(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】流体制御装置
(51)【国際特許分類】
F04B 45/04 20060101AFI20231226BHJP
F04B 45/047 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F04B45/04 B
F04B45/047 C
(21)【出願番号】P 2022553526
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2021029966
(87)【国際公開番号】W WO2022070637
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2020164524
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸拓
(72)【発明者】
【氏名】川端 友徳
(72)【発明者】
【氏名】阿知波 寛基
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038565(WO,A1)
【文献】特開2016-200067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 45/04
F04B 45/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体搬送素子と、前記流体搬送素子を内包する外筐体と、前記流体搬送素子を前記外筐体に固定する支持部材と、を備え、
前記流体搬送素子は、流体の吸入孔を有する第1平板と、前記流体の吐出孔を有する第2平板と、圧電素子と、を備え、
前記外筐体は、
前記流体搬送素子および前記支持部材によって区切られる第1内部空間および第2内部空間を有し、
前記第1平板側になる前記第1内部空間を形成し、前記第1内部空間と外空間とを連通する第1貫通孔を有する第1外壁と、
前記第2平板側になる前記第2内部空間を形成し、前記第2内部空間と外空間とを連通する第2貫通孔を有する第2外壁と、を備え、
前記第2外壁は、
前記第2平板に対向する主面を有する第2外壁主板と、前記第2外壁主板に接続する第2側板とを備え、
前記第2外壁主板は、該第2外壁主板の主面に直交する方向から平面視して、前記吐出孔に重なる部分を有し、
前記第2外壁主板における前記吐出孔に重なる部分の熱伝導性は、前記第1外壁の熱伝導性よりも高い、
流体制御装置。
【請求項2】
前記第1外壁は、樹脂であり、
前記第2外壁主板において前記第2外壁主板の主面に直交する方向から平面視して前記吐出孔に重なる部分の前記第
2内部空間に面する面は、金属である、請求項1に記載の流体制御装置。
【請求項3】
前記第2外壁主板における前記吐出孔に重なる部分は、金属である、
請求項2に記載の流体制御装置。
【請求項4】
前記第2外壁主板は、金属である、
請求項3に記載の流体制御装置。
【請求項5】
前記第2貫通孔は、前記第2側板に形成されている、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項6】
前記第1外壁は、平面視において前記吸入孔に重なる部分を有する第1外壁主板と、前記第1外壁主板に接続する第1側板と、を備え、
前記第2外壁主板において前記第2外壁主板の主面に直交する方向から平面視して前記吐出孔に重なる部分は、前記第2外壁主板の主面に直交する方向から平面視して前記第1外壁主板における前記吸入孔に重なる部分よりも薄い、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプと、ポンプを内包する筐体と、を備える流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプ部、バルブ部、および、外筐体を備える圧電ブロアが記載されている。ポンプ部とバルブ部とは連通する。ポンプ部とバルブ部とから構成される部分は、外筐体内に配置される。ポンプ部とバルブ部とから構成される構造体は、外筐体に固定されている。
【0003】
ポンプ部とバルブ部とから構成される構造体は、外筐体の内部空間を、ポンプ側の空間とバルブ側の空間とに分ける。外筐体には、ポンプ側の空間と外部空間とを連通する貫通孔、および、バルブ側の空間と外部空間とを連通する貫通孔が形成されている。
【0004】
ポンプ部は、圧電素子を備える。圧電素子に駆動電圧信号を印加することで、ポンプ部は、流体を搬送する。バルブ部は、流体が所定方向に搬送されるように制御する。
【0005】
この構成では、流体は、外筐体の外部から、外筐体の内部空間におけるポンプ側の空間を介してポンプ部に吸入される。ポンプ部から吐出された流体は、バルブ部、外筐体の内部空間におけるバルブ側の空間を介して、外筐体の外部に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示すような従来の構成では、駆動を続けていると、ポンプ部(ポンプ室)や外筐体の内部空間の温度が高くなる。
【0008】
また、ポンプ部で昇温された流体が流入することで、外筐体の内部空間におけるバルブ側の空間の温度は高くなる。このため、バルブ側の空間とポンプ側の空間の温度差が大きくなり、温度差による応力が外筐体に加わり、例えば、外筐体の歪みが生じる易くなる。
【0009】
このように、従来の構成では、圧電素子やポンプ部が高温になり、また、外筐体に温度差によるストレスが加わるため、流体制御装置としての特性が劣化し易くなってしまう。
【0010】
したがって、本発明の目的は、特性の劣化を抑制できる流体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の流体制御装置は、流体搬送素子と、流体搬送素子を内包する外筐体と、流体搬送素子を外筐体に固定する支持部材とを備える。流体搬送素子は、流体の吸入孔を有する第1平板と、流体の吐出孔を有する第2平板と、流体を吸入孔から吐出孔へ搬送するための圧電素子と、を備える。外筐体は、流体搬送素子および支持部材によって区切られる第1内部空間および第2内部空間を有する。外筐体は、第1平板側になる第1内部空間を形成し、第1内部空間と外空間とを連通する第1貫通孔を有する第1外壁と、第2平板側になる第2内部空間を形成し、第2内部空間と外空間とを連通する第2貫通孔する第2外壁と、を備える。第2外壁は、第2平板に対向する主面を有する第2外壁主板と、第2外壁主板に接続する第2側板とを備える。第2外壁主板は、該第2外壁主板の主面に直交する方向から平面視して、吐出孔に重なる部分を有する。第2外壁主板における吐出孔に重なる部分の熱伝導性は、第1外壁の熱伝導性よりも高い。
【0012】
この構成では、第2内部空間の流体は、第1内部空間の流体よりも放熱され易い。これにより、第2内部空間に流入する流体が放熱されるとともに、第2内部空間に流入する流体の温度と第1内部空間の流体の温度との温度差が小さくなる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、流体制御装置としての特性劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る流体制御装置10の構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、第1の実施形態に係る流体制御装置10の構成の一例を示す側面断面図であり、
図2(B)は、第1の実施形態に係る流体制御装置10の放熱状態を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、比較構成の流体制御装置と本発明の第1の実施形態に係る構成の流体制御装置10における圧電素子側の内部空間の温度差の時間変化を示すグラフである。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係る流体制御装置10Aの構成の一例を示す側面断面図である。
【
図5】
図5は、第3の実施形態に係る流体制御装置10Bの構成の一例を示す側面断面図である。
【
図6】
図6(A)、
図6(B)は、第4の実施形態に係る流体制御装置10C1、10C2の構成の一例を示す側面断面図である。
【
図7】
図7は、第5の実施形態に係る流体制御装置10Dの構成の一例を示す側面断面図である。
【
図8】
図8は、第6の実施形態に係る流体制御装置10Eの構成の一例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る流体制御装置10の構成の一例を示す分解斜視図である。
図2(A)は、第1の実施形態に係る流体制御装置10の構成の一例を示す側面断面図であり、
図2(B)は、第1の実施形態に係る流体制御装置10の放熱状態を概略的に示す図である。本実施形態を含む各実施形態の各図では、流体制御装置10の構成を分かり易くするため、それぞれの構成要素の形状を部分的または全体として誇張して記載している。
【0016】
図1、
図2(A)に示すように、流体制御装置10は、ポンプ20、外筐体40、および、バルブ60を備える。概略的に、ポンプ20とバルブ60からなる流体搬送素子は、外筐体40に内包されている。
【0017】
(流体搬送素子の構成)
(A)ポンプ20の構成
ポンプ20は、平板21、平板22、ポンプ用枠体23、および、圧電素子30を備える。
【0018】
平板21は、円板である。平板21は、金属板等からなる。平板21には、貫通孔TH21が形成される。貫通孔TH21は、円筒形であり、平板21を厚み方向に貫通する。貫通孔TH21は、平板21における中心付近に形成される。
【0019】
圧電素子30は、平板21の一方主面に配置される。圧電素子30は、円板であり、平面視した形状が平板21より小さい。平面視において、圧電素子30の中心と、平板21の中心とは、ほぼ一致する。圧電素子30は、例えば、平板の圧電体と当該圧電体の両主面に形成された電極パターンとによって実現される。圧電素子30には、貫通孔TH21が形成される。圧電素子30の貫通孔TH21と平板21の貫通孔TH21とは連通する。言い換えれば、貫通孔TH21は、圧電素子30と平板21とを厚み方向に貫通する。
【0020】
平板22は、円板である。平板22は、平板21よりも湾曲し難い材料からなり、厚みを有する。平板22は、平板21の他方主面側(圧電素子30が配置される側と反対側)に配置される。平板22は、平板21に対して、主面(平板面)に直交する方向に離間して配置される。平板22の主面と平板21の主面とは平行である。平板22を平面視した面積は、平板21を平面視した面積よりも大きい。平面視において、平板22の中心と平板21の中心とは、ほぼ一致する。平板22には、貫通孔TH22が形成される。貫通孔TH22は、平板22を厚み方向に貫通する。貫通孔TH22は、平板22を平面視した中心付近に、複数個形成される。
【0021】
ポンプ用枠体23は、円環状である。ポンプ用枠体23は、平板21と平板22との間に配置され、平板21と平板22とに接合または接着する。これにより、ポンプ20は、平板21、平板22、および、ポンプ用枠体23に囲まれるポンプ室100を有する。
【0022】
(B)バルブ60の構成
バルブ60は、平板22、平板61、バルブ用枠体62、および、弁膜63を備える。平板22は、上述のような構成であり、ポンプ20の一部を構成する。
【0023】
平板61は、平板22に対して、平板21側と反対側に、離間して配置される。平板61は、平板22に対向する。平板61には、貫通孔TH61が形成される。平面視において(平板61および平板22の主面(平板面)に直交する方向に視て)、貫通孔TH61と複数の貫通孔TH22とは重ならない。
【0024】
バルブ用枠体62は、円環状である。バルブ用枠体62は、平板22と平板61との間に配置され、平板22と平板61とに接合または接着する。これにより、バルブ60は、平板22、平板61、および、バルブ用枠体62に囲まれるバルブ室110を有する。
【0025】
弁膜63は、例えば、バルブ室110内に収容可能な形状の平板や平膜等によって実現される。弁膜63は、バルブ室110内において、厚み方向に移動が可能なように配置される。
【0026】
弁膜63には、貫通孔TH63が形成される。平面視において、貫通孔TH63は、貫通孔TH61に重なり、複数の貫通孔TH22とは重ならない。
【0027】
この構成により、ポンプ20の貫通孔TH21から流体が吸入されるとき、流体は、ポンプ室100から貫通孔TH22を通じてバルブ室110内に流入する。この流体によって、弁膜63は、平板61側に移動し、平板61に当接する。このとき、貫通孔TH63は、貫通孔TH61と重なるので、流体は、貫通孔TH61を通じてバルブ室110内からバルブ60の外側に吐出される。
【0028】
一方、バルブ60の貫通孔TH61から流体が逆吸入されるとき、この流体によって、弁膜63は、平板22側に移動し、平板22に当接する。このとき、貫通孔TH63は、貫通孔TH22と重ならないので、流体は、ポンプ室100内に逆流されない。
【0029】
このように、ポンプ20とバルブ60とからなる流体搬送素子は、流体を一方向に搬送する。そして、この構成では、ポンプ20の貫通孔TH21が、本発明の「流体搬送素子の吸入孔」に対応し、バルブ60の貫通孔TH61が、本発明の「流体搬送素子の吐出孔」に対応する。そして、ポンプ20を構成する平板21が、本発明の「第1平板」に対応し、バルブ60を構成する平板61が、本発明の「第2平板」に対応する。
【0030】
バルブ60とポンプ20とからなる構造体は、中央に開口を有する平板状の支持部材71によって、外筐体40に固定される。
【0031】
(外筐体40の構成)
外筐体40は、外壁主板41、外壁主板42、側板431、および、側板432を備える。
【0032】
(第1外壁の構成)
第1外壁は、外壁主板41と側板431とによって構成される。
【0033】
外壁主板41は、所定形状の平板である。例えば、
図1、
図2(A)の場合であれば、外壁主板41は、平面視して矩形の平板である。外壁主板41を平面視した形状は、流体搬送素子の外形よりも大きい。
【0034】
外壁主板41は、平板21の一方主面側(圧電素子30が配置される面側)に配置される。外壁主板41の平板面(主面)と平板21の平板面(主面)とは平行であり、対向する。外壁主板41は、平板21の平板面(主面)に直交する方向に、平板21から離間して配置される。この離間距離は、流体制御装置10の通常の使用状況において、平板21のベンディング振動によって圧電素子30と外壁主板41とが接触しない距離である。
【0035】
外壁主板41は、絶縁性の樹脂である。なお、外壁主板41は、外壁主板42よりも熱伝導性が低いものであれば、絶縁性の樹脂に限らない。
【0036】
ここで、熱伝導性とは、物体における熱の伝達速度、拡散速度の速さによって定義できる。熱伝導性が高いとは、例えば、熱の伝達速度、拡散速度が速いことを意味し、熱伝導性が低いとは、例えば、伝達速度、拡散速度が遅いことを意味する。
【0037】
側板431は、所定の高さを有する環状である。側板431の高さ方向の一方端は、支持部材71の外周端の部分に接続する。側板431の高さ方向の他方端は、外壁主板41の外周端の部分に接続する。この構成により、流体搬送素子におけるポンプ20の平板21側には、外壁主板41、側板431、流体搬送素子、および、支持部材71によって囲まれる内部空間101が形成される。
【0038】
側板431には、貫通孔51が形成されている。さらに、側板431における貫通孔51が形成される部分の外面側には、ノズル501が配置される。ノズル501の開口は、貫通孔51に連通する。なお、ノズル501は、側板431と一体形成されていても、別体で形成されていてもよい。この貫通孔51によって、内部空間101は、外部空間に連通する。
【0039】
側板431が絶縁性の樹脂の場合、側板431は、外壁主板41と一体成形されていてもよい。
【0040】
なお、外壁主板41が、本発明の「第1外壁主板」に対応し、側板431が、本発明の「第1側板」に対応する。また、内部空間101が、本発明の「第1内部空間」に対応する。また、貫通孔51が、本発明の「第1貫通孔」に対応する。
【0041】
(第2外壁の構成)
第2外壁は、外壁主板42と側板432とによって構成される。
【0042】
外壁主板42は、所定形状の平板である。例えば、
図1、
図2(A)の場合であれば、外壁主板42は、平面視して矩形の平板である。外壁主板42を平面視した形状は、外壁主板41とほぼ同じ大きさであり、且つほぼ同じ形状である。
【0043】
外壁主板42は、バルブ60の平板61における平板22に対向する側と反対側に配置される。外壁主板42の平板面(主面)と平板61の平板面(主面)とは平行であり、対向する。外壁主板42は、平板61の平板面(主面)に直交する方向に、平板61から離間して配置される。
【0044】
外壁主板42は、金属(金属板)である。なお、外壁主板42は、外壁主板41よりも熱伝導性が高いものであれば、金属(金属板)に限らない。さらに、外壁主板42は、熱伝導性と剛性とを考慮して選択してもよい。すなわち、外壁主板42には、流体制御装置10として必要な剛性を有しながら、所望の熱伝導性を得られるものを選択してもよい。
【0045】
側板432は、所定の高さを有する環状である。側板432の高さ方向の一方端は、支持部材71の外周端の部分に接続する。側板432の高さ方向の他方端は、外壁主板42の外周端の部分に接続する。この構成により、流体搬送素子におけるバルブ60の平板61側には、外壁主板42、側板432、バルブ60、および、支持部材71によって囲まれる内部空間102が形成される。
【0046】
側板432には、貫通孔52が形成されている。さらに、側板432における貫通孔52が形成される部分の外面側には、ノズル502が配置される。ノズル502の開口は、貫通孔52に連通する。なお、ノズル502は、側板432と一体形成されていても、別体で形成されていてもよい。この貫通孔52によって、内部空間102は、外部空間に連通する。
【0047】
なお、外壁主板42が、本発明の「第2外壁主板」に対応し、側板432が、本発明の「第2側板」に対応する。また、内部空間102が、本発明の「第2内部空間」に対応する。また、貫通孔52が、本発明の「第2貫通孔」に対応する。
【0048】
(流体制御装置10の動作)
上述の構成の流体制御装置10では、流体を搬送する際、圧電素子30の電極パターンに、交流の駆動信号が印加される。これにより、圧電素子30の圧電体は歪む。この歪みによる応力が平板21に加わることによって、平板21は、ベンディング振動する。平板21がベンディング振動することによって、ポンプ室100内の体積、圧力が変動する。
【0049】
この圧力変動により、貫通孔TH21を通じて、内部空間101から流体が順次吸入される。この内部空間101内の流体は、貫通孔51およびノズル501を通じて、外部空間から供給される。
【0050】
ポンプ室100内に吸入された流体は、貫通孔TH22を通じて、バルブ室110内に吐出される。バルブ60が上述の動作を行うことで、バルブ室110内の流体は、貫通孔TH63および貫通孔TH61を通じて内部空間102内に吐出される。内部空間102の流体は、貫通孔52およびノズル502を通じて、外部空間に吐出される。
【0051】
一方、バルブ60が上述の動作を行うことによって、流体制御装置10は、貫通孔52から貫通孔51に向けて流体を搬送することを阻止する。
【0052】
このような構成では、ポンプ室100内の空気の急激な膨張と収縮によって、ポンプ室100内の流体と平板21や平板22との摩擦によって、ポンプ室100内の温度、すなわち、流体の温度が上昇する。
【0053】
流体制御装置10における流体は、圧電素子30が配置されたポンプ20側を上流とし、バルブ60側を下流として搬送される。したがって、上述のように温度が上昇した流体は、バルブ60に流入し、貫通孔TH61を通じて、内部空間102に吐出される。これにより、内部空間102の温度は上昇する。
【0054】
ここで、流体制御装置10における外壁主板42は、金属である。すなわち、外壁主板42は、熱伝導性が高い。これにより、内部空間102の熱は、外壁主板42内を伝達、拡散し、外壁主板42の外部空間側の面に伝達される。そして、この外壁主板42の外部空間側の面に伝達された熱は、外部空間に輻射される。例えば、外壁主板42は、SUS等であり、外壁主板42の主材料が例えばSUSであってもよい。また、例えば、Cu等を用いることも可能であり、この場合、信頼性等のために、例えば、絶縁薄膜を備えるとよりよい。
【0055】
この結果、流体制御装置10は、内部空間102内の熱を効果的に放散できる。これにより、流体制御装置10は、内部空間102の温度の上昇を効果的に抑制できる。また、これにより、外筐体40内の温度の上昇を抑制でき、バルブ60、ポンプ20、および、圧電素子30の温度の上昇を抑制できる。
【0056】
一方、流体の流れにおいて圧電素子30よりも上流側の内部空間101では、圧電素子30からの輻射熱等によって温度は上昇するものの、内部空間102と比較して温度は上昇し難い。
【0057】
したがって、上述のように、内部空間102側の温度の上昇を抑制することで、内部空間101と内部空間102との間の温度差は、小さくなる。
【0058】
図3は、比較構成の流体制御装置と本発明の第1の実施形態に係る構成の流体制御装置10における圧電素子側の内部空間の温度差の時間変化を示すグラフである。
図3は、25℃の環境下で、圧電素子30を1Wで駆動し続けた場合の内部空間101と内部空間102との温度差の変化を示す。なお、比較構成は、外筐体の全体を金属で形成したもの、すなわち本願発明の外壁主板41および外壁主板42の両方を金属で形成したものである。
【0059】
図3に示すように、本実施形態の構成を用いることによって、内部空間101と内部空間102との温度差、すなわち、外筐体40内におけるポンプ20の上流側とポンプ20の下流側との温度差を小さくできる。そして、
図3に示すように、温度差の抑制効果は、駆動開始から温度が上昇する過渡時であっても、駆動状態が安定する定常時であっても同様に得られる。
【0060】
これにより、流体制御装置10は、ポンプ20および圧電素子30の温度の上昇や、外筐体の歪みによる特性劣化を抑制できる。また、流体制御装置10は、外筐体の歪みによる外筐体の信頼性の低下を抑制でき、例えば、製品寿命を延ばすことができる。
【0061】
また、流体制御装置10では、外壁主板42の全体が金属である。これにより、内部空間102に対する放熱効果は向上し、内部空間101と内部空間102との温度差は、さらに抑制される。
【0062】
また、流体制御装置10では、内部空間102を外部空間に連通する貫通孔52は、側板432に形成される。これにより、貫通孔TH61から吐出された流体は、外壁主板42における内部空間102側の面に当接し、この面に沿って、貫通孔52まで搬送される。したがって、流体から外壁主板42へのより効果的に熱が伝搬され、流体制御装置10は、内部空間101と内部空間102との温度差を、さらに効果的に抑制できる。
【0063】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図4は、第2の実施形態に係る流体制御装置10Aの構成の一例を示す側面断面図である。
【0064】
図4に示すように、第2の実施形態に係る流体制御装置10Aは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、外筐体40Aの外壁主板42Aにおいて異なる。流体制御装置10Aの他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0065】
流体制御装置10Aは、外筐体40Aを備え、外筐体40Aは、外壁主板42Aを備える。外壁主板42Aは、外壁主板41よりも薄い。より具体的には、外壁主板42Aにおける貫通孔TH61に対向する部分は、外壁主板41(特に、圧電素子30に対向する部分)よりも薄い。
【0066】
これにより、外壁主板42Aの熱抵抗は低く抑えられる。また、流体制御装置10Aは、内部空間102に対する放熱性(外部空間への排熱性)をさらに向上でき、温度差をさらに効果的に抑制できる。したがって、流体制御装置10Aは、特性劣化をより効果的に抑制できる。
【0067】
また、外壁主板41よりも比重が大きい外壁主板42Aが薄いことで、流体制御装置10Aは、軽量化を実現できる。
【0068】
この際、外壁主板42Aの厚みを適宜設定することによって、流体制御装置10Aとしての信頼性の仕様を満たす剛性は、維持できる。すなわち、流体制御装置10Aは、所望の信頼性を確保しながら、軽量化を実現できる。
【0069】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図5は、第3の実施形態に係る流体制御装置10Bの構成の一例を示す側面断面図である。
【0070】
図5に示すように、第3の実施形態に係る流体制御装置10Bは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、外筐体40Bの外壁主板42Bにおいて異なる。流体制御装置10Bのその他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0071】
外壁主板42Bは、金属部421と樹脂部422とを備える。樹脂部422は、金属部421の外周を囲むように配置される。
【0072】
金属部421は、例えば、円板形状である。金属部421を平面面積は、貫通孔TH61の平面面積以上である。金属部421は、平面視において、貫通孔TH61に重なる。
【0073】
このような構成では、貫通孔TH61から吐出された流体が衝突する部分が金属部421となる。これにより、流体制御装置10Bは、上述の内部空間102側に対する放熱効果を得られる。したがって、流体制御装置10Bは、内部空間102と内部空間101との温度差を小さくでき、特性の劣化を抑制できる。
【0074】
また、金属部421を樹脂部422よりも薄くすることも可能であり、この構成によって、流体制御装置10Bは、内部空間102の熱をより効果的に放散できる。
【0075】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図6(A)は、第4の実施形態に係る流体制御装置10C1の構成の一例を示す側面断面図であり、
図6(B)は、第4の実施形態に係る流体制御装置10C2の構成の一例を示す側面断面図である。
【0076】
図6(A)、
図6(B)に示すように、第4の実施形態に係る流体制御装置10C1、10C2は、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、外筐体40C1、40C2の外壁主板42C1、42C2において異なる。流体制御装置10C1、10C2のその他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0077】
図6(A)に示すように、流体制御装置10C1における外壁主板42C1は、金属部421C1と樹脂部422とを備える。
【0078】
金属部421C1は、厚みの異なる2つの領域を有する。より具体的には、厚い中央領域と薄い周辺領域とを有する。中央領域の平面形状は、貫通孔TH61の平面面積よりも大きな形状(例えば円形)である。周辺領域は、中央領域の外周を囲む形状であり、周辺領域の外形形状は、外壁主板41の平面形状と略同じである。金属部421C1の一方主面は、中央領域と周辺領域とで面一である。金属部421C1の他方主面は、周辺領域が中央領域よりも凹む形状である。
【0079】
樹脂部422は、中央に開口を有する平板である。樹脂部422は、金属部421C1の他方主面側における周辺領域の部分に配置される。言い換えれば、樹脂部422は、金属部421C1の他方主面側の凹みを埋めるように配置される。これにより、外壁主板42C1の両主面は平坦になる。
【0080】
外壁主板42C1は、金属部421C1の他方主面がバルブ60に対向するように配置される。この際、金属部421C1の中央部が貫通孔TH61に重なるように配置される。
【0081】
このような構成によって、流体制御装置10C1は、内部空間102の熱を効果的に放散できる。また、外壁主板42C1は、全体を金属で形成するよりも軽量化を実現できる。
【0082】
図6(B)に示すように、流体制御装置10C2では、外壁主板42C2は、金属部421C2と樹脂部422とを備える。
【0083】
金属部421C2は、金属部421C1と同じ形状である。外壁主板42C2は、金属部421C2の他方主面が外部空間に露出するように配置される。すなわち、外壁主板42C2は、全面が金属からなる面が内部空間102側になるように配置される。
【0084】
このような構成によって、流体制御装置10C2は、内部空間102の熱を効果的に放散できる。また、外壁主板42C2は、全体を金属で形成するよりも軽量化を実現できる。
【0085】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図7は、第5の実施形態に係る流体制御装置10Dの構成の一例を示す側面断面図である。
【0086】
図7に示すように、第5の実施形態に係る流体制御装置10Dは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、ノズル501、502を省略した点において異なる。流体制御装置10Dのその他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0087】
流体制御装置10Dは、ノズル501、502を有さない。このような構成であっても、流体制御装置10Dは、内部空間101と内部空間102との温度差を小さくできる。
【0088】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図8は、第6の実施形態に係る流体制御装置10Eの構成の一例を示す側面断面図である。
【0089】
図8に示すように、第6の実施形態に係る流体制御装置10Eは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、内部空間101を外部空間に連通する貫通孔410Eの形成態様において異なる。流体制御装置10Eのその他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0090】
流体制御装置10Eは、外壁主板41Eを含む外筐体40Eを備える。外壁主板41Eには、貫通孔410Eが形成される。
【0091】
このような構成であっても、流体制御装置10Eは、内部空間101と内部空間102との温度差を小さくできる。
【0092】
なお、上述の各実施形態において、金属からなる部分は、1枚の金属によって形成される態様を示したが、複数の金属を積層したものであってもよい。または、薄い絶縁性のコア材に、コア材よりも厚く金属を積層して形成したものであってもよい。すなわち、上述の各実施形態において、内部空間102側の外壁主板の熱伝導性が、内部空間101側の外壁主板の熱伝導性よりも高ければよい。さらに言い換えれば、外筐体における流体の流れにおいて圧電素子30よりも下流側の部分の熱伝導性が、外筐体における流体の流れにおいて圧電素子30よりも上流側の部分の熱伝導性よりも高ければよい。
【0093】
また、上述の各実施形態の構成は、適宜組合せ可能であり、それぞれの組合せに応じた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0094】
10、10A、10B、10C1、10C2、10D、10E:流体制御装置
20:ポンプ
21、22:平板
23:ポンプ用枠体
30:圧電素子
40、40A、40B、40C1、40C2、40E:外筐体
41、41E、42、42A、42B、42C1、42C2:外壁主板
51、52:貫通孔
60:バルブ
61:平板
62:バルブ用枠体
63:弁膜
71:支持部材
100:ポンプ室
101、102:内部空間
110:バルブ室
410E:貫通孔
421、421C1、421C2:金属部
422:樹脂部
431、432:側板
501、502:ノズル
TH21:貫通孔
TH22:貫通孔
TH61:貫通孔
TH63:貫通孔