すなわち、
図6中の二点鎖線の円で囲ったB部分に示すように、第2方向X2側の側板17は、外周側の第1当接部51が第1方向X1側の側板17における第2方向X2側の側端面25aに当接した当接状態になる。その一方、
図7中の二点鎖線の円で囲ったA部分に示すように、そのとき第2方向X2側の側板17は、内周側の第2当接部52が第1方向X1側の側板17における第2方向X2側の側端面26aから離れた離間状態となる。
【0042】
なお、以上の場合とは逆に、不図示の移動体が第2方向X2側に移動することで隣接側板17Bと共に直線状態にあった基準側板17Aが第2方向X2側に移動して湾曲部16に至ったとき、基準側板17Aは、次のように変位する。すなわち、第2方向X2側の基準側板17Aは、
図6中の二点鎖線の円で囲ったA部分に示すように、外周側の第1当接部51が隣接側板17Bにおける第2方向X2側の側端面25aから離れた離間状態になる。その一方、
図7中の二点鎖線の円で囲ったB部分に示すように、そのとき第2方向X2側の側板17は、内周側の第2当接部52が第1方向X1側の側板17における第2方向X2側の側端面26aに当接した当接状態になる。
【0043】
<衝撃力の緩和>
ここで、基準側板17Aの第1当接部51及び第2当接部52が隣接側板17Bにおける第1側板部25の第2方向X2側の側端面25a及び第2側板部26の第2方向X2側の側端面26aに当接するときには、大きな衝撃力が両側板17に加わってしまう。特に第1当接部51及び第2当接部52並びにそれらと当接する側端面25a,26aが位置する第1側板部25及び第2側板部26を含む側板本体部22は、高剛性の硬質部20で構成されているため、大きな衝突音も発生する。この点、本実施形態では、弾性変形可能な第1衝撃緩和部55及び第2衝撃緩和部57を備えたことにより、そのような衝撃力と衝突音の発生を抑制している。
【0044】
まず、
図8及び
図9に示すように、隣接側板17Bの側端面25aから第1当接部51が離間した状態にある基準側板17Aが
図8中の矢印方向への回動を伴って変位すると、
図9に示すように、第1当接部51が凸面形状の第1衝撃緩和部55に当接する。すなわち、第1当接部51が隣接側板17Bの側端面25aに当接する直前に、当該側端面25aよりも第1当接部51が位置する第2方向X2側に張り出した第1衝撃緩和部55に対して、第1当接部51が衝撃力を伴って当接する。すると、軟質部21で構成された第1衝撃緩和部55が収縮するように弾性変形する。そのため、この第1衝撃緩和部55の弾性変形により、基準側板17Aが反時計回り方向に回動を伴って変位する速度が減速される。したがって、その直後に
図6中の二点鎖線の円で囲ったB部分に示すように第1当接部51が隣接側板17Bの側端面25aに当接する際の衝突速度が減速されると共に、その当接時の衝撃力が緩和される。
【0045】
一方、
図10及び
図11に示すように、隣接側板17Bの側端面26aから第2当接部52が離間した状態にある基準側板17Aが
図10中の矢印方向への回動を伴って変位すると、次のようになる。この場合は、
図11に示すように、第2衝撃緩和部57が隣接側板17Bの側端面26aに当接する。すなわち、第2当接部52が隣接側板17Bの側端面26aに当接する直前に、当該側端面26aに対して第2当接部52よりも当該側端面26aが位置する第1方向X1側に張り出した第2衝撃緩和部57が衝撃力を伴って当接する。すると、軟質部21で構成された第2衝撃緩和部57が収縮するように弾性変形する。そのため、この第2衝撃緩和部57の弾性変形により、基準側板17Aが時計回り方向に回動を伴って変位する速度が減速される。したがって、その直後に
図7中の二点鎖線の円で囲ったB部分に示すように第2当接部52が隣接側板17Bの側端面26aに当接する際の衝突速度が減速されると共に、その当接時の衝撃力が緩和される。
【0046】
<効果>
(1)複数のリンク15が湾曲状態から直線状態に変位して側板17の第1当接部51が第1方向X1で隣り合う隣接側板17Bに当接する直前に、第1衝撃緩和部55が第1当接部51に当接する。その一方、複数のリンク15が直線状態から湾曲状態に変位して側板17の第2当接部52が第1方向X1で隣り合う隣接側板17Bに当接する直前に、第2衝撃緩和部57が隣接側板17Bに当接する。そして、その当接に伴い第1衝撃緩和部55又は第2衝撃緩和部57が弾性変形することで、隣接側板17Bと第1当接部51又は第2当接部52が当接する方向へのリンク15の変位速度が減速される。そのため、その直後に隣接側板17Bと第1当接部51又は第2当接部52が当接する際の衝突速度が減速されると共に、その当接時の衝撃力が緩和される。
【0047】
(2)硬質樹脂と軟質樹脂とを用いた二色成形により、第1当接部51及び第2当接部52を有する硬質部20と、第1衝撃緩和部55及び第2衝撃緩和部57を有する軟質部21とが一体化された側板17を容易に製造できる。
【0048】
(3)側板本体部22を硬質部20で構成したことで、外力による側板17の変形を抑制できると共に、第1方向X1で隣り合う他のリンク15との連結時には、軟質部21で構成した側板連結部23を弾性変形させることで、連結作業を容易にできる。また、側板連結部23と撓み部24を同一の軟質樹脂を用いて容易に一体成形できる。
【0049】
(4)側板17の一部を張り出した形状にすることで、第1衝撃緩和部55及び第2衝撃緩和部57を容易に形成できる。
(5)外周側の第1衝撃緩和部55及び内周側の第2衝撃緩和部57を両方備えたことで、複数のリンク15が直線状態から湾曲状態に変位したとき及び湾曲状態から直線状態に変位したときの各々における隣り合う側板17同士の当接時の衝撃力を緩和できる。
【0050】
<変更例>
なお、上記の実施形態は以下に示す変更例のように変更してもよい。また、実施形態に含まれる構成と下記変更例に含まれる構成とを任意に組み合わせてもよいし、下記変更例に含まれる構成同士を任意に組み合わせてもよい。
【0051】
・第1衝撃緩和部55及び第2衝撃緩和部57は、何れか一方だけが側板17に設けられる構成でもよい。例えば、第2衝撃緩和部57が設けられず、第1衝撃緩和部55だけが側板17の外周側の第1側板部25に設けられた構成の場合でも、複数のリンク15が湾曲状態から直線状態に変位する際の隣り合う側板17同士の当接時の衝撃力を緩和できる。その一方、第1衝撃緩和部55が設けられず、第2衝撃緩和部57だけが側板17の内周側の第2側板部26に設けられた構成の場合でも、複数のリンク15が直線状態から湾曲状態に変位する際の隣り合う側板17同士の当接時の衝撃力を緩和できる。
【0052】
・第1衝撃緩和部55は、側板連結部23から突出した凸部53の第2方向X2側の面に形成するのではなく、次のように形成してもよい。すなわち、凸部53を嵌め込む切欠凹部54が形成された他のリンク15の側板17である隣接側板17Bの側板本体部22における第1側板部25の第2方向X2側の側端面25aから第2方向X2側に張り出すように形成してもよい。
【0053】
・第1衝撃緩和部55は、側板連結部23から突出した凸部53の第2方向X2側の面にではなく、その面と対向する側板本体部22の第1当接部51から第1方向X1側に張り出すように形成してもよい。または、凸部53の第2方向X2側の面及び第1当接部51の両方に設けてもよい。
【0054】
・第2衝撃緩和部57は、第2側板部26に大部分を埋設させた筒部56における第2当接部52から第1方向X1側に露出した外周面の一部ではなく、側板本体部22の第2当接部52の一部を第1方向X1側に凸面形状をなすように張り出し形成してもよい。
【0055】
・第2衝撃緩和部57は、第2当接部52から第1方向X1側に凸面形状をなすように形成するのではなく、次のように形成してもよい。すなわち、第2当接部52と対向する他のリンク15の側板17である隣接側板17Bの側板本体部22における第2側板部26の第2方向X2側の側端面26aから第2方向X2側に凸面形状をなすように形成してもよい。または、第2当接部52及び第2側板部26の第2方向X2側の側端面26aの両方に設けてもよい。
【0056】
・側板17における側板本体部22と側板連結部23と撓み部24とは、一体成形ではなく、別体で各々成形された後に互いに連結される構成でもよい。
・側板連結部23は、側板本体部22と同様に硬質部20で構成されてもよい。なお、この場合は、側板連結部23から第2方向X2側に突出する凸部53及び第1衝撃緩和部55の両方、又は、第1衝撃緩和部55だけを、軟質樹脂からなる軟質部21で構成することが好ましい。
【0057】
・第1衝撃緩和部55及び第2衝撃緩和部57の少なくとも一方は、例えば第1アーム部材18及び第2アーム部材19の少なくとも一方など側板17以外の部材から隣り合う側板17同士の間に弾性変形可能な先端部が垂れるように延設される構成でもよい。
【符号の説明】
【0058】
11…ケーブル類保護案内装置
12…ケーブル類
13…収容空間
15…リンク
17…側板
17A…基準側板
17B…隣接側板
20…硬質部
21…軟質部
22…側板本体部
23…側板連結部
24…撓み部
51…第1当接部
52…第2当接部
55…第1衝撃緩和部
57…第2衝撃緩和部
X…長さ方向
X1…第1方向
X2…第2方向
Y…幅方向
【要約】
【課題】複数のリンクが直線状態と湾曲状態との間で変位して側板の当接部が長さ方向で隣り合う他のリンクの隣接側板に当接したときの衝撃力を緩和できるケーブル類保護案内装置を提供する。
【解決手段】ケーブル類保護案内装置11は、長さ方向Xに直列に連結される複数のリンク15を有し、リンクは、長さ方向と直交する幅方向Yに離れて対をなす側板17を含み、複数対の側板同士の間を長さ方向に沿うように形成される収容空間13内にケーブル類12収容した状態で、複数のリンクが直線状態と湾曲状態との間で変位可能であり、側板は、複数のリンクが直線状態と湾曲状態との間で変位したときに長さ方向で隣り合う他のリンクの側板である隣接側板に当接する当接部51と、隣接側板に当接部が当接する直前に隣接側板及び当接部の少なくとも一方に当接して弾性変形することで隣接側板と当接部との当接時の衝撃力を緩和可能な衝撃緩和部55と、を備えた。
【選択図】
図1