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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】回路基板
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/18 20060101AFI20231226BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01P5/18 J
H05K1/02 P
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022536238
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2021024760
(87)【国際公開番号】W WO2022014334
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020122128
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 恒亮
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-04108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0280778(US,A1)
【文献】米国特許第08884644(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/00- 5/22
H05K 1/02
H03H 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層された構造を有している基板本体と、
前記基板本体に設けられており、かつ、第1区間を有している第1信号導体層と、
前記基板本体に設けられており、かつ、第3区間を有している第2信号導体層と、
を備えており、
前記第1信号導体層の線幅方向を信号導体層左右方向と定義し、
前記第1信号導体層が延びる方向を信号導体層前後方向と定義し、
前記第1区間は、前記複数の絶縁体層の積層方向に見て、前記第3区間の前記信号導体層左右方向における左に配置され、かつ、前記第3区間と前記信号導体層前後方向に並走しており、
前記第1区間は、複数の第1細線部と、前記複数の第1細線部の線幅より太い線幅を有する複数の第1太線部とを有しており、
前記複数の第1細線部と前記複数の第1太線部とは、前記信号導体層前後方向に交互に並んでおり、
前記複数の第1細線部の前記信号導体層左右方向の中心線は、前記複数の第1太線部の前記信号導体層左右方向の中心線より前記信号導体層左右方向における左に位置している、
回路基板。
【請求項2】
前記第1信号導体層は、前記第1信号導体層における前記第1区間を除く区間である第2区間を有しており、
前記第2信号導体層は、前記第2信号導体層における前記第3区間を除く第4区間を有しており、
前記第1区間と前記第3区間との距離は、前記第2区間と前記第4区間との距離より短い、
請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記第1区間における前記基板本体の前記信号導体層左右方向の幅は、前記第2区間における前記基板本体の前記信号導体層左右方向の幅より細い、
請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記第1細線部の前記信号導体層前後方向の長さ及び前記第1太線部の前記信号導体層前後方向の長さの合計は、前記第1信号導体層を伝送される高周波信号の波長の半分以下である、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の回路基板。
【請求項5】
前記第1細線部の前記信号導体層前後方向の長さは、前記第1太線部の前記信号導体層前後方向の長さ以下である、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の回路基板。
【請求項6】
前記積層方向に見て、前記第1区間及び前記第3区間は、グランド導体層と重なっておらず、
前記第1太線部の線幅は、前記第1太線部の右端と前記第1細線部の右端との前記信号導体層左右方向における距離の2倍以下である、
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の回路基板。
【請求項7】
前記第3区間は、複数の第2細線部と、前記複数の第2細線部の線幅より太い線幅を有する複数の第2太線部とを有しており、
前記複数の第2細線部と前記複数の第2太線部とは、前記信号導体層前後方向に交互に並んでおり、
前記複数の第2細線部の前記信号導体層左右方向の中心線は、前記複数の第2太線部の前記信号導体層左右方向の中心線より前記信号導体層左右方向における右に位置している、
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の回路基板。
【請求項8】
前記第1細線部の前記信号導体層前後方向の長さ及び前記第1太線部の前記信号導体層前後方向の長さの合計は、前記第2細線部の前記信号導体層前後方向の長さ及び前記第2太線部の前記信号導体層前後方向の長さの合計と異なる、
請求項7に記載の回路基板。
【請求項9】
前記第3区間は、複数の第2細線部と、前記複数の第2細線部の線幅より太い線幅を有する複数の第2太線部とを有しており、
前記複数の第2細線部と前記複数の第2太線部とは、前記信号導体層前後方向に交互に並んでおり、
前記回路基板は、
前記基板本体に設けられており、かつ、第5区間を有している第3信号導体層を、
更に備えており、
前記第5区間は、前記積層方向に見て、前記第3区間の前記信号導体層左右方向における右に配置され、かつ、前記第3区間と前記信号導体層前後方向に並走しており、
前記第5区間は、複数の第3細線部と、前記複数の第3細線部の線幅より太い線幅を有する複数の第3太線部とを有しており、
前記複数の第3細線部と前記複数の第3太線部とは、前記信号導体層前後方向に交互に並んでおり、
前記複数の第3細線部の前記信号導体層左右方向の中心線は、前記複数の第3太線部の前記信号導体層左右方向の中心線より前記信号導体層左右方向における右に位置している、
請求項1に記載の回路基板。
【請求項10】
前記第3区間は、複数の第2細線部と、前記複数の第2細線部の線幅より太い線幅を有する複数の第2太線部とを有しており、
前記複数の第2細線部と前記複数の第2太線部とは、前記信号導体層前後方向に交互に並んでおり、
前記複数の第2細線部の前記信号導体層左右方向の中心線は、前記複数の第2太線部の前記信号導体層左右方向の中心線より前記信号導体層左右方向における右に位置しており、
前記回路基板は、
前記基板本体に設けられており、かつ、第5区間を有している第3信号導体層と、
前記基板本体に設けられており、かつ、第7区間を有している第4信号導体層と、
を更に備えており、
前記第5区間は、前記積層方向に見て、前記第3区間の前記信号導体層左右方向における右に配置され、かつ、前記第3区間と前記信号導体層前後方向に並走しており、
前記第5区間は、複数の第3細線部と、前記複数の第3細線部の線幅より太い線幅を有する複数の第3太線部とを有しており、
前記複数の第3細線部と前記複数の第3太線部とは、前記信号導体層前後方向に交互に並んでおり、
前記複数の第3細線部の前記信号導体層左右方向の中心線は、前記複数の第3太線部の前記信号導体層左右方向の中心線より前記信号導体層左右方向における左に配置されており、
前記第7区間は、前記積層方向に見て、前記第1区間の前記信号導体層左右方向における左に配置され、かつ、前記第1区間と前記信号導体層前後方向に並走しており、
前記第7区間は、複数の第4細線部と、前記複数の第4細線部の線幅より太い線幅を有する複数の第4太線部とを有しており、
前記複数の第4細線部と前記複数の第4太線部とは、前記信号導体層前後方向に交互に並んでおり、
前記複数の第4細線部の前記信号導体層左右方向の中心線は、前記複数の第4太線部の前記信号導体層左右方向の中心線より前記信号導体層左右方向における右に位置している、
請求項1に記載の回路基板。
【請求項11】
前記第1細線部及び前記第1太線部の前記信号導体層前後方向の長さの合計は、前記第4細線部及び前記第4太線部の前記信号導体層前後方向の長さの合計とは等しく、
前記第2細線部及び前記第2太線部の前記信号導体層前後方向の長さの合計は、前記第3細線部及び前記第3太線部の前記信号導体層前後方向の長さの合計とは等しい、
請求項10に記載の回路基板。
【請求項12】
前記第1信号導体層及び前記第4信号導体層には、第1差動信号が伝送され、
前記第2信号導体層及び前記第3信号導体層には、第2差動信号が伝送される、
請求項10及び請求項11のいずれかに記載の回路基板。
【請求項13】
少なくとも1つの絶縁体層を有している基板本体と、
前記基板本体に設けられている第1信号導体層と、
前記基板本体に設けられている第2信号導体層と、
を備えており、
前記第1信号導体層の線幅方向を信号導体層左右方向と定義し、
前記第1信号導体層が延びる方向を信号導体層前後方向と定義し、
前記第1信号導体層の少なくとも一部であり、前記信号導体層左右方向において異なる位置で前記第2信号導体層と並走している領域において、複数の第1細線部と、前記複数の第1細線部の線幅より太い線幅を有する複数の第1太線部とが、前記信号導体層前後方向に交互に並んでおり、
前記第1信号導体層の少なくとも一部であり、前記信号導体層左右方向において異なる位置で前記第2信号導体層と並走している領域において、前記複数の第1細線部の前記信号導体層左右方向の中心線の少なくとも一部は、前記複数の第1太線部の前記信号導体層左右方向の中心線より前記第2信号導体層との距離が長い、
回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1信号導体層及び第2信号導体層を備える回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回路基板に関する発明としては、特許文献1に記載の伝送線路部材が知られている。この伝送線路部材は、誘電体素体、第1信号導体、第2信号導体、第1信号導体用グランド部、第2信号導体用グランド部及び中間部を備えている。誘電体素体は、複数の誘電体層が上下方向に積層された構造を有している。第1信号導体及び第2信号導体は、左右方向に並んでいる。第1信号導体用グランド部は、第1信号導体の上に配置されている。第2信号導体用グランド導体は、第2信号導体の下に配置されている。中間部は、第1信号導体用グランド部と第2信号導体用グランド部とを接続している。これにより、中間部は、第1信号導体と第2信号導体との間に配置されている。その結果、第1信号導体と第2信号導体との結合が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/186720号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、複数の信号導体を備える伝送線路部材では、複数の信号導体結合の抑制が望まれている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、第1信号導体層と第2信号導体層との結合を抑制できる新たな回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る回路基板は、
複数の絶縁体層が積層された構造を有している基板本体と、
前記基板本体に設けられており、かつ、第1区間を有している第1信号導体層と、
前記基板本体に設けられており、かつ、第3区間を有している第2信号導体層と、
を備えており、
前記第1信号導体層の線幅方向を信号導体層左右方向と定義し、
前記第1信号導体層が延びる方向を信号導体層前後方向と定義し、
前記第1区間は、前記複数の絶縁体層の積層方向に見て、前記第3区間の前記信号導体層左右方向における左に配置され、かつ、前記第3区間と前記信号導体層前後方向に並走しており、
前記第1区間は、複数の第1細線部と、前記複数の第1細線部の線幅より太い線幅を有する複数の第1太線部とを有しており、
前記複数の第1細線部と前記複数の第1太線部とは、前記信号導体層前後方向に交互に並んでおり、
前記複数の第1細線部の前記信号導体層左右方向の中心線は、前記複数の第1太線部の前記信号導体層左右方向の中心線より前記信号導体層左右方向における左に位置している。
【0007】
以下に、本明細書における用語の定義について説明する。以下では、第1部材ないし第3部材とは、回路基板が備える部材等を意味する。本明細書において、特に断りのない場合には、第1部材の各部について以下のように定義する。第1部材の前部とは、第1部材の前半分を意味する。第1部材の後部とは、第1部材の後半分を意味する。第1部材の左部とは、第1部材の左半分を意味する。第1部材の右部とは、第1部材の右半分を意味する。第1部材の上部とは、第1部材の上半分を意味する。第1部材の下部とは、第1部材の下半分を意味する。第1部材の前端とは、第1部材の前方向の端を意味する。第1部材の後端とは、第1部材の後方向の端を意味する。第1部材の左端とは、第1部材の左方向の端を意味する。第1部材の右端とは、第1部材の右方向の端を意味する。第1部材の上端とは、第1部材の上方向の端を意味する。第1部材の下端とは、第1部材の下方向の端を意味する。第1部材の前端部とは、第1部材の前端及びその近傍を意味する。第1部材の後端部とは、第1部材の後端及びその近傍を意味する。第1部材の左端部とは、第1部材の左端及びその近傍を意味する。第1部材の右端部とは、第1部材の右端及びその近傍を意味する。第1部材の上端部とは、第1部材の上端及びその近傍を意味する。第1部材の下端部とは、第1部材の下端及びその近傍を意味する。
【0008】
本明細書における任意の2つの部材を第1部材及び第2部材と定義した場合、任意の2つの部材の関係は以下のような意味になる。本明細書において、第1部材が第2部材に支持されているとは、第1部材が第2部材に対して移動不可能に第2部材に取り付けられている(すなわち、固定されている)場合、及び、第1部材が第2部材に対して移動可能に第2部材に取り付けられている場合を含む。また、第1部材が第2部材に支持されているとは、第1部材が第2部材に直接に取り付けられている場合、及び、第1部材が第3部材を介して第2部材に取り付けられている場合の両方を含む。
【0009】
本明細書において、第1部材が第2部材に固定されているとは、第1部材が第2部材に対して移動不可能に第2部材に取り付けられている場合を含み、第1部材が第2部材に対して移動可能に第2部材に取り付けられている場合を含まない。また、第1部材が第2部材に固定されているとは、第1部材が第2部材に直接に取り付けられている場合、及び、第1部材が第3部材を介して第2部材に取り付けられている場合の両方を含む。
【0010】
本明細書において、「第1部材と第2部材とが電気的に接続される」とは、第1部材と第2部材との間で直流電流が流れることができることを意味する。従って、第1部材と第2部材とが接触していてもよいし、第1部材と第2部材とが接触していなくてもよい。第1部材と第2部材とが接触していない場合には、第1部材と第2部材との間に導電性を有する第3部材が配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る回路基板によれば、第1信号導体層と第2信号導体層との結合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、回路基板10を備える電子機器1の外観斜視図である。
図2図2は、回路基板10の分解斜視図である。
図3図3は、回路基板10の第1信号導体層22、第2信号導体層24及び絶縁体層16bの上面図である。
図4図4は、回路基板10aの第1信号導体層22、第2信号導体層24及び絶縁体層16bの上面図である。
図5図5は、回路基板10bの第1信号導体層22、第2信号導体層24及び絶縁体層16bの上面図である。
図6図6は、回路基板10cの第1信号導体層22、第2信号導体層24、第3信号導体層32及び絶縁体層16bの上面図である。
図7図7は、回路基板10dの第1信号導体層22、第2信号導体層24、第3信号導体層32及び第4信号導体層34及び絶縁体層16bの上面図である。
図8図8は、回路基板10eの第1信号導体層22、第2信号導体層24及び絶縁体層16bの上面図である。
図9図9は、その他の実施形態に係る回路基板の第1信号導体層22の拡大図である。
図10図10は、その他の実施形態に係る回路基板の第1信号導体層22の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
以下に、本発明の実施形態に係る回路基板10について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、回路基板10を備える電子機器1の外観斜視図である。図1では、複数の電子部品4の内の代表的な電子部品4のみに参照符号を付した。図2は、回路基板10の分解斜視図である。図3は、回路基板10の第1信号導体層22、第2信号導体層24及び絶縁体層16bの上面図である。
【0015】
本明細書において、方向を以下のように定義する。レジスト層17a、絶縁体層16a,16b及びレジスト層17bの積層方向を上下方向と定義する。基板本体12の長手方向を前後方向と定義する。基板本体12の短手方向を左右方向と定義する。上下方向、前後方向及び左右方向は互いに直交している。なお、本明細書における方向の定義は、一例である。従って、基板本体12の実使用時における方向と本明細書における方向とが一致している必要はない。また、各図面において上下方向が反転してもよい。同様に、各図面において左右方向が反転してもよい。各図面において前後方向が反転してもよい。
【0016】
電子機器1は、例えば、スマートフォン等の携帯型通信端末である。電子機器1は、図1に示すように、マザーボード2、複数の電子部品4及び回路基板10を備えている。マザーボード2は、板形状を有している。マザーボード2の表面及び内部には、電気回路が設けられている。マザーボード2の上主面には、電子部品4及び回路基板10を実装するための複数の外部電極(図示せず)が設けられている。
【0017】
複数の電子部品4は、例えば、チップ型電子部品や半導体集積回路等である。複数の電子部品4は、マザーボード2の上主面に実装されている。
【0018】
回路基板10は、電子機器1において、2つの電気回路を電気的に接続する高周波信号伝送線路である。本実施形態では、回路基板10は、マザーボード2の2か所を電気的に接続している。回路基板10の下主面の前端部及び後端部には、複数の外部電極(図示せず)が設けられている。回路基板10の下主面の前端部及び後端部に設けられている複数の外部電極は、マザーボード2の上主面に設けられている複数の外部電極に半田により固定されている。回路基板10は、図2に示すように、基板本体12、第1信号導体層22、第2信号導体層24、第1グランド導体層26及び第2グランド導体層28を備えている。
【0019】
基板本体12は、板形状を有している。基板本体12は、前後方向に延びている。ただし、図1及び図2に示すように、基板本体12の前後方向の中間部における基板本体12の左右方向の幅は、基板本体12の前後方向の中間部以外の部分における基板本体12の左右方向の幅より細い。これにより、図1に示すように、回路基板10は、電子部品4と接触することを回避している。
【0020】
基板本体12は、レジスト層17a、絶縁体層16a,16b及びレジスト層17bが上下方向に積層された構造を有している。本実施形態では、レジスト層17a、絶縁体層16a,16b及びレジスト層17bは、上から下へとこの順に積層されている。絶縁体層16a,16bは、絶縁性材料により作製されている。絶縁体層16a,16bの絶縁性材料は、例えば、液晶ポリマー(LCP)やポリイミド等の絶縁性樹脂である。レジスト層17a,17bについては後述する。以上のような基板本体12は、可撓性を有している。従って、基板本体12は、上方向又は下方向に曲げられることにより、コネクタを用いて、2つの基板を接続することが可能である。
【0021】
第1信号導体層22は、基板本体12に設けられている。第1信号導体層22は、絶縁体層16bの上主面に設けられている。第1信号導体層22は、前後方向に延びている。以下では、第1信号導体層22の線幅方向を信号導体層左右方向と定義する。また、第1信号導体層22が延びる方向を信号導体層前後方向と定義する。以下に、2種類の方向を使い分ける理由について説明する。
【0022】
第1信号導体層22は、上下方向に見て、4か所において直角に曲がっている。そのため、第1信号導体層22は、2か所において左右方向に伸びている区間22d,22eを有している。区間22d,22eでは、第1信号導体層22の線幅方向は、前後方向であるので、左右方向と一致しなくなる。同様に、区間22d,22eでは、第1信号導体層22が延びる方向は、左右方向のであるので、前後方向と一致しなくなる。そこで、本明細書では、左右方向と信号導体層左右方向とを使い分けている。また、前後方向と信号導体層前後方向とを使い分けている。
【0023】
第1信号導体層22は、第2区間22a、第1区間22b及び第2区間22cを有している。第1区間22bは、第1信号導体層22の中間部である。第1信号導体層22の中間部は、第1信号導体層22の左端及び右端を含まない部分である。第2区間22a,22cは、第1区間22bを除く区間である。第2区間22a、第1区間22b及び第2区間22cは、信号導体層前後方向における前から後へとこの順に並ぶように接続されている。
【0024】
第2信号導体層24は、基板本体12に設けられている。第2信号導体層24は、絶縁体層16bの上主面に設けられている。第2信号導体層24は、前後方向に延びる直線形状を有している。第2信号導体層24は、第1信号導体層22の右に配置されている。本明細書において、第2信号導体層24が第1信号導体層22の右に配置されているとは、以下のとおりである。第2信号導体層24の少なくとも一部分は、第1信号導体層22が右方向に平行移動するときに通過する領域内に配置されている。よって、第2信号導体層24は、第1信号導体層22が右方向に平行移動するときに通過する領域内に収まっていてもよいし、第1信号導体層22が右方向に平行移動するときに通過する領域から突出していてもよい。本実施形態では、図示を省略するが、第1信号導体層22の前端と第2信号導体層24の前端とは、左右方向に見て、重なっている。同様に、第1信号導体層22の後端と第2信号導体層24の後端とは、左右方向に見て、重なっている。従って、第2信号導体層24は、第1信号導体層22が右方向に平行移動するときに通過する領域から突出していない。なお、このような2つの部材の位置関係は、第1信号導体層22と第2信号導体層24との位置関係以外にも適用可能である。
【0025】
第2信号導体層24は、第4区間24a、第3区間24b及び第4区間24cを有している。第3区間24bは、第2信号導体層24の中間部である。第4区間24a,24cは、第3区間24bを除く区間である。第4区間24a、第3区間24b及び第4区間24cは、信号導体層前後方向における前から後へとこの順に並ぶように接続されている。
【0026】
ここで、第1区間22b及び第3区間24bについてより詳細に説明する。第1区間22bは、上下方向(積層方向)に見て、第3区間24bの信号導体層左右方向における左に配置されている。第1区間22bは、第3区間24bと信号導体層前後方向に並走している。本実施形態では、第1区間22b及び第3区間24bは、前後方向に延びる直線形状を有している。更に、第1区間22b及び第3区間24bは、絶縁体層16の上主面に設けられているので、上下方向において同じ位置に配置されている。そのため、第1区間22bは、第3区間24bの左に配置されている。そして、第1区間22bは、第3区間24bと前後方向に並走している。
【0027】
次に、第1区間22bと第2区間22a,22cとの区別、及び、第3区間24bと第4区間24a,24cとの区別について説明する。第1区間22bと第3区間24bとの距離d2は、図3に示すように、第2区間22aと第4区間24との距離d1より短い。第1区間22bと第3区間24bとの距離d2は、図3に示すように、第2区間22cと第4区間24cとの距離d3より短い。なお、第1区間22bと第3区間24bとの距離d2は、第1区間22bと第3区間24bとの最短距離である。
【0028】
そこで、第1信号導体層22において、第1信号導体層22と第2信号導体層24との距離が相対的に短い区間を第1区間22bと定義する。より正確には、第1信号導体層22において、第1信号導体層22と第2信号導体層24との距離が最も短い区間を含む区間を第1区間22bと定義する。一方、第1信号導体層22において、第1信号導体層22と第2信号導体層24との距離が相対的に長い区間を第2区間22a,22cと定義する。
【0029】
なお、本明細書において、第1信号導体層22において左右方向に延びている2本の区間22d,22eのそれぞれは、第2区間22a,22cの一部である。
【0030】
また、第2信号導体層24において、第1信号導体層22と第2信号導体層24との距離が相対的に短い区間を第3区間24bと定義する。より正確には、第2信号導体層24において、第1信号導体層22と第2信号導体層24との距離が最も短い区間を含む区間を第3区間24bと定義する。一方、第2信号導体層24において、第1信号導体層22と第2信号導体層24との距離が相対的に長い区間を第4区間24a,24cと定義する。
【0031】
次に、第1区間22bの構造について図3を参照しながら説明する。第1区間22bは、複数の第1細線部222及び複数の第1太線部224を有している。図3では、複数の第1細線部222及び複数の第1太線部224の内の代表的な第1細線部222及び第1太線部224にのみ参照符号を付した。複数の第1太線部224は、複数の第1細線部222の線幅w1より太い線幅w2を有している。第1細線部222の信号導体層前後方向の長さl1は、第1太線部224の信号導体層前後方向の長さl2以下である。また、複数の第1細線部222と複数の第1太線部224とは、信号導体層前後方向に交互に並んでいる。これにより、第1区間22bの線幅は、周期的に変化している。第1細線部222の信号導体層前後方向の長さl1及び第1太線部224の信号導体層前後方向の長さl2の合計は、第1信号導体層22を伝送される高周波信号の波長の半分以下である。すなわち、第1区間22bの線幅の変化の1周期分の長さは、第1信号導体層22を伝送される高周波信号の波長の半分以下である。
【0032】
また、複数の第1細線部222の左端は、複数の第1太線部224の左端と信号導体層左右方向において一致している。これにより、第1区間22bの左辺には凹凸が形成されない。本実施形態では、第1区間22bの左辺は前後方向に延びる直線形状を有している。一方、複数の第1細線部222の右端は、複数の第1太線部224の右端より信号導体層左右方向における左に位置している。これにより、第1区間22bの右辺には凹凸が形成される。第1区間22bの右辺は、前後方向に延びるジグザグ形状を有している。その結果、複数の第1細線部222の信号導体層左右方向の中心線L1は、複数の第1太線部224の信号導体層左右方向の中心線L2より信号導体層左右方向における左に位置している。このように、第1区間22bの信号導体層左右方向の中心線Laは、前後方向に延びるジグザグ形状を有している。
【0033】
第3区間24bの線幅は、均一である。従って、第3区間24bの左辺及び右辺は、左右方向に延びる直線形状を有している。
【0034】
ところで、前記の通り、基板本体12の前後方向の中間部における基板本体12の左右方向の幅は、図3に示すように、基板本体12の前後方向の中間部以外の部分における基板本体12の左右方向の幅より細い。より詳細には、第1区間22bにおける基板本体12の信号導体層左右方向の幅W2は、第2区間22a,22cにおける基板本体12の信号導体層左右方向の幅W1,W3より細い。ただし、第1区間22bの前端部における基板本体12の信号導体層左右方向の幅は、幅W2より太い幅W1である。同様に、第1区間22bの後端部における基板本体12の信号導体層左右方向の幅は、幅W2より太い幅W3である。
【0035】
第1グランド導体層26は、絶縁体層16aの上主面に設けられている。第1グランド導体層26は、面形状を有している。第1グランド導体層26は、絶縁体層16aの上主面の略全面を覆っている。従って、第1グランド導体層26は、第1信号導体層22及び第2信号導体層24の上に配置されている。また、第1グランド導体層26は、上下方向に見て、第1信号導体層22及び第2信号導体層24と重なっている。
【0036】
第2グランド導体層28は、絶縁体層16bの下主面に設けられている。第2グランド導体層28は、面形状を有している。第2グランド導体層28は、絶縁体層16bの下主面の略全面を覆っている。従って、第2グランド導体層28は、第1信号導体層22及び第2信号導体層24の下に配置されている。また、第2グランド導体層28は、上下方向に見て、第1信号導体層22及び第2信号導体層24と重なっている。以上のような第1信号導体層22、第2信号導体層24、第1グランド導体層26及び第2グランド導体層28は、ストリップライン構造を有している。第1信号導体層22、第2信号導体層24、第1グランド導体層26及び第2グランド導体層28は、例えば、銅等の金属箔にパターニングが施されることにより形成されている。
【0037】
レジスト層17aは、第1グランド導体層26を覆っている。レジスト層17aは、第1グランド導体層26の保護層である。レジスト層17bは、第2グランド導体層28を覆っている。レジスト層17bは、第2グランド導体層28の保護層である。以上のようなレジスト層17a,17bは、絶縁性材料が印刷されることにより作製されている。
【0038】
なお、回路基板10は、図示しないビアホール導体や外部電極を備えている。ビアホール導体は、第1グランド導体層26と第2グランド導体層28とを電気的に接続している層間接続導体である。また、ビアホール導体は、第1信号導体層22と外部電極とを電気的に接続している層間接続導体である。また、ビアホール導体は、第2信号導体層24と外部電極とを電気的に接続している層間接続導体である。ただし、回路基板10におけるビアホール導体及び外部電極の構造は、一般的な構造であるので説明を省略する。
【0039】
[効果]
回路基板10によれば、第1信号導体層22と第2信号導体層24との距離が短くなった場合であっても、第1信号導体層22と第2信号導体層24との結合を抑制できる。より詳細には、図1に示すように、回路基板10が電子部品4と接触することを回避したい場合がある。このような場合、基板本体12の左右方向の中間部における基板本体12の左右方向の幅は、基板本体12の左右方向の中間部以外の部分における基板本体12の左右方向の幅より細くなる。そのため、基板本体12の左右方向の中間部では、第1信号導体層22と第2信号導体層24との距離が短くなる。すなわち、基板本体12の左右方向の中間部では、第1区間22bと第3区間24bとは、信号導体層前後方向に並走している。このような場合、第1区間22bと第3区間24bとが結合しやすくなる。そのため、第1信号導体層22と第2信号導体層24とのアイソレーションが低下しやすくなる。
【0040】
そこで、第1区間22bは、複数の第1細線部222と、複数の第1細線部222の線幅w1より太い線幅w2を有する複数の第1太線部224とを有している。複数の第1細線部222と複数の第1太線部224とは、信号導体層前後方向に交互に並んでいる。複数の第1細線部222の信号導体層左右方向の中心線L1は、複数の第1太線部224の信号導体層左右方向の中心線L2より信号導体層左右方向における左に位置している。これにより、第1細線部222と第3区間24bとの距離d4は、第1太線部224と第3区間24bとの距離d2より長くなる。その結果、第1区間22bと第3区間24bとの距離の平均値は、距離d2より長くなる。第1区間22bと第3区間24bとが結合することが抑制される。以上より、回路基板10によれば、第1信号導体層22と第2信号導体層24との距離が短くなった場合であっても、第1信号導体層22と第2信号導体層24との結合を抑制できる。
【0041】
また、回路基板10によれば、第1信号導体層22の挿入損失の増大を抑制できる。より詳細には、第1信号導体層22と第2信号導体層24との結合を抑制するためには、例えば、第1信号導体層22の第1区間22bの全体の線幅を細くすればよい。これにより、第1区間22bと第3区間24bとの距離を長くすることができる。ただし、第1信号導体層22の挿入損失が増大する。そこで、回路基板10では、第1区間22bは、複数の第1細線部222と、複数の第1細線部222の線幅w1より太い線幅w2を有する複数の第1太線部224とを有している。これにより、回路基板10は、第1信号導体層22の挿入損失の増大を抑制している。
【0042】
また、回路基板10によれば、第1細線部222の信号導体層前後方向の長さl1及び第1太線部224の信号導体層前後方向の長さl2の合計は、第1信号導体層22を伝送される高周波信号の波長の半分以下である。これにより、第1細線部222及び第1太線部224において定常波が発生することによる回路基板10の特性劣化が抑制される。その結果、第1信号導体層22の伝送品質の劣化を抑制できる。
【0043】
また、回路基板10によれば、第1細線部222の信号導体層前後方向の長さl1は、第1太線部224の信号導体層前後方向の長さl2以下である。特に、第1細線部222の信号導体層前後方向の長さl1は、第1太線部224の信号導体層前後方向の長さl2程度であることが好ましい。これにより、第1区間22bにおいて、第1太線部224の割合が大きくなる。その結果、第1信号導体層22の挿入損失の増大を抑制しつつ、第1信号導体層22と第2信号導体層24との結合を抑制することができる。
【0044】
(第1の変形例)
以下に、第1の変形例に係る回路基板10aについて図面を参照しながら説明する。図4は、回路基板10aの第1信号導体層22、第2信号導体層24及び絶縁体層16bの上面図である。
【0045】
回路基板10aは、第1区間22bの形状において回路基板10と相違する。回路基板10では、第1区間22bの左辺は、左右方向に延びる直線形状を有している。一方、回路基板10aでは、第1区間22bの左辺は、左右方向に延びるジグザグ形状を有している。すなわち、複数の第1細線部222の左端は、複数の第1太線部224の左端より信号導体層左右方向における右に位置している。回路基板10aのその他の構造は、回路基板10と同じであるので説明を省略する。
【0046】
回路基板10aの第1太線部224の信号導体層左右方向の線幅は、回路基板10の第1太線部224の信号導体層左右方向の線幅より太い。従って、回路基板10aでは、回路基板10よりも第1信号導体層22の挿入損失の増大が更に抑制される。また、回路基板10aでは、第1区間22bの左辺及び右辺の両方がジグザグ形状を有している。そのため、回路基板10aは、第1区間22bが、第1区間22bの右に存在する回路、部品、筐体等と結合することを抑制できる。
【0047】
(第2の変形例)
以下に、第2の変形例に係る回路基板10bについて図面を参照しながら説明する。図5は、回路基板10bの第1信号導体層22、第2信号導体層24及び絶縁体層16bの上面図である。
【0048】
回路基板10bは、第3区間24bの形状において回路基板10と相違する。回路基板10では、第3区間24bの左辺は、左右方向に延びる直線形状を有している。一方、回路基板10bでは、第3区間24bの左辺は、左右方向に延びるジグザグ形状を有している。
【0049】
次に、第3区間24bの構造について図5を参照しながら説明する。第3区間24bは、複数の第2細線部242及び複数の第2太線部244を有している。複数の第2太線部244は、複数の第2細線部242の線幅w3より太い線幅w4を有している。また、複数の第2細線部242と複数の第2太線部244とは、信号導体層前後方向に交互に並んでいる。これにより、第3区間24bの線幅は、周期的に変化している。第2細線部242の信号導体層前後方向の長さl3及び第2太線部244の信号導体層前後方向の長さl4の合計は、第2信号導体層24を伝送される高周波信号の波長の半分以下である。すなわち、第3区間24bの線幅の変化の1周期分の長さは、第2信号導体層24を伝送される高周波信号の波長の半分以下である。
【0050】
また、複数の第2細線部242の右端は、複数の第2太線部244の右端と信号導体層左右方向において一致している。これにより、第3区間24bの右辺には凹凸が形成されない。本実施形態では、第3区間24bの右辺は左右方向に延びる直線形状を有している。一方、複数の第2細線部242の左端は、複数の第2太線部244の左端より信号導体層左右方向における右に位置している。これにより、第3区間24bの左辺には凹凸が形成される。第3区間24bの左辺は、左右方向に延びるジグザグ形状を有している。その結果、複数の第2細線部242の信号導体層左右方向の中心線L3は、複数の第2太線部244の信号導体層左右方向の中心線L4より信号導体層左右方向における右に位置している。このように、第3区間24bの信号導体層左右方向の中心線Lbは、左右方向に延びるジグザグ形状を有している。
【0051】
また、第1細線部222の信号導体層前後方向の長さl1及び第1太線部224の信号導体層前後方向の長さl2の合計は、第2細線部242の信号導体層前後方向の長さl3及び第2太線部244の信号導体層前後方向の長さl4の合計と異なる。本実施形態では、第1細線部222の信号導体層前後方向の長さl1及び第1太線部224の信号導体層前後方向の長さl2の合計は、第2細線部242の信号導体層前後方向の長さl3及び第2太線部244の信号導体層前後方向の長さl4の合計より短い。これは、第1信号導体層22を伝送される高周波信号の波長が第2信号導体層24を伝送される高周波信号の波長より短いためである。すなわち、第1信号導体層22を伝送される高周波信号の周波数と第2信号導体層24を伝送される高周波信号の周波数とが異なると、第1区間22bのジグザグ形状の周期と第3区間24bのジグザグ形状の周期とが異なるようになる。
【0052】
回路基板10bによれば、第1信号導体層22と第2信号導体層24との結合をより抑制できる。より詳細には、第3区間24bは、複数の第2細線部242と、複数の第2細線部242の線幅w3より太い線幅w4を有する複数の第2太線部244とを有している。複数の第2細線部242と複数の第2太線部244とは、信号導体層前後方向に交互に並んでいる。複数の第2細線部242の信号導体層左右方向の中心線L3は、複数の第2太線部244の信号導体層左右方向の中心線L4より信号導体層左右方向における右に位置している。これにより、回路基板10bにおける第1区間22bと第3区間24bとの距離の平均値は、回路基板10における第1区間22bと第3区間24bとの距離の平均値より大きくなる。その結果、第1区間22bと第3区間24bとが結合することがより抑制される。
【0053】
(第3の変形例)
以下に、第3の変形例に係る回路基板10cについて図面を参照しながら説明する。図6は、回路基板10cの第1信号導体層22、第2信号導体層24、第3信号導体層32及び絶縁体層16bの上面図である。
【0054】
回路基板10cは、第3区間24bの形状及び第3信号導体層32の有無において回路基板10bと相違する。以下に、これらの相違点について説明する。
【0055】
回路基板10bでは、第3区間24bの右辺は、左右方向に延びる直線形状を有している。一方、回路基板10cでは、第3区間24bの右辺は、左右方向に延びるジグザグ形状を有している。すなわち、複数の第2細線部242の右端は、複数の第2太線部244の右端より信号導体層左右方向における左に位置している。
【0056】
また、回路基板10cは、第3信号導体層32を更に備えている。第3信号導体層32は、第6区間32a、第5区間32b及び第6区間32cを有している。第5区間32bは、第3信号導体層32の中間部である。第6区間32a,32cは、第5区間32bを除く区間である。第6区間32a、第5区間32b及び第6区間32cは、信号導体層前後方向における前から後へとこの順に並ぶように接続されている。第5区間32bは、上下方向(積層方向)に見て、第3区間24bの信号導体層左右方向における右に配置されている。第5区間32bは、第3区間24bと信号導体層前後方向に並走している。
【0057】
次に、第5区間32bの構造について図6を参照しながら説明する。第5区間32bは、複数の第3細線部322及び複数の第3太線部324を有している。複数の第3太線部324は、複数の第3細線部322の線幅w5より太い線幅w6を有している。また、複数の第3細線部322と複数の第3太線部324とは、信号導体層前後方向に交互に並んでいる。これにより、第5区間32bの線幅は、周期的に変化している。第3細線部322の信号導体層前後方向の長さl5及び第3太線部324の信号導体層前後方向の長さl6の合計は、第3信号導体層32を伝送される高周波信号の波長の半分以下である。すなわち、第5区間32bの線幅の変化の1周期分の長さは、第3信号導体層32を伝送される高周波信号の波長の半分以下である。
【0058】
また、複数の第3細線部322の右端は、複数の第3太線部324の右端と信号導体層左右方向において一致している。これにより、第5区間32bの右辺には凹凸が形成されない。本実施形態では、第5区間32bの右辺は左右方向に延びる直線形状を有している。一方、複数の第3細線部322の左端は、複数の第3太線部324の左端より信号導体層左右方向における右に位置している。これにより、第5区間32bの左辺には凹凸が形成される。第5区間32bの左辺は、左右方向に延びるジグザグ形状を有している。その結果、複数の第3細線部322の信号導体層左右方向の中心線L5は、複数の第3太線部324の信号導体層左右方向の中心線L6より信号導体層左右方向における右に位置している。このように、第5区間32bの信号導体層左右方向の中心線Lcは、左右方向に延びるジグザグ形状を有している。なお、回路基板10cのその他の構造は、回路基板10bと同じであるので説明を省略する。
【0059】
回路基板10cによれば、第1信号導体層22と第2信号導体層24との結合を抑制することができると共に、第2信号導体層24と第3信号導体層32との結合を抑制することができる。
【0060】
(第4の変形例)
以下に、第4の変形例に係る回路基板10dについて図面を参照しながら説明する。図7は、回路基板10dの第1信号導体層22、第2信号導体層24、第3信号導体層32及び第4信号導体層34及び絶縁体層16bの上面図である。
【0061】
回路基板10dは、第3信号導体層32及び第4信号導体層34の有無において回路基板10bと相違する。より詳細には、回路基板10dは、第3信号導体層32及び第4信号導体層34を更に備えている。そして、第1信号導体層22及び第4信号導体層34には、第1差動信号が伝送される。第2信号導体層24及び第3信号導体層32には、第2差動信号が伝送される。
【0062】
第4信号導体層34は、基板本体12に設けられている。第4信号導体層34は、第1信号導体層22の左に配置されている。第4信号導体層34は、第1信号導体層22と左右対称な構造を有している。より詳細には、第4信号導体層34は、第8区間34a(図示せず)、第7区間34b及び第8区間34c(図示せず)を有している。第7区間34bは、第4信号導体層34の中間部である。第8区間34a,34cは、第7区間34bを除く区間である。第8区間34a、第7区間34b及び第8区間34cは、信号導体層前後方向における前から後へとこの順に並ぶように接続されている。第7区間34bは、上下方向(積層方向)に見て、第1区間22bの信号導体層左右方向における左に配置されている。第7区間34bは、第1区間22bと信号導体層前後方向に並走している。
【0063】
次に、第7区間34bの構造について図7を参照しながら説明する。第7区間34bは、複数の第4細線部342及び複数の第4太線部344を有している。複数の第4太線部344は、複数の第4細線部342の線幅w7より太い線幅w8を有している。また、複数の第4細線部342と複数の第4太線部344とは、信号導体層前後方向に交互に並んでいる。これにより、第7区間34bの線幅は、周期的に変化している。第4細線部342の信号導体層前後方向の長さl7及び第4太線部344の信号導体層前後方向の長さl8の合計は、第4信号導体層34を伝送される高周波信号の波長の半分以下である。すなわち、第7区間34bの線幅の変化の1周期分の長さは、第4信号導体層34を伝送される高周波信号の波長の半分以下である。また、第1細線部222及び第1太線部224の号導体層前後方向の長さの合計は、第4細線部342及び第4太線部344の信号導体層前後方向の長さの合計とは等しい。
【0064】
また、複数の第4細線部342の右端は、複数の第4太線部344の右端と信号導体層左右方向において一致している。これにより、第7区間34bの右辺には凹凸が形成されない。本実施形態では、第7区間34bの右辺は左右方向に延びる直線形状を有している。一方、複数の第4細線部342の左端は、複数の第4太線部344の左端より信号導体層左右方向における右に位置している。これにより、第7区間34bの左辺には凹凸が形成される。第7区間34bの左辺は、左右方向に延びるジグザグ形状を有している。その結果、複数の第4細線部342の信号導体層左右方向の中心線L7は、複数の第4太線部344の信号導体層左右方向の中心線L8より信号導体層左右方向における右に位置している。このように、第7区間34bの信号導体層左右方向の中心線Ldは、左右方向に延びるジグザグ形状を有している。
【0065】
第3信号導体層32は、基板本体12に設けられている。第3信号導体層32は、第2信号導体層24の右に配置されている。第3信号導体層32は、第6区間32a(図示せず)、第5区間32b及び第6区間32c(図示せず)を有している。第5区間32bは、第3信号導体層32の中間部である。第6区間32a,32cは、第5区間32bを除く区間である。第6区間32a、第5区間32b及び第6区間32cは、信号導体層前後方向における前から後へとこの順に並ぶように接続されている。第5区間32bは、上下方向(積層方向)に見て、第3区間24bの信号導体層左右方向における右に配置されている。第5区間32bは、第3区間24bと信号導体層前後方向に並走している。
【0066】
次に、第5区間32bの構造について図7を参照しながら説明する。第5区間32bは、複数の第3細線部322及び複数の第3太線部324を有している。複数の第3太線部324は、複数の第3細線部322の線幅w5より太い線幅w6を有している。また、複数の第3細線部322と複数の第3太線部324とは、信号導体層前後方向に交互に並んでいる。これにより、第5区間32bの線幅は、周期的に変化している。第3細線部322の信号導体層前後方向の長さl5及び第3太線部324の信号導体層前後方向の長さl6の合計は、第3信号導体層32を伝送される高周波信号の波長の半分以下である。すなわち、第5区間32bの線幅の変化の1周期分の長さは、第3信号導体層32を伝送される高周波信号の波長の半分以下である。また、第2細線部242及び第2太線部244の信号導体層前後方向の長さの合計は、第3細線部322及び第3太線部324の信号導体層前後方向の長さの合計とは等しい。
【0067】
また、複数の第3細線部322の左端は、複数の第3太線部324の左端と信号導体層左右方向において一致している。これにより、第5区間32bの左辺には凹凸が形成されない。本実施形態では、第5区間32bの左辺は、左右方向に延びる直線形状を有している。一方、複数の第3細線部322の右端は、複数の第3太線部324の右端より信号導体層左右方向における左に位置している。これにより、第5区間32bの右辺には凹凸が形成される。第5区間32bの右辺は、左右方向に延びるジグザグ形状を有している。その結果、複数の第3細線部322の信号導体層左右方向の中心線L5は、複数の第3太線部324の信号導体層左右方向の中心線L6より信号導体層左右方向における左に位置している。このように、第5区間32bの信号導体層左右方向の中心線Lcは、左右方向に延びるジグザグ形状を有している。なお、回路基板10dのその他の構造は、回路基板10bと同じであるので説明を省略する。
【0068】
以上のような回路基板10dでは、第1信号導体層22と第2信号導体層24との結合を抑制できる。
【0069】
また、第4信号導体層34は、第1信号導体層22と左右対称な構造を有している。これにより、第1信号導体層22の高周波信号の伝送特性と第4信号導体層34の高周波信号の伝送特性とが近づく。これにより、第1信号導体層22及び第4信号導体層34には、第1差動信号が伝送されることが可能となる。同じ理由により、第2信号導体層24及び第3信号導体層32には、第2差動信号が伝送されることが可能となる。
【0070】
(第5の変形例)
以下に、第5の変形例に係る回路基板10eについて図面を参照しながら説明する。図8は、回路基板10eの第1信号導体層22、第2信号導体層24及び絶縁体層16bの上面図である。
【0071】
回路基板10eは、複数の第1太線部224の構造において回路基板10と相違する。複数の第1太線部224の線幅w2は、第1区間22bの両端(前端及び後端)に近づくにしたがって小さくなっている。回路基板10eのその他の構造は、回路基板10と同じであるので説明を省略する。
【0072】
回路基板10eによれば、第1信号導体層22に発生する特性インピーダンスが急激に変化することが抑制される。その結果、第1信号導体層22において高周波信号の反射が抑制され、第1信号導体層22の挿入損失が低減される。
【0073】
(その他の実施形態)
本発明に係る回路基板は、回路基板10,10a~10eに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。また、回路基板10,10a~10eの構成を任意に組み合わせてもよい。
【0074】
なお、回路基板10,10a~10eにおいて、第1信号導体層22、第2信号導体層24、第3信号導体層32及び第4信号導体層34は、上下方向に見て、左右方向に曲がっていてもよい。
【0075】
なお、回路基板10,10a~10eにおいて、第1区間22bにおける基板本体12の信号導体層左右方向の幅は、第2区間22a,22cにおける基板本体12の信号導体層左右方向の幅以上であってもよい。
【0076】
なお、回路基板10,10a~10eにおいて、第1細線部222の信号導体層前後方向の長さl1及び第1太線部224の信号導体層前後方向の長さl2の合計は、第1信号導体層22を伝送される高周波信号の波長の半分以下であることが好ましい。しかしながら、第1細線部222の信号導体層前後方向の長さl1及び第1太線部224の信号導体層前後方向の長さl2の合計は、第1信号導体層22を伝送される高周波信号の波長の半分より長くてもよい。
【0077】
なお、回路基板10,10a~10eにおいて、第1細線部222の信号導体層前後方向の長さl1は、第1太線部224の信号導体層前後方向の長さl2以下であることが好ましい。しかしながら、第1細線部222の信号導体層前後方向の長さl1は、第1太線部224の信号導体層前後方向の長さl2より長くてもよい。
【0078】
なお、回路基板10,10a~10eにおいて、第1グランド導体層26及び第2グランド導体層28は、必須の構成ではない。従って、回路基板10,10a~10eは、第1グランド導体層26及び第2グランド導体層28の両方を備えていない、又は、第1グランド導体層26及び第2グランド導体層28のいずれか一方を備えていなくてもよい。回路基板10,10a~10eが第1グランド導体層26及び第2グランド導体層28の両方を備えていない場合、第1区間22b及び第3区間24bは、上下方向(積層方向)に見て、グランド導体層と重なっていない。このときの第1区間22bの構造について図面を参照しながら説明する。図9及び図10は、その他の実施形態に係る回路基板の第1信号導体層22の拡大図である。
【0079】
第1太線部224の線幅w2は、図9に示すように、第1太線部224の右端と第1細線部222の右端との信号導体層左右方向における距離d10の2倍以下であることが好ましい。すなわち、第1細線部222と第1太線部224とにより形成される凹部の深さ(距離d10)は、第1太線224部の線幅w2の半分以上であることが望ましい。これにより、第1信号導体層22からの不要輻射を抑制できる。なお、図10に示すように、第1太線部224がテーパ形状を有する場合がある。このような場合、第1細線部222の長さl1は、長さl11と長さl12との平均値である。また、距離d10、幅w1,w2は、図10に示す通りである。以上のように、図9及び図10に示す構造を第1信号導体層22が有することにより、第1信号導体層22からの不要輻射が抑制される。そのため、回路基板10,10a~10eが図9及び図10に示す構造を有する第1信号導体層22を備える場合には、回路基板10,10a~10eは、第1グランド導体層26及び第2グランド導体層28の両方を備えていなくてもよい。
【0080】
なお、回路基板10,10a~10eにおいて、第1信号導体層22の上下方向における位置と第2信号導体層24の上下方向における位置とは異なっていてもよい。従って、第1信号導体層22が設けられている絶縁体層と第2信号導体層24が設けられている絶縁体層とが異なっていてもよい。
【0081】
なお、回路基板10,10a~10eにおいて、第1区間22b及び第3区間24bのそれぞれは、第1信号導体層22及び第2信号導体層24の中間部であると説明した。しかしながら、第1区間22b及び第3区間24bのそれぞれは、第1信号導体層22及び第2信号導体層24の中間部以外の部分であってもよい。例えば、第1区間22b及び第3区間24bのそれぞれは、第1信号導体層22及び第2信号導体層24の左端部を含んでいてもよいし、第1信号導体層22及び第2信号導体層24の右端部を含んでいてもよい。
【0082】
なお、回路基板10cの第3区間24bの左辺及び/又は右辺は、ジグザグ形状を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1:電子機器
2:マザーボード
4:電子部品
10,10a~10e:回路基板
12:基板本体
16a,16b:絶縁体層
17a,17b:レジスト層
22:第1信号導体層
22a,22c:第2区間
22b:第1区間
24:第2信号導体層
24a,24c:第4区間
24b:第3区間
26:第1グランド導体層
28:第2グランド導体層
32:第3信号導体層
32a,32c:第6区間
32b:第5区間
34:第4信号導体層
34a,34c:第8区間
34b:第7区間
222:第1細線部
224:第1太線部
242:第2細線部
244:第2太線部
322:第3細線部
324:第3太線部
342:第4細線部
344:第4太線部
L1~L8,La~Ld:中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10