(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】統合ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F15B 15/18 20060101AFI20231226BHJP
F16H 63/34 20060101ALI20231226BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20231226BHJP
F16D 65/28 20060101ALI20231226BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20231226BHJP
F16D 121/02 20120101ALN20231226BHJP
【FI】
F15B15/18
F16H63/34
B60T17/00 D
F16D65/28
B60T1/06 G
F16D121:02
(21)【出願番号】P 2022569698
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2021027431
(87)【国際公開番号】W WO2022130671
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020209129
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 知寛
(72)【発明者】
【氏名】内田 和義
(72)【発明者】
【氏名】安藤 元良
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-217610(JP,A)
【文献】特開2001-271616(JP,A)
【文献】特開2016-217499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0313834(US,A1)
【文献】特許第6603276(JP,B2)
【文献】特開2005-180620(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0084162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/06
B60T 17/00
F15B 15/12
F15B 15/18
F04C 15/00
F04C 15/06
F16H 63/34
F16D 65/28
F16D 121/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(10)と、
前記モータの駆動力により回転し、オイルパン(31)から吸入した油を吐出するオイルポンプ(30)と、
自動車のパーキングロック機構(80)を作動させるパーキングロックアクチュエータであり、前記オイルポンプから供給される油圧により、進み状態と戻し状態とを切り替えるように作動する油圧アクチュエータ(60)と、
が一体に構成されたモジュールをなしており、
前記油圧アクチュエータは、
一つ以上のベーン室(621-624)を有するハウジング(61)と、
前記ハウジングに収容され、前記ベーン室に対応する一つ以上のベーン(641-644)が設けられたベーンロータ(63)と、を備え、
前記ベーン室における前記ベーンの周方向の一方に進み側油圧室(651-654)が形成され、前記ベーンの周方向の他方に戻し側油圧室(661-664)が形成され、
前記進み側油圧室に油圧が供給されたとき前記ベーンロータが一方向に回転して前記進み状態となり、前記戻し側油圧室に油圧が供給されたとき前記ベーンロータが他方向に回転して前記戻し状態とな
り、
前記進み状態で前記パーキングロック機構をロックし、前記戻し状態で前記パーキングロック機構をロック解除する統合ポンプ装置。
【請求項2】
前記オイルポンプから前記進み側油圧室及び前記戻し側油圧室への油の流れを切り替える方向切替弁(56)が設けられている請求項1に記載の統合ポンプ装置。
【請求項3】
前記オイルポンプは正転及び逆転可能であり、正転時と逆転時とで吸入口と吐出口とが交替し、逆転時吐出口である正転時吸入口(342)は前記進み側油圧室に接続され、正転時吐出口である逆転時吸入口(343)は前記戻し側油圧室に接続されており、
前記正転時吸入口に接続される正転時吸入油路(32)、及び、前記逆転時吸入口に接続される逆転時吸入油路(33)には、それぞれ前記オイルポンプ側から前記オイルパン側への逆流を防止する吸入側逆流防止弁(57、58)が設けられており、
前記オイルポンプの正転又は逆転の切り替えにより、前記オイルポンプから前記進み側油圧室又は前記戻し側油圧室への油の流れを切り替える請求項1に記載の統合ポンプ装置。
【請求項4】
前記オイルポンプは正転及び逆転可能であり、正転時と逆転時とで吸入口と吐出口とが交替し、逆転時吐出口である正転時吸入口(342)は前記進み側油圧室に接続され、正転時吐出口である逆転時吸入口(343)は前記戻し側油圧室に接続されており、
前記オイルパンと前記正転時吸入口とを接続する正転時吸入油路(32)、及び、前記オイルパンと前記逆転時吸入口とを接続する逆転時吸入油路(33)に対し、前記オイルポンプの正転時に前記正転時吸入
油路を導通して前記逆転時吸入油路を遮断し、前記オイルポンプの逆転時に前記逆転時吸入
油通路を導通して前記正転時吸入油路を遮断する選択遮断弁(59)が設けられており、
前記オイルポンプの正転又は逆転の切り替え、及び、それに伴う前記選択遮断弁の切り替えにより、前記オイルポンプから前記進み側油圧室又は前記戻し側油圧室への油の流れを切り替える請求項1に記載の統合ポンプ装置。
【請求項5】
前記オイルポンプは、前記油圧アクチュエータへ油圧を供給する油路から分岐した直接供給油路(35、38)を介してオイル消費器(39)に接続されており、
前記直接供給油路の途中に、前記直接供給油路の連通又は遮断を切り替える供給切替弁(50)が設けられている請求項2~4のいずれか一項に記載の統合ポンプ装置。
【請求項6】
前記油圧アクチュエータは、間接供給油路(68)を介してオイル消費器(39)に接続されており、
少なくとも一つの前記ベーン室は、前記進み側油圧室と前記戻し側油圧室との回転方向の中間部に、前記間接供給油路に連通する連通口(67)が形成されており、
前記ベーンロータの回転初期には、前記オイルポンプから油圧が供給される側の油圧室において前記ベーンが前記連通口を閉塞しており、
前記ベーンロータの回転開始後、前記オイルポンプから油圧が供給される側の油圧室において前記連通口が開放されると、前記オイルポンプから前記油圧アクチュエータに供給された油が前記間接供給油路を経由して前記オイル消費器に供給される請求項2~4のいずれか一項に記載の統合ポンプ装置。
【請求項7】
前記間接供給油路の途中に、前記オイル消費器から前記油圧アクチュエータへの油の逆流を防止する消費側逆流防止弁(69)が設けられている請求項6に記載の統合ポンプ装置。
【請求項8】
モータ(10)と、
前記モータの駆動力により回転し、オイルパン(31)から吸入した油を吐出するオイルポンプ(30)と、
前記オイルポンプから供給される油圧により、進み状態と戻し状態とを切り替えるように作動する油圧アクチュエータ(60)と、
が一体に構成されたモジュールをなしており、
前記油圧アクチュエータは、
一つ以上のベーン室(621-624)を有するハウジング(61)と、
前記ハウジングに収容され、前記ベーン室に対応する一つ以上のベーン(641-644)が設けられたベーンロータ(63)と、を備え、
前記ベーン室における前記ベーンの周方向の一方に進み側油圧室(651-654)が形成され、前記ベーンの周方向の他方に戻し側油圧室(661-664)が形成され、
前記進み側油圧室に油圧が供給されたとき前記ベーンロータが一方向に回転して前記進み状態となり、前記戻し側油圧室に油圧が供給されたとき前記ベーンロータが他方向に回転して前記戻し状態とな
り、
前記オイルポンプは正転及び逆転可能であり、正転時と逆転時とで吸入口と吐出口とが交替し、逆転時吐出口である正転時吸入口(342)は前記進み側油圧室に接続され、正転時吐出口である逆転時吸入口(343)は前記戻し側油圧室に接続されており、
前記正転時吸入口に接続される正転時吸入油路(32)、及び、前記逆転時吸入口に接続される逆転時吸入油路(33)には、それぞれ前記オイルポンプ側から前記オイルパン側への逆流を防止する吸入側逆流防止弁(57、58)が設けられており、
前記オイルポンプの正転又は逆転の切り替えにより、前記オイルポンプから前記進み側油圧室又は前記戻し側油圧室への油の流れを切り替える統合ポンプ装置。
【請求項9】
モータ(10)と、
前記モータの駆動力により回転し、オイルパン(31)から吸入した油を吐出するオイルポンプ(30)と、
前記オイルポンプから供給される油圧により、進み状態と戻し状態とを切り替えるように作動する油圧アクチュエータ(60)と、
が一体に構成されたモジュールをなしており、
前記油圧アクチュエータは、
一つ以上のベーン室(621-624)を有するハウジング(61)と、
前記ハウジングに収容され、前記ベーン室に対応する一つ以上のベーン(641-644)が設けられたベーンロータ(63)と、を備え、
前記ベーン室における前記ベーンの周方向の一方に進み側油圧室(651-654)が形成され、前記ベーンの周方向の他方に戻し側油圧室(661-664)が形成され、
前記進み側油圧室に油圧が供給されたとき前記ベーンロータが一方向に回転して前記進み状態となり、前記戻し側油圧室に油圧が供給されたとき前記ベーンロータが他方向に回転して前記戻し状態とな
り、
前記オイルポンプは正転及び逆転可能であり、正転時と逆転時とで吸入口と吐出口とが交替し、逆転時吐出口である正転時吸入口(342)は前記進み側油圧室に接続され、正転時吐出口である逆転時吸入口(343)は前記戻し側油圧室に接続されており、
前記オイルパンと前記正転時吸入口とを接続する正転時吸入油路(32)、及び、前記オイルパンと前記逆転時吸入口とを接続する逆転時吸入油路(33)に対し、前記オイルポンプの正転時に前記正転時吸入油路を導通して前記逆転時吸入油路を遮断し、前記オイルポンプの逆転時に前記逆転時吸入油路を導通して前記正転時吸入油路を遮断する選択遮断弁(59)が設けられており、
前記オイルポンプの正転又は逆転の切り替え、及び、それに伴う前記選択遮断弁の切り替えにより、前記オイルポンプから前記進み側油圧室又は前記戻し側油圧室への油の流れを切り替える統合ポンプ装置。
【請求項10】
前記オイルポンプは、前記油圧アクチュエータへ油圧を供給する油路から分岐した直接供給油路(35、38)を介してオイル消費器(39)に接続されており、
前記直接供給油路の途中に、前記直接供給油路の連通又は遮断を切り替える供給切替弁(50)が設けられている請求項
8または9に記載の統合ポンプ装置。
【請求項11】
前記油圧アクチュエータは、間接供給油路(68)を介してオイル消費器(39)に接続されており、
少なくとも一つの前記ベーン室は、前記進み側油圧室と前記戻し側油圧室との回転方向の中間部に、前記間接供給油路に連通する連通口(67)が形成されており、
前記ベーンロータの回転初期には、前記オイルポンプから油圧が供給される側の油圧室において前記ベーンが前記連通口を閉塞しており、
前記ベーンロータの回転開始後、前記オイルポンプから油圧が供給される側の油圧室において前記連通口が開放されると、前記オイルポンプから前記油圧アクチュエータに供給された油が前記間接供給油路を経由して前記オイル消費器に供給される請求項
8または9に記載の統合ポンプ装置。
【請求項12】
前記間接供給油路の途中に、前記オイル消費器から前記油圧アクチュエータへの油の逆流を防止する消費側逆流防止弁(69)が設けられている請求項
11に記載の統合ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年12月17日に出願された特許出願番号2020-209129号に基づくものであり、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、統合ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、モータ及び電動オイルポンプと油圧アクチュエータとを統合した油圧システムが知られている。例えば特許文献1に開示された自動車用の油圧システムは、モータ及び電動オイルポンプと油圧パーキングロックアクチュエータとクラッチ係合制御油路とが統合されている。モータの正転時、油圧パーキングロックアクチュエータ及びクラッチが作動する。モータの逆転時、オイルポンプからモータジェネレータ冷却用の油が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
特許文献1の油圧システムでは、シリンダ内をピストンが往復移動するシリンダ式の油圧パーキングロックアクチュエータが用いられている。そのため、受圧面積やストローク長を確保するための体格が大きくなる。
【0006】
本開示の目的は、モータ及び電動オイルポンプと一体に構成された油圧アクチュエータを小型化した統合ポンプ装置を提供することにある。
【0007】
本開示の統合ポンプ装置は、モータと、オイルポンプと、油圧アクチュエータとが一体に構成されたモジュールをなしている。ここで、例えば自動車に搭載される統合ポンプ装置において「一体に構成されたモジュール」とは、必ずしも一部品として自動車メーカーに納入されるものに限らない。パーツ毎に納入され、自動車に取り付けられた後に一体構成をなすものも「一体に構成されたモジュール」に含まれると解釈する。
【0008】
オイルポンプは、モータの駆動力により回転し、オイルパンから吸入した油を吐出する。油圧アクチュエータは、オイルポンプから供給される油圧により、進み状態と戻し状態とを切り替えるように作動する。本開示の一態様では、油圧アクチュエータは、自動車のパーキングロック機構を作動させるパーキングロックアクチュエータである。
【0009】
油圧アクチュエータは、一つ以上のベーン室を有するハウジングと、ハウジングに収容され、ベーン室に対応する一つ以上のベーンが設けられたベーンロータと、を備える。
【0010】
ベーンは、対応するベーン室において周方向に回動可能である。ベーン室におけるベーンの周方向の一方に進み側油圧室が形成され、ベーンの周方向の他方に戻し側油圧室が形成される。進み側油圧室に油が供給されたときベーンロータが一方向に回転して進み状態となり、戻し側油圧室に油が供給されたときベーンロータが他方向に回転して戻し状態となる。油圧アクチュエータがパーキングロックアクチュエータである一態様では、油圧アクチュエータは、進み状態でパーキングロック機構をロックし、戻し状態でパーキングロック機構をロック解除する。
【0011】
油圧アクチュエータの作動力は受圧面積と油圧との積で決まるところ、本開示では回転式油圧アクチュエータを用いることで、一つ以上のベーンにより受圧面積を確保し、油圧アクチュエータを小型化することができる。したがって、搭載スペースが制約されるパーキングロックアクチュエータ等の油圧アクチュエータとして特に有効に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示についての上記目的及びその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
【
図1】
図1は、本実施形態による統合ポンプ装置の基本構成図であり、
【
図2】
図2は、第1~第6実施形態による統合ポンプ装置及びパーキングロック機構の構成図であり、
【
図3】
図3は、第1、3、5実施形態による回転式油圧アクチュエータの外観、及び、油の流れを示す図であり、
【
図4】
図4は、第1、3、5実施形態のロック解除時(戻し状態)、及びロック時(進み状態)における
図3のIV-IV線断面図であり、
【
図5】
図5は、第1実施形態によるロック解除時(戻し状態)の油圧経路図であり、
【
図6】
図6は、第1実施形態によるロック時(進み状態)の油圧経路図であり、
【
図7】
図7は、第2、4、6実施形態による回転式油圧アクチュエータの外観、及び、油の流れを示す図であり、
【
図8】
図8は、第2、4、6実施形態のロック解除時(戻し状態)、及びロック時(進み状態)における
図7のVIII-VIII線断面図であり、
【
図9】
図9は、第2実施形態によるロック解除時(戻し状態)の油圧経路図であり、
【
図10】
図10は、第2実施形態によるロック時(進み状態)の油圧経路図であり、
【
図11】
図11は、第3実施形態によるロック解除時(戻し状態)の油圧経路図であり、
【
図12】
図12は、第3実施形態によるロック時(進み状態)の油圧経路図であり、
【
図13】
図13は、第4実施形態によるロック解除時(戻し状態)の油圧経路図であり、
【
図14】
図14は、第4実施形態によるロック時(進み状態)の油圧経路図であり、
【
図15】
図15は、第5実施形態によるロック解除時(戻し状態)の油圧経路図であり、
【
図16】
図16は、第5実施形態によるロック時(進み状態)の油圧経路図であり、
【
図17】
図17は、第6実施形態によるロック解除時(戻し状態)の油圧経路図であり、
【
図18】
図18は、第6実施形態によるロック時(進み状態)の油圧経路図であり、
【
図19】
図19は、参考形態によるシリンダ式油圧アクチュエータを用いた統合ポンプ装置及びパーキングロック機構の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示による統合ポンプ装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。複数の実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。第1~第6実施形態を包括して「本実施形態」という。本実施形態の統合ポンプ装置は、モータ及び電動オイルポンプと油圧アクチュエータとが一体に構成されたモジュールをなしている。
【0014】
図1に、本実施形態の統合ポンプ装置90に共通する基本構成を示す。統合ポンプ装置90は、モータ10、オイルポンプ30及び油圧アクチュエータ60が一体に構成されている。図中、モータを「M」、電動オイルポンプを「EOP」と記す。
【0015】
オイルポンプ30は、モータ10の駆動力により回転する電動オイルポンプであり、オイルパンから吸入した油を吐出する。
【0016】
油圧アクチュエータ60は、オイルポンプ30から供給される油圧により、進み状態と戻し状態とを切り替えるように作動する。ここで、「進み状態」及び「戻し状態」は、相対する二極状態を便宜上区別する用語に過ぎず、いずれの状態を進み状態又は戻し状態と定義してもよい。
【0017】
本実施形態の油圧アクチュエータ60は、自動車のパーキングロック機構80を作動させるパーキングロックアクチュエータである。油圧アクチュエータ60は、進み状態でパーキングロック機構80をロックし、戻し状態でパーキングロック機構をロック解除するように作動力を与える。シフトレンジがPレンジに操作されたときがロック時に相当し、notPレンジに操作されたときがロック解除時に相当する。ここでnotPレンジは、2ポジション構成では一つのレンジである。また、多段変速レンジ等を含む構成ではPレンジ以外の複数のレンジを包括してnotPレンジと解釈すればよい。
【0018】
(第1実施形態)
以下、各実施形態の統合ポンプ装置の符号は、実施形態の番号に対応して「901」~「906」とする。まず
図2~
図6を参照し、第1実施形態について説明する。
図2に、第1実施形態の統合ポンプ装置901及びパーキングロック機構80を示す。統合ポンプ装置901は、外形が円柱状の回転式油圧アクチュエータ60が用いられており、モータ10、オイルポンプ30及び油圧アクチュエータ60の三つが一体に構成されている。
図2の例では三つが同軸且つ直列に並んで一体に構成されているが、軸がずれた状態で直列に並んで一体に構成されてもよいし、並列に並んで一体に構成されてもよい。
【0019】
パーキングロック機構80は、ディテントシャフト81、ディテントプレート82、ディテントスプリング83、切替ロッド84、パーキングロッド85、円錐体86、パーキングロックポール87、パーキングギヤ88等を有する。ディテントシャフト81は油圧アクチュエータ60の出力軸であり、油圧アクチュエータ60の作動により所定角度範囲で両方向に回転する。ディテントプレート82は、ディテントシャフト81に固定されており、ディテントシャフト81と共に回転する。
【0020】
ディテントプレート82のディテントスプリング83側には、複数の凹部823が形成されている。ディテントプレート82に所定以上の回転力が加わると、ディテントスプリング83が弾性変形し、先端に設けられたディテントローラ833がいずれかの凹部823に嵌まり込むことで、ディテントプレート82の回転が規制される。ディテントプレート82の板面から突出するピン824は、切替ロッド84の先端に形成された溝に係合する。なお、ピン824及び切替ロッド84は、
図19に示す参考形態で用いられるものであり、第1実施形態では無くてもよい。
【0021】
パーキングロッド85は、略L字形状に形成され、一端851側がディテントプレート82に固定されている。パーキングロッド85の他端852側には、他端852に近づくに従って縮径する円錐体86が設けられている。ディテントローラ833がPレンジに対応する凹部に嵌まり込む方向にディテントプレート82が回転すると、円錐体86が矢印Pの方向に移動する。
【0022】
パーキングロックポール87は、円錐体86の円錐面と当接し、軸部877を中心に揺動可能である。パーキングロックポール87には、パーキングギヤ88と噛み合い可能な凸部878が設けられている。円錐体86が矢印P方向に移動すると、パーキングロックポール87が押し上げられ、凸部878とパーキングギヤ88とが噛み合い、ロック状態となる。円錐体86が矢印notP方向に移動すると、凸部878がパーキングギヤ88から離れ、ロック状態が解除される。
【0023】
次に
図3、
図4を参照し、回転式油圧アクチュエータ60の構成例について説明する。
図3、
図4の構成は、後述の第3、第5実施形態にも共通する。
図4の上側には、シフトレンジがPレンジからnotPレンジに操作されたロック解除時における作動完了状態を示し、
図4の下側には、シフトレンジがnotPレンジからPレンジに操作されたロック時における作動完了状態を示す。
【0024】
油圧アクチュエータ60は、回転軸Oを中心とする円筒状のハウジング61と、ハウジング61に同軸に収容されたベーンロータ63とを備える。ハウジング61は、周方向に例えば四つのベーン室621-624を有する。ベーン室621-624は、径方向外側の内壁が円弧状に形成された扇形状を呈している。図ではベーン室621-624の符号の引き出し線を径方向外側の内壁から引き出している。
【0025】
ベーンロータ63は、ベーン室621-624に対応する例えば四つのベーン641-644が外周に設けられている。四つのベーン641-644のうち一つのベーン641は、回転限界を規制するストッパ部645、646が周方向両端に設けられており、他の三つのベーン642、643、644よりも大きく形成されている。他の三つのベーン642、643、644は、油圧室の容積を確保するため、比較的小さく形成されている。各ベーン641-644の径方向外壁の摺動部にはシール材が設けられている。
【0026】
各ベーン641-644は、対応するベーン室621-624において周方向に回動可能である。ベーン室621-624におけるベーン641-644の周方向の一方に進み側油圧室651-654が形成される。また、ベーン641-644の周方向の他方に戻し側油圧室661-664が形成される。図示しないが、進み側油圧室651-654は、分配油路を経由して共通の進み側ポートに接続されている。同様に戻し側油圧室661-664は、分配油路を経由して共通の戻し側ポートに接続されている。
【0027】
図4の上側に示すロック解除時には、破線ハッチングを付した戻し側油圧室661-664に油圧が供給される。これにより、ベーンロータ63が図の反時計回り方向に回転して戻し状態となり、パーキングロック機構80がロック解除される。進み側油圧室651-654からは油が排出される。
図3の二点鎖線矢印は、このときの油の流れを模式的に表す。
【0028】
図4の下側に示すロック時には、破線ハッチングを付した進み側油圧室651-654に油圧が供給される。これにより、ベーンロータ63が図の時計回り方向に回転して進み状態となり、パーキングロック機構80がロックされる。戻し側油圧室661-664からは油が排出される。
図3の一点鎖線矢印は、このときの油の流れを模式的に表す。
【0029】
次に
図5、
図6を参照する。オイルポンプ30は、油圧アクチュエータ60へ油圧を供給する油路から分岐した直接供給油路35、38を介してモータジェネレータ39に接続されている。図中及び以下の明細書中でモータジェネレータを「MG」と記す。MG39は、オイルポンプ30からの油の供給対象である「オイル消費器」に相当する。具体的にはMG39のステータにおいて通電により発熱するコイルを冷却するように開放空間で油が吹き付けられる。
【0030】
以下の第1~第6実施形態は、油圧アクチュエータ60の作動方向の切り替えに関する3パターンの構成、及び、MG39への油の供給経路に関する2パターンの構成を組み合わせたものである。油圧アクチュエータ60の作動方向の切り替えに関し、第1、第2実施形態ではオイルポンプ30の回転方向は一定であり、オイルパン31から吸入油路32を経由して吸入された油は、吸入口342から吐出口343への一方向にのみ流れる。
【0031】
オイルポンプ30と油圧アクチュエータ60との間には、オイルポンプ30から進み側油圧室651-654及び戻し側油圧室661-664への油の流れを切り替える方向切替弁56が設けられている。方向切替弁56の三つのINポートのうち真ん中に図示されたポートは、アクチュエータ油路360を経由してオイルポンプ30の吐出口343に接続されている。三つのINポートのうち両側に図示された二つのポートは、それぞれアクチュエータ油路365、366を経由して吸入油路32に接続されている。
【0032】
また、MG39への油の供給経路に関し、第1、第3、第5実施形態では、直接供給油路35、38の途中に、直接供給油路35、38の連通又は遮断を切り替える供給切替弁50が設けられている。直接供給油路35、38のうち供給切替弁50よりもオイルポンプ30側(すなわち上流側)を「吐出油路35」とし、供給切替弁50よりもMG39側(すなわち下流側)を「到達油路38」とする。なお、供給切替弁50と吸入油路32との間に破線で図示されている循環油路37は、第1、第3、第5実施形態では基本的に使用を想定しない。つまり、供給切替弁50を構成する3つの切替モードのうち一番下のモードは使用されない。吐出油路35は、到達油路38と連通されるか、又は遮断される。供給切替弁50は、統合ポンプ装置901のモジュールとして一体に構成されてもよい。
【0033】
図5に示すロック解除時、供給切替弁50は、直接供給油路35、38を連通する位置に操作される。方向切替弁56は、アクチュエータ油路360が戻し側油圧室661-664に接続され、アクチュエータ油路365が進み側油圧室651-654に接続される位置に操作される。オイルポンプ30の吐出口343から吐出された油は、直接供給油路35、38を経由してMG39に供給されると共に、アクチュエータ油路360を経由して油圧アクチュエータ60の戻し側油圧室661-664に供給される。また、油圧アクチュエータ60の進み側油圧室651-654からアクチュエータ油路365を経由して吸入油路32に油が戻される。こうして油圧アクチュエータ60は戻し状態となり、パーキングロック機構80がロック解除される。
【0034】
図6に示すロック時、供給切替弁50は、直接供給油路35、38を遮断する位置に操作される。方向切替弁56は、アクチュエータ油路360が進み側油圧室651-654に接続され、アクチュエータ油路366が戻し側油圧室661-664に接続される位置に操作される。オイルポンプ30の吐出口343から吐出された油は、アクチュエータ油路360を経由して油圧アクチュエータ60の進み側油圧室651-654に供給される。また、油圧アクチュエータ60の戻し側油圧室661-664からアクチュエータ油路366を経由して吸入油路32に油が戻される。こうして油圧アクチュエータ60は進み状態となり、パーキングロック機構80がロックされる。
【0035】
油圧アクチュエータの作動力は受圧面積と油圧との積で決まるところ、回転式油圧アクチュエータ60を用いることで、複数のベーン641-644により受圧面積を確保し、油圧アクチュエータ60を小型化することができる。したがって、搭載スペースが制約されるパーキングロックアクチュエータ等の油圧アクチュエータとして特に有効に適用される。この効果は、第1~第6実施形態に共通である。
【0036】
第1実施形態では、油圧アクチュエータ60の作動方向の切り替えに関して、方向切替弁56を用いることで確実な切り替えができる。また第1実施形態では、MG39への油の供給経路に関して、直接供給油路35、38に設けられた供給切替弁50を用いることで、油圧アクチュエータ60の作動とは独立して、MG39への冷却油の供給を任意のタイミングで切り替えることができる。
【0037】
(第2実施形態)
図7~
図10を参照し、第2実施形態について説明する。第2実施形態の統合ポンプ装置902は、第1実施形態に対し、「オイル消費器」としてのMG39に油を供給する経路が異なる。第2実施形態では、オイルポンプ30とMG39との間に、第1実施形態のような直接供給油路35、38が無い。また第2実施形態では、供給切替弁50が設けられていない。
【0038】
図7、
図8を参照し、第2実施形態の回転式油圧アクチュエータ60の構成例について説明する。
図7、
図8の構成は、後述の第4、第6実施形態にも共通する。
図7、
図8は、それぞれ第1実施形態の
図3、
図4に対応する。
図8に示すように、例えばベーン641が作動するベーン室621は、進み側油圧室651と戻し側油圧室661との回転方向の中間部に連通口67が形成されている。連通口67は、一つのベーン室621に限らず、複数のベーン室に形成されてもよい。
【0039】
図9、
図10に示すように、連通口67は間接供給油路68を介してMG39に接続されている。間接供給油路68の途中には、MG39から油圧アクチュエータ60への油の逆流を防止する消費側逆流防止弁69が設けられている。消費側逆流防止弁69は、一つに限らず、複数設けられてもよい。
【0040】
ここで、
図8の上側に示す「ロック解除時」の状態は、ロック時におけるベーンロータ63の回転初期状態である。
図8の下側に示す「ロック時」の状態は、ロック解除時におけるベーンロータ63の回転初期状態である。
図7の二点鎖線矢印は、ロック状態からロック解除状態に移行するときの油の流れを模式的に表す。一点鎖線矢印は、ロック解除状態からロック状態に移行するときの油の流れを模式的に表す。
【0041】
図9に示すロック解除時、ベーンロータ63の回転初期には、「オイルポンプ30から油圧が供給される側の油圧室」である戻し側油圧室661において、ベーン641が連通口67を閉塞している。ベーンロータ63の回転開始後、ある回転位置で、戻し側油圧室661において連通口67が開放される。すると、オイルポンプ30から戻し側油圧室661に供給された油の少なくとも一部は連通口67から流出し、間接供給油路68を経由してMG39に供給される。
【0042】
図10に示すロック時、ベーンロータ63の回転初期には、「オイルポンプ30から油圧が供給される側の油圧室」である進み側油圧室651において、ベーン641が連通口67を閉塞している。ベーンロータ63の回転開始後、ある回転位置で、進み側油圧室651において連通口67が開放される。すると、オイルポンプ30から進み側油圧室651に供給された油の少なくとも一部は連通口67から流出し、間接供給油路68を経由してMG39に供給される。
【0043】
第1実施形態では、オイルポンプ30からMG39への油路と、オイルポンプ30から油圧アクチュエータ60への油路とがパラレルに構成されている。それに対し第2実施形態では、オイルポンプ30から油圧アクチュエータ60を経由してMG39へ接続されるように油路をシリーズに構成する。一経路にまとめることで、油路の構成を簡素化することができる。また、ベーンロータ63の回転を利用してMG39への油の供給を切り替えることで、供給切替弁50を削減することができる。したがって、統合ポンプ装置を含むシステムをより小型化することができる。
【0044】
(第3実施形態)
図11、
図12を参照し、第3実施形態について説明する。第3実施形態の統合ポンプ装置903は、第1実施形態に対し、油圧アクチュエータ60の作動方向を切り替える油圧回路の構成が異なる。オイルポンプ30はモータ10と共に正転及び逆転可能であり、正転時と逆転時とで吸入口と吐出口とが交替する。すなわち、正転時吸入口342は逆転時吐出口であり、逆転時吸入口343は正転時吐出口である。
【0045】
図11、
図12では便宜上、第1実施形態の回転方向、すなわち、正転時吐出口343から直接供給油路35、38を経由してMG39に油が供給されるオイルポンプ30の回転方向を正転とする。供給切替弁50は、第1実施形態と同様に直接供給油路35、38の連通又は遮断を切り替える。
【0046】
正転時吸入口342は、アクチュエータ油路367を経由して油圧アクチュエータ60の進み側油圧室651-654に接続されている。正転時吸入口342に接続される正転時吸入油路32には、オイルポンプ30側からオイルパン31側への逆流を防止する吸入側逆流防止弁57が設けられている。
【0047】
逆転時吸入口343は、アクチュエータ油路368を経由して油圧アクチュエータ60の戻し側油圧室661-664に接続されている。逆転時吸入口343に接続される逆転時吸入油路33には、オイルポンプ30側からオイルパン31側への逆流を防止する吸入側逆流防止弁58が設けられている。図示例では、正転時吸入油路32及び逆転時吸入油路33は、いずれも一端がオイルパン31に接続されている。これに限らず、オイルパン31に接続された共通の吸入油路から正転時吸入油路32及び逆転時吸入油路33が分岐してもよい。
【0048】
図11に示すロック解除時、供給切替弁50は、直接供給油路35、38を連通する位置に操作される。オイルポンプ30が正転すると、オイルパン31から正転時吸入油路32を経由して正転時吸入口342に油が吸入される。正転時吐出口343から吐出された油は、直接供給油路35、38を経由してMG39に供給されると共に、アクチュエータ油路368を経由して油圧アクチュエータ60の戻し側油圧室661-664に供給される。
【0049】
このとき吸入側逆流防止弁58は、「×」印で示すように、逆転時吸入油路33を通ってオイルパン31側に油が逆流することを防止する。また、油圧アクチュエータ60の進み側油圧室651-654からアクチュエータ油路367を経由して正転時吸入油路32に油が戻される。こうして油圧アクチュエータ60は戻し状態となり、パーキングロック機構80がロック解除される。
【0050】
図12に示すロック時、供給切替弁50は、直接供給油路35、38を遮断する位置に操作される。オイルポンプ30が逆転すると、オイルパン31から逆転時吸入油路33を経由して逆転時吸入口343に油が吸入される。逆転時吐出口342から吐出された油は、アクチュエータ油路367を経由して油圧アクチュエータ60の進み側油圧室651-654に供給される。
【0051】
このとき吸入側逆流防止弁57は、「×」印で示すように、正転時吸入油路32を通ってオイルパン31側に油が逆流することを防止する。また、油圧アクチュエータ60の戻し側油圧室661-664からアクチュエータ油路368を経由して逆転時吸入油路33に油が戻される。こうして油圧アクチュエータ60は進み状態となり、パーキングロック機構80がロックされる。
【0052】
(第4実施形態)
図13、
図14を参照し、第4実施形態について説明する。第4実施形態の統合ポンプ装置904は、第3実施形態による油圧アクチュエータ60の作動方向切り替え構成と、第2実施形態によるMG39への油供給構成とが組み合わされている。つまり、オイルポンプ30の正転又は逆転の切り替え、及び、吸入側逆流防止弁57、58の機能により、油圧アクチュエータ60の作動方向が切り替えられる。また、油圧アクチュエータ60に形成された連通口67から間接供給油路68を経由してMG39に油が供給される。間接供給油路68には消費側逆流防止弁69が設けられている。
【0053】
図13に示すロック解除時、オイルポンプ30が正転すると、正転時吐出口343から吐出された油は、アクチュエータ油路368を経由して油圧アクチュエータ60の戻し側油圧室661-664に供給される。ベーンロータ63の回転初期には連通口67が閉塞され、オイルポンプ30とMG39との間が遮断される。ベーンロータ63の回転開始後、連通口67が開放され、オイルポンプ30とMG39との間が導通される。
【0054】
図14に示すロック時、オイルポンプ30が逆転すると、逆転時吐出口342から吐出された油は、アクチュエータ油路367を経由して油圧アクチュエータ60の進み側油圧室651-654に供給される。ベーンロータ63の回転初期には連通口67が閉塞され、オイルポンプ30とMG39との間が遮断される。ベーンロータ63の回転開始後、連通口67が開放され、オイルポンプ30とMG39との間が導通される。
【0055】
第3、第4実施形態では、オイルポンプ30の正転又は逆転の切り替えにより油圧アクチュエータ60の作動方向を切り替えるため、方向切替弁56を削減することができる。また、吸入側逆流防止弁57、58により吸入側への油の逆流を防止することにより、油圧アクチュエータ60へ供給される油圧が確保される。なお、吸入側逆流防止弁57、58は、各吸入油路32、33に一つに限らず、複数設けられてもよい。
【0056】
(第5実施形態)
図15、
図16を参照し、第5実施形態について説明する。第5実施形態の統合ポンプ装置905は、第1、第3実施形態に対し、油圧アクチュエータ60の作動方向を切り替える油圧回路の構成が異なる。第3実施形態と同様に、オイルポンプ30はモータ10と共に正転及び逆転可能であり、正転時と逆転時とで吸入口と吐出口とが交替する。また、オイルポンプ30の正転時吸入口342及び逆転時吸入口343と、油圧アクチュエータ60との接続構成についても第3実施形態と同様である。
【0057】
正転時吸入油路32及び逆転時吸入油路33には、第3実施形態の吸入側逆流防止弁57、58の代わりに選択遮断弁59が設けられている。選択遮断弁59は、オイルポンプ30の正転時に正転時吸入油路32を導通して逆転時吸入油路33を遮断し、オイルポンプ30の逆転時に逆転時吸入油路33を導通して正転時吸入油路32を遮断する。選択遮断弁59は、統合ポンプ装置905のモジュールとして一体に構成されてもよい。なお、選択遮断弁59は電磁弁に限らず、操作圧によりスプールが切り替わる油圧切替弁で構成されてもよい。
【0058】
図15に示すロック解除時、供給切替弁50は、直接供給油路35、38を連通する位置に操作される。選択遮断弁59は正転時吸入油路32を導通する。オイルポンプ30が正転すると、オイルパン31から正転時吸入油路32を経由して正転時吸入口342に油が吸入される。正転時吐出口343から吐出された油は、直接供給油路35、38を経由してMG39に供給されると共に、アクチュエータ油路368を経由して油圧アクチュエータ60の戻し側油圧室661-664に供給される。
【0059】
このとき選択遮断弁59は、「×」印で示すように、逆転時吸入油路33を遮断する。また、油圧アクチュエータ60の進み側油圧室651-654からアクチュエータ油路367を経由して正転時吸入油路32に油が戻される。こうして油圧アクチュエータ60は戻し状態となり、パーキングロック機構80がロック解除される。
【0060】
図16に示すロック時、供給切替弁50は、直接供給油路35、38を遮断する位置に操作される。選択遮断弁59は逆転時吸入油路33を導通する。オイルポンプ30が逆転すると、オイルパン31から逆転時吸入油路33を経由して逆転時吸入口343に油が吸入される。逆転時吐出口342から吐出された油は、アクチュエータ油路367を経由して油圧アクチュエータ60の進み側油圧室651-654に供給される。
【0061】
このとき選択遮断弁59は、「×」印で示すように、正転時吸入油路32を遮断する。また、油圧アクチュエータ60の戻し側油圧室661-664からアクチュエータ油路368を経由して逆転時吸入油路33に油が戻される。こうして油圧アクチュエータ60は進み状態となり、パーキングロック機構80がロックされる。
【0062】
(第6実施形態)
図17、
図18を参照し、第6実施形態について説明する。第6実施形態の統合ポンプ装置906は、第5実施形態による油圧アクチュエータ60の作動方向切り替え構成と、第2実施形態によるMG39への油供給構成とが組み合わされている。つまり、オイルポンプ30の正転又は逆転の切り替え、及び、それに伴う選択遮断弁59の切り替えにより、油圧アクチュエータ60の作動方向が切り替えられる。また、油圧アクチュエータ60に形成された連通口67から間接供給油路68を経由してMG39に油が供給される。間接供給油路68には消費側逆流防止弁69が設けられている。
【0063】
図17に示すロック解除時、オイルポンプ30が正転すると、正転時吐出口343から吐出された油は、アクチュエータ油路368を経由して油圧アクチュエータ60の戻し側油圧室661-664に供給される。ベーンロータ63の回転初期には連通口67が閉塞され、オイルポンプ30とMG39との間が遮断される。ベーンロータ63の回転開始後、連通口67が開放され、オイルポンプ30とMG39との間が導通される。
【0064】
図18に示すロック時、オイルポンプ30が逆転すると、逆転時吐出口342から吐出された油は、アクチュエータ油路367を経由して油圧アクチュエータ60の進み側油圧室651-654に供給される。ベーンロータ63の回転初期には連通口67が閉塞され、オイルポンプ30とMG39との間が遮断される。ベーンロータ63の回転開始後、連通口67が開放され、オイルポンプ30とMG39との間が導通される。
【0065】
第5、第6実施形態では、オイルポンプ30の正転又は逆転の切り替え、及び、それに伴う選択遮断弁59の切り替えにより油圧アクチュエータ60の作動方向を切り替えるため、方向切替弁56を削減することができる。また、選択遮断弁59により吸入側への油の逆流を防止することにより、油圧アクチュエータ60へ供給される油圧が確保される。
【0066】
(参考形態)
図19を参照し、シリンダ式油圧アクチュエータ70を備える参考形態の統合ポンプ装置907について説明する。シリンダ式油圧アクチュエータ70は、シリンダ71と、シリンダ71内を往復移動するピストン73とを備える。シリンダ71内におけるピストン73の軸方向の一方に進み側油圧室75が形成され、ピストン73の軸方向の他方に戻し側油圧室76が形成されている。
【0067】
太線矢印で示すように、ピストン73は、パーキングロック機構80の切替ロッド84にリンクされている。切替ロッド84の先端部は、ディテントプレート82に設けられたピン824に係合している。ピストン73の往復移動に伴って切替ロッド84が往復移動すると、ピン824を介してディテントプレート82が回転し、パーキングロッド85が移動することで、PレンジとnotPレンジとが切り替えられる。
【0068】
オイルポンプ30は、ポート721、722を介して進み側油圧室75及び戻し側油圧室76に油を供給可能である。各油圧室75、76への油の流れは、回転式油圧アクチュエータ60の第1又は第2実施形態に準じて切り替えられる。排出側の油圧室の油はオイルポンプ30の吸入側に戻される。
図19には油の流れの切り替え経路の図示を省略する。
【0069】
ロック解除時、オイルポンプ30から戻し側油圧室76に油圧が供給され、ピストン73が
図19の左方向に移動して戻し状態となる。すると切替ロッド84の移動に伴ってパーキングロッド85がnotP方向に移動し、パーキングロック機構80がロック解除される。ロック時、オイルポンプ30から進み側油圧室75に油圧が供給され、ピストン71が
図19の右方向に移動して進み状態となる。すると切替ロッド84の移動に伴ってパーキングロッド85がP方向に移動し、パーキングロック機構80がロックされる。
【0070】
参考形態では、第1~第6実施形態と同様の油圧アクチュエータの作動が実現される。ただし、統合ポンプ装置の小型化を目的とするものではない点で第1~第6実施形態と異なる。
【0071】
(その他の実施形態)
(1)油圧アクチュエータ60はパーキングロックアクチュエータ以外に限らず、変速用ドラムシフト等、どのような用途のアクチュエータに適用されてもよい。また、適用されるアクチュエータに応じて、どのような状態を進み状態及び戻し状態とするかは、適宜設定されてよい。
【0072】
(2)油圧アクチュエータ60におけるベーンロータのベーンの数は、
図4に例示した四つに限らず、受圧面積を確保することができれば一つ以上いくつでもよい。ハウジングのベーン室はベーンの数に対応して設定される。また、回転限界を規制するストッパ部をベーンに設けるのでなく、ベーンロータ本体とハウジングとの間に設けてもよい。
【0073】
(3)オイルポンプ30からの油の供給対象である「オイル消費器」はMG39に限らず、油を消費するどのような装置であってもよい。また、第2、第4、第6実施形態においてオイル消費器の内部に逆流防止機能を有する場合等には、間接供給油路68に消費側逆流防止弁69が設けられなくてもよい。
【0074】
以上、本開示は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【0075】
本開示は実施形態に準拠して記述された。しかしながら、本開示は当該実施形態および構造に限定されるものではない。本開示は、様々な変形例および均等の範囲内の変形をも包含する。また、様々な組み合わせおよび形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせおよび形態も本開示の範疇および思想範囲に入るものである。