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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/88 20060101AFI20231226BHJP
   A61F 2/962 20130101ALI20231226BHJP
【FI】
A61F2/88
A61F2/962
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020510769
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2019011636
(87)【国際公開番号】W WO2019188636
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2018065755
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白濱 憲昭
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0296325(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0264186(US,A1)
【文献】特表2004-517648(JP,A)
【文献】特開2001-327609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/06 - 2/07
A61F 2/82 - 2/945
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースから放出されて生体管腔内に留置されるステントであって、
方向に伸長可能で且つ前記軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な筒状の骨格部と、
記骨格部の前記軸方向への伸長を規制する伸長規制部と、
記骨格部の少なくとも外周面の全面を覆うように配置される皮膜部と、
を備え、
前記伸長規制部は、前記骨格部とは異なる材料から形成され、当該ステントの円周よりも小さい周方向の幅を有し全長にわたって前記幅が等しいテープ形状の部材であり、前記皮膜部に前記軸方向に沿って設けられており、
当該ステントの前記伸長規制部が配置されている部分は、前記伸長規制部が配置されていない部分よりも、前記径方向外側に突出している、ステント。
【請求項2】
前記伸長規制部は、前記シースに収容されている前記ステントが前記シースに対して相対的に前記軸方向に変位する際の前記骨格部の前記軸方向への伸長を規制する、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記皮膜部は、前記骨格部および前記伸長規制部を内周側及び外周側から挟み込むように覆って固定されている請求項1または2に記載のステント。
【請求項4】
前記骨格部は、少なくとも一本の線材が山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら螺旋状に巻回されてなり、
前記骨格部の拡張状態にて前記ステントの外面で前記生体管腔の内面を押圧し、外面側から加えられる外力に応じて前記骨格部が変形可能となっている請求項1~3のいずれか一項に記載のステント。
【請求項5】
前記山部及び前記谷部は、それぞれ、前記軸方向に直線状に並んで配置され、
前記伸長規制部は、前記周方向において1つの前記山部から当該山部を挟む2つの前記谷部の近傍にわたる部分を覆うように、かつ、前記1つの山部を含む直線状に並ぶ複数の前記山部を覆うように、前記軸方向に沿って配置されている、請求項4に記載のステント。
【請求項6】
前記皮膜部は、前記骨格部とともにステント本体部を構成し、前記骨格部の前記線材により形成される空間に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載のステント。
【請求項7】
前記伸長規制部は、前記皮膜部に覆われている、請求項1~6のいずれか一項に記載のステント。
【請求項8】
前記伸長規制部は、前記骨格部の前記軸方向の両端部にわたるように固定されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管、食道、胆管、大腸などの生体管腔に生じた狭窄部又は閉塞部に留置され、病変部位を拡径して生体管腔の開存状態を維持するステントが知られている。また、ステント本体の側面がカバーで被覆されたカバードステントも知られている。
このようなステントは、シース内に骨格部が収縮された収縮状態にて収容され、患部(例えば、消化管の狭窄部や閉塞部等)に運ばれた後、シースから放出されて骨格部が拡張した拡張状態へと変形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-327609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、線材が螺旋状に巻回された骨格部を有するステントなどでは、シースに収容された収縮状態にて、軸方向に伸長してしまう。このため、ステント外面部とシース内面部との接触面積が相対的に大きくなり、シースから放出する際の抵抗が大きくなる。また、シースから放出する際にもステントが軸方向にさらに伸長してしまい、シースからの放出を適正に行うことができない虞もある。
さらに、シースから放出されて拡張状態となった際の骨格部の軸方向の短縮率(ショートニング)が大きくなり、生体管腔内の所望の留置部位に精度良くステントを留置し難くなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、シースからの放出を適正に行うことができるとともに、拡張状態での軸方向の短縮率の低減を図ることができるステントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のステントは、
シースから放出されて生体管腔内に留置されるステントであって、
方向に伸長可能で且つ前記軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な筒状の骨格部と、
記骨格部の前記軸方向への伸長を規制する伸長規制部と、
記骨格部の少なくとも外周面の全面を覆うように配置される皮膜部と、
を備え、
前記伸長規制部は、前記骨格部とは異なる材料から形成され、当該ステントの円周よりも小さい周方向の幅を有し全長にわたって前記幅が等しいテープ形状の部材であり、前記皮膜部に前記軸方向に沿って設けられており、
当該ステントの前記伸長規制部が配置されている部分は、前記伸長規制部が配置されていない部分よりも、前記径方向外側に突出している
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シースからの放出を適正に行うことができるとともに、拡張状態での軸方向の短縮率の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明に係る一実施形態のカバードステントの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、図1のカバードステントのA-A断面図である。
図3図3A図3Cは、図1のカバードステントの収容状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態のカバードステント100の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1のカバードステント100のA-A断面図である。
なお、本実施形態では、例えば、消化管(例えば、大腸;図示略)の閉塞部(又は狭窄部)を径方向外側に押し広げて閉塞(狭窄)の治療を行うべく、消化管内に留置されて使用されるカバードステント100を例示して説明する。
【0010】
図1に示すように、カバードステント100は、ステント本体部1と、このステント本体部1の骨格部11(後述)の軸方向への伸長を規制する伸長規制部2とを備えている。
【0011】
ステント本体部1は、例えば、消化管を流れる物が通過可能な筒状通路を画成するものであり、骨格部11と、骨格部11及び伸長規制部2を覆うように固定された皮膜部12とを備えている。
なお、消化管を流れる物は、例えば、全く消化が行われていない摂取された直後の食物、食物が消化管を通ることで分解処理された物、消化管を通っても消化されなかった物(例えば、便等)などを含み、物質の状態は問わない。
【0012】
骨格部11は、例えば、金属細線(線材)11aが螺旋状に巻回されて形成されている。具体的には、骨格部11は、例えば、断面形状が円形又は楕円形の金属細線11aが山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら螺旋状に巻回されている。
【0013】
また、骨格部11は、軸方向に略直交する径方向内側に収縮した収縮状態から径方向外側に拡張して筒状通路が画成される拡張状態へ自己拡張可能となっている。具体的には、骨格部11は、例えば、径方向内側に収縮されながら軸方向に伸長していき、一方、径方向外側に拡張されながら軸方向に短縮していく。そして、骨格部11の拡張状態にてカバードステント100の外面で消化管の内面を押圧するようになっており、この状態にて外面側から加えられる外力に応じて骨格部11が変形可能となっている。
このように、骨格部11は、軸方向に伸長可能で且つ軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な筒状に形成されている。
【0014】
なお、骨格部11の金属細線11aを構成する材料として、例えば、Ni-Ti合金(ニチノール)、チタン合金、及び、ステンレス鋼などに代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。
また、例えば、骨格部11の材料(ニチノール等)、骨格部11の金属細線11aの断面積および断面形状(ワイヤ等の円線材、又は、レーザカットによる角線材)、周方向における骨格部11の折り返し回数および折り返し形状(山部の数および山部の形状)、並びに、軸方向における骨格部11の螺旋ピッチ(カバードステント100の単位長さ当たりの骨格量)等は、留置される生体管腔に応じた適切な値に設定され得るが、ここでは詳細な説明は省略する。
【0015】
皮膜部12は、骨格部11を構成する金属細線11aにより形成される空間に配置されるようになっている。例えば、皮膜部12は、骨格部11を外面側から覆うように固定され、具体的には、骨格部11及び伸長規制部2を覆うように固定されて、上述した筒状通路を画成している。
ここで、皮膜部12は、骨格部11を外面側及び内面側から挟み込むように覆ってもよいし、骨格部11を外面側からのみ覆ってもよいし、内面側からのみ覆ってもよい。
なお、皮膜部12の材料として、例えば、シリコン樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、及び、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0016】
伸長規制部2は、骨格部11の軸方向に沿って設けられている。例えば、伸長規制部2は、骨格部11の外面側にて当該骨格部11の軸方向の両端部に亘るように固定(例えば、接着等)され、軸方向に略直交する幅がほぼ等しい長尺な部材である。また、伸長規制部2は、例えば、周方向に所定間隔(例えば、180°間隔等)を空けて2つ配設されている。
また、伸長規制部2は、骨格部11とは異なる材料から形成されている。具体的には、伸長規制部2は、生体適合性の糸(例えば、ポリエステル糸等)及び布地(織物(布帛)や編物)のうち、少なくとも一方からなるが、一例であってこれらに限られるものではない。すなわち、伸長規制部2は、少なくとも骨格部11の軸方向への伸長を規制可能な強度を有し、さらに、カバードステント100の径方向への拡縮性を損なわない程度の強度を有することが好ましい。
【0017】
上記構成のカバードステント100は、シース200(図3B参照)内に骨格部11が収縮された収縮状態にて収容され、例えば、消化管の狭窄部や閉塞部等に運ばれた後、シース200から放出されて骨格部11が拡張した拡張状態へと変形される。
【0018】
次に、カバードステント100のシース200内における収容状態について、図3A図3Cを参照して説明する。
図3Aは、カバードステント100を模式的に示す図であり、図3Bは、カバードステント100がシース200に収容された状態を模式的に示す図である。また、図3Cは、伸長規制部2を具備しないステント300がシース200に収容された状態を模式的に示す図である。
【0019】
図3A及び図3Bに示すように、カバードステント100は、シース200に収容された状態では、径方向内側に収縮され、且つ、軸方向に伸長することとなる。ここで、カバードステント100は、伸長規制部2を具備しているため、この伸長規制部2によって、骨格部11の軸方向への伸長が規制される。すなわち、伸長規制部2を具備するカバードステント100は、シース200に収容された状態で、その軸方向の長さL1が大きくなるものの、伸長規制部2を具備しないステント300を同様にシース200に収容した場合の軸方向の長さL2よりも小さくなる(図3B及び図3C参照)。
【0020】
以上のように、本実施形態に係るカバードステント100は、シース200から放出されて生体管腔(例えば、消化管等)内に留置されるカバードステント100であって、軸方向に伸長可能で且つ軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な筒状の骨格部11と、骨格部11の軸方向への伸長を規制する伸長規制部2(例えば、生体適合性の糸や布地等)と、を備え、伸長規制部2は、骨格部11とは異なる材料から形成され、シース200に収容されて骨格部11が径方向に収縮される際の当該骨格部11の軸方向への伸長を規制するように構成されている。
したがって、カバードステント100がシース200に収容される際に骨格部11が径方向に収縮されても、伸長規制部2によって骨格部11の軸方向への伸長が規制されつつカバードステント100がシース200に収容される。すなわち、伸長規制部2を具備しないステント300に対して、カバードステント100の軸方向の長さL1を相対的に小さくして、カバードステント100の外面部とシース200の内面部との接触面積を相対的に小さくすることができ、シース200から放出する際の抵抗を小さくすることができる。これにより、シース200からのカバードステント100の放出を適正に行うことができる。
さらに、シース200に収容された状態でのカバードステント100の軸方向の長さL1を相対的に小さくすることができることから、カバードステント100が放出されて骨格部11が拡張状態となった際の軸方向の短縮率を低減することができることとなり、消化管等の生体管腔内の所望の留置部位にカバードステント100を好適に留置することができる。
【0021】
また、例えば、シース200に収容されているカバードステント100がシース200から放出される際等に、当該カバードステント100がシース200に対して相対的に軸方向に変位する場合も、伸長規制部2は骨格部11の軸方向への伸長を規制する。すなわち、例えば、カバードステント100に対してシース200を手元側に引っ張ることで当該カバードステント100を放出する場合、シース200の内面部とカバードステント100の外面部との摩擦抵抗によっては、当該カバードステント100が軸方向にさらに伸長し、放出する際の抵抗が大きくなる虞がある。このとき、伸長規制部2によって骨格部11の軸方向への伸長を規制することで、当該カバードステント100が軸方向にさらに伸長することを抑制して、放出する際の抵抗をより小さくすることができる。
【0022】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記実施形態では、皮膜部12を有するカバードステント100を例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、皮膜部12を有するか否かは適宜任意に変更可能である。すなわち、図示は省略するが、本発明に係るステントは、骨格部11が皮膜部12により覆われていない構成(ベアステント)であってもよい。
【0023】
また、上記実施形態では、皮膜部12が伸長規制部2を覆うように設けられたものを例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、皮膜部12の外側に伸長規制部2が設けられていてもよい。このような構成とすることで、生体管腔の管壁と伸長規制部2とを接触させるようにカバードステント100を留置して、当該伸長規制部2に管壁の細胞を食い込ませることができる。これにより、伸長規制部2を、カバードステント100が留置位置からずれてしまうことの抑制手段として機能させることもできる。
【0024】
さらに、上記実施形態では、伸長規制部2として、布地からなるものを例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、皮膜部12と同じ材料から形成されていてもよい。すなわち、皮膜部12の厚さを部分的に異ならせ、他の部分に比べて肉厚の部分を伸長規制部として機能させるようにしてもよい。このような構成としても、カバードステント100がシース200に収容されて骨格部11が径方向に収縮される際の当該骨格部11の軸方向への伸長を適正に規制することができ、シース200からのカバードステント100の放出を適正に行うことができるとともに、拡張状態での軸方向の短縮率の低減を図ることができる。
【0025】
また、上記実施形態では、伸長規制部2が骨格部11の外面側に設けられたものを例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、骨格部11の内面側に設けられていてもよいし、骨格部11の外面側及び内面側の両方に設けられていてもよい。
【0026】
さらに、骨格部11は、例えば、1本の金属パイプ(例えば、Ni-Ti合金からなるパイプ等)をレーザー加工(レーザーカット)することによって形成されてもよい。
【0027】
また、上記実施形態では、消化管内に留置されて使用されるカバードステント100を例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、消化器系管腔以外の生体管腔や血管等に留置されるステントであってもよい。
【0028】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
2018年3月29日出願の特願2018-065755の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0030】
100 カバードステント
1 ステント本体部
11 骨格部
11a 金属細線(線材)
12 皮膜部
2 伸長制御部
200 シース
図1
図2
図3