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特許7409612トリパタイトモチーフ含有蛋白質16(TRIM16)シグナル伝達を誘導するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】トリパタイトモチーフ含有蛋白質16(TRIM16)シグナル伝達を誘導するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20231226BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20231226BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61K38/21
A61K45/00
A61K39/395 E
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 117
A61P43/00 121
C12N15/12 ZNA
C12N5/09
C12N5/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020541958
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019016413
(87)【国際公開番号】W WO2019152884
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】62/625,623
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517075883
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワシントン
【氏名又は名称原語表記】University of Washington
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ゲイル, マイケル, ジェー., ジュニア
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-500011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0017207(US,A1)
【文献】PLOS Pathogens,2012年,Vol. 8, No. 8,e1002839, pp. 1-13
【文献】Advances in Immunology,2017年,Vol. 133,pp. 121-169
【文献】DEWEY, Elyse C. et al.,Programming of RIG-I signaling through co-factor interactions,J Immunol,2016年,196 (1 Supplement) 203.7
【文献】Molecular & Cellular Oncology,2014年,Vol. 1, No. 4,e968016, pp. 1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7105
A61K 38/21
A61K 45/00
A61K 39/395
A61P 1/00-43/00
C12N 15/12
C12N 5/09
C12N 5/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象におけるがんの治療用組成物であって、治療的有効量の病原体関連分子パターン(PAMP)含有核酸分子を含み
記PAMP含有核酸分子の配列は配列番号2の配列である、治療用組成物。
【請求項2】
前記PAMP含有核酸分子は対象のがん細胞においてTRIM16とのレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体(RLR)相互作用を誘導する、請求項1の治療用組成物。
【請求項3】
前記TRIM16とのRLR相互作用ががん細胞内で細胞死シグナル伝達を誘導する、請求項2の治療用組成物。
【請求項4】
前記RLRがRIG-Iである、請求項3の治療用組成物。
【請求項5】
有効量のインターフェロン(IFN)の対象への投与と併用で用いられる、請求項1の治療用組成物。
【請求項6】
プロモーター配列に作動的に連結されたTRIM16をコードする配列を含む核酸の対象への投与と併用で用いられ、前記プロモーター配列は、対象内のがん細胞内で前記コードされたTRIM16の発現を誘導可能である、請求項1の治療用組成物。
【請求項7】
前記がんが膵臓がん、膀胱がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、肝細胞がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、メラノーマ、神経内分泌がん、CNSがん、脳腫瘍、骨がん、及び軟部組織肉腫から選択される固形腫瘍がんである、請求項1の治療用組成物。
【請求項8】
前記がんが血液がんである、請求項1の治療用組成物。
【請求項9】
前記対象へのがんの免疫療法と併用で用いられる、請求項1の治療用組成物。
【請求項10】
前記免疫療法ががん特異的抗体又はその機能的断片、免疫チェックポイント阻害剤、養子細胞療法、又はCAR T細胞療法を含む、請求項9の治療用組成物。
【請求項11】
前記対象がヒトである、請求項1の治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2018年2月2日に出願された米国仮出願第62/625623号の利益を主張するものであり、その内容の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関するステイトメント
本願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は68142_Seq_final_2019-01-31.txtである。このテキストファイルは29KBであり、2019年1月31日に作成され、本明細書の提出とともにEFS-Web経由で提出されている。
【0003】
政府ライセンス権に関するステイトメント
本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)から与えられたグラント番号R01 AI118916の下で政府の支援を受けて行われたものである。政府は本発明について一定の権利を有している。
【背景技術】
【0004】
がんは、細胞が細胞周期を制御する能力を喪失し、異常で制御不能な細胞増殖をもたらすことによって特徴付けられる。形質転換された細胞は、しばしば、健康な細胞内でプログラム細胞死(PCD)を誘発する典型的なシグナルに反応するだけでなく、その分裂と成長を制御する能力を失ってしまう。がんを治療する従来の戦略には、がん組織(例えば、腫瘍)を除去するための手術及び体内のがん細胞に主に影響を及ぼす毒性組成物の投与を含む。がん細胞を攻撃するために、対象の免疫系の組成物及び/又はシグナル伝達経路を利用する免疫療法の開発において、大きな進歩がなされてきた。このような治療法には、例えば、毒性ペイロードを含むがん特異的抗体の投与、がん細胞に対する宿主反応をブロック又は阻止するがん細胞を阻止するチェックポイント阻害剤の投与、及びがん細胞に対する宿主免疫応答を特異的に開始及び標的化するために改変された免疫細胞を使用するCAR Tアプローチを含む養子細胞療法が含まれる。
【0005】
しかし、抗がん剤治療の進歩にもかかわらず、毒性のある副作用、がん細胞の抵抗性、病気の再発、多くの治療法が手頃ではなくアクセスしにくいことなどの問題が残っている。そのため、オフサイト毒性が最小限の細胞の死滅を促進させるがん治療法が求められている。さらに、医療へのアクセス性を確保し、付随するコストを削減するために、多くのタイプのがんに広く適用することができ、ケース・ツー・ケースでの個別化を必要としない治療法のニーズが残っている。本明細書の開示は、これら及び関連するニーズに対処するものである。
【発明の概要】
【0006】
概要は、以下の詳細な説明にさらに記載されている概念の一部を簡略化した形で紹介するために提供される。概要は、請求された主題の主要な特徴を特定することを意図したものではなく、また、請求された主題の範囲を決定するための補助として使用することを意図したものでもない。
【0007】
一側面において、本明細書の開示は、細胞内でトリパタイトモチーフ含有蛋白質16(TRIM16)活性を誘導する方法を提供する。この方法は、細胞に有効量の病原体関連分子パターン(PAMP)含有核酸分子を接触させる工程を含む。PAMP含有核酸分子は、末端三リン酸を含む5'-アーム領域、少なくとも8個の連続するウラシル残基を含むポリウラシルコア、及び少なくとも8個の核酸残基を含む3'-アーム領域を含む。3'-アーム領域の5'-最末端核酸残基(5' most nucleic acid residue)はウラシルではなく、3'-アーム領域は少なくとも30%がウラシル残基である。
【0008】
いくつかの実施形態では、ポリウラシルコアは、8~30個のウラシル残基からなる。いくつかの実施形態では、3'-アーム領域の5'-最末端核酸残基は、シトシン残基又はグアニン残基である。いくつかの実施形態では、3'-アーム領域は、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、又は90%がウラシル残基である。いくつかの実施形態では、3'-アーム領域は、少なくとも7個の連続するウラシル残基を含む。いくつかの実施形態では、5'-アーム領域は、末端三リン酸とポリウラシルコアとの間に配置された1つ以上の核酸残基をさらに含む。いくつかの実施形態では、5'-アーム領域は、末端三リン酸からなり、ここで、末端三リン酸は、ポリウラシルコアの5'-末端に直接連結されている。いくつかの実施形態では、末端三リン酸、5'-アーム領域の1つ以上の核酸残基、及びポリウラシルコアは、C型肝炎ウイルスにおいて一緒に天然に生じない。
【0009】
いくつかの実施形態では、PAMP含有核酸分子は、細胞内のTRIM16とのレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体(RLR)相互作用を誘導する。いくつかの実施形態では、TRIM16とのRLR相互作用は、細胞内での細胞死シグナル伝達を誘導する。いくつかの実施形態では、RLRはRIG-Iである。
【0010】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞にインターフェロン(IFN)を接触させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、細胞にプロモーター配列に作動的に連結されたTRIM16をコードする配列を含む核酸を接触させる工程を含み、プロモーター配列は、細胞内でコードされたTRIM16の発現を誘導可能である。いくつかの実施形態では、コードされたTRIM16は、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、TRIM16活性はプログラム細胞死の誘導を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、細胞はがん細胞である。いくつかの実施形態では、がん細胞は固形腫瘍がん細胞である。いくつかの実施形態では、がん細胞は膵臓がん、膀胱がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、肝細胞がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、メラノーマ、神経内分泌がん、CNSがん、脳腫瘍、骨がん、及び軟部組織肉腫から選択される固形腫瘍がん細胞である。いくつかの実施形態では、がん細胞は血液がん細胞である。
【0013】
いくつかの実施形態では、細胞は、有効量のPAMP含有核酸分子とインビトロで接触する。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物の対象において、インビボで核酸分子を含むPAMPの有効量と接触する。いくつかの実施形態では、方法は、対象にがんの免疫療法を施す工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫療法は、がん特異的抗体又はその機能的断片、免疫チェックポイント阻害剤、及びCAR T細胞療法を含む養子細胞療法を含む。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0014】
別の態様において、本明細書の開示は、それを必要とする対象におけるがんの治療方法を提供する。この方法は、病原体関連分子パターン(PAMP)含有核酸分子を治療的有効量で対象に投与する工程を含む。PAMP含有核酸分子は、末端三リン酸を含む5'-アーム領域、少なくとも8個の連続するウラシル残基を含むポリウラシルコア、及び少なくとも8個の核酸残基を含む3'-アーム領域を含む。3'-アーム領域の5'-最末端核酸残基がウラシルではなく、3'-アーム領域は少なくとも30%がウラシル残基である。
【0015】
いくつかの実施形態では、ポリウラシルコアは、8~30個のウラシル残基からなる。いくつかの実施形態では、3'-アーム領域の5'-最末端核酸残基は、シトシン残基又はグアニン残基である。いくつかの実施形態では、3'-アーム領域は、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、又は90%がウラシル残基である。いくつかの実施形態では、3'-アーム領域は、少なくとも7個の連続するウラシル残基を含む。いくつかの実施形態では、5'-アーム領域は、末端三リン酸とポリウラシルコアとの間に配置された1つ以上の核酸残基をさらに含む。いくつかの実施形態では、5'-アーム領域は、末端三リン酸からなり、末端三リン酸は、ポリウラシルコアの5'-末端に直接連結されている。いくつかの実施形態では、末端三リン酸塩、5'-アーム領域の1つ以上の核酸残基、及びポリウラシルコアは、C型肝炎ウイルスにおいて一緒に天然に生じない。
【0016】
いくつかの実施形態では、PAMP含有核酸分子は、対象のがん細胞内でTRIM16とのレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体(RLR)相互作用を誘導する。いくつかの実施形態では、TRIM16とのRLR相互作用は、がん細胞における細胞死シグナル伝達を誘導する。いくつかの実施形態では、RLRはRIG-Iである。
【0017】
いくつかの実施形態では、方法は、有効量のインターフェロン(IFN)を対象に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、プロモーター配列に作動的に連結されたTRIM16をコードする配列を含む核酸を対象に投与する工程をさらに含み、プロモーター配列は、対象内のがん細胞内でコードされたTRIM16の発現を誘導可能である。
【0018】
いくつかの実施形態では、がんは、膵臓がん、膀胱がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、肝細胞がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、メラノーマ、神経内分泌がん、CNSがん、脳腫瘍、骨がん、及び軟部組織肉腫から選択される固形腫瘍がんであるである。いくつかの実施形態では、がんは血液がんである。
【0019】
いくつかの実施形態では、方法は、対象にがんの免疫療法を施す工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫療法は、がん特異的抗体又はその機能的断片、免疫チェックポイント阻害剤、及びCAR T細胞療法を含む養子細胞療法を含む。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0020】
別の側面において、本明細書の開示は、本明細書に記載の病原体関連分子パターン(PAMP)含有核酸分子及びインターフェロン(IFN)の組み合わせを含む治療用組成物を提供する。いくつかの実施形態では、IFNは1型IFNである。いくつかの実施形態では、IFNはPEG化IFNである。いくつかの実施形態では、IFNはIFNラムダである。いくつかの実施形態では、組成物は、プロモーターに作動可能に連結されたTRIM16をコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、リポソーム中に製剤化される。
【0021】
別の側面において、本明細書の開示は、本明細書に記載の病原体関連分子パターン(PAMP)含有核酸分子、及びプロモーターに作動可能に連結されたTRIM16をコードする核酸の組み合わせを含む治療用組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、インターフェロン(IFN)をさらに含む。いくつかの実施形態では、IFNは1型IFNである。いくつかの実施形態では、IFNはPEG化IFNである。いくつかの実施形態では、組成物はリポソーム中に製剤化される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の前述の態様及び付随する利点の多くは、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することにより、それらがよりよく理解されるにつれて、より容易に認識され得る。
図1A-1D】図1A~1Dは、PAMP RNAが、用量依存的に、但し異なる用量範囲で、自然免疫シグナル伝達及びカスパーゼ活性を誘導することを示す。図1Aは、HCV PAMP RNAの全用量でのヒト肝細胞カルシノーマ(Huh7)細胞における自然免疫シグナル伝達の用量依存的活性化、及びアポトーシスの用量依存的誘導を示すウエスタンブロットである。図1Bは、カスパーゼ活性の活性化に対応する細胞死の誘導を示す細胞死分析をグラフ化したものである。棒グラフは、20時間後の細胞死の割合を示す。図1Cは、自然免疫シグナル伝達及びカスパーゼ活性化のPAMP RNA誘導活性化の弁別閾値を示すウエスタンブロットである。図1Dは、閾値200ngまでの細胞死誘導における用量依存的な増加を示す細胞死分析をグラフ化したものである。棒グラフは、20時間後の細胞死の割合を示す。
図2A-2C】図2A~2Cは、HCV PAMP RNAによるアポトーシス誘導がRIG-Iに依存し、古典的なカスパーゼ依存性経路を介して活性化されることを示している。図2Aは、RIG-Iをノックアウトすると、HCV PAMP RNAによるアポトーシスの誘導がレスキューされることを示している(図2A-1)。アポトーシスは、RIG-I依存性のカスパーゼ活性化によって誘導され、アポトーシスは、パン-カスパーゼ阻害化合物であるzVADで処理することにより阻害される(図2A-2)。mockと比較して、* P < 0.05及び**** P < 0.0001。図2Bは、zVADでの処置がHCV PAMP RNA誘導アポトーシスをレスキューするが、自然免疫応答の活性化を変化させないことを示すウエスタンブロットである。図2Cは、RIG-Iの非存在が、HCV PAMP RNAに応答して、p53依存性プロアポトーシス遺伝子NOXA及びPUMAの転写活性化を阻害することを図示している。
図3A-3C】図3A~3Cは、タイプIFN経路が、RIG-I媒介アポトーシス誘導において役割を果たすことを示している。図3Aは、タイプIFN受容体鎖であるIFNAR1のノックダウンが、RIG-I媒介アポトーシス誘導を部分的に阻害することを示している。図3Bは、自然免疫応答の誘導がIFNAR及びRIG-I KO細胞の両方で障害されていることを示すウエスタンブロットである。図3Cは、ワクシニアウイルスによってコードされるIFNARシグナル伝達の精製蛋白質阻害剤であるB18RでタイプI IFNシグナル伝達をブロックすることが、RIG-I媒介アポトーシス誘導の障害につながることを示している(左)。ウエスタンブロットは、B18RによるタイプI IFNシグナル伝達の遮断を示す(右)。Huh7 + PAMPと比較して、* P < 0.05。
図4A-4E】図4A~4Eは、TRIM16がRIG-Iの新規な相互作用物質であることを示す。図4Aは、センダイウイルスによる活性化後にRIG-Iに結合する蛋白質を同定するためのワークフローを模式的に示す。図4Bは、RIG-IのN末端がTRIM16への結合に必要であることを示すウエスタンブロットを示す。図4Cは、RIG-IのCARDドメインがTRIM16への結合に必要かつ十分であることを示すウエスタンブロットを示す。図4Dは、TRIM16のN末端B-BoxドメインがRIG-Iへの結合に必要かつ十分であることを示すウエスタンブロットを示す。*は非特異的バンドを示す。図4Bは、RIG-IとTRIM16との間の相互作用の要約を描いた作画である。
図5A-5D】図5A~5Dは、TRIM16が宿主の自然免疫応答に関与しないことを示す。図5Aは、TRIM16のノックアウトがPAMP媒介自然免疫応答に影響を及ぼさないことを示すウエスタンブロットである。図5Bは、対照的に、TRIM25のノックアウトはPAMP媒介自然免疫応答を破棄することを示すウエスタンブロットである。左のパネルセットは、対照細胞(EV)はPAMPに反応するが、TRM25 KO細胞はPAMPに反応しないウエスタンブロットを示す。図5B、右パネルは、TRIM25 KO細胞におけるPAMPシグナル伝達の損失を描いたグラフを示す。図5Cは、TRIM16が、構成的に活性なN-RIGによって誘導されるRIG-I-媒介自然免疫応答において役割を持たないことを示すウエスタンブロットである。図5Dは、TRIM16がセンダイウイルス誘導自然免疫応答において役割を持たないことを示すウエスタンブロットである。
図6A-6B】図6A及び6Bは、TRIM16がRIG-I媒介アポトーシス誘導に関与し、TRIM25が関与していないことを示している。図6Aは、TRIM16のノックアウトがHCV PAMP RNAによるアポトーシスの誘導を損なうことを示す。EV + PAMPと比較して、* P < 0.05。対照的に、図6Bは、TRIM25のノックアウトがアポトーシスの誘導に有意な影響を及ぼさないことを示している。
図7A-7B】図7A及び7Bは、PAMP RNA処理が、HepG2(図7A)及びHuh7(図7B)肝細胞カルシノーマ細胞のオンコリティック破壊を伴うが、初代肝細胞(図7B)には効果がないことを示している。細胞を、指示された量のPAMP RNA又はxRNA(ネガティブ対照)で処理し、透過性/死滅性又は死細胞をマーキングするSytoxグリーン色素アップテイクをモニターした。データは、20時間のタイムコースにわたって死細胞の数としてプロットされている。PAMP処理は、腫瘍細胞(HepG2及びHuh7細胞はヒトカルシノーマ由来細胞である)のオンコリティック破壊を特異的に誘導するが、正常な非がん細胞(ヒト初代肝細胞)のオンコリティック破壊は誘導しない。
【発明の詳細な説明】
【0023】
本明細書の開示は、RIG-I様受容体(RLR)シグナル伝達を誘導することにより、自然免疫応答を誘発できるだけでなく、がん細胞のアポトーシスを選択的に誘導できることを明らかにした研究に基づくものである。本研究は、がんと闘うための新たな治療戦略を提示するものである。
【0024】
自然免疫は、感染症に対する体の最初の防御ラインである。自然免疫応答はまた、病気の原因となる病原体を排除するための強力で耐久性のある免疫応答のために、効果的な適応免疫と免疫記憶をプログラミングするためにも不可欠である。ウイルス感染に対する自然免疫応答の重要な構成要素は、インターフェロン制御因子(IRF)3の活性化と1型インターフェロン(IFN)の誘導である。IRF3は抗ウイルス遺伝子の発現を誘導し、IFNも誘導する。抗ウイルス遺伝子は感染細胞内でのウイルス複製を抑制することができ、一方、IFNは抗ウイルス及び免疫調節活性を有する数百のインターフェロン刺激遺伝子(ISG)の発現を介して、感染細胞と隣接するバイスタンダー細胞の両方でのウイルス複製の抑制を指示する。ウイルス感染のIFN抑制に加えて、ウイルス感染細胞のプログラム死は、ウイルスの拡散を防ぐ役割を果たすことができる。このように、IRF3の作用、IFNの作用、及び細胞死シグナルの組み合わせは、未定義のメカニズムを介して、相乗的なウイルス制御プログラムを付与する。本明細書の開示は、IFNと細胞死シグナル伝達との間の相互作用を測定するための調査に基づいている。この取り組みにより、IFNと細胞死応答の間のリンクが、腫瘍成長を制御するための治療戦略に活用できることを実証した。
【0025】
IRF活性化及びIFNの誘導は、Toll様受容体(TLR)、RIG-I様受容体(RLR)、Nod様受容体(NLR)又はサイクリックGMP-AMPシンターゼ(cGAS)/インターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)を含む細胞パターン認識受容体(PRRs)による病原体関連分子パターン(PAMPs)の認識によって、ウイルス感染の開始時に誘発される。PRRsは、ウイルスPAMPs又はPAMP産物を検出して、インターフェロン制御因子(IRF)3/7及び核因子カッパB(NF-κB)を介して最終的に転写機構を活性化する細胞内シグナル伝達カスケードを誘発し、自然免疫活性化を誘導する。特にRNAウイルスは、PAMP RNAモチーフを認識して結合する細胞質RNAヘリカーゼであるRLRsの作用によって大部分が感知される。RIG-Iは、MDA5及びLPP2を含むRLRファミリーのチャーターメンバーである。RIG-Iは、5'三リン酸(5'ppp)及びショートdsRNA構造モチーフ及び/又はRNA分子を非自己としてマークするポリウリジンモチーフを含むRNAを認識する。RIG-I蛋白質構造は、中央に位置するDexH-ボックスヘリカーゼドメイン、N末端に位置する2つのカスパーゼリクルートメントドメイン(CARDs)、及びリガンド結合が抗ウイルス防御を駆動するシグナルオン状態のその変化したコンフォメーションにつながるまで、分子を閉じたシグナルオフ状態に保持することによってシグナル伝達を制御するC末端リプレッサードメインを有する。PAMPモチーフは、ポリウリジン及び一本鎖RNA構造によって特徴づけられるC型肝炎ウイルス(HCV)RNA内でのRIG-I認識及び結合のために以前に特徴づけられた。細胞送達のために製剤化された場合、5'pppを含むこのモチーフの合成修飾(PAMP-RNAと呼ばれる)は、RIG-Iに結合してRIG-Iシグナル伝達を誘導する強力かつ特異的なRIG-Iアゴニストである。PAMP RNAは、RIG-I媒介自然免疫作用を誘導し、ウイルス感染を制御するための抗ウイルス及び免疫増強作用を提供する。
【0026】
PAMP-RNAが認識され結合すると、RIG-Iは、IRF3、IRF7、NF-κB転写因子などの潜在的転写因子の下流活性化のためのミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達(MAVS)蛋白質へのRIG-I結合を可能にするシグナル伝達補因子との相互作用を促進する構造変化を受け、それらの核への移動と転写プログラムの誘導を引き起こす。RIG-Iシグナル伝達経路は、TRAF3、TRAF2、TRAF6、TANK、SIKE、NEMO/IKK、FADD、RIP1、HDAC6、TRADD、カスパーゼ8/10、及びSTING/MITA/MPYSを含む様々なRIG-I又はMAVS相互作用パートナー、並びにRNF125、ISG15、DAK、Atg12-Atg5、NLRX1、カスパーゼ1、及びいくつかの脱ユビキチン化酵素、アセチル化酵素、プロテインキナーゼ、及びプロテインホスファターゼなどのネガティブシグナル伝達制御因子によって調節される。また、RIG-Iシグナル伝達は、RIG-Iのユビキチン化又は遊離ユビキチンとの相互作用、及び可逆的なリン酸化及びアセチル化を介しても支配されることが研究により示されている。
【0027】
蛋白質のトリパタイトモチーフ(TRIM)ファミリーは、E3ユビキチンリガーゼ活性、及び抗ウイルス免疫、自己免疫、がんを含む多様な生物学的機能を持つ70以上のファミリーメンバーから構成されている。TRIMファミリーメンバーは、E2結合酵素を認識する遺伝子(RING)ドメイン、いくつかのメンバーにおける自己組織化を媒介する少なくとも1つのB-Boxドメイン、及びTRIMのダイマー化に不可欠なコイルド-コイル(CC)ドメインを含む保存配列を共有している。メンバーは、特異的基質相互作用を媒介する可変C末端ドメインを有する。多くのTRIMファミリーメンバーは、TLR及びRLRシグナル伝達経路を制御することが知られている。ファミリーメンバーTRIM25は、露出したRIG-I CARDドメインがTRIM25のC末端SPRYドメインと結合したときに、RIG-IのK63-ポリユビキチン化によってRIG-Iシグナルを制御する。RIG-Iのポリユビキチン化は、MAVSとの相互作用とそれに続く下流へのシグナル伝達を促進する。このことから、TRIM25はRIG-I自然免疫活性化の重要な補因子として特定された。RIG-Iと他のTRIMファミリーメンバーとの相互作用は明らかにされていない。
【0028】
これまでの研究では、RIG-Iの活性化が様々なメカニズムで細胞死を誘導することが示されている。RLRシグナルは、アポトーシス制御に必須のBcl-2ファミリーメンバーであるPumaとNoxaの誘導を介して、プログラム細胞死を誘発できる。別の研究シリーズは、アポトーシスのRLR誘導性IRF3媒介経路(RIPA)を説明している。この経路は、プロアポトーシス蛋白質BAXと結合し、それがミトコンドリアに移動し、チトクロムCの放出とその結果としてのカスパーゼ活性化を誘発するように誘導する、RLRシグナル伝達経路によるIRF3の活性化を必要とする。興味深いことに、RIPAはIRF3の転写活性とは独立しており、TRAF2とTRAF6に依存するメカニズムによってユビキチン化複合体LUBACにリクルートされた後のIRF3のユビキチン化に依存している。また、RIG-Iの活性化は、RIG-I CARDドメインとインフラマソームコンポーネントとの相互作用により炎症細胞誘発性パイロトーシスを誘発でき、カスパーゼ-1を活性化し、プロ炎症性サイトカインIL-1β及びIL-18を放出する。従って、RIG-IへのPAMP認識がプログラム細胞死を誘発することは明らかであるが、RIG-Iの活性化が自然免疫シグナルと細胞死のどちらにつながるかを決定するメカニズムは、現在のところわかっていない。
【0029】
以下に詳述するように、本研究では、RIG-I誘導細胞死の原因となる分子決定因子を明らかにするために、RIG-I誘導細胞死シグナル伝達の系統的研究の中で、PAMP-RNAの細胞死誘導能力を取り上げた。PAMP-RNA用量滴定実験では、RIG-I誘発細胞死と自然免疫活性化のトリガーとなる閾値用量を定義した。RNA-PAMPはRIG-I及びカスパーゼ依存性シグナル伝達を介して細胞死を誘導し、それはIFN処理によって増強された。プロテオミクスに基づいたスクリーニングを用いて、新規のRIG-I結合パートナーであるTRIM16が、PAMP-RNA及びRIG-I誘導細胞死に必須であることが明らかになった。さらに、TRIM16はRIG-I CARDに結合し、PAMP-RNAに応答して細胞死シグナルを誘導することが示された。このように、TRIM16は新規なPAMP感受性細胞死経路を特徴付けるRIG-Iシグナルのコファクターであることが示された。このことは、RLRシグナルががん細胞に特異的に細胞死を誘導する新しい治療標的であることを示す。
【0030】
前述の通り、本明細書の開示の一側面は、細胞内のトリパタイトモチーフ含有蛋白質16(TRIM16)活性を誘導する方法を提供する。いくつかの実施形態では、TRIM16活性は、細胞に有効量のレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体活性化剤を接触させることによって誘導される。いくつかの実施形態では、RLR活性化剤は、病原体関連分子パターン(PAMP)を含む核酸分子である。従って、そのような実施形態では、方法は、細胞に有効量のPAMP含有核酸分子を接触させる工程を含む。また、PAMP含有核酸分子は、典型的には、本明細書において核酸PAMPと呼ばれ得る。本明細書で使用されるように、PAMPは、病原体関連分子パターン、即ち、核酸分子の構造/配列中のパターンであり、それは、細胞内でのRLRの活性化をもたらすRLRによって認識される。いくつかの実施形態では、RLRは、RIG-Iである。本明細書の開示に包含される例示的なPAMPs及びPAMP含有核酸分子は、U.S. Pub. Nos. 2015/0017207及び2018/0104325に開示されており、これらは自然免疫応答シグナル伝達のPAMP誘導を扱っており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書の開示に包含されるPAMP含有核酸の要素及び例示的な実施形態はここで取り上げられる。
【0031】
予備的事項として、本明細書で使用される用語「核酸」は、モノマー単位のポリマー又は「残基」を指す。核酸のモノマーサブユニット又は残基は、それぞれ、窒素塩基(即ち、ヌクレオベース)、5炭糖、及びリン酸基を含む。各残基の同一性は、典型的には、各残基の核酸塩基(又は窒素塩基)構造の同一性を参照して本明細書に示される。カノニカル核酸塩基としては、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)(RNAにおいてチミン(T)残基の代わりに)、及びシトシン(C)を含む。しかしながら、本明細書に開示される核酸は、当技術分野でよく知られているように、任意の修飾ヌクレオベース、ヌクレオベースアナログ、及び/又は非カノニカルヌクレオベースを含むことができる。核酸モノマー又は残基の修飾は、非カノニカルサブユニット構造をもたらす核酸モノマー又は残基の構造における任意の化学変化を包含する。そのような化学変化は、例えば、エピジェネティック修飾(例えば、ゲノムDNA又はRNAに対する)、又は放射線、化学的、又は他の手段に起因する損傷に起因し得る。修飾に起因し得る非カノニカルサブユニットの例示的かつ非限定的な例としては、ウラシル(DNA用)、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ホルメチルシトシン、5-カルボキシシトシンb-グルコシル-5-ヒドロキシ-メチルシトシン、8-オキソグアニン、2-アミノ-アデノシン、2-アミノ-デオキシアデノシン、2-チオチミジン、ピロロ-ピリミジン、2-チオシチジン、又はアベーシックリージョンを含む修飾に起因し得る。アベーシックリージョンは、デオキシリボース骨格に沿った位置にあるが、塩基を欠く。天然ヌクレオチドの既知のアナログは、ペプチド核酸(PNAs)やホスホロチオエートDNAなど、天然に存在するヌクレオチドと同様の方法で核酸にハイブリダイズする。
【0032】
核酸の種類によって、核酸が結合している5炭糖は異なることがある。例えば、糖は、DNAではデオキシリボースであり、RNAではリボースである。また、本明細書のいくつかの実施形態では、核酸残基はヌクレオシド構造に関して、アデノシン、グアノシン、5-メチルウリジン、ウリジン、及びシチジンなどを参照できる。さらに、ヌクレオシドの代替的な命名法はまた、5炭糖の種類を推論するために、ヌクレオベースの前に「リボ」又は「デオキシロボ」接頭辞を示すことを含む。例えば、本明細書で時折使用される「リボシトシン」は、その残基におけるRNA分子中のリボース糖の存在を示すので、シチジン残基に相当する。核酸ポリマーは、デオキシリボヌクレオチド(DNA)ポリマー、mRNAを含むリボヌクレオチド(RNA)ポリマーであるか、又はそれらを含む。また、核酸はPNAポリマー、又は本明細書に記載されたポリマータイプのいずれかの組み合わせ(例えば、異なる糖を有する残基を含む)であるか、又はそれらを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、PAMP含有核酸は合成である。この文脈では、「合成」という用語は、核酸の非天然の性質を指す。そのような核酸は、標準的な合成技術を用いてデノボで合成できる。あるいは、核酸PAMPsは、当該技術分野で周知の組換え技術を用いて、天然に存在する病原体配列から生成されるか、又は由来できる。いくつかの実施形態では、合成核酸PAMPコンストラクトの配列は、天然に生じない。
【0034】
いくつかの実施形態では、PAMP含有核酸はRNAコンストラクトである。これらのいくつかの実施形態において、PAMP含有核酸は、HCVポリU/UC領域に由来するか、又はその配列を反映しており、この文脈では、典型的には、ポリU/UC PAMP RNAコンストラクトと呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、ポリU/UC PAMP RNAコンストラクトは合成である。
【0035】
本明細書の開示のPAMP含有核酸は、典型的には、(a)末端三リン酸を含む5'-アーム領域、(b)ポリウラシルコア(ポリUコアとも呼ばれる)、及び(c)3'-アーム領域を含む。一実施形態では、3つの領域(a、b、及びc)は、単一核酸ポリマーマクロ分子内で共有結合で連結している。共有結合は、直接的(間に介在するリンカー配列なし)又は間接的(間に介在するリンカー配列あり)であり得る。一実施形態では、5'-アーム領域は、ポリUコアの5'-末端に共有結合で連結している。一実施形態では、3'-アーム領域は、ポリUコアの3'-アーム領域に共有結合で連結している。ポリマーは、一本鎖又は二本鎖であり得、又は一本鎖部分と二本鎖部分の組み合わせで示され得る。
【0036】
一実施形態では、ポリUコアは、少なくとも8個の連続するウラシル残基を含む。さらなる実施形態では、ポリUコアは、8~30個の連続するウラシル残基(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の連続するウラシル残基)を含む。一実施形態では、ポリUコアは、8個超の連続するウラシル残基を含む。一実施形態では、ポリUコアは、12個以上の連続するウラシル残基を含む。いくつかの実施形態では、ポリUコアは、複数の連続するウラシル残基、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の連続するウラシル残基からなる。
【0037】
一実施形態では、3'-アーム領域は、ウラシル残基ではない5'-最末端核酸残基を含む。代わりに、3'-アーム領域の5'-最末端核酸残基は、アデニン残基、グアニン残基、又はシトシン残基、又は任意の非カノニカル残基であり得る。一実施形態では、3'-アーム領域の5'-最末端核酸残基は、シトシン残基又はグアニン残基である。
【0038】
一実施形態では、3'-アーム領域のヌクレオチド組成物は、少なくとも約40%がウラシル残基である。いくつかの実施形態では、3'-アーム領域は、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%がウラシル残基である。一実施形態では、3'-アーム領域は、1つ以上のシトシン残基がその間に散在している連続したウラシル残基の複数のショートストレッチ(例えば、長さが約2~約15ヌクレオチド)を含む。一実施形態では、3'-アーム領域は、合成PAMP含有核酸分子のポリUコアの長さを超えない連続したウラシル残基のストレッチを含む。一実施形態では、3'-アーム領域は、合成PAMP含有核酸分子のポリUコアの長さを超える連続したウラシル残基のストレッチを含まない。いくつかの実施形態では、3'-アーム領域は、少なくとも7個の連続するウラシル残基(例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、又は29個の連続するウラシル残基)を含む。
【0039】
最小では、5'-アーム領域は、末端三リン酸(ppp)部位からなる。そのような実施形態では、三リン酸塩は、合成PAMP含有核酸分子の5'-末端にあり、「5'-ppp」として表すことができる。さらなる実施形態では、末端三リン酸は、ポリUコア配列の5'-末端に直接連結されている。別の実施形態では、5'-アーム領域は、5'-末端三リン酸及び1つ以上の追加の核酸残基を含み、その配列は3'-末端で終結する。本実施形態の5'-アーム領域の1つ以上の追加の核酸残基は、末端三リン酸及びポリUコアの5'-最末端ウラシル残基の間に配置される。当業者は、5'-アーム領域の1つ以上の追加の核酸残基は、任意の数の核酸残基であり得、制限なく任意の配列で示し得ることを容易に理解し得る。5'-アーム領域における1つ以上の追加の核酸残基の配列は、PAMP含有核酸分子の機能性に影響を与えない。例えば、U.S. Pub. Nos. 2015/0017207及び2018/0104325に記載されているように、5'-三リン酸(HCV X領域など)を含む非刺激性核酸へのポリUコア領域の付加は、自然免疫系シグナル伝達のための刺激特性を与える。一実施形態では、5'-アーム領域の1つ以上の追加の核酸残基の配列は、HCV株のポリU/UC領域のポリUコアに対して「上流」または5'に天然に生じる、天然に生じるHCVゲノム配列の5'-末端部分全体からならない。別の言い方をすれば、この実施形態では、合成PAMP含有核酸分子全体は、5'三リン酸、コーディング領域全体、及び非翻訳3'ポリU/UC領域を完全に備えた、天然に生じるHCVゲノムではない。従って、この実施形態では、5'-アーム領域、5'-アーム領域の1つ以上の核酸残基、及びポリウラシルコアは、HCVゲノム中に一緒に天然に生じない。しかしながら、本実施形態では、5'-アーム領域の1つ以上の核酸残基は、5'-アーム領域とポリウラシルコアとの間に存在する天然に生じる配列全体のサブフラグメントを含み得るか、又はからなり得る。あるいは、本実施形態では、5'-アーム領域の1つ以上の核酸残基は、5'-末端とポリウラシルコアとの間に存在する天然に生じるHCVゲノム配列の一部又は全体に加えて配列を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、PAMP含有核酸分子は、ポリペプチド又は干渉RNAコンストラクトなどの機能性遺伝子産物をコードする追加の核酸ドメインをさらに含む。追加の核酸ドメインは、そこに存在する1つ以上の追加の核酸残基の全体又は一部として、3'-アームドメインの一部であってもよい。別の実施形態では、追加の核酸ドメインは、末端三リン酸を含む5'-アーム領域、ポリウラシルコア、及び3'-アーム領域のいずれかの間に配置され得る。
【0041】
開示されたPAMP含有核酸が包含するPAMPの核酸配列の非限定的な例は、U.S. Pub. Nos. 2015/0017207及び2018/0104325(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されており、配列番号2~92として本明細書に記載されている。開示されたPAMP含有核酸は、本明細書に記載された配列のいずれかを含んでもよい。そのような例示的なPAMP含有核酸は、末端三リン酸(ppp)部位を有する、本明細書に記載されているような、PAMP含有分子の一般的な構造パラメータに従うであろうことが理解されるであろう。一実施形態では、PAMP含有分子は、以下の配列を含む。GGCCAUCCUGUUUUUUUCCCUUUUUUUUUUUCUCCUUUUUUUUUCCUCUUUUUUUCCUUUUCUUUCCUUU (配列番号)。別の実施形態では、PAMP含有核酸は、以下の配列を含む。GGCCAUUUUCUUUUUUUUUUCUCUUUUUUUUUUUUUUUUUUAUUUUCUUUAAU (配列番号)。繰り返しになるが、示された配列を有する例示的なPAMP含有核酸はまた、5'-末端三リン酸(ppp)部位を含む上記の特徴を有することが理解されるであろう。
【0042】
U.S. Pub. Nos. 2015/0017207及び2018/0104325に記載されているように、ポリウラシルコア配列を有するHCV由来のRNA PAMPsを有する核酸は、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体(RLR)シグナル伝達を誘発し得る。従って、いくつかの実施形態では、PAMP含有核酸分子は、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体(RLR)活性化を誘発できる。一実施形態では、RLRはRIG-Iである。当業者は、以下にさらに詳細に記載されるように、例えば、既知の下流のRLR制御遺伝子の転写をアッセイすることによって、RLRの活性化を容易に測定できるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、RLRの活性化は、IFN-β又はISG54発現の増加によって実証され得る。別の実施形態では、RLR活性化は、IRF3リン酸化の増加によって実証され得る。
【0043】
以下でより詳細に説明するように、プロテオミクス解析により、TRIM16を、細胞死シグナル伝達を特異的に導く重要なRLR結合パートナーとして同定した。従って、PAMPによって誘導されるRLR(例えば、RIG-I)シグナルは、プログラム細胞死につながるRLR-TRIM16相互作用を含む。従って、方法は、PAMP含有核酸分子が、細胞内のTRIM16とのレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体(RLR)相互作用を誘導する実施形態を包含する。例示的なTRIM16は、配列番号1に記載のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%の配列同一性を有する機能的バリアントを含む。機能的バリアントは、蛋白質のいかなる配列変異にもかかわらず、蛋白質がTRIM16の活性を保持していることを示す。例えば、EBBPとしても知られるTRIM16は、以前に、いくつかのがんにおける腫瘍進行の阻害を含む多くの生物学的プロセスに関与しているエストロゲン応答性遺伝子として同定され特徴づけられている。本明細書に開示される研究は、RLR(例えば、RIG-I)/TRIM16相互作用がプログラム細胞死シグナリングを誘導することを実証している。従って、誘導されるTRIM16活性は、最終的にプログラム細胞死をもたらし得る。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内にプログラム細胞死を誘導する工程を含む。いくつかの実施形態では、PAMP含有核酸分子を約80ng/ml以上の濃度で細胞に接触させて、細胞内でのプログラム細胞死の誘導をもたらす。
【0044】
従って、いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも約80ng/ml~約500ng/mlの濃度、例えば、100ng/ml~250ng/mlの濃度で、PAMP含有核酸分子を細胞に接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも約80ng/mL、約90ng/mL、約100ng/mL、約110ng/mL、約120ng/mL、約130ng/mL、約140ng/mL、約150ng/mL、約160ng/mL、約170ng/mL、約180ng/mL、約190ng/mL、約200ng/mL、約210ng/mL、約220ng/mL、約230ng/mL、約240ng/mL、約250ng/mL、約260ng/mL、約270ng/mL、約280ng/mL、約290ng/mL、約300ng/mL、約310ng/mL、約320ng/mL、約330ng/mL、約340ng/mL、約350ng/mL、約360ng/mL、約370ng/mL、約380ng/mL、約390ng/mL、約400ng/mL、約410ng/mL、約420ng/mL、約430ng/mL、約440ng/mL、約450ng/mL、約460ng/mL、約470ng/mL、約480ng/mL、約490ng/mL、及び約500ng/mLの濃度でPAMP含有核酸分子を細胞に接触させる工程を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、細胞にインターフェロン(IFN)を接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、IFNは1型IFNである。いくつかの実施形態では、IFNはPEG化IFNである。いくつかの実施形態では、IFNはIFNラムダである。
【0046】
いくつかの実施形態では、細胞は、約5~約1500ユニットのIFN/ml、例えば、約100~約1000ユニットのIFN/ml、例えば、約100~約500ユニットのIFN/ml、例えば、約200~約1000ユニットのIFN/ml、例えば、約300~約700ユニットのIFN/ml、例えば、約500~約1000ユニットのIFN/mlと接触する。例示的な用量のIFNは、約100ユニットのIFN/ml、約200ユニットのIFN/ml、約300ユニットのIFN/ml、約400ユニットのIFN/ml、約500ユニットのIFN/ml、約600ユニットのIFN/ml、約700ユニットのIFN/ml、約800ユニットのIFN/ml、約900ユニットのIFN/ml、約1000ユニットのIFN/ml、約1200ユニットのIFN/ml、及び約1500ユニットのIFN/mlを含む。本明細書において「ユニット」という用語の使用は、インターナショナルユニットを指す。
【0047】
TRIM16活性は、TRIM16をコードする核酸を細胞に提供することによっても促進され得るか、又はさらに増強され得る。上記のように、例示的なTRIM16蛋白質配列は、配列番号1に示されるか、又はそれに対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%の配列同一性を有する機能的バリアントである。従って、核酸は、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%の配列同一性を有する機能的バリアントをコードする任意の核酸であり得る。核酸は、プロモーター配列に作動的に連結されていてもよい。ここで、プロモーター配列は、細胞内でコードされたTRIM16の発現を誘導できる。
【0048】
用語「プロモーター」は、遺伝子及び/又はそのスプライスバリアントアイソフォームの転写(発現)を活性化できる制御ヌクレオチド配列を指す。プロモーターは、典型的には遺伝子の上流に位置しているが、遺伝子の近位の他の領域に位置していてもよく、あるいは遺伝子内に位置していてもよい。プロモーターは、典型的にはRNAポリメラーゼ及び1つ以上の転写因子の結合部位を含み、これらは転写複合体のアセンブリに参加する。本明細書で使用される「作動的に連結している」という用語は、プロモーターとコード核酸が、プロモーターが細胞の転写機構によってコード核酸の転写を活性化できるような様式で、互いに相対的に構成及び配置されていることを示す。プロモーターは、構成的又は誘導的であり得る。構成性プロモーターは、標的細胞の特性及び細胞質で利用可能な特定の転写因子に基づいて決定できる。様々なプロモーターあ当技術分野で公知であり、一般的に使用されているように、当業者は、目的に応じて適切なプロモーターを選択できる
【0049】
細胞は、TRIM16活性が所望される任意の細胞であり得る。いくつかの実施形態では、細胞はがん細胞である。がん細胞は、固形がん又は血液がん由来であり得る。
【0050】
代表的な固形腫瘍は、膵臓がん、膀胱がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、腎(renal (kidney))がん、肝細胞がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、メラノーマ、神経内分泌がん、CNSがん、脳腫瘍、骨がん、軟部組織肉腫である。代表的な血液がんには、白血病、リンパ腫、及びミエローマを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、インビトロで有効量のPAMP含有核酸分子と接触させるように実施できる。典型的には、1つ以上の細胞を適切な培地に維持する。PAMP含有核酸分子の量は、細胞の継続的な培養に適した担体中で、培地中の細胞に所望の濃度で投与される。
【0052】
他の実施形態では、方法は、TRIM16活性の誘導から利益を得るであろう疾患又は状態を有するヒト又は非ヒト哺乳動物の対象(例えば、別の霊長類、馬、犬、猫、マウス、ラット、モルモット、ウサギなど)において、インビボで実施できる。RLR(例えば、RIG-I)の十分なPAMPシグナル伝達を介したTRIM16の活性化がアポトーシスを導くことを考慮すると、本方法は、対象の疾患又は状態が、固形腫瘍がん又は血液がんなどのがんである場合に有利に実施される。本明細書の開示が包含する例示的ながんには、膵臓がん、膀胱がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、腎(renal (kidney))がん、肝細胞がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、メラノーマ、神経内分泌がん、CNSがん、脳腫瘍、骨がん、軟部組織肉腫、及びミエローマを含む、上記に記載されたがんを含む。これらのインビボの実施形態では、PAMP含有核酸の有効量は、特定の疾患(例えば、がん)に適した様式で対象に投与される。いくつかの実施形態では、本方法は併用療法の一側面であり、従って、例えば、がん特異的抗体又はその機能的フラグメント、免疫チェックポイント阻害剤、及びCAR T細胞療法を含む養子細胞療法などの免疫療法を対象に施す工程をさらに含む。
【0053】
従って、別の側面において、本明細書の開示は、それを必要としている対象におけるがんの治療方法を提供する。この方法は、治療的有効量の病原体関連分子パターン(PAMP)含有核酸分子を対象に投与する工程を含む。
【0054】
本明細書で使用される用語「治療」は、対象(例えば、ヒト又は非ヒト動物、例えば、別の霊長類、馬、犬、マウス、ラット、モルモット、ウサギなど)の疾患、障害、又は状態(例えば、上述のようながん)の医学的管理を指す。治療は、疾患又は状態(例えば、がん)の治療又は改善における成功の指標を包含することができ、これには、例えば、症状の軽減、寛解、減少、又は疾患又は状態を対象にとってより忍容性のあるものにすること、変性又は衰弱の速度を遅くすること、又は変性をより悪化しにくくすることなどの任意のパラメータを含む。具体的には、がんの文脈において、「治療」という用語は、治療を行わない場合と比較して、がんの成長速度を遅くするか抑制すること、又は再発の可能性を減少させることを包含できる。いくつかの実施形態では、治療は、患者において検出可能な程度のがん細胞死をもたらすことを包含する。治療又は症状の改善は、医師による検査の結果を含む客観的又は主観的パラメータに基づくことができる。従って、用語「治療する」とは、疾患又は状態(例えば、がん)に関連する症状又は状態の発生を緩和、又は阻止もしくは抑制するために、本明細書の開示の組成物を投与する工程を含む。用語「治療効果」とは、対象における疾患もしくは状態、疾患もしくは状態の症状、又は疾患もしくは状態の副作用の改善、減少、又は除去を指す。用語「治療的有効」とは、治療効果をもたらす組成物の量を指し、容易に決定できる。
【0055】
いくつかの実施形態では、PAMP含有核酸分子は、末端三リン酸を含む5'-アーム領域、少なくとも8個の連続するウラシル残基を含むポリウラシルコア、及び少なくとも8個の核酸残基を含む3'-アーム領域を含み、3'-アーム領域の5'-最末端核酸残基はウラシルではなく、且つ3'-アーム領域は少なくとも30%がウラシル残基である。上記で提供されるPAMP含有核酸分子の詳細な説明は、簡潔さのためにここでは繰り返されない。記載されているように、PAMP含有核酸分子は、対象のがん細胞内でTRIM16とのレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体(RLR)相互作用を誘導するために機能する。いくつかの実施形態では、RLRはRIG-Iである。TRIM16とのRLR相互作用は、対象のがん細胞内で細胞死シグナル伝達の誘導をもたらす。
【0056】
インターフェロン(IFN)がプログラム細胞死シグナル伝達と相乗的に相互作用して、細胞さらには腫瘍の破壊の増強をもたらすことが実証されている。実際、以下に記載される研究は、(RLR/TRIM16相互作用の刺激を介して)PAMP誘導細胞死が、IFN処置の添加によりさらに増強されるカスパーゼ依存性細胞死を誘導することを実証している。従って、いくつかの実施形態では、治療方法はさらに、有効量のインターフェロン(IFN)を対象に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、IFNは1型IFNである。いくつかの実施形態では、IFNはPEG化IFNである。いくつかの実施形態では、IFNはIFNラムダである。
【0057】
IFNは、当業者によって決定されるような任意の治療的有効量で投与できる。例示的な用量範囲は、約5~約1500ユニットのIFN/ml、例えば、約100~約1000ユニットのIFN/ml、例えば、約100~約500ユニットのIFN/ml、例えば、約200~約1000ユニットのIFN/ml、例えば、約300~約700ユニットのIFN/ml、及び約500~約1000ユニットのIFN/mlを含む。例示的な用量のIFNは、約100ユニットのIFN/ml、約150ユニットのIFN/ml、約200ユニットのIFN/ml、約250ユニットのIFN/ml、約300ユニットのIFN/ml、約350ユニットのIFN/ml、約400ユニットのIFN/ml、約450ユニットのIFN/ml、約500ユニットのIFN/ml、約550ユニットのIFN/ml、約550ユニットのIFN/ml、約600ユニットのIFN/ml、約650ユニットのIFN/ml、約700ユニットのIFN/ml、約750ユニットのIFN/ml、約800ユニットのIFN/ml、約850ユニットのIFN/ml、約900ユニットのIFN/ml、約950ユニットのIFN/ml、約1000ユニットのIFN/ml、約1200ユニットのIFN/ml、及び約1500ユニットのIFN/mlを含む。本明細書において「ユニット」という用語の使用は、インターナショナルユニットを指す。
【0058】
いくつかの実施形態では、方法は、プロモーター配列に作動的に連結されたTRIM16をコードする配列を含む核酸を対象に投与する工程をさらに含む。上述のように、核酸は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むTRIM16蛋白質、又はそれに対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%の配列同一性を有する機能的バリアントをコードできる。プロモーターは、がん細胞内でTRIMの発現を誘導するために作動可能であるようなものを選択できる。そのようなプロモーターは、当技術分野の従来の知識に従って、目的の標的がん細胞型において誘導的又は構成的に発現するように構成できる。核酸(及びプロモーター)は、がん細胞内でコード核酸の送達及び発現を容易にするために、適切なベクターに組み込むことができる。ベクターは、ウイルスベクター、環状核酸コンストラクト(例えば、プラスミド)、又はナノ粒子であり得る。様々なウイルスベクターが当技術分野で知られており、本明細書の開示に包含される。例えば、Machida, C. A. (ed.), Viral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, Humana Press, Totowa, New Jersey (2003)、Muzyczka, N., (ed.), Current Topics in Microbiology and Immunology: Viral Expression Vectors, Springer-Verlag, Berlin, Germany (2012)を参照(各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターである。AAVベクターの特定の実施形態は、AAV2.5セロタイプを含む。
【0059】
本発明の方法は、がん細胞が必要なTRIM16シグナル伝達経路を維持している限り、任意の形態のがん(例えば、固形腫瘍又は血液がん)を治療するのに有用であり得る。この側面によって包含される例示的ながんは上記に記載されており、膵臓がん、膀胱がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、腎(renal (kidney))がん、肝細胞がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、メラノーマ、神経内分泌がん、CNSがん、脳腫瘍、骨がん、軟部組織肉腫、及びミエローマを含むが、これらに限定されない。
【0060】
PAMP含有核酸の機能的効果が、細胞内でのプログラム細胞死シグナル伝達の誘導であることを考慮すると、本側面の方法は、他の抗がん療法との組み合わせに特に適用可能である。従って、いくつかの実施形態では、方法はさらに、抗がん治療薬を対象に投与する工程を含む。抗がん治療薬は、対象のがん細胞に対して治療効果が実証されている任意の毒素、低分子、大分子の治療薬であり得る。いくつかの実施形態では、方法は、例えば、がん特異的抗体又はその機能的フラグメント、免疫チェックポイント阻害剤、及びCAR T細胞療法を含む養子細胞療法などのがんに対する免疫療法を対象に施す工程をさらに含む。本明細書に開示のPAMP含有核酸は、IFN及び/又はTRIM16コード核酸を含む追加の抗がん治療薬と同時に又は別個に投与できる。
【0061】
別の態様において、本明細書の開示は、病原体関連分子パターン(PAMP)含有核酸分子と、追加の治療剤とを含む治療用組成物を提供する。いくつかの実施形態では、PAMP含有核酸分子は、末端三リン酸を含む5'-アーム領域、少なくとも8個の連続するウラシル残基を含むポリウラシルコア、及び少なくとも8個の核酸残基を含む3'-アーム領域を含み、3'-アーム領域の5'-最末端核酸残基はウラシルではなく、3'-アーム領域は少なくとも30%がウラシル残基を有する。上記で提供されるPAMP含有核酸分子のより詳細な説明は、簡潔さのためにここでは繰り返されない。記載されているように、PAMP含有核酸分子は、対象のがん細胞内でTRIM16とのレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体(RLR)相互作用を誘導するために機能する。いくつかの実施形態では、RLRはRIG-Iである。TRIM16とのRLR相互作用は、対象のがん細胞内で細胞死シグナル伝達の誘導をもたらす。
【0062】
一実施形態では、追加の治療剤は、上記でより詳細に説明したように、インターフェロン(IFN)であり得る。いくつかの実施形態では、IFNは1型IFNである。いくつかの実施形態では、IFNはPEG化IFNである。いくつかの実施形態では、IFNはIFNラムダである。一実施形態では、追加の治療剤は、プロモーター配列に作動的に連結されたTRIM16をコードする配列を含む核酸である。上述のように、核酸は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むTRIM16蛋白質、又はそれに対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%の配列同一性を有する機能的バリアントをコードできる。プロモーターは、がん細胞内でTRIMの発現を誘導するために作動可能であるようなものを選択できる。別の実施形態では、治療用組成物は、PAMP含有核酸、IFN、及びプロモーター配列に作動的に連結されたTRIM16をコードする核酸を含む。
【0063】
本明細書の開示は、対象(例えば、がんを有する哺乳動物対象)におけるインビボ治療設定への適用のための投与方法のために適切な様式で構成された治療用組成物の製剤を包含する。投与は、経口、非経口、髄腔内、嚢内、硬膜下、直腸、皮内、経皮、筋肉内、又は局所を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている任意の手順によって行うことができる。特定の実施形態では、投与は、腫瘍内である。送達を容易にするために、治療用組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む様々な組成物内で製剤化できる。「薬学的に許容される」とは、選択された担体、賦形剤又は希釈剤が、PAMP含有核酸分子及び任意の追加の治療剤の生物学的活性、又は組成物のレシピエントに悪影響を及ぼさないことを意味する。
【0064】
当技術分野で一般的な技術及び知識によれば、本明細書に開示のPAMP含有核酸、及びIFN、コード核酸及び/又は核酸を含むベクター、毒素、免疫療法化合物などを含む追加の治療剤は、任意の適切な治療的デリバリーシステム又は形態で製剤化できる。例示的な非限定的デリバリーシステムは、抗原の送達に有利な、例えば、粒子及び/又はマトリックスであり得るエマルジョン、マイクロ粒子、及びナノ粒子などの粒子製剤、及びリポソームなどを含むことができる。一実施形態では、明細書に開示のPAMP含有核酸及び追加の治療剤は、リポソームデリバリー形態中に製剤化される。リポソーム製剤の例示的な用途は、Yallapu, U., et al., Liposomal Formulations in Clinical Use: An Updated Review, Pharmaceutics 9(2):12 (2017)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
全般的な定義
本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、本明細書に開示された技術に熟練した者にとって同じ意味を有する。技術の定義及び用語について、実務者は、特に、Ausubel, F.M., et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York (2010), Coligan, J.E., et al. (eds.), Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York (2010), Mirzaei, H. and Carrasco, M. (eds.), Modern Proteomics - Sample Preparation, Analysis and Practical Applications in Advances in Experimental Medicine and Biology, Springer International Publishing, 2016, and Comai, L, et al., (eds.), Proteomic: Methods and Protocols in Methods in Molecular Biology, Springer International Publishing, 2017を参照。
【0066】
便宜上、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲で採用される特定の用語は、ここに提供される。定義は、特定の実施形態を説明することを助けるために提供され、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるため、請求された発明を限定することを意図していない。
【0067】
特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、代替物のみを参照することが明示的に示されているか、又は代替物が相互に排他的である場合を除き、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本明細書の開示は代替物のみ及び「及び/又は」を参照する定義を支持する。
【0068】
特許請求の範囲又は明細書中で、「含む」という言葉と一緒に使用される「a」及び「an」という言葉は、特に明記されていない限り、1つ以上のものを意味する。
【0069】
文脈から明らかに別の意味を要求されない限り、明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含むcomprise)」、「含む(comprising)」などの単語は、「含むが、限定されない」の意味で示される、排他的な意味とは対照的な包括的な意味又は網羅的な意味で解釈されるべきである。また、単数又は複数の数を使用する語は、それぞれ複数形及び単数形を含む。「約」の単語は、記載された参照番号の上又は下のマイナーバリエーションの範囲内の番号を示す。例えば、「約」という単語は、記載された参照番号の上及び/又は下に10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%の範囲内の数字を指すことができる。
【0070】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」又は「蛋白質」は、モノマーがアミド結合を介して一緒に結合したアミノ酸残基であるポリマーを指す。アミノ酸がアルファ-アミノ酸である場合、L-光学異性体又はD-光学異性体のいずれかを使用することができ、L-光学異性体が好ましい。本明細書で使用される用語ポリペプチド又は蛋白質は、任意のアミノ酸配列を包含し、糖蛋白質のような修飾された配列を含む。ポリペプチドという用語は、天然に生じる蛋白質だけでなく、組換え又は合成で生産された蛋白質もカバーすることを特に意図している。
【0071】
当業者であれば、配列中の単一アミノ酸又はアミノ酸の割合を変更、追加又は削除するペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質配列への個々の置換、欠失又は追加は、その変更がアミノ酸の化学的に類似したアミノ酸での置換をもたらす「保存的に修飾されたバリアント」であることを認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的アミノ酸置換表は、当技術分野の通常の当業者にはよく知られている。以下の6つのグループは、互いに保存的置換であると考えられるアミノ酸の例である。
(1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)
(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)
(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)
(4)アルギニン(R)、リシン(K)
(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、及び
(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
【0072】
配列同一性への言及は、蛋白質配列のような2つのポリマー配列の類似性の程度に向けられる。配列同一性の決定は、当業者であれば、受け入れられているアルゴリズム及び/又は技術を用いて容易に実施できる。配列同一性は、典型的には、2つの最適にアラインメントされた配列を比較ウィンドウにわたって比較することによって決定され、ここで、比較ウィンドウ内のペプチド又はポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントのための参照配列(追加又は欠失を含まない)と比較して、追加又は欠失(即ち、ギャップ)を含んでもよい。パーセンテージは、一致する位置の数を得るために、両方の配列において同一のアミノ酸残基又は核酸塩基が発生する位置の数を決定し、一致する位置の数を比較のウィンドウ内の位置の合計数で除し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。このような比較を行うために、BLAST N や BLAST Pなど、様々なソフトウェア駆動のアルゴリズムが利用可能である。
【0073】
本明細書に開示の方法及び組成物の製品のために使用できる、と一緒に使用できる、の調製に使用できる、又はである材料、組成物、及びコンポーネントが開示される。これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されている場合、これらの化合物のいかなる単一の組み合わせ及び順列への具体的な言及が明示的に開示されていなくても、様々な個々の組み合わせ及び集合的な組み合わせのそれぞれが具体的に企図されていることが理解されよう。この概念は、本明細書に開示の全ての側面に適用され、記載された方法の工程を含むが、これらに限定されない。従って、任意の前述の実施形態の特定の要素は、他の実施形態の要素と組み合わせたり、置換したりできる。例えば、実行可能な様々な追加工程がある場合、これらの追加工程の各々は、開示された方法の任意の特定の方法の工程又は方法の工程の組み合わせで実行可能であり、そのような組み合わせ又は組み合わせのサブセットの各々は、具体的に企図されており、開示されているとみなされるべきであることが理解される。さらに、本明細書に記載された実施形態は、本明細書の他の場所に記載されたもの、又は当技術分野で知られているものなど、任意の適切な材料を用いて実施できることが理解される。本明細書で引用された出版物及び引用された主題は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0074】
以下では、PAMP-RNAを用いたRLRシグナル伝達の誘導がプログラム細胞死を誘導し、がん特異的な文脈で応用できることを示した研究について説明する。
【0075】
イントロダクション
レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)は、ウイルスRNA中の病原体関連分子パターン(PAMP)と結合することで、細胞質性病原体認識受容体として機能する。ウイルスRNAのRIG-I認識のための分子シグネチャーは、RNAウイルス複製中に感染細胞の細胞質中に蓄積するウイルスRNA産物内に見られるポリウリジン(ポリ-U)リッチRNAモチーフ及びショート二本鎖(ds)RNAモチーフを含む、5'-三リン酸(5'ppp)を含む特異的なモチーフとして同定されている。本発明者は以前、C型肝炎ウイルス(HCV)RNA(PAMP-RNA)のポリ-Uモチーフに基づく合成5'ppp RNA RIG-Iリガンドを開発したが、これはRIG-Iによって特異的に認識、結合される。PAMP-RNAによるRIG-Iの活性化は、RIG-Iエフェクター機能を媒介する細胞内シグナル伝達カスケードを誘発し、自然免疫を誘導し、抗ウイルス治療及び免疫アジュバントアクションをもたらす。
【0076】
本研究では、驚くべきことに、PAMP-RNAによるRIG-Iの活性化がアポトーシス細胞死を誘導することを明らかにした。PAMP-RNA作用の用量範囲試験により、低用量のPAMP-RNAレベルはRIG-Iによる自然免疫活性化を誘発し、PAMP-RNAレベルの増加はRIG-Iの細胞死シグナルを媒介することが明らかになった。このことから、PAMP-RNAの感受性と作用の新しい細胞死経路が明らかになった。プロテオミクス解析により、RIG-Iシグナルを介したPAMP-RNAによって誘導される細胞死を特異的に誘導する重要なRIG-I結合パートナーとして、TRIM16を同定した。TRIM16は細胞死シグナル伝達には必須であったが、RIG-Iによる自然免疫活性化には必須ではなかった。さらに、TRIM16媒介細胞死は、I型インターフェロン(IFN)によってさらに増強された。この研究は、TRIM16がPAMP-RNA処理に応答した細胞死を誘導するRIG-I結合パートナーであることを示している。このように、PAMP-RNAシグナル伝達及びTRIM16/RIG-I/IFN軸は、がん治療への応用のための細胞死の新しい腫瘍抑制プログラムであることが示された。
【0077】
結果
HCV PAMP RNA誘導アポトーシスは用量依存性である
研究により、RIG-Iアゴニストが自然免疫シグナルの活性化とアポトーシスの両方を誘導できることがわかっている。これをPAMP-RNAで確認するために、用量滴定試験を行って、Huh7細胞における各生物学的事象を誘導するために必要なPAMP-RNAの量を評価した(図1A~1D)。興味深いことに、自然免疫シグナル伝達は、IRF3誘導性のISG56及びISG15の発現及びIFN依存性IFITM1の誘導によって証明されるように、10ng/ml以上の閾値で誘導され、一方、IncuCyte(R)分析でのPAMP-RNA誘導細胞死は100ng/mlの最小濃度で生じた。この滴定研究は、PAMP-RNAが200ng/mlで最高レベルの細胞死を誘導したことを示している(図1C及び1D)。従って、残りの研究では、RIG-I媒介アポトーシスを誘導するため、及びPAMP-RNAによる細胞死誘導のための最適濃度として200ng/mlを使用した。
【0078】
PAMP-RNAによるアポトーシス誘導はRIG-Iとカスパーゼに依存している
PAMP-RNAがRIG-I依存性シグナル伝達を駆動することを確認し、PAMP RNAによって誘導されるRIG-Iシグナル伝達_ENREF_27に対する細胞死応答におけるカスパーゼ活性化の役割を評価するために、HCV PAMPによって誘導される細胞死及びカスパーゼ活性の程度を、パンカスパーゼ阻害剤zVADによる処理あり又はなしの、RIG-Iノックダウン細胞及び空ベクター対照細胞において評価した。実際、RIG-Iノックアウト細胞におけるRIG-Iの欠損は、PAMP-RNA誘導細胞死を消失させ、一方で空ベクター対照細胞をPAMP-RNA処理前にzVAD処理すると、誘導された細胞死の頻度が減少した(図2A-1~2)。自然免疫シグナル伝達蛋白質発現のイムノブロット分析は、zVAD処理がPAMP-RNAによるISG56の誘導に影響を与えないことを示した。これは、カスパーゼの阻害がこれらの細胞内でPAMP-RNAによって誘発される自然免疫応答を阻害しないことを示している(図2B)。さらに、細胞におけるRIG-Iの損失は、RIG-I依存性アポトーシスの間に誘導されることが知られているp53依存性プロアポトーシス遺伝子NOXA及びPUMAの発現を減少させた(図3C)。従って、PAMP-RNAは、RIG-I及びカスパーゼ依存性プロセスを介して細胞死を駆動できる。
【0079】
I型IFN経路はPAMP-RNA媒介細胞死に関与する
細胞死のPAMP-RNAシグナル伝達に対するIFNの影響を測定するために、細胞死をHuh7対照細胞及びIFNAR又はRIG-Iを欠失した細胞で評価した。IFNARの欠損は、PAMP-RNAによって誘発される細胞死のRIG-I媒介誘導を部分的に阻害することが示された(図3A)。この知見は、タイプI IFNシグナル伝達の阻害剤B18Rで前処理したHuh7細胞におけるRIG-I媒介のアポトーシス誘導の部分的な障害によってさらに確認された(図3B)。
【0080】
TRIM16は新規なRIG-I結合因子である
PAMP-RNAによる細胞の自然免疫又は細胞死シグナル伝達に関与するRIG-Iの可能性のある補因子を同定するために、センダイウイルス(SeV)によるRIG-I活性化後のRIG-I結合蛋白質について、P85CH8細胞のプロテオミクススクリーニングを行った(図4A)。SeVは強力なRIG-I活性化剤であり、従って、この研究では、細胞培養物中のRIG-Iの強力で均一な活性化を提供するためのPAMP-RNAサロゲートとして使用した。細胞は、FLAGタグ付きRIG-Iコンストラクト又はFLAGコンストラクト対照でトランスフェクションし、模擬感染又はSeV感染させた。16時間後、FLAGアフィニティー精製によりRIG-IとRIG-I結合蛋白質を分離し、LC/MS-MSにより同定した。スクリーニングにより、OASLなどの自然免疫の既知のRIG-Iインタラクターを同定した。重要なことに、解析により、E3ユビキチンリガーゼであるTRIM16に対応する、FLAG-RIG-Iに結合する5つのユニークなペプチド配列が同定されたが、FLAGビーズ単独では同定されなかった。TRIM16がRIG-Iと相互作用することはこれまで知られていなかった。TRIM16とRIG-Iの状態は、RIG-I-FLAG及びTRIM16 V5コンストラクトを発現するHEK293細胞における共免疫沈降を用いて、結合パートナーであることを確認した(図4B)。RIG-IとTRIM16の相互作用に不可欠なドメインは、それぞれの蛋白質由来の共発現したトランケーション変異体の共免疫沈降解析により、さらにマッピングした。この解析により、RIG-ICARDドメイン(aa1-176)がRIG-IとTRIM16との会合に必要かつ十分であることが明らかになった(図4C)。同様に、TRIM16トランケーションとの相互免疫沈降により、TRIM16のB-BoxドメインがTRIM16とRIG-Iとの会合に必要かつ十分であることが明らかになった(図4D)。
【0081】
TRIM16の欠損はRIG-Iによる自然免疫応答の誘導に影響を与えない
自然免疫シグナル伝達におけるTRIM16の果たし得る役割を明らかにするために、TRIM16欠損のPAMP-RNA誘導自然免疫活性化への影響を評価した。TRIM16のCRISPR/cas9標的ノックアウトを用いて、Huh7細胞内でTRIM16の発現を枯渇させた。RIG-I又はTRIM25(RIG-Iシグナル伝達の正の調節因子)の発現をノックアウトするように設計されたHuh7細胞株とは対照的に、2つの異なるCRISPR/cas9ターゲティング配列からのHuh7 TRIM16 KO細胞株は、両方とも、RIG-I応答性遺伝子ISG56、ISG15、IFNβ、及びTNFαの誘導によって証明されるように、PAMP-RNAによるRIG-I自然免疫シグナル伝達の強い誘導を示した(図5A及び5B)。さらに、TRIM16の発現の喪失は、ドミナント活性型のRIG-I(N-RIG)の存在下、又はSeV感染後、RIG-I下流の自然シグナル伝達プログラムに影響を与えなかった(図5C及び5D)。この実験から、TRIM16はRIG-I誘導性宿主自然免疫シグナル伝達プロセスに関与していないことが明らかになった。
【0082】
TRIM16はRIG-I媒介アポトーシスに関与しTRIM25は関与しない
TRIM16がPAMP-RNAによって誘導されるRIG-I媒介細胞死に特異的に関与しているかどうかを測定するために、TRIM16欠損がPAMP-RNA誘導細胞死に及ぼす影響を評価した。TRIM16KO及びTRIM25 KO Huh7細胞をPAMP-RNA、カスパーゼ阻害剤(ZVAD)、又はその両方で処理し、リアルタイムイメージング細胞死アッセイで評価した。TRIM16又はZVAD処理の損失は、対照と比較して、PAMP-RNA誘導細胞死を抑制した(図6A)。対照的に、TRIM25発現の損失は、PAMP-RNA誘導細胞死の程度に影響を与えなかった(図6B)。この研究により、PAMP-RNAは新規なRIG-I結合パートナーであるTRIM16を介して、RIG-I媒介アポトーシス細胞死を特異的にシグナル伝達していることが明らかになった。
【0083】
PAMP-RNA媒介細胞死はがん細胞に特異的である
RLR(例えば、RIG-I)媒介プログラム細胞死シグナル伝達が、健康な細胞及びがん細胞に等しく影響を与えるかどうかを測定するために、PAMP RNAを、肝がん細胞株及び正常な初代ヒト肝細胞の両方にさらした。具体的には、HEPG2及びHuh7肝細胞がん細胞及び正常ヒト初代肝細胞を、増加する量のPAMP RNA又はxRNA(ネガティブ対照として使用)で処理し、透過性/死滅性又は死細胞をマーキングするSytoxグリーン染色アップテイクについて少なくとも24時間の経過をモニターした。PAMP処理により、腫瘍細胞(即ち、ヒトカルシノーマ由来の細胞であるHepG2細胞及びHuh7細胞)のオンコリティック破壊を特異的に誘導するが、正常で非がん性の一次ヒト肝細胞では誘導しないことが観察された。具体的には、図7A及び7Bは、PAMP RNA処理が、HepG2(図7A)及びHuh7(図7B)肝細胞カルシノーマ細胞のオンコリティック破壊を含むが、一次肝細胞(図7B)には効果がないことを示す。
【0084】
これは、健康な細胞が、RLR(例えば、RIG-I)を介したPAMP誘導プログラム細胞死シグナル伝達に抵抗性であることを示している。従って、がん細胞を特異的に標的にして破壊でき、一方で、健康な細胞のオフサイト毒性を最小化又は防止できる。
【0085】
考察
この研究は、TRIM16がPAMP-RNA/RIG-I経路における細胞死シグナル伝達のエフェクターであることを示している。これらのデータは、PAMP-RNAや他のRIG-IリガンドがRIG-Iを活性化してTRIM16への結合性を付与するというTRIM16の作用モデルを支持するものである。その結果、TRIM16は下流のカスパーゼの活性化を誘導し、アポトーシス細胞死を媒介する。RIG-I媒介細胞死の誘導が、自然免疫活性化のRIG-Iシグナル伝達の用量よりも高用量のPAMP-RNAで起こることは、感染から細胞を保護する自然免疫と、組織や生物を保護するために感染した細胞を削除するアポトーシスの相違するアクションを浮き彫りにしているようである。従って、細胞や組織の高用量PAMP-RNA処理は、誘導細胞死の結果を得るための戦略のためのアプローチを示し、ここで、TRIM16はPAMP-RNA/RIG-Iシグナルの細胞死軸を媒介する。
【0086】
TRIM16(EBBPとしても知られている)は、エストロゲン応答性遺伝子として以前に同定されており、多くの生物学的プロセスに関与している。TRIM16は、ストレス誘導性蛋白質凝集体の制御や、膜内損傷の恒常性におけるオートファジーの制御にマップされている。TRIM16は、ケラチノサイトの分化やレチノイド代謝と関連している。ある研究では、TRIM16の発現と関節リウマチにおける滑膜の過形成との間に相関関係があることが明らかになっている。別の研究では、TRIM16がインフラマソームの構成要素であるカスパーゼ1及びNLRP1と相互作用してIL-1bの分泌を増強することが発見されており、これはTRIM16がインフラマソーム制御において役割を果たしていることを示唆している。しかし、最も注目すべきは、TRIM16ががんの腫瘍抑制に顕著に関連していることである。TRIM16が媒介する腫瘍抑制のいくつかのメカニズムが解明されている。肺がん、卵巣がん、及び乳がんの細胞モデル系における研究では、TRIM16は、腫瘍を促進するソニックヘッジホッグ経路をダウンレギュレートすることにより、腫瘍の進行中の上皮間葉転換(EMT)を阻害することが明らかになっている。同様に、肝細胞がんや前立腺がんの細胞モデルでは、TRIM16が細胞-細胞接着分子E-カドヘリンの発現を制御する転写阻害剤を抑制することで、EMTを阻害することが示されている。メラノーマにおけるTRIM16の研究では、TRIM16がIFN-β1産生を制御することで増殖と遊走を阻害することが明らかになった。また、研究により、TRIM16が腫瘍における中間径フィラメントファミリーメンバーであるビメンチンの安定性を調節すること、皮膚がん細胞の遊走を減少させること、また、細胞周期を阻害することによって神経芽腫の増殖を抑制することが示されることが明らかにされている。最後に、乳がん細胞株を用いた研究では、TRIM16の過剰発現がカスパーゼ2の活性化を介してアポトーシスを誘導することが明らかになっている。
【0087】
注目すべきことに、オレンジスポテッドグルーパーからクローン化されたFishTRIM16L遺伝子において、ホモサピエンスと29%の同一性を有し、魚細胞における自然免疫シグナル伝達に拮抗することが示されたことである。対照的に、本研究では、humanTRIM16の欠損は、PAMP-RNA/RIGによる自然免疫活性化の誘導に影響を与えないことが明らかになった。おそらく、自然免疫応答における魚とヒトTRIM16の間のこの機能の違いは、配列同一性の欠如によるものであり、一方、魚のTRIM16L蛋白質はBボックスドメインを欠いており、RIG-Iへの結合が期待されないが、魚の自然免疫に異なる作用を与えるようである。
【0088】
興味深いことに、今回の研究により、HCV PAMP誘導細胞死は部分的にIFNに依存していることが明らかになったが、これはRIPAがIFNに依存しないことを示した先行研究とは正反する。特定の理論に拘束されることなく、この明らかな相違は、2つの研究で異なる細胞株を使用したことに起因しているようであるが、IFNのプロアポトーシス作用と一致して、IFNが細胞死シグナル伝達を増強することを示すのに役立つ。RIG-I自体がISGであるため、IFNはRIG-Iレベルを増加させ、TRIM16の下流エンゲージメントのためにPAMPR-RNAシグナル伝達の強度を高めるために役立ち得る。あるいは、他のISGはPMPA-RNAシグナル伝達と協力して、TRIM16の細胞死表現型を強化できるかもしれない。
【0089】
本研究では、TRIM16がPAMP-RNAによって誘導される細胞死シグナル伝達を媒介する新規なRIG-I結合パートナーであることを明らかにした。この効果はがん細胞に特異的であり、同じ由来組織の健康な細胞には悪影響を及ぼさないことが確認された。従って、この新規なPAMP-RNAを伴うRIG-I/TRIM16パスウェイを標的にして細胞死アウトカムを誘導することは、がん細胞における細胞死を誘導することを目的とした治療法のための有効な戦略であると考えられる。
【0090】
以下の実施例は、本明細書の開示を限定するものではなく、例示する目的で提供される。
【0091】
実施例1
方法及び材料の例
細胞培養、阻害剤、及びウイルス
ヒトHuh7肝細胞カルシノーマ、一次不死化ヒトPH5CH8肝細胞、及びヒト胚性腎HEK293細胞を、「完全DMEM」(10%ウシ胎児血清(FBS)、10mML-グルタミン、5mMピルビン酸ナトリウム、抗生物質-抗真菌剤溶液、及び5x非必須アミノ酸を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM))中で増殖させた。センダイウイルス(SenV)のCantell株由来の細胞を、許容されるプロトコルに従って維持した。アッセイのために、インキュサイト分析による細胞死の分析、カスパーゼ3/7活性の分析、又は免疫ブロット及びqRT-PCR分析のための細胞溶解物採取の前に、指示された時間、細胞をモック処理し、リポソーム中に製剤化されたPAMP又はXRNAでトランスフェクションし、構成的に活性なRIG-I(N-RIG)でトランスフェクションし、又はSenVを100HAU/mlで感染させた(Kentsis, A. & Borden, K.L. Construction of macromolecular assemblages in eukaryotic processes and their role in human disease: linking RINGs together. Curr Protein Pept Sci 1, 49-73 (2000)、Diaz-Griffero, F., et al., A B-box 2 surface patch important for TRIM5alpha self-association, capsid binding avidity, and retrovirus restriction. J Virol 83, 10737-10751 (2009)に記載されているように。それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。)。阻害剤は、以下の濃度で使用した。zVAD(SM-Biochemicals)は1:1000、TNFa(Peprotech)[400μLトータル培地/ウェルを伴う0.5μL TNF/ウェル]、及びワクシニアウイルスB18Rキャリアフリー蛋白質(eBioscience)[1μg/ml]。インヒビターは、PAMP又はXRNAトランスフェクションの3時間前に添加した。
【0092】
イムノブロット分析
イムノブロット解析のための蛋白質抽出物は、1μMのオカダ酸、1μMのホスファターゼ阻害剤カクテルII(Calbiochem)、及び10μMのプロテアーゼ阻害剤(Sigma)を添加したMCLB溶解バッファー(50mM Tris HCl[pH7.5]、150mM NaCl、0.5% NP-40)で氷上で細胞を溶解した後、4℃で16,000×gで10分間遠心して溶解物をクリアにすることによって調製した。等量の蛋白質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて分離し、続いてイムノブロッティングを行った。イムノブロット解析には、以下の一次抗体を使用した。PARP(Cell Signaling Technologies)、RIG-I Alme-1(Adipogen)、ISG56(UT Southwestern Antibody Corefacility製のrb-a-IFIT1 #971)、IFITM1(Protein Tech)、ISG15(Cell Signaling Technologies)、アクチン(Millipore)、pSTAT1 Y701(Cell Signaling Technologies)、FLAG(Sigma)、及びV5(Life Technologies)。二次抗体として、Alexa Fluor 680/790ドンキー抗ウサギ、ドンキー抗マウス(Jackson Immunoresearch)を使用した。
【0093】
免疫沈降法
PH5CH8又は293細胞におけるFLAG-RIG-I及びTRIM16-V5全長又は変異体コンストラクトの外因性発現後、細胞抽出物をα-FLAGアガロースビーズ(Sigma)及びα-V5複合体アガロースビーズ(Sigma)を用いて4℃で一晩免疫沈降させた。免疫沈降後、溶出前にMCLBライシスバッファーを用いてサンプルを3回洗浄した。溶出液を5分間煮沸し、SDSゲル電気泳動を用いて分離し、免疫ブロッティングにより分析した。α-V5(Life Technologies)及びα-FLAG(Sigma)を一次抗体として使用し、一晩インキュベートした。二次抗体として、Alexa Fluor 680/790ドンキー抗ウサギ及びドンキー抗マウス(Jackson Immunoresearch)を用いた。
【0094】
細胞死の解析
細胞を1ウェルあたり100k個細胞で24ウェルディッシュに播種した。細胞を細胞死及び/又は透過性をアッセイするために100nM Sytox(Sytox)(#S7020, Thermo Fischer)で処理したか、又は総細胞数をアッセイするためにSyto-Green(S7559, Thermo Fischer)で別々のウェルで処理した。細胞をIncuCyteイメージングプラットフォーム(Essen Bioscience)を用いて画像化した。各時点で9枚の画像をウェルごとに撮影した。各処置は二重又は三重で実施した。細胞死の割合は、実行の開始付近の2時間にわたるSyto-Greenカウントを平均化することによって計算した。これらをレプリケートで平均化し、Syto-Greenカウントを正規化するために使用し、細胞死の割合を計算した。
【0095】
カスパーゼ3/7アッセイ
カスパーゼ3/7活性は、IncuCyteイメージングプラットフォーム(上述)のカスパーゼ3/7グリーンアポトーシスアッセイリージェント(Essen)及びカスパーゼ-Glo(R) 3/7アッセイシステム(Promega)を用いて測定した。使用及び解析は製造業者の指示に従って実施した。
【0096】
コンストラクト及び細胞トランスフェクション
RIG-Iトランケーション変異体コンストラクトは、以前に生産及び記載された(PMID: 16585524、PMID: 17190814)。TRIM16トランケーション変異体は、PCRベースのクローニング戦略を用いて生産した。TRIM16 cDNA生産に使用したオリゴヌクレオチド配列は請求に応じて入手可能である。細胞は、Transit(R)-mRNAトランスフェクションキット(Mirus Bio LLC)を用いて、2g/ml PAMP-RNA10(PMID: 18548002に記載されているように)、対照XRNA(PAMP-RNAに隣接し、同等の長さであるが、RIG-Iと結合せず、RIG-Iシグナル伝達を誘導しないC型肝炎ウイルスゲノム由来の5'ppp含有RNAモチーフ10)、TRIM16(全長又はトランケーション変異体)又はRIG-I(全長又はトランケーション変異体)をコードするcDNAコンストラクトでトランスフェクションした。
【0097】
RT-qPCR
細胞をRLTバッファー(Qiagen)で収集し、RNeasyキット(Qiagen)を用いて全細胞RNAを精製した。iScript cDNA合成キット(Bio-rad)を用いた両方のランダム及びオリゴ(dT)プライミングにより、精製したRNAからcDNAを合成した。RNAレベルは、7300又はViia 7 RT-PCR装置(Applied Biosystems)を用いたSYBR Green相対定量法により測定した。サンプルは、ハウスキーピング遺伝子RPLPO又はPOLRAのそれぞれのCT値を差し引くことにより正規化し、特定の遺伝子の倍数誘導を未処理の対照と比較して計算した。プライマー配列を表1に示す。
【0098】
ノックダウン細胞株の作製
RIG-I又はIFN受容体鎖(IFNAR)のノックアウトのためのCRISPR及び非標的化ガイドRNA(対照)又はガイドRNAを発現するHuh7細胞は、以前に記載されている(PMID: 27841874)。CRISPR及びTRIM16又はTRIM25に特異的なガイドRNAを発現するHuh7細胞を以下のガイドRNAのセットを使用して選択し、各特異的ノックダウンノックアウト細胞集団を生産した。
TRIM16ガイドRNAs 5'から3'、各標的エクソン6
GTCGGTGTCAGAGGTCAAAG(配列番号)
GGTGTCAGAGGTCAAAGCGG(配列番号)
GTCGGTGTCAGAGGTCAAAG(配列番号)
TRIM25ガイドRNAs 5'から3'、各標的エクソン3
GATGACTGCAAACAGAAAGG(配列番号)
TCAGATGACTGCAAACAGAA(配列番号)
GCAGCTACCAACAAGAATACA(配列番号)
【0099】
典型的には、1遺伝子につき3個の独立したgRNAを選択した。gRNA配列は、InFusionクローニング(TaKaRa)により、pRRL-empty-gRNA-Cas9-T2A-Puroベクター32にサブクローニングした。コンストラクトをスピンフェクションによりHuh7細胞に導入し、ポリクローナル集団をピューロマイシン選択により単離した。その後、ピューロマイシン耐性細胞をRNAとイムノブロット分析によってスクリーニングし、目的の遺伝子が十分にノックアウトされていることを確認した。
【0100】
プロテオミクス解析
PH5CH8細胞に上記の全長FLAG-RIG-Iをトランスフェクトし、モック感染又はセンダイウイルス感染させてRIG-I(100 HAU/mL)を16時間活性化させた。次に、細胞を収集して蛋白質抽出物を生産した。各蛋白質抽出物の200ugを抗FLAG-アフィニティービーズ(Sigma)と混合し、4℃で2時間インキュベートした。その後、ビーズを150mM NaClを含むトリス緩衝食塩水で3回洗浄し、250mM NaClを含むトリス緩衝食塩水でさらに3回洗浄した。結合した蛋白質を過剰のFLAGペプチドでビーズをインキュベートすることにより溶出させた。その後、溶出液をRIG-I及びRIG-I-蛋白質複合体の同定のためのタンデム液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)に供した。TRIM16の5つのユニークなペプチドを同定した。
【0101】
統計分析
統計分析は、GraphPad Prism6ソフトウェア(GraphPad, LaJolla, CA)を使用して実施した。各実験における変数及びタイムポイントの数に応じて、グループ間の平均差の統計分析をスチューデントのt検定又は多元配置分散分析(ANOVA)のいずれかで実施し、その後ボンフェローニポストホック分析を行った。カプラン・マイヤー生存率分析は、ログランクテストで分析した。平均生存期間と臨床症状の比較は、アンペアードt検定によって分析した。特定の統計的検定、P値及びサンプルサイズは、図の説明に示されている。
【0102】
例示的な実施形態が例示され、記載されているが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更がその中で行われ得ることが理解され得る。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A-1】
図2A-2】
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
【配列表】
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