IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋紡エムシー株式会社の特許一覧

特許7409568接着剤組成物、接着シート、電磁波シールド材、積層体およびプリント配線板
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】接着剤組成物、接着シート、電磁波シールド材、積層体およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/30 20060101AFI20231226BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20231226BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231226BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C09J123/30
C09J179/08 Z
C09J11/06
B32B27/00 D
H05K1/03 650
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023533183
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2022026929
(87)【国際公開番号】W WO2023282318
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2021113991
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薗田 遼
(72)【発明者】
【氏名】入澤 隼人
(72)【発明者】
【氏名】川楠 哲生
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-095570(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209108(WO,A1)
【文献】特開昭62-59681(JP,A)
【文献】特開2016-56249(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158360(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/106848(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/070606(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/116967(WO,A1)
【文献】特開2013-193253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
H05K 1/03
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ポリオレフィン樹脂(a)、ポリイミド樹脂(b)および硬化剤(c)を含み、
前記ポリイミド樹脂(b)がポリオレフィンポリオール、ポリオレフィンポリアミン、ポリオレフィンポリカルボン酸、ダイマージオール、ダイマージアミンおよびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種類を構成単位として有し、
変性ポリオレフィン樹脂(a)とポリイミド樹脂(b)の合計100質量部に対し、変性ポリオレフィン樹脂(a)を50~95質量部含有する、接着剤組成物。
【請求項2】
変性ポリオレフィン樹脂(a)の酸価が5~30mgKOH/gである請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
硬化剤(c)がエポキシ樹脂、ポリイソシアネートおよびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種類を含む請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
10GHzにおける比誘電率が3.0未満である請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
硬化剤(c)の含有量が変性ポリオレフィン樹脂(a)とポリイミド樹脂(b)の合計100質量部に対し、0.5~60質量部である、請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の接着剤組成物からなる層を有する接着シート。
【請求項7】
請求項1または2に記載の接着剤組成物からなる層を有する電磁波シールド材。
【請求項8】
請求項1または2に記載の接着剤組成物からなる層を有する積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体を構成要素として含むプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関する。より詳しくは、樹脂基材と樹脂基材または金属基材との接着に用いられる接着剤組成物に関する。特にフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと略す)用接着剤組成物、並びにそれを含む接着シート、電磁波シールド材、積層体およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(FPC)は、優れた屈曲性を有することから、パソコン(PC)やスマートフォンなどの多機能化、小型化に対応することができ、そのため狭く複雑な内部に電子回路基板を組み込むために多く使用されている。近年、電子機器の小型化、軽量化、高密度化、高出力化が進み、これらの流行から配線板(電子回路基板)の性能に対する要求がますます高度なものとなっている。特にFPCにおける伝送信号の高速化に伴い、信号の高周波化が進んでいる。これに伴い、FPCには、高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)の要求が高まっている。このような、低誘電特性を達成するため、FPCの基材や接着剤の誘電体損失を低減する方策がなされている。接着剤としてはポリオレフィンとエポキシの組み合わせ(特許文献1)やエラストマーとエポキシの組み合わせ(特許文献2)にて開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2016/047289号公報
【文献】WO2014/147903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、補強板や層間に使用される接着剤のハンダ耐熱性に優れるとは言い難い。また、特許文献2では、使用時に重要となる配合後の保存安定性が十分でなかった。
【0005】
また近年のFPCの小型化のため回路基板は高密度化となっており、回路導通を図るため、レーザー加工によるブラインドビア、スルーホールといった穴あけ加工が行われている。レーザー加工の高精度技術を確立するため、UVレーザーによる加工がされており、主に355nmの波長にて穴あけ加工が行われているが、上記文献ではレーザー加工性について検討はされていなかった。
【0006】
すなわち、本発明は、ポリイミドなどの様々な樹脂基材と金属基材双方への良好な接着性を有し、且つハンダ耐熱性、低誘電特性、およびレーザー加工性にも優れた接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
【0008】
[1] 変性ポリオレフィン樹脂(a)、ポリイミド樹脂(b)および硬化剤(c)を含み、
前記ポリイミド樹脂(b)がポリオレフィンポリオール、ポリオレフィンポリアミン、ポリオレフィンポリカルボン酸、ダイマージオール、ダイマージアミンおよびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種類を構成単位として有する、接着剤組成物。
【0009】
[2] 変性ポリオレフィン樹脂(a)の酸価が5~30mgKOH/gである前記[1]に記載の接着剤組成物。
【0010】
[3] 硬化剤(c)がエポキシ樹脂、ポリイソシアネートおよびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種類を含む前記[1]または[2]に記載の接着剤組成物。
【0011】
[4] 変性ポリオレフィン樹脂(a)とポリイミド樹脂(b)の合計100質量部に対し、変性ポリオレフィン樹脂(a)を50~95質量部含有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の接着剤組成物。
【0012】
[5] 10GHzにおける比誘電率が3.0未満である前記[1]~[4]のいずれかに記載の接着剤組成物。
【0013】
[6] 硬化剤(c)の含有量が変性ポリオレフィン樹脂(a)とポリイミド樹脂(b)の合計100質量部に対し、0.5~60質量部である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の接着剤組成物。
【0014】
[7] 前記[1]~[6]のいずれかに記載の接着剤組成物からなる層を有する接着シート。
【0015】
[8] 前記[1]~[6]のいずれかに記載の接着剤組成物からなる層を有する電磁波シールド材。
【0016】
[9] 前記[1]~[6]のいずれかに記載の接着剤組成物からなる層を有する積層体。
【0017】
[10] 前記[9]に記載の積層体を構成要素として含むプリント配線板。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる接着剤組成物は、ポリイミドなどの様々な樹脂基材と金属基材双方への良好な接着性を有し、且つハンダ耐熱性、低誘電特性、およびレーザー加工性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<変性ポリオレフィン樹脂(a)>
本発明で用いる変性ポリオレフィン樹脂(a)(以下、単に(a)成分ともいう。)は限定的ではないが、ポリオレフィン樹脂にα,β-不飽和カルボン酸およびその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン等に例示されるオレフィンモノマーの単独重合、もしくはその他のモノマーとの共重合、および得られた重合体の水素化物やハロゲン化物など、炭化水素骨格を主体とする重合体を指す。すわなち、変性ポリオレフィン樹脂(a)は、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびプロピレン-α-オレフィン共重合体の少なくとも1種に、α,β-不飽和カルボン酸およびその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものが好ましい。
【0020】
プロピレン-α-オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα-オレフィンを共重合したものである。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、酢酸ビニルなどを1種又は数種用いるこができる。これらのα-オレフィンの中では、エチレン、1-ブテンが好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体のプロピレン成分とα-オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0021】
α,β-不飽和カルボン酸およびその酸無水物の少なくとも1種としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸およびこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。すなわち、変性ポリオレフィン樹脂(a)は、具体的には、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等が挙げられ、これら無水マレイン酸変性ポリオレフィンを1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
変性ポリオレフィン樹脂(a)の酸価は、ハンダ耐熱性および樹脂基材や金属基材との接着性の観点から、下限は5mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは6mgKOH/g以上であり、さらに好ましくは7mgKOH/g以上である。前記下限値以上とすることで硬化剤(c)との反応性が良好となり、優れた接着強度を発現することができる。また、架橋密度が高くハンダ耐熱性が良好となる。上限は30mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは28mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは25mgKOH/g以下である。前記上限値以下とすることで接着性が良好となる。また、溶液の粘度や安定性が良好となり、優れたポットライフ性を発現できる。さらに製造効率も向上する。
【0023】
変性ポリオレフィン樹脂(a)の数平均分子量(Mn)は、10,000~50,000の範囲であることが好ましい。より好ましくは15,000~45,000の範囲であり、さらに好ましくは20,000~40000の範囲であり、特に好ましくは22,000~38,000の範囲である。前記下限値以上とすることで凝集力が良好となり、優れた接着性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで流動性に優れ、操作性が良好となる。
【0024】
変性ポリオレフィン樹脂(a)は、結晶性であることが好ましい。本発明でいう結晶性とは、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、-100℃~250℃ まで20℃/分で昇温し、該昇温過程に明確な融解ピークを示すものを指す。
【0025】
変性ポリオレフィン樹脂(a)の融点(Tm)は、50℃~120℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは60℃~100℃の範囲であり、最も好ましくは70℃~90℃の範囲である。前記下限値以上とすることで結晶由来の凝集力が良好となり、優れた接着性やハンダ耐熱性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで溶液安定性、流動性に優れ、接着時の操作性が良好となる。
【0026】
変性ポリオレフィン樹脂(a)の融解熱量(ΔH)は、5J/g~60J/gの範囲であることが好ましい。より好ましくは10J/g~50J/gの範囲であり、最も好ましくは20J/g~40J/gの範囲である。前記下限値以上とすることで結晶由来の凝集力が良好となり、優れた接着性やハンダ耐熱性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで溶液安定性、流動性に優れ、接着時の操作性が良好となる。
【0027】
変性ポリオレフィン樹脂(a)の製造方法としては、特に限定されず、例えばラジカルグラフト反応(すなわち主鎖となるポリマーに対してラジカル種を生成し、そのラジカル種を重合開始点として不飽和カルボン酸および酸無水物をグラフト重合させる反応)、などが挙げられる。
【0028】
ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、有機過酸化物を使用することが好ましい。有機過酸化物としては、特に限定されないが、ジ-tert-ブチルパーオキシフタレート、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類等が挙げられる。
【0029】
<ポリイミド樹脂(b)>
本発明で用いるポリイミド樹脂(b)(以下、単に(b)成分ともいう。)は酸無水物基を有するポリカルボン酸誘導体とポリイソシアネート化合物またはポリアミン化合物との反応により得られるものである。また、本発明で用いるポリイミド樹脂(b)はポリオレフィンポリオール、ポリオレフィンポリアミン、ポリオレフィンポリカルボン酸、ダイマージオール、ダイマージアミンおよびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種類を構成単位として有するポリイミド樹脂である。ここで、ポリイミド樹脂とはイミド結合を有する重合体を指し、ポリイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等も含むものである。
【0030】
本発明に用いるポリイミド樹脂(b)は、ポリオレフィンポリオール、ポリオレフィンポリアミン、ポリオレフィンポリカルボン酸、ダイマージオール、ダイマージアミンおよびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種類を構成単位として有することにより、ポリイミド樹脂(b)をより低誘電化することができ、また、変性ポリオレフィン樹脂(a)との相溶性も向上する。前記構成単位の含有量は、ポリイミド樹脂(b)中、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。また、95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。前記下限値以上とすることで、十分な低誘電特性が確保され、前記上限値以下とすることでハンダ耐熱性およびレーザー加工性が良好となる。
【0031】
本発明に用いるポリイミド樹脂(b)の酸価はハンダ耐熱性および樹脂基材や金属基材との接着性、低誘電特性の観点から、下限は1mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは1.5mgKOH/g以上であり、さらに好ましくは2mgKOH/g以上である。前記下限値以上とすることで硬化剤(c)との反応性が良好となり、優れた接着強度を発現することができる。また、架橋密度が高くハンダ耐熱性が良好となる。上限は25mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは23mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは20mgKOH/g以下である。前記上限値以下とすることで低誘電特性が良好となる。また、溶液の粘度や安定性が良好となり、優れたポットライフ性を発現できる。さらに製造効率も向上する。
【0032】
本発明に用いるポリイミド樹脂(b)の対数粘度は樹脂基材や金属基材との接着性および相溶性の観点から、下限は0.05dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.06dl/g以上であり、さらに好ましくは0.07dl/g以上である。前記下限値以上とすることで接着性が良好となる。上限は0.40dl/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.38dl/g以下であり、さらに好ましくは0.35dl/g以下である。前記上限値以下とすることで変性オレフィン樹脂との相溶性が良好となる。また、溶液の粘度や安定性が良好となり、優れたポットライフ性を発現できる。さらに製造効率も向上する。
【0033】
<酸無水物基を有するポリカルボン酸誘導体>
本発明に用いるポリイミド樹脂(b)を構成する酸無水物基を有するポリカルボン酸誘導体は、例えば芳香族ポリカルボン酸誘導体、脂肪族ポリカルボン酸誘導体または脂環族ポリカルボン酸誘導体を用いることができる。これらを単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。なかでも芳香族ポリカルボン酸誘導体が好ましい。また、ポリカルボン酸誘導体の価数は特に限定されない。酸無水物基は1分子中に1個または2個有することが好ましく、酸無水物基を有するポリカルボン酸誘導体中にカルボキシル基を1つ以上含有していても構わない。
【0034】
芳香族ポリカルボン酸誘導体としては、特に限定されないが、例えば、トリメリット酸無水物(TMA)、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸二無水物(BisDA)、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、1,4-ブタンジオールビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等のアルキレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’-4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’-4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、m-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス[4-(2,3-または3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、または1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物等が挙げられる。
【0035】
脂肪族ポリカルボン酸誘導体または脂環族ポリカルボン酸誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ペンタン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサヒドロピロメリット酸二無水物、シクロヘキサ-1-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、3-エチルシクロヘキサ-1-エン-3-(1,2),5,6-テトラカルボン酸二無水物、1-メチル-3-エチルシクロへキサン-3-(1,2),5,6-テトラカルボン酸二無水物、1-メチル-3-エチルシクロへキサ-1-エン-3-(1,2),5,6-テトラカルボン酸二無水物、1-エチルシクロへキサン-1-(1,2),3,4-テトラカルボン酸二無水物、1-プロピルシクロへキサン-1-(2,3),3,4-テトラカルボン酸二無水物、1,3-ジプロピルシクロへキサン-1-(2,3),3-(2,3)-テトラカルボン酸二無水物、ジシクロへキシル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、またはヘキサヒドロトリメリット酸無水物等が挙げられる。
【0036】
これらの酸無水物基を有するポリカルボン酸誘導体は単独でも2種以上を組み合わせて用いても構わない。低誘電特性、コスト面などを考慮すれば芳香族ポリカルボン酸誘導体が好ましく、中でもトリメリット酸無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ピロメリット酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4、4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、または3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がより好ましい。
【0037】
酸無水物基を有するポリカルボン酸誘導体の含有量は、ポリイミド樹脂(b)中、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上である。また、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは35質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。上記範囲内にすることにより、優れた接着性、ハンダ耐熱性、レーザー加工性、低誘電特性を発現することができる。
【0038】
<ポリオレフィンポリオール成分>
本発明に用いるポリイミド樹脂(b)を構成するポリオレフィンポリオール成分はポリイミド樹脂(b)の柔軟成分としての役割を有する。ポリオレフィンポリオールは、複数のヒドロキシ基を有する、ポリオレフィン骨格の重合体である。このようなポリオレフィンポリオールの具体例としては、ポリエチレンブチレンジオール(ポリエチレンブチレンポリオール)、ポリブタジエンジオール(ポリブタジエンポリオール)、および水素化ポリブタジエンジオール(水素化ポリブタジエンポリオール)等を挙げることができる。ポリオレフィンポリオールは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。ポリエチレンブチレンジオールの市販品としては、商品名「ポリテール」(三菱化学社製)等がある。また、ポリブタジエンジオールの市販品としては、商品名「KRASOL」(Cray Valley社製)等がある。さらに、水素化ポリブタジエンジオールの市販品としては、商品名「NISSO-PB」(日本曹達社製)等がある。
【0039】
<ダイマージオール成分>
本発明に用いるポリイミド樹脂(b)を構成するダイマージオール成分はポリイミド樹脂(b)の柔軟成分としての役割を有する。ダイマージオールとは、重合体脂肪酸から誘導される還元反応生成物であることが好ましい。重合体脂肪酸とはダイマー酸とも呼ばれ、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の炭素数18(C18)の不飽和脂肪酸、乾性油脂肪酸または半乾性油脂肪酸、およびこれらの脂肪酸の低級のモノアルコールエステルを触媒の存在下または非存在下に二分子重合させたもの(2量体)である。ダイマージオールはその分子中に残留不飽和結合並びに不純物としてトリマートリオール等を含有していても構わない。
【0040】
ダイマージオール成分としては、例えばクローダジャパン社製、商品名「プリポール2033」(二重結合を有する混合物)、「プリポール2030」(二重結合を有さない混合物)やBASFジャパン社製、商品名「ソバモール650NS」、「ソバモール908」等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用しても構わない。
【0041】
<ダイマー酸成分>
ダイマー酸成分は、上記ダイマージオールの出発原料の重合体脂肪酸である。ダイマー酸は、単独または2種類以上を併用して使用できる。ダイマー酸の市販品を挙げると、例えば、クローダジャパン社製の「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」、「プリポール1015」、「プリポール1017」、「プリポール1022」、「プリポール1025」、「プリポール1040」;BASFジャパン社製の「エンポール1008」、「エンポール1012」、「エンポール1016」、「エンポール1026」、「エンポール1028」、「エンポール1043」、「エンポール1061」、「エンポール1062」等が挙げられる。
【0042】
<ダイマージアミン成分>
ダイマージアミン成分は、上記ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化した化合物が挙げられる。前記転化方法は、例えば、カルボン酸をアミド化させ、ホフマン転位によりアミン化させ、さらに蒸留・精製を行う方法が挙げられる。ダイマージアミンの市販品は、例えば、クローダジャパン社製の「プリアミン1071」、「プリアミン1073」、「プリアミン1074」、「プリアミン1075」や、BASFジャパン社製の「バーサミン551」等が挙げられる。ダイマージアミンは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0043】
<ポリイソシアネート化合物>
本発明に用いるポリイミド樹脂(b)を構成するポリイソシアネート化合物は特に限定されず、例えば芳香族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物もしくは脂環族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。より好ましくは芳香族ジイソシアネート化合物である。芳香族ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’-又は3,3’-又は4,2’-又は4,3’-又は5,2’-又は5,3’-又は6,2’-又は6,3’-ジメチルジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’-又は3,3’-又は4,2’-又は4,3’-又は5,2’-又は5,3’-又は6,2’-又は6,3’-ジエチルジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’-又は3,3’-又は4,2’-又は4,3’-又は5,2’-又は5,3’-又は6,2’-又は6,3’-ジメトキシジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-3,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート、ベンゾフェノン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルホン-4,4’-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート(TDI)、トリレン-2,6-ジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-[2,2ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネート、3,3’-または2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-または2,2’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。ハンダ耐熱性、接着性、溶解性、コスト面などを考慮すれば、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、3,3’-または2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネートが更に好ましい。また、これらを単独で、または2種以上を併用することができる。
【0044】
<ポリアミン化合物>
本発明に用いるポリイミド樹脂(b)を構成するポリアミン化合物は特に限定されず、例えば、ジアミン化合物、ポリアミン化合物が挙げられる。ジアミン化合物は、例えば、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノトルエン、3,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノー1,2-ジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’―ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。ポリアミンは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0045】
イソシアネート化合物およびポリアミン化合物の含有量は、ポリイミド樹脂(b)中、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは13質量%であり、さらに好ましくは15質量%以上である。また、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0046】
本発明に用いるポリイミド樹脂(b)の製造方法としては特に限定されず、従来公知のポリイミド樹脂の製造方法を適用できる。ポリイミド樹脂(b)の重合反応に供する各原料の使用比率は、酸無水物基、カルボキシル基および水酸基の各当量の合計(A)と、イソシアネート基およびアミノ基の各当量の合計(B)との比率が、(B)/(A)=0.7~1.3となるようにすることが好ましく、0.8~1.2となるようにすることがより好ましい。前記下限値以上とすることでポリイミド樹脂(b)の分子量を高くすることができ、塗膜が脆くなることを防ぐことができる。また、前記上限値以下とすることでポリイミド樹脂(b)の粘度を抑え、接着剤溶液を塗布する際のレベリング性が良好となる。
【0047】
本発明で用いるポリイミド樹脂(b)の重合反応は、1種以上の有機溶媒の存在下に、例えばイソシアネート法では遊離発生する炭酸ガスを反応系より除去しながら加熱縮合させることにより行うことが好ましい。
【0048】
重合溶媒としては、イソシアネート基やアミン基との反応性が低いものであれば使用することができ、例えば、アミン等の塩基性化合物を含まない溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルムおよび塩化メチレン等を挙げることができる。これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
乾燥時の揮発性とポリマー重合性、溶解性の良さから、重合溶媒は、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノンが好ましい。より好ましくは、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノンである。また、これらは本発明の接着剤組成物の希釈剤としても使用することができる。
【0050】
溶媒の使用量は、生成するポリイミド樹脂(b)の0.8~5.0倍(質量比)とすることが好ましく、1.0~3.0倍とすることがより好ましい。使用量を前記下限値以上とすることで合成時の粘度の上昇を抑え、撹拌性が良好となる。また、前記上限値以下とすることで反応速度の低下を抑えることができる。
【0051】
反応温度は、60~200℃とすることが好ましく、100~180℃とすることがより好ましい。反応温度を前記下限値以上とすることで反応時間を短くすることができる。また前記上限値以下とすることでモノマー成分の分解を抑えることができ、さらに三次元化反応によるゲル化を抑えることができる。反応温度は多段階で変更してもよい。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件、特に反応濃度により適宜選択することができる。
【0052】
反応を促進するためにトリエチルアミン、ルチジン、ピコリン、ウンデセン、トリエチレンジアミン(1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン)等のアミン類、リチウムメチラート、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムブトキサイド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属化合物あるいはチタン、コバルト、スズ、亜鉛、アルミニウムなどの金属、半金属化合物などの触媒の存在下で反応させても良い。その中でも絶縁性を考慮するとトリエアチルアミンやDBUが好ましい。
【0053】
<硬化剤(c)>
本発明の樹脂組成物は、硬化剤(c)を含有する。樹脂組成物に硬化剤(c)を含有させることで、接着性およびハンダ耐熱性をさらに向上させることが可能である。硬化剤(c)としては、公知のものを用いることができる。硬化剤(c)として、例えば、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、オキサゾリン架橋剤、アジリジン架橋剤を挙げることができる。好ましくはエポキシ樹脂、ポリイソシアネート、ポリカルボジイミドである。これらの架橋剤の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
<エポキシ樹脂>
本発明で用いるエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を有するものであれば、特に限定されないが、好ましくは分子中に2個以上のエポキシ基を有するものである。具体的には、特に限定されないが、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、およびエポキシ変性ポリブタジエン等が挙げられ、これらを1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂である。より好ましくは、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂である。
【0055】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、50g/eq以上であることが好ましく、より好ましくは70g/eq以上であり、さらに好ましくは80g/eq以上である。また、400g/eq以下であることが好ましく、より好ましくは350g/eq以下であり、さらに好ましくは300g/eq以下である。前記範囲内とすることで、優れたハンダ耐熱性を発現することができる。
【0056】
<ポリカルボジイミド>
本発明で用いるポリカルボジイミドとしては、分子内にカルボジイミド基を有するものであれば、特に限定されない。好ましくは分子内にカルボジイミド基を2個以上有するポリカルボジイミドである。
ポリカルボジイミドは、芳香族カルボジイミド化合物、脂環族カルボジイミド化合物または脂肪族カルボジイミド化合物のいずれでも良く、これらを単独で使用することができるし、2種以上を併用することもできる。芳香族カルボジイミド化合物としては、ポリ-m-フェニレンカルボジイミド、ポリ-p-フェニレンカルボジイミド、ポリトリレンカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)などが挙げられる。脂環族カルボジイミド化合物としては、ポリ-m-シクロヘキシルカルボジイミド、ポリ-p-シクロヘキシルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、ポリ(3,3’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドなどが挙げられる。脂肪族カルボジイミド化合物としては、直鎖状または分岐状の脂肪族カルボジイミド化合物のいずれであっても構わない。好ましくは直鎖状の脂肪族カルボジイミド化合物であり、具体的には、ポリメチレンカルボジイミド、ポリエチレンカルボジイミド、ポリプロピレンカルボジイミド、ポリブチレンカルボジイミド、ポリペンタメチレンカルボジイミド、ポリヘキサメチレンカルボジイミドなどが挙げられる。これらを単独で、または2種以上を併用して使用することができる。中でも芳香族カルボジイミド化合物または脂環族カルボジイミド化合物であることが好ましい。
また、硬化剤としてポリカルボジイミドとエポキシ樹脂を併用すると、よりハンダ耐熱性向上の効果が期待できる。
【0057】
<ポリイソシアネート>
本発明で用いるポリイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化合物であることが好ましい。また、多官能イソシアネート化合物から誘導された化合物も使用することができる。
【0058】
ポリイソシアネートは、芳香族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物または脂肪族イソシアネート化合物のいずれでも良く、これらを単独で使用することができるし、2種以上を併用することもできる。中でも脂肪族イソシアネート化合物であることが好ましく、より好ましくは脂肪族ジイソシアネート化合物である。芳香族イソシアネート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,8-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ビフェニルジイソシアネート、4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートなどが挙げられ、これらを単独で、または2種以上を併用して使用することができる。なかでも3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネートが好ましい。脂環族イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートなどが挙げられ、これらを単独で、または2種以上を併用して使用することができる。脂肪族イソシアネート化合物としては、直鎖状または分岐状の脂肪族イソシアネートのいずれであっても構わない。好ましくは直鎖状の脂肪族ジイソシアネート化合物であり、具体的には、1,3-プロパンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート、1,8-オクタメチレンジイソシアネート、1,9-ノナメチレンジイソシアネートなどが挙げられ、これらを単独で、または2種以上を併用して使用することができる。中でも1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートであることが好ましい。
【0059】
ポリイソシアネートは、前記イソシアネート化合物のイソシアヌレート体、アダクト体、ビウレット体、ウレトジオン体、またはアロファネート体であっても差し支えない。また、ポリイソシアネートは、イソシアネート基がブロック化されたブロックイソシアネートを用いてもよい。これらの化合物を単独で使用しても良いし、2種以上を併用することもできる。中でも、イソシアヌレート体またはビウレット体であることが好ましい。
【0060】
本発明の接着剤組成物において、硬化剤(c)の含有量は、変性ポリオレフィン(a)およびポリイミド樹脂(b)の合計100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは5質量部以上であり、特に好ましくは10質量部以上である。前記下限値以上とすることで十分な硬化効果が得られ、優れた接着性およびハンダ耐熱性を発現することができる。また、60質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは40質量部以下である。前記上限値以下とすることで接着剤組成物の低誘電特性が良好となる。すなわち、前記範囲内とすることで、接着性、ハンダ耐熱性およびポットライフ性に加え、優れた低誘電特性を有する接着剤組成物を得ることができる。
【0061】
<接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、前記(a)成分~(c)成分の3種類を含有することで、液晶ポリマー(LCP)などの低極性樹脂基材や金属基材との優れた接着性、低誘電特性、ハンダ耐熱性およびレーザー加工性を発現することができる。すなわち、接着剤組成物を基材に塗布、硬化後の接着剤塗膜(接着剤層)が優れた低誘電特性、ハンダ耐熱性およびレーザー加工性を発現することができる。
【0062】
本発明の接着剤組成物において、変性ポリオレフィン樹脂(a)の含有量は、変性ポリオレフィン樹脂(a)とポリイミド樹脂(b)の合計100質量部に対し50質量部以上であることが好ましい。より好ましくは60質量部以上、さらに好ましくは65質量部以上である。また、95質量部以下であることが好ましく、より好ましくは90質量部以下であり、さらに好ましくは85質量部以下である。変性ポリオレフィン樹脂(a)の含有量が前記範囲内であることで、接着性、低誘電特性、レーザー加工性および相溶性が向上する。
【0063】
本発明の接着剤組成物は、さらに有機溶剤を含有することができる。本発明で用いることができる有機溶剤は、変性ポリオレフィン(a)、ポリイミド樹脂(b)および硬化剤(c)を溶解または分散させるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノiso-ブチルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノiso-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノn-ブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等を使用することができ、これら1種または2種以上を併用することができる。特に作業環境性、乾燥性から、メチルシクロへキサンやトルエンが好ましい。
【0064】
有機溶剤は、変性オレフィン(a)、ポリイミド樹脂(b)および硬化剤(c)の固形合計100質量部に対して、100~1000質量部の範囲であることが好ましく、200~900質量部の範囲であることがより好ましく、300~800質量部の範囲であることが最も好ましい。前記下限値以上とすることで液状およびポットライフ性が良好となる。また、前記上限値以下とすることで製造コストや輸送コストの面から有利となる。
【0065】
本願発明に係る接着剤組成物は、周波数10GHzにおける比誘電率(ε)が3.0以下であることが好ましい。より好ましくは2.6以下であり、さらに好ましくは2.3以下である。下限は特に限定されないが、実用上は2.0以上である。また、周波数1GHz~60GHzの全領域における比誘電率(ε)が3.0以下であることが好ましく、2.6以下であることがより好ましく、2.3以下であることがさらに好ましい。
【0066】
本願発明に係る接着剤組成物は、周波数10GHzにおける誘電正接(tanδ)が0.02以下であることが好ましい。より好ましくは0.01以下であり、さらにより好ましくは0.008以下である。下限は特に限定されないが、実用上は0.0001である。また、周波数1GHz~60GHzの全領域における誘電正接(tanδ)が0.02以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましく、0.008以下であることがさらに好ましい。
【0067】
本発明において、比誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)は、以下のとおり測定することができる。すなわち、接着剤組成物を離型基材に乾燥後の厚みが25μmとなるよう塗布し、約130℃で約3分間乾燥する。次いで約140℃で約4時間熱処理して硬化させて、硬化後の接着剤組成物層(接着剤層)を離型フィルムから剥離する。剥離後の該接着剤組成物層の周波数10GHzにおける比誘電率(ε)を測定する。具体的には、空洞共振器摂動法による測定から比誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)を算出することができる。
【0068】
また、本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、さらに他の成分を必要に応じて含有してもよい。このような成分の具体例としては、難燃剤、粘着付与剤、フィラー、シランカップリング剤が挙げられる。
【0069】
<難燃剤>
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じて難燃剤を配合しても良い。難燃剤を含有することで接着剤組成物に難燃性を付与することができる。難燃剤としては、難燃性を示すものであれば特に限定はされないが、有機溶剤に溶解しないものであることが好ましい。難燃剤は難燃性フィラーであることが好ましく、無機系難燃性フィラーと有機系難燃性フィラーが挙げられる。無機系難燃性フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの水酸化金属化合物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム-カルシウム(炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムの混合物)、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸金属化合物;酸化マグネシウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化スズの水和物、酸化アンチモンなどの金属酸化物;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウムなどのホウ酸金属化合物;ドロマイト、ハイドロタルサイト、硼砂などの無機金属化合物;赤リンなどの無機リン化合物等が挙げられる。有機系難燃性フィラーとしては、例えば、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメート、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン等のリン系難燃剤;メラミン、メラム、メラミンシアヌレート等のトリアジン系化合物や、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素等の窒素系難燃剤;シリコーン化合物、シラン化合物等のケイ素系難燃剤等が挙げられる。難燃剤として水酸化金属化合物、リン化合物が好ましく、中でもリン化合物がより好ましく、例えばホスフィン酸アルミニウム等のリン系難燃性フィラーを使用できる。なお、リン系難燃剤には、有機溶剤に溶解しないタイプ(リン系難燃性フィラー)と有機溶剤に溶解するタイプ(リン系難燃性ノンフィラー)があるが、本発明では有機溶剤に溶解しないタイプ(リン系難燃性フィラー)が好ましい。上記難燃性フィラーは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。難燃剤を含有させる場合、(a)~(c)成分の合計100質量部に対し、1~200質量部の範囲で含有させることが好ましく、5~150質量部の範囲がより好ましく、10~100質量部の範囲が最も好ましい。前記下限値以上とすることで粘着付与剤の効果を奏することができる。また、前記上限値以下とすることで接着性、ハンダ耐熱性、低誘電特性等が低下することがない。
【0070】
<粘着付与剤>
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じて粘着付与剤を配合しても良い。粘着付与剤としては、ポリテルペン樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、スチレン樹脂および水添石油樹脂等が挙げられ、接着強度を向上させる目的で用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。粘着付与剤を含有させる場合、(a)~(c)成分の合計100質量部に対し、1~200質量部の範囲で含有させることが好ましく、5~150質量部の範囲がより好ましく、10~100質量部の範囲が最も好ましい。前記下限値以上とすることで粘着付与剤の効果を奏することができる。また、前記上限値以下とすることで接着性、ハンダ耐熱性、低誘電特性等が低下することがない。
【0071】
<フィラー>
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じてフィラーを配合しても良い。ここで、フィラーとは難燃剤で記載した難燃性フィラーとは異なるものであり、例えば、シリカ等が挙げられる。シリカを配合することによりハンダ耐熱性の特性が向上するため非常に好ましい。シリカとしては一般に疎水性シリカと親水性シリカが知られているが、ここでは耐吸湿性を付与する上でジメチルジクロロシランやヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン等で処理を行った疎水性シリカの方が良い。シリカを配合する場合、その配合量は、(a)~(c)成分の合計100質量部に対し、0.05~30質量部の配合量であることが好ましい。前記下限値以上とすることでハンダ耐熱性を向上させる効果を奏することができる。また、前記上限値以下とすることでシリカの分散不良が生じることがなく、溶液粘度が良好であり作業性が良好となる。また接着性も低下しない。
【0072】
<シランカップリング剤>
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じてシランカップリング剤を配合しても良い。シランカップリング剤を配合することにより金属への接着性やハンダ耐熱性の特性が向上するため非常に好ましい。シランカップリング剤としては特に限定されないが、不飽和基を有するもの、グリシジル基を有するもの、アミノ基を有するものなどが挙げられる。これらのうちハンダ耐熱性の観点からγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランやβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランやβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有したシランカップリング剤がさらに好ましい。シランカップリング剤を配合する場合、その配合量は(a)~(c)成分の合計100質量部に対して0.5~20質量部の配合量であることが好ましい。0.5質量部以上とすることで優れたハンダ耐熱性が良好となる。一方、20質量部以下とすることでハンダ耐熱性や接着性が良好となる。
【0073】
<積層体>
本発明の積層体は、基材に接着剤組成物を積層したもの(基材/接着剤層の2層積層体)、または、さらに基材を貼り合わせたもの(基材/接着剤層/基材の3層積層体)である。ここで、接着剤層とは、本発明の接着剤組成物を基材に塗布し、乾燥させた後の接着剤組成物の層をいう。本発明の接着剤組成物を、常法に従い、各種基材に塗布、乾燥すること、およびさらに他の基材を積層することにより、本発明の積層体を得ることができる。
【0074】
<基材>
本発明において基材とは、本発明の接着剤組成物を塗布、乾燥し、接着剤層を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、フィルム状樹脂等の樹脂基材、金属板や金属箔等の金属基材、紙類等を挙げることができる。
【0075】
樹脂基材としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂等を例示することができる。好ましくはフィルム状樹脂(以下、基材フィルム層ともいう)である。
【0076】
金属基材としては、回路基板に使用可能な任意の従来公知の導電性材料が使用可能である。素材としては、SUS、銅、アルミニウム、鉄、スチール、亜鉛、ニッケル等の各種金属、およびそれぞれの合金、めっき品、亜鉛やクロム化合物など他の金属で処理した金属等を例示することができる。好ましくは金属箔であり、より好ましくは銅箔である。金属箔の厚みについては特に限定はないが、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは、3μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。また、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下ある。厚さが薄すぎる場合には、回路の充分な電気的性能が得られにくい場合があり、一方、厚さが厚すぎる場合には回路作製時の加工能率等が低下する場合がある。金属箔は、通常、ロール状の形態で提供されている。本発明のプリント配線板を製造する際に使用される金属箔の形態は特に限定されない。リボン状の形態の金属箔を用いる場合、その長さは特に限定されない。また、その幅も特に限定されないが、250~500cm程度であるのが好ましい。
【0077】
紙類として上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙等を例示することができる。また複合素材として、ガラスエポキシ等を例示することができる。
【0078】
接着剤組成物との接着力、耐久性から、基材としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、SUS鋼板、銅箔、アルミ箔、またはガラスエポキシが好ましい。
【0079】
<接着シート>
本発明において、接着シートとは、前記積層体と離型基材とを接着剤組成物を介して積層したものである。具体的な構成態様としては、積層体/接着剤層/離型基材、または離型基材/接着剤層/積層体/接着剤層/離型基材が挙げられる。離型基材を積層することで基材の保護層として機能する。また離型基材を使用することで、接着シートから離型基材を離型して、さらに別の基材に接着剤層を転写することができる。
【0080】
本発明の接着剤組成物を、常法に従い、各種積層体に塗布、乾燥することにより、本発明の接着シートを得ることができる。また乾燥後、接着剤層に離型基材を貼付けると、基材への裏移りを起こすことなく巻き取りが可能になり操業性に優れるとともに、接着剤層が保護されることから保存性に優れ、使用も容易である。また離型基材に塗布、乾燥後、必要に応じて別の離型基材を貼付すれば、接着剤層そのものを他の基材に転写することも可能になる。
【0081】
<離型基材>
離型基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などの紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの目止剤の塗布層を設け、さらにその各塗布層の上にシリコーン系、フッ素系、アルキド系の離型剤が塗布されたものが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等の各種オレフィンフィルム単独、およびポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に上記離型剤を塗布したものも挙げられる。離型基材と接着剤層との離型力、シリコーンが低誘電特性に悪影響を与える等の理由から、上質紙の両面にポリプロピレン目止処理しその上にアルキド系離型剤を用いたもの、またはポリエチレンテレフタレート上にアルキド系離型剤を用いたものが好ましい。
【0082】
なお、本発明において接着剤組成物を基材上にコーティングする方法としては、特に限定されないが、コンマコーター、リバースロールコーター等が挙げられる。もしくは、必要に応じて、プリント配線板構成材料である圧延銅箔、またはポリイミドフィルムに直接もしくは転写法で接着剤層を設けることもできる。乾燥後の接着剤層の厚みは、必要に応じて、適宜変更されるが、好ましくは5~200μmの範囲である。接着フィルム厚が5μm未満では、接着強度が不十分である。200μm以上では乾燥が不十分で、残留溶剤が多くなり、プリント配線板製造のプレス時にフクレを生じるという問題点が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥後の残留溶剤率は1質量%以下が好ましい。1質量%超では、プリント配線板プレス時に残留溶剤が発泡して、フクレを生じるという問題点が挙げられる。
【0083】
<プリント配線板>
本発明における「プリント配線板」は、導体回路を形成する金属箔と樹脂基材とから形成された積層体を構成要素として含むものである。プリント配線板は、例えば、金属張積層体を用いてサブトラクティブ法などの従来公知の方法により製造される。必要に応じて、金属箔によって形成された導体回路を部分的、或いは全面的にカバーフィルムやスクリーン印刷インキ等を用いて被覆した、いわゆるフレキシブル回路板(FPC)、フラットケーブル、テープオートメーティッドボンディング(TAB)用の回路板などを総称している。
【0084】
本発明のプリント配線板は、プリント配線板として採用され得る任意の積層構成とすることができる。例えば、基材フィルム層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の4層から構成されるプリント配線板とすることができる。また例えば、基材フィルム層、接着剤層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の5層から構成されるプリント配線板とすることができる。
【0085】
さらに、必要に応じて、上記のプリント配線板を2つもしくは3つ以上積層した構成とすることもできる。
【0086】
本発明の接着剤組成物はプリント配線板の各接着剤層に好適に使用することが可能である。特に本発明の接着剤組成物を接着剤として使用すると、プリント配線板を構成する従来のポリイミド、ポリエステルフィルム、銅箔だけでなく、LCPなどの低極性の樹脂基材と高い接着性を有し、ハンダ耐熱性を得ることができ、接着剤層自身が低誘電特性に優れる。そのため、カバーレイフィルム、積層板、樹脂付き銅箔およびボンディングシートに用いる接着剤組成物として好適である。
【0087】
本発明のプリント配線板において、基材フィルムとしては、従来からプリント配線板の基材として使用されている任意の樹脂フィルムが使用可能である。基材フィルムの樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂等を例示することができる。特に、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂等の低極性基材に対しても、優れた接着性を有する。
【0088】
<カバーフィルム>
カバーフィルムとしては、プリント配線板用の絶縁フィルムとして従来公知の任意の絶縁フィルムが使用可能である。例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、アラミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂等の各種ポリマーから製造されるフィルムが使用可能である。より好ましくは、ポリイミドフィルムまたは液晶ポリマーフィルムである。
【0089】
本発明のプリント配線板は、上述した各層の材料を用いる以外は、従来公知の任意のプロセスを用いて製造することができる。
【0090】
好ましい実施態様では、カバーフィルム層に接着剤層を積層した半製品(以下、「カバーフィルム側半製品」という)を製造する。他方、基材フィルム層に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側2層半製品」という)または基材フィルム層に接着剤層を積層し、その上に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側3層半製品」という)を製造する(以下、基材フィルム側2層半製品と基材フィルム側3層半製品とを合わせて「基材フィルム側半製品」という)。このようにして得られたカバーフィルム側半製品と、基材フィルム側半製品とを貼り合わせることにより、4層または5層のプリント配線板を得ることができる。
【0091】
基材フィルム側半製品は、例えば、(A)前記金属箔に基材フィルムとなる樹脂の溶液を塗布し、塗膜を初期乾燥する工程、(B)(A)で得られた金属箔と初期乾燥塗膜との積層物を熱処理・乾燥する工程(以下、「熱処理・脱溶剤工程」という)を含む製造法により得られる。
【0092】
金属箔層における回路の形成は、従来公知の方法を用いることができる。アディティブ法を用いてもよく、サブトラクティブ法を用いてもよい。好ましくは、サブトラクティブ法である。
【0093】
得られた基材フィルム側半製品は、そのままカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後にカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0094】
カバーフィルム側半製品は、例えば、カバーフィルムに接着剤を塗布して製造される。必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0095】
得られたカバーフィルム側半製品は、そのまま基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0096】
基材フィルム側半製品とカバーフィルム側半製品とは、それぞれ、例えば、ロールの形態で保管された後、貼り合わされて、プリント配線板が製造される。貼り合わせる方法としては、任意の方法が使用可能であり、例えば、プレスまたはロールなどを用いて貼り合わせることができる。また、加熱プレス、または加熱ロ-ル装置を使用するなどの方法により加熱を行いながら両者を貼り合わせることもできる。
【0097】
補強材側半製品は、例えば、ポリイミドフィルムのように柔らかく巻き取り可能な補強材の場合、補強材に接着剤を塗布して製造されることが好適である。また、例えばSUS、アルミ等の金属板、ガラス繊維をエポキシ樹脂で硬化させた板等のように硬く巻き取りできない補強板の場合、予め離型基材に塗布した接着剤を転写塗布することによって製造されることが好適である。また、必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0098】
得られた補強材側半製品は、そのままプリント配線板裏面との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0099】
基材フィルム側半製品、カバーフィルム側半製品、補強材側半製品はいずれも、本発明におけるプリント配線板用積層体である。
【0100】
<電磁波シールド材>
本発明の電磁波シールド材は、上記本発明の接着剤組成物を用いて形成された接着剤層を備える物品である。本発明において好ましい態様は、接着剤層が導電フィラーを含有する電磁波シールド材である。これにより、電磁波のノイズによる電子機器の誤動作や、通信電波の傍受による機密情報の漏洩等を防止することができる。
本発明の電磁波シールド材を製造する方法としては、例えば、導電フィラーを含有する接着剤層を備える導電性ボンディングシートと、シールド材とを接合する方法を適用することができる。
【実施例
【0101】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。実施例中および比較例中に単に部とあるのは質量部を示す。
【0102】
(物性評価方法)
(酸価(変性ポリオレフィン樹脂))
本発明における酸価(mgKOH/g)は、樹脂試料をトルエンに溶解し、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として滴定した。
【0103】
(酸価(ポリイミド樹脂))
本発明における酸価(mgKOH/g)は、樹脂試料をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解し、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として滴定した。
【0104】
(数平均分子量(Mn))
本発明における数平均分子量は(株)島津製作所製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC、標準物質:ポリスチレン樹脂、移動相:テトラヒドロフラン、カラム:Shodex KF-802 + KF-804L + KF-806L、カラム温度:30℃、流速:1.0ml/分、検出器:RI検出器)によって測定した値である。
【0105】
(融点、融解熱量の測定)
本発明における融点(Tm)、融解熱量(ΔH)は示差走査熱量計(以下、DSC、ティー・エー・インスツルメント・ジャパン製、Q-2000)を用いて、20℃/分の速度で昇温融解、冷却樹脂化して、再度昇温融解した際の融解ピークのトップ温度および面積から測定した値である。
【0106】
(対数粘度)
ポリイミド樹脂(b)のポリマー濃度が0.6g/dlとなるようにNMPに溶解した。その溶液の溶液粘度及び溶媒粘度を30℃で、ウベローデ型粘度管により測定して、下記の式で計算した。
対数粘度(dl/g)=[ln(V1/V2)]/V3
V1:溶媒(NMP)がウベローデ型粘度管のキャピラリーを通過する時間から算出
V2:ポリマー溶液がウベローデ型粘度管のキャピラリーを通過する時間から算出
V3:ポリマー濃度(g/dl)
【0107】
(1)接着強度
後述する接着剤組成物を厚さ12.5μmのポリイミド(PI)フィルム(株式会社カネカ製、アピカル(登録商標))、または、厚さ25μmのLCPフィルム(クラレ株式会社製、ベクスター(登録商標))に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。この様にして得られた接着性フィルム(Bステージ品)を厚さ18μmの圧延銅箔(JX金属株式会社製、BHYシリーズ)と貼り合わせた。貼り合わせは、圧延銅箔の光沢面が接着剤層と接する様にして、160℃で40kgf/cmの加圧下に30秒間プレスし、接着した。次いで160℃で1時間熱処理して硬化させて、剥離強度評価用サンプルを得た。剥離強度は、25℃において、フィルム引き、引張速度50mm/minで90°剥離試験を行ない、剥離強度を測定した。この試験は常温での接着強度を示すものである。
<評価基準>
◎:1.0N/mm以上
○:0.8N/mm以上1.0N/mm未満
△:0.5N/mm以上0.8N/mm未満
×:0.5N/mm未満
【0108】
(2)ハンダ耐熱性
上記(1)と同じ方法でサンプルを作製し、2.0cm×2.0cmのサンプル片を23℃で2日間エージング処理を行い、280℃で溶融したハンダ浴に10秒フロートし、膨れなどの外観変化の有無を確認した。
<評価基準>
◎:膨れ無し
○:一部膨れ有
△:多くの膨れ有
×:膨れ、かつ変色有
【0109】
(3)低誘電特性(比誘電率(ε)および誘電正接(tanδ))
後述する接着剤組成物を厚さ100μmのテフロン(登録商標)シートに、乾燥硬化後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。次いで160℃で1時間熱処理して硬化させて試験用の接着剤樹脂シートを得た。得られた試験用接着剤樹脂シートを8cm×3mmの短冊状にサンプルを裁断し、試験用サンプルを得た。比誘電率(εc)および誘電正接(tanδ)は、ネットワークアナライザー(アンリツ社製)を使用し、空洞共振器摂動法で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した。得られた比誘電率、誘電正接について、以下の通りに評価した。
<比誘電率の評価基準>
◎:2.3以下
○:2.3を超え2.6以下
△:2.6を超え3.0以下
×:3.0を超える
<誘電正接の評価基準>
◎:0.008以下
○:0.008を超え0.01以下
△:0.01を超え0.02以下
×:0.02を超える
【0110】
(4)355nm吸光度
後述する接着剤組成物を厚さ100μmのテフロン(登録商標)シートに、乾燥硬化後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて試験用の接着剤樹脂シートを得た。得られた接着剤樹脂シートを用いて、紫外可視分光光度計V-650(日本分光社製)により355nmの吸光度を測定した。
<評価基準>
○:Abs0.3以上である。
△:Abs0.2以上0.3未満である。
×:Abs0.2未満である。
【0111】
(5)相溶性
後述する接着剤組成物を厚さ50μmのポリプロピレンフィルムに、乾燥硬化後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。得られた接着剤樹脂シートの外観を目視で確認した。
<評価基準>
○:異物・ムラなし。
△:若干のムラが見られる。
×:異物・ムラありもしくは塗工不可。
【0112】
(変性ポリオレフィン樹脂(a)の製造例)
(製造例1)
1Lオートクレーブに、プロピレン-ブテン共重合体(三井化学社製「タフマー(登録商標)XM7080」)100質量部、トルエン150質量部および無水マレイン酸19質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド6質量部を加え、攪拌しながら140℃まで昇温した後、更に3時間撹拌した。その後、得られた反応液を冷却後、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、当該樹脂を含有する液を遠心分離することにより、無水マレイン酸がグラフト重合した酸変性プロピレン-ブテン共重合体と(ポリ)無水マレイン酸および低分子量物とを分離、精製した。その後、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、変性ポリオレフィン樹脂である無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(a-1、酸価19mgKOH/g、数平均分子量25,000、Tm80℃、△H35J/g)を得た。
【0113】
(製造例2)
無水マレイン酸の仕込み量を14質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、変性ポリオレフィン樹脂である無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(a-2、酸価14mgKOH/g、数平均分子量30,000、Tm78℃、△H25J/g)を得た。
【0114】
(製造例3)
無水マレイン酸の仕込み量を11質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、変性ポリオレフィン樹脂である無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(a-3、酸価11mgKOH/g、数平均分子量33,000、Tm80℃、△H25J/g)を得た。
【0115】
(製造例4)
無水マレイン酸の仕込み量を6質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、変性ポリオレフィン樹脂である無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(a-4、酸価7mgKOH/g、数平均分子量35,000、Tm82℃、△H25J/g)を得た。
【0116】
(ポリイミド樹脂(b)の製造例)
(製造例5)
トリメリット酸無水物(Polynt製)17.3質量部、ポリブタジエンジオール(日本曹達製 商品名GI-1000、分子量1500)315.0質量部、イソシアネート成分として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー製 商品名ミリオネートMT)75.9質量部をフラスコに入れ、シクロヘキサノン611.1質量部に溶解した。また触媒としてDBU0.69質量部を添加した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、130℃で5時間反応させた後、室温まで冷却することにより、不揮発分(固形分)40質量%、酸価4.6mgKOH/g,対数粘度0.190dl/gのポリイミド樹脂(b-1)溶液を得た。
【0117】
(製造例6)
トリメリット酸無水物(Polynt製)17.3質量部、ダイマージオール(クローダジャパン製 商品名プリポール2033、分子量560)117.6質量部、イソシアネート成分として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー製 商品名ミリオネートMT)75.1質量部をフラスコに入れ、シクロヘキサノン157.5質量部、N-メチルピロリドン157.5質量部に溶解した。また触媒としてDBU0.69質量部を添加した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、130℃で6時間反応させた後、室温まで冷却することにより、不揮発分(固形分)40質量%、酸価6.7mgKOH/g,対数粘度0.168dl/gのポリイミド樹脂(b-2)溶液を得た。
【0118】
(製造例7)
3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(エボニックジャパン製)210.00質量部、シクロヘキサノン1000.80質量部、およびメチルシクロヘキサン201.60質量部を仕込み、60℃まで加熱した。次いでダイマージアミン(クローダジャパン製 商品名プリアミン1075、分子量549) 341.67質量部を滴下した後、140℃で10時間かけてイミド化反応させ室温まで冷却することにより、不揮発分(固形分)30質量%、酸価5.6mgKOH/g,対数粘度0.240dl/gのポリイミド樹脂(b-3)溶液を得た。
【0119】
(製造例8)
トリメリット酸無水物(Polynt製)34.6質量部、ダイマー酸(クローダジャパン製 商品名プリポール1009、分子量566)235.2質量部、イソシアネート成分として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー製 商品名ミリオネートMT)145.7質量部をフラスコに入れ、N-メチルピロリドン623.1質量部に溶解した。また触媒としてDBU1.37質量部を添加した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、130℃で5時間反応させた後、室温まで冷却することにより、不揮発分(固形分)40質量%、酸価10.4mgKOH/g,対数粘度0.318dl/gのポリイミド樹脂(b-4)溶液を得た。
【0120】
(製造例9)
トリメリット酸無水物(Polynt製)28.8質量部、ポリブタジエンジオール(日本曹達製 商品名GI-1000)225.0質量部、イソシアネート成分として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー製 商品名ミリオネートMT)75.1質量部をフラスコに入れ、シクロヘキサノン236.8質量部、N-メチルピロリドン236.8質量部に溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、130℃で5時間反応させた後、室温まで冷却することにより、不揮発分(固形分)40質量%、酸価11.8mgKOH/g,対数粘度0.139dl/gのポリイミド樹脂(b-5)溶液を得た。
【0121】
(製造例10)
トリメリット酸無水物(Polynt製)17.3質量部、ポリエステルジオール(DIC製 商品名ODX-2044、分子量2000)420.0質量部、イソシアネート成分として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー製 商品名ミリオネートMT)72.8質量部をフラスコに入れ、シクロヘキサノン765.2質量部に溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、130℃で8時間反応させた後、室温まで冷却することにより、不揮発分(固形分)40質量%、酸価8.4mgKOH/g,対数粘度0.250dl/gのポリイミド樹脂(b-6)溶液を得た。
【0122】
(製造例11)
ポリブタジエンジオール(日本曹達製 商品名GI-1000)360.0質量部、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸8.89質量部、イソシアネート成分として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー製 商品名ミリオネートMT)74.2質量部をフラスコに入れ、シクロヘキサノン664.8質量部に溶解した。また触媒としてDBU0.69質量部を添加した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、130℃で5時間反応させた後、室温まで冷却することにより、不揮発分(固形分)40質量%、酸価5.6mgKOH/g,対数粘度0.176dl/gのポリウレタン樹脂(b-7)溶液を得た。
【0123】
表1で用いた硬化剤(c)は以下のものである。
(エポキシ樹脂)
c-1:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:HP-7200H(DIC社製 エポキシ当量 278g/eq)
c-2:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:jER-152(三菱化学製 エポキシ当量 177g/eq
c-3:グリシジルアミン型エポキシ樹脂:jER-630(三菱化学製 エポキシ当量 98g/eq
(ポリイソシアネート)
c-4:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体:スミジュール(登録商標)N-3300(バイエル社製)
(ポリカルボジイミド)
c-5:カルボジイミド樹脂:V-09GB(日清紡ケミカル社製 カルボジイミド当量 216g/eq)
c-6:カルボジイミド樹脂:V-03(日清紡ケミカル社製 カルボジイミド当量 209g/eq)
【0124】
<実施例1>
変性ポリオレフィン樹脂(a-1)を有機溶媒(メチルシクロヘキサン/トルエン=80/20(体積比))に溶解し、固形分濃度20質量%の溶液を調製した。硬化剤(c-1)(エポキシ樹脂、HP-7200H)を有機溶媒(メチエチルケトン)に溶解し、固形分濃度70質量%の溶液を調製した。変性ポリオレフィン樹脂(a-1)80固形質量部、ポリイミド樹脂(b-1)20固形質量部および硬化剤(c-1)を10固形質量部となるように各溶液を配合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物の接着強度、ハンダ耐熱性、低誘電特性、355nm吸光度および相溶性の評価結果を表1に示す。
【0125】
<実施例2~23、比較例1~5>
変性ポリオレフィン樹脂(a)、ポリイミド樹脂(b)および硬化剤(c)の配合量(固形質量部)を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様な方法で実施例2~21および比較例1~5を行った。接着強度、ハンダ耐熱性、低誘電特性、355nm吸光度および相溶性の評価結果を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
表1から明らかなように、実施例1~23では、接着剤として、ポリイミド(PI)およびLCPと優れた接着性、ハンダ耐熱性を有しながら、銅箔とも優れた接着性、ハンダ耐熱性を有し、さらにレーザー加工性の指標である355nmでの吸光度で良好な吸収を示した。これに対し、比較例1では、ポリイミド樹脂(b)を配合していないため、355nm吸光度が低く、レーザー加工性に劣った。比較例2では、硬化剤(c)を配合していないためハンダ耐熱性が劣った。比較例3では、変性ポリオレフィン樹脂(a)を配合していないため接着性が劣った。比較例4ではポリイミド樹脂(b)にポリオレフィンポリオールやダイマー酸誘導体等を有していないため、低誘電特性および相溶性が劣った。比較例5では(b)成分がイミド基を含まないポリウレタン樹脂であるため355nm吸光度が低く、レーザー加工性に劣った。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の接着剤組成物は、従来のポリイミド、液晶ポリマーだけでなく、銅箔などの金属基材との、高い接着性を有し、高いハンダ耐熱性を得ることができ、さらに低誘電特性およびレーザー加工性にも優れる。本発明の接着剤組成物は、接着性シート、およびこれを用いて接着した積層体を得ることができる。上記特性により、フレキシブルプリント配線板用途、特に高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が求められるFPC用途、電磁波シールド材において有用である。