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特許7409560絶縁抵抗算出装置および絶縁抵抗算出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】絶縁抵抗算出装置および絶縁抵抗算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20231226BHJP
   G01R 31/34 20200101ALI20231226BHJP
   G01R 31/56 20200101ALI20231226BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20231226BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/34 B
G01R31/56
G01R31/58
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023520849
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010519
(87)【国際公開番号】W WO2022239432
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2021082047
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 元保
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-4596(JP,A)
【文献】特開2009-115754(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192217(WO,A1)
【文献】特開2011-153910(JP,A)
【文献】特表2018-507409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/50-31/74、
31/327-31/34、
H02K 11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源に接続されている負荷機器の絶縁抵抗を算出する絶縁抵抗算出装置であって、
前記負荷機器を通じて流れる対地漏洩電流である零相電流を検出する零相電流検出装置と、
前記負荷機器に印加されている三相交流電圧の各相の対地電圧を検出する各相電圧検出装置と、
演算回路と、を備え、
前記演算回路は、前記零相電流、前記各相の対地電圧および前記各相の対地電圧から算出される前記各相の対地電圧の微分値に基づき、または、前記零相電流、前記各相の対地電圧および前記各相の対地電圧から算出される対地中性点電圧の微分値に基づき、各相の対地抵抗成分と各相の対地容量成分とを算出する、
絶縁抵抗算出装置。
【請求項2】
前記演算回路は、前記各相の対地電圧を時間微分することにより前記各相の対地電圧の微分値を算出する、
請求項1に記載の絶縁抵抗算出装置。
【請求項3】
前記零相電流をiоとし、前記各相の対地電圧をea,eb,ecとし、前記各相の対地抵抗成分をRa,Rb,Rcとし、前記各相の対地容量成分をCa,Cb,Ccとし、誤差をrとし、前記零相電流および前記各相の対地電圧のサンプリング数をnとし、
mは、6以上の整数であり、
nは、m以上の整数であり、
前記演算回路は、前記零相電流および前記各相の対地電圧に基づき、以下の数式1におけるrが最小となるように、前記各相の対地抵抗成分と前記各相の対地容量成分とを算出する、
請求項1または請求項2に記載の絶縁抵抗算出装置。
【数7】
【請求項4】
前記零相電流をiоとし、前記各相の対地電圧をea,eb,ecとし、前記各相の対地抵抗成分をRa,Rb,Rcとし、前記各相の対地容量成分をCa,Cb,Ccとし、誤差をrとし、前記零相電流および前記各相の対地電圧のサンプリング数をnとし、対地中性点電圧をenとし、
mは、4以上の整数であり、
nは、m以上の整数であり、
前記演算回路は、前記各相の対地電圧から対地中性点電圧を算出し、前記各相の対地容量成分がCоと等しいとみなすことにより、前記零相電流および前記各相の対地電圧に基づき、以下の数式2におけるrが最小となるように、前記各相の対地抵抗成分と前記各相の対地容量成分とを算出する、
請求項1または請求項2に記載の絶縁抵抗算出装置。
【数8】
【請求項5】
前記零相電流および前記各相の対地電圧のサンプリング間隔をTsmpとし、前記三相交流電圧の周期をTpwrとし、
mは、以下の数式3を満たし、
kは、自然数であり、
kとmとは、互いに素である、
請求項3または請求項4に記載の絶縁抵抗算出装置。
【数9】
【請求項6】
三相交流電源に接続されている負荷機器の絶縁抵抗を算出する絶縁抵抗算出方法であって、
前記負荷機器を通じて流れる対地漏洩電流である零相電流を取得する零相電流取得ステップと、
前記負荷機器に印加されている三相交流電圧の各相の対地電圧を取得する各相電圧取得ステップと、
前記負荷機器の各相の対地抵抗成分と各相の対地容量成分とを算出する絶縁抵抗算出ステップと、を備え、
前記絶縁抵抗算出ステップは、前記各相の対地電圧を時間微分することにより前記各相の対地電圧の微分値を算出し、前記零相電流、前記各相の対地電圧および前記各相の対地電圧の微分値に基づき、または、前記零相電流、前記各相の対地電圧および前記各相の対地電圧から算出される対地中性点電圧の微分値に基づき、各相の対地抵抗成分と各相の対地容量成分とを算出する、
絶縁抵抗算出方法。
【請求項7】
前記零相電流をiоとし、前記各相の対地電圧をea,eb,ecとし、前記各相の対地抵抗成分をRa,Rb,Rcとし、前記各相の対地容量成分をCa,Cb,Ccとし、誤差をrとし、前記零相電流および前記各相の対地電圧のサンプリング数をnとし、
mは、6以上の整数であり、
nは、m以上の整数であり、
前記絶縁抵抗算出ステップは、前記零相電流および前記各相の対地電圧に基づき、以下の数式4におけるrが最小となるように、前記各相の対地抵抗成分と前記各相の対地容量成分とを算出する、
請求項6に記載の絶縁抵抗算出方法。
【数10】
【請求項8】
前記零相電流をiоとし、前記各相の対地電圧をea,eb,ecとし、前記各相の対地抵抗成分をRa,Rb,Rcとし、前記各相の対地容量成分をCa,Cb,Ccとし、誤差をrとし、前記零相電流および前記各相の対地電圧のサンプリング数をnとし、対地中性点電圧をenとし、
mは、4以上の整数であり、
nは、m以上の整数であり、
前記絶縁抵抗算出ステップは、前記各相の対地電圧から対地中性点電圧を算出し、前記各相の対地容量成分がCоと等しいとみなすことにより、前記零相電流および前記各相の対地電圧に基づき、以下の数式5におけるrが最小となるように、前記各相の対地抵抗成分と前記各相の対地容量成分とを算出する、
請求項6に記載の絶縁抵抗算出方法。
【数11】
【請求項9】
前記零相電流および前記各相の対地電圧のサンプリング間隔をTsmpとし、前記三相交流電圧の周期をTpwrとし、
mは、以下の数式6を満たし、
kは、自然数であり、
kとmとは、互いに素である、
請求項7または請求項8に記載の絶縁抵抗算出方法。
【数12】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷機器の絶縁抵抗を算出する絶縁抵抗算出装置および絶縁抵抗算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の絶縁抵抗算出装置および絶縁抵抗算出方法に関する発明としては、例えば、特許文献1,2に記載の漏洩電流算出装置および漏洩電流算出方法が知られている。特許文献1,2には、系統周波数分の対地絶縁抵抗分漏洩電流と、計測された線間電圧または算出された対地電圧とを用いて、三相モータの対地絶縁抵抗を算出することが記載されている。また、特許文献1,2には、商用電力系統と三相モータとの間にインバータが挿入されない場合には線間電圧を用い、インバータが挿入される場合には対地電圧を用いることが記載されている。このような漏洩電流算出装置および漏洩電流算出方法によれば、インバータの有無にかかわらず対地絶縁抵抗を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6460146号
【文献】特許第6477548号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1,2に記載の漏洩電流算出装置および漏洩電流算出方法において、三相交流電源の結線方式にかかわらず対地絶縁抵抗を算出したいという要望がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、三相交流電源の結線方式にかかわらず対地絶縁抵抗を算出できる絶縁抵抗算出装置および絶縁抵抗算出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る絶縁抵抗算出装置は、
三相交流電源に接続されている負荷機器の絶縁抵抗を算出する絶縁抵抗算出装置であって、
前記負荷機器を通じて流れる対地漏洩電流である零相電流を取得する零相電流検出装置と、
前記負荷機器に印加されている三相交流電圧の各相の対地電圧を取得する各相電圧検出装置と、
演算回路と、を備え、
前記演算回路は、前記零相電流、前記各相の対地電圧および前記各相の対地電圧から算出される前記各相の対地電圧の微分値に基づき、または、前記零相電流、前記各相の対地電圧および前記各相の対地電圧から算出される対地中性点電圧の微分値に基づき、各相の対地抵抗成分と各相の対地容量成分とを算出する。
【0007】
本発明の一形態に係る絶縁抵抗算出方法は、
三相交流電源に接続されている負荷機器の絶縁抵抗を算出する絶縁抵抗算出方法であって、
前記負荷機器を通じて流れる対地漏洩電流である零相電流を取得する零相電流取得ステップと、
前記負荷機器に印加されている三相交流電圧の各相の対地電圧を取得する各相電圧取得ステップと、
前記負荷機器の各相の対地抵抗成分と各相の対地容量成分とを算出する絶縁抵抗算出ステップと、を備え、
前記絶縁抵抗算出ステップは、前記各相の対地電圧を時間微分することにより前記各相の対地電圧の微分値を算出し、前記零相電流、前記各相の対地電圧および前記各相の対地電圧の微分値に基づき、または、前記零相電流、前記各相の対地電圧および前記各相の対地電圧から算出される対地中性点電圧の微分値に基づき、各相の対地抵抗成分と各相の対地容量成分とを算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、三相交流電源の結線方式にかかわらず対地絶縁抵抗を正確に算出できる絶縁抵抗算出装置および絶縁抵抗算出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10の構成を示す詳細図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るU相の対地電圧euと時間との関係の一例を示した図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るV相の対地電圧evと時間との関係の一例を示した図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るW相の対地電圧ewと時間との関係の一例を示した図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出処理を示すフローチャートである。
図8図8は、第1の変形例に係る絶縁抵抗算出処理を示すフローチャートである。
図9図9は、第2の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。
図10図10は、第2の実施形態に係るU相の対地電圧euと時間との関係の一例を示した図である。
図11図11は、第2の実施形態に係るV相の対地電圧evと時間との関係の一例を示した図である。
図12図12は、第2の実施形態に係るW相の対地電圧ewと時間との関係の一例を示した図である。
図13図13は、第3の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10cの構成を示すブロック図である。
図14図14は、第3の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。
図15図15は、第3の実施形態に係るR相の対地電圧erと時間との関係の一例を示した図である。
図16図16は、第3の実施形態に係るS相の対地電圧esと時間との関係の一例を示した図である。
図17図17は、第3の実施形態に係るT相の対地電圧etと時間との関係の一例を示した図である。
図18図18は、第4の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10dの構成を示すブロック図である。
図19図19は、第4の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。
図20図20は、第4の実施形態に係るR相の対地電圧erと時間との関係の一例を示した図である。
図21図21は、第4の実施形態に係るS相の対地電圧esと時間との関係の一例を示した図である。
図22図22は、第4の実施形態に係るT相の対地電圧etと時間との関係の一例を示した図である。
図23図23は、第5の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。
図24図24は、第5の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。
図25図25は、第6の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。
図26図26は、第6の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
以下に、本発明の第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10について、図を参照しながら説明する。図1は、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10の構成を示すブロック図である。図2は、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10の構成を示す詳細図である。図3は、第1の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図であり、図4は、第1の実施形態に係るU相の対地電圧euと時間との関係の一例を示した図であり、図5は、第1の実施形態に係るV相の対地電圧evと時間との関係の一例を示した図であり、図6は、第1の実施形態に係るW相の対地電圧ewと時間との関係の一例を示した図である。図7は、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出処理を示すフローチャートである。
【0011】
絶縁抵抗算出装置10は、図1に示すように、三相交流電源に接続されている負荷機器の絶縁抵抗を算出するために用いられる。本実施形態では、絶縁抵抗算出装置10は、三相交流電源1を電源とするインバータ2によって駆動される三相モータ3の絶縁抵抗を算出するように構成されている。
【0012】
三相交流電源1は、異なる三相(R相、S相、T相)により、所定の電源周波数(例えば、50Hzまたは60Hz)の交流電圧を供給する三相交流式の交流電源である。R相の交流電圧の位相は、S相の交流電圧の位相より120°進んでいる。T相の交流電圧の位相は、S相の交流電圧の位相より120°遅れている。これらの三相(R相、S相、T相)は、R線、S線およびT線を介して、インバータ2の入力にそれぞれ接続されている。本実施形態では、三相交流電源1は、三相デルタ結線方式である。
【0013】
インバータ2は、三相交流電源1から供給される三相の交流電圧から三相(U相、V相、W相)の交流電圧を生成する。インバータ2が生成する三相の交流電圧は、それぞれ、三相の接地電位を基準とした交流電圧(対地電圧)とする。すなわち、U相の交流電圧は、U相の対地電圧euである。V相の交流電圧は、V相の対地電圧evである。W相の交流電圧は、W相の対地電圧ewである。インバータ2の三相(U相、V相、W相)出力端子は、U線、V線およびW線を介して、三相モータ3の三相(U相、V相、W相)入力端子にそれぞれ接続されている。本実施形態では、インバータ2が出力する三相(U相、V相、W相)の交流電圧の周波数は、三相交流電源1の三相(R相、S相、T相)の交流電圧の周波数(すなわち、電源周波数)よりも低い。
【0014】
U相の対地電圧euは、図4に示す波形を有する。U相の対地電圧euには、対地中性点電圧enが含まれている。対地中性点電圧enは、インバータ2が三相の交流電圧をダイオードおよび平滑コンデンサにより整流したことにより得られる電圧である。対地中性点電圧enは、三相デルタ結線方式の配電形態を有する三相交流電源1では、電源周波数の1倍のみならず、電源周波数の整数倍の高調波成分を有する。V相の対地電圧evは、図5に示す波形を有する。V相の対地電圧evには、対地中性点電圧enが含まれている。W相の対地電圧ewは、図6に示す波形を有する。W相の対地電圧ewには、対地中性点電圧enが含まれている。
【0015】
三相モータ3は、インバータ2から供給される三相の交流電圧により駆動される。
【0016】
インバータ2と三相モータ3との間には、図2に示すように、U線、V線およびW線を取り囲む零相変流器111が設けられている。零相変流器111は、インバータ2と三相モータ3との間を流れる零相電流を計測する。零相電流をiоとする。零相電流iоは、U線、V線およびW線を流れる電流を加算した値と等しい。また、零相電流iоは、三相モータ3(負荷機器)を通じて流れる対地漏洩電流と等しい。より詳細には、零相電流iоは、三相モータ3の三相(U相、V相、W相)の対地抵抗成分および三相(U相、V相、W相)の対地容量成分を通じて大地に流れる対地漏洩電流と等しい。U相、V相およびW相の対地抵抗成分をそれぞれ、Ru,Rv,Rwとする。また、U相、V相、およびW相の対地容量成分をそれぞれ、Cu,Cv,Cwとする。
【0017】
絶縁抵抗算出装置10は、図1に示すように、零相電流検出装置11、各相電圧検出装置12および演算回路15を備えている。
【0018】
零相電流検出装置11は、零相電流iоを検出する。より詳細には、零相電流検出装置11は、図2に示すように、零相変流器111、増幅器113、ローパスフィルタ114およびA/Dコンバータ115を含む。
【0019】
零相変流器111は、零相電流iоを計測する。増幅器113は、零相変流器111で計測された信号を増幅する。ローパスフィルタ114は、増幅器113で増幅された信号から高周波成分を除去する。A/Dコンバータ115は、ローパスフィルタ114で高周波成分が除去されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。このようにして検出された零相電流iоは、演算回路15に入力される。
【0020】
各相電圧検出装置12は、三相モータ3(負荷機器)に印加されている三相の交流電圧の各相の対地電圧eu,ev,ewを検出する。より詳細には、各相電圧検出装置12は、図2に示すように、抵抗121,122,131,132,141,142、増幅器123,133,143、ローパスフィルタ124,134,144、A/Dコンバータ125,135,145および微分回路126,136,146を含む。
【0021】
抵抗121,122、増幅器123、ローパスフィルタ124およびA/Dコンバータ125は、三相(U相、V相、W相)のうちU相の対地電圧euを検出する。微分回路126は、U相の対地電圧euからU相の対地電圧euの微分値を算出する。U相の対地電圧euの微分値をDuとする。
【0022】
抵抗131,132、増幅器133、ローパスフィルタ134およびA/Dコンバータ135は、三相(U相、V相、W相)のうちV相の対地電圧evを検出する。微分回路136は、V相の対地電圧evからV相の対地電圧evの微分値を算出する。V相の対地電圧evの微分値をDvとする。
【0023】
抵抗141,142、増幅器143、ローパスフィルタ144およびA/Dコンバータ145は、三相(U相、V相、W相)のうちW相の対地電圧ewを検出する。微分回路146は、W相の対地電圧ewからW相の対地電圧ewの微分値を算出する。W相の対地電圧ewの微分値をDwとする。
【0024】
以下に、U相の対地電圧euの検出の構成およびU相の対地電圧euの微分値Duの算出の構成について詳細に説明する。なお、V相の対地電圧evの検出の構成およびV相の対地電圧evの微分値Dvの算出の構成、並びに、W相の対地電圧ewの検出の構成およびW相の対地電圧ewの微分値Dwの算出の構成は、U相の対地電圧euの検出の構成およびU相の対地電圧euの微分値Duの算出の構成と同じであるので説明を省略する。
【0025】
図2に示すように、抵抗121は、U線と抵抗122とに接続されている。抵抗122は、抵抗121と大地とに接続されている。これにより、抵抗121,122を通じて、U相の対地電圧euを検出する。増幅器123は、抵抗121,122で検出された電圧信号を増幅する。ローパスフィルタ124は、増幅器123で増幅された電圧信号から高周波成分を除去する。A/Dコンバータ125は、ローパスフィルタ124で高周波成分を除去されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。このようにして検出されたU相の対地電圧euは、演算回路15に入力される。微分回路126は、U相の対地電圧euを時間微分することによりU相の対地電圧euの微分値Duを算出する。このようにして検出されたU相の対地電圧euおよび算出されたU相の対地電圧euの微分値Duは、演算回路15に入力される。同様にしてV相の対地電圧ev、V相の対地電圧evの微分値Dv、W相の対地電圧ewおよびW相の対地電圧ewの微分値Dwは、演算回路15に入力される。
【0026】
演算回路15は、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのプログラムが格納されたメモリデバイスを含む。演算回路15は、それぞれ入力された零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwに基づき、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを算出する。
【0027】
図3図6に示すように、零相電流iоの周波数および各相の対地電圧eu,ev,ewの周波数は、所定の周波数となる。演算回路15は、所定のサンプリング間隔Tsmpで所定の期間にわたり零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwを算出する。サンプリング数をnとする。サンプリング数nの初期値は0である。サンプリング数nは、整数である。
【0028】
以下に、演算回路15の動作について図を参照しながら説明する。図7に、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出処理を示すフローチャートを示す。演算回路15は、図7のフローチャートに従った動作を行うことにより、絶縁抵抗算出方法を実行する。
【0029】
本処理は、例えば、三相交流電源1、インバータ2および絶縁抵抗算出装置10の電源が投入されることにより開始される。演算回路15は、サンプリング数nに1を加算する(ステップS11)。演算回路15は、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewを取得する(ステップS12、零相電流取得ステップ、各相電圧取得ステップ)。演算回路15は、各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwを取得する(ステップS13)。演算回路15は、サンプリング数nがm以上であるか否かを比較する(ステップS14)。ここで、mは、6以上の整数である。サンプリング数nがm以上である場合、本処理は、ステップS16に移行する。サンプリング数nがm未満である場合、本処理は、ステップS15に移行する。
【0030】
サンプリング数nがm未満である場合には、演算回路15は、取得した零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwを記憶する(ステップS15)。この後、本処理は、ステップS11に移行する。
【0031】
サンプリング数nがm以上である場合には、演算回路15は、取得したm組以上の零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwを用いて、以下の数式1におけるrが最小となるように、最小二乗法によって、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを算出する(ステップS16、絶縁抵抗算出ステップ)。これにより、本処理は終了する。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、rは、誤差である。右辺第1項は、零相電流iоである。右辺第2項は、三相モータ3のU相の対地抵抗成分Ruを通じて大地に流れる対地漏洩電流である。右辺第3項は、三相モータ3のV相の対地抵抗成分Rvを通じて大地に流れる対地漏洩電流である。右辺第4項は、三相モータ3のW相の対地抵抗成分Rwを通じて大地に流れる対地漏洩電流である。右辺第5項は、三相モータ3のU相の対地容量成分Cuを通じて大地に流れる対地漏洩電流である。右辺第6項は、三相モータ3のV相の対地容量成分Cvを通じて大地に流れる対地漏洩電流である。右辺第7項は、三相モータ3のW相の対地容量成分Cwを通じて大地に流れる対地漏洩電流である。
【0034】
[効果]
絶縁抵抗算出装置10によれば、インバータ2を介して三相デルタ結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗を正確に算出することができる。より詳細には、零相電流検出装置11は、三相モータ3を通じて流れる対地漏洩電流である零相電流iоを検出する。各相電圧検出装置12は、三相モータ3に印加されている三相交流電圧の各相の対地電圧eu,ev,ewを検出する。演算回路15は、零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwを算出する。演算回路15は、零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwに基づき、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを算出する。このように、絶縁抵抗算出装置10によれば、複数組の零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwを数式1に代入することにより、対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを数学的に算出できる。その結果、絶縁抵抗算出装置10によれば、インバータ2を介して三相デルタ結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗および接地容量を容易に算出することができる。
【0035】
絶縁抵抗算出装置10によれば、mが6以上の整数であり、サンプリング数nがm以上の整数であり、演算回路15は、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewに基づき、数式1における誤差rが最小となるように、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを算出している。算出する変数がRu,Rv,Rw,Cu,Cv,Cwの6個であるため、サンプリング数nは、6以上の整数であればよい。その結果、絶縁抵抗算出装置10によれば、インバータ2を介して三相デルタ結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3の絶縁抵抗および接地容量を少ない計算時間によって算出することができる。
【0036】
なお、三相交流電源1は、三相スター結線方式でもよい。前記の通り、絶縁抵抗算出装置10によれば、複数組の零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwを数式1に代入することにより、対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを数学的に算出できる。その結果、絶縁抵抗算出装置10によれば、インバータ2を介して三相スター結線方式の三相交流電源1が三相モータ3に接続されていたとしても、三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗および接地容量を容易に算出することができる。
【0037】
なお、インバータ2が出力する三相(U相、V相、W相)の交流電圧の周波数は、三相交流電源1の三相(R相、S相、T相)の交流電圧の周波数よりも高くてもよい。
【0038】
[第1の変形例]
以下に、本発明の第1の変形例に係る絶縁抵抗算出装置10aについて、図を参照しながら説明する。図8は、第1の変形例に係る絶縁抵抗算出処理を示すフローチャートである。なお、第1の変形例に係る絶縁抵抗算出装置10aについては、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10と異なる部分のみ説明し、後は省略する。
【0039】
第1の変形例に係る演算回路15の動作について図を参照しながら説明する。図8に、第1の変形例に係る絶縁抵抗算出処理を示すフローチャートを示す。
【0040】
本処理は、例えば、三相交流電源1、インバータ2および絶縁抵抗算出装置10aの電源が投入されることにより開始される。演算回路15は、サンプリング数nに1を加算する(ステップS21)。演算回路15は、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewを取得する(ステップS22、零相電流取得ステップ、各相電圧取得ステップ)。演算回路15は、以下の数式2によって、各相の対地電圧eu,ev,ewから対地中性点電圧enを算出する(ステップS23)。
【0041】
【数2】
【0042】
演算回路15は、対地中性点電圧enの微分値Dnを算出する(ステップS24)。演算回路15は、サンプリング数nがm以上であるか否かを比較する(ステップS25)。ここで、mは、4以上の整数である。サンプリング数nがm以上である場合、本処理は、ステップS27に移行する。サンプリング数nがm未満である場合、本処理は、ステップS26に移行する。
【0043】
サンプリング数nがm未満である場合には、演算回路15は、取得した零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ew、算出した対地中性点電圧enおよび対地中性点電圧enの微分値Dnを記憶する(ステップS26)。この後、本処理は、ステップS21に移行する。
【0044】
サンプリング数nがm以上である場合には、演算回路15は、取得したm組以上の零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ew、算出した対地中性点電圧enおよび対地中性点電圧enの微分値Dnを用いて、以下の数式3における誤差rが最小となるように、最小二乗法によって、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,RwとCоとを算出する(ステップS27、絶縁抵抗算出ステップ)。これにより、本処理は終了する。
【0045】
【数3】
【0046】
ここで、Cоは、対地等価容量成分である。右辺第1項は、零相電流iоである。右辺第2項は、三相モータ3のU相の対地抵抗成分Ruを通じて大地に流れる対地漏洩電流である。右辺第3項は、三相モータ3のV相の対地抵抗成分Rvを通じて大地に流れる対地漏洩電流である。右辺第4項は、三相モータ3のW相の対地抵抗成分Rwを通じて大地に流れる対地漏洩電流である。右辺第5項は、各相の対地電圧eu,ev,ewが平衡であるとみなすことにより、三相モータ3の対地等価容量成分Cоを通じて大地に流れる対地漏洩電流とみなす。
【0047】
ここで、Cоは、以下の数式4を満たす。三相モータ3は、各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwが構造的にほぼ対称であるとみなすことができる。すなわち、各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwは、対地等価容量成分Cоと等しいとみなす。
【0048】
【数4】
【0049】
以上のような絶縁抵抗算出装置10aにおいても、絶縁抵抗算出装置10と同じ効果を奏する。また、絶縁抵抗算出装置10aによれば、mが4以上の整数であり、サンプリング数nがm以上の整数であり、演算回路15は、各相の対地電圧eu,ev,ewから対地中性点電圧enを算出し、各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwが対地等価容量成分Cоと等しいとみなすことにより、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewに基づき、数式3における誤差rが最小となるように、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを算出している。算出する変数がRu,Rv,Rw,Cоの4個であるため、サンプリング数nは、4以上の整数であればよい。その結果、絶縁抵抗算出装置10aによれば、インバータ2を介して三相デルタ結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3の絶縁抵抗および接地容量をより少ない計算時間によって算出することができる。
【0050】
[第2の実施形態]
以下に、本発明の第2の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10bについて、図を参照しながら説明する。図9は、第2の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。図10は、第2の実施形態に係るU相の対地電圧euと時間との関係の一例を示した図である。図11は、第2の実施形態に係るV相の対地電圧evと時間との関係の一例を示した図である。図12は、第2の実施形態に係るW相の対地電圧ewと時間との関係の一例を示した図である。なお、第2の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10bについては、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10と異なる部分のみ説明し、後は省略する。
【0051】
本実施形態では、インバータ2が出力する三相(U相、V相、W相)の交流電圧の周波数は、三相交流電源1の三相(R相、S相、T相)の交流電圧の周波数と等しい。
【0052】
図9図12に示すように、零相電流iоの周波数および各相の対地電圧eu,ev,ewの周波数は、所定の周波数となる。
【0053】
以上のような絶縁抵抗算出装置10bにおいても、絶縁抵抗算出装置10と同じ効果を奏する。また、絶縁抵抗算出装置10bによれば、インバータ2を介して三相デルタ結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗を正確に算出することができる。すなわち、絶縁抵抗算出装置10bによれば、インバータ2を介して三相デルタ結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗および接地容量を算出することができる。インバータ2が出力する三相(U相、V相、W相)の交流電圧の周波数は、三相交流電源1の三相(R相、S相、T相)の交流電圧の周波数と等しくてもよい。
【0054】
なお、三相交流電源1は、三相スター結線方式でもよい。
【0055】
[第3の実施形態]
以下に、本発明の第3の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10cについて、図を参照しながら説明する。図13は、第3の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10cの構成を示すブロック図である。図14は、第3の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。図15は、第3の実施形態に係るR相の対地電圧erと時間との関係の一例を示した図である。図16は、第3の実施形態に係るS相の対地電圧esと時間との関係の一例を示した図である。図17は、第3の実施形態に係るT相の対地電圧etと時間との関係の一例を示した図である。なお、第3の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10cについては、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10と異なる部分のみ説明し、後は省略する。
【0056】
図13に示すように、本実施形態では、絶縁抵抗算出装置10cは、三相交流電源1によって駆動される三相モータ3の絶縁抵抗を算出するように構成されている。
【0057】
本実施形態では、三相交流電源1の三相(R相、S相、T相)は、R線、S線およびT線を介して、三相モータ3の入力にそれぞれ接続されている。本実施形態では、三相交流電源1は、三相デルタ結線方式であり、S相が接地されている。
【0058】
三相モータ3は、三相交流電源1から供給される三相の交流電圧により駆動される。三相の交流電圧は、それぞれ、三相の接地電位を基準とした交流電圧(対地電圧)である。すなわち、R相の交流電圧は、R相の対地電圧erである。S相の交流電圧は、S相の対地電圧esである。T相の交流電圧は、T相の対地電圧etである。また、R相の対地電圧erの微分値をDrとする。S相の対地電圧esの微分値をDsとする。T相の対地電圧etの微分値をDtとする。また、R相、S相およびT相の対地抵抗成分をそれぞれ、Rr,Rs,Rtとする。また、R相、S相、およびT相の対地容量成分をそれぞれ、Cr,Cs,Ctとする。
【0059】
図14図17に示すように、零相電流iоの周波数、R相の対地電圧erおよびT相の対地電圧etの周波数は、所定の周波数となる。S相の対地電圧esは、S相が接地されているため、常にゼロ(0)となる。これに伴い、S相の対地電圧esの微分値Dsは、常にゼロ(0)となる。したがって、数式1の右辺第3項および右辺第6項にゼロ(0)を代入することにより、数式1は、以下の数式5となる。
【0060】
【数5】
【0061】
この場合、サンプリング数nがm以上である場合には、演算回路15は、数式5における誤差rが最小となるように、最小二乗法によって、R相およびT相の対地抵抗成分Rr,RtとR相およびT相の対地容量成分Cr,Ctとを算出する。ここで、mは、4以上の整数である。
【0062】
以上のような絶縁抵抗算出装置10cにおいても、絶縁抵抗算出装置10と同じ効果を奏する。また、絶縁抵抗算出装置10cによれば、三相デルタ結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗を正確に算出することができる。すなわち、絶縁抵抗算出装置10cによれば、三相デルタ結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗および接地容量を算出することができる。
【0063】
[第4の実施形態]
以下に、本発明の第4の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10dについて、図を参照しながら説明する。図18は、第4の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10dの構成を示すブロック図である。図19は、第4の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。図20は、第4の実施形態に係るR相の対地電圧erと時間との関係の一例を示した図である。図21は、第4の実施形態に係るS相の対地電圧esと時間との関係の一例を示した図である。図22は、第4の実施形態に係るT相の対地電圧etと時間との関係の一例を示した図である。なお、第4の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10dについては、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10と異なる部分のみ説明し、後は省略する。
【0064】
図18に示すように、本実施形態では、絶縁抵抗算出装置10dは、三相交流電源1によって駆動される三相モータ3の絶縁抵抗を算出するように構成されている。
【0065】
本実施形態では、三相交流電源1の三相(R相、S相、T相)は、R線、S線およびT線を介して、三相モータ3の入力にそれぞれ接続されている。本実施形態では、三相交流電源1は、三相スター結線方式である。
【0066】
三相モータ3は、三相交流電源1から供給される三相の交流電圧により駆動される。三相の交流電圧は、それぞれ、三相の接地電位を基準とした交流電圧(対地電圧)である。すなわち、R相の交流電圧は、R相の対地電圧erである。S相の交流電圧は、S相の対地電圧esである。T相の交流電圧は、T相の対地電圧etである。また、R相の対地電圧erの微分値をDrとする。S相の対地電圧esの微分値をDsとする。T相の対地電圧etの微分値をDtとする。また、R相、S相およびT相の対地抵抗成分をそれぞれ、Rr,Rs,Rtとする。また、R相、S相、およびT相の対地容量成分をそれぞれ、Cr,Cs,Ctとする。
【0067】
図19図22に示すように、零相電流iоの周波数、R相の対地電圧er、S相の対地電圧es、およびT相の対地電圧etの周波数は、所定の周波数となる。
【0068】
以上のような絶縁抵抗算出装置10dにおいても、絶縁抵抗算出装置10と同じ効果を奏する。また、絶縁抵抗算出装置10dによれば、三相スター結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗を正確に算出することができる。すなわち、絶縁抵抗算出装置10dによれば、三相スター結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗および接地容量を算出することができる。
【0069】
[第5の実施形態]
以下に、本発明の第5の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10eについて、図を参照しながら説明する。図23は、第5の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。図24は、第5の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。なお、第5の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10eについては、第1の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10と異なる部分のみ説明し、後は省略する。
【0070】
本実施形態では、インバータ2が出力する三相(U相、V相、W相)の交流電圧の周波数は、三相交流電源1の三相(R相、S相、T相)の交流電圧の周波数と等しい。
【0071】
この場合、図9乃至図12に示すように、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの包絡線は、一定となる。図23は、包絡線が一定の例として、零相電流iоを正弦波で表した一例である。
【0072】
ここで、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewのサンプリング間隔をTsmpとする。零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewのサンプリング間隔Tsmpは、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの検出間隔と等しい。また、三相交流電源1の三相交流電圧の周期をTpwrとする。
【0073】
図7に示すフローチャートを開始する前に、以下の数式6を満たすように、kおよびmを設定する。
【0074】
【数6】
【0075】
ここで、kは、自然数であり、kとmとは、互いに素である。
【0076】
例えば、mを8とし、kを1とする。図23に示すように、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewのサンプリング間隔Tsmp×6は、三相交流電源1の三相交流電圧の周期Tpwrよりも短い。これにより、三相交流電源1の三相交流電圧の周期Tpwr以下の時間によって、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを算出することもできる。
【0077】
例えば、mを8とし、kを9とする。図24に示すように、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewのサンプリング間隔Tsmpは、三相交流電源1の三相交流電圧の周期Tpwrよりも長い。
【0078】
以上のような絶縁抵抗算出装置10eにおいても、絶縁抵抗算出装置10と同じ効果を奏する。また、絶縁抵抗算出装置10eによれば、mは、数式6を満たし、kは、自然数であり、kとmとは、互いに素である。例えば、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewが正弦波で表される波形であったとしても、kとmとが互いに素であるため、取得した零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwの組が同じ値の組になることがない。これにより、複数組の零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwを数式1に代入することにより、対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを数学的に算出できる。その結果、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの包絡線が一定となる場合に、三相交流電源1の三相交流電圧の周期Tpwr以下の時間によって、三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗および接地容量を算出することができる。
【0079】
なお、絶縁抵抗算出装置10eは、三相交流電源1によって駆動される三相モータ3の絶縁抵抗を算出するように構成されていてもよい。この場合においても、図14乃至図17または図19乃至図22に示すように、零相電流iоおよび各相の対地電圧er,es,etの包絡線は一定となり、本実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10eは、適用できる。
【0080】
なお、本実施形態では、mは、6以上の整数であるが、mは、4以上の整数であってもよい。この場合、演算回路15は、対地中性点電圧enの微分値Dnを算出し、サンプリング数nがm以上であるか否かを比較する。演算回路15は、取得した零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ew、算出した対地中性点電圧enおよび対地中性点電圧enの微分値Dnを記憶する(ステップS26)。演算回路15は、取得したm組以上の零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ew、算出した対地中性点電圧enおよび対地中性点電圧enの微分値Dnを用いて、数式3における誤差rが最小となるように、最小二乗法によって、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,RwとCоとを算出する(ステップS27)。これにより、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの包絡線が一定となる場合にも、三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗および接地容量とをより少ない計算時間によって算出することができる。
【0081】
[第6の実施形態]
以下に、本発明の第6の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10fについて、図を参照しながら説明する。図25は、第6の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。図26は、第6の実施形態に係る零相電流iоと時間との関係の一例を示した図である。なお、第6の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10fについては、第5の実施形態に係る絶縁抵抗算出装置10eと異なる部分のみ説明し、後は省略する。
【0082】
本実施形態では、インバータ2が出力する三相(U相、V相、W相)の交流電圧の周波数は、三相交流電源1の三相(R相、S相、T相)の交流電圧の周波数(すなわち、電源周波数)と異なる。
【0083】
この場合、図3乃至図6に示すように、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの包絡線は、変動する。図25は、包絡線が変動する例として、零相電流iоを正弦波で表した一例である。
【0084】
この場合、三相交流電源1の三相交流電圧の周期Tpwr以下の時間によって、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを算出すると、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを正確に算出できないおそれがある。
【0085】
この場合、例えば、mを8とし、kを9とする。図26に示すように、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewのサンプリング間隔Tsmpは、三相交流電源1の三相交流電圧の周期Tpwrよりも長くなる。これにより、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを正確に算出することができるようになる。
【0086】
以上のような絶縁抵抗算出装置10fにおいても、絶縁抵抗算出装置10と同じ効果を奏する。また、絶縁抵抗算出装置10fによれば、mは、数式6を満たし、kは、自然数であり、kとmとは、互いに素である。例えば、各相の対地電圧eu,ev,ewが正弦波で表される波形であったとしても、kとmとが互いに素であるため、取得した零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwの組が同じ値の組になることがない。これにより、複数組の零相電流iо、各相の対地電圧eu,ev,ewおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwを数式1に代入することにより、対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとを数学的に算出できる。その結果、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの包絡線が変動する場合にも、三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗および接地容量を正確に算出することができる。
【0087】
[効果まとめ]
絶縁抵抗算出装置10,10a,10bによれば、インバータ2を介して三相デルタ結線方式または三相スター結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗を算出することができる。インバータ2が出力する三相(U相、V相、W相)の交流電圧の周波数は、三相交流電源1の三相(R相、S相、T相)の交流電圧の周波数よりも低くてもよいし、等しくてもよいし、高くてもよい。
【0088】
また、絶縁抵抗算出装置10c,10dによれば、三相デルタ結線方式または三相スター結線方式の三相交流電源1によって駆動される三相モータ3の絶縁抵抗を算出することができる。
【0089】
また、絶縁抵抗算出装置10e,10fによれば、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの包絡線が一定となる場合に、三相交流電源1の三相交流電圧の周期Tpwr以下の時間によって、インバータ2を介して三相デルタ結線方式または三相スター結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗を算出することができる。また、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの包絡線が一定となる場合に、三相交流電源1の三相交流電圧の周期Tpwr以下の時間によって、三相デルタ結線方式または三相スター結線方式の三相交流電源1によって駆動される三相モータ3の絶縁抵抗を算出することができる。
【0090】
また、絶縁抵抗算出装置10e,10fによれば、零相電流iоおよび各相の対地電圧eu,ev,ewの包絡線が変動する場合に、インバータ2を介して三相デルタ結線方式または三相スター結線方式の三相交流電源1に接続されている三相モータ3(負荷機器)の絶縁抵抗を正確に算出することができる。
【0091】
このように、絶縁抵抗算出装置10,10a~10fによれば、三相交流電源の結線方式にかかわらず対地絶縁抵抗を算出することができる。
【0092】
[その他の実施形態]
本発明に係る絶縁抵抗算出装置は、絶縁抵抗算出装置10,10a~10fに限らず、その要旨の範囲において変更可能である。また、絶縁抵抗算出装置10,10a~10fの構成を任意に組み合わせてもよい。
【0093】
なお、零相電流iоは、U線、V線およびW線を流れる電流をそれぞれ計測し、計測した各相を流れる電流から算出してもよい。
【0094】
なお、微分回路126,136,146は、それぞれ、ローパスフィルタ124,134,144によって高周波成分が除去されたアナログ信号を微分することにより、各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwを算出するようにしてもよい。微分回路126,136,146は、それぞれ、例えば、抵抗(R)とコンデンサ(C)を直列に接続したRC回路である。この場合、A/Dコンバータ125,135,145は、それぞれ、微分回路126,136,146が算出した各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwをデジタル信号に変換する。このようにして算出された各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwは、演算回路15に入力されてもよい。
【0095】
なお、微分回路126,136,146は、必須ではない。各相の対地電圧の微分値は、A/Dコンバータ125,135,145から入力された各相の対地電圧を演算回路15が時間微分することにより算出してもよい。
【0096】
また、増幅器113,123,133,143およびローパスフィルタ114,124,134,144は、必須ではない。
【0097】
なお、各相の対地抵抗成分と各相の対地容量成分との算出は、最小二乗法に限らない。例えば、最小二乗法以外の回帰分析により各相の対地抵抗成分と各相の対地容量成分とを算出してもよい。
【0098】
なお、各相の対地抵抗成分Ru,Rv,Rwと各相の対地容量成分Cu,Cv,Cwとの算出は、数式1、数式3および数式5に限らない。
【0099】
なお、対地中性点電圧enの微分値Dnは、各相の対地電圧eu,ev,ewの微分値Du,Dv,Dwを加算して3で除算することにより算出してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1:三相交流電源
2:インバータ
3:三相モータ
10,10a,10b,10c,10d,10e,10f:絶縁抵抗算出装置
11:零相電流検出装置
12:各相電圧検出装置
15:演算回路
111:零相変流器
113,123,133,143:増幅器
114,124,134,144:ローパスフィルタ
115,125,135,145:A/Dコンバータ
121,122,131,132,141,142:抵抗
126,136,146:微分回路
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