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特許7409485情報提供装置、情報提供方法およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】情報提供装置、情報提供方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/04 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
G08G5/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022513030
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2020014907
(87)【国際公開番号】W WO2021199327
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】内田 健介
(72)【発明者】
【氏名】村上 実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
(72)【発明者】
【氏名】竹下 大
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-032661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行が予め計画されておらず、かつ、所在位置を表す位置情報を発する機能を持つ航空機である緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して、前記緊急航空機の発進を検知する検知手段と、
前記緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して算出した前記緊急航空機の移動経路を利用して、前記緊急航空機の予め与えられている複数の飛行航路候補の中から、発進した前記緊急航空機の飛行航路を予測する予測手段と、
予め定められた飛行計画に従って発進する航空機である計画航空機を管理している運航システムに向けて、前記緊急航空機における予測された前記飛行航路の情報を通知する通知手段と
を備え
さらに、前記緊急航空機の予測された前記飛行航路の情報と、前記運航システムから受信した計画航空機の飛行計画の情報とを利用して、前記緊急航空機と異常接近する、あるいは、衝突する虞がある危険な計画航空機の有無を判定する判定手段を備え、
前記通知手段は、危険な計画航空機が有る場合に、前記緊急航空機の予測された前記飛行航路の情報を警報と共に、前記運航システムに通知し、
さらに、前記判定手段が参照する計画航空機の飛行計画を、前記運航システムが管理している計画航空機の飛行計画に同期させる同期手段を
さらに備える情報提供装置。
【請求項2】
前記緊急航空機の飛行を管理しているシステムから、前記緊急航空機から発せられる前記位置情報を取得する取得手段をさらに備える請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
コンピュータによって、
飛行が予め計画されておらず、かつ、所在位置を表す位置情報を発する機能を持つ航空機である緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して、前記緊急航空機の発進を検知し、
前記緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して算出した前記緊急航空機の移動経路を利用して、前記緊急航空機の予め与えられている複数の飛行航路候補の中から、発進した前記緊急航空機の飛行航路を予測し、
予め定められた飛行計画に従って発進する航空機である計画航空機を管理している運航システムに向けて、前記緊急航空機における予測された前記飛行航路の情報を通知し、
また、前記緊急航空機の予測された前記飛行航路の情報と、前記運航システムから受信した計画航空機の飛行計画の情報とを利用して、前記緊急航空機と異常接近する、あるいは、衝突する虞がある危険な計画航空機の有無をさらに判定し、
危険な計画航空機が有る場合に、前記緊急航空機の予測された前記飛行航路の情報を警報と共に、前記運航システムに通知し、
さらにまた、前記緊急航空機が関与する危険な計画航空機の有無の判定の際に参照する計画航空機の飛行計画を、前記運航システムが管理している計画航空機の飛行計画に同期させ
情報提供方法。
【請求項4】
飛行が予め計画されておらず、かつ、所在位置を表す位置情報を発する機能を持つ航空機である緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して、前記緊急航空機の発進を検知する処理と、
前記緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して算出した前記緊急航空機の移動経路を利用して、前記緊急航空機の予め与えられている複数の飛行航路候補の中から、発進した前記緊急航空機の飛行航路を予測する処理と、
予め定められた飛行計画に従って発進する航空機である計画航空機を管理している運航システムに向けて、前記緊急航空機における予測された前記飛行航路の情報を通知する処理と
また、前記緊急航空機の予測された前記飛行航路の情報と、前記運航システムから受信した計画航空機の飛行計画の情報とを利用して、前記緊急航空機と異常接近する、あるいは、衝突する虞がある危険な計画航空機の有無を判定する処理と、
危険な計画航空機が有る場合に、前記緊急航空機の予測された前記飛行航路の情報を警報と共に、前記運航システムに通知する処理と、
前記緊急航空機が関与する危険な計画航空機の有無の判定の際に参照する計画航空機の飛行計画を、前記運航システムが管理している計画航空機の飛行計画に同期させる処理と
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機とヘリコプタとの異常接近や衝突の事態を回避するために情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ドローンやUAV(unmanned aerial vehicle)やRPAS(remote piloted aircraft systems)やUAS(unmanned aircraft systems)等と称される無人航空機を活用したビジネスが急成長している。特に、物流事業においては、サービスの利用者の利便性の向上を図る対策として、また、物流事業者の要員の確保が難しくなっている問題の解決策の一つとして、無人航空機の活用が注目されている。
【0003】
しかしながら、無人航空機の活用により、同じ空域内における航空機の数が増加し、これに起因して航空機同士が異常接近(ニアミス)する危険性が高くなるという問題が懸念される。
【0004】
なお、特許文献1は飛行体に搭載される飛行制御装置に関し、当該引用文献1には、所定の範囲内に存在する他の飛行体を検知した場合に、その検知した他の飛行体の種別に応じた衝突回避手法を実行する技術が開示されている。特許文献2は、地上に設置される運航管理施設と、緊急ヘリとに搭載される支援装置を有する航空機運航管理支援システムに関する。当該特許文献2には、緊急ヘリが飛行している地域の情報を利用して、緊急ヘリに、運航を支援する情報を提供する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/093198号
【文献】特開2003-006799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、物流事業者により利用される無人航空機は、予め飛行航路と離着陸時刻が計画される。このため、それぞれの無人航空機における飛行航路と離着陸時刻を含む飛行計画に基づいて、無人航空機同士の異常接近や衝突の事態が発生しないように、予め、無人航空機の飛行航路や離着陸時刻の調整が可能である。
【0007】
これに対し、救急医療用ヘリコプタや消防防災ヘリコプタの緊急な発進は、緊急要請に応じた発進であり、緊急出動する救急医療用ヘリコプタや消防防災ヘリコプタの飛行航路および飛行時間(離着陸時刻)は予め計画されたものではない。このため、他の航空機との異常接近や衝突を回避すべく飛行計画が調整されていないことと、無人航空機の飛行数が増加していることとにより、救急医療用ヘリコプタや消防防災ヘリコプタと、他の航空機との異常接近や衝突の危険性が高まることが懸念される。なお、救急医療用ヘリコプタは、ドクターヘリや、レスキューヘリや、エア アンビュランスなどとも呼ばれる。ここでは、救急医療用ヘリコプタや消防防災ヘリコプタのように、飛行が予め計画されていない航空機を緊急航空機とも称する。また、予め定められた飛行計画に従って発進する航空機を計画航空機とも称する。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するために考え出されたものである。すなわち、本発明の主な目的は、飛行が予め計画されていない緊急航空機と、飛行計画に従って発進する計画航空機との異常接近や衝突の危険を回避するために有効な情報を発信する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明の情報提供装置は、その一つの様相として、
飛行が予め計画されておらず、かつ、所在位置を表す位置情報を発する機能を持つ航空機である緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して、前記緊急航空機の発進を検知する検知手段と、
前記緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して算出した前記緊急航空機の移動経路を利用して、前記緊急航空機の予め与えられている複数の飛行航路候補の中から、発進した前記緊急航空機の飛行航路を予測する予測手段と、
予め定められた飛行計画に従って発進する航空機である計画航空機を管理している運航システムに向けて、前記緊急航空機における予測された前記飛行航路の情報を通知する通知手段と
を備える。
【0010】
本発明の情報提供方法は、その一つの様相として、
飛行が予め計画されておらず、かつ、所在位置を表す位置情報を発する機能を持つ航空機である緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して、前記緊急航空機の発進を検知し、
前記緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して算出した前記緊急航空機の移動経路を利用して、前記緊急航空機の予め与えられている複数の飛行航路候補の中から、発進した前記緊急航空機の飛行航路を予測し、
予め定められた飛行計画に従って発進する航空機である計画航空機を管理している運航システムに向けて、前記緊急航空機における予測された前記飛行航路の情報を通知する。
【0011】
本発明のプログラム記憶媒体は、その一つの様相として、
飛行が予め計画されておらず、かつ、所在位置を表す位置情報を発する機能を持つ航空機である緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して、前記緊急航空機の発進を検知する処理と、
前記緊急航空機から発せられる前記位置情報を利用して算出した前記緊急航空機の移動経路を利用して、前記緊急航空機の予め与えられている複数の飛行航路候補の中から、発進した前記緊急航空機の飛行航路を予測する処理と、
予め定められた飛行計画に従って発進する航空機である計画航空機を管理している運航システムに向けて、前記緊急航空機における予測された前記飛行航路の情報を通知する処理と
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムを記憶する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飛行が予め計画されていない緊急航空機と、飛行計画に従って発進する計画航空機との異常接近や衝突の危険を回避するために有効な情報を発信できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る第1実施形態の情報提供装置の機能構成を表すブロック図である。
図2】第1実施形態の情報提供装置に係る通信接続の一態様例を表すブロック図である。
図3】第1実施形態の情報提供装置における情報提供に関わる動作例を説明する図である。
図4】本発明に係る第2実施形態の情報提供装置の機能構成を表すブロック図である。
図5】本発明に係る第3実施形態の情報提供装置の機能構成を表すブロック図である。
図6】第3実施形態の情報提供装置の一動作例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態の情報提供装置の機能構成を表すブロック図である。第1実施形態の情報提供装置1は、情報通信網(図示せず)を介して、図2に表されるように、運航システム2および管理システム3に接続されている。
【0016】
運航システム2は、予め定められた飛行計画に従って発進する航空機である計画航空機の運航を管理するシステムである。計画航空機の具体例を挙げると、物流事業者による荷物の運搬や、農薬散布や、空撮などに利用される無人航空機(ドローンやUAVやRPASやUASと称される航空機)がある。
【0017】
運航システム2には、当該運航システム2が運航を管理する計画航空機の飛行計画の情報が計画航空機の識別情報に関連付けられて保持されている。飛行計画には、飛行が予定されている離着陸地点を表す情報と、その日時と、飛行航路との情報が含まれている。なお、ここでの飛行航路の情報は、例えば、緯度と経度を利用して表され、地表からの高さの情報を含まない。
【0018】
図2の例では、情報提供装置1は、1つの運航システム2に接続されているが、情報提供装置1が接続する運航システム2は1つとは限らず、複数であってもよい。
【0019】
管理システム3は、飛行が予め計画されていない航空機である緊急航空機の飛行を管理するシステムである。緊急航空機の具体例を挙げると、救急医療用ヘリコプタや消防防災ヘリコプタがある。以下、救急医療用ヘリコプタと消防防災ヘリコプタをまとめて緊急ヘリとも称する。また、第1実施形態では、管理システム3が飛行を管理する緊急航空機は緊急ヘリとする。
【0020】
緊急ヘリは、稼動中に、所在位置を表す位置情報を、予め定められた時間間隔(例えば2分)毎に管理システム3に向けて発信している。緊急ヘリが発信している位置情報は、例えば、地球上の現在位置を測定するためのシステムであるGPS(Global Positioning System)から緊急ヘリが取得した情報(信号)を利用した計算によって得られる緊急ヘリの位置情報である。当該位置情報には、例えば、位置情報を算出した時刻の情報が時刻情報として関連付けられている。
【0021】
緊急ヘリが離着陸可能な地点は予め定められており、それら地点間を飛行する飛行航路も予め定められている。管理システム3は、そのような離着陸可能な地点と飛行航路の情報を保持している。なお、ここでの飛行航路の情報は、例えば、緯度と経度を利用して表され、地表からの高さの情報を含まない。
【0022】
なお、管理システム3が複数有る場合には、情報提供装置1は複数の管理システム3に接続されてもよい。
【0023】
第1実施形態の情報提供装置1は、ハードウェア構成として、制御装置10と、記憶装置20とを備える。記憶装置20は、各種のコンピュータプログラム(以下、プログラムとも称する)やデータを記憶する記憶媒体(プログラム記憶媒体)である。記憶媒体には複数種有り、ここでは何れの種類の記憶媒体が記憶装置20として採用されてもよいし、また、互いに異なる複数種の記憶媒体が用いられてもよい。複数種の記憶媒体が用いられる場合には、ここでは、それら複数種の記憶媒体をまとめて記憶装置20として称する。また、記憶装置20の構成、機能および動作に関しては限定されるものではないので、ここでは、それらの説明は省略する。
【0024】
第1実施形態では、記憶装置20には、運航システム2から提供された計画航空機の飛行計画の情報が格納されている。情報提供装置1が複数の運航システム2に接続されている場合には、飛行計画には、当該飛行計画で飛行する計画航空機の運航を管理している運航システム2を識別する情報が関連付けられている。
【0025】
また、記憶装置20には、管理システム3から提供された緊急ヘリの離着陸可能な地点と飛行航路の情報が格納されている。
【0026】
上述した記憶装置20に格納されている緊急ヘリの離着陸可能な地点と飛行航路の情報は、予め定められた更新タイミングで更新される。その更新タイミングとは、例えば、所定の期間を経過する度に、あるいは、情報が変更されたことを知らせる通知が管理システム3から発信される場合にはその通知を受けたときである。
【0027】
制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有して構成される。制御装置10は、例えば、記憶装置20に格納されているコンピュータプログラムをプロセッサが実行することにより、その実行したプログラムに応じた機能を持つことができる。第1実施形態では、制御装置10は、その機能部として、取得部11と、検知部12と、予測部13と、判定部14と、通知部15と、同期部16とを備えている。同期部16は、記憶装置20に格納されている計画航空機の飛行計画の情報を、運航システム2が持つ計画航空機の飛行計画の情報に合わせる機能を備えている。例えば、同期部16は、予め定められた同期タイミングでもって(例えば、予め設定された時間間隔毎に)、計画航空機の飛行計画の情報を運航システム2に要求する。また、同期部16は、その要求に応じた運航システム2から計画航空機の飛行計画の情報を受信した場合に、受信した計画航空機の飛行計画の情報を、記憶装置20に格納されている計画航空機の飛行計画の情報に上書き登録する。このようにして、同期部16は、記憶装置20における計画航空機の飛行計画の情報を、運航システム2における計画航空機の飛行計画の情報に同期させることができる。
【0028】
取得部11は、緊急ヘリから管理システム3が受信した位置情報を、管理システム3から時々刻々と取得する機能を備えている。その位置情報には時刻情報(緊急ヘリにおいてGPSの信号を利用して位置情報が算出された時刻の情報)が関連付けられている。また、取得部11は、取得した緊急ヘリの位置情報を記憶装置20に格納する機能を備えている。
【0029】
検知部12は、取得部11により取得された緊急ヘリの位置情報を利用して、発進した緊急ヘリを検知する機能を備えている。ここで、発進した緊急ヘリを検知する手法の一例を挙げる。例えば、検知部12は、時々刻々と取得される位置情報に基づいて、稼動中の緊急ヘリを検知し、さらに、カルマンフィルタなどを利用した物体の追跡手法により、緊急ヘリを追跡することにより、緊急ヘリの移動経路を算出し更新していく。緊急ヘリは停止中には位置情報を発信せず稼動中に位置情報を発信するから、上述のように算出された緊急ヘリの移動経路から外れている位置に稼動中の緊急ヘリが検知された場合に、検知部12は、新たに緊急ヘリが発進(出動)したと検知する。なお、追跡手法には複数の追跡手法があり、ここでは、検知部12が緊急ヘリを追跡する処理で用いる追跡手法は限定されない。
【0030】
予測部13は、新たに発進した緊急ヘリの飛行航路を予測する機能を備える。予測部13が実行する飛行航路の予測処理の具体例を以下に述べる。予測部13は、検知部12が緊急ヘリの発進を検知するために上述のように緊急ヘリの移動経路を算出する場合には、検知部12が算出した緊急ヘリの移動経路のうち、新たに発進した緊急ヘリの移動経路を検知部12から取得することを開始する。また、検知部12が緊急ヘリの移動経路を算出せずに別の手法により緊急ヘリの発進を検知する場合には、予測部13が、緊急ヘリの位置情報を利用して、新たに発進した緊急ヘリを追跡することにより、当該緊急ヘリの移動経路を算出することを開始する。
【0031】
さらに、予測部13は、新たに発進した緊急ヘリが離陸した地点を、位置情報を利用して特定し、当該特定した離陸地点を始点とする緊急ヘリの飛行航路の情報を記憶装置20から飛行航路候補として読み出す。
【0032】
予測部13は、新たに発進した緊急ヘリの移動経路を飛行航路候補に照合する。これにより、移動経路に合う航路を持つ飛行航路候補が複数有った場合には、予測部13は、その移動経路が更新された後に当該更新された移動経路を飛行航路候補に照合するという如く、照合処理を繰り返し行う。一方、移動経路に合う航路を持つ飛行航路候補が一つであった場合には、予測部13は、その飛行航路候補を、新たに発進した緊急ヘリの飛行航路であると予測する。以下、その予測された飛行航路を予測航路とも称する。
【0033】
判定部14は、緊急ヘリの予測された飛行航路(予測航路)の情報と、計画航空機の飛行計画の情報とを利用して、緊急ヘリと異常接近する、あるいは、衝突する虞がある危険な計画航空機の有無を判定する機能を備える。すなわち、判定部14は、次のような処理を実行する。例えば、判定部14は、予測部13により飛行航路が予測された場合には、その予測された飛行航路(予測航路)を、記憶装置20に格納されている計画航空機の飛行計画に照合する。この照合処理では、飛行計画のなかに、予測航路と交差する飛行航路、あるいは、予測航路からの距離が予め定められた警戒範囲内を通る飛行航路の情報があるか否かが判断される。また、その照合処理では、飛行計画における離陸時刻から着陸時刻までの時間帯(飛行予定時間帯)が、予測航路が予測された緊急ヘリの発進時刻を含むか否かが判断される。なお、予測航路と交差する飛行航路、あるいは、予測航路からの距離が予め定められた警戒範囲内を通る飛行航路を、干渉危険航路とも称する。
【0034】
判定部14は、照合処理により、記憶装置20に格納されている計画航空機の飛行計画のなかに、干渉危険航路の情報を含み、かつ、飛行予定時間帯が緊急ヘリの発進時刻を含む飛行計画があることを検知した場合に、危険な計画航空機が有ると判定する。ここでの危険な計画航空機とは、干渉危険航路で飛行し、かつ、緊急ヘリが飛行している同じ時刻に飛行していることから、緊急ヘリと異常接近する、あるいは、衝突する虞があると見なされる計画航空機である。
【0035】
通知部15は、判定部14が危険な計画航空機が有ると判定した場合に、その危険な計画航空機の識別情報を利用して、当該計画航空機の運航を管理している運航システム2に向けて、緊急ヘリに関わる危険が有ることを知らせる警報を通知する。この際、通知部15は、危険な計画航空機を知らせる情報、および、警報の基になった緊急ヘリの予測航路の情報をも運航システム2に通知する。すなわち、通知部15は、計画航空機のうち、新たに発進した緊急ヘリと同じ空域内を飛行する計画航空機(つまり、危険な計画航空機)を管理している運航システム2に向けて、その緊急ヘリの予測された飛行航路(予測航路)の情報を通知する機能を備える。
【0036】
計画航空機の飛行よりも緊急ヘリの飛行の方が優先されるべきものであるから、警報を受けた運航システム2では、予め定められた対処手順に従って、緊急ヘリとの衝突あるいは異常接近を回避すべく、危険があるとされた計画航空機の飛行状態が変更される。例えば、緊急ヘリとの衝突あるいは異常接近を回避すべく、運航システム2の飛行制御により、危険と判定された計画航空機(無人航空機)は、指定された着陸ポイントに着陸したり、高度を下げてホバリングしたりする。その計画航空機は、その後、緊急ヘリの予め与えられる平均的な移動速度等に基づいて定められた期間(回避期間)、待機した後に、元の航路に戻る。なお、そのような緊急ヘリとの危険を回避するための運航システム2の飛行制御は、情報提供装置1の通知部15からの警報を受けたコンピュータ装置が対処用のプログラムを実行することにより成されてもよいし、人の操作により行われてもよい。
【0037】
第1実施形態の情報提供装置1は上述のように構成されている。次に、情報提供装置1における情報提供に係る動作例を説明する。図3は、その情報提供装置1の情報提供の動作例を説明する図である。
【0038】
ここで、情報提供装置1の同期部16は、予め定められた時間間隔毎に、計画航空機の飛行計画の情報の同期処理(更新処理)を実行するとする。つまり、同期部16は、運航システム2に向けて計画航空機の飛行計画の情報を要求し、これにより、運航システム2から計画航空機の飛行計画の情報が送信されてくると、記憶装置20における計画航空機の飛行計画の情報を更新する。この同期部16の動作により、記憶装置20における計画航空機の飛行計画の情報は、運航システム2における計画航空機の飛行計画の情報に同期しているとする。また、情報提供装置1の記憶装置20には、管理システム3から提供された緊急ヘリの離着陸可能な地点と飛行航路の情報とが格納されている。この緊急ヘリの離着陸可能な地点と飛行航路の情報も、予め定められている更新タイミングで更新されているとする。
【0039】
前述したように、稼動中の緊急ヘリは所定の時間間隔毎に管理システム3に向けて位置情報を発信している。管理システム3は、緊急ヘリから位置情報を受信(取得)すると、受信した位置情報を情報提供装置1に発信する(ステップS101)。情報提供装置1の取得部11は、管理システム3が発信した位置情報を取得し、取得した位置情報を記憶装置20に格納する。検知部12は、取得部11により時々刻々と取得される緊急ヘリの位置情報を利用して、稼動中の緊急ヘリを検知し、また、稼動中の緊急ヘリを追跡することにより移動経路を算出する(ステップS102)。さらに、検知部12は、算出した移動経路から外れた位置における稼動中の緊急ヘリを、新たに発進した緊急ヘリであると検知する(ステップS103)。
【0040】
ここで、新たに発進した緊急ヘリが検知されなかった場合には、情報提供装置1では、取得部11による位置情報の取得動作と、検知部12による緊急ヘリの移動経路の算出動作とが繰り返される。
【0041】
一方、検知部12が、新たに発進した緊急ヘリを検知した場合には、その発進した緊急ヘリを処理対象とし、予測部13が当該処理対象の緊急ヘリの飛行航路を予測航路として予測する(ステップS104)。この処理では、予測部13は、記憶装置20に予め格納されている緊急ヘリの飛行航路候補のうち、処理対象の緊急ヘリの移動経路に合う飛行航路候補を予測航路として確定(算出)する。
【0042】
その後、その算出された予測航路の情報と、記憶装置20における計画航空機の飛行計画の情報とを利用して、判定部14が、処理対象の緊急ヘリと異常接近する、あるいは、衝突する虞がある危険な計画航空機が有るか否かを判定する。換言すれば、判定部14が、処理対象の緊急ヘリと計画航空機との異常接近あるいは衝突の事態が発生する危険性が高いか否かを判定する(ステップS105)。この判断処理において、判定部14が参照する計画航空機の飛行計画の情報は、同期部16の動作により、運航システム2における計画航空機の飛行計画の情報と同期しているために、情報が古いことに起因した判定ミスが防止される。このような判定処理により、危険性は高くないと判定部14が判定した場合には、情報提供装置1は、前述したステップS102以降の動作を繰り返す。
【0043】
一方、危険性が高いと判定部14が判断した場合には、通知部15は、処理対象の緊急ヘリと異常接近あるいは衝突の虞があるとされた危険な計画航空機の運航を管理している運航システム2に向けて、警報を通知する(ステップS106)。このとき、通知部15は、危険な計画航空機を知らせる情報、および、警報の基になった緊急ヘリの予測航路の情報を通知する。
【0044】
警報を受けた運航システム2は、緊急ヘリと異常接近あるいは衝突を回避すべく、予め定められた対処手順に従って、危険があるとされた計画航空機の飛行状態が変更される(ステップS107)。
【0045】
上述したように、第1実施形態の情報提供装置1は、緊急ヘリが発進したことを検知でき、また、その緊急ヘリの予測航路を算出する機能を備えている。さらに、情報提供装置1は、算出した予測航路を、計画航空機の飛行計画に照合することにより、緊急ヘリと異常接近する、あるいは、衝突する虞がある危険な計画航空機の有無を判定する機能を備えている。さらにまた、情報提供装置1は、危険な計画航空機が有ると判定した場合に、その危険な計画航空機を管理している運航システム2に警報を通知する機能を備えている。このような機能を備えていることにより、情報提供装置1は、緊急ヘリと異常接近する、あるいは、衝突する虞がある場合に、そのような危険を回避するために有効な情報、つまり、緊急ヘリの予測航路の情報を警報と共に運航システム2に提供できる。これにより、運航システム2では、緊急ヘリとの異常接近あるいは衝突を回避すべく対処することができる。
【0046】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。
【0047】
図4は、第2実施形態の情報提供装置の機能構成を表すブロック図である。なお、この第2実施形態の説明において、第1実施形態の情報提供装置1を構成する機能構成部分と同じ名称部分には同じ符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0048】
第2実施形態の情報提供装置1は、第1実施形態の情報提供装置1と同様に、運航システム2と管理システム3に接続されている。これら運航システム2と管理システム3は、第1実施形態で説明した運航システム2と管理システム3と同様なシステムである。ただ、第2実施形態では、情報提供装置1の記憶装置20には、第1実施形態と同様に、管理システム3から提供された緊急ヘリの離着陸可能な地点と飛行航路の情報が格納されているが、計画航空機の飛行計画は格納されていない。
【0049】
第2実施形態の情報提供装置1では、運航システム2から計画航空機の飛行計画が提供されない場合や、情報提供装置1の負荷の軽減を図る場合を考慮して、第1実施形態で説明した判定部14および同期部16が省略されている。また、通知部15は、予測部13が予測航路を算出した場合に、その予測航路の情報を、接続されている運航システム2に通知する機能を備えている。
【0050】
第2実施形態では、予測航路の情報を受けた運航システム2において、その予測航路の情報を利用して、管理している計画航空機のなかに、発進した緊急ヘリと異常接近する、あるいは、衝突する虞がある計画航空機が有るか否かが判断される。
【0051】
第2実施形態の情報提供装置1における上述した構成以外の構成は、第1実施形態の情報提供装置1と同様である。
【0052】
第2実施形態の情報提供装置1は、上述したように、緊急ヘリの予測航路の情報を運航システム2に提供できる。これにより、運航システム2において、その予測航路の情報を利用して、緊急ヘリと異常接近する、あるいは、衝突する虞がある計画航空機が有るか否かを判断できる。そして、運航システム2では、緊急ヘリと異常接近する、あるいは、衝突する虞がある危険な計画航空機が有ると判断した場合に、その危険を回避するために対処できる。すなわち、第2実施形態の情報提供装置1は、緊急ヘリと計画航空機との異常接近や衝突の危険を回避するために有効な情報を発信できるという効果を得ることができる。
【0053】
<第3実施形態>
以下に、本発明に係る第3実施形態を説明する。
【0054】
図5は、第3実施形態の情報提供装置の機能構成を表すブロック図である。第3実施形態の情報提供装置30は、検知部31と、予測部32と、通知部33とを備える。
【0055】
検知部31は、飛行が予め計画されておらず、かつ、所在位置を表す位置情報を発する機能を持つ航空機である緊急航空機から発せられる位置情報を利用して、緊急航空機の発進を検知する。
【0056】
予測部32は、位置情報を利用して算出した緊急航空機の移動経路を利用して、緊急航空機の予め与えられている複数の飛行航路候補の中から、発進した緊急航空機の飛行航路を予測する。
【0057】
通知部33は、予め定められた飛行計画に従って発進する航空機である計画航空機を管理している運航システムに向けて、緊急航空機における予測された飛行航路の情報を通知する。
【0058】
第3実施形態の情報提供装置30は、例えば、CPU等のプロセッサと、コンピュータプログラムを格納する記憶媒体とを備えている。その記憶媒体に格納されているコンピュータプログラムには、上述した検知部31と予測部32と通知部33のそれぞれの機能をプロセッサにより実現させるためのコンピュータプログラムが含まれている。情報提供装置30は、そのようなコンピュータプログラムをプロセッサが実行することにより、検知部31と予測部32と通知部33との機能を持つことができる。
【0059】
また、第3実施形態の情報提供装置30は、緊急航空機を管理する図3に表されるような管理システム3に接続し、管理システム3から、緊急航空機から発せられる位置情報を取得する。あるいは、情報提供装置30が緊急航空機から発せられる位置情報を直接に取得できる場合には、情報提供装置30は、緊急航空機から発せられる位置情報を直接に取得し、検知部31や予測部32での処理に利用してもよい。
【0060】
第3実施形態の情報提供装置30は、上述したような構成を備えている。次に、情報提供装置30の情報提供に関わる一動作例を図6を利用して説明する。図6は、情報提供装置30の情報提供に関わる一動作例を表すフローチャートである。
【0061】
例えば、情報提供装置30は、緊急航空機から発せられる位置情報を取得すると、検知部31が、取得した位置情報を利用して、緊急航空機の発進を検知する発進検知処理を実行する(ステップS301)。
【0062】
緊急航空機の発進を検知した場合には、予測部32が、緊急航空機から発せられる位置情報を利用して当該緊急航空機の飛行航路を予測する予測処理を実行する(ステップS302)。
【0063】
その後、計画航空機を管理している運航システムに向けて、通知部33が、緊急航空機における予測された飛行航路の情報を通知する(ステップS303)。
【0064】
第3実施形態の情報提供装置30は、上述したように、緊急航空機の発進を検知した場合に、当該緊急航空機の飛行航路を予測する機能を備えている。さらに、情報提供装置30は、その予測した飛行航路の情報を、計画航空機を管理している運航システムに向けて通知する機能を備えている。その通知する情報は、緊急航空機と計画航空機との異常接近や衝突の危険を回避するために有効な情報である。よって、情報提供装置30は、緊急航空機と計画航空機との異常接近や衝突の危険を回避するために有効な情報を、計画航空機の運航システムに提供できるという効果を奏することができる。
【0065】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1,30 情報提供装置
11 取得部
12,31 検知部
13,32 予測部
14 判定部
15,33 通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6