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特許7409605液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231226BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 201
B41J2/14 613
B41J2/16 101
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019234621
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102305
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】関 紗綾香
(72)【発明者】
【氏名】戸田 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晋平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍
(72)【発明者】
【氏名】佃 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】沖藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】矢部 賢治
(72)【発明者】
【氏名】來山 泰明
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024309(JP,A)
【文献】特開2004-042613(JP,A)
【文献】特開2015-223828(JP,A)
【文献】特開2017-144659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子を有する素子基板と、
前記素子基板を支持し、前記吐出口に液体を供給する液室が形成されている支持部材と、
前記液室内の液体の振動を吸収する可撓性のダンパ部と、
を有する液体吐出ヘッドにおいて、
液体吐出ヘッドの使用時の姿勢において、前記支持部材には、前記液室よりも鉛直方向の上方向の位置に前記液室と連通する貫通孔が形成されており、
前記ダンパ部は、前記鉛直方向の下方向に凸となっており、前記凸の部分が前記貫通孔を塞ぐように前記ダンパ部が配置されており、
前記ダンパ部と前記支持部材は、固定部材により互いに接合されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記ダンパ部は、エポキシ樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーおよびシリコーンゴムの少なくともいずれか1つを含む樹脂材料から形成されている請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記液室に液体を供給する流路を有する流路部材を有し、
前記ダンパ部は、前記流路部材と前記支持部材との間に配され、
前記ダンパ部と前記支持部材は、前記ダンパ部と接続している当接部が前記支持部材の前記流路部材側の面に当接している状態で前記固定部材により互いに接合されている請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記液室には、前記流路部材の前記流路と連通する供給口が形成されており、
前記流路と前記供給口とをシールしながら接続するシール部を有するシール部材が前記流路部材と前記支持部材との間に配されており、
前記ダンパ部および前記当接部は、前記シール部材に形成されている請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記当接部は、エポキシ樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーおよびシリコーンゴムの少なくともいずれか1つを含む樹脂材料から形成されている請求項3または4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記液室は、前記鉛直方向の上方向から下方向に向かって徐々に断面積が大きくなる形状である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記液室の前記鉛直方向の上方向の壁を形成している面は、前記支持部材の前記素子基板を支持する面に対して傾いている請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記ダンパ部の前記凸の面は、前記支持部材の前記素子基板を支持する面に対して傾いている請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記ダンパ部の前記凸の面は、前記液室の前記鉛直方向の上方向を形成する面の延長線上に位置している請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記ダンパ部の前記凸の面は、前記支持部材の前記素子基板を支持する面に沿っている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記固定部材は、ネジである請求項1ないし10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記支持部材は、前記素子基板と接触している請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記ダンパ部の前記液室側の面の裏面には、空間部が形成されている請求項1ないし12のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記空間部は、大気と連通している請求項13に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
前記空間部は、大気と連通している大気連通路と接続されており、
前記大気連通路は、複数回屈曲している請求項13に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項16】
前記ダンパ部は、第1のダンパ部と、第2のダンパ部と、を有し、
前記空間部は、前記第1のダンパ部の前記液室側の面の裏面に形成されている第1の空間部と、前記第2のダンパ部の前記液室側の面の裏面に形成されている第2の空間部と、を有し、
前記第1の空間部に接続している第1の大気連通路と、前記第2の空間部に接続している第2の大気連通路は、互いに合流しない請求項15に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項17】
前記ダンパ部は、第1のダンパ部と、第2のダンパ部と、を有し、
前記空間部は、前記第1のダンパ部の前記液室側の面の裏面に形成されている第1の空間部と、前記第2のダンパ部の前記液室側の面の裏面に形成されている第2の空間部と、を有し、
前記第1の空間部に接続している第1の大気連通路と、前記第2の空間部に接続している第2の大気連通路は、互いに合流する請求項15に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項18】
吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子を有する素子基板と、
前記素子基板を支持し、前記吐出口に液体を供給する液室が形成されている支持部材と、
前記液室内の液体の振動を吸収する可撓性のダンパ部と、
を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、
液体吐出ヘッドの使用時の姿勢において、前記液室よりも鉛直方向の上方向の位置に前記液室と連通する貫通孔が形成されている支持部材を用意する工程と、
前記鉛直方向の下方向に凸となっているダンパ部を用意する工程と、
前記ダンパ部の前記凸の部分が前記貫通孔を塞ぐように、前記ダンパ部を前記支持部材の前記鉛直方向の上方向に配置する工程と、
前記支持部材および前記ダンパ部を固定部材により互いに接合する工程と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
写真や文書、3次元構造体などを形成する手段としての液体吐出ヘッドは、吐出口を有する素子基板から複数種のインク等の液体を記録媒体へ吐出する。多ノズル化により1度の吐出動作で多くの液体が吐出されるようになったり、高速記録を達成するために液体の吐出間隔を短くしたりすると、時間当たりの液体の吐出量が大きくなる。このため、吐出口内部の液体の振動が大きくなりやすい。この液体の振動が十分収束する前に次の吐出を行うと、記録品位に影響が及ぶ恐れがある。
【0003】
特許文献1に記載の液体吐出ヘッドは、吐出口に液体を供給する液室を有し、素子基板を支持する支持部材の一部(液室の天井(壁面)の一部)に、可撓性のダンパ部を設けた構成としている。ダンパ部は可撓性の材料から構成されているため、液室内の液体の振動に合わせて変形することにより液体の振動を吸収でき、吐出口内部の液体の振動を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-107633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、液室の壁面のダンパ部に関して、液室を有する支持部材とダンパ部とが互いの部材の密着力のみで接合されているため、支持部材とダンパ部との接合部分の密着性があまり高くない。したがって、支持部材とダンパ部との接合部分に液体が接触すると、接合部分を介して液室内の液体が外部に漏洩する恐れがある。
【0006】
また、液体を吐出する際等に生じる気泡が、液室に侵入することがある。ここで、気泡を貯め込むような凹部が液室内に形成されていると、気泡が凹部内に滞留することがある。凹部内に気泡が存在していると、気泡が吐出口に入りこみ、吐出口からの液体の吐出性能が低下することがある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑み、気泡が液室の内部に溜まることを抑制しつつ、支持部材とダンパ部との高い密着性を確保することができる液室を有する液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明によって解決される。即ち本発明は、吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子を有する素子基板と、前記素子基板を支持し、前記吐出口に液体を供給する液室が形成されている支持部材と、前記液室内の液体の振動を吸収する可撓性のダンパ部と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、液体吐出ヘッドの使用時の姿勢において、前記支持部材には、前記液室よりも鉛直方向の上方向の位置に前記液室と連通する貫通孔が形成されており、前記ダンパ部は、前記鉛直方向の下方向に凸となっており、前記凸の部分が前記貫通孔を塞ぐように前記ダンパ部が配置されており、前記ダンパ部と前記支持部材は、固定部材により互いに接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、気泡が液室の内部に溜まることを抑制しつつ、支持部材とダンパ部との高い密着性を確保することができる液室を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】液体吐出ヘッドおよび素子基板の構成を示す概略図。
図2】液体吐出ヘッドの正面図。
図3】シール部材を示す斜視図。
図4図2に示すA-A断面における液体吐出ヘッドの断面図。
図5】流路部材を示す概略図。
図6】第2の実施形態における液体吐出ヘッドの断面図。
図7】液体吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
(液体吐出ヘッド)
図1(a)は、本実施形態の液体吐出ヘッド100を示す分解斜視図である。図1(b)は、液体を吐出する素子基板155の吐出口近傍の断面構成を示す概略図である。液体吐出ヘッド100は、サブタンク120と、筐体110と、流路部材130と、記録素子ユニット150と、から主に構成されており、これらの各部材は固定部材160により互いに固定されている。本実施形態においては、固定部材160としてネジを用いている。サブタンク120は、液体(インク)を貯留しているメインタンク(図示せず)から供給される液体を液体吐出ヘッド100内で貯留しているタンクである。流路部材130は、サブタンク120から供給される液体を素子基板155に供給するための流路131を有する。記録素子ユニット150は、液体を吐出する素子基板155と、素子基板155を支持する支持部材151と、素子基板155と電気接続されるフレキシブル基板157と、から構成されている。支持部材151は、接着剤(図示せず)を介して素子基板155と接触している。また、支持部材151は、例えば、炭素鋼(S45C)などの鉄、ステンレス鋼材(SUS)等の合金やシリコン、セラミックス等の無機材料、エポキシ樹脂などの樹脂材料を挙げることができる。耐腐食性があるものが好ましい。
【0013】
流路部材130と記録素子ユニット150との間には、液体の振動を吸収(抑制)するダンパ部142と、液体の外部への漏洩を抑制するシール部115とを有するシール部材140が配されている。ダンパ部142は、可撓性の部材から形成されている。具体的には、例えば、エポキシ樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、シリコーンゴムなどの樹脂材料が挙げられる。これらの樹脂の少なくともいずれか一つを有すればよい。ダンパ部142が液室101(図4参照)に設けられていることで、液室101内の液体の振動に合わせてダンパ部142が変形し、液体の振動を抑制することができる。シール部115も同様に可撓性の部材から形成されている。具体的には、例えば、エポキシ樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、シリコーンゴムなどの樹脂材料が挙げられる。これらの樹脂の少なくともいずれか一つを有すればよい。シール部115は、流路部材130の流路131から記録素子ユニット150の間で液体が外部に漏れるのを抑制している。メインタンクから供給される液体は、流路部材130、シール部材140のシール部115、支持部材151の供給口152、液室101、をこの順に流れ、吐出口に供給される。シール部材140のダンパ部142とシール部115以外の部分116は、非可撓性部材(プラスチック、金属)で形成されている。したがって、シール部材140は、可撓性部材と非可撓性部材とから構成されている。
【0014】
図1(b)に示すように、素子基板155には、吐出口123から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子124が形成されている。エネルギー発生素子124として、図1(b)においては発熱素子を図示したが、本実施形態はこれに限られない。即ち、エネルギー発生素子は、ピエゾ素子を用いたものでもよい。エネルギー発生素子124を駆動することにより、液体を膜沸騰させ、吐出口123から液体を吐出する。
【0015】
(液体吐出ヘッドの内部構成)
図2は、図1に示す液体吐出ヘッド100の完成状態の一部における正面図である。図3は、シール部材140を示す斜視図である。図4は、図2に示すA-A断面の断面図である。液体接続部121にチューブ等(不図示)が接続されてメインタンクからの液体が液室101に供給される。
【0016】
図4に示すように、支持部材151の素子基板155を支持する面102(第1の面)の裏面である第2の面103上にはシール部材140が配置されており、シール部材140のダンパ部142が貫通孔154を塞ぐように形成されている。液室101は、鉛直方向の上方向から下方向に向かって(Z方向に向かって)徐々に断面積が大きくなるように、素子基板を支持する第1の面102に対して傾くような形状(以下、三角液室と称す)となっている。液室101がこのような形状となっていることにより、供給口152から液室101に供給される液体の流れが液室101の壁面付近で乱流になることを抑制することができる。したがって、液室内に侵入してきた気泡が液室の壁面(天井)付近で滞留することを抑制することができる。
【0017】
液室101の天井に相当する面159(以下、単に天井159と称す)に、支持部材151と高い密着性でダンパ部142を形成する。このために、液体吐出ヘッド100の使用時の姿勢(図4に示す姿勢)において、液室よりも鉛直方向の上方向の位置に液室と連通するように貫通孔を形成する。そして、支持部材151の上面である流路部材側の面(第2の面)103に、ダンパ部142と同一材料で一体的に形成されている当接部125を配置(当接)し、固定部材160(図1参照)を用いて、支持部材151とダンパ部142とを固定する。これにより、液室101の天井159にダンパ部142が配置されながら、支持部材151とダンパ部142は固定部材160により互いに応力を加えられて固定されることとなる。このため、支持部材151とダンパ部142との高い密着性を有した液室101を形成することができる。
【0018】
さらに、ダンパ部142の形状を、図4に示す姿勢において鉛直方向の下方向に凸となるような形状とする。これにより、ダンパ部142が支持部材151の貫通孔154を塞ぐように配置されるため、液室101内に気泡を保持してしまうような凹部が形成されることを抑制することができる。したがって、本発明によれば、支持部材151とダンパ部142との高い密着性を確保しつつ、液室101内に気泡を留まることを抑制できる液室101を形成することができる。
【0019】
次に、図7を参照しながら、液体吐出ヘッド100の製造方法について説明する。図7は、液体吐出ヘッド100の製造工程を示すフローチャートである。まず、貫通孔154が形成されている支持部材151を用意する(工程1)。次に、鉛直方向の下方向に凸となっているダンパ部142を用意する(工程2)。次に、ダンパ部142の下に凸の部分が支持部材151の貫通孔154を塞ぐように、ダンパ部142を支持部材151の鉛直方向の上方向に配置する(工程3)。次に、固定部材160を用いて、支持部材151とダンパ部142を互いに接合し、液体吐出ヘッド100を製造する。これにより、支持部材151とダンパ部142は互いに応力を加えられながら固定されることとなるため、支持部材とダンパ部との高い密着性を確保することができる。また、ダンパ部142の形状が下に凸となっていることで、ダンパ部142が貫通孔154を塞ぐ。このため、気泡が溜まるような不必要な凹部(隙間)が液室101内に形成されることを抑制することができ、気泡が液室内に留まることを抑制することができる。
【0020】
(大気連通路)
図5(a)は、流路部材130の上面図を示す図である。図5(b)は、図5(a)に示す流路部材130の変形例を示す図である。ダンパ部142の液室側に面する面の裏面側には、大気と連通している空間部106が形成されており、これによりダンパ部142が容易に変形しやすいようになっている。流路部材130には、この空間部106と連通し、大気と連通している大気連通路113が形成されており、図5(a)及び図5(b)においては、第1の大気連通路113aと第2の大気連通路113bの2つが形成されている。第1の大気連通路113aは、図4に示す2つのダンパ部142のうち図中右側のダンパ部142(第1のダンパ部)の裏面側の空間部106(第1の空間部)と接続されている大気連通路である。第2の大気連通路113bは、図4に示す2つのダンパ部142のうち図中左側のダンパ部142(第2のダンパ部)の裏面側の空間部106(第2の空間部)と接続されている大気連通路である。即ち、ダンパ部142の裏面側の空間部106は、大気連通路113を介して大気開放されている。ダンパ部142が上述したような樹脂材料で形成されていると、液室101内の液体の揮発成分が時間の経過とともに徐々にダンパ部142を透過し、大気連通路113に移動する。そして、大気連通路113は大気と連通しているため、大気連通路113を介して液室101内の液体の揮発成分は徐々に蒸発する。この液体の蒸発量は、大気連通路113の断面積が増すほど増大し、大気連通路113の長さが長くなるほど減少する関係にある。そこで、液体の蒸発量を低減するために、大気連通路113を複数回屈曲させ、大気連通路113の長さを長くしている。図5(a)においては、第1の大気連通路113aと第2の大気連通路113bは、互いに流路は合流している。これにより、少ない領域で長い大気連通路113を形成することができる。
【0021】
また、第1の大気連通路113aおよび第2の大気連通路113bは、図5(b)に示すように、独立して(互いに合流しないで)形成されていてもよい。図5(b)に示すような形態とすることにより、一方の空間部106(第1の空間部)の圧力変動が他方の空間部106(第2の空間部)の圧力に影響を及ぼすことを抑制し、ダンパ部142が安定して液体の振動を抑制することができる。
【0022】
なお、上記の説明において、空間部106は大気と連通しているものとして説明をしたが、空間部106は大気と連通していなくともよい。即ち、空間部106が密閉空間となっていてもよい。空間部106がある程度の体積であれば、空間部106が密閉空間となっていても、ダンパ部142は液体の振動に合わせて変形し、ダンパとして機能する。しかしながら、空間部106が密閉空間であると、ダンパ部142が液体の振動に合わせて振動した際に、ダンパ部の変形を妨げるように空間部106の圧力が変動してしまう。そのため、空間部106内の圧力の変動によりダンパ部142の変形が妨げられることを抑制するため、空間部106内の圧力は常に一定に保たれるようにすることが好ましい。したがって、空間部106が大気と連通していることがより好ましい。
【0023】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、図6を参照しながら説明する。図6は、第2の実施形態におけるダンパ部143を液室101の天井159に設けた場合の概略図である。図6に示すように、第2の実施形態におけるダンパ部143は、ダンパ部143の凸となっている面(下面)104が、三角液室101の天井159の斜面に沿うように傾いて配置されている。ここで、沿うように傾いているとは、天井159の素子基板155に対する傾斜角度とダンパ部143の下面104の素子基板155に対する傾斜角度とが略同じ角度であって、天井159の面の延長線上に下面104が位置していることをいう。なお、略同じ角度とは、天井159を平面と見なした際の傾斜角度と、下面104を平面と見なした際の傾斜角度との差が10度以内であることをいう。ダンパ部143の下面104が三角液室101の天井159に沿うように傾いて配置されていることにより、貫通孔154とダンパ部143との隙間を最小限に抑えることができる。このため、液室内に侵入した気泡が、ダンパ部143と貫通孔154との隙間に引っ掛かって液室内に留まり、吐出口に気泡が侵入してしまうことをより抑制することができる。
【符号の説明】
【0024】
100 液体吐出ヘッド
101 液室
123 吐出口
124 エネルギー発生素子
142 ダンパ部
151 支持部材
154 貫通孔
155 素子基板
160 固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7