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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
A61B3/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020077704
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2020179175
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】62/837,914
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/837,900
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/837,844
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/844,797
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/845,928
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】ワング ゼングォ
(72)【発明者】
【氏名】マオ ツァイシン
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英晴
(72)【発明者】
【氏名】大森 和宏
(72)【発明者】
【氏名】藤野 誠
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-267102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0109423(US,A1)
【文献】特開平07-178057(JP,A)
【文献】特表2010-530282(JP,A)
【文献】特開2005-168941(JP,A)
【文献】特開2015-230264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼と対向するための対物レンズと、
第1の照明光源から照射される照明光を、前記被検眼の角膜に前記対物レンズの光軸中心と重なる光軸で照射するための第1の照明光学系と、
前記対物レンズを通して角膜反射光を撮像して撮像信号を出力するための干渉像撮像用カメラと、
前記干渉像撮像用カメラから入力された角膜反射光の角膜反射像に基づき、前記角膜反射像の各位置の干渉像の波長特性を検出することで、角膜表面の各位置における涙液層の厚みを算出するための演算部と、
を有する眼科装置本体と、
前記眼科装置本体を支持するガイドレールと
を備える眼科装置であって
前記ガイドレールは、前記対物レンズの中心光軸が重力方向に直交する水平方向に対して斜め下方となるように前記眼科装置本体を回動可能に支持する眼科装置。
【請求項2】
眼科装置本体をガイドレールに沿って移動させるための駆動部と、
前記駆動部を制御するための制御部と、
を更に備え、
前記制御部が前記駆動部を制御し前記眼科装置本体を回動させ、
前記演算部が回動した角度毎の涙液層の厚みを算出し、算出した涙液層の厚みから涙液層の最大値を算出する請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記ガイドレールと、前記眼科装置本体と、を相対的に移動させるための駆動部と、
前記駆動部を制御するための制御部と、
を更に備え、
前記制御部が前記駆動部を制御し前記眼科装置本体を回動させ、
前記演算部が回動した角度毎の角膜反射光の光量を用いて、測定に適正な角度を算出し、
前記制御部は、算出された角度に基づいて前記眼科装置本体を回動させる請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記対物レンズは、前記被検眼に前記照明光の中心光軸が水平方向に対して斜め上方に向けて照射し、かつ、前記角膜反射光を水平方向に対して中心光軸を斜め下方に入射するように構成される請求項1から3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記第1の照明光源は、単一の光源のみを有する請求項1から4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記第1の照明光源は、砲弾型LEDである請求項5に記載の眼科装置。
【請求項7】
第2の照明光源から照射される照明光を、被検眼の角膜に前記対物レンズの光軸中心と異なる光軸中心で照射するための第2の照明光学系と、
前記第1の照明光源と前記第2の照明光源を制御するための制御部と、
を更に備え、
前記制御部は、前記第1の照明光源と、前記第2の照明光源を切り替えて照明光を照射可能とする請求項1から6のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記第2の照明光源は、前記被検眼の角膜に対して、対物レンズを介さずに照明光を照射する請求項7に記載の眼科装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は眼科装置に係り、詳しくは被検眼の前眼部の状態と涙液層の状態を検査する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼の角膜に照明光を投光し、前眼部の状態と被検眼角膜の涙液層によって形成される干渉縞を観察することで、ドライアイ等の診断を行う眼科装置が知られている。
【0003】
しかし、被検眼の涙液は、時間が経過するに従い、重力の方向に沿って角膜の下側に垂れてしまう。そのため、従来から、角膜下側を照明し、角膜正面から観察撮影する技術が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許3896211号公報
【文献】特許5665181号公報
【文献】特開2019-25257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、時間が経過し重力の方向に沿って角膜の下側に被検眼の角膜上の涙液が垂れてしまった状態であっても、涙液層を斜め下方向から撮影することで、涙液の状態をより正しく検査可能な眼科装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の眼科装置は、被検眼と対向するための対物レンズと、第1の照明光源から照射される照明光を前記被検眼の角膜に前記対物レンズの光軸中心と重なる光軸で照射するための第1の照明光学系と、前記対物レンズを通して角膜反射光を撮像して撮像信号を出力する干渉像撮像用カメラと、前記干渉像撮像用カメラから入力された角膜反射光の角膜反射像に基づき、前記角膜反射像の各位置の干渉像の波長特性を検出することで、角膜表面の各位置における涙液層の厚みを算出するための演算部と、を有する眼科装置本体と、前記眼科装置本体を支持するガイドレールと、を備える眼科装置であって、前記ガイドレールは、前記対物レンズの中心光軸が重力方向に直交する水平方向に対して斜めとなるように前記眼科装置本体を回動可能に支持する。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、時間が経過し重力の方向に沿って角膜の下側に被検眼の角膜上の涙液が垂れてしまった状態であっても、涙液層を斜め下方向から撮影することで、涙液の状態をより正しく検査可能な眼科装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る眼科装置の概略図である。
図2】本開示の実施形態に係る眼科装置の光学系を示す概略図である。
図3】本開示の実施形態に係る被検眼の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本開示の実施形態に係る眼科装置1の概略図である。眼科装置1は、ベースユニット2、ガイドレール支持部3、ガイドレール4、ガイド部材5、エンコーダ(角度検出手段)6、眼科装置本体9、固視灯24、固視灯支持アーム25、とを含んで構成される。
【0010】
ベースユニット2上に構成されるガイドレール支持部3には、湾曲したガイドレール4が設けられており、このガイドレール4は点Pを中心にした曲率で湾曲している。詳しくは、検眼時にはガイドレール支持部3の上方に被検眼Eが位置し、点Pは当該被検眼Eの角膜Eaの曲率中心となる位置を想定している。ガイドレール4は、この点Pの重力方向下方位置を起点として当該点Pの水平方向まで湾曲した略四分円弧状をなしている。ガイドレール4には該ガイドレール4に沿って移動可能なガイド部材5が取り付けられており、ガイド部材5には眼科装置本体9が固定されている。これにより、ガイド部材5をガイドレール4に沿って移動させると、眼科装置本体9は点Pを中心にして回動することになる。すなわち、角膜Eaの曲率中心を点Pとすることで、角膜Eaと後述する対物レンズ18aとの距離を維持しつつ、眼科装置本体9が角膜Eaに向く角度(水平方向に対する角度)を変更することができる。また、ガイド部材5には眼科装置本体9の回転角を検出するエンコーダ6が設けられており、エンコーダ6は眼科装置本体9が微小角回転する毎にパルスを発生する。また、眼科装置本体9は、後述する制御部10からの制御により駆動部7を駆動し、ガイドレール4に沿って移動させることができる。
【0011】
固視灯24は、被験者の視線を誘導することで被検眼Eの位置を固定し、被検眼Eの状態を好適に観察撮影するための光源である。固視灯24は、LED(light emitting diode)光源又はハロゲンランプ等を用いることができる。固視灯24は、固視灯支持アーム25の先端に取り付けられ、被験者との相対位置を自由に配置することができる。
【0012】
図1において、実線で示される眼科装置本体9は、水平状態であることを示している。また、点線で示される眼科装置本体9は、眼科装置本体9に取り付けられたガイド部材5をガイドレール4に沿って移動させることで、眼科装置本体9が点Pを中心にして水平方向に対して略15度の角度に回転し傾けられた状態であることを示している。また、その回転の角度は、眼科装置本体9の回転に伴いエンコーダ6が発生するパルスによって検出することができる。
【0013】
図2は、本開示の実施形態に係る眼科装置本体9の光学系を示す概略図である。眼科装置本体9の光学系は、前眼部観察光学系9aと、測定光学系9bと、第1の照明光学系9cと、第2の照明光学系9dと、を備える。
【0014】
図2は、本開示の実施形態に係る眼科装置本体9が、水平方向に対して略15度の角度をもって傾けられ配置された状態をしめしている。
【0015】
前眼部観察光学系9aは、本開示の第1レンズ群18を備える。また、前眼部観察光学系9aは、第1レンズ群18の光軸方向に沿って配置された第3ハーフミラー17、撮像用レンズ19、及び前眼部カメラ20を備える。なお、本件においてハーフミラーとは、光を反射光・透過光に分波する反射鏡を示し、その分岐率はおおよそ1:1であってもよいが、その限りではない。
【0016】
第1レンズ群18は、所謂対物レンズである。なお、本実施形態では、対物レンズ(第1レンズ群18)が複数のレンズ(18a、18b)で構成されているが、対物レンズが1つのレンズのみで構成されていてもよい。なお、この第1レンズ群18は、後述する第1の照明光学系9cから出射された照明光L1を、第3ハーフミラー17を経由して被検眼Eの角膜Eaの角膜表面に照射する。また、第1レンズ群18には、角膜表面で反射された照明光の角膜反射光R1が入射される。この角膜反射光R1は、第1レンズ群18から第3ハーフミラー17に入射する。
【0017】
第3ハーフミラー17は、第1の照明光学系9cから入射した照明光L1の一部を第1レンズ群18に向けて反射する。また、第3ハーフミラー17は、第1レンズ群18から入射した角膜反射光R1の一部(R3)を透過して撮像用レンズ19に向けて出射する。且つ角膜反射光R1のうち、一部の光(R2)を後述の第2レンズ群16に向けて反射する。
【0018】
撮像用レンズ19は、第3ハーフミラー17から入射した角膜反射光R3を透過して前眼部カメラ20に向けて出射する。前眼部カメラ20は、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型又はCCD(Charge Coupled Device)型の撮像素子を有しており、撮像用レンズ19から入射した角膜反射光R3を撮像して被検眼Eの前眼部の観察像(以下、前眼部観察像という)の撮像信号を、制御部10へ出力する。
【0019】
第1の照明光学系9cは、第1の照明光源11を備える。また、第1の照明光学系9cは、第1の照明光源11から出射される照明光L1の光路上に沿って配置されたレンズ12、フィルタ13、第1ハーフミラー14、第2ハーフミラー15、及び第2レンズ群16を備える。また、第1の照明光学系9cは、第3ハーフミラー17及び第2レンズ群16を前眼部観察光学系9aと共有する。このように、第1の照明光学系9cは、第3ハーフミラー17で前眼部観察光学系9aから分岐した光路を形成する。
【0020】
第1の照明光源11は、光を出射する光源である。第1の照明光源11は、例えば、白色光を出射するLED(light emitting diode)光源及びハロゲンランプ等が用いられ、レンズ12に向けて照明光として白色光を出射する。あるいは、他波長のLEDやレーザー光源およびその組み合わせであってもよい。レンズ12は、第1の照明光源11から入射した照明光L1をフィルタ13に向けて出射する。フィルタ13は、レンズ12から入射した照明光L1の光量あるいは波長分布またはその両方を調整し、調整後の照明光L1を第1ハーフミラー14に向けて出射する。なおLEDは、砲弾型LEDを用いることができる。またLEDに変えて単一のハロゲンランプ等を用いてもかまわない。
【0021】
第1ハーフミラー14は、フィルタ13から入射した照明光L1の一部を透過して第2ハーフミラー15に向けて出射する。また、後述の第2レンズ群16から第2ハーフミラー15を経由して入射する角膜反射光R1の一部(R2)を後述の測定光学系9bに向けて反射する。
【0022】
第2ハーフミラー15及び第2レンズ群16は、第1ハーフミラー14から入射した照明光L1を既述の第3ハーフミラー17に向けて出射する。また、第3ハーフミラー17で反射された角膜反射光R2を第1ハーフミラー14に向けて出射する。
【0023】
このように第1の照明光源11から出射された照明光L1は、レンズ12から第3ハーフミラー17を経た後、第1レンズ群18を通して角膜Eaの角膜表面に照射される。これにより、照明光L1が角膜表面で反射された角膜反射光R1が第1レンズ群18に入射する。
【0024】
測定光学系9bは、第1ハーフミラー14を経由して第1の照明光学系9cから分岐した光路を形成する。測定光学系9bは、第1レンズ群18から第1ハーフミラー14までを第1の照明光学系9cと共有すると共に、絞り21、レンズ22、及び干渉像撮像用カメラ23を備える。
【0025】
絞り21及びレンズ22は、第1ハーフミラー14から入射した角膜反射光R2を干渉像撮像用カメラ23に向けて出射する。
【0026】
干渉像撮像用カメラ23は、CMOS型又はCCD型の撮像素子を有しており、レンズ22から入射した角膜反射光R2を撮像して、角膜反射像の撮像信号を制御部10に向けて出力する。
【0027】
アライメント調整系は、光てこ方式を用いて被検眼Eと第1レンズ群18の光軸方向のアライメント測定を行う。アライメント調整系は、第1レンズ群18を移動可能とするサーボモータ等のアライメント調整部40を含む機構部である。制御部10に電気的に接続されるサーボモータを駆動し第1レンズ群18を移動することで、被検眼Eと第1レンズ群18の光軸方向の相対位置の調整を行い、光学系(前眼部観察光学系9a、測定光学系9b、第1の照明光学系9c)のアライメント調整を行うことができる。
【0028】
ゴースト除去光源30(第2の照明光源)は、例えばLED(light emitting diode)光源やハロゲンランプ等が用いられ、被検眼Eの角膜Eaの角膜表面に向けて照明光L2を出射することができる。ゴースト除去光源30から照射される照明光L2は、第1レンズ群18の光軸に対してずれた光軸中心を有する(第2の照明光学系9d)。
【0029】
制御部10は、第1の照明光源11、前眼部カメラ20、干渉像撮像用カメラ23、固視灯24、ゴースト除去光源30、アライメント光源31、アライメント反射光受光部32、アライメント調整部40と電気的に接続されている。
【0030】
制御部10は演算部10aを備え、演算部10aは、干渉像撮像用カメラ23から入力された角膜反射光R2の画像データ(角膜反射像)に基づき、角膜反射像の各位置の干渉像の波長特性を検出することで、角膜表面の各位置における涙液層の厚みを算出することができる。ここで涙液層とは、油層(脂質層)、水層、または、ムチン質、それぞれの層、あるいはそれら複数の層を組み合わせた層のことを示す。
【0031】
また、制御部10は、第1の照明光源11と、ゴースト除去光源30(第2の照明光源)と、を切り替えて照明光を照射することができる。そのため、検査に応じて、ゴーストを低減するモードと、被検眼Eの中心に対して光を照射するモードを切り替えることができる。
【0032】
ここで、図2で示す眼科装置本体9は、水平方向(重力方向に直交する方向)に対して中心光軸を略15度の角度aにて上方に向けて照明光を照射し、また同時に、角膜反射光を水平方向に対して中心光軸を略15度の角度aにて下方に出射する状態である。このようにして、眼科装置1は、角膜の一定の測定領域(Field Of View/以下FOVという)の涙液層を測定することができる。
【0033】
測定のために瞼を開けた状態の被検眼Eでは、涙液層は、重力により被検眼Eの上方の膜厚が薄くなり、下方の膜厚が厚くなる。図3は、本開示の実施形態に係る被検眼Eの状態を示す概略図である。図3(a)は、被検眼Eを側面から見た図であり、図3(b)は、被検眼Eを含む眼を正面から見た図である。FOVは図3(b)において、点線の丸で囲まれる領域である。ここで、点線で示すFOVの直径d1は5mm以上、望ましくは8mmである。例えば、角膜反射光が、水平方向に対して中心光軸を略15度の角度aにて下方に出射する場合、FOVの直径d1を8mm、角膜Eaを正面から見た場合の縦方向の寸法d2を12mm、角膜の半径Rを7.7mmとすると、FOVの下端が下瞼に位置することになる。
【0034】
以上の構成により、眼科装置本体9は点Pを中心にして回転することができ、角膜Eaの曲率中心を点Pとすることで、角膜Eaと対物レンズ18aとの距離を維持しつつ、眼科装置本体9が角膜Eaに指向する角度を変更することができる。すなわち、第1レンズ群18は、被検眼Eの角膜Eaに対して、水平方向に対して中心光軸を斜め上方に向けて照明光L1を照射することができる。これにより、角膜表面で水平方向に対して斜め下方に反射された角膜反射光R1の中心光軸が第1レンズ群18に入射する。そのため、角膜の下側に被検眼の角膜上の涙液が垂れてしまった状態であっても、涙液層を斜め下方向から撮影することで、角膜Eaを涙液層で覆った状態を維持しながら涙液層の状態を精度良く検査し、涙液層の厚みを算出することができる。
【0035】
なお、FOVの大きさは角膜Eaの大きさよりも大きくても構わない。また、FOVの下端が下瞼の位置に一致しなくても構わない。そのため、水平方向に対して上方に向けて照明光を照射する角度及び、角膜反射光を水平方向に対して出射する角度aは、略15度に限られるものではなく、第1レンズ群18の中心光軸が、水平方向に対する角度aを略5度から略25度の範囲となるように任意に設定することができる。
【0036】
また、被検者が正面を向いた状態で、所定時間において涙液が垂れる状態を観察し、垂れる涙液を含むFOVの中心の角度aを算出して、当該角度に眼科装置本体9を回転させてもよい。
【0037】
また、被検者が正面を向いた状態で、眼科装置本体9を水平方向から段階的に所定角度回転させ、回転を停止させる毎に涙液層の厚みを算出することができる。具体的には、制御部10が駆動部7を制御し、眼科装置本体9を回転させ、回転角度毎の演算部10aが涙液層の厚みを算出する。これにより角度に応じた涙液層の厚みの情報から、例えば涙液層の厚みが最大値となる値を涙液層の厚みとして算出してもよい。
【0038】
また、本開示に係る眼科装置1では、角膜への照明光の光量と、前眼部カメラ20又は干渉像撮像用カメラ23で撮像(受光)される角膜からの角膜反射光R3の光量を用いて、被検眼Eに対して、眼科装置本体9の光学系が適正な位置(角度)であるか否かを判別することができる。具体的には、眼科装置本体9を例えば水平方向から段階的に所定角度回転させ、回転を停止させる毎に角膜反射光R3の光量を測定する。より具体的には、制御部10が駆動部7を制御し、眼科装置本体9を回転させ、回転角度毎の演算部10aが反射光の光量を測定する。角膜反射光の光量は、前眼部カメラ20の撮像信号を用いても良い。角度と反射光の光量の関係から、眼科装置本体9の適正な角度を算出する。そして、眼科装置本体9を当該角度に回転させることで、被検眼Eに対する眼科装置本体9を適正な角度とすることができる。これにより、固視灯により被検眼Eの視線を正面に誘導しても、視線が下方に下がってしまうような被験者(例えば高齢者)等においても、視線が下がったことを眼科装置1で検出し、視線に合わせて眼科装置本体9を回転させることで、精度の良い涙液層の測定を行うことができる。
【0039】
ここで、本開示に係る第1の照明光源11は、単一のLEDからなる光源である。そのため、第1の照明光源11が出射した照明光L1は第1レンズ群18を通って角膜Eaに到達した場合でも、単一の光源の形状が投影される。
【0040】
これに対し、比較例として例えば第1の照明光源11として、3×3の9個のLEDがマトリックス配置されてなる複数の光源を用いた場合について説明する。比較例に係る第1の照明光源11が出射した照明光は第1レンズ群18を通って角膜Eaに到達した場合、複数のLED点光源からの光が第1レンズ群18で集光されることで複数のLEDに隣接する場所に発生する暗い部分、すなわち縞状の照度差が、角膜Ea上にぼんやり見える縞状として投影されることになる。そのため、角膜からの角膜反射光R1にも、この縞状の照度差が生じることとなる。その結果、被検眼の角膜の照明に濃淡が生じ、角膜表面の涙液の膜厚を正しく測定することができなくなるおそれがある。
【0041】
これに対し、本開示によれば、単一の光源による照明により角膜の測定を行うことで、角膜に縞状の照度差を生じることがなく、角膜表面の涙液の膜厚を正しく測定することができる。
【0042】
また、ゴースト除去光源30から照明光L2を照射することにより、照明光L2が前眼部で反射して生じるゴーストの位置を、前眼部カメラ20の光軸からずらすことができる。よって、ゴーストが前眼部カメラ20の視野内に入ることを抑制することができる。そのため、被検眼Eの中心付近の角膜や涙液層の正しい検査や、より正確な角膜像の取得が可能となる。
【0043】
なお、ゴースト除去光源30(第2の照明光源)を、被検眼Eの角膜Eaに対して照明光L2を下方から照射する光軸となるように配置しても構わない。また、ゴースト除去光源30(第2の照明光源)を、第1レンズ群18の中心光軸に対し、水平方向から照射する光軸を有するように構成しても構わない。
【符号の説明】
【0044】
1 :眼科装置
2 :ベースユニット
3 :ガイドレール支持部
4 :ガイドレール
5 :ガイド部材
6 :エンコーダ
9 :眼科装置本体
9a :前眼部観察光学系
9b :測定光学系
9c :第1の照明光学系
9d :第2の照明光学系
10 :制御部
11 :第1の照明光源
12 :レンズ
13 :フィルタ
14 :第1ハーフミラー
15 :第2ハーフミラー
16 :第2レンズ群
17 :第3ハーフミラー
18 :第1レンズ群
18a :対物レンズ
19 :撮像用レンズ
20 :前眼部カメラ
21 :絞り
22 :レンズ
23 :干渉像撮像用カメラ
24 :固視灯
25 :固視灯支持アーム
30 :ゴースト除去光源
31 :アライメント光源
32 :アライメント反射光受光部
40 :アライメント調整部
図1
図2
図3