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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】配線基板及び多層配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20231226BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20231226BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20231226BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H05K1/03 630D
B32B7/025
B32B15/082 B
B32B15/09
B32B27/20 Z
B32B27/30 D
B32B27/36
B32B27/34
H05K1/03 610N
H05K1/02 P
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022542621
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027659
(87)【国際公開番号】W WO2022034791
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2020136414
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021081846
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】島村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】古村 知大
(72)【発明者】
【氏名】福武 素直
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/071473(WO,A1)
【文献】特表2017-526757(JP,A)
【文献】特開2016-97677(JP,A)
【文献】特開2016-237769(JP,A)
【文献】国際公開第2006/067970(WO,A1)
【文献】特開昭61-228122(JP,A)
【文献】特開平2-286743(JP,A)
【文献】特開平6-61597(JP,A)
【文献】特開2002-203430(JP,A)
【文献】特開2012-82329(JP,A)
【文献】特開2018-131562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00―43/00
C08L 27/12―27/20
C08L 79/08
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層に接する第2絶縁層と、
導体層と、を積層方向に順に備え、
前記第1絶縁層は、液晶ポリマーを主成分として含み、
前記第2絶縁層は、ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンの少なくとも一方からなるフッ素樹脂と、イミド化率が90%以上である溶媒可溶型ポリイミド樹脂とを含み、かつ、前記フッ素樹脂100重量部に対して、前記溶媒可溶型ポリイミド樹脂を0.5重量部以上、20重量部未満含む、ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシアルカンである、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記液晶ポリマーは、I型又はII型の全芳香族ポリエステルである、請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第2絶縁層は、無機フィラーを更に含む、請求項1~のいずれかに記載の配線基板。
【請求項5】
前記無機フィラーは、等方形状を有する無機フィラーを含む、請求項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記無機フィラーは、異方形状を有する無機フィラーを含む、請求項又はに記載の配線基板。
【請求項7】
前記無機フィラーは、窒化ホウ素又は溶融シリカを含む、請求項のいずれかに記載の配線基板。
【請求項8】
前記無機フィラーは、アルカリ土類金属を含むペロブスカイト型化合物を含む、請求項のいずれかに記載の配線基板。
【請求項9】
前記第2絶縁層は、複数種類の前記無機フィラーを含む、請求項のいずれかに記載の配線基板。
【請求項10】
前記第2絶縁層は、第1無機フィラーと、比誘電率が前記第1無機フィラーよりも大きい第2無機フィラーと、を含む、請求項に記載の配線基板。
【請求項11】
前記第1無機フィラーは、窒化ホウ素又は溶融シリカである、請求項10に記載の配線基板。
【請求項12】
前記第2無機フィラーは、アルカリ土類金属を含むペロブスカイト型化合物からなる、請求項10又は11に記載の配線基板。
【請求項13】
前記第1絶縁層の厚みに対する前記第2絶縁層の厚みの比は、0.04以上、4以下である、請求項1~12のいずれかに記載の配線基板。
【請求項14】
前記導体層は、銅箔からなる、請求項1~13のいずれかに記載の配線基板。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の配線基板を少なくとも1つ備える、ことを特徴とする多層配線基板。
【請求項16】
高周波信号を伝送する信号線を前記導体層として有し、かつ、高周波伝送線路を構成する、請求項15に記載の多層配線基板。
【請求項17】
前記信号線は、前記第2絶縁層に接する、請求項16に記載の多層配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子機器に使用される配線基板(回路基板とも言う)の高周波領域における誘電特性を向上させるための材料として、高周波領域における比誘電率及び誘電正接の小さい、液晶ポリマー及びフッ素樹脂(フッ素系樹脂とも言う)が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液晶ポリマーからなる補強体層(A)と含フッ素共重合体からなる電気絶縁体層(B)とが組み合わせて用いられる、フレキシブルプリント配線板用積層体が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、液晶ポリマーの絶縁性フィルムとフッ素系樹脂を含む接着剤層とが組み合わせて用いられる、回路基板用積層板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2006/067970号
【文献】国際公開第2016/159102号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、高周波領域において用いられる配線基板では、吸湿による誘電特性の変化を抑制することが求められている。液晶ポリマー及びフッ素樹脂は低吸湿性に優れる(吸湿しにくい)材料であるが、特許文献2に記載の回路基板用積層板では、フッ素系樹脂が分散体として接着剤層に存在するため、フッ素系樹脂による低吸湿性が発揮されない。そのため、特許文献2に記載の回路基板用積層板では、接着剤層が吸湿することにより、誘電特性が低下するおそれがある。
【0007】
これに対して、特許文献1に記載のフレキシブルプリント配線板用積層体では、吸湿による誘電特性の低下が抑制されると考えられる。しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載のフレキシブルプリント配線板用積層体のような配線基板に対してプレッシャークッカー試験等の吸湿試験を行うと、液晶ポリマーを含む絶縁層とフッ素樹脂を含む絶縁層との接着性が低下してしまうことが分かった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、吸湿前後の状態において、誘電特性が維持されつつ、液晶ポリマーを含む絶縁層とフッ素樹脂を含む絶縁層との接着性に優れる配線基板及び多層配線基板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の配線基板は、第1絶縁層と、上記第1絶縁層に接する第2絶縁層と、導体層と、を積層方向に順に備え、上記第1絶縁層は、液晶ポリマーを主成分として含み、上記第2絶縁層は、ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンの少なくとも一方からなるフッ素樹脂と、イミド化率が90%以上であるポリイミド樹脂とを含み、かつ、上記フッ素樹脂100重量部に対して、上記ポリイミド樹脂を0.5重量部以上、20重量部未満含む、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の多層配線基板は、本発明の配線基板を少なくとも1つ備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸湿前後の状態において、誘電特性が維持されつつ、液晶ポリマーを含む絶縁層とフッ素樹脂を含む絶縁層との接着性に優れる配線基板及び多層配線基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の配線基板の一例を示す断面模式図である。
図2】本発明の多層配線基板の一例を示す斜視模式図である。
図3図2中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
図4図2中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図である。
図5図2に示した多層配線基板の製造方法について、第1導体付き絶縁シートの作製工程の一例を示す断面模式図である。
図6図2に示した多層配線基板の製造方法について、第1導体のパターニング工程の一例を示す断面模式図である。
図7図2に示した多層配線基板の製造方法について、第2導体付き絶縁シートの作製工程の一例を示す断面模式図である。
図8図2に示した多層配線基板の製造方法について、第3導体付き絶縁シートの作製工程の一例を示す断面模式図である。
図9図2に示した多層配線基板の製造方法について、第1導体付き絶縁シート、第2導体付き絶縁シート、及び、第3導体付き絶縁シートの積層・熱圧着工程の一例を示す断面模式図である。
図10】本発明の配線基板をアンテナ基板に利用した例を示す断面模式図である。
図11図10に示したアンテナ基板を上面視した状態を示す平面模式図である。
図12図10に示したアンテナ基板を下面視した状態を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の配線基板と本発明の多層配線基板とについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0014】
図1は、本発明の配線基板の一例を示す断面模式図である。
【0015】
図1に示すように、配線基板1は、第1絶縁層10と、第2絶縁層20と、導体層30と、を積層方向(図1では、上下方向)に順に有している。より具体的には、配線基板1では、第1絶縁層10と、第2絶縁層20と、導体層30とが積層方向に順に積層されている。
【0016】
第1絶縁層10は、液晶ポリマー(LCP)を主成分として含んでいる。液晶ポリマーは熱可塑性樹脂の中でも低吸湿性に優れているため、配線基板1の誘電特性が変化しにくい。
【0017】
本明細書中、各層又は各部材の主成分は、各層又は各部材中の含有量(重量百分率)が最も多い成分を意味する。
【0018】
液晶ポリマーは、通常、I型、II型、及び、III型の芳香族ポリエステルに分類される。中でも、第1絶縁層10において、液晶ポリマーは、I型又はII型の全芳香族ポリエステルであることが好ましい。I型及びII型の全芳香族ポリエステルは、III型の一部芳香族ポリエステルと比較して、加水分解を起こしにくいため、配線基板の材料として好ましい。
【0019】
第1絶縁層10の厚みT1(積層方向における長さ)は、好ましくは10μm以上、50μm以下である。
【0020】
第2絶縁層20は、第1絶縁層10に接している。
【0021】
第2絶縁層20は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)の少なくとも一方からなるフッ素樹脂と、イミド化率が90%以上であるポリイミド樹脂とを含み、かつ、フッ素樹脂100重量部に対して、ポリイミド樹脂を0.5重量部以上、20重量部未満含んでいる。
【0022】
第2絶縁層20がフッ素樹脂を含むだけでは、液晶ポリマーを含む第1絶縁層10との接着性が低い。これに対して、第2絶縁層20が、イミド化率が90%以上であるポリイミド樹脂をフッ素樹脂100重量部に対して0.5重量部以上含むことにより、第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が高まり、特に、吸湿による第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性の低下を抑制できる。例えば、後述するような溶媒可溶型ポリイミド樹脂は、イミド化率が90%以上である硬化状態であっても溶媒に可溶であり、フッ素樹脂パウダーの隙間に入り込んでバインダーとして機能する。そのため、第2絶縁層20が溶媒可溶型ポリイミド樹脂を含むことにより、第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が高まり、また、第2絶縁層20自体のバルク内強度も高まる。これに対して、イミド化前の状態であるポリイミド前駆体を、フッ素樹脂パウダーを含むワニス中に少量分散させると、ポリイミド前駆体が薄まってしまい、ポリイミド前駆体同士が近づく機会が少なくなってしまうため、第2絶縁層20の作製過程で、ワニス塗工後に加熱によるイミド化処理を行おうとしても、イミド化(架橋)が進行しない。
【0023】
一方、ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンはフッ素樹脂の中でも低吸湿性に優れているが、第2絶縁層20がポリイミド樹脂を多く含み過ぎると、フッ素樹脂の含有量が相対的に少なくなり過ぎるため、フッ素樹脂としてのポリテトラフルオロエチレン又はパーフルオロアルコキシアルカンによる低吸湿性が発揮されない。これに対して、第2絶縁層20がフッ素樹脂100重量部に対してポリイミド樹脂を20重量部未満含むことにより、フッ素樹脂としてのポリテトラフルオロエチレン又はパーフルオロアルコキシアルカンによる低吸湿性が充分に発揮される。更に、第1絶縁層10を構成する液晶ポリマーも低吸湿性を有するものであるため、配線基板1は、全体として低吸湿性を有するものとなる。
【0024】
以上により、配線基板1では、吸湿前後の状態において、誘電特性が維持されつつ、第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が優れたものとなる。
【0025】
第2絶縁層20がフッ素樹脂100重量部に対してポリイミド樹脂を0.5重量部未満含む場合、第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が低下し、特に、吸湿により第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が低下しやすくなる。
【0026】
一方、第2絶縁層20がフッ素樹脂100重量部に対してポリイミド樹脂を20重量部以上含む場合、フッ素樹脂の含有量が相対的に少なくなり過ぎるため、第2絶縁層20による低吸湿性が発揮されない。よって、第2絶縁層20が吸湿することにより、配線基板1の誘電特性が低下したり、第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が低下したりする。
【0027】
第2絶縁層20は、フッ素樹脂100重量部に対して、ポリイミド樹脂を3重量部以上含むことが好ましく、また、ポリイミド樹脂を10重量部以下含むことが好ましい。
【0028】
第2絶縁層におけるフッ素樹脂及びポリイミド樹脂の含有量は、下記のようにして求められる。まず、配線基板から、剥離、掻き取り等の方法により、第2絶縁層のみを取り出す。そして、第2絶縁層を20%の水酸化ナトリウム溶液に浸すことにより、ポリイミド樹脂のみを溶出させる。その後、溶出せずに残った樹脂の重量を測定し、溶出前の樹脂の重量との差から、溶出したポリイミド樹脂の重量を求める。この際、溶出した樹脂がポリイミド樹脂であるかどうかについては、赤外分光法により確認する。また、溶出せずに残った樹脂については、赤外分光法によりフッ素樹脂が含まれていることを確認した上で、上述した溶液からろ過、水洗、及び、乾燥を順に行った後にマイクロ天秤で測定することにより、フッ素樹脂の重量を求める。
【0029】
第2絶縁層20において、熱可塑性樹脂であるフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンの少なくとも一方からなる。より具体的には、フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンであってもよいし、パーフルオロアルコキシアルカンであってもよいし、ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンの両方からなっていてもよい。ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンは、液晶ポリマーよりも、高周波領域における誘電特性に優れている。
【0030】
フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシアルカンであることが好ましい。パーフルオロアルコキシアルカンは、ポリテトラフルオロエチレンよりも流動性が高いため、ポリテトラフルオロエチレンよりも液晶ポリマーに接着しやすい。また、パーフルオロアルコキシアルカンは、溶融成形が可能であるため、ポリテトラフルオロエチレンよりも取り扱い性が高い。よって、第2絶縁層20がパーフルオロアルコキシアルカンをフッ素樹脂として含むことにより、第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が高まるとともに、第2絶縁層20の製造効率も高まる。
【0031】
本明細書中、パーフルオロアルコキシアルカンには、液晶ポリマーとの接着性に寄与する官能基で一部が置換されたパーフルオロアルコキシアルカンも含まれる。このような液晶ポリマーとの接着性に寄与する官能基としては、例えば、エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシル基、カルボニルフルオリド基、酸無水物基等が挙げられる。
【0032】
第2絶縁層20において、ポリイミド樹脂のイミド化率は、90%以上であり、好ましくは100%である。ポリイミド樹脂のイミド化率が90%未満である場合、第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が低下し、特に、吸湿により第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が低下しやすくなる。
【0033】
本明細書中、ポリイミド樹脂のイミド化率は、第2絶縁層全体におけるポリイミド樹脂のイミド化率の平均値を意味する。
【0034】
ポリイミド樹脂のイミド化率は、X線光電子分光法(XPS)による分析を行うことにより測定される。より具体的には、第2絶縁層に対して、X線光電子分光法によりポリイミド樹脂を測定し、C1sスペクトルを、アミド結合中の炭素のピークと、カルボキシル基中の炭素のピークと、イミドカルボニルの炭素のピークとに波形分離して、下記式(1)によりポリイミド樹脂のイミド化率を測定する。
r=[CO-N-CO]/{[CO-N-CO]+([CON]+[COOH])/2} (1)
上記式(1)中、rはイミド化率、[CO-N-CO]はC1sスペクトルのイミドカルボニルの炭素のピーク面積比率、[CON]はC1sスペクトルのアミド結合中の炭素のピーク面積比率、[COOH]はC1sスペクトルのカルボキシル基中の炭素のピーク面積比率を表す。
【0035】
このようなイミド化率の測定を、配線基板から剥離された第2絶縁層の一方の表面から他方の表面まで厚み方向にエッチング等で掘り下げつつ、5箇所で行うことにより、第2絶縁層全体におけるポリイミド樹脂のイミド化率の平均値を確認できる。あるいは、配線基板を積層方向に切断することで露出させた第2絶縁層の断面に対して、このようなイミド化率の測定を、厚み方向に5箇所で行うことによっても、第2絶縁層全体におけるポリイミド樹脂のイミド化率の平均値を確認できる。
【0036】
ポリイミド樹脂は、溶媒可溶型ポリイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド前駆体は、イミド化前の状態であるために溶液(溶媒可溶)であるが、加熱(例えば、350℃以上、400℃以下)によるイミド化処理(熱硬化処理)を行わなければ、ポリイミド樹脂としての特性、例えば、耐熱性、機械特性、化学安定性等を発現しない。これに対して、溶媒可溶型ポリイミド樹脂は、イミド化処理が行われた状態のポリイミド樹脂を溶液化したものであるため、ポリイミド樹脂としての特性を発現する。また、溶媒可溶型ポリイミド樹脂は、溶媒可溶型ではないポリイミド樹脂と異なり、上述したフッ素樹脂と混ざりやすいため、第2絶縁層20の製造効率が高まりやすくなる。更に、溶媒可溶型ポリイミド樹脂は、貯蔵安定性が高く、液状で溶媒と混合しやすいために加工性が高く、イミド化処理だけのための加熱処理を必要としないために加工コストが低い。
【0037】
溶媒可溶型ポリイミド樹脂は、結晶性ではなく非晶性の樹脂である。このような溶媒可溶型ポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂の分子構造を適度に乱すことにより実現される。ポリイミド樹脂の分子構造を適度に乱す方法としては、例えば、かさ高い置換基の導入、共重合等によりポリイミド樹脂の構成単位の規則性を乱す方法が用いられる。より具体的には、ポリイミド樹脂の側鎖にかさ高いベンゼン環を導入したり、ポリイミド樹脂の主鎖中にヘキサフルオロイソプロピリデン基、カルド構造のフルオレニリデン基等を導入したりしてもよい。第2絶縁層20に含まれるポリイミド樹脂が溶媒可溶型であるかどうかについては、赤外分光法により分子構造を分析した上で、上述したように、非晶性であるかどうか、置換基の導入、共重合等によりポリイミド樹脂の構成単位の規則性が乱されているかどうか等という点で判断可能である。
【0038】
溶媒可溶型ポリイミド樹脂が可溶な有機溶媒としては、例えば、フェノール系溶媒、N-メチルピロリドン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0039】
第2絶縁層20は、無機フィラーを更に含んでいてもよい。第2絶縁層20に無機フィラーを加えることにより、第2絶縁層20の線膨張係数を調整できるため、第2絶縁層20の線膨張係数を第1絶縁層10及び導体層30の線膨張係数に合わせやすくなる。よって、配線基板1が熱膨張する場合であっても、第1絶縁層10と第2絶縁層20との界面で剥離しにくくすることができる。また、図1に示すように、第2絶縁層20と導体層30とが接している場合には、第2絶縁層20と導体層30との界面でも剥離しにくくすることができる。また、第2絶縁層20に無機フィラーを加えることにより、第2絶縁層20の誘電率も調整できる。
【0040】
第2絶縁層20が溶媒可溶型ポリイミド樹脂及び無機フィラーを含む場合、溶媒可溶型ポリイミド樹脂は、フッ素樹脂パウダーの隙間に加えて無機フィラーの隙間にも入り込んでバインダーとして機能する。そのため、第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が高まり、また、第2絶縁層20自体のバルク内強度も高まる。
【0041】
無機フィラーは、等方形状を有する無機フィラーを含んでいてもよい。
【0042】
無機フィラーは、異方形状を有する無機フィラーを含んでいてもよい。
【0043】
無機フィラーの形状は、下記のようにして判断される。まず、配線基板から、剥離、掻き取り等の方法により第2絶縁層のみを取り出す。次に、第2絶縁層を、例えば、500℃以上、700℃以下で加熱することにより、第2絶縁層中の樹脂を焼き飛ばす。そして、焼き飛ばずに残った無機フィラーを走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察し、その外形形状から最大長さ及び最小長さを求める。そして、無機フィラーの形状について、最大長さ×1/3≦最小長さを満たすものを等方形状、最大長さ×1/3>最小長さを満たすものを異方形状、と判断する。
【0044】
等方形状としては、例えば、正四面体状、正六面体状等の正多面体状、球状等が挙げられる。正多面体状には、完全な正多面体だけではなく、正多面体に近い形状も含まれる。球状には、完全な球形だけではなく、球形に近い形状も含まれる。
【0045】
異方形状としては、例えば、板状、針状、繊維状等が挙げられる。板状には、平板状だけではなく、湾曲した形状、厚みが一定ではない形状等も含まれる。
【0046】
無機フィラーは、窒化ホウ素又は溶融シリカを含んでいてもよい。窒化ホウ素及び溶融シリカは、誘電正接が小さく、かつ、低吸湿性を有する。窒化ホウ素及び溶融シリカは、比誘電率が液晶ポリマーよりも大きい。
【0047】
第2絶縁層20が窒化ホウ素又は溶融シリカを無機フィラーとして含むことにより、第2絶縁層20の線膨張係数も小さくすることができる。
【0048】
無機フィラーが窒化ホウ素である場合、その形状は板状(異方形状)であることが好ましい。板状には、平板状だけではなく、湾曲した形状、厚みが一定ではない形状等も含まれる。
【0049】
無機フィラーが溶融シリカである場合、その形状は球状(等方形状)である。球状には、完全な球形だけではなく、球形に近い形状も含まれる。第2絶縁層20に含まれる無機フィラーとしてのシリカが溶融シリカであるかどうかについては、球状であるかどうかという点で判断可能である。
【0050】
無機フィラーは、針状(異方形状)のワラストナイトを含んでいてもよい。
【0051】
無機フィラーは、アルカリ土類金属を含むペロブスカイト型化合物を含んでいてもよい。
【0052】
アルカリ土類金属を含むペロブスカイト型化合物は、チタンを含むことが好ましい。このようなアルカリ土類金属及びチタンを含むペロブスカイト型化合物としては、例えば、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられる。これらのペロブスカイト型化合物は、比誘電率が液晶ポリマーよりも大きい。また、これらのペロブスカイト型化合物は、比誘電率が窒化ホウ素及び溶融シリカよりも大きい。
【0053】
ここで、配線基板1は、後述するように、パッチアンテナ等のアンテナ基板に利用される。一般に、アンテナ基板の共振周波数は、放射電極の長さと放射電極が設けられる基板の誘電率の平方根との積に反比例する。そのため、配線基板1がアンテナ基板に利用され、導体層30がアンテナ基板の放射電極である場合、第2絶縁層20が上述したアルカリ土類金属を含むペロブスカイト型化合物等を無機フィラーとして含むことで誘電率が大きなものになっていると、導体層30、すなわち、放射電極の長さを小さくすることができ、結果的に、アンテナ基板を小型化できる。
【0054】
第2絶縁層20は、複数種類の無機フィラーを含んでいてもよい。特に、第2絶縁層20は、第1無機フィラーと、比誘電率が第1無機フィラーよりも大きい第2無機フィラーと、を含むことが好ましい。
【0055】
第2絶縁層20が第1無機フィラーを含むことにより、第2絶縁層20の線膨張係数も小さくすることができる。また、配線基板1がアンテナ基板に利用され、導体層30がアンテナ基板の放射電極である場合、第2絶縁層20が第2無機フィラーを含むことで誘電率が大きなものになっていると、導体層30、すなわち、放射電極の長さを小さくすることができ、結果的に、アンテナ基板を小型化できる。
【0056】
第1無機フィラーは、比誘電率が第1絶縁層10よりも大きいことが好ましい。より具体的には、第1無機フィラーは、比誘電率が液晶ポリマーよりも大きいことが好ましい。
【0057】
第1無機フィラーは、等方形状を有していてもよいし、異方形状を有していてもよい。
【0058】
第1無機フィラーは、窒化ホウ素又は溶融シリカであることが好ましい。
【0059】
第1無機フィラーは、ワラストナイトであってもよい。
【0060】
第2無機フィラーは、比誘電率が第1絶縁層10よりも大きいことが好ましい。より具体的には、第2無機フィラーは、比誘電率が液晶ポリマーよりも大きいことが好ましい。
【0061】
第2無機フィラーは、等方形状を有していてもよいし、異方形状を有していてもよい。
【0062】
第2無機フィラーは、アルカリ土類金属を含むペロブスカイト型化合物からなることが好ましい。
【0063】
第2無機フィラーの形状は、下記のようにして判断される。まず、配線基板から、剥離、掻き取り等の方法により第2絶縁層のみを取り出す。次に、第2絶縁層を、例えば、500℃以上、700℃以下で加熱することにより、第2絶縁層中の樹脂を焼き飛ばす。そして、焼き飛ばずに残った無機フィラーについて、エネルギー分散型X線分析(EDX)で元素分析を行うことにより、チタンが検出される等の情報から第2無機フィラーが含まれていることを確認する。その後、走査型電子顕微鏡等により第2無機フィラーを観察し、その外形形状から最大長さ及び最小長さを求める。そして、第2無機フィラーの形状について、最大長さ×1/3≦最小長さを満たすものを等方形状、最大長さ×1/3>最小長さを満たすものを異方形状、と判断する。ちなみに、第1無機フィラーの形状も同様に判断される。
【0064】
第2絶縁層20が第1無機フィラー及び第2無機フィラーを含む場合、第2絶縁層20における第1無機フィラー及び第2無機フィラーの含有割合を調整することにより、第2絶縁層20の誘電率及び線膨張係数をともに調整しやすくなる。
【0065】
第2絶縁層20が第1無機フィラー及び第2無機フィラーを含む場合、第1無機フィラーが板状等の異方形状を有することが好ましく、第2無機フィラーが球状等の等方形状を有することが好ましい。言い換えれば、第2絶縁層20は、異方形状を有する無機フィラーと等方形状を有する無機フィラーとを含むことが好ましい。この場合、第2絶縁層20の誘電率を第2無機フィラー(等方形状を有する無機フィラー)の含有割合で調整しやすくなり、第2絶縁層20の面内方向での線膨張係数を第1無機フィラー(異方形状を有する無機フィラー)の含有割合で調整しやすくなる。
【0066】
第2絶縁層20における無機フィラーの体積割合は、好ましくは10体積%以上、50体積%以下、より好ましくは20体積%以上、40体積%以下である。ここで、第2絶縁層20における無機フィラーの体積割合は、より具体的には、第2絶縁層20における第1無機フィラー及び第2無機フィラーの合計体積の割合、好ましくは、第2絶縁層20における、異方形状を有する無機フィラーと等方形状を有する無機フィラーとの合計体積の割合である。
【0067】
第2絶縁層20における無機フィラーの体積割合が上記範囲であることにより、第2絶縁層20の誘電率及び線膨張係数を所望の値に調整しやすくなるとともに、第2絶縁層20の機械的強度を確保できる。
【0068】
第2絶縁層20における無機フィラーの体積割合が10体積%未満である場合、第2絶縁層20を構成するフッ素樹脂、無機フィラー等の種類によっては、第2絶縁層20の誘電率及び線膨張係数が所望の値になりにくいことがある。
【0069】
第2絶縁層20における無機フィラーの体積割合が50体積%よりも大きい場合、第2絶縁層20の機械的強度が低下したり、第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が低下したりすることがある。このように第1絶縁層10と第2絶縁層20との接着性が低下することを防止する観点からも、上述したように、第2絶縁層20がポリイミド樹脂を含むことが重要である。
【0070】
第2絶縁層における無機フィラーの体積割合については、3次元解析装置を用いて求めてもよいし、下記のようにして求めてもよい。まず、配線基板から、剥離、掻き取り等の方法により第2絶縁層のみを取り出した後、第2絶縁層の体積を測定する。次に、第2絶縁層を、例えば、500℃以上、700℃以下で加熱することにより、第2絶縁層中の樹脂を焼き飛ばす。そして、焼き飛ばずに残った無機フィラーの体積を測定する。その後、100×「無機フィラーの体積」/「第2絶縁層の体積」を算出することにより、第2絶縁層における無機フィラーの体積割合を求める。
【0071】
第2絶縁層20の厚みT2(積層方向における長さ)は、好ましくは2μm以上、40μm以下である。
【0072】
第2絶縁層20の厚みT2は、第1絶縁層10の厚みT1と同じであってもよいし、第1絶縁層10の厚みT1よりも小さくてもよいし、第1絶縁層10の厚みT1よりも大きくてもよい。
【0073】
第1絶縁層10の厚みT1に対する第2絶縁層20の厚みT2の比T2/T1は、好ましくは0.04以上、4以下である。第1絶縁層10の厚みT1に対する第2絶縁層20の厚みT2の比T2/T1が0.04未満である場合、第2絶縁層20の厚みT2が第1絶縁層10の厚みT1よりも小さくなり過ぎるため、フッ素樹脂による低誘電特性が得られにくく、配線基板1の高周波領域における誘電特性が向上しにくい。一方、第1絶縁層10の厚みT1に対する第2絶縁層20の厚みT2の比T2/T1が4よりも大きい場合、第2絶縁層20の厚みT2が第1絶縁層10の厚みT1よりも大きくなり過ぎるため、配線基板1の寸法精度が低下しやすい。
【0074】
導体層30は、図1に示すように、第2絶縁層20に接していることが好ましい。この場合、第2絶縁層20は、第1絶縁層10と導体層30とを接着する接着層として機能する。
【0075】
第2絶縁層20と導体層30との間には、例えば、別の絶縁層が介在していてもよい。
【0076】
導体層30は、一面に広がった面状であってもよいし、配線等にパターン化されたパターン形状であってもよい。
【0077】
導体層30の構成材料としては、例えば、銅、銀、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、金、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0078】
導体層30は、例えば、導体箔からなり、導体箔の中でも銅箔からなることが好ましい。銅箔の表面には、銅以外の金属がめっきされていてもよい。
【0079】
導体層30の厚みT3(積層方向における長さ)は、好ましくは1μm以上、35μm以下、より好ましくは6μm以上、18μm以下である。
【0080】
配線基板1は、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)として利用される。
【0081】
配線基板1は、例えば、以下の方法で製造される。
【0082】
<第1絶縁シートの準備工程>
液晶ポリマーを主成分として含む、板状又はフィルム状の第1絶縁シートを準備する。
【0083】
第1絶縁シートは、後に、第1絶縁層10となるものである。
【0084】
<第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程>
ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンの少なくとも一方からなるフッ素樹脂と、イミド化率が90%以上であるポリイミド樹脂とを、フッ素樹脂100重量部に対してポリイミド樹脂が0.5重量部以上、20重量部未満となるように混合する。これにより、第2絶縁シート用樹脂材料を作製する。
【0085】
<第2絶縁シートの形成工程>
第2絶縁シート用樹脂材料を、押出成形法、加圧成形法等の方法で成形することにより、板状又はフィルム状の第2絶縁シートを形成する。
【0086】
第2絶縁シートは、後に、第2絶縁層20となるものである。
【0087】
<第1導体の準備工程>
銅箔等の第1導体を準備する。第1導体は、後に、導体層30となるものである。
【0088】
<第1絶縁シート、第2絶縁シート、及び、第1導体の積層・熱圧着工程>
第1絶縁シートと、第2絶縁シートと、第1導体とを、積層方向に順に積層した後、熱圧着する。これにより、第1絶縁シート、第2絶縁シート、及び、第1導体は、各々、第1絶縁層10、第2絶縁層20、及び、導体層30となる。
【0089】
以上により、配線基板1が製造される。
【0090】
本発明の配線基板は、多層配線基板を構成できる。
【0091】
図2は、本発明の多層配線基板の一例を示す斜視模式図である。図3は、図2中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。図4は、図2中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図である。
【0092】
図2図3、及び、図4に示すように、多層配線基板101は、第1絶縁層10と、第2絶縁層20と、第3絶縁層25と、導体層30と、実装電極40と、実装電極41と、グランド導体層50と、グランド導体層60と、層間接続導体70と、層間接続導体71と、層間接続導体72と、層間接続導体73と、を有している。
【0093】
第1絶縁層10と、第2絶縁層20と、導体層30とは、積層方向(図2図3、及び、図4では、Z方向)に順に積層しており、配線基板1を構成している。つまり、多層配線基板101は配線基板1を有している、と言える。
【0094】
導体層30は、第2絶縁層20と第3絶縁層25との間に設けられている。導体層30は、図3及び図4に示すように、第2絶縁層20と第3絶縁層25との境界にまたがって設けられていることが好ましい。これにより、導体層30と第2絶縁層20との界面、及び、導体層30と第3絶縁層25との界面が、第2絶縁層20と第3絶縁層25との界面から積層方向にずれるため、導体層30と第2絶縁層20との界面での剥離、及び、導体層30と第3絶縁層25との界面での剥離が抑制される。
【0095】
第3絶縁層25は、配線基板1の一方の表面上に、第2絶縁層20及び導体層30の両方に接するように設けられている。
【0096】
第3絶縁層25は、例えば、熱可塑性樹脂を含んでいる。第3絶縁層25は、熱可塑性樹脂の中でも液晶ポリマーを主成分として含むことが好ましい。
【0097】
実装電極40及び実装電極41は、配線基板1の他方の表面上で互いに離隔した位置に、第1絶縁層10に接するように設けられている。
【0098】
実装電極40及び実装電極41の構成材料としては、例えば、銅、銀、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、金、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0099】
実装電極40及び実装電極41は、例えば、導体箔からなり、導体箔の中でも銅箔からなることが好ましい。銅箔の表面には、銅以外の金属がめっきされていてもよい。
【0100】
実装電極40及び実装電極41の構成材料は、互いに同じであることが好ましいが、互いに異なっていてもよい。
【0101】
グランド導体層50は、配線基板1の他方の表面上で、実装電極40及び実装電極41と離隔した位置に、第1絶縁層10に接するように設けられている。
【0102】
グランド導体層50の構成材料としては、例えば、銅、銀、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、金、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0103】
グランド導体層50は、例えば、導体箔からなり、導体箔の中でも銅箔からなることが好ましい。銅箔の表面には、銅以外の金属がめっきされていてもよい。
【0104】
グランド導体層60は、第3絶縁層25における配線基板1と反対側の表面上に設けられている。
【0105】
グランド導体層60の構成材料としては、例えば、銅、銀、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、金、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0106】
グランド導体層60は、例えば、導体箔からなり、導体箔の中でも銅箔からなることが好ましい。銅箔の表面には、銅以外の金属がめっきされていてもよい。
【0107】
層間接続導体70は、第1絶縁層10及び第2絶縁層20を積層方向に貫通するように設けられている。これにより、層間接続導体70は、導体層30と実装電極40とを電気的に接続している。
【0108】
層間接続導体71は、層間接続導体70と離隔した位置で、第1絶縁層10及び第2絶縁層20を積層方向に貫通するように設けられている。これにより、層間接続導体71は、導体層30と実装電極41とを電気的に接続している。
【0109】
層間接続導体70及び層間接続導体71は、各々、例えば、第1絶縁層10及び第2絶縁層20を貫通するように設けられたビアホールに対して、内壁にめっき処理を行ったり、導電性ペーストを充填した後に熱処理を行ったりすることにより形成される。
【0110】
層間接続導体72は、第1絶縁層10、第2絶縁層20、及び、第3絶縁層25を積層方向に貫通するように設けられている。これにより、層間接続導体72は、グランド導体層50とグランド導体層60とを電気的に接続している。
【0111】
層間接続導体73は、層間接続導体72と離隔した位置で、第1絶縁層10、第2絶縁層20、及び、第3絶縁層25を積層方向に貫通するように設けられている。これにより、層間接続導体73は、グランド導体層50とグランド導体層60とを電気的に接続している。
【0112】
層間接続導体72及び層間接続導体73は、各々、例えば、第1絶縁層10、第2絶縁層20、及び、第3絶縁層25を貫通するように設けられたビアホールに対して、内壁にめっき処理を行ったり、導電性ペーストを充填した後に熱処理を行ったりすることにより形成される。
【0113】
層間接続導体70、層間接続導体71、層間接続導体72、及び、層間接続導体73がめっき処理で形成される場合、各層間接続導体を構成する金属としては、例えば、銅、錫、銀等が挙げられ、中でも銅が好ましい。
【0114】
層間接続導体70、層間接続導体71、層間接続導体72、及び、層間接続導体73が導電性ペーストの熱処理で形成される場合、各層間接続導体に含まれる金属としては、例えば、銅、錫、銀等が挙げられる。中でも、各層間接続導体は、銅を含むことが好ましく、銅及び錫を含むことがより好ましい。銅及び錫を含む層間接続導体は、銅箔等の導体層と低温で合金化反応を起こすため、両者が導通しやすくなる。
【0115】
層間接続導体70、層間接続導体71、層間接続導体72、及び、層間接続導体73が導電性ペーストの熱処理で形成される場合、各層間接続導体に含まれる樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂若しくはその変性樹脂、及び、アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂、又は、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び、セルロース系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0116】
層間接続導体70、層間接続導体71、層間接続導体72、及び、層間接続導体73の構成材料は、互いに同じであることが好ましいが、互いに異なっていてもよい。
【0117】
多層配線基板101は、配線基板1を1つのみ有しているが、配線基板1を複数有していてもよい。つまり、多層配線基板101は、配線基板1を少なくとも1つ有していればよい。多層配線基板101が配線基板1を複数有する場合、複数の配線基板1は、積層方向に連続して積層されていてもよいし、別の絶縁層が介在するように積層方向に積層されていてもよい。
【0118】
多層配線基板101は、高周波信号を伝送する信号線を導体層30として有し、かつ、高周波伝送線路を構成することが好ましい。この場合、多層配線基板101は、ストリップライン型の高周波伝送線路を構成することになる。
【0119】
導体層30が高周波信号を伝送する信号線である場合、導体層30、すなわち、信号線は、図3及び図4に示すように、第2絶縁層20に接していることが好ましい。第2絶縁層20に含まれるフッ素樹脂は、液晶ポリマーよりも高周波領域における誘電特性に優れるポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンの少なくとも一方からなるため、信号線が第2絶縁層20に接していることにより、多層配線基板101の高周波領域における誘電特性が向上しやすくなる。
【0120】
多層配線基板101の表面には、実装電極40等の各実装電極、グランド導体層50、及び、グランド導体層60が露出するように、保護膜が設けられていることが好ましい。
【0121】
多層配線基板101は、実装電極40等の各実装電極に接合されたコネクタを介して、基板に実装されてもよい。この場合、多層配線基板101を基板から離して実装できるため、他の部品が基板に予め実装された状態であっても、多層配線基板101を基板に実装しやすい。
【0122】
多層配線基板101は、実装電極40等の各実装電極上に設けられたはんだを介して、基板に実装されてもよい。この場合、多層配線基板101を基板に近づけて実装できるため、上述したようなコネクタを介して実装する場合と比較して、低背化しやすい。
【0123】
多層配線基板101を構成する第1絶縁層10、第2絶縁層20、及び、第3絶縁層25は、各々、熱可塑性樹脂を含んでいるため、多層配線基板101は、加熱により折り曲げやすくなる。そのため、多層配線基板101は、通信機器等の小型の電子機器にも設置されやすい。例えば、多層配線基板101は、小型の電子機器の他の部品、基板等の配置に沿った形状に予め形成可能であり、これらの隙間に設置されやすい。
【0124】
多層配線基板101は、例えば、以下の方法で製造される。なお、以下では、図2に示した多層配線基板101の製造方法について、図4に示した断面が形成される過程を図示しつつ説明するが、他の断面が形成される過程も同様である。
【0125】
<第1導体付き絶縁シートの作製工程>
図5は、図2に示した多層配線基板の製造方法について、第1導体付き絶縁シートの作製工程の一例を示す断面模式図である。
【0126】
図5に示すように、第1絶縁シート110A及び第2絶縁シート120の積層体に対して、第2絶縁シート120側の表面上に、第1導体130を形成する。これにより、第1導体付き絶縁シート191を作製する。
【0127】
第1導体130の形成方法としては、例えば、銅箔等の導体箔を、第1絶縁シート110A及び第2絶縁シート120の積層体に対して、第2絶縁シート120側の表面に貼り付ける方法等が挙げられる。
【0128】
第1絶縁シート110Aは、後に、第1絶縁層10の一部となるものである。
【0129】
第1絶縁シート110Aは、板状又はフィルム状である。
【0130】
第1絶縁シート110Aは、液晶ポリマーを主成分として含んでいる。
【0131】
第2絶縁シート120は、後に、第2絶縁層20となるものである。
【0132】
第2絶縁シート120は、板状又はフィルム状である。
【0133】
第2絶縁シート120は、ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンの少なくとも一方からなるフッ素樹脂と、イミド化率が90%以上であるポリイミド樹脂とを含み、かつ、フッ素樹脂100重量部に対して、ポリイミド樹脂を0.5重量部以上、20重量部未満含んでいる。
【0134】
第1導体130は、後に、導体層30となるものである。
【0135】
第1導体130の構成材料としては、例えば、銅、銀、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、金、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0136】
第1導体130は、例えば、導体箔からなり、導体箔の中でも銅箔からなることが好ましい。銅箔の表面には、銅以外の金属がめっきされていてもよい。
【0137】
第1導体付き絶縁シート191では、一方の表面に第1導体130が形成されているが、他方の表面にも導体が形成されていてもよい。
【0138】
<第1導体のパターニング工程>
図6は、図2に示した多層配線基板の製造方法について、第1導体のパターニング工程の一例を示す断面模式図である。
【0139】
図6に示すように、第1導体付き絶縁シート191に対して、フォトリソグラフィ法等により第1導体130のパターニングを行う。
【0140】
本工程では、図6に示していないが、第1導体130の一部を露出させる位置等に、レーザー照射等によりビアホールを形成した後、導電性ペーストを、スクリーン印刷法等でこれらのビアホールに充填する。これらの充填された導電性ペーストは、後に、層間接続導体70等の各層間接続導体の一部となるものである。
【0141】
<第2導体付き絶縁シートの作製工程>
図7は、図2に示した多層配線基板の製造方法について、第2導体付き絶縁シートの作製工程の一例を示す断面模式図である。
【0142】
図7に示すように、第1絶縁シート110Bの表面上に、第2導体150を形成する。これにより、第2導体付き絶縁シート192を形成する。
【0143】
第2導体150の形成方法としては、例えば、銅箔等の導体箔を、第1絶縁シート110Bの表面に貼り付ける方法等が挙げられる。
【0144】
第1絶縁シート110Bは、後に、第1絶縁層10の一部となるものである。
【0145】
第1絶縁シート110Bは、板状又はフィルム状である。
【0146】
第1絶縁シート110Bは、液晶ポリマーを主成分として含んでいる。
【0147】
第2導体150は、後に、グランド導体層50となるものである。
【0148】
第2導体150の構成材料としては、例えば、銅、銀、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、金、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0149】
第2導体150は、例えば、導体箔からなり、導体箔の中でも銅箔からなることが好ましい。銅箔の表面には、銅以外の金属がめっきされていてもよい。
【0150】
本工程では、図7に示していないが、第2導体150に対してフォトリソグラフィ法等によるパターニングを行うことにより、第1絶縁シート110Bの表面上に、第2導体150と別に、後に実装電極40等の各実装電極となる導体を形成する。また、後のグランド導体層の一部及び各実装電極の一部を露出させる位置等に、レーザー照射等によりビアホールを形成した後、導電性ペーストを、スクリーン印刷法等でこれらのビアホールに充填する。これらの充填された導電性ペーストは、後に、層間接続導体70等の各層間接続導体の一部となるものである。
【0151】
第2導体付き絶縁シート192は、第2絶縁シート120を有していないが、第1絶縁シート110Bと第2導体150との間に第2絶縁シート120を有していてもよい。また、第2導体付き絶縁シート192では、一方の表面に第2導体150が形成されているが、他方の表面にも導体が形成されていてもよい。
【0152】
<第3導体付き絶縁シートの作製工程>
図8は、図2に示した多層配線基板の製造方法について、第3導体付き絶縁シートの作製工程の一例を示す断面模式図である。
【0153】
図8に示すように、第3絶縁シート125の表面上に、第3導体160を形成する。これにより、第3導体付き絶縁シート193を形成する。
【0154】
第3導体160の形成方法としては、例えば、銅箔等の導体箔を、第3絶縁シート125の表面に貼り付ける方法等が挙げられる。
【0155】
第3絶縁シート125は、後に、第3絶縁層25となるものである。
【0156】
第3絶縁シート125は、板状又はフィルム状である。
【0157】
第3絶縁シート125は、例えば、熱可塑性樹脂を含んでいる。第3絶縁シート125は、熱可塑性樹脂の中でも液晶ポリマーを主成分として含むことが好ましい。
【0158】
第3導体160は、後に、グランド導体層60となるものである。
【0159】
第3導体160の構成材料としては、例えば、銅、銀、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、金、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0160】
第3導体160は、例えば、導体箔からなり、導体箔の中でも銅箔からなることが好ましい。銅箔の表面には、銅以外の金属がめっきされていてもよい。
【0161】
本工程では、図8に示していないが、第3導体160の一部を露出させる位置等に、レーザー照射等によりビアホールを形成した後、導電性ペーストを、スクリーン印刷法等でこれらのビアホールに充填する。これらの充填された導電性ペーストは、後に、層間接続導体72等の各層間接続導体の一部となるものである。
【0162】
第3導体付き絶縁シート193は、第2絶縁シート120を有していないが、第3絶縁シート125と第3導体160との間に第2絶縁シート120を有していてもよい。また、第3導体付き絶縁シート193では、一方の表面に第3導体160が形成されているが、他方の表面にも導体が形成されていてもよい。
【0163】
<第1導体付き絶縁シート、第2導体付き絶縁シート、及び、第3導体付き絶縁シートの積層・熱圧着工程>
図9は、図2に示した多層配線基板の製造方法について、第1導体付き絶縁シート、第2導体付き絶縁シート、及び、第3導体付き絶縁シートの積層・熱圧着工程の一例を示す断面模式図である。
【0164】
図9に示すように、第2導体付き絶縁シート192と、第1導体付き絶縁シート191と、第3導体付き絶縁シート193とを、積層方向に順に積層した後、熱圧着する。この際、第1導体付き絶縁シート191の第1絶縁シート110Aと、第2導体付き絶縁シート192の第1絶縁シート110Bとが接触するように、かつ、第1導体付き絶縁シート191の第2絶縁シート120及び第1導体130の両方と、第3導体付き絶縁シート193の第3絶縁シート125とが接触するように、熱圧着を行う。
【0165】
本工程により、第1絶縁シート110A及び第1絶縁シート110Bは、一体化して第1絶縁層10となる。また、第2絶縁シート120、第3絶縁シート125、第1導体130、第2導体150、及び、第3導体160は、各々、第2絶縁層20、第3絶縁層25、導体層30、グランド導体層50、及び、グランド導体層60となる。また、第1絶縁シート110Bの表面上に第2導体150と別に形成された導体は、実装電極40等の各実装電極となる。更に、ビアホールに充填された導電性ペーストは、熱圧着時に固化することで、層間接続導体70等の各層間接続導体となり、導体層30、実装電極40等に接続されることになる。
【0166】
以上により、図2図3、及び、図4に示した多層配線基板101が製造される。
【0167】
本発明の配線基板は、上述したように、パッチアンテナ等のアンテナ基板にも利用される。
【0168】
図10は、本発明の配線基板をアンテナ基板に利用した例を示す断面模式図である。図11は、図10に示すアンテナ基板を上面視した状態を示す平面模式図である。図12は、図10に示すアンテナ基板を下面視した状態を示す平面模式図である。
【0169】
図10図11図12に示すように、アンテナ基板201は、第1絶縁層10と、第2絶縁層20と、導体層30としての放射電極230と、給電電極240と、グランド電極250と、層間接続導体270と、を有している。
【0170】
第1絶縁層10と、第2絶縁層20と、導体層30としての放射電極230とは、積層方向(図10では、Z方向)に順に積層しており、配線基板1を構成している。つまり、アンテナ基板201は配線基板1を有している、と言える。
【0171】
放射電極230は、第2絶縁層20に接している。このように放射電極230が第2絶縁層20に接している構成において、第2絶縁層20が上述したアルカリ土類金属を含むペロブスカイト型化合物等を無機フィラー(第2無機フィラー)として含むことで誘電率が大きなものになっていると、放射電極230の長さを小さくすることができるため、アンテナ基板201を小型化できる。
【0172】
放射電極230は、第2絶縁層20における第1絶縁層10と反対側の表面上において、図10及び図11に示すように一部のみに設けられていてもよいし、全面に設けられていてもよい。
【0173】
給電電極240は、第1絶縁層10における第2絶縁層20と反対側の表面上に設けられている。また、給電電極240は、放射電極230と積層方向に対向している。
【0174】
給電電極240は、第2絶縁層20における第1絶縁層10と反対側の表面上で、放射電極230と離隔した位置に設けられていてもよい。この場合、放射電極230と給電電極240とは、直に接続されていてもよいし、第2絶縁層20における第1絶縁層10と反対側の表面上に設けられた配線を介して電気的に接続されていてもよい。また、放射電極230と給電電極240とは、各々、第2絶縁層20を貫通するように互いに離隔した位置に設けられた異なる層間接続導体に接続されており、放射電極230に接続された層間接続導体と、給電電極240に接続された層間接続導体とが、第1絶縁層10と第2絶縁層20との間に設けられた内部配線を介して電気的に接続されていてもよい。
【0175】
グランド電極250は、第1絶縁層10における第2絶縁層20と反対側の表面上で、給電電極240と離隔した位置に設けられている。また、グランド電極250は、放射電極230と積層方向に対向している。
【0176】
グランド電極250は、第1絶縁層10における第2絶縁層20と反対側の表面上において、図10及び図12に示すように一部のみに設けられていてもよいし、給電電極240が第1絶縁層10における第2絶縁層20と反対側の表面上に設けられていない場合は、全面に設けられていてもよい。
【0177】
層間接続導体270は、第1絶縁層10及び第2絶縁層20を積層方向に貫通するように設けられている。これにより、層間接続導体270は、放射電極230と給電電極240とを電気的に接続している。
【0178】
アンテナ基板201は、図10及び図11に示すように、保護層280Aを更に有していてもよい。
【0179】
保護層280Aは、第2絶縁層20における第1絶縁層10と反対側の表面で、放射電極230を覆うように設けられている。より具体的には、保護層280Aは、第2絶縁層20における第1絶縁層10と反対側の表面のうちで放射電極230が設けられていない領域と、放射電極230とを覆うように設けられている。
【0180】
保護層280Aが、第2絶縁層20における第1絶縁層10と反対側の表面のうちで放射電極230が設けられていない領域を覆うことにより、第1絶縁層10及び第2絶縁層20の内部に外部から水分等が浸入することを抑制できる。
【0181】
保護層280Aが放射電極230を覆うことにより、放射電極230の表面を保護できるとともに、放射電極230が第2絶縁層20における第1絶縁層10と反対側の表面から剥離することを抑制できる。
【0182】
アンテナ基板201は、図10及び図12に示すように、保護層280Bを更に有していてもよい。
【0183】
保護層280Bは、第1絶縁層10における第2絶縁層20と反対側の表面で、給電電極240及びグランド電極250を覆うように設けられている。
【0184】
保護層280Bが給電電極240及びグランド電極250を覆うことにより、給電電極240及びグランド電極250の表面を保護できる。
【0185】
アンテナ基板201では、第1絶縁層10及び第2絶縁層20の側面を覆うように保護層が設けられてもよい。
【0186】
保護層280A及び保護層280Bの構成材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、酸化シリコン等が挙げられる。
【0187】
保護層280A及び保護層280Bの厚み(積層方向における長さ)は、各々、好ましくは1μm以上、20μm以下である。
【0188】
アンテナ基板201は、配線基板1を1つのみ有しているが、配線基板1を複数有していてもよい。つまり、アンテナ基板201は、配線基板1を少なくとも1つ有していればよい。アンテナ基板201が配線基板1を複数有する場合、複数の配線基板1は、積層方向に連続して積層されていてもよいし、別の絶縁層が介在するように積層方向に積層されていてもよい。
【実施例
【0189】
以下、本発明の配線基板をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0190】
[実施例1]
実施例1の配線基板を、以下の方法で製造した。
【0191】
<第1絶縁シートの準備工程>
液晶ポリマーであるII型の全芳香族ポリエステルを主成分として含む第1絶縁シートを準備した。
【0192】
<第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程>
パーフルオロアルコキシアルカン100重量部に対して、ピーアイ技術研究所社製の溶媒可溶型ポリイミド樹脂「Q-AD-X0516」(イミド化率:90%以上)を3重量部混合することにより、第2絶縁シート用樹脂材料を作製した。
【0193】
<第2絶縁シートの形成工程>
第2絶縁シート用樹脂材料を成形することにより、第2絶縁シートを形成した。成形時の加熱温度については、350℃とした。
【0194】
<第1導体の準備工程>
第1導体として、銅箔を準備した。
【0195】
<第1絶縁シート、第2絶縁シート、及び、第1導体の積層・熱圧着工程>
第1絶縁シートと、第2絶縁シートと、第1導体とを、積層方向に順に積層した後、真空プレス機を用いて、260℃で3MPaの圧力を5分間加えることにより熱圧着した。これにより、第1絶縁シート、第2絶縁シート、及び、第1導体は、各々、厚みが50μmの第1絶縁層、厚みが5μmの第2絶縁層、及び、厚みが12μmの導体層となった。
【0196】
以上により、実施例1の配線基板を製造した。
【0197】
[実施例2]
第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程において、パーフルオロアルコキシアルカン100重量部に対して、三菱ガス化学社製の溶媒可溶型ポリイミド樹脂「P200」(イミド化率:90%以上)を1重量部混合したこと、及び、第2絶縁シートの形成工程において、成形時の加熱温度を380℃としたこと以外、実施例1の配線基板と同様にして、実施例2の配線基板を製造した。
【0198】
[実施例3]
第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程において、パーフルオロアルコキシアルカン100重量部に対して、三菱ガス化学社製の溶媒可溶型ポリイミド樹脂「P200」を2重量部混合したこと以外、実施例2の配線基板と同様にして、実施例3の配線基板を製造した。
【0199】
[実施例4]
第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程において、パーフルオロアルコキシアルカン100重量部に対して、三菱ガス化学社製の溶媒可溶型ポリイミド樹脂「S100」(イミド化率:90%以上)を1重量部混合したこと以外、実施例2の配線基板と同様にして、実施例4の配線基板を製造した。
【0200】
[実施例5]
第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程において、パーフルオロアルコキシアルカン100重量部に対して、荒川化学工業社製の溶媒可溶型ポリイミド樹脂「PIAD(登録商標)200」(イミド化率:90%以上)を1重量部混合したこと以外、実施例2の配線基板と同様にして、実施例5の配線基板を製造した。
【0201】
[実施例6]
第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程において、パーフルオロアルコキシアルカン100重量部に対して、荒川化学工業社製の溶媒可溶型ポリイミド樹脂「PIAD200」を2重量部混合したこと、及び、得られる第2絶縁層の厚みを12μmとしたこと以外、実施例5の配線基板と同様にして、実施例6の配線基板を製造した。
【0202】
[実施例7]
第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程において、パーフルオロアルコキシアルカン100重量部に対して、荒川化学工業社製の溶媒可溶型ポリイミド樹脂「PIAD200」を19重量部混合したこと、及び、得られる第2絶縁層の厚みを13μmとしたこと以外、実施例5の配線基板と同様にして、実施例7の配線基板を製造した。
【0203】
[比較例1]
第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程において、ポリイミド樹脂を混合しなかった、つまり、パーフルオロアルコキシアルカンのみを用いたこと以外、実施例1の配線基板と同様にして、比較例1の配線基板を製造した。
【0204】
[比較例2]
第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程において、パーフルオロアルコキシアルカン100重量部に対して、宇部興産社製のポリイミド前駆体(ポリアミック酸)「ユピア(登録商標)」(イミド化率:90%未満)を1重量部混合したこと以外、実施例2の配線基板と同様にして、比較例2の配線基板を製造した。
【0205】
[比較例3]
第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程において、パーフルオロアルコキシアルカン100重量部に対して、荒川化学工業社製の溶媒可溶型ポリイミド樹脂「PIAD200」を30重量部混合したこと、及び、得られる第2絶縁層の厚みを11μmとしたこと以外、実施例5の配線基板と同様にして、比較例3の配線基板を製造した。
【0206】
[比較例4]
第2絶縁シート用樹脂材料の作製工程において、パーフルオロアルコキシアルカン100重量部に対して、荒川化学工業社製の溶媒可溶型ポリイミド樹脂「PIAD200」を40重量部混合したこと、及び、得られる第2絶縁層の厚みを15μmとしたこと以外、実施例5の配線基板と同様にして、比較例4の配線基板を製造した。
【0207】
[評価]
実施例1~7、及び、比較例1~4の配線基板について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0208】
<接着性>
各例の配線基板に対して、第1絶縁層を第2絶縁層から引き剥がすこと以外、JIS C 6471に準拠して、180°剥離試験及び90°剥離試験を行うことにより、第1絶縁層と第2絶縁層との180°剥離強度及び90°剥離強度を測定した。各剥離試験については、配線基板の連続製造時の長さ方向(表1では、MD(Machine Direction)と示す)と、配線基板の連続製造時の幅方向(表1では、TD(Transverse Direction)と示す)との両方向において、吸湿試験前後で行った。吸湿試験としては、プレッシャークッカー試験を121℃、2atm、100%RHの条件で1時間行った。
【0209】
<誘電特性>
各例の配線基板を、80℃で30分間乾燥させて、これを乾燥後の状態とした。次に、各例の配線基板を、JIS C 6481に準拠して、23℃の水中に24時間浸漬することで吸湿させて、これを吸湿後の状態とした。そして、各例の配線基板について、乾燥後及び吸湿後の両方の状態において、共振器振動法(TE011モード)を用いて、3GHzでの比誘電率及び誘電正接を測定した。
【0210】
<膨れ>
各例の配線基板に対して、吸湿試験として、プレッシャークッカー試験を121℃、2atm、100%RHの条件で30分間行った後、JIS C 5012に準拠してはんだフロート試験を行った。そして、各例の配線基板について、膨れが見られなかった場合を○(良)、膨れが見られた場合を×(不良)として評価した。
【0211】
【表1】
【0212】
表1に示すように、第2絶縁層がポリイミド樹脂を含んでいる実施例1~7の配線基板では、吸湿試験前後の状態において、剥離強度が高く維持されていた。つまり、実施例1~7の配線基板では、吸湿前後の状態において、第1絶縁層と第2絶縁層との接着性が優れていた。
【0213】
実施例1~7の配線基板では、第2絶縁層がポリイミド樹脂を含んでいない比較例1の配線基板よりも、吸湿試験前及び吸湿試験後の両方の状態における剥離強度が高かった。また、実施例1~7の配線基板では、第2絶縁層に含まれるポリイミド樹脂のイミド化率が90%未満である比較例2の配線基板よりも、吸湿試験後の状態における剥離強度が高かった。
【0214】
実施例1~7の配線基板では、第2絶縁層がフッ素樹脂に加えてポリイミド樹脂を含んでいるにもかかわらず、乾燥後及び吸湿後の両方の状態において、比誘電率及び誘電正接で示される誘電特性が、比較例1の配線基板と大差なく、良好であった。つまり、実施例1~7の配線基板では、吸湿前後の状態において、誘電特性が維持されていた。
【0215】
なお、実施例1~7の配線基板では、吸湿による膨れが見られなかった。一方、第2絶縁層がフッ素樹脂100重量部に対してポリイミド樹脂を20重量部以上含む比較例3及び4の配線基板では、吸湿による膨れが見られた。
【符号の説明】
【0216】
1 配線基板
10 第1絶縁層
20 第2絶縁層
25 第3絶縁層
30 導体層
40、41 実装電極
250 グランド電極
50、60 グランド導体層
70、71、72、73、270 層間接続導体
101 多層配線基板
110A、110B 第1絶縁シート
120 第2絶縁シート
125 第3絶縁シート
130 第1導体
150 第2導体
160 第3導体
191 第1導体付き絶縁シート
192 第2導体付き絶縁シート
193 第3導体付き絶縁シート
201 アンテナ基板
230 放射電極
240 給電電極
280A、280B 保護層
T1 第1絶縁層の厚み
T2 第2絶縁層の厚み
T3 導体層の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12