(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の改善および/または症状の悪化を抑制するのための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/00 20060101AFI20231226BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20231226BHJP
A61P 9/02 20060101ALI20231226BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20231226BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231226BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20231226BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231226BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20231226BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P1/00
A61P1/08
A61P9/02
A61P11/04
A61P19/02
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/20
A61P25/28
A61P27/16
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2021202927
(22)【出願日】2021-11-24
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2021137539
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394021270
【氏名又は名称】MiZ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文武
(72)【発明者】
【氏名】武藤 佳恭
(72)【発明者】
【氏名】山村 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文平
(72)【発明者】
【氏名】平野 伸一
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐介
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】水素発生器H2PREMIUM3,2020年09月02日,[令和5年4月13日検索],URL:https://web.archive.org/web/20200902065424/http://www.ohs-japan.co.jp/
【文献】高濃度水素ガス吸引,2021年02月19日,[令和5年4月13日検索],URL:https://ameblo.jp/phytoncide3215g/entry-12657580943.html
【文献】慢性疲労の回復と水素の関連性をしめす研究,2015年09月03日,[令和5年4月13日検索],URL:https://suiso-spirit.jp/hiroukaifuku/
【文献】MORRIS, G. et al.,Pharmacological research,2019年09月08日,Vol. 148,Article ID:104450,pp.1-20.
【文献】水素吸入Q&A[慢性疲労症候群]ハイドレックス,2019年06月05日,[令和5年1月31日検索],URL:https://hydrex-japan.com/qa/chronic-fatigue/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスのみを有効成分として含む、発症の原因がウイルス感染症を除く筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者において、発症の原因がウイルス感染症を除く筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)を原因とする症状を改善および/または症状の悪化を抑制するための組成物であって、
前記発症の原因がウイルス感染症を除く筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)を原因とする症状が、少なくとも疲労、慢性的な重度の疲労感、労作後の疲労、疼痛、頭痛、筋肉痛、関節痛、身体の痛み、思考力の低下、ブレインフォ
グ、集中力低下、言語検索困難、間違った単語を話す、咽頭痛、寝込み、認知力の低下、集中力の低
下、睡眠障害、上肢および下肢の機能障害、体幹機能障害、脱力感、微熱、徐脈、血圧低下、便通の悪化、めまい、聴覚過敏、吐き
気、筋力低
下、耳鳴
り、および/または、これらの症状に伴う活動レベルの低下であり、
前記水素ガスの水素濃度が、ゼロ(0)より大きく18.5体積%以下であり、
前記組成物が、吸入によって前記患者に投与される組成物。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の組成物を作製する方法であって、前記組成物が水素ガス生成装置を用いて作製されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト患者において筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS:Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome)および/または線維筋痛症(FM:Fibromyalgia)の症状、例えば、疲労、頭痛、身体の疼痛、思考力の低下、集中力の低下、および/または、これらの症状に伴う活動レベルの低下などの症状を改善および/または症状の悪化を抑制するための組成物に関する。
本発明はまた、ヒト患者において筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の上記症状を改善および/または症状の悪化を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は、発症の時期が明確であり、感染症や生活関連ストレス、転倒や打撲などによる重度の怪我などをきっかけにして、激しい全身倦怠感に襲われ、長期にわたり疲労感、労作後に憎悪する極度の倦怠感、微熱、頭痛、筋肉痛、脱力、認知機能障害、回復感を伴わない睡眠、立ちくらみなどの多彩な症状が現れる。
線維筋痛症(FM)は、原因不明の全身の疼痛を主症状とする。疼痛は腱付着部炎や筋肉、関節などにおよび、体幹や四肢から身体全体に激しい疼痛が広がる疾病である。
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)も線維筋痛症(FM)も、いずれの症状も筆舌に尽くしがたいものであるため、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の患者は健全な社会活動を送れなくなるという特徴を備える。しかしながら、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の病理学的なメカニズムが不明であり治療法もない。米国において、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の原因がウイルスの感染によるものであると考えられていたが、近年、中国武漢を端に発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症として筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)が発症することが報告された。筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の日本の患者数はおよそ30万人、米国での患者数は80~350万人と言われている(非特許文献1)。
一方、線維筋痛症(FM)は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と共に明確な原因が不明な疾病であるが、当事者が身体的症状を訴えても検査で異常が確認されないという点で両疾病は共通し、さらに、上述したように、筆舌に尽くしがたい痛み、過労とは質的に異なる疲労、思考力の低下、異常な感覚過敏といった共通した症状があるため、関連性がある疾病として取り扱われ、同じ病気とみなす医師もいる(非特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「慢性疲労症候群の病態機序とその治療」渡邊恭良、倉垣弘彦 神経治療、Vol.33、No.1、2016
【文献】保険医療社会学論集 第27巻2号2017 「診断のパラドックス-筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群及び線筋痛症を患う人々における診断の効果と限界-」
【文献】西岡久寿樹「線維筋痛症とたたかう」ホールネス研究会2004年、108頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、副作用の少ないかつ簡便に製造し得る新しい筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の症状改善および/または症状の悪化を抑制するのための組成物を提供することである。
近年、水素分子が細胞のミトコンドリア内部で発生するヒドロキシルラジカルを消去することにより慢性炎症を抑制し、慢性炎症に起因する多くの疾病に対し効果を奏する可能性があることを提唱されている(非特許文献2)。しかしながら、ヒト筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者が水素ガス含有気体を吸入、吸引、飲用等した場合に、ヒト筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の症状が改善および/または症状の悪化を抑制されるかについては報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、意外にも、水素ガス含有気体が、ヒト患者において筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の特定の症状を改善および/または症状の悪化を抑制することを見出した。
従って、本発明は、以下の特徴を包含する。
(1)水素ガス含有気体を有効成分として含む、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/またはおよび/または線維筋痛症(FM)患者において、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)を原因とする症状を改善および/または症状の悪化を抑制するための組成物である。
(2)前記筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)を原因とする症状が、少なくとも疲労感、倦怠感、労作に伴う息切れ、動悸、筋力低下、微熱、筋肉痛、関節痛、咽頭痛、頭痛、身体の痛み、全身の痛み、脱力、認知機能障害、記憶障害、言語検索困難、胃腸障害、集中力低下、インフルエンザ様症状、起立時のめまい、虚弱、不規則な体温、冷たい手足、温熱および/または寒冷に対する不耐症、発汗、顔面潮紅、リンパ節圧痛、著しい体重の変動、耳鳴り、錯乱、睡眠障害、立ちくらみ、めまい、光や騒音や臭気に対する過敏性、食物や薬物や化学物質に対する新たな過敏性の獲得、脱力感、労作後の疲労感、徐脈、血圧低下、吐き気、ブレインフォグ、および/または、これらの症状に伴う活動レベルの低下を含む(1)に記載の組成物である。
(3)前記線維筋痛症(FM)を原因とする症状が、少なくとも、38℃以下の微熱、疲労感、倦怠感、脱力感、手指のこわばり、手指の腫脹、関節痛、レイノー現象、寝汗、過敏性腸症候群、動悸、乾燥症状、呼吸困難、嚥下障害、間質性膀胱炎様症状、生理不順、月経困難症、体重変動、光線過敏症、寒暖不耐症、顎関節症、低血圧、各種アレルギー症状、僧帽弁逸脱症、かゆみ、四肢のしびれ、手指のふるえ、めまい、耳鳴り、難聴、視力障害、抑うつ症状、不安感、焦燥感、睡眠障害(過眠、不眠)、集中力低下、注意力低下、健忘、起床時の不快感、筋力低下、思考力・集中力・記憶力の低下、音に対する過敏性、ブレインフォグ、および/または、これらの症状に伴う活動レベルの低下を含む(1)に記載の組成物である。
(4)前記筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の原因がウイルス感染であることを特徴とする(1)または(2)に記載の組成物である。
(5)前記水素ガス含有気体の水素濃度が、ゼロ(0)より大きく18.5体積%以下である、(1)から(4)のいずれか一つに記載の組成物である。
(6)前記組成物が、吸入によって前記患者に投与される、(1)から(5)のいずれか一つに記載の組成物である。
(7)前記(1)~(6)のいずれか1つに記載の組成物を作製する方法であって、前記組成物が水素ガス生成装置を用いて作製されることを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、水素ガスの吸入、吸引等によってヒト筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)において筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)を原因とする少なくとも疲労、頭痛、身体の疼痛、思考力の低下、集中力の低下、および/または、これらの症状に伴う活動レベルの低下などの症状を顕著に改善および/または症状の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明をさらに詳細に説明する。
1.筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および線維筋痛症(FM)
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome、ME/CFS)は、難治性の神経系疾患に分類される疾患であり、その症状として、疲労感、倦怠感、労作に伴う息切れ、動悸、筋力低下、微熱、筋肉痛、関節痛、咽頭痛、頭痛、身体の痛み、脱力、認知機能障害、記憶障害、言語検索困難、胃腸障害、集中力低下、インフルエンザ様症状、起立時のめまい、虚弱、不規則な体温、冷たい手足、温熱および/または寒冷に対する不耐症、発汗、顔面潮紅、リンパ節圧痛、著しい体重の変動、耳鳴り、錯乱、睡眠障害、立ちくらみ、光や騒音や臭気に対する過敏性、食物や薬物や化学物質に対する新たな過敏性の獲得、および/または、これらの症状に伴う活動レベルの低下などが挙げられる(非特許文献1)。
【0008】
イギリスやカナダでは、慢性疲疲労症候群(CFS)類似病態の多くの患者では筋肉痛とともに脳神経の異常に基づくと思われるような様々な臨床症状がみられることより筋痛性脳脊椎炎(ME)という病名を用いて診療が行われている。
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の診断する際に用いられる国際的合意に基づく診断基準によれば、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群患者が訴える主な症状は、A.労作後の神経免疫系の極度の消耗、B.神経系機能障害、C.免疫系・胃腸器系・泌尿生殖器系の機能障害、D.エネルギー産生/輸送の機能障害が長期間(一般的に6ケ月以上)におよぶことである。
【0009】
本発明により改善および/または悪化を抑制することができる筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)症状は、日本疲労学会の診断指針および/またはカナダの診断指針に記載される症状であり、例えば、疲労感、倦怠感、労作に伴う息切れ、動悸、筋力低下、微熱、筋肉痛、関節痛、咽頭痛、頭痛、身体の痛み、全身の痛み、脱力、認知機能障害、記憶障害、言語検索困難、胃腸障害、集中力低下、インフルエンザ様症状、起立時のめまい、虚弱、不規則な体温、冷たい手足、温熱および/または寒冷に対する不耐症、発汗、顔面潮紅、リンパ節圧痛、著しい体重の変動、耳鳴り、錯乱、睡眠障害、立ちくらみ、めまい、光や騒音や臭気に対する過敏性、食物や薬物や化学物質に対する新たな過敏性の獲得、脱力感、労作後の疲労感、徐脈、血圧低下、吐き気、ブレインフォグ、および/または、これらの症状に伴う活動レベルの低下などである。
【0010】
本発明における筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の原因のひとつはウイルス感染症であり、例えば、COVID-19の原因となった新型コロナウイルスを含むコロナウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ハンタウイルス、エイズウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス等の病原性ウイルスである。
【0011】
本発明における線維筋痛症(Fibromyalgia、FM)とは、原因不明の全身の疼痛を主症状とする。疼痛は腱付着部炎や筋肉、関節などにおよび、体幹や四肢から身体全体に激しい疼痛が広がる疾病であり、その症状として、38℃以下の微熱、疲労感、倦怠感、脱力感、手指のこわばり、手指の腫脹、関節痛、レイノー現象、寝汗、過敏性腸症候群、動悸、乾燥症状、呼吸困難、嚥下障害、間質性膀胱炎様症状、生理不順、月経困難症、体重変動、光線過敏症、寒暖不耐症、顎関節症、低血圧、各種アレルギー症状、僧帽弁逸脱症、かゆみ、四肢のしびれ、手指のふるえ、めまい、耳鳴り、難聴、視力障害、抑うつ症状、不安感、焦燥感、睡眠障害(過眠、不眠)、集中力低下、注意力低下、健忘、起床時の不快感、筋力低下、思考力・集中力・記憶力の低下、音に対する過敏性、ブレインフォグ、および/または、これらの症状に伴う活動レベルの低下などが挙げられる。
【0012】
線維筋痛症(FM)は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と共に明確な原因が不明な疾病であるが、当事者が身体的症状を訴えても検査で異常が確認されないという点で両疾病は共通し、さらに、筆舌に尽くしがたい痛み、過労とは質的に異なる疲労、思考力の低下、異常な感覚過敏といった共通した症状があり同じ病気とみなす医師もいることから、線維筋痛症(FM)と筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は密接な関連性がある疾病であると考えられる(非特許文献2、3)。
【0013】
2.水素ガス含有気体を含む筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の症状を改善および/または症状の悪化を抑制するための組成物
本発明は、第1の態様により、水素ガス含有気体を有効成分として含む、ヒト筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/または線維筋痛症(FM)患者において筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)を原因とする少なくとも疲労感、倦怠感、労作に伴う息切れ、動悸、筋力低下、微熱、筋肉痛、関節痛、咽頭痛、頭痛、身体の痛み、脱力、認知機能障害、記憶障害、言語検索困難、胃腸障害、集中力低下、インフルエンザ様症状、起立時のめまい、虚弱、不規則な体温、冷たい手足、温熱および/または寒冷に対する不耐症、発汗、顔面潮紅、リンパ節圧痛、著しい体重の変動、耳鳴り、錯乱、睡眠障害、立ちくらみ、光や騒音や臭気に対する過敏性、食物や薬物や化学物質に対する新たな過敏性の獲得、および/または、これらの症状に伴う活動レベルの低下を含む症状を改善および/または症状の悪化を抑制するための組成物を提供する。
【0014】
本明細書中、本発明の組成物の有効成分である「水素」は分子状水素(すなわち、気体状水素)であり、特に断らない限り、単に「水素」又は「水素ガス」と称する。また、本明細書中で使用する用語「水素」は、分子式でH2、D2(重水素)、HD(重水素化水素)、又はそれらの混合ガスを指す。D2は、高価であるが、H2よりスーパーオキシド消去作用が強いことが知られている。本発明で使用可能な水素は、H2、D2(重水素)、HD(重水素化水素)、又はそれらの混合ガスであり、好ましくはH2であり、或いはH2に代えて、又はH2と混合して、D2及び/又はHDを使用してもよい。
【0015】
水素ガス含有気体は、好ましくは、水素ガスを含む空気又は、水素ガスと酸素ガスを含む混合ガスである。水素ガス含有気体の水素ガスの濃度は、ゼロ(0)より大きく、かつ18.5体積%以下、例えば0.5~18.5体積%であり、好ましくは1~10体積%、例えば2~8体積%、3~7体積%、3~6体積%、4~6体積%、4~5体積%、5~10体積%、5~8体積%、6~8体積%、6~7体積%など、より好ましくは5~8体積%、例えば6~8体積%、6~7体積%などである。本発明では、爆発限界以下で水素ガス濃度が高いほど筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の症状の改善効果および/または症状の悪化を抑制する効果が大きい傾向がある。
【0016】
水素は、可燃性かつ爆発性ガスであるため、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の症状の改善および/または症状の悪化の抑制においては、安全な条件で本発明の組成物に含有させて筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/または線維筋痛症(FM)患者に投与することが好ましい。
水素ガス以外の気体が空気であるときには、空気の濃度は、例えば81.5~99.5体積%の範囲である。
【0017】
水素ガス以外の気体が酸素ガスを含む気体であるときには、酸素ガスの濃度は、例えば21~99.5体積%の範囲である。
その他の主気体として窒素ガスを含有させることができる。空気中に含有する気体である二酸化炭素などのガスを、空気中の存在量程度の量で含有させてもよい。
本発明では、必要に応じて、水素ガス含有気体の投与と併用して水素溶存液体を筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/または線維筋痛症(FM)患者に投与する、もしくは摂取させることができる。
【0018】
水素溶存液体と併用投与する場合には、本発明の組成物は、水素溶存液体の投与の前に、水素溶存液体の投与と同時に、又は水素溶存液体の投与の後に投与されうる。
水素溶存液体は、具体的には、水素ガスを溶存させた水性液体であり、ここで、水性液体は、非限定的に、例えば水(例えば滅菌水、精製水)、生理食塩水、緩衝液(例えばpH4~7.4の緩衝液)、エタノール含有水(例えばエタノール含有量0.1~2体積%)、点滴液、輸液、注射溶液、飲料などである。水素溶存液体の水素濃度は、例えば1~10ppm、例えば2~8体積%、3~7体積%、3~6体積%、4~6体積%、4~5体積%、5~10体積%、5~8体積%、6~8体積%、6~7体積%など、より好ましくは5~8体積%、例えば6~8体積%、6~7体積%などである。本発明では、爆発限界以下で水素ガス濃度が高いほど筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の症状の改善および/または症状の悪化を抑制する効果が大きい傾向がある。
【0019】
水素溶存液体には、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)を治療するための医薬品を添加してもよい。或いは、当該医薬品は、水素溶存液体又は水素ガス含有気体の投与と別に投与してもよい。
水素ガス含有気体又は水素溶存液体は、所定の水素ガス濃度になるように配合されたのち、例えば耐圧性の容器(例えば、ステンレスボンベ、アルミ缶、好ましくは内側をアルミフィルムでラミネーションした、耐圧性プラスチックボトル(例えば耐圧性ペットボトル)及びプラスチックバッグ、アルミバッグ、等)に充填される。アルミは水素分子を透過させ難いという性質を有している。或いは、水素ガス含有気体又は水素溶存液体は、投与時に、水素ガス生成装置、水素水生成装置、又は水素ガス添加装置、例えば、公知のもしくは市販の水素ガス供給装置(水素ガス含有気体の生成用装置)、水素添加器具(水素水生成用装置)、非破壊的水素含有器(例えば点滴液などの生体適用液バッグ内部へ非破壊的に水素ガスを添加するための装置)などの装置を用いてその場で作製されてもよい。
水素ガス供給装置は、水素発生剤(例えば金属アルミニウム、水素化マグネシウム、等)と水の反応により発生する水素ガスを、希釈用ガス(例えば空気、酸素、等)と所定の比率で混合することを可能にする(日本国特許第5228142号公報、等)。あるいは、水の電気分解を利用して発生した水素ガスを、酸素、空気などの希釈用ガスと混合する(日本国特許第5502973号公報、日本国特許第5900688号公報、等)。これによって0.5~18.5体積%の範囲内の水素濃度の水素ガス含有気体を調製することができる。
【0020】
水素添加器具は、水素発生剤とpH調整剤を用いて水素を発生し、水などの生体適用液に溶存させる装置である(日本国特許第4756102号公報、日本国特許第4652479号公報、日本国特許第4950352号公報、日本国特許第6159462号公報、日本国特許第6170605号公報、特開2017-104842号公報、日本国特許第6159462号公報、等)。水素発生剤とpH調整剤の組み合わせは、例えば、金属マグネシウムと強酸性イオン交換樹脂もしくは有機酸(例えばリンゴ酸、クエン酸、等)、金属アルミニウム末と水酸化カルシウム粉末、などである。これによって1~10ppm程度の溶存水素濃度の水素溶存液体を調製できる(例えば、商品名「セブンウォーター」(クオシア)、等)。
【0021】
非破壊的水素含有器は、点滴液などの市販の生体適用液(例えば、ポリエチレン製バッグなどの水素透過性プラスチックバッグに封入されている。)に水素分子をパッケージの外側から添加する装置又は器具であり、例えばMiZ(株)から市販されている(http://www.e-miz.co.jp/technology.html)。この装置は、生体適用液を含むバッグを飽和水素水に浸漬することによってバッグ内に水素を透過し濃度平衡に達するまで無菌的に水素を生体適用液に溶解させることができる。当該装置は、例えば電解槽と水槽から構成され、水槽内の水が電解槽と水槽を循環し電解により水素を生成することができる。或いは、簡易型の使い捨て器具は同様の目的で使用することができる(特開2016-112562号公報、等)。この器具は、アルミバッグの中に生体適用液含有プラスチックバッグ(水素透過性バッグ、例えばポリエチレン製バッグ)と水素発生剤(例えば、金属カルシウム、金属マグネシウム/陽イオン交換樹脂、等)を内蔵しており、水素発生剤は例えば不織布(例えば水蒸気透過性不織布)に包まれている。不織布に包まれた水素発生剤を水蒸気などの少量の水で濡らすことによって発生した水素がプラスチックバッグを透過し生体適用液に非破壊的かつ無菌的に溶解される。
上記の装置又は器具を用いて調製された、水素ガス含有気体や水素飽和生体適用液(例えば滅菌水、生理食塩水、点滴液、等)は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/または線維筋痛症(FM)患者に経口的に又は非経口的に投与されうる。
本発明の組成物の別の形態には、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/または線維筋痛症(FM)患者に経口投与(もしくは摂取)するように調製された、消化管内で水素の発生を可能にする水素発生剤を含有する剤型(例えば、錠剤、カプセル剤、等)が含まれる。水素発生剤は、例えば食品もしくは食品添加物として承認されている成分によって構成されることが好ましい。
【0022】
3.筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の症状の改善および/または症状の悪化の抑制
本発明は、第2の態様により、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/または線維筋痛症(FM)患者に、本発明の組成物を投与することを含む、該患者において筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)患者を原因とする少なくとも疲労感、倦怠感、労作に伴う息切れ、動悸、筋力低下、微熱、筋肉痛、関節痛、咽頭痛、頭痛、身体の痛み、脱力、認知機能障害、記憶障害、言語検索困難、胃腸障害、集中力低下、インフルエンザ様症状、起立時のめまい、虚弱、不規則な体温、冷たい手足、温熱および/または寒冷に対する不耐症、発汗、顔面潮紅、リンパ節圧痛、著しい体重の変動、耳鳴り、錯乱、睡眠障害、立ちくらみ、光や騒音や臭気に対する過敏性、食物や薬物や化学物質に対する新たな過敏性の獲得、および/または、これらの症状に伴う活動レベルの低下を含む症状を改善および/または症状の悪化を抑制する方法を提供する。
【0023】
本発明の組成物は、患者のQOL(生活の質)の改善を可能にする。
本発明の組成物を筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の患者に投与する方法としては、水素ガスを有効成分とするとき、例えば吸入、吸引等による経肺投与が好ましい。ガスを吸入するときには、鼻カニューラや、口と鼻を覆うマスク型の器具を介して口又は鼻からガスを吸入して肺に送り、血液を介して全身に送達することができる。
【0024】
また、水素溶存液体を患者に投与とするときには、経口投与又は静脈内投与もしくは動脈内投与(点滴を含む)が好ましい。経口投与する水素溶存液体については、好ましくは低温下に保存し、冷却した液体、又は常温で保存した液体をヒト筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/または線維筋痛症(FM)患者に投与してもよい。水素は常温常圧下で約1.6ppm(1.6mg/L)の濃度で水に溶解し、温度による溶解度差が比較的小さいことが知られている。或いは、水素溶存液体は、例えば上記の非破壊的水素含有器を用いて調製された水素ガスを含有させた点滴液又は注射液の形態であるときには、静脈内投与、動脈内投与などの非経口投与経路によって筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/または線維筋痛症(FM)患者に投与してもよい。
上記水素濃度の水素ガス含有気体又は上記溶存水素濃度の水素溶存液体を1日あたり1回又は複数回(例えば2~3回)、1週間~3か月又はそれ以上の期間、例えば1週間~6か月又はそれ以上にわたりヒト筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の患者体に投与することができる。水素ガス含有気体が投与されるときには、1回あたり例えば10分~2時間もしくはそれ以上、好ましくは20分~40分もしくはそれ以上、さらに好ましくは30分~2時間かけて投与することができる。また、水素ガス含有気体を吸入、吸引等によって経肺投与するときには、大気圧環境下で、或いは、例えば標準大気圧(約1.013気圧をいう。)を超える且つ7.0気圧以下の範囲内の高気圧、例えば1.02~7.0気圧、好ましくは1.02~5.0気圧、より好ましくは1.02~4.0気圧、さらに好ましくは1.02~1.35気圧の範囲内の高気圧環境下で筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者に当該気体を投与することができる。高気圧環境下での投与によって筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/または線維筋痛症(FM)患者での水素の体内吸収が促進されうる。
上記高気圧環境は、内部に、例えば上記水素ガス含有気体(例えば、水素含有酸素又は空気)を圧入して標準大気圧を超える且つ7.0気圧以下の高気圧を内部に形成することが可能である、十分な強度をもつように設計された高気圧筐体(例えば、カプセル状筐体)の使用によって作ることができる。高気圧筐体の形状は、耐圧性であるため、全体的に角がない丸みを帯びていることが好ましい。また高気圧筐体の材質は、軽量、高強度であることが好ましく、例えば強化プラスチック、炭素繊維複合材、チタン合金、アルミ合金などを挙げることができる。筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/または線維筋痛症(FM)患者は、上記高気圧筐体内で酸素ガスもしくは空気とともに水素ガスを含む、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の症状を改善および/または症状の悪化を抑制するのための組成物の投与を受けることができる。
【0025】
本発明の組成物による筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の処置の際には、十分な治療効果と安全性が確認された水素ガス生成装置、水素水生成装置、又は水素ガス添加装置(例えば、上記の水素ガス供給装置(もしくは気体状水素吸入装置)、水素添加器具(もしくは水素水生成装置)、非破壊的水素含有器(水素透過性バッグに封入された点滴液などの生体適用液に非破壊的に水素ガスを溶解する装置)などの装置を使用することが望ましい。
【実施例】
【0026】
以下の実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
水素ガス吸入による筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)症状の改善および/または症状の悪化の抑制
【0027】
<症例1>
(1)患者の病状
患者は日本人男性、2021年時点で58歳。2018年に、8年前より労作後の遷延する全身の極度の疲労、思考力と集中力の低下があり病院で検査を行った。8年前にスキーで頭部を打撲したことが原因のひとつになっている可能性がある。スキーでの頭部打撲による脳脊椎液減少症についても検査を行った。日本疲労学会の診断指針およびカナダの診断基準に基づいて診断を行ったところ、筋痛性脳脊椎炎/慢性疲労症候群と診断された。また、当該患者は、活動レベルが健常人よりも低く、疲労、疼痛、思考力の低下が極度に進行し回復が困難であるため、健常人の日常生活レベルよりも低い活動に留めるべきである旨診断された。
カナダ基準診断に基づく当該患者の症状の重症度は以下のとおりである。
▲1▼疲労-持続性、活動レベルが著しく損なわれるほど際立った疲労:重症度3(重い)
▲2▼労作後の疲労感-肉体的及び精神的持久力の喪失、身体的労作によって悪化する疲労:重症度3(重い)
▲3▼労作からの回復に長時間要する-労作前の活動レベルにまで回復するのに24時間以上かかる:重症度2(中等度)
▲4▼光や騒音や臭気に対する過敏性:重症度3(重い)
▲5▼疼痛-筋肉痛、関節痛、頭痛:重症度2(中等度)
▲6▼睡眠障害-非回復的睡眠、不眠症、過眠症:重症度2(中等度)
▲7▼言語検索困難又は間違った単語を話す:重症度2(中等度)
▲8▼錯乱及び集中力低下:重症度2(中等度)
▲9▼記憶障害-短期記憶が損なわれる:重症度1(軽い)
▲10▼労作に伴う息切れ:重症度2(中等度)
▲11▼胃腸障害-下痢、過敏性腸症候群:重症度1(軽い)
▲12▼繰り返す咽頭痛:重症度1(軽い)
▲13▼起立時におけるめまい又は虚弱:重症度1(軽い)
▲14▼温熱/寒冷に対する不耐症:重症度1(軽い)
▲15▼体温の変化、不規則な体温、冷たい手足:重症度1(軽い)
▲16▼繰り返すインフルエンザ様症状:重症度0(なし)
▲17▼顔面潮紅、発汗現象:重症度0(なし)
▲18▼著しい体重の変動:重症度1(軽い)
▲19▼リンパ節圧痛-特に首側面と腋窩:重症度0(なし)
▲20▼筋力低下:重症度0(なし)
▲21▼食物/薬物/化学物質に対する新たな過敏性の獲得:重症度1(軽い)
【0028】
(2)吸入開始から2週間後における水素ガス吸入効果
2021年6月7日よりMiZ株式会社(鎌倉市大船)の水素ガス吸入機(Jobs-α、水素濃度約4%~5%、100%水素発生量は200ml/min)を用いて水素ガス吸入を開始した。水素吸入開始3日後の数日間は風邪をひき吸入時間が3時間以下になることもあったけれども、おおよそ1日3時間を目安に吸入を行った。
水素を吸入する以前は、頭がぼやっとしていたが、吸入した後は頭が晴れたようにすっきりとした状態が現われた。このように脳の霧が晴れるような感覚は数年ぶりである。頭痛や全身の疼痛の頻度も減少してきたように感じられ、鎮痛薬の服用回数が減少した。
吸入前は、交感神経が高ぶっていたけれども、水素を吸入するとリラックスした感覚があり、眠気が出てくるようになった。
【0029】
(3)吸入開始から4週間後における水素ガス吸入効果
(i)カナダ診断基準に基づき顕著な回復をみることができた症状を箇条書きにすると以下のとおりである
・労作後の疲労感-肉体的及び精神的持久力の喪失、身体的労作によって悪化する疲労:吸入前(重症度3:重い)→吸入後(重症度2:中程度)
・労作からの回復に長時間要する-労作前の活動レベルにまで回復するのに24時間以上かかる:吸入前(重症度2:中程度)→吸入後(重症度1:軽い)
・疲労-持続性、活動レベルが著しく損なわれるほど際立った疲労:吸入前(重症度3:重い)→吸入後(重症度1:軽い、又は、重症度2:中程度)
・疼痛、頭痛:吸入前(重症度2:中程度)→吸入後(重症度1:軽い)
・集中力低下:吸入前(重症度2:中程度)→吸入後(重症度1:軽い)
・言語検索困難又は間違った単語を話す:吸入前(重症度2:中程度)→吸入後(重症度1:軽い)
・繰り返す咽頭痛:吸入前(重症度2:中程度)→吸入後(重症度1:軽い)
その他の症状については悪化することがなかったことから水素により悪化が抑制されたものと考えられる。
【0030】
(ii)慢性的な重度の疲労感についての患者の所感
水素ガスの吸入により寝たきり状態になるような慢性的な強烈な疲労感が大幅に緩和している。現在も労作後に突然発生する強度の疲労感は起こることがあるが、水素を90分くらい吸入すると、労作後に1~2時間後に寝込んでしまう状態が回避できる。
全般的に疲労感の度合は日によって違いがあり、週に2日か3日は、未だに寝込むことはあるものの、週の半数日以上は健常人と同様に調子が良くなるまでに改善した。
【0031】
(iii)身体の疼痛についての患者の所感
頭痛は水素を吸入する前は週に1、2回起きていたが、水素吸入を開始してからは大幅に頭痛の頻度が減少し、ほとんど頭痛が起こらなくなった。鎮痛薬の服用回数は、水素吸入後は水素吸入前の1/4に減少した。水素ガス吸入開始前の昨年から、体力と筋力回復のため、調子の良い日にリハビリを兼ねた筋トレや有酸素運動のトレーニングを行っているが、水素ガス吸入以前はトレーニング後の筋肉痛や関節痛が酷く、鎮痛薬を服用が必要であった。水素吸入を開始してから2週間経過後からそれらの痛みが大幅に緩和されるようになった。トレーニングにより痛みが出た時でも、毎日90分程度の水素吸入で翌日には痛みがほぼ解消されるようになった。身体の痛みについては、驚くほどの効果を感じている。
【0032】
(iv)ブレインフォグについての患者の所感
病状において認知力、記憶力、集中力の低下が主訴ですが、脳に霧がかかったようなモヤモヤ感は水素ガスの吸入により軽減されている。水素ガス吸入前は、何をするにも、とても辛く、いつも我慢して無理をしながら行っていたが、水素吸入を開始した後の現在は、頭がスッキリしている。認知力についても、文章を書いたり、資料をまとめたりする力が少し元に戻った感がある。
たまに1時間~2時間程度デスクワークを行うと突然強い疲労感が現れて言葉が出なくなったり、文章が理解できなくなったりする症状が現れることがある。水素吸入開始以前は、このような症状はなかなか改善されることはなかった。しかし、水素の吸入により、このような疲労は、体の痛みと同様に、水素吸入以前に比べると短時間(2~3時間)で解消されるようになった。
【0033】
(v)症状のまとめ
慢性的な疲労感・疼痛・ブレインフォグは、明らかに水素による効果が出ている。
労作後の疲労や睡眠障害は現在も強い症状があるものの、労作後の疲労は、水素吸入によって2~3時間で解消する度合も多くなっている。これらの改善は、数年間不調が継続していたことを考えると驚異的な結果である。睡眠障害は以前と変わらず強い症状があるものの、水素吸入後、眠気が出るようになったことは、今までになかった。
水素によってすぐに炎症が緩和できる症状については、比較的早期に改善および/または症状の悪化を抑制につながっているのではと考えられるように思える。
【0034】
<症例2>
2017年に国立精神・神経医療研究センター(NCNP)でME/CFSと診断された43歳の女性はこれまで様々な治療を試みたが病状は改善しなかった。水素ガス吸入前の彼女は上肢および下肢機能の著しい障害や体幹機能の障害のため、起立、立位、座位姿勢の保持が出来ず、日中はベッド上で過ごし、室内移動は車椅子を使用していた。また、全身の痛み、脱力感、倦怠感、労作後の疲労感、睡眠障害、微熱、徐脈、血圧低下などの症状を示した。
2021年8月末より水素ガスを1日当たり6時間吸入した(水素ガス吸入機:MiZ株式会社(鎌倉市大船)、Jobs-α、水素濃度約4%~5%、100%水素発生量200ml/min)。その結果、吸入後3週頃から睡眠障害が改善され、日常的にある頭痛と日に数回起こる片頭痛が緩和された。9週間経過した時点でも水素ガス吸入によって、全身の痛み、脱力感、倦怠感、労作後の疲労感、睡眠障害、微熱、徐脈、血圧低下など、水素ガス吸入前に症状の緩和効果は継続している。
【0035】
<症例3>
2020年4月に国立精神・神経医療研究センター(NCNP)でME/CFSと診断された18歳の女性もこれまで様々な治療を試みたが病状は改善しなかった。水素ガス吸入前は、微熱、めまい、聴覚過敏、倦怠感、思考力や意欲の低下、吐き気、頭痛などの症状を示し、一日の大半を寝て過ごしていた。
2021年8月末より水素ガスを1日当たり5時間吸入した(水素ガス吸入機:MiZ株式会社(鎌倉市大船)、Jobs-α、水素濃度約4%~5%、100%水素発生量200ml/min)。
その結果、吸入後3週頃から身体が少し軽くなったように感じ、便通と意欲低下の改善を示した。また、昼寝の時間が減った。8週間経過した時点でも昼寝をしない日が多くなり、倦怠感はあるが、身体を動かす活動時間が増えた。また、自分自身が良い方向に向かっていると感じるとの回答を示した。その後、微熱、めまい、聴覚過敏、倦怠感、思考力や意欲の低下、吐き気、頭痛など、水素ガス吸入前に症状の緩和効果を確認している。
【0036】
<症例4>
2020年8月に国立精神・神経医療研究センター(NCNP)でME/CFSと線維筋痛症を併発していると診断された18歳の男性もこれまで様々な治療を試みたが彼の病状は改善しなかった。水素ガス吸入前の倦怠感、頭痛、筋力低下、脱力感、全身の痛み、睡眠障害、思考力・集中力・記憶力の低下、耳鳴り、音に対する過敏性、ブレインフォグなどの症状を示していた。
2021年8月末より水素ガスを1日当たり6時間吸入した(水素ガス吸入機:MiZ株式会社(鎌倉市大船)、Jobs-α、水素濃度約4%~5%、100%水素発生量200ml/min)。その結果、吸入後3週頃から彼は頭痛や全身の痛みの改善を示した。9週間経過した時点でも水素ガス吸入による頭痛や全身の痛みの改善効果は継続し、鎮痛薬の服用も減少し、「ブレインフォグ」も改善された。その後、倦怠感、頭痛、筋力低下、脱力感、全身の痛み、睡眠障害、思考力・集中力・記憶力の低下、耳鳴り、音に対する過敏性、ブレインフォグなど、水素ガス吸入前に症状の緩和効果を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者および/または線維筋痛症(FM)患者に対し水素を投与するだけで筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)および/または線維筋痛症(FM)の、例えば疲労、頭痛、身体の疼痛、思考力の低下、集中力の低下、および/または、これらの症状に伴う活動レベルの低下などの症状を改善および/または症状の悪化を抑制することを可能にする。水素自体に、副作用が知られていないため、患者のQOLを高めることができる。