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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/24 20220101AFI20231226BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B60R1/24
H04N7/18 J
H04N7/18 U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023051630
(22)【出願日】2023-03-28
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後閑 雅登
(72)【発明者】
【氏名】本同 和人
(72)【発明者】
【氏名】笠井 勇希
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-166943(JP,A)
【文献】特開2001-341580(JP,A)
【文献】特開2004-058751(JP,A)
【文献】特表2008-545188(JP,A)
【文献】特開2014-040136(JP,A)
【文献】特開2014-042096(JP,A)
【文献】登録実用新案第3219565(JP,U)
【文献】特開2020-136947(JP,A)
【文献】特開2020-136948(JP,A)
【文献】特開2021-180487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/24
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の運転者の運転を支援する運転支援装置であって、
前記自動車の前方右ピラー及び/又は前方左ピラーに設けられ、前記自動車の外部の前方の死角領域からの光を集光する第1のレンズと、
前記第1のレンズの後方に設けられ、前記第1のレンズにより集光した光の一部を通過させるピンホールを備えるフィルタ部材と、
前記フィルタ部材の後方に設けられ、前記ピンホールを通過した光の像を撮像する撮像素子と、
前記自動車の車内に設けられ、前記撮像素子から撮像信号を受信して、当該撮像信号に基づいて、前記死角領域の画像を表示する表示部と、
を有し、
前記フィルタ部材は、
光軸と平行な方向において前記第1のレンズの焦点距離よりも前記第1のレンズに近づいた位置に設けられる、
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記フィルタ部材と前記撮像素子との間に設けられ、前記ピンホールを通過した光を前記撮像素子に集光させる第2のレンズを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転者と前記運転支援装置との距離を取得する検出部と、
前記検出部により取得された前記距離に応じて、前記フィルタ部材の位置を制御する制御部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車の運転者の運転を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のピラーによって生じる死角を低減するために、死角領域の景色を車内に表示して自動車の運転者の運転を支援する運転支援装置が知られている。このような運転支援装置としては、レンズ又は鏡等の光学素子のみから構成される方式(以下「光学式」と記載する)と、カメラ等の撮像装置とモニタ又はプロジェクタ等の表示装置とを組み合わせた方式(以下「電子式」と記載する)と、に大別される。
【0003】
光学式の運転支援装置は、対象物から眼までの光路の間に撮像装置を備えていないと共に表示装置も備えず、光学素子のみを備え、光から電気への変換を伴わないことが特徴である。しかしながら、光学式の運転支援装置は、光路の途中にフロントガラス等の窓があった場合に、反射又は屈折の影響を受けて像が見えない又は歪むという課題を有する。また、光学式の運転支援装置は、鏡又はレンズの配置上の制約が多く、干渉しないように設置することが困難な場合があるという課題を有する。
【0004】
一方、電子式の運転支援装置は、車外に撮像装置を備え、光を一旦電気信号に変換した後に、車内に設置された表示装置によって電気信号を再び光に戻すことが特徴である(例えば、特許文献1)。電子式の運転支援装置は、光学式の運転支援装置と比較して、撮像装置及び表示装置の設置の自由度が高い点で優位である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-213184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電子式の運転支援装置においては、運転者の視点位置とカメラの視点位置とが異なるため、運転者が直接見る光軸方向に移動する対象物の大きさの変化に対して、表示装置に表示される光軸方向に移動する対象物の大きさの変化が異なり、運転者が違和感を覚えてしまうという課題を有する。
【0007】
本開示の目的は、運転者の視点位置とカメラの視点位置とが異なる場合であっても、運転者が直接見る光軸方向に移動する対象物の大きさの変化と、表示部に表示される光軸方向に移動する対象物の大きさの変化と、の違いを抑制することができる運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る運転支援装置は、自動車の運転者の運転を支援する運転支援装置であって、前記自動車の外部の死角領域からの光を集光する第1のレンズと、前記第1のレンズにより集光した光の一部を通過させるピンホールを備えるフィルタ部材と、前記ピンホールを通過した光の像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子により撮像した像を表示する表示部と、を有し、前記フィルタ部材は、光軸と平行な方向において前記第1のレンズの焦点距離よりも前記第1のレンズに近づいた位置に設けられる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、運転者の視点位置とカメラの視点位置とが異なる場合であっても、運転者が直接見る光軸方向に移動する対象物の大きさの変化と、表示部に表示される光軸方向に移動する対象物の大きさの変化と、の違いを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係る運転支援装置を有する自動車の模式図
図2】本開示の実施の形態に係る運転支援装置の模式図
図3】本開示の実施の形態に係る運転支援装置の一部の模式図
図4A】本開示の実施の形態に係る運転支援装置を有する自動車の運転者の視点と撮像対象者との位置関係の一例を示す図
図4B】本開示の実施の形態に係る運転支援装置を有する自動車の運転者の視点位置から見た移動する撮像対象者の大きさの変化の一例を示す図
図4C】本開示の実施の形態に係る運転支援装置の撮像素子の視点位置から見た移動する撮像対象者の大きさの変化の一例を示す図
図5】本開示の実施の形態に係る運転支援装置の変形例の模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下に説明する実施の形態は一例であり、本開示はこの実施の形態に限定されるものではない。なお、既に周知な事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成に対する重複説明等は、適宜省略する場合がある。
【0012】
<運転支援装置の構成>
本開示の実施の形態に係る運転支援装置1の構成について、図1から図4Cを参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
なお、図4Aから図4Cにおいて、撮像対象者A1は、運転者Bに対して撮像対象者A2よりも遠くに居る撮像対象者Aを示しており、撮像対象者A2は、運転者Bに対して撮像対象者A1よりも近くに居る撮像対象者Aを示している。
【0014】
ここで、光軸Pと平行な方向において、撮像対象者Aに近づく方向(図2においてX軸の正方向)を前方、及び撮像対象者Aから遠ざかる方向(図2においてX軸の負方向)を後方として説明する。
【0015】
本実施の形態に係る運転支援装置1は、自動車100の前方右ピラー101及び前方左ピラー102に設けられており、前方右ピラー101及び前方左ピラー102によって生じる死角を低減する。具体的には、運転支援装置1は、レンズ10と、フィルタ部材20と、レンズ30と、撮像素子40と、表示部50と、を有している。レンズ10、フィルタ部材20、レンズ30及び撮像素子40は、自動車100の車外に設けられている。また、表示部50は、自動車100の車内に設けられている。
【0016】
レンズ10は、自動車の外部の撮像対象者Aを含む死角領域からの光を集光する第1のレンズであり、例えば凸レンズである。
【0017】
フィルタ部材20は、レンズ10により集光した光の一部を通過させるピンホール21を備えている。フィルタ部材20は、光軸Pと平行な方向においてレンズ10の焦点距離fよりもレンズ10に近づいた位置に設けられている。
【0018】
レンズ30は、ピンホール21を通過した光を撮像素子40に集光させる第2のレンズであり、例えば凸レンズである。
【0019】
撮像素子40は、レンズ30により集光された光の像を撮像した撮像信号を表示部50に出力する。
【0020】
表示部50は、撮像素子40より入力される撮像信号に基づいて、撮像対象者Aを含む死角領域の画像を表示する。
【0021】
上記の構成を有する運転支援装置1において、フィルタ部材20をレンズ10の焦点距離fよりもレンズ10に近づいた位置に設けることにより、撮像素子40の視点位置を撮像素子40より後方の仮想視点Qにすることができる。また、フィルタ部材20の位置をレンズ10の焦点距離f未満の範囲で可変にすることにより、仮想視点Qの位置を可変にすることができる。例えば、フィルタ部材20をレンズ10に近づけるほど仮想視点Qは撮像素子40に近づく。
【0022】
ここで、撮像対象者Aに対する運転者Bの視点位置は、撮像対象者Aに対する撮像素子40の視点位置よりも距離G(図1参照)だけ遠いため、撮像素子40の視点位置と異なる。これより、図4Aに示すように撮像対象者AがA1からA2に移動した場合において、運転者Bの視点位置から見た図4Bに示す撮像対象者Aの大きさの変化は、撮像素子40の視点位置から見た図4Cに示す撮像対象者Aの大きさの変化に比べて小さくなる。このような変化の差異は、撮像対象者Aと運転支援装置1との距離が小さいほど顕著となる。
【0023】
これに対して、本実施の形態に係る運転支援装置1は、撮像素子40の視点位置を撮像素子40後方の仮想視点Qにすることにより、運転者Bの視点位置から見た撮像対象者Aの大きさの変化と、撮像素子40の視点位置から見た撮像対象者Aの大きさの変化と、を近づけることができる。また、撮像素子40の仮想視点Qの位置を、運転者Bの視点位置と一致させることで、撮像素子40の視点位置から見た撮像対象者Aの大きさの変化と、を一致させることができる。
【0024】
例えば図4Aに示すように撮像対象者AがA1からA2に移動した場合において、運転支援装置1は、表示部50に表示される撮像素子40の視点位置から見た撮像対象者Aの大きさの変化を、運転者Bの視点位置から見た撮像対象者Aの大きさの変化に近づけることができる。
【0025】
因みに、従来の運転支援装置では、図4Aに示すように撮像対象者AがA1からA2に移動した場合において、表示部に表示される撮像素子の視点位置から見た撮像対象者Aの大きさの変化は、運転者Bの視点位置から見た撮像対象者Aの大きさの変化よりも大きくなるために運転者Bは違和感を覚える。
【0026】
また、上記の構成を有する運転支援装置1において、レンズの公式より(1)式となり、レンズ10と仮想視点Qとの距離Lは、(1)式を変形して(2)式より求められる。
【0027】
(1/x)-(1/L)=1/f (1)
L=fx/(f-x) (2)
ここで、fは、レンズ10の焦点距離
xは、レンズ10とフィルタ部材20との距離
x<f
【0028】
また、図3において、Rを原点(0,0)、原点Rを通る光軸Pと平行な軸をx軸、及び原点Rを通るx軸に直交する軸をy軸とした場合に、画角θは、座標(0,d/2)と座標(L,0)とを結ぶ直線とx軸とのなす角度の2倍になるので、(3)式となる。
【0029】
θ=2tan-1(0.5d/L)×(180/π) (3)
ここで、dは、瞳径
Lは、レンズ10と仮想視点Qとの距離
【0030】
ここで、θが10度以下程度の近軸の場合にはθ?tanθ?tan-1θのため(3)式は(4)式と近似できる。
【0031】
θ=(d/L)×(180/π) (4)
【0032】
(4)式に(2)式を代入することにより画角θは(5)式より求められる。
【0033】
θ=d×((f-x)/fx)×(180/π) (5)
【0034】
このように、本実施の形態によれば、光軸P方向においてレンズ10の焦点距離fよりもレンズ10に近づいた位置にフィルタ部材20を設けることにより、運転者Bの視点位置と撮像素子40の視点位置とが異なる場合であっても、運転者Bが直接見る光軸P方向に移動する撮像対象者Aの大きさの変化と、表示部50に表示される光軸P方向に移動する撮像対象者Aの大きさの変化と、を近づけることができる。したがって、運転者Bが、表示部50に表示される画像により、対象物を見る場合に、対象物の大きさの変化により発生する違和感を抑制することが可能となる。
【0035】
また、本実施の形態によれば、フィルタ部材20のピンホール21を通過した光を撮像素子40に集光させるレンズ30を有することにより、撮像素子40を小型化することができる。
【0036】
また、本実施の形態によれば、自動車100の前方右ピラー101及び前方左ピラー102により生じる死角領域からの光をレンズ10によって集光することにより、前方右ピラー101及び前方左ピラー102により生じる死角領域に存在する撮像対象者A等を運転者Bが視認することができる。
【0037】
なお、本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施の形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【0038】
具体的には、上記の実施の形態において、レンズ30を設けたが、これに限らず、撮像素子40のサイズを大きくすることが可能であればレンズ30を設けなくてもよい。
【0039】
また、上記の実施の形態において、前方右ピラー101及び前方左ピラー102による死角領域の像を表示部50に表示したが、これに限らず、自動車100の後方ピラー又はドア等による死角領域の像を表示部に表示するようにしてもよい。
【0040】
また、上記の実施の形態は、撮像素子40によって人である撮像対象者Aを撮像したが、これに限らず、撮像素子40によって人以外の自動車等の移動物体を撮像する場合にも適用できる。
【0041】
<変形例>
上述の運転支援装置1に対して、さらに、運転者Bの視点位置に応じて、フィルタ部材20の位置を制御する機構を加えることにより、運転者Bが感じる違和感を低減することが可能である。
【0042】
図5は、運転支援装置1の変形例を示す模式図である。運転支援装置1は、運転支援装置1は、レンズ10と、フィルタ部材20と、レンズ30と、撮像素子40と、表示部50と、を有する。運転支援装置1は、検出部60、および、位置制御部70を有する。レンズ10と、フィルタ部材20と、レンズ30と、撮像素子40と、表示部50と、は上述した構成と同じ機能を発揮するものであるため、説明を省略する。
【0043】
検出部60は、運転支援装置1に対する運転者Bの視点位置を検出する検出装置である。例えば、検出部60は、運転支援装置1が設けられるピラーから運転者Bまでの距離を検出する。検出部60は、ミリ波レーダーなど種々の測距装置を利用することが可能である。また、検出部60は、外部に設けたセンサから、運転者Bの視点位置の検出結果を取得する取得部であってもよい。
【0044】
位置制御部70は、フィルタ部材20の位置を制御することにより、撮像素子40の視点位置である仮想視点Qの位置を制御する。位置制御部70は、検出部60から取得した運転者Bの視点位置に仮想視点Qが位置するようにフィルタ部材20を制御する。位置制御部70は、運転者Bの視点位置に仮想視点Qが一致するように、フィルタ部材20の位置を制御する。位置制御部70は、フィルタ部材20の位置を移動させる移動機構と、移動機構を制御するプロセッサで構成されているとする。
【0045】
変形例に係る運転支援装置1によれば、運転者Bの視点位置に仮想視点Qの位置を一致させることが可能となる。したがって、運転者Bの視点位置と撮像素子40の視点位置とが異なる場合であっても、運転者Bが直接見る光軸P方向に移動する撮像対象者Aの大きさの変化と、表示部50に表示される光軸P方向に移動する撮像対象者Aの大きさの変化と、を一致させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示に係る運転支援装置は、自動車の運転者の運転を支援するのに好適である。
【符号の説明】
【0047】
1 運転支援装置
10 レンズ
20 フィルタ部材
21 ピンホール
30 レンズ
40 撮像素子
50 表示部
60 検出部
70 移動制御部
100 自動車
101 前方右ピラー
102 前方左ピラー
A 撮像対象者
B 運転者
P 光軸
Q 仮想視点
【要約】
【課題】運転者の視点位置とカメラの視点位置とが異なる場合であっても、運転者が直接見る光軸方向に移動する対象物の大きさの変化と、表示部に表示される光軸方向に移動する対象物の大きさの変化と、の違いを抑制すること。
【解決手段】運転支援装置は、前記自動車の外部の死角領域からの光を集光する第1のレンズと、前記第1のレンズにより集光した光の一部を通過させるピンホールを備えるフィルタ部材と、前記ピンホールを通過した光の像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子により撮像した像を表示する表示部と、を有し、前記フィルタ部材は、光軸と平行な方向において前記第1のレンズの焦点距離よりも前記第1のレンズに近づいた位置に設けられる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5