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特許7409581逆入力遮断クラッチ付アクチュエータおよび転舵装置、並びに、逆入力遮断クラッチの制御方法
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  • 特許-逆入力遮断クラッチ付アクチュエータおよび転舵装置、並びに、逆入力遮断クラッチの制御方法 図1
  • 特許-逆入力遮断クラッチ付アクチュエータおよび転舵装置、並びに、逆入力遮断クラッチの制御方法 図2
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  • 特許-逆入力遮断クラッチ付アクチュエータおよび転舵装置、並びに、逆入力遮断クラッチの制御方法 図10
  • 特許-逆入力遮断クラッチ付アクチュエータおよび転舵装置、並びに、逆入力遮断クラッチの制御方法 図11
  • 特許-逆入力遮断クラッチ付アクチュエータおよび転舵装置、並びに、逆入力遮断クラッチの制御方法 図12
  • 特許-逆入力遮断クラッチ付アクチュエータおよび転舵装置、並びに、逆入力遮断クラッチの制御方法 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】逆入力遮断クラッチ付アクチュエータおよび転舵装置、並びに、逆入力遮断クラッチの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 43/02 20060101AFI20231226BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F16D43/02
F16D63/00 R
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023560963
(86)(22)【出願日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2023021857
【審査請求日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2022101284
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎
(72)【発明者】
【氏名】前田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】金子 祥平
(72)【発明者】
【氏名】居 超
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秀幸
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-284441(JP,A)
【文献】特開2012-229764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/08-41/10
F16D 43/02-43/26
F16D 49/00-71/04
B66D 1/00- 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータと、
前記アクチュエータにより回転駆動される入力部材および出力側機構にトルク伝達可能に接続される出力部材を有し、前記出力部材に前記出力側機構からトルクが逆入力されていない状態で、前記アクチュエータから前記入力部材にトルクが入力されると、前記入力部材に入力されたトルクを前記出力部材に伝達するのに対し、前記入力部材に前記アクチュエータからトルクが入力されていない状態で、前記出力側機構から前記出力部材にトルクが逆入力されると、前記出力部材の回転をロックする逆入力遮断クラッチと、
を備え、
前記出力側機構から前記出力部材にトルクが逆入力されている状態で、前記アクチュエータにより前記入力部材に、前記出力側機構から前記出力部材に逆入力されているトルクの方向と逆方向のトルクを付与することで、前記逆入力遮断クラッチを前記入力部材と前記出力部材との間でトルク伝達可能な状態に切り換えた後、前記アクチュエータにより前記入力部材に、前記出力側機構から前記出力部材に逆入力されているトルクの大きさ未満の大きさを有するトルクを前記逆方向に付与する指令を与え続けることで、該出力側機構から該出力部材に逆入力されているトルクを前記入力部材に伝達する機能を有する、
逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ。
【請求項2】
前記アクチュエータは、電動モータを備える、
請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ。
【請求項3】
前記逆入力遮断クラッチは、
内周面に、被押圧面を有する被押圧部材と、
前記被押圧面の径方向内側に配置された入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に回転可能に支持された前記入力部材と、
前記被押圧面の径方向内側において前記入力側係合部よりも径方向内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に回転可能に支持された前記出力部材と、
前記被押圧面に対向する押圧面と、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部と、前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部とを有し、前記被押圧面に対する前記押圧面の遠近方向である第1方向の移動を可能に配置された係合子と
を備え、
前記係合子は、前記アクチュエータから前記入力部材にトルクが入力されると、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づき、前記第1方向に関して前記押圧面を前記被押圧面から離す方向に移動して、前記入力部材と前記出力部材との間でトルクを伝達可能とするのに対し、前記アクチュエータから前記入力部材にトルクが入力されていない状態で、前記出力側機構から前記出力部材にトルクが逆入力されると、前記出力側被係合部と前記出力側係合部との係合に基づき、前記第1方向に関して前記押圧面を前記被押圧面に近づける方向に押圧されて、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させる、
請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ。
【請求項4】
前記係合子は、径方向外側面のうちで周方向に離隔した2箇所位置に、2つの前記押圧面を有する、
請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ。
【請求項5】
前記出力部材の周方向片側への回転に伴い、2つの前記押圧面が前記被押圧面に押し付けられ、かつ、前記入力部材の周方向他側への回転に伴い、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合した状態において、前記第1方向と前記入力部材の回転中心との両方に直交する第2方向に関する、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との接触部と、前記入力部材の回転中心との距離が、前記第2方向に関する、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との接触部と、前記出力部材の回転中心との距離よりも小さく、
前記出力部材にトルクが逆入力され、2つの前記押圧面が前記被押圧面に接触した状態で、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との接触部が、2つの前記押圧面のうちの一方の押圧面と前記被押圧面との当接部と、前記出力部材の回転中心とを結ぶ仮想直線よりも前記第1方向に関して前記出力部材の回転中心に近い側に位置する、
請求項4に記載の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ。
【請求項6】
前記出力部材の周方向片側への回転に伴い、2つの前記押圧面が前記被押圧面に押し付けられ、かつ、前記入力部材の周方向他側への回転に伴い、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合した状態において、前記第1方向と前記入力部材の回転中心との両方に直交する第2方向に関する、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との接触部と、前記入力部材の回転中心との距離が、前記第2方向に関する、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との接触部と、前記出力部材の回転中心との距離よりも大きく、
前記出力部材にトルクが逆入力され、2つの前記押圧面が前記被押圧面に接触した状態で、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との接触部が、2つの前記押圧面のうちの一方の押圧面と前記被押圧面との当接部と、前記出力部材の回転中心とを結ぶ仮想直線よりも前記第1方向に関して前記出力部材の回転中心に近い側に位置する、
請求項4に記載の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ。
【請求項7】
前記逆入力遮断クラッチは、それぞれが前記係合子により構成される2つの係合子を備える、
請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ。
【請求項8】
前記逆入力遮断クラッチは、前記押圧面を前記被押圧面に近づける方向に前記係合子を弾性的に付勢する弾性部材を備える、
請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ。
【請求項9】
出力部材を有する逆入力遮断クラッチ付アクチュエータと、
直線運動を可能に支持され、該直線運動に応じて操舵輪の向きが変化するように該操舵輪に接続されるロッドを有し、前記出力部材の回転運動を前記ロッドの直線運動に変換する直動機構と、
を備え、
前記逆入力遮断クラッチ付アクチュエータが、請求項1~8のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータにより構成される、
転舵装置。
【請求項10】
前記ロッドは、外周面にらせん状の雄ボールねじ溝を備え、
前記直動機構は、
内周面に、らせん状の雌ボールねじ溝を有し、前記出力部材によって回転駆動されるボールナットと、
前記雄ボールねじ溝と前記雌ボールねじ溝との間に転動自在に配置された複数個のボールと、
をさらに備える、
請求項9に記載の転舵装置。
【請求項11】
前記操舵輪は、後輪である、
請求項9に記載の転舵装置。
【請求項12】
アクチュエータにより回転駆動される入力部材および出力側機構にトルク伝達可能に接続される出力部材を有し、前記出力部材に前記出力側機構からトルクが逆入力されていない状態で、前記アクチュエータから前記入力部材にトルクが入力されると、前記入力部材に入力されたトルクを前記出力部材に伝達するのに対し、前記入力部材に前記アクチュエータからトルクが入力されていない状態で、前記出力側機構から前記出力部材にトルクが逆入力されると、前記出力部材の回転をロックする、
逆入力遮断クラッチの制御方法であって、
所定の条件を満たす場合に、前記出力側機構から前記出力部材にトルクが逆入力されている状態で、前記アクチュエータにより前記入力部材に、前記出力側機構から前記出力部材に逆入力されているトルクと逆方向のトルクを付与することで、前記逆入力遮断クラッチを前記入力部材と前記出力部材との間でトルク伝達可能な状態に切り換えた後、前記アクチュエータにより前記入力部材に、前記出力側機構から前記出力部材に逆入力されているトルクの大きさ未満の大きさを有するトルクを前記逆方向に付与する指令を与え続けることで、該出力側機構から該出力部材に逆入力されているトルクを前記入力部材に伝達する、
逆入力遮断クラッチの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、出力部材に逆入力されるトルクを完全に遮断して入力部材に伝達しない機能を有する逆入力遮断クラッチを備えたアクチュエータ、該アクチュエータを備えた転舵装置、並びに、前記逆入力遮断クラッチの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆入力遮断クラッチは、駆動源などの入力側機構に接続される入力部材と、減速機構などの出力側機構に接続される出力部材とを備え、入力部材に入力されるトルクを出力部材に伝達するのに対し、出力部材に逆入力されるトルクを、ロックする、すなわち完全に遮断して入力部材に伝達しない機能を有する。
【0003】
逆入力遮断クラッチは、出力部材に逆入力されるトルクを遮断する機構の相違により、ロック式とフリー式に大別される。ロック式の逆入力遮断クラッチは、出力部材にトルクが逆入力された際に、出力部材の回転をロックする機構を備える。一方、フリー式の逆入力遮断クラッチは、出力部材にトルクが逆入力された際に、出力部材を空転させる機構を備える。ロック式の逆入力遮断クラッチとフリー式の逆入力遮断クラッチとのいずれを使用するかについては、逆入力遮断クラッチを組み込む装置の用途などによって適宜決定される。
【0004】
国際公開第2021/107073号パンフレットには、ロック式の逆入力遮断クラッチが記載されている。国際公開第2021/107073号パンフレットに記載の逆入力遮断クラッチは、被押圧面を有する被押圧部材と、入力側係合部を有する入力部材と、出力側係合部を有する出力部材と、入力側被係合部、出力側被係合部、および押圧面を有する係合子とを備える。
【0005】
前記係合子は、前記入力部材にトルクが入力されると、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合することに基づき、前記押圧面を前記被押圧面から離す方向に移動して、前記出力側被係合部を前記出力側係合部に係合させることで、前記入力部材に入力されたトルクを前記出力部材に伝達する。
【0006】
これに対し、前記出力部材にトルクが逆入力されると、前記係合子は、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づき、前記押圧面を前記被押圧面に近づける方向に移動して、前記押圧面と前記被押圧面とを摩擦係合させる。これにより、前記出力部材の回転がロックされる。
【0007】
国際公開第2021/107073号パンフレットに記載の逆入力遮断クラッチでは、前記入力部材の回転方向にかかわらず、前記入力部材に入力されたトルクを、前記係合子を介して、出力部材に伝達することができ、かつ、前記出力部材の回転方向にかかわらず、前記出力部材に逆入力されたトルクを完全に遮断して前記入力部材に伝達しないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2021/107073号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ロック式の逆入力遮断クラッチでは、出力部材に、所定方向のトルクが逆入力されているときに、入力部材に、出力部材に逆入力されたトルクの方向と同じ方向、すなわち所定方向のトルクが入力されると、入力部材および出力部材の回転が円滑でなくなる可能性がある。
【0010】
たとえば、国際公開第2021/107073号パンフレットに記載の逆入力遮断クラッチにおいて、出力部材に、所定方向のトルクが逆入力されると、係合子は、押圧面を被押圧面に近づける方向に移動して、押圧面を被押圧面に摩擦係合させる。これにより、出力部材の回転がロックされる。この状態で、入力部材に所定方向のトルクが入力されると、係合子は、入力側係合部が入力側被係合部に係合することに基づき、押圧面を被押圧面から離す方向に移動して、出力側被係合部を出力側係合部に係合させる。これにより、入力部材と出力部材との間でのトルク伝達が許容され、入力部材と出力部材とが所定方向に回転する。
【0011】
このとき、出力部材の回転数が入力部材の回転数よりも大きい、すなわち出力部材の回転速度が入力部材の回転速度よりも速いと、すぐに、出力側係合部と出力側被係合部との係合に基づいて、係合子が、押圧面を被押圧面に近づける方向に移動して、押圧面を被押圧面に摩擦係合させ、出力部材の回転がロックされる。この状態においても、入力部材には所定方向のトルクが入力されているため、次の瞬間、入力側係合部が入力側被係合部に係合することに基づき、入力部材と出力部材との間でのトルク伝達が許容され、入力部材と出力部材とが所定方向に回転する。
【0012】
以上のように、出力部材に、所定方向のトルクが逆入力されているときに、入力部材に、出力部材に逆入力されたトルクの方向と同じ方向のトルクが入力されると、入力部材と出力部材とが所定方向に回転可能なロック解除状態と、入力部材と出力部材とが回転不能なロック状態とを短時間で交互に繰り返しながら、入力部材と出力部材とが断続的に所定方向に回転する、ジャーキング現象が発生する可能性がある。このような現象が発生すると、出力部材に接続される機械要素の挙動が円滑でなくなる可能性がある。
【0013】
本開示は、ロック解除時に、入力部材と出力部材とが回転可能な状態と、回転不能な状態とが、短時間で交互に繰り返される現象が発生するのを防止できる、逆入力遮断クラッチ付アクチュエータおよび転舵装置、並びに、逆入力遮断クラッチの制御方法を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータは、アクチュエータと、逆入力遮断クラッチとを備える。
【0015】
前記逆入力遮断クラッチは、前記アクチュエータにより回転駆動される入力部材および出力側機構にトルク伝達可能に接続される出力部材を有する。また、前記逆入力遮断クラッチは、前記出力部材に前記出力側機構からトルクが逆入力されていない状態で、前記アクチュエータから前記入力部材にトルクが入力されると、前記入力部材に入力されたトルクを前記出力部材に伝達するのに対し、前記入力部材に前記アクチュエータからトルクが入力されていない状態で、前記出力側機構から前記出力部材にトルクが逆入力されると、前記出力部材の回転をロックする。
【0016】
前記アクチュエータは、前記入力部材を回転駆動する。
【0017】
特に、本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータでは、前記出力側機構から前記出力部材にトルクが逆入力されている状態で、前記アクチュエータにより前記入力部材に、前記出力側機構から前記出力部材に逆入力されているトルクの方向と逆方向のトルクを付与することで、前記逆入力遮断クラッチを前記入力部材と前記出力部材との間でトルク伝達可能な状態に切り換えた後、前記アクチュエータにより前記入力部材に、前記出力側機構から前記出力部材に逆入力されているトルクの大きさ未満の大きさのトルクを前記逆方向に付与する指令を与え続けることで、該出力側機構から該出力部材に逆入力されたトルクを前記入力部材に伝達する機能を有する。
【0018】
本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータでは、前記アクチュエータは、電動モータを備えることができる。
【0019】
本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータでは、前記逆入力遮断クラッチは、被押圧部材と、前記入力部材と、前記出力部材と、係合子とを備えることができる。
【0020】
前記被押圧部材は、内周面に、被押圧面を有する。
【0021】
前記入力部材は、前記被押圧面の径方向内側に配置された入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に回転可能に支持されている。
【0022】
前記出力部材は、前記被押圧面の径方向内側において前記入力側係合部よりも径方向内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に回転可能に支持されている。
【0023】
前記係合子は、前記被押圧面に対向する押圧面と、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部と、前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部とを有し、前記被押圧面に対する前記押圧面の遠近方向である第1方向の移動を可能に配置されている。
【0024】
さらに、前記係合子は、前記アクチュエータから前記入力部材にトルクが入力されると、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づき、前記第1方向に関して前記押圧面を前記被押圧面から離す方向に移動して、前記入力部材と前記出力部材との間でトルクを伝達可能とするのに対し、前記アクチュエータから前記入力部材にトルクが入力されていない状態で、前記出力側機構から前記出力部材にトルクが逆入力されると、前記出力側被係合部と前記出力側係合部との係合に基づき、前記第1方向に関して前記押圧面を前記被押圧面に近づける方向に押圧されて、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させる。
【0025】
本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータでは、前記係合子は、径方向外側面のうちで周方向に離隔した2箇所位置に、2つの前記押圧面を有することができる。
【0026】
本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータでは、
前記出力部材の周方向片側への回転に伴い、2つの前記押圧面が前記被押圧面に押し付けられ、かつ、前記入力部材の周方向他側への回転に伴い、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合した状態において、前記第1方向と前記入力部材の回転中心との両方に直交する第2方向に関する、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との接触部と、前記入力部材の回転中心との距離を、前記第2方向に関する、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との接触部と、前記出力部材の回転中心との距離よりも小さくすることができ、かつ、
前記出力部材にトルクが逆入力され、2つの前記押圧面が前記被押圧面に接触した状態で、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との接触部を、2つの前記押圧面のうちの一方の押圧面と前記被押圧面との当接部と、前記出力部材の回転中心とを結ぶ仮想直線よりも前記第1方向に関して前記出力部材の回転中心に近い側に位置させることができる。
【0027】
本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータでは、
前記出力部材の周方向片側への回転に伴い、2つの前記押圧面が前記被押圧面に押し付けられ、かつ、前記入力部材の周方向他側への回転に伴い、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合した状態において、前記第1方向と前記入力部材の回転中心との両方に直交する第2方向に関する、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との接触部と、前記入力部材の回転中心との距離を、前記第2方向に関する、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との接触部と、前記出力部材の回転中心との距離よりも大きくすることができ、かつ、
前記出力部材にトルクが逆入力され、2つの前記押圧面が前記被押圧面に接触した状態で、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との接触部を、2つの前記押圧面のうちの一方の押圧面と前記被押圧面との当接部と、前記出力部材の回転中心とを結ぶ仮想直線よりも前記第1方向に関して前記出力部材の回転中心に近い側に位置させることができる。
【0028】
本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータでは、前記逆入力遮断クラッチは、それぞれが前記係合子により構成される2つの係合子を備えることができる。
【0029】
本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータでは、前記逆入力遮断クラッチは、前記押圧面を前記被押圧面に近づける方向に前記係合子を弾性的に付勢する弾性部材を備えることができる。
【0030】
本開示の一態様の転舵装置は、
出力部材を有する逆入力遮断クラッチ付アクチュエータと、
直線運動を可能に支持され、該直線運動に応じて操舵輪の向きが変化するように該操舵輪に接続されるロッドを有し、前記出力部材の回転運動を前記ロッドの直線運動に変換する直動機構と、
を備える。
【0031】
特に本開示の一態様の転舵装置では、前記逆入力遮断クラッチ付アクチュエータが、本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータにより構成される。
【0032】
本開示の一態様の転舵装置では、
前記ロッドは、外周面にらせん状の雄ボールねじ溝を備え、
前記直動機構は、
内周面に、らせん状の雌ボールねじ溝を有し、前記出力部材によって回転駆動されるボールナットと、
前記雌ボールねじ溝と前記雄ボールねじ溝との間に転動自在に配置された複数個のボールと、
をさらに備えることができる。
【0033】
この場合、前記直動機構は、ボールねじ装置により構成される。
【0034】
本開示の一態様の転舵装置では、前記操舵輪は、後輪である。
【0035】
本開示の一態様の逆入力遮断クラッチの制御方法の対象となる逆入力遮断クラッチは、
アクチュエータにより回転駆動される入力部材および出力側機構にトルク伝達可能に接続される出力部材を有し、前記出力部材に前記出力側機構からトルクが逆入力されていない状態で、前記アクチュエータから前記入力部材にトルクが入力されると、前記入力部材に入力されたトルクを前記出力部材に伝達するのに対し、前記入力部材に前記アクチュエータからトルクが入力されていない状態で、前記出力側機構から前記出力部材にトルクが逆入力されると、前記出力部材の回転をロックする。
【0036】
特に本開示の一態様の逆入力遮断クラッチの制御方法では、所定の条件を満たす場合に、前記出力側機構から前記出力部材にトルクが逆入力されている状態で、前記アクチュエータにより前記入力部材に、前記出力側機構から前記出力部材に逆入力されているトルクの方向と逆方向のトルクを付与することで、前記逆入力遮断クラッチを前記入力部材と前記出力部材との間でトルク伝達可能な状態に切り換えた後、前記アクチュエータにより前記入力部材に、前記出力側機構から前記出力部材に逆入力されているトルクの大きさ未満の大きさを有するトルクを前記逆方向に付与する指令を与え続けることで、該出力側機構から該出力部材に逆入力されているトルクを前記入力部材に伝達する。
【0037】
たとえば、本開示の一態様の逆入力遮断クラッチの制御方法の対象となる逆入力遮断クラッチは、被押圧部材と、前記入力部材と、前記出力部材と、係合子とを備えることができる。
【0038】
前記被押圧部材は、内周面に、被押圧面を有する。
【0039】
前記入力部材は、前記被押圧面の径方向内側に配置された入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に回転可能に支持されている。
【0040】
前記出力部材は、前記被押圧面の径方向内側において前記入力側係合部よりも径方向内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に回転可能に支持されている。
【0041】
前記係合子は、前記被押圧面に対向する押圧面と、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部と、前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部とを有し、前記被押圧面に対する前記押圧面の遠近方向である第1方向の移動を可能に配置されている。
【0042】
さらに、前記係合子は、前記アクチュエータから前記入力部材にトルクが入力されると、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づき、前記第1方向に関して前記押圧面を前記被押圧面から離す方向に移動して、前記入力部材と前記出力部材との間でトルクを伝達可能とするのに対し、前記アクチュエータから前記入力部材にトルクが入力されていない状態で、前記出力側機構から前記出力部材にトルクが逆入力されると、前記出力側被係合部と前記出力側係合部との係合に基づき、前記第1方向に関して前記押圧面を前記被押圧面に近づける方向に押圧されて、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させる。
【発明の効果】
【0043】
本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータによれば、ロック解除時に、入力部材と出力部材とが回転可能な状態と、回転不能な状態とが、短時間で交互に繰り返されるジャーキング現象が発生するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、本開示の実施の形態の第1例の転舵装置を示す模式図である。
図2図2は、第1例の転舵装置を構成する逆入力遮断クラッチについて、出力部材側から見た端面図である。
図3図3は、図2のX-X断面図である。
図4図4は、図3のY-Y断面図である。
図5図5は、第1例の逆入力遮断クラッチについて、入力部材に入力されたトルクが出力部材に伝達される状態を示す、図4と同様の図である。
図6図6は、第1例の逆入力遮断クラッチについて、前記出力部材がロックされた状態を示す、図4と同様の図である。
図7図7は、第1例の逆入力遮断クラッチについて、前記出力部材に逆入力されたトルクを前記入力部材に伝達する状態を示す、図4と同様の図である。
図8図8(A)~図8(C)は、第1例の逆入力遮断クラッチにおいて、該逆入力遮断クラッチの形状を規制することの効果を説明するための模式図である。
図9図9は、本開示の実施の形態の第2例の逆入力遮断クラッチについての図4と同様の図である。
図10図10は、第2例の逆入力遮断クラッチについての図5と同様の図である。
図11図11は、第2例の逆入力遮断クラッチについての図6と同様の図である。
図12図12は、第2例の逆入力遮断クラッチについての図7と同様の図である。
図13図13(A)および図13(B)は、第2例の逆入力遮断クラッチにおいて、該逆入力遮断クラッチの形状を規制することの効果を説明するための図である。
【0045】
[第1例]
本開示の実施の形態の第1例について、図1図8(C)により説明する。本例は、本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータを、後輪用の転舵装置に適用した例である。本例の転舵装置1は、逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2と、出力側機構である直動機構3とを備える。本例の転舵装置1は、後輪用の転舵装置である。ただし、本開示を実施する場合には、本例の転舵装置1を、前輪用の転舵装置に適用することも可能である。また、本例の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2を種々の機械装置に適用することも可能である。この場合にも、転舵装置または逆入力遮断クラッチ付アクチュエータの構成は基本的に本例と同様である。
【0046】
本例の転舵装置1を搭載した車両では、図示しない操舵装置のステアリングホイールの回転量および回転速度、車速、並びに/または周囲の状況などの車両状態をセンサにより検知し、該センサの情報に基づいて、図示しないECUにより、アクチュエータ5への通電量および通電方向が制御される。
【0047】
(逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ)
本例の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2は、アクチュエータ5と、逆入力遮断クラッチ4とを備える。
【0048】
アクチュエータ5は、逆入力遮断クラッチ4の入力部材7を回転駆動する。本例では、アクチュエータ5は、駆動源として電動モータを備える。
【0049】
なお、本開示を実施する場合、アクチュエータの駆動源として、エンジンを適用することもできる。また、アクチュエータは、駆動源と逆入力遮断クラッチの入力部材との間に、減速機を備えることもできる。
【0050】
逆入力遮断クラッチ4は、アクチュエータ5により回転駆動される入力部材7、および、出力側機構である直動機構3のボールナット33にトルク伝達可能に接続される出力部材8を有する。入力部材7と出力部材8とは、互いに同軸に配置されている。
【0051】
逆入力遮断クラッチ4は、出力部材8に直動機構3からトルクが逆入力されていない状態で、アクチュエータ5から入力部材7にトルクが入力されると、入力部材7の回転方向にかかわらず、入力部材7に入力されたトルクを出力部材8に伝達する。より具体的には、出力部材8に直動機構3からトルクが逆入力されていない状態で、アクチュエータ5から入力部材7に、所定のトルク以上の大きさのトルクが入力されると、入力部材7の回転方向にかかわらず、入力部材7に入力されたトルクが出力部材8に伝達される。すなわち、入力部材7と出力部材8とが一体となって回転する。
【0052】
入力部材7にアクチュエータ5からトルクが入力されていない状態で、出力部材8に直動機構3からトルクが逆入力されると、逆入力遮断クラッチ4は、出力部材8の回転方向にかかわらず、出力部材8の回転がロックされる。具体的には、逆入力遮断クラッチ4は、アクチュエータ5から入力部材7にトルクが入力されていない状態で、出力部材8に直動機構3から、所定のロックトルク以上の大きさのトルクが逆入力されると、出力部材8の回転がロックされる。すなわち、直動機構3から出力部材8に逆入力されたトルクが、完全に遮断されて入力部材7に伝達されない。
【0053】
ロックトルクは、アクチュエータ5から入力部材7にトルクが入力されていない状態で、出力部材8が回転することに伴って、逆入力遮断クラッチ4をロック状態に切り換える、すなわち出力部材8がロックされる状態に切り換えるために最低限必要な出力部材8のトルクの大きさである。具体的には、本例では、ロックトルクは、アクチュエータ5から入力部材7にトルクが入力されていない状態で、出力部材8の回転に伴い、係合子10の押圧面25を、被押圧部材9の被押圧面11に摩擦係合させるのに、最低限必要な出力部材8のトルクの大きさであって、出力部材8の回転方向にかかわらず、同じである。
【0054】
本例では、逆入力遮断クラッチ4は、被押圧部材9と、入力部材7と、出力部材8と、係合子10とを備える。本例の逆入力遮断クラッチ4は、係合子10を2つ備える。
【0055】
被押圧部材9は、円筒形状を有し、たとえばハウジングなどの図示しない他の部材に固定されるか、または、他の部材と一体に設けられることにより、その回転が拘束されている。被押圧部材9は、内周面に、円筒面状の凹面である被押圧面11を有する。
【0056】
入力部材7は、被押圧面11の径方向内側に配置された入力側係合部12を有し、被押圧面11と同軸に回転可能に支持されている。入力部材7は、アクチュエータ5により回転駆動される。
【0057】
本例では、入力部材7は、基板部13と、入力軸部14と、入力側係合部12とを備える。
【0058】
基板部13は、軸方向から見て略円形の端面形状を有する。
【0059】
入力軸部14は、基板部13の軸方向片側面(図3の右側面)の中央部から軸方向片側に向けて突出している。入力軸部14は、軸方向片側部分に、入力シャンク部15を有する。本例では、入力シャンク部15は、外周面に互いに平行な1対の平坦面を含む二面幅形状を有する。ただし、入力シャンク部15は、アクチュエータ5にトルク伝達可能に接続することができれば、任意の形状とすることができる。また、入力軸部と、アクチュエータである電動モータの出力軸とを一体に構成することもできる。
【0060】
入力部材7は、入力側係合部12を、係合子10と同数備える。すなわち、本例では、入力部材7は、入力側係合部12を2つ備える。
【0061】
入力側係合部12は、軸方向から見て略扇形または略台形の端面形状を有し、基板部13の軸方向他側面(図3の左側面)の径方向反対側2箇所位置から軸方向他側に向けて突出している。2つの入力側係合部12は、入力部材7の径方向に互いに離隔している。このため、それぞれの入力側係合部12は、基板部13の軸方向他側面のうちで回転中心Oから径方向外側に外れた部分に配置されている。また、それぞれの入力側係合部12は、周方向に関して対称な形状を有する。
【0062】
本例では、それぞれの入力側係合部12の径方向内側面16は、互いに平行な平坦面により構成されており、かつ、それぞれの入力側係合部12の径方向外側面17は、基板部13の外周面と同じ円筒面状の輪郭形状を有する。また、それぞれの入力側係合部12の1対の周方向側面18は、径方向外側に向かうほど互いに離れる方向に傾斜した平坦面により構成されている。
【0063】
出力部材8は、被押圧面11の径方向内側において入力側係合部12よりも径方向内側に配置された出力側係合部19を有し、被押圧面11と同軸に回転可能に支持されている。本例では、出力部材8は、出力軸部20と、出力側係合部19とを有する。
【0064】
出力軸部20は、軸方向片側の端部に、径方向外側に向けて突出するフランジ部21を有し、かつ、軸方向他側部分に、出力シャンク部22を有する。本例では、出力シャンク部22は、外周面に互いに平行な1対の平坦面を含む二面幅形状を有する。出力シャンク部22には、逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2のトルク出力部である駆動歯車38がトルクの伝達を可能に外嵌されている。ただし、出力シャンク部22は、逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2のトルク出力部である駆動歯車38にトルク伝達可能に接続することができれば、任意の形状とすることができる。
【0065】
出力側係合部19は、カム機能を有する。すなわち、出力部材8の回転中心Oから出力側係合部19の外周面までの距離は、周方向に関して一定でない。本例では、出力側係合部19は、軸方向から見て略矩形または略長円形の端面形状を有し、出力軸部20の軸方向片側の端面の中央部から軸方向片側に向けて突出している。すなわち、出力側係合部19の外周面は、互いに平行な1対の平坦面23と、それぞれが部分円筒面状の1対の凸曲面24とから構成されている。このため、出力部材8の回転中心Oから出力側係合部19の外周面までの距離は、周方向にわたり一定でない。なお、本例では、1対の凸曲面24は、出力部材8の回転中心Oを中心とする部分円筒面により構成されている。
【0066】
出力側係合部19は、出力部材8の回転中心Oを通り、かつ、1対の平坦面23に直交する仮想平面に対して面対称であり、かつ、出力部材8の回転中心Oを通り、かつ、1対の平坦面23に平行な仮想平面に対して面対称である。出力側係合部19は、それぞれの入力側係合部12の径方向内側に配置されている。すなわち、本例では、出力側係合部19は、2つの入力側係合部12同士の間部分に配置されている。
【0067】
それぞれの係合子10は、被押圧面11に対向する押圧面25と、入力側係合部12と係合可能な入力側被係合部26と、出力側係合部19と係合可能な出力側被係合部27とを備える。
【0068】
係合子10に関して径方向とは、図4に矢印Aで示した、径方向内側面に備えられた平坦面部29に対して直角な方向をいい、係合子10に関して幅方向とは、図4に矢印Bで示した平坦面部29に対して平行な方向をいう。本例では、係合子10に関する径方向が、係合子10の1対の押圧面25の被押圧面11に対する遠近方向であって、第1方向に相当し、係合子10に関する幅方向が、第1方向と入力部材7の回転中心Oとの両方に直交する第2方向に相当する。
【0069】
本例では、それぞれの係合子10は、軸方向から見て略半円形の端面形状を有し、かつ、幅方向に関して対称な形状を有する。
【0070】
押圧面25は、係合子10のうち、被押圧面11に対向する径方向外側面に備えられている。本例では、押圧面25は、係合子10の径方向外側面のうちで周方向に離隔した2箇所位置にそれぞれ備えられている。それぞれの押圧面25は、被押圧面11の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する部分円筒面状の凸曲面により構成されている。なお、係合子10の径方向外側面のうち、2つの押圧面25から周方向に外れた部分は、軸方向から見た場合に、入力部材7の中心軸Oを中心とし、かつ、2つの押圧面25に接する仮想円よりも、径方向内側に存在している。すなわち、2つの押圧面25が被押圧面11に当接した状態で、係合子10の径方向外側面のうち、2つの押圧面25から周方向に外れた部分は、被押圧面11に当接しない。
【0071】
それぞれの押圧面25は、係合子10のその他の部分よりも被押圧面11に対する摩擦係数が大きい表面性状を有することが好ましい。また、それぞれの押圧面25は、係合子10のその他の部分と一体に構成することもできるし、係合子10のその他の部分に、貼着や接着などにより固定された摩擦材の表面に形成することもできる。
【0072】
入力側被係合部26は、係合子10の幅方向中央部の径方向中間部に備えられている。入力側被係合部26は、軸方向から見て略弓形の開口形状を有し、かつ、係合子10の幅方向中央位置の径方向中間部を軸方向に貫通する貫通孔により構成されている。入力側被係合部26は、入力側係合部12を緩く挿入できる大きさを有する。したがって、入力側被係合部26の内側に入力側係合部12を挿入した状態で、入力側係合部12と入力側被係合部26の内面との間には、係合子10の幅方向および径方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、入力側係合部12は、係合子10に対し、入力部材7の回転方向に関する変位が可能であり、係合子10は、入力側係合部12に対し、係合子10の径方向の変位が可能である。本例では、入力側被係合部26は、径方向外側を向いた径方向内側面に、係合子10の径方向内側面に備えられた平坦面部29と平行な平坦面28を有する。
【0073】
なお、本開示を実施する場合、入力側被係合部を、係合子の軸方向片側面にのみ開口する有底孔により構成することもできる。あるいは、入力側被係合部を、係合子の径方向外側面に開口する切り欠きにより構成することもできる。
【0074】
出力側被係合部27は、係合子10の径方向内側面の幅方向中央部に備えられている。本例では、係合子10は、径方向内側面に、平坦面部29を有し、かつ、平坦面部29の幅方向2箇所位置に、径方向内側に向けて突出する2つの凸部30を有する。出力側被係合部27は、平坦面部29のうち、幅方向に関して2つの凸部30同士の間に存在する部分により構成されている。出力側被係合部27の幅方向寸法、すなわち2つの凸部30同士の間隔は、出力側係合部19の平坦面23の幅方向寸法よりも大きい。
【0075】
本例の逆入力遮断クラッチ4では、それぞれの係合子10の2つの押圧面25を径方向に関して互いに反対側に向け、かつ、それぞれの係合子10の径方向内側面(平坦面部29)を互いに対向させた状態で、2つの係合子10を被押圧部材9の径方向内側に、それぞれの係合子10の径方向(第1方向)の移動を可能に配置する。また、軸方向片側に配置した入力部材7の2つの入力側係合部12を、それぞれの係合子10の入力側被係合部26に軸方向に挿入し、かつ、軸方向他側に配置した出力部材8の出力側係合部19を、2つの係合子10の出力側被係合部27同士の間に軸方向に挿入する。すなわち、2つの係合子10は、該2つの係合子10の出力側被係合部27により、出力側係合部19を径方向外側から挟むように配置される。
【0076】
なお、2つの係合子10を被押圧部材9の径方向内側に配置した状態で、被押圧面11とそれぞれの押圧面25との間部分、および、凸部30の先端面同士の間部分の少なくとも一方に隙間が存在するように、被押圧部材9の内径寸法と係合子10の径方向寸法が規制されている。
【0077】
本開示の一態様の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータを実施する場合、逆入力遮断クラッチは、係合子を、押圧面を被押圧面に対して近づける方向に弾性的に付勢部材をさらに備えることができる。本例の逆入力遮断クラッチ4では、たとえば、付勢部材は、2つの係合子10の凸部30同士の2つの組み合わせのそれぞれの間に、長さ方向両側の端部の内側にそれぞれの凸部30を挿入することにより、その脱落が防止された2つの圧縮コイルばねにより構成されることができる。あるいは、付勢部材は、2つの係合子10の平坦面部29と出力側係合部19との間に配置された2つの板ばねにより構成されることができる。
【0078】
本例の逆入力遮断クラッチ4では、出力部材8に、出力側機構である直動機構3からトルクが逆入力されていない状態で、アクチュエータ5から入力部材7にトルクが入力されると、図5に示すように、入力側被係合部26の内側で、入力側係合部12が入力部材7の回転方向(図5の例では反時計方向)に回転する。すると、入力側係合部12の径方向内側面16が入力側被係合部26の平坦面28を径方向内側に向けて押圧し、2つの係合子10に、第1方向に関して押圧面25を被押圧面11から離す方向の力が付与される。これにより、係合子10が、第1方向に関して押圧面25を被押圧面11から離す方向にそれぞれ移動する。つまり、2つの係合子10を、入力部材7との係合に基づき、互いに近づく方向である径方向内側に向けて(図5の上側に位置する係合子10を下側に向けて、図5の下側に位置する係合子10を上側に向けて)それぞれ移動させる。
【0079】
これにより、2つの係合子10の径方向内側面が互いに近づく方向に移動し、2つの係合子10の出力側被係合部27が、出力部材8の出力側係合部19を径方向両側から挟持する。すなわち、出力部材8を、出力側係合部19の平坦面23が係合子10の平坦面部29と平行になるように回転させつつ、出力側係合部19と、2つの係合子10の出力側被係合部27とをがたつきなく係合させる。これにより、出力部材8のロックが解除されて、入力部材7と出力部材8との間でトルクの伝達が可能となる。換言すれば、入力部材7と出力部材8とが一体となって回転する。要するに、入力部材7に入力されたトルクが、2つの係合子10を介して、出力部材8に伝達される。
【0080】
これに対し、入力部材7にアクチュエータ5からトルクが入力されていない状態で、直動機構3から出力部材8にトルクが逆入力されると、図6に示すように、出力側係合部19が、2つの係合子10の出力側被係合部27同士の内側で、出力部材8の回転方向(図6の例では時計方向)に回転する。すると、出力側係合部19の外周面のうち、平坦面23と凸曲面24との接続部である角部が出力側被係合部27を径方向外側に向けて押圧し、2つの係合子10を、被押圧面11に近づく方向に押圧する。つまり、2つの係合子10を、出力部材8との係合に基づき、互いに離れる方向である径方向外側に向けて(図6の上側に位置する係合子10を上側に向けて、図6の下側に位置する係合子10を下側に向けて)それぞれ押圧する。これにより、2つの係合子10のそれぞれの押圧面25を、被押圧面11に対して押し付け、摩擦係合させる。
【0081】
この結果、出力部材8に逆入力されたトルクが完全に遮断されて入力部材7に伝達されなくなる。すなわち、2つの押圧面25が被押圧面11に対して摺動しないように、2つの係合子10を出力側係合部19と被押圧部材9との間で挟持することで、出力部材8がロックされる。
【0082】
本例の逆入力遮断クラッチ4では、以上の動作が可能となるように、各構成部材間の隙間の大きさが調整されている。なお、図5および図6では、入力部材7および出力部材8と、2つの係合子10との間の径方向に関する隙間が誇張して示されている。
【0083】
本例では、逆入力遮断クラッチ4は、2つの係合子10を備えるが、本開示を実施する場合、以上の動作を実現することができれば、逆入力遮断クラッチは、1つの係合子のみを備えることができ、あるいは、3つの以上の係合子を備えることもできる。
【0084】
特に本例の逆入力遮断クラッチ4では、それぞれの係合子10の2つの押圧面25が被押圧面11に接触した位置関係において、入力側係合部12の径方向内側面16と入力側被係合部26の内面との間に、出力側係合部19の角部が出力側被係合部27を押圧することに基づいて2つの押圧面25を被押圧面11に向けてさらに押し付けることを許容する隙間が存在するようにしている。これにより、出力部材8にトルクが逆入力されたことに基づいてそれぞれの係合子10が径方向外側に移動する際に、それぞれの係合子10の移動が入力側係合部12によって阻止されることを防止し、かつ、2つの押圧面25が被押圧面11に接触した後も、2つの押圧面25と被押圧面11との接触部に作用する面圧が、出力部材8に逆入力された回転トルクの大きさに応じて変化するようにすることで、出力部材8のロックが適正に行われるようにしている。
【0085】
さらに、本例の逆入力遮断クラッチ4では、以下の関係を満たすように、被押圧部材9、入力部材7、出力部材8および2つの係合子10を構成する各部の寸法および形状が規制されている。
【0086】
まず、出力部材8の所定方向(たとえば図4の時計方向)への回転に伴い、2つの押圧面25が被押圧面11に押し付けられ、かつ、入力部材7の前記所定方向と反対方向(たとえば図4の反時計方向)への回転に伴い、入力側係合部12と入力側被係合部26とが係合した状態、すなわち入力側係合部12の一部が入力側被係合部26に接触した状態において、入力側係合部12と入力側被係合部26との接触部Pinと、入力部材7の回転中心Oとの第2方向に関する距離である第1距離Dを、出力側係合部19と出力側被係合部27との接触部Poutと、出力部材8の回転中心Oとの第2方向に関する第2距離Dよりも小さくしている(D<D)。
【0087】
また、図6に示すように、出力部材8にトルクが逆入力され、それぞれの係合子10の2つの押圧面25が被押圧面11に接触したロック状態で、出力側係合部19と出力側被係合部27との接触部Cが、2つの押圧面25のうちの一方の押圧面25、具体的には第2方向に関して、出力部材8の回転中心Oよりも接触部Cに近い側の押圧面25と被押圧面11との当接部Cと、出力部材8の回転中心Oとを結ぶ仮想直線Lよりも、第1方向に関して出力部材8の回転中心Oに近い側(図6の下側)に位置している。
【0088】
(逆入力遮断クラッチの制御方法)
本例の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2は、逆入力遮断クラッチ4を以下のように制御することに特徴がある。本例の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2は、出力側機構である直動機構3から出力部材8にトルクが逆入力されている状態で、アクチュエータ5により入力部材7に、直動機構3から出力部材8に逆入力されているトルクの方向(たとえば図7の時計方向)と逆方向(たとえば図7の反時計方向)のトルクを付与する。これにより、逆入力遮断クラッチ4を入力部材7と出力部材8との間でトルク伝達可能な状態に切り換える。具体的には、アクチュエータ5により入力部材7に、所定のロック解除トルクの大きさ以上の大きさを有するトルクを、出力部材8に逆入力されているトルクの方向と逆方向に付与することにより、逆入力遮断クラッチ4を入力部材7と出力部材8との間でトルク伝達可能な状態に切り換える。好ましくは、本例では、アクチュエータ5により入力部材7に、所定のロック解除トルクの大きさ以上で、かつ、出力部材8に逆入力されているトルクの大きさ未満の大きさを有するトルクを、出力部材8に逆入力されているトルクの方向と逆方向に付与する。
【0089】
なお、ロック解除トルクの大きさは、入力部材7が回転することに伴って、逆入力遮断クラッチ4をロック解除状態に切り換える、すなわち係合子10の押圧面25を被押圧面11から離隔させるために、最低限必要な入力部材7のトルクの大きさである。本例の逆入力遮断クラッチ4において、たとえば、操舵輪である後輪31が、セルフアライニングトルクによる復元力に基づいて舵角が付与された状態から直進状態に戻ろうとする際に、直動機構3から出力部材8にトルクが逆入力されているような場合、前記ロック解除トルクの大きさは、前記セルフアライニングトルクに基づいて出力部材8に逆入力されているトルクの大きさよりも小さくなる。
【0090】
すなわち、アクチュエータ5により入力部材7を、直動機構3から出力部材8に逆入力されているトルクの方向と逆方向に回転駆動すると、入力側係合部12の径方向内側面16が入力側被係合部26の平坦面28を径方向内側に向けて押圧し、2つの係合子10が、被押圧面11から離れる方向それぞれ移動する。これにより、2つの係合子10の出力側被係合部27が、出力部材8の出力側係合部19を径方向両側から挟持し、出力側係合部19と、2つの係合子10の出力側被係合部27とが係合して、入力部材7と出力部材8との間でトルクの伝達が可能となる。
【0091】
逆入力遮断クラッチ4を入力部材7と出力部材8との間でトルク伝達可能な状態に切り換えた後、逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2は、アクチュエータ5により入力部材7に、直動機構3から出力部材8にトルクが逆入力されているトルクの大きさ未満の大きさを有するトルクを、該出力部材8に逆入力されているトルクの方向と逆方向に付与する指令を与え続ける。これにより、直動機構3から出力部材8に逆入力されたトルクが、入力部材7に伝達される。
【0092】
すなわち、2つの係合子10の押圧面25が被押圧面11から離隔した状態で、出力部材8に、入力部材7に入力されるトルクよりも大きいトルクが入力されると、入力部材7が、2つの係合子10を介して、出力部材8により押し戻されるようにして回転する。これにより、直動機構3から出力部材8に逆入力されたトルクが、入力部材7に伝達される。
【0093】
なお、逆入力遮断クラッチ4を入力部材7と出力部材8との間でトルク伝達可能な状態に切り換えた後、アクチュエータ5から入力部材7に付与するトルクの大きさの指令値は、逆入力遮断クラッチ4がロック状態に切り換わるのを防止できれば足りる。具体的には、アクチュエータ5から入力部材7に付与するトルクの大きさは、付勢部材の作用により、係合子10が、押圧面25を被押圧面11に対して近づく方向に移動することを抑えられる程度の大きさで足りる。このため、いったん逆入力遮断クラッチ4が、入力部材7と出力部材8との間でトルク伝達可能なロック解除状態に切り換わった後であれば、アクチュエータ5から入力部材7に付与するトルクの指令値を、前記ロック解除トルクよりも極めて小さくすることができる。
【0094】
入力部材7に伝達されたトルクは、アクチュエータ5を構成する電動モータが負荷となることで、吸収される。
【0095】
(転舵装置)
本例の転舵装置1では、操舵輪である後輪31が、セルフアライニングトルクによる復元力に基づいて舵角が付与された状態から直進状態に戻ろうとする際に、直動機構3から出力部材8に逆入力されるトルクを、入力部材7に伝達可能とするのに対し、後輪31が縁石に乗り上げるなどすることに基づいて、直動機構3から出力部材8に衝撃的なトルクが加わった際には、出力部材8をロックするように条件が設定されている。
【0096】
具体的には、直動機構3から出力部材8に逆入力されるトルクの大きさおよび増加速度が所定の範囲内である場合には、アクチュエータ5に通電して、入力部材7に、所定のロック解除トルクの大きさ以上の大きさを有するトルクを、出力部材8に逆入力されるトルクの方向と逆方向に付与することで、直動機構3から出力部材8に逆入力されるトルクを、入力部材7に伝達可能とする。その後、アクチュエータ5により入力部材7に、直動機構3から出力部材8に逆入力されるトルクの大きさ未満の大きさを有するトルクを、該出力部材8に逆入力されているトルクの方向と逆方向に付与する指令を与え続ける。これにより、出力部材8に逆入力されたトルクを、入力部材7に伝達する。
【0097】
一方、直動機構3から出力部材8に逆入力されるトルクの大きさおよび/または増加速度が過大である場合には、アクチュエータ5への通電を停止して、入力部材7にトルクを付与しないことで、出力部材8をロックする。
【0098】
直動機構3から出力部材8に逆入力されるトルクの大きさおよび変化速度は、アクチュエータ5を構成する電動モータの電流値に基づいて推定することができる。あるいは、出力部材8に取り付けられたトルクセンサの出力信号に基づいて、出力部材8に逆入力されるトルクの大きさおよび変化速度を求めてもよい。あるいは、車体に取り付けられたヨーレートセンサや加速度センサなどの出力信号に基づいて、後輪31に加わる荷重を算出し、出力部材8に逆入力されるトルクの大きさおよび変化速度を求めることもできる。
【0099】
なお、直動機構3から出力部材8に逆入力されたトルクを入力部材7に伝達可能とした状態において、アクチュエータ5により入力部材7に、直動機構3から出力部材8に逆入力されているトルクの大きさよりも大きいトルクが、直動機構3から出力部材8に逆入力されているトルクの方向と逆方向に付与されると、入力部材7に入力されたトルクが出力部材8に伝達可能となる。本例の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2では、直動機構3から出力部材8に逆入力されたトルクが入力部材7に伝達されている状態から、入力部材7に入力するトルクを大きくすることで、逆入力遮断クラッチ4内でのトルクの伝達方向を逆転させる場合であっても、係合子10は径方向に移動することがなく、押圧面25と被押圧面11とが接触することはない。すなわち、逆入力遮断クラッチ4内でのトルクの伝達方向の変更をスムーズに行うことができる。
【0100】
本例の直動機構3は、ロッド32を有し、出力部材8の回転運動をロッド32の軸方向運動に変換する。ロッド32は、自身の軸方向の直線運動を可能に支持され、該軸方向運動に応じて操舵輪である後輪31の向きが変化するように該後輪31に接続される。本例の直動機構3は、ボールナット33と、複数個のボール34とをさらに備える。すなわち、本例の直動機構3は、ボール式の送りねじ機構により構成される。
【0101】
ロッド32は、外周面に、らせん状の雄ボールねじ溝を有する。ロッド32は、自身の軸方向を車体の幅方向に向け、軸方向の直線運動を可能に、かつ、回転を不能に支持されている。
【0102】
ロッド32は、自身の軸方向の直線運動に応じて、後輪31の向きが変化するように、後輪31に接続されている。すなわち、ロッド32の軸方向両側の端部にはそれぞれ、図示しない球面継手を介して、タイロッド35の基端部が接続されている。それぞれのタイロッド35の先端部には、ナックルアーム36の基端部が揺動可能に支持されている。それぞれのナックルアーム36の先端部には、ナックルが、キングピンを中心とする揺動を可能に支持されている。それぞれの後輪31は、ナックルに対し、ハブユニット軸受を介して回転自在に支持されている。
【0103】
ボールナット33は、内周面に、らせん状の雌ボールねじ溝を有し、ロッド32の周囲に、回転のみを可能に支持されている。ボールナット33は、逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2の出力部材8により回転駆動される。
【0104】
本例では、ボールナット33は、トルク伝達機構37を介して、出力部材8により回転駆動される。すなわち、本例の転舵装置1は、逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2の出力部材8の回転運動、換言すればトルクを、直動機構3のトルク入力部であるボールナット33に伝達するトルク伝達機構37を備える。
【0105】
トルク伝達機構37は、出力部材8の出力シャンク部22に外嵌固定された駆動歯車38と、該駆動歯車38と噛合する中間歯車39と、ボールナット33の周囲に備えられ、かつ、中間歯車39と噛合する従動歯車40とを有する。すなわち、本例では、トルク伝達機構37は、歯車式の減速機により構成される。
【0106】
なお、本開示を実施する場合、逆入力遮断クラッチ付アクチュエータの出力部材に備えられた駆動歯車と、直動機構のトルク入力部であるボールナットに備えられた従動歯車とを直接噛合させることもできるし、中間歯車を2個以上備えることもできる。あるいは、前記出力部材の回転運動を前記ボールナットに伝達するためのトルク伝達機構は、ベルトまたはチェーンを使用した減速機により構成することもできるし、ウォーム減速機により構成することもできる。
【0107】
複数個のボール34は、ロッド32の雄ボールねじ溝と、ボールナット33の雌ボールねじ溝とからなる負荷路に転動自在に配置されている。
【0108】
なお、負荷路の始点と終点とは、ボールナット33の内周面に備えられるか、あるいは、ボールナット33に固定された循環部品に備えられた、循環路により接続されている。
【0109】
本例の転舵装置1により、2つの後輪31に舵角を付与する際には、図示しない操舵装置のステアリングホイールの回転量および回転速度、車速、並びに/または周囲の状況などをセンサにより検知し、これらのセンサの情報に基づいて、図示しないECUにより、アクチュエータ5への通電量および通電方向を制御する。これにより、入力部材7を回転駆動すると、図5に示すように、逆入力遮断クラッチ4のロックが解除され、入力部材7の回転が出力部材8に伝達される。
【0110】
出力部材8の回転は、トルク伝達機構37によりボールナット33に伝達され、ボールナット33の回転に伴ってロッド32が軸方向運動することで、タイロッド35が押し引きされて後輪31に舵角が付与される。
【0111】
後輪31を、舵角が付与された状態から直進状態に戻す際には、セルフアライニングトルクによる復元力に基づき、直動機構3からトルク伝達機構37を介して出力部材8に逆入力されるトルクを、入力部材7に伝達するべく、アクチュエータ5により入力部材7に、出力部材8に逆入力されたトルクの方向と逆方向のトルクを付与する。具体的には、アクチュエータ5により入力部材7に、所定のロック解除トルクの大きさ以上の大きさを有するトルクを、出力部材8に逆入力されたトルクの方向と逆方向に付与する。その後、アクチュエータ5により入力部材7に、出力部材8に逆入力されたトルクの大きさ未満の大きさを有するトルクを、該出力部材8に逆入力されたトルクの方向と逆方向に付与する指令を与え続ける。これにより、図7に示すように、逆入力遮断クラッチ4を、セルフアライニングトルクによる復元力に基づき、直動機構3からトルク伝達機構37を介して出力部材8に逆入力されるトルクを入力部材7に伝達可能な状態とし、出力部材8の回転を許容することで、ロッド32の軸方向運動を許容する。この結果、後輪31を、セルフアライニングトルクによる復元力に基づいて、直進状態に戻すことができる。
【0112】
なお、後輪31に所定方向の舵角が付与された状態から、セルフアライニングトルクによる復元力に基づいて、後輪31が直進状態に戻っている途中で、入力部材7に付与するトルクの大きさを、出力部材8に逆入力されたトルクよりも大きくすれば、再度後輪31に所定方向の舵角を付与することができる。
【0113】
一方、後輪31が縁石に乗り上げるなどして、後輪31に衝撃的な荷重が加わることに基づき、直動機構3からトルク伝達機構37を介して出力部材8に衝撃的なトルクが加わったときには、出力部材8に逆入力されたトルクを遮断して、入力部材7に伝達しないようにするべく、アクチュエータ5への通電を停止し、入力部材7にトルクを付与しないようにする。これにより、図6に示すように、出力部材8をロックすることで、ロッド32の軸方向運動を阻止する。この結果、後輪31に、衝撃的な荷重が加わった場合でも、後輪31に舵角が付与されないようにでき、車両の挙動が不安定になることを防止できる。
【0114】
本例の転舵装置1では、アクチュエータ5を構成する電動モータの回転運動を、ロッド32の直線運動に変換する直動機構3を、ボールねじ機構により構成している。ボールねじ機構は、ナットの内周面に備えられた雌ねじ溝と、ロッドの外周面に備えられた雄ねじ溝とを滑り接触させた滑りねじ機構に比べて高い効率を得られる。このため、本例の転舵装置1によれば、アクチュエータ5を構成する電動モータを小型化することができる。
【0115】
また、本例の転舵装置1は、出力部材8に逆入力されたトルクを遮断して、入力部材7にトルクを伝達しない機能を有する逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2を備える。このため、直動機構3としてボールねじ機構を使用した場合でも、後輪31に衝撃的な荷重が加わることに基づいて、不用意に後輪31に舵角が付与されてしまうことを防止することができる。
【0116】
一方で、本例の逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ2では、直動機構3からトルク伝達機構37を介して出力部材8に逆入力されたトルクを、入力部材7に伝達したい場合に、アクチュエータ5により入力部材7に、直動機構3から出力部材8に逆入力されているトルクの方向と逆方向のトルクを付与する。これにより、係合子10に、それぞれの押圧面25を被押圧面11から離隔させる方向である径方向内側を向いた力を付与して、係合子10を径方向内側に移動させる。そして、それぞれの押圧面25を被押圧面11から離隔させることで、出力部材8に逆入力されたトルクを、入力部材7に伝達可能とする。その後、アクチュエータ5により入力部材7に、直動機構3から出力部材8に逆入力されているトルクの大きさ未満の大きさを有するトルクを、該出力部材8に逆入力されているトルクの方向と逆方向に付与する指令を与え続けることで、直動機構3から出力部材8に逆入力されたトルクを入力部材7に伝達する。
【0117】
このため、出力部材に、所定方向のトルクが逆入力されているときに、入力部材に、出力部材に逆入力されたトルクの方向と同じ方向のトルクを入力することで、逆入力遮断クラッチのロックを解除しようとする場合のように、入力部材と出力部材とが所定方向に回転可能な状態と、入力部材と出力部材とが回転不能な状態とを短時間で交互に繰り返しながら、入力部材と出力部材とが断続的に所定方向に回転する、ジャーキング現象の発生を防止でき、入力部材および出力部材の回転がギクシャクすることを防止できる。
【0118】
具体的には、本例の転舵装置1においては、後輪31を、舵角が付与された状態から直進状態に円滑に戻すことができて、運転者を含む乗員に違和感を与えることを防止できる。
【0119】
なお、セルフアライニングトルクによる復元力に基づいて、後輪31が直線状態に戻ることに伴うトルクが出力部材8に逆入力されているときであっても、ECUからの指令に基づいて、出力部材8に逆入力されているトルクと同じ方向のトルクを付与することもできる。
【0120】
本例の逆入力遮断クラッチ4では、第1距離Dを第2距離Dよりも小さくし、かつ、ロック状態において、接触部Cを、仮想直線Lよりも第1方向に関して出力部材8の回転中心Oに近い側に位置させている。このため、ロック状態からロック解除状態への切り換えを円滑に行うことができる。この理由について、図8(A)~図8(C)を参照しつつ説明する。
【0121】
逆入力遮断クラッチ4のロック状態において、入力部材7にトルクが入力されると、それぞれの係合子10は、接触部Cを中心として回転する傾向となる。
【0122】
第1距離Dが第2距離Dよりも大きい(D>D)場合、図8(B)に示すように、入力部材7に反時計方向のトルクが入力されると、係合子10が接触部Cを中心に反時計方向に回転する傾向となる。そして、図8(B)に一点鎖線で軌跡rを示すように、2つの押圧面25のうち、第2方向に関して出力部材8の回転中心Oを挟んで接触部Cと反対側(図8(B)の右側)に位置する押圧面25が、被押圧面11に強く押し付けられて食い込む傾向となる。このような被押圧面11に対する押圧面25の食い込みを解除するため、ロック状態からロック解除状態へ切り換える際に、入力部材7のトルクが瞬間的に大きくなる、すなわちピークトルクが発生する。
【0123】
また、接触部Cが、仮想直線Lよりも第1方向に関して出力部材8の回転中心Oから遠い側に位置する場合、図8(C)に示すように、入力部材7に反時計方向の回転トルクが入力されると、係合子10が接触部Cを中心に、時計方向に回転する傾向となる。そして、図8(C)に一点鎖線で軌跡rを示すように、2つの押圧面25のうち、第2方向に関して出力部材8の回転中心Oよりも接触部Cに近い側(図8(C)の左側)に位置する押圧面25が、被押圧面11に強く押し付けられて食い込む傾向となる。このような被押圧面11に対する押圧面25の食い込みを解除するため、ロック状態からロック解除状態へ切り換える際に、入力部材7のトルクが瞬間的に大きくなる。
【0124】
これに対し、本例の逆入力遮断クラッチ4のように、第1距離Dが第2距離Dよりも小さく(D<D)、かつ、接触部Cが、仮想直線Lよりも第1方向に関して出力部材8の回転中心Oに近い側に位置する場合、図8(A)に示すように、入力部材7に反時計方向の回転トルクが入力されると、係合子10が接触部Cを中心に、時計方向に回転する傾向となる。しかしながら、図8(A)に一点鎖線で軌跡r、rを示すように、2つの押圧面25はいずれも、被押圧面11に対して押し付けられることはない。このため、ロック状態からロック解除状態へ切り換える際にも、入力部材7のトルクが瞬間的に大きくなることはなく、ロック状態からロック解除状態への切り換えを円滑に行うことができる。また、ピークトルクが発生しないため、アクチュエータ5の最大出力トルクを徒に大きくする必要がなく、アクチュエータ5の徒な大型化を防止することができる。
【0125】
また、逆入力遮断クラッチは、係合子を、押圧面を被押圧面に近づける方向に弾性的に付勢する弾性部材を備えることもできる。前記弾性部材は、たとえば、ねじりコイルばねや板ばねなどにより構成することができる。前記係合子を2つ備え、かつ、前記弾性部材がねじりコイルばねにより構成される場合、前記係合子に備えられた凸部(本例の図2および図4図7に示す凸部30)を、前記ねじりコイルばねの端部に挿入することで、該ねじりコイルばねを保持することもできる。
【0126】
逆入力遮断クラッチを構成する入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子の材質は、特に限定されない。たとえば、これらの材質としては、鉄合金、銅合金、アルミニウム合金などの金属のほか、必要に応じて強化繊維を混入した合成樹脂などでも良い。また、入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子のそれぞれで、同じ材質にしても良いし、異なる材質にしても良い。
【0127】
[第2例]
本開示の実施の形態の第2例について、図9図13(B)により説明する。
【0128】
本例では、逆入力遮断クラッチ4aを構成する被押圧部材9、入力部材7a、出力部材8aおよび2つの係合子10を構成する各部の寸法および形状が、第1例の逆入力遮断クラッチ4から変更されている。
【0129】
まず、出力部材8aの所定方向(たとえば図9の時計方向)への回転に伴い、2つの押圧面25が被押圧面11に押し付けられ、かつ、入力部材7aの前記所定方向と反対方向(たとえば図9の反時計方向)への回転に伴い、入力側係合部12aと入力側被係合部26とが係合した状態、すなわち入力側係合部12aの一部が入力側被係合部26に接触した状態において、入力側係合部12aと入力側被係合部26との接触部Pinと、入力部材7aの回転中心Oとの第2方向に関する距離である第1距離Dを、出力側係合部19aと出力側被係合部27との接触部Poutと、出力部材8aの回転中心Oとの第2方向に関する第2距離Dよりも大きくしている(D>D)。
【0130】
また、図11に示すように、出力部材8aに回転トルクが逆入力され、それぞれの係合子10の2つの押圧面25が被押圧面11に接触したロック状態で、出力側係合部19aと出力側被係合部27との接触部Cが、2つの押圧面25のうちの一方の押圧面25、具体的には第2方向に関して、出力部材8aの回転中心Oよりも接触部Cに近い側の押圧面25と被押圧面11との当接部Cと、出力部材8aの回転中心Oとを結ぶ仮想直線Lよりも、第1方向に関して出力部材8aの回転中心Oに近い側(図9の下側)に位置している。
【0131】
本例においても、出力部材8aにトルクが逆入力されている状態で、入力部材7aに、出力部材8aに逆入力されているトルクの方向と逆方向のトルクを付与することで、逆入力遮断クラッチ4aを、入力部材7aと出力部材8aとの間でトルク伝達可能な状態に切り換えることができる。具体的には、入力部材7aに、所定のロック解除トルクの大きさ以上の大きさのトルクを、出力部材8aに逆入力されているトルクの方向と逆方向のトルクを付与することで、逆入力遮断クラッチ4aを、出力部材8aに逆入力されたトルクを入力部材7aに伝達可能な状態に切り換える。
【0132】
逆入力遮断クラッチ4aを入力部材7aと出力部材8aとの間でトルク伝達可能な状態に切り換えた後、入力部材7aに、出力部材8aに逆入力されているトルクの大きさ未満の大きさを有するトルクを、該出力部材8aに逆入力されているトルクの方向と逆方向に付与する指令を与え続けることで、出力部材8aに逆入力されたトルクを、入力部材7aに伝達することができる。
【0133】
本例においても、逆入力遮断クラッチ4aを入力部材7aと出力部材8aとの間でトルク伝達可能な状態に切り換えた後、入力部材7aに付与するトルクの大きさの指令値は、逆入力遮断クラッチ4aがロック状態に切り換わるのを防止できれば足りる。すなわち、いったん逆入力遮断クラッチ4aが、入力部材7aと出力部材8aとの間でトルク伝達可能なロック解除状態に切り換わった後であれば、入力部材7aに付与するトルクの指令値を、前記ロック解除トルクよりも極めて小さくすることができる。
【0134】
本例の逆入力遮断クラッチ4aでは、第1距離Dを第2距離Dよりも大きくし、かつ、ロック状態において、接触部Cを、仮想直線Lよりも第1方向に関して出力部材8aの回転中心Oに近い側に位置させている。このため、ロック状態からロック解除状態への切り換えを円滑に行いつつ、ロック解除状態からロック状態への切り換えを速やかに行うことができる。この理由について、図13(A)および図13(B)を参照しつつ説明する。
【0135】
逆入力遮断クラッチ4aのロック状態において、入力部材7aにトルクが入力されると、それぞれの係合子10は、接触部Cを中心として回転する傾向となる。
【0136】
接触部Cが、仮想直線Lよりも第1方向に関して出力部材8aの回転中心Oから遠い側に位置する場合、図13(B)に示すように、入力部材7aに反時計方向の回転トルクが入力されると、係合子10が接触部Cを中心に、反時計方向に回転する傾向となる。そして、図13(B)に一点鎖線で軌跡rを示すように、2つの押圧面25のうち、第2方向に関して出力部材8aの回転中心Oを挟んで接触部Cと反対側(図13(B)の右側)に位置する他方の押圧面25が、被押圧面11に強く押し付けられる傾向となる。
【0137】
すなわち、接触部Cが、仮想直線Lよりも第1方向に関して出力部材8aの回転中心Oから遠い側に位置する場合、支点となる接触部Cと力点となる接触部Pinとの第2方向に関する距離(力点距離)Dは比較的大きくなる。一方、接触部Cと、作用点である被押圧面11と他方の押圧面25との接触部Cとの第2方向に関する距離(作用点距離)Dは比較的小さくなる。したがって、梃子の原理により、被押圧面11に対して他方の押圧面25を押し付ける力が大きくなって、他方の押圧面25が被押圧面11に対して食い込みやすくなる。このような被押圧面11に対する他方の押圧面25の食い込みを解除するため、ロック状態または半ロック状態からロック解除状態または半ロック解除状態へ切り換える際に、入力部材7aの回転トルクが瞬間的に過大になる。すなわち、入力部材7aを回転駆動するための入力側機構の瞬時最大トルク(ピークトルク)が過大になる。
【0138】
これに対し、本例の逆入力遮断クラッチ4aのように、接触部Cが、仮想直線Lよりも第1方向に関して出力部材8aの回転中心Oに近い側に位置する場合にも、図13(A)に示すように、入力部材7aに反時計方向の回転トルクが入力されると、係合子10が接触部Cを中心に、反時計方向に回転する傾向となる。そして、図13(A)に一点鎖線で軌跡rを示すように、2つの押圧面25のうち、第2方向に関して出力部材8aの回転中心Oを挟んで接触部Cと反対側(図13(A)の右側)に位置する他方の押圧面25が、被押圧面11に押し付けられる傾向となる。
【0139】
本例では、接触部Cを、仮想直線Lよりも第1方向に関して出力部材8aの回転中心Oに近い側に位置させているため、支点となる接触部Cと力点となる接触部Pinとの第2方向に関する距離(力点距離)Dを、図13(B)に示した構造と比較して小さくすることができる。また、接触部Cと、作用点である被押圧面11と他方の押圧面25との接触部Cとの第2方向に関する距離(作用点距離)Dを、図13(B)に示した構造と比較して大きくすることができる。このため、被押圧面11に対して他方の押圧面25を押し付ける力は、図13(B)に示した構造と比較して小さくなり、他方の押圧面25が被押圧面11に対して食い込みにくくなる。したがって、ロック状態からロック解除状態へ切り換える際のピークトルクを、図13(B)に示した構造と比較して小さく抑えることができる。このため、本例の逆入力遮断クラッチ4aでは、ロック状態からロック解除状態への切り換えを円滑に行うことができる。
【0140】
本例の逆入力遮断クラッチ4aでは、入力部材7aにトルクが入力されると、係合子10が接触部Cを中心に回転する傾向となり、他方の押圧面25が被押圧面11に押し付けられる傾向となる。したがって、本例の逆入力遮断クラッチ4aでは、出力部材8aにトルクが逆入力された場合に、押圧面25を被押圧面11に押し付けるために必要な係合子10の第2方向に関する移動量を、第1例の逆入力遮断クラッチ4に比べて小さくすることができる。このため、本例の逆入力遮断クラッチ4aでは、ロック解除状態からロック状態への切り換えを速やかに行うことができる。
【0141】
本例の逆入力遮断クラッチ4aにおいても、出力部材8aに逆入力されたトルクを入力部材7aに伝達したい場合には、入力部材7aに、出力部材8aに逆入力されているトルクの方向と逆方向のトルクを付与することで、逆入力遮断クラッチ4aを、出力部材8aに逆入力されたトルクを入力部材7aに伝達可能な状態に切り換える。そして、入力部材7aに、出力部材8aに逆入力されているトルクの大きさよりも小さく、かつ、出力部材8aに逆入力されているトルクの方向と逆方向のトルクを付与する指令を与え続けることで、出力部材8aに逆入力されたトルクを入力部材7aに伝達するようにしている。このため、ロック解除状態からロック状態への切り換えを速やかに行うことができる逆入力遮断クラッチ4aにおいても、ジャーキング現象の発生を防止することができる。
【0142】
第2例のその他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【符号の説明】
【0143】
1 転舵装置
2 逆入力遮断クラッチ付アクチュエータ
3 直動機構
4、4a 逆入力遮断クラッチ
5 アクチュエータ
7、7a 入力部材
8、8a 出力部材
9 被押圧部材
10 係合子
11 被押圧面
12、12a 入力側係合部
13 基板部
14 入力軸部
15 入力シャンク部
16 径方向内側面
17 径方向外側面
18 周方向側面
19、19a 出力側係合部
20 出力軸部
21 フランジ部
22 出力シャンク部
23 平坦面
24 凸曲面
25 押圧面
26 入力側被係合部
27 出力側被係合部
28 平坦面
29 平坦面部
30 凸部
31 後輪
32 ロッド
33 ボールナット
34 ボール
35 タイロッド
36 ナックルアーム
37 トルク伝達機構
38 駆動歯車
39 中間歯車
40 従動歯車
【要約】
【課題】入力部材と出力部材とが回転可能な状態と、回転不能な状態とが、短時間で交互に繰り返される現象が発生するのを防止する。
【解決手段】逆入力遮断クラッチ4は、出力側機構から出力部材8にトルクが逆入力されている状態で、アクチュエータにより入力部材7に、出力側機構から該出力部材8に逆入力されているトルクの方向と逆方向のトルクに付与することで、逆入力遮断クラッチ4を入力部材7と出力部材8との間でトルク伝達可能な状態に切り換えた後、アクチュエータにより入力部材7に、出力側機構から出力部材8に逆入力されているトルクの大きさ未満の大きさを有するトルクを前記逆方向に付与する指令を与えることで、該出力側機構から該出力部材8に逆入力されているトルクを入力部材7に伝達する機能を有する。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13