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特許7409623アクセサリ装置、カメラ、通信制御プログラム、およびカメラシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】アクセサリ装置、カメラ、通信制御プログラム、およびカメラシステム
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/14 20210101AFI20231226BHJP
   H04N 23/66 20230101ALI20231226BHJP
【FI】
G03B17/14
H04N23/66
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022126946
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2018177267の分割
【原出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2022161950
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2017108267
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 穣
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-257544(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068912(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/14
H04N 23/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラに対して装着可能なアクセサリ装置であって、
前記カメラとの間で行う、データ通信に用いられるデータ通信チャネルと前記データ通信チャネルを介して行う通信の通信方式の通知に用いられる通知チャネルとを含むチャネルを用いた通信を制御するアクセサリ制御部を有し、
前記アクセサリ制御部は、
前記カメラからデータを受信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが第1のレベルである第1通信方式と、前記カメラからデータを受信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが前記第1のレベルよりも高い第2のレベルである第2通信方式と、に切り替え可能であり、
前記第1通信方式において、前記第2通信方式における前記カメラの通信相手として前記アクセサリ装置が選択されたことを示す通信相手指定データを前記データ通信チャネルを介して受信したことに応じて、前記第1通信方式から前記第2通信方式への切り替えを行うことを特徴とするアクセサリ装置。
【請求項2】
前記アクセサリ制御部は、前記第1通信方式において、前記カメラからデータを受信した後に、前記通知チャネルの電圧レベルを変化させてから、前記データ通信チャネルを介して前記カメラにデータ送信を行うことを特徴とする請求項1に記載のアクセサリ装置。
【請求項3】
前記アクセサリ制御部は、前記第1通信方式において、前記通知チャネルの電圧レベルを前記第2のレベルから前記第1のレベルに変化させ、前記通知チャネルの電圧レベルが前記第1のレベルの状態で、前記カメラに前記データ通信チャネルを介してデータ送信を行うことを特徴とする請求項2に記載のアクセサリ装置。
【請求項4】
前記アクセサリ制御部は、前記第1通信方式において、前記データ通信チャネルを介した前記カメラからの通信が停止されている状態で、前記通知チャネルの電圧レベルを前記第2のレベルから前記第1のレベルに変化させることで、前記カメラからの通信を再開させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアクセサリ装置。
【請求項5】
前記アクセサリ制御部は、前記第2通信方式において、前記カメラからのデータ受信を開始した後に、前記通知チャネルの電圧レベルが前記第1のレベルから前記第2のレベルに変化したことに応じて、前記カメラに対するデータ送信を開始することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアクセサリ装置。
【請求項6】
前記アクセサリ制御部は、前記第2通信方式において、前記通知チャネルの電圧レベルが前記第2のレベルの状態で前記カメラからのデータ受信を開始し、前記データ受信を開始した後、前記通知チャネルの電圧レベルが前記第2のレベルから前記第1のレベルに変化し、再び前記第2のレベルに変化したことに応じて、前記カメラに対するデータ送信を開始することを特徴とする請求項5に記載のアクセサリ装置。
【請求項7】
前記アクセサリ制御部は、前記第2通信方式において、前記通知チャネルの電圧レベルを、前記カメラにデータを送信し始めたときの電圧レベルから、前記カメラにデータを送信し始めたときの電圧レベルとは異なる電圧レベルに変化させることにより、前記アクセサリ装置からのデータ送信が終了したことを前記カメラに通知することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアクセサリ装置。
【請求項8】
前記アクセサリ制御部は、前記第2通信方式において、前記カメラに対するデータ送信の後に、前記通知チャネルの電圧レベルを前記第2のレベルから前記第1のレベルに変化させることを特徴とする請求項7に記載のアクセサリ装置。
【請求項9】
前記アクセサリ制御部は、連続して複数のデータフレームを前記カメラに送信可能であることを特徴とする請求項7または8に記載のアクセサリ装置。
【請求項10】
前記アクセサリ制御部は、前記第1通信方式において、前記カメラから受信した通信相手指定データが、前記アクセサリ装置が選択されなかったことを示すデータであった場合は、前記第1通信方式から前記第2通信方式への切り替えを行わないことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のアクセサリ装置。
【請求項11】
前記アクセサリ装置及び前記カメラは、前記通知チャネルを第1の設定と第2の設定にそれぞれ設定可能であり、
前記アクセサリ装置及び前記カメラのいずれかが前記通知チャネルを前記第1の設定した場合と、前記アクセサリ装置及び前記カメラが前記通知チャネルを前記第2の設定とした場合とで、前記通知チャネルの電圧レベルは異なり、
前記アクセサリ制御部は、
前記第1通信方式において、前記カメラからデータを受信している間は前記通知チャネルを第1の設定とし、
前記第2通信方式において、前記カメラからデータを受信している間の少なくとも一部の期間で、前記通知チャネルを第2の設定とすることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のアクセサリ装置。
【請求項12】
アクセサリ装置が装着可能なカメラであって、
前記カメラに装着されたアクセサリ装置と前記カメラの間で行う、データ通信に用いられるデータ通信チャネルと前記データ通信チャネルを介して行う通信のタイミングを通知する通知チャネルとを含むチャネルを用いた通信を制御するカメラ制御部を有し、
前記カメラ制御部は、
前記カメラがデータを送信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが第1のレベルである第1通信方式と、前記カメラがデータを送信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが前記第1のレベルよりも高い第2のレベルである第2通信方式と、に切り替え可能であり、
前記第1通信方式において、前記データ通信チャネルを介して前記第2通信方式における前記カメラの通信相手を示す通信相手指定データを送信したことに応じて、前記第1通信方式から前記第2通信方式への切り替えを行うことを特徴とするカメラ。
【請求項13】
前記カメラ制御部は、前記第1通信方式において、前記データ通信チャネルを介した前記カメラからの通信が停止されている状態で、前記通知チャネルの電圧レベルが前記第2のレベルから前記第1のレベルに変化したことに応じて、前記カメラに装着されたアクセサリ装置へのデータ送信を再開することを特徴とする請求項12に記載のカメラ。
【請求項14】
前記カメラ制御部は、前記第2通信方式において、データ送信が完了したことに応じて、前記通知チャネルの電圧レベルを前記第2のレベルから前記第1のレベルに変化させることを特徴とする請求項12または13に記載のカメラ。
【請求項15】
前記カメラと、前記カメラに装着され前記カメラと前記第1通信方式および前記第2通信方式による通信を行うアクセサリ装置それぞれは、前記通知チャネルを第1の設定と第2の設定に設定可能であり、
前記カメラと、前記カメラに装着され前記カメラと前記第1通信方式および前記第2通信方式による通信を行うアクセサリ装置の少なくともいずれかが前記通知チャネルを前記第1の設定した場合と、前記カメラと、前記カメラに装着され前記カメラと前記第1通信方式および前記第2通信方式による通信を行うアクセサリ装置が前記通知チャネルを前記第2の設定とした場合とで、前記通知チャネルの電圧レベルは異なり、
前記カメラ制御部は、
前記第1通信方式において、データ送信を終了したことに応じて、前記通知チャネルの設定を前記第1の設定から前記第2の設定に切り替え、
前記第2通信方式において、データ送信を終了したことに応じて、前記通知チャネルの設定を前記第2の設定から前記第1の設定に切り替えることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載のカメラ。
【請求項16】
前記カメラ制御部は、連続して複数のデータフレームを前記アクセサリ装置に送信可能であることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載のカメラ。
【請求項17】
カメラに対して装着可能であり、前記カメラとの間で、データ通信に用いられるデータ通信チャネルと前記データ通信チャネルを介して行う通信のタイミングを通知する通知チャネルとを含むチャネルを用いた通信を行うアクセサリ装置であって、通信方式を、前記カメラからデータを受信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが第1のレベルである第1通信方式と、前記カメラからデータを受信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが前記第1のレベルよりも高い第2のレベルである第2通信方式と、に切り替え可能なアクセサリ装置のコンピュータに、
前記第2通信方式における前記カメラの通信相手として前記アクセサリ装置が選択されたことを示す通信相手指定データを、前記第1通信方式において前記カメラから受信するステップと、
前記通信相手指定データの受信に応じて前記第1通信方式から前記第2通信方式への切り替えを行うステップを実行させることを特徴とする通信制御プログラム。
【請求項18】
アクセサリ装置が装着可能であり、装着されたアクセサリ装置との間で行う、データ通信に用いられるデータ通信チャネルと前記データ通信チャネルを介して行う通信のタイミングを通知する通知チャネルとを含むチャネルを用いた通信を行うカメラであって、前記カメラがデータを送信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが第1のレベルである第1通信方式と、前記カメラがデータを送信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが前記第1のレベルよりも高い第2のレベルである第2通信方式と、に切り替え可能なカメラのコンピュータに、
前記第1通信方式において、前記第2通信方式における通信相手として選択したアクセサリ装置を示す通信相手指定データを前記アクセサリ装置に送信するステップと、前記通信相手指定データを送信したことに応じて、前記第1通信方式から前記第2通信方式への切り替えを行うステップを実行させることを特徴とする通信制御プログラム。
【請求項19】
カメラと、それぞれが該カメラに装着可能な第1のアクセサリ装置および第2のアクセサリ装置を含むカメラシステムであって、
前記カメラは、前記第1のアクセサリ装置および第2のアクセサリ装置との間で行う、データ通信に用いられるデータ通信チャネルと前記データ通信チャネルを介して行う通信のタイミングを通知する通知チャネルとを含むチャネルを用いた通信を制御するカメラ制御部を有し、
前記第1のアクセサリ装置および第2のアクセサリ装置のそれぞれは、前記データ通信チャネルと前記通知チャネルとを含むチャネルを用いた通信を制御するアクセサリ制御部を有し、
前記カメラ制御部と第1のアクセサリ装置および第2のアクセサリ装置のそれぞれの前記アクセサリ制御部は、データを送信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが第1のレベルである第1通信方式と、データを送信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが前記第1のレベルよりも高い第2のレベルである第2通信方式と、に切り替え可能であり、
前記カメラ制御部は、前記第1通信方式において、前記第2通信方式における前記カメラの通信相手を前記カメラの通信相手を示す通信相手指定データを送信したことに応じて、前記第1通信方式から前記第2通信方式への切り替えを行い、
前記第1のアクセサリ装置および前記第2のアクセサリ装置のうち前記通信相手指定データで指定された1つのアクセサリ装置のアクセサリ制御部は、前記通信相手指定データを受信したことに応じて前記第1通信方式から前記第2通信方式への切り替えを行うことを特徴とするカメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセサリ装置、カメラ、通信制御プログラム、およびカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ交換型カメラシステムとして、カメラが撮像処理やレンズ制御を行い、第1のアクセサリ装置としての交換レンズがカメラからの制御命令に従ってレンズ駆動を行うシステムが知られている。こうしたカメラシステムにおいては、カメラから交換レンズへの制御命令の伝達と交換レンズからカメラへのレンズ情報の伝達は、相互に情報のやりとりをするための通信チャネルを介して行われる。
【0003】
また、撮影機能を拡張させるために、交換レンズの焦点距離を変化させるコンバータ等の第2のアクセサリ装置としての中間アダプタを、カメラと交換レンズの間に接続可能としたカメラシステムが知られている。このようなカメラシステムにおいては、カメラと交換レンズの間の通信に加えて、カメラと中間アダプタとの間の通信が必要となる場合がある。この場合、カメラは、複数のアクセサリ装置の中から通信相手を特定し、特定された通信相手との通信を行う。
【0004】
特許文献1には、I2C(Inter-Integrated Circuit)通信方式による通信制御方法が記載されている。I2C通信においては、通信マスタに対して複数の通信スレーブが接続され、通信マスタによって指定された特定の通信スレーブと通信マスタの間で通信が行われる。
【0005】
I2C通信においては、通信マスタが、特定のスレーブを指定したアドレス情報を全ての通信スレーブに対して送信する。各通信スレーブは、それぞれの通信スレーブに固有のアドレス情報を保持しており、通信マスタから送信されたアドレス情報に対応するアドレス情報を保持している通信スレーブが通信マスタの通信相手となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-148592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1にて開示されたI2C通信方式の通信においては、通信スレーブを指定するためのアドレス情報を、通信マスタと通信スレーブの間で通信方向の切り替えが行われるたびに送受信する必要がある。また、通信スレーブは、自身が通信マスタの通信相手として選択されているか否かをアドレス情報に基づいて確認する必要がある。
【0008】
このような通信方式では、データのフォーマットとしてアドレス情報を含ませる必要があり、アドレス情報の分だけ送信可能なデータ量が低減してしまう。また、通信スレーブは、自身が通信相手として選択されているか否かを通信のたびに確認するため、通信が開始されるまでに待ち時間が生じてしまうおそれがある。以上のように、特許文献1にて開示された通信方式では、通信マスタと通信スレーブの間のデータ通信速度を十分に向上させることができないおそれがある。
【0009】
本発明は、カメラとアクセサリ装置との間の通信を高速に行うことができるアクセサリ装置及びカメラを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアクセサリ装置は、カメラに対して装着可能なアクセサリ装置であって、前記カメラとの間で行う、データ通信に用いられるデータ通信チャネルと前記データ通信チャネルを介して行う通信の通信方式の通知に用いられる通知チャネルとを含むチャネルを用いた通信を制御するアクセサリ制御部を有し、前記アクセサリ制御部は、前記カメラからデータを受信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが第1のレベルである第1通信方式と、前記カメラからデータを受信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが前記第1のレベルよりも高い第2のレベルである第2通信方式と、に切り替え可能であり、前記第1通信方式において、前記第2通信方式における前記カメラの通信相手として前記アクセサリ装置が選択されたことを示す通信相手指定データを前記データ通信チャネルを介して受信したことに応じて、前記第1通信方式から前記第2通信方式への切り替えを行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のカメラは、アクセサリ装置が装着可能なカメラであって、前記カメラに装着されたアクセサリ装置と前記カメラとの間で行う、データ通信に用いられるデータ通信チャネルと前記データ通信チャネルを介して行う通信のタイミングを通知する通知チャネルとを含むチャネルを用いた通信を制御するカメラ制御部を有し、前記カメラ制御部は、前記カメラがデータを送信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが第1のレベルである第1通信方式と、前記カメラがデータを送信している間の前記通知チャネルの電圧レベルが前記第1のレベルよりも高い第2のレベルである第2通信方式と、に切り替え可能であり、前記第1通信方式において、前記データ通信チャネルを介して前記第2通信方式における前記カメラの通信相手を示す通信相手指定データを送信したことに応じて、前記第1通信方式から前記第2通信方式への切り替えを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カメラとアクセサリ装置との間の通信を高速に行うことができるアクセサリ装置及びカメラが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】カメラ及びアクセサリ装置を含むカメラシステムの構成を示すブロック図である。
図2】カメラシステムにおける通信回路を示す概略図である。
図3】送受信されるデータのフォーマットを示す図である。
図4】ブロードキャスト通信における通信波形を示す概略図である。
図5】P2P通信における通信波形を示す概略図である。
図6】通信方式の切り替え時の通信波形を示す概略図である。
図7】ブロードキャスト通信における通信フローを説明するフローチャートである。
図8】P2P通信における通信フローを説明するフローチャートである。
図9】ブロードキャスト通信における通信波形を示す概略図である。
図10】その他の通信チャネルについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の交換レンズや中間アダプタを含むアクセサリ装置及びカメラにおける通信制御方法について、添付の図面に基づいて詳細に説明する。アクセサリ装置とカメラの間では、複数の通信方式に基づく通信が実行される。「通信方式」はブロードキャスト通信方式とP2P通信方式を意味し、以下では、ブロードキャスト通信方式を第1通信方式、P2P通信方式を第2通信方式と記載する場合もある。
【0015】
本発明は、カメラ本体とアクセサリ装置との間の通信方式を適宜変更するカメラシステムに関する発明である。図1で示すようなカメラ200と交換レンズ100の間に中間アダプタ300が装着されたカメラシステムに適用可能な発明である。なお、以下の実施例においては、カメラ200と交換レンズ100の間に1つの中間アダプタ300が装着された例について説明するが、カメラ200と交換レンズ100の間に複数の中間アダプタが装着されていても良い。
【0016】
本発明では、ブロードキャスト通信において、通信マスタとしてのカメラ200から通信スレーブとしての各アクセサリ装置に対して一斉にデータ送信が行われる。カメラ200が、ある特定のアクセサリ装置との1対1の通信であるP2P通信を行う場合には、P2P通信におけるカメラ200との通信相手を示す情報がブロードキャスト通信において各アクセサリ装置に対して通知される。
【0017】
P2P通信が開始されるタイミングでは、各アクセサリ装置に対してカメラ200の通信相手が通知されているため、P2P通信において、カメラ200は通信相手を特定するための情報を各アクセサリ装置に送信する必要がない。このように、ブロードキャスト通信においてカメラ200との通信相手を選択した上で、カメラ200と選択された通信相手との1対1の通信方式であるP2P通信への切り替えを行うことで、P2P通信における通信速度を向上させることができる。
【0018】
<カメラシステムの構成についての説明>
図1には、本発明の実施例のカメラ200と、これに装着可能なアクセサリ装置としての中間アダプタ300及び交換レンズ100を含むカメラシステムの構成を示している。カメラ200は、複数のアクセサリ装置が装着可能に構成されている。また、中間アダプタ300、交換レンズ100のそれぞれは、カメラ200に対して装着可能なアクセサリ装置である。なお、カメラ200に直接的に接続される場合も、カメラ200に対して中間アダプタ300等を介して接続される場合も、カメラ200に装着されている状態として説明する。
【0019】
カメラ200、交換レンズ100及び中間アダプタ300は、それぞれが有する通信部を介して制御命令や内部情報の伝送を行う。それぞれの通信部は、ブロードキャスト通信及びP2P通信に対応しており、カメラ200において決定された通信方式に基づいて通信を行う。
【0020】
まず、交換レンズ100、中間アダプタ300、及びカメラ200の具体的な構成について説明する。中間アダプタ300とカメラ200は、結合機構であるマウント401を介して機械的および電気的に接続されている。中間アダプタ300は、マウント401に設けられた不図示の電源端子を介してカメラ200から電力の供給を受け、アダプタマイクロコンピュータ(以下、アダプタマイコンという)302の制御を行う。
【0021】
交換レンズ100と中間アダプタ300は、結合機構であるマウント400を介して機械的および電気的に接続されている。交換レンズ100は、マウント400に設けられた不図示の電源端子と前述したマウント401に設けられた不図示の電源端子を介してカメラ200から電力の供給を受ける。そしてカメラ200から受けた電力を用いて、後述する各種アクチュエータやレンズマイクロコンピュータ(以下、レンズマイコンという)111の制御を行う。また、交換レンズ100、中間アダプタ300及びカメラ200は、マウント400及びマウント401に設けられた通信端子(図2に示す)を介して相互に通信を行う。
【0022】
次に、交換レンズ100の構成について説明する。交換レンズ100は、撮像光学系を有する。撮像光学系は、被写体OBJ側から順に、フィールドレンズ101と、変倍を行う変倍レンズ102と、光量を調節する絞りユニット114と、像振れ補正レンズ103と、焦点調節を行うフォーカスレンズ104とを含む。
【0023】
変倍レンズ102とフォーカスレンズ104はそれぞれ、レンズ保持枠105、106により保持されている。レンズ保持枠105、106は、不図示のガイド軸により図中に破線で示した光軸方向に移動可能にガイドされており、それぞれステッピングモータ107、108によって光軸方向に駆動される。ステッピングモータ107、108はそれぞれ、駆動パルスに同期して変倍レンズ102およびフォーカスレンズ104を移動させる。
【0024】
像振れ補正レンズ103は、撮像光学系の光軸に直交する方向に移動することで、手振れ等に起因する像振れを低減する。
【0025】
レンズマイコン111は、交換レンズ100内の各部の動作を制御するアクセサリ制御部である。レンズマイコン111は、アクセサリ通信部としてのレンズ通信部112を介して、カメラ200から送信された制御コマンドを受信し、レンズデータの送信要求を受ける。また、レンズマイコン111は、制御コマンドに対応するレンズ制御を行い、レンズ通信部112を介して送信要求に対応するレンズデータをカメラ200に送信する。
【0026】
また、レンズマイコン111は、制御コマンドのうち変倍やフォーカシングに関するコマンドに応答してズーム駆動回路119およびフォーカス駆動回路120に駆動信号を出力してステッピングモータ107、108を駆動させる。これにより、変倍レンズ102による変倍動作を制御するズーム処理やフォーカスレンズ104による焦点調節動作を制御するオートフォーカス処理を行う。
【0027】
絞りユニット114は、絞り羽根114a、114bを備えて構成される。絞り羽根114a、114bの状態は、ホール素子115により検出され、増幅回路122およびA/D変換回路123を介してレンズマイコン111に入力される。レンズマイコン111は、A/D変換回路123からの入力信号に基づいて絞り駆動回路121に駆動信号を出力して絞りアクチュエータ113を駆動させる。これにより、絞りユニット114による光量調節動作を制御する。
【0028】
さらに、レンズマイコン111は、交換レンズ100内に設けられた振動ジャイロ等の不図示の振れセンサにより検出された振れに応じて、防振駆動回路125を介して防振アクチュエータ126を駆動する。これにより、像振れ補正レンズ103のシフト動作を制御する防振処理が行われる。
【0029】
続いて、中間アダプタ300の構成について説明する。本実施例では、中間アダプタ300は、交換レンズ100の焦点距離を拡張するためのエクステンダである。中間アダプタ300はエクステンダに限らず、種々の機能を有するものが考えられる。例えば、交換レンズ100を透過した光の透過率を変化させるフィルタが内蔵された中間アダプタ300が考えられる。中間アダプタ300の内部に光透過率の異なる複数のフィルタを含み、撮影状況等に応じて適切なフィルタを選択可能な中間アダプタ300であっても良い。
【0030】
本実施例における中間アダプタ300は、交換レンズ100の焦点距離を拡張する変倍レンズ301と、中間アダプタ300内の各部の動作を制御するアクセサリ制御部としてのアダプタマイコン302を含む。アダプタマイコン302は、アクセサリ通信部としてのアダプタ通信部303を介して、カメラ200から送信された制御コマンドを受信し、制御コマンドに対応するアダプタ制御を行う。また、アダプタマイコン302は、カメラ200からの送信要求に対応するアダプタデータを、アダプタ通信部303を介してカメラ200に送信する。
【0031】
次に、カメラ200の構成について説明する。カメラ200は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子201と、A/D変換回路202と、信号処理回路203と、記録部204と、カメラマイクロコンピュータ(以下、カメラマイコンという)205と、表示部206とを有する。
【0032】
撮像素子201は、交換レンズ100内の撮像光学系により形成された被写体像を光電変換して電気信号(アナログ信号)を出力する。A/D変換回路202は、撮像素子201からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。信号処理回路203は、A/D変換回路202からのデジタル信号に対して各種画像処理を行って映像信号を生成する。
【0033】
また、信号処理回路203は、映像信号から被写体像のコントラスト状態、つまり撮像光学系の焦点状態を示すフォーカス情報や露出状態を表す輝度情報も生成する。信号処理回路203は、映像信号を表示部206に出力し、表示部206は映像信号を構図やピント状態等の確認に用いられるライブビュー画像として表示する。
【0034】
カメラ制御部としてのカメラマイコン205は、不図示の撮像指示スイッチおよび各種設定スイッチ等のカメラ操作部材からの入力に応じてカメラ200の制御を行う。また、カメラマイコン205は、カメラ通信部208を介して、不図示のズームスイッチの操作に応じて変倍レンズ102の変倍動作に関する制御コマンドをレンズマイコン111に送信する。さらに、カメラマイコン205は、カメラ通信部208を介して、輝度情報に応じた絞りユニット114の光量調節動作やフォーカス情報に応じたフォーカスレンズ104の焦点調節動作に関する制御コマンドをレンズマイコン111に送信する。
【0035】
カメラマイコン205は、ブロードキャスト通信においては、中間アダプタ300と交換レンズ100に対してデータを一斉に送信し、P2P通信においては、中間アダプタ300と交換レンズ100のいずれか一方と1対1のデータ通信を行う。
【0036】
<通信回路の構成についての説明>
次に、図2を用いて、カメラ200、中間アダプタ300及び交換レンズ100を含むカメラシステムの間で構成される通信回路について説明する。本実施例のカメラシステムは、通信タイミングの通知に用いられる通知チャネルCSと、データ通信に用いられるデータ通信チャネルDATAを含む。
【0037】
図1で説明したように、カメラ200と中間アダプタ300は、マウント401を介して接続されている。マウント401には、少なくとも2つの通信端子が設けられている。また、中間アダプタ300と交換レンズ100は、マウント400を介して接続されている。マウント400には、少なくとも2つの通信端子が設けられている。各マウントに設けられた通信端子により、上述した通知チャネルCSとデータ通信チャネルDATAが形成される。
【0038】
通知チャネルCSは、カメラマイコン205、アダプタマイコン302及びレンズマイコン111に接続されており、各マイコンは、通知チャネルCSの信号レベル(電圧レベル)を検出可能である。また、通知チャネルCSは、カメラ200内に配置された不図示の電源にプルアップ接続されている。さらに、通知チャネルCSは、カメラ200に含まれる接地スイッチ2081を介してグランドと接続可能であり、中間アダプタ300に含まれる接地スイッチ3031を介してグランドと接続可能である。通知チャネルCSは、交換レンズ100に含まれる接地スイッチ1121を介してグランドと接続可能である。
【0039】
このような回路構成を採用することで、カメラ200、中間アダプタ300及び交換レンズ100に含まれるいずれかの接地スイッチを接続状態(第1の設定)とすることにより、通知チャネルCSの信号レベルをLow(第1のレベル)とすることが可能である。また、カメラ200、中間アダプタ300及び交換レンズ100に含まれる全ての接地スイッチを遮断状態(第1の設定)とすることにより、通知チャネルCSの信号レベルをHigh(第2のレベル)とすることが可能である。
【0040】
各マイコンは、接地スイッチの接続状態を変化させることで、通知チャネルCSとグランドとの接続状態を変化させることができる。換言すれば、各マイコンは接地スイッチの接続状態を変化させることで、通知チャネルCSの信号レベルをHighとLowのいずれかに設定可能である。
【0041】
例えば、カメラマイコン205は、カメラ200に含まれる接地スイッチ2081を接続状態とすることで、通知チャネルCSの信号レベルをLowとすることができる。本発明では、接地スイッチを接続状態とすることを「通知チャネルCSにLow出力を行う」と記載する。また、接地スイッチを切断状態とすることを「通知チャネルCSにHigh出力を行う」と記載する。
【0042】
つまり、全てのマイコンが通知チャネルCSに対してHigh出力を行うことで、通知チャネルCSの信号レベルはHighとなる。一方、いずれかのマイコンが通知チャネルCSにLow出力を行うことで、通知チャネルCSの信号レベルはLowとなる。なお、データ通信時における通知チャネルCSの役割については後述する。
【0043】
データ通信チャネルDATAは、データの伝搬方向を切り替え可能な双方向のデータ通信チャネルである。データ通知チャネルDATAは、カメラマイコン205、アダプタマイコン302及びレンズマイコン111に接続されている。
【0044】
データ通信チャネルDATAは、カメラ200に含まれる入出力切り替えスイッチ2082を介してカメラマイコン205と接続される。カメラマイコン205には、データを送信するためのデータ出力部とデータを受信するためのデータ入力部が備えられている。そして、入出力切り替えスイッチ2082の動作に応じて、データ通信チャネルDATAをデータ出力部とデータ入力部のうちの一方に選択的に接続することができる。
【0045】
また、データ通信チャネルDATAは、中間アダプタ300に含まれる入出力切り替えスイッチ3032を介してアダプタマイコン302と接続される。アダプタマイコン302には、データを送信するためのデータ出力部とデータを受信するためのデータ入力部が備えられている。そして、入出力切り替えスイッチ3032の動作に応じて、データ通信チャネルDATAをデータ出力部とデータ入力部のうちの一方に選択的に接続することができる。
【0046】
データ通信チャネルDATAは、交換レンズ100に含まれる入出力切り替えスイッチ1122を介してレンズマイコン111と接続される。レンズマイコン111には、データを送信するためのデータ出力部とデータを受信するためのデータ入力部が備えられている。そして、入出力切り替えスイッチ1122の動作に応じて、データ通信チャネルDATAをデータ出力部とデータ入力部のうちの一方に選択的に接続することができる。このような回路構成を採用することにより、データ通信チャネルDATAのデータの伝搬方向を適切に切り替えることができる。
【0047】
<データフォーマットの説明>
続いて図3を用いて、データ通信チャネルDATAを介して通信されるデータのフォーマットについて説明する。
【0048】
図3は、データ送信側とデータ受信側の双方で通信速度を予め設定し、この設定に基づいた通信ビットレートでデータ通信を行う調歩同期式の通信方式におけるデータフォーマットを示している。通信ビットレートとは、1秒間に転送することができるデータ量を示し、単位はbps(bit per second)で表される。図3は最小通信単位である1フレームの信号波形を示している。
【0049】
データ通信を行っていない状態では、データ通信チャネルDATAの信号レベルはHighレベルに維持されている。続いて、データの送信開始をデータ受信側に通知するため、データ通信チャネルDATAの信号レベルが1ビット期間の間Lowとされる。この1ビット期間をスタートビットSTと呼び、スタートビットSTからデータフレームが開始される。スタートビットSTに続く2ビット目から9ビット目までの8ビット期間で1バイトのデータが送信される。
【0050】
データのビット配列はMSB(Most Significant Bit)ファーストフォーマットとして、最上位のデータD7から始まり、順にデータD6、データD5と続き、最下位のデータD0で終了する。そして、10ビット目に1ビットのパリティー情報(PA)を付加し、1フレームの最後を示すストップビットSPの期間、データ通信チャネルDATAの信号レベルがHighとされる。これにより、スタートビットSTから開始されたデータフレーム期間が終了する。なお、パリティー情報は1ビットである必要はなく、複数のビットのパリティー情報が付加されても良い。また、パリティー情報は必須ではなく、パリティー情報が付加されないフォーマットとしても良い。
【0051】
また、データのビット配列をLSB(Least Significant Bit)ファーストフォーマットとして、最下位のデータD0から始まり、順にデータD1、データD2と続き、最上位のデータD7で終了するようにしても良い。本実施例では、8ビット期間で1バイトのデータが送信されるが、8ビット以外のビット期間で1バイトのデータが送信されるようにしても良い。
【0052】
<ブロードキャスト通信の説明>
図4を用いて、ブロードキャスト通信について説明する。ブロードキャスト通信では、カメラ200が通信マスタとなり、中間アダプタ300及び交換レンズ100を通信スレーブとした通信が行われる。
【0053】
図4は、ブロードキャスト通信においてやり取りされる信号波形を示している。通信マスタであるカメラ200のカメラマイコン205は、通知チャネルCSにLow出力を行うことで、通信スレーブであるレンズマイコン111及びアダプタマイコン302に対してブロードキャスト通信の開始を通知する。
【0054】
次に、カメラマイコン205は、データ通信チャネルDATAを介してレンズマイコン111及びアダプタマイコン302にデータを送信する。
【0055】
一方、レンズマイコン111とアダプタマイコン302は、データ通信チャネルDATAを介して上述したスタートビットSTを検出することに応じて、通知チャネルCSにLow出力を行う。なお、レンズマイコン111とアダプタマイコン302が通知チャネルCSにLow出力を行う時点で、カメラマイコン205がLow出力を行っているため、通知チャネルCSの信号レベルはLowのままである。
【0056】
レンズマイコン111及びアダプタマイコン302は、通知チャネルCSにLow出力を行うことで、通信待機要求を通知する。通信待機要求は、カメラシステムにおける通信を一時停止させるためのものであり、通知チャネルCSの信号レベルにより通信待機要求の有無が判断される。
【0057】
カメラマイコン205は、全てのデータを送信した後に通知チャネルCSにHigh出力を行う。レンズマイコン111及びアダプタマイコン302は、データ通信チャネルDATAから送信されたストップビットSPを受信した後に、受信したデータの解析及び受信データに対応する内部処理を実行する。その後、次の通信を実行するための準備が整った後に通知チャネルCSにHigh出力を行う。
【0058】
カメラシステムを構成する全ての構成要素が通知チャネルCSにHigh出力を行うことで、通知チャネルCSの信号レベルはHighとなる。カメラマイコン205、レンズマイコン111及びアダプタマイコン302は、通知チャネルCSの信号レベルがHighに戻ったことにより、カメラシステムを構成する各構成要素が次の通信を実行可能な状態になったことを確認することができる。
【0059】
図4では、カメラマイコン205が送信するデータに、アダプタマイコン302に対する送信要求命令が含まれており、カメラマイコン205によるデータ送信に続いて、アダプタマイコン302によるデータ送信が行われる。
【0060】
具体的には、通知チャネルCSの信号レベルがHighになった後に、アダプタマイコン302は、通知チャネルCSにLow出力を行う。これにより、レンズマイコン111及びカメラマイコン205に対してブロードキャスト通信の開始を通知する。次に、アダプタマイコン302は、データ通信チャネルDATAを介してレンズマイコン111及びカメラマイコン205にデータを送信する。
【0061】
一方、レンズマイコン111とカメラマイコン205は、データ通信チャネルDATAを介して上述したスタートビットSTを検出することに応じて、通知チャネルCSにLow出力を行う。なお、レンズマイコン111とカメラマイコン205が通知チャネルCSにLow出力を行う時点では、アダプタマイコン302が通知チャネルCSにLow出力を行っているため、通知チャネルCSの信号レベルはLowのままである。
【0062】
アダプタマイコン302は、全てのデータを送信した後に通知チャネルCSにHigh出力を行う。レンズマイコン111及びカメラマイコン205は、データ通信チャネルDATAから送信されたストップビットSPを受信した後に、受信したデータの解析及び受信データに対応する内部処理を実行する。その後、次の通信を実行するための準備が整った後に通知チャネルCSにHigh出力を行う。
【0063】
カメラシステムを構成する全ての構成要素が通知チャネルCSにHigh出力を行うことで、通知チャネルCSの信号レベルはHighとなる。カメラマイコン205、レンズマイコン111及びアダプタマイコン302は、通知チャネルCSの信号レベルがHighに戻ったことにより、カメラシステムを構成する各構成要素が次の通信を実行可能な状態になったことを確認することができる。
【0064】
以上説明したように、ブロードキャスト通信においては、データ送信側が、通知チャネルCSにLow出力を行って通知チャネルCSの信号レベルをHighからLowにすることで、ブロードキャスト通信の開始をデータ受信側に通知している。また、データ受信側は、通知チャネルCSへの出力をLow出力からHigh出力に変化させることで、通信待機要求の解除をレンズシステムの各構成要素に通知している。
【0065】
なお、図4では本発明におけるブロードキャスト通信の通信波形の一例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、1回のブロードキャスト通信において送受信されるデータを1バイトのデータでなく、複数バイトのデータとしても良い。
【0066】
また、通信方式をブロードキャスト通信からP2P通信に切り替える場合は、カメラマイコン205からレンズマイコン111及びアダプタマイコン302に対して、通信方式の切り替えを指示するデータの送信のみが行われる。
【0067】
<P2P通信の説明>
図5を用いて、本発明における第2通信方式としてのP2P通信について説明する。P2P通信では、カメラ200が通信マスタとなり、カメラシステムを構成する構成要素の中で通信スレーブとして選択された1つの構成要素と1対1の個別の通信が行われる。
【0068】
図5は、P2P通信においてやり取りされる信号波形を示している。ここでは通信スレーブとして交換レンズ100が選択されている例を示している。P2P通信における通信スレーブを示す情報は、ブロードキャスト通信によって送信される。P2P通信においては、データ送信側が、通知チャネルCSにLow出力を行わず、通知チャネルCSをHighに維持したままデータ受信側にデータを送信する。すなわち、カメラ200から交換レンズ100、アダプタ300にデータを送信する間の通知チャネルCSの電圧レベルを、ブロードキャスト通信とP2P通信とで異ならせている。
【0069】
ブロードキャスト通信からP2P通信への切り替えが実行されると、最初に通信マスタであるカメラマイコン205からのデータ送信が開始される。
【0070】
図5は、カメラマイコン205からレンズマイコン111への1バイトのデータ送信後に、レンズマイコン111からカメラマイコン205に対して2バイトのデータ送信が行われる例を示している。
【0071】
カメラシステムを構成する各構成要素においてブロードキャスト通信からP2P通信への切り替えが完了した後に、通信マスタとしてのカメラマイコン205はデータ通信チャネルDATAを介してレンズマイコン111にデータを送信する。カメラマイコン205は、データ送信が完了すると、通知チャネルCSの信号レベルをLow出力にして通信待機要求の通知を行う。そして、カメラマイコン205は、データ受信側としてデータを受信する準備が完了した後に通知チャネルCSの信号レベルをHigh出力に戻す。
【0072】
一方、レンズマイコン111は、通知チャネルCSの信号レベルがLowになったことによりカメラマイコン205からのデータ送信が完了したことを認識し、受信したデータの解析や受信したデータに対応する内部処理を実行する。図5の例では、カメラマイコン205から受信したデータに、レンズマイコン111からカメラマイコン205へのデータ送信要求が含まれており、レンズマイコン111はカメラマイコン205に送信するデータの生成も行う。
【0073】
その後、通知チャネルCSの信号レベルがHighに戻ったことにより、通信待機要求の解除を認識したレンズマイコン111は、カメラマイコン205に対して2バイトのデータ送信を行う。
【0074】
レンズマイコン111は、データ送信が終了すると、通知チャネルCSの信号レベルをLow出力にして通信待機要求の通知を行う。そして、レンズマイコン111は、データ受信側としてデータを受信する準備が完了した後に通知チャネルCSの信号レベルをHigh出力に戻す。なお、P2P通信の通信相手として選択されていないアダプタマイコン302は、通知チャネルCSへの出力を変化させず、データの送受信に関与しない。
【0075】
レンズマイコン111は、通知チャネルCSの信号レベルをHighに戻した後のカメラマイコン205からのデータ送信タイミングによって、P2P通信が継続されているのか、ブロードキャスト通信への切り替えが行われたのかを判断する。通知チャネルCSの信号レベルがHighのままの状態で、カメラマイコン205からのデータを受信した場合、レンズマイコン111はP2P通信が継続されていると判断する。一方、通知チャネルCSの信号レベルがLowに変化した後に、カメラマイコン205からのデータを受信した場合、レンズマイコン111はP2P通信からブロードキャスト通信に切り換えられたと判断する。
【0076】
以上説明したように、P2P通信においては、データ送信側が通知チャネルCSの信号レベルをHigh出力からLow出力にすることで、データ送信側によるデータの送信が完了したことをデータ受信側に通知している。そのため、P2P通信においては、データ送信側が通知チャネルCSの信号レベルを変化させるまで、複数のデータフレームを連続して送信することができる。通信スレーブが1つのデータフレームを送信する毎に通信マスタからの通信が挿入されるシステム構成ではないため、カメラマイコン205と、レンズマイコン111やアダプタマイコン302等のアクセサリ装置との間の通信を高速に行うことができる。本カメラシステムでは、データの送信後に通知チャネルCSの電圧レベルが変化するように、カメラマイコン205、レンズマイコン111、アダプタマイコン302が通知チャネルCSの接地または非接地を切り替える。このような通知チャネルCSの電圧レベルの変化を、データの送信側と受信側との切り替えの合図としている。そして、データ送信側は、次の通信におけるデータ受信側としてのデータ受信準備が完了するまで、通知チャネルCSの信号レベルをLow出力のままとすることで、通信待機要求を通知している。
【0077】
<通信方式の切り替えについての説明>
図6を用いて、ブロードキャスト通信とP2P通信を切り替えて実行される通信の概要を説明する。ブロードキャスト通信とP2P通信のいずれの通信においてもカメラ200が通信マスタとなり、中間アダプタ300や交換レンズ100との通信を実行する。P2P通信におけるカメラ本体との通信相手を示す情報は、ブロードキャスト通信において通知される。
【0078】
図6は、ブロードキャスト通信とP2P通信を切り替えて実行される通信における通信波形を示している。初めに、P2P通信における通信相手としてアダプタマイコン302が選択されたことを示す情報がブロードキャスト通信において送受信され、その後、カメラマイコン205とアダプタマイコン302の間でP2P通信が行われる。以下、P2P通信における通信相手を示す情報を、通信相手指定データと記載する。
【0079】
以下、通信相手指定データ自体に、ブロードキャスト通信からP2P通信への切り替えコマンドとしての機能を持たせた実施例について説明する。なお、通信相手指定データとは別に、ブロードキャスト通信からP2P通信への切り替えを指示する信号を送受信することでP2P通信への切り替えを実行しても良い。
【0080】
P2P通信における通信相手として選択されていないレンズマイコン111は通信相手指定データを受信した後、カメラマイコン205から受信したデータの解析や内部処理が終了した時点で通知チャネルCSにHigh出力を行う。そして、カメラマイコン205とアダプタマイコン302の間でP2P通信が行われている期間は、通知チャネルCSへの出力を変化させることなく、ブロードキャスト通信に対応した設定を維持する。
【0081】
具体的には、アダプタマイコン302は、P2P通信への切り替えが完了すると、通知チャネルCSにHigh出力を行うことで、通信方式の切り替え完了をカメラマイコン205に通知する。カメラマイコン205も、P2P通信への切り替えが完了すると、通知チャネルCSにHigh出力を行う。上述したように、P2P通信における通信相手として選択されていないレンズマイコン111は、カメラマイコン205から受信したデータの解析や内部処理が終了した時点で通知チャネルCSにHigh出力を行う。
【0082】
カメラマイコン205は、通知チャネルCSの信号レベルがHighになったことを検出すると、図5で示したP2P通信を開始する。P2P通信方式における通信の概要は図5で説明した通りであるため、ここではP2P通信の詳細についての説明を割愛する。
【0083】
カメラマイコン205とアダプタマイコン302の間のP2P通信が終了すると、カメラマイコン205はブロードキャスト通信により、P2P通信における通信相手としてレンズマイコン111を選択したことを示す通信相手指定データを送信する。その後、カメラマイコン205とレンズマイコン111の間でP2P通信が行われる。
【0084】
なお、アダプタマイコン302は、カメラマイコン205からデータが送信される前に通知チャネルCSの信号レベルがLowになったことにより、P2P通信からブロードキャスト通信への切り替えが実行されたことを認識する。
【0085】
<ブロードキャスト通信における通信フローの説明>
次に、図7を用いて、ブロードキャスト通信における通信フローについて説明する。カメラマイコン205及びアダプタマイコン302は、コンピュータプログラムである通信制御プログラムに従って、図7のフローチャートに示す通信制御を行う。なお、図7において「S」はステップを意味する。図7では通信マスタとしてのカメラマイコン205の通信フローと、通信スレーブとしてのアダプタマイコン302の通信フローを開示している。レンズマイコン111の通信フローは、アダプタマイコン302の通信フローとほぼ同じであるため、ここではレンズマイコン111の通信フローを開示していない。
【0086】
カメラマイコン205は、S100においてブロードキャスト通信を開始するイベントが発生したか否かの判定を行う。ブロードキャスト通信を開始するイベントが発生した場合はS101に進み、このようなイベントが発生していない場合は、S100の判定を繰り返し行う。
【0087】
S101では、通知チャネルCSにLow出力を行い、通知チャネルCSの信号レベルをLowにすることで、レンズマイコン111及びアダプタマイコン302に対してブロードキャスト通信の開始を通知する。続いて、S102において、入出力切り替えスイッチ2082を動作させることで、データ通信チャネルDATAをカメラマイコン205のデータ出力部に接続し、S103においてデータ送信を開始する。
【0088】
S104では、S103でカメラマイコン205から送信したデータに、送信要求コマンドが含まれるか否かの判定を行う。送信要求コマンドとは、通信マスタとしてのカメラマイコン205から送信されたデータを受信した通信スレーブに対して、カメラマイコン205へのデータ送信を要求するコマンドである。
【0089】
S103でカメラマイコン205から送信したデータに送信要求コマンドが含まれていない場合には、S105に進む。S105では、カメラマイコン205からのデータ送信の完了後に通知チャネルCSへのLow出力を解除し、S116に進む。
【0090】
S103でカメラマイコン205から送信したデータに送信要求コマンドが含まれている場合にはS106に進む。S106では、カメラマイコン205からのデータ送信の完了後に、データ通信チャネルDATAをカメラマイコン205のデータ入力部に接続し、S107に進む。S107では、通知チャネルCSへのLow出力を解除し、High出力を行う。
【0091】
S108では、通知チャネルCSの信号レベルがHighになったか否かの判定を行う。この判定は、通知チャネルCSの信号レベルがHighになるまで継続して行われる。通知チャネルCSの信号レベルがHighのときには、カメラシステムが通信可能な状態であることを示している。通知チャネルCSの信号レベルがHighになると、S109において通知チャネルCSの信号レベルがLowになったか否かの判定を行う。この判定は、通知チャネルCSの信号レベルがLowになるまで継続して行われる。
【0092】
通知チャネルCSの信号レベルがLowになることに応じて、通信スレーブであるアダプタマイコン302からカメラマイコン205への通信が開始される。通知チャネルCSの信号レベルがLowになったと判定した後に、カメラマイコン205はS110においてデータ通信チャネルDATAにおけるデータの受信を許可する。続いて、S111において、アダプタマイコン302から送信されるデータに含まれるスタートビットを受信したか否かの判定を行う。この判定は、スタートビットを受信するまで継続して行われる。
【0093】
スタートビットを受信すると、S112に進み、通知チャネルCSにLow出力を行い、S113においてストップビットを受信したか否かの判定を行う。この判定は、ストップビットを受信するまで継続して行われる。ストップビットを受信すると、S114においてデータ通信チャネルDATAにおけるデータの受信を禁止し、受信したデータの解析や受信したデータに対応する内部処理を実行する。その後、S115において通知チャネルCSへのLow出力を解除し、High出力を行う。
【0094】
続いて、S116において、通知チャネルCSの信号レベルがHighになったか否かの判定を行う。この判定は、通知チャネルCSの信号レベルがHighになるまで継続して行われる。通知チャネルCSの信号レベルがHighになると、S117において、S103で送信したデータが、通信相手指定データであったか否かの判定を行う。通信相手指定データであった場合には、S118に進み、P2P通信への移行を行う。通信相手指定データでなかった場合には、ブロードキャスト通信を継続する。
【0095】
次に、アダプタマイコン302における通信フローについて説明する。S200において、通知チャネルCSの信号レベルがLowになったか否かの判定を行う。この判定は、通知チャネルCSの信号レベルがLowになるまで継続して行われる。通知チャネルCSの信号レベルがLowになることに応じて、通信マスタであるカメラマイコン205からのデータ送信が開始されるため、S201においてアダプタマイコン302はデータ通信チャネルDATAにおけるデータの受信を許可する。
【0096】
続いて、S202においてスタートビットを受信したか否かの判定を行う。スタートビットを受信していない場合には、S203に進み、通知チャネルCSの信号レベルがHighであるか否かの判定を行う。
【0097】
ここで、S203及びS204の処理を行うのは、カメラマイコン205とレンズマイコン111の間でP2P通信が行われ、アダプタマイコン302のみがブロードキャスト通信を行う状況に対応するためである。この状況では、アダプタマイコン302はカメラマイコン205からデータを受信することはないため、S204においてデータ通信チャネルDATAにおけるデータの受信を禁止する。
【0098】
<P2P通信>の欄で説明したように、P2P通信においても通知チャネルCSの信号レベルはHighとLowの間で変化する。通知チャネルCSの信号レベルは、通常時はHighであり、ブロードキャスト通信においては、通信待機要求を通知する場合や、通信の開始を通知する場合にLowに設定される。P2P通信においては、通信待機要求を通知する場合にLowに設定される。
【0099】
S202において、アダプタマイコン302がカメラマイコン205からスタートビットを受信していない状況としては、以下の状況が考えられる。
【0100】
1つ目の状況は、カメラマイコン205が通知チャネルCSの信号レベルをLowにした後であって、データ送信が開始されていない状況である。2つ目の状況は、カメラマイコン205とレンズマイコン111がP2P通信を行っており、アダプタマイコン302はP2P通信に関与していない状況である。
【0101】
1つ目の状況の場合には、通知チャネルCSの信号レベルはHighにならないため、S203からS202に戻り、カメラマイコン205からのデータ送信が開始されるまで、S202及びS203の判定を繰り返す。
【0102】
2つ目の状況の場合には、カメラマイコン205とレンズマイコン111のいずれかが通信待機要求を通知していない限り、通知チャネルCSの信号レベルはHighになっている。この状況では、基本的にはS203からS204に進み、データ通信チャネルDATAにおけるデータの受信が禁止される。なお、P2P通信において、通信待機要求が通知されている場合には、S203からS202に戻り、再びS203の判定が行われることになる。S203の判定が複数回実施されることはあるが、通信待機要求が解除され、通知チャネルCSの信号レベルがHighになると、S203からS204に進むことになる。
【0103】
以上のように、S203及びS204の制御フローを追加することで、カメラシステムの中でブロードキャスト通信とP2P通信を併用することができる。本実施例においては、カメラマイコン205とレンズマイコン111の間でP2P通信を行う一方で、ブロードキャスト通信に対応した状態でアダプタマイコン302を待機させることができる。
【0104】
S202の説明に戻る。S202においてスタートビットを受信すると、アダプタマイコン302は、受信したデータの解析や受信したデータに対応する内部処理を開始すると共に、通知チャネルCSにLow出力を行う。これにより、カメラシステムを構成する各構成要素に対して通信待機要求を通知する。
【0105】
次に、S206においてストップビットを受信したか否かの判定を行う。この判定は、ストップビットを受信するまで継続して行われる。ストップビットを受信すると、S207においてデータ通信チャネルDATAにおけるデータの受信を禁止し、受信したデータの解析や受信したデータに対応する内部処理を継続する。データの内部処理が完了し、次のデータ通信を実行可能な状態となると、S208において通知チャネルCSへのLow出力を解除し、High出力を行う。
【0106】
S209では、カメラマイコン205から受信したデータに、送信要求コマンドが含まれるか否かの判定を行う。送信要求コマンドを含む場合には、S210に進み、通知チャネルCSの信号レベルがHighになったか否かの判定を行う。この判定は、通知チャネルCSの信号レベルがHighになるまで継続して行われる。通知チャネルCSの信号レベルがHighのときには、カメラシステムが通信可能な状態であることを示している。カメラマイコン205から受信したデータに送信要求コマンドが含まれない場合には、後述するS215に進む。
【0107】
S210において、通知チャネルCSの信号レベルがHighであると判定された場合にはS211に進む。S211では、通知チャネルCSにLow出力を行い、通知チャネルCSの信号レベルをLowにすることで、カメラマイコン205及びレンズマイコン111に対してブロードキャスト通信の開始を通知する。続いて、S212において、入出力切り替えスイッチ3032を動作させることで、データ通信チャネルDATAをアダプタマイコン302のデータ出力部に接続し、S213においてデータ送信を開始する。
【0108】
データ送信が完了すると、S214において、通知チャネルCSへのLow出力を解除し、High出力を行う。続いて、S215では、通知チャネルCSの信号レベルがHighになったか否かの判定を行う。この判定は、通知チャネルCSの信号レベルがHighになるまで継続して行われる。
【0109】
通知チャネルCSの信号レベルがHighになるとS216に進む。S216では、カメラマイコン205から受信したデータが通信相手指定データであり、かつ、自身がP2P通信におけるカメラマイコン205の通信相手として選択されたか否かの判定を行う。P2P通信におけるカメラマイコン205の通信相手としてアダプタマイコン302が選択された場合には、S217に進み、データ通信チャネルDATAにおけるデータ受信を許可する。そして、S218において、ブロードキャスト通信からP2P通信への移行を行う。
【0110】
カメラマイコン205から受信したデータが通信相手指定データでない場合、またはP2P通信における通信相手としてアダプタマイコン302が選択されていない場合は、P2P通信への移行を実行することなく、ブロードキャスト通信を継続する。
【0111】
<P2P通信における通信フロー>
次に、図8を用いて、P2P通信における通信フローについて説明する。カメラマイコン205及びレンズマイコン111は、コンピュータプログラムである通信制御プログラムに従って、図8のフローチャートに示す通信制御を行う。なお、図8において「S」はステップを意味する。図8では通信マスタとしてのカメラマイコン205の通信フローと、通信スレーブとしてのレンズマイコン111の通信フローを開示している。アダプタマイコン302の通信フローは、レンズマイコン111の通信フローとほぼ同じであるため、ここではアダプタマイコン302の通信フローを開示していない。
【0112】
カメラマイコン205は、S300においてP2P通信を開始するイベントが発生したか否かの判定を行う。P2P通信を開始するイベントが発生した場合はS301に進み、このようなイベントが発生していない場合は、S300の判定を繰り返し行う。
【0113】
S301では、入出力切り替えスイッチ2082を動作させることで、データ通信チャネルDATAをカメラマイコン205のデータ出力部に接続し、S302においてデータ送信を開始する。
【0114】
S303では、通知チャネルCSにLow出力を行い、通知チャネルCSの信号レベルをLowにする。これにより、カメラマイコン205は、通信スレーブであるレンズマイコン111に対して通信待機要求を行う。通知チャネルCSの信号レベルがLowの期間、レンズマイコン111はカメラマイコン205に対するデータ送信を行わない。
【0115】
S304では、S302でカメラマイコン205から送信したデータに、送信要求コマンドが含まれるか否かの判定を行う。送信要求コマンドとは、通信スレーブに対して、カメラマイコン205へのデータ送信を要求するコマンドである。S302でカメラマイコン205から送信したデータに送信要求コマンドが含まれない場合には、レンズマイコン111からデータが送信されることはない。この場合、S304からS305に進み、レンズマイコン111が通信待機要求を通知しているか否かを確認する。
【0116】
具体的には、S305において、カメラマイコン205における通知チャネルCSへのLow出力を解除した上で、S306において通知チャネルCSの信号レベルがLowであるか否かの判定を行う。これにより、レンズマイコン111が通知チャネルCSの信号レベルをLowにしているか否か、つまり、レンズマイコン111が通信待機要求を通知しているか否かを判定することができる。
【0117】
一般的に、カメラマイコン205からのデータを受信したレンズマイコン111は、そのデータの解析や内部処理のために、ある程度の期間、通知チャネルCSにLow出力を行うことで通信待機要求を通知する。S306は、レンズマイコン111の通知待機要求を認識するために行われる。S305の後に一時的に通知チャネルCSの信号レベルがHighとなることがある。このときは、S306の判定を行うことで通知チャネルCSの信号レベルがLowとなるまで待機する。S306で通知チャネルCSの信号レベルがLowとなったことを確認した上でS311に進む。
【0118】
S304に戻る。S304において、S302でカメラマイコン205から送信したデータが送信要求コマンドである場合にはS307に進む。
【0119】
S307では、入出力切り替えスイッチ2082を動作させることで、データ通信チャネルDATAをカメラマイコン205のデータ入力部に接続する。さらに、S308において通知チャネルCSへのLow出力を解除し、High出力を行う。
【0120】
通知チャネルCSの信号レベルがHighの状態で、レンズマイコン111からのデータ受信を行い、S309において、通知チャネルCSの信号レベルがLowになったか否かの判定を行う。通知チャネルCSの信号レベルがLowになったことに応じて、レンズマイコン111のデータ送信が完了したと判断し、S310においてデータ解析を行う。
【0121】
続いてS311において、通知チャネルCSの信号レベルがHighになったか否かの判定を行う。この判定は、通知チャネルCSの信号レベルがHighになるまで継続して行われる。通知チャネルCSの信号レベルがHighの状態は、通信スレーブとしてのレンズマイコン111がデータ通信可能な状態であることを意味している。
【0122】
通知チャネルCSの信号レベルがHighになると、S312に進み、ブロードキャスト通信への移行イベントが発生した否かの判定を行う。ブロードキャスト通信への移行イベントが発生した場合には、S313に進み、ブロードキャスト通信への移行を行う。ブロードキャスト通信への移行イベントが発生していない場合は、P2P通信を継続して行う。
【0123】
次に、通信スレーブとしてのレンズマイコン111の通信フローについて説明する。レンズマイコン111は、ブロードキャスト通信からP2P通信への切り替えを実行すると、最初にカメラマイコン205から送信されるデータの受信を行う。カメラマイコン205から送信されるデータを受信している期間、通知チャネルCSの信号レベルはHighに保たれている。
【0124】
続いてS400において、通知チャネルCSの信号レベルがLowになったか否かの判定を行う。通知チャネルCSの信号レベルがLowになったことに応じて、カメラマイコン205のデータ送信が完了したと判断し、S401においてデータ解析を行う。
【0125】
続いて、S402において、通知チャネルCSの信号レベルがHighになったか否かの判定を行う。この判定は、通知チャネルCSの信号レベルがHighになるまで継続して行われる。通知チャネルCSの信号レベルがLowの状態は、カメラマイコン205が通信待機要求を通知している状態である。
【0126】
通知チャネルCSの信号レベルがHighになると、S403において、カメラマイコン205から受信したデータに、送信要求コマンドが含まれるか否かの判定を行う。カメラマイコン205から受信したデータに送信要求コマンドが含まれない場合にはS404に進む。
【0127】
S404では、カメラマイコン205から受信したデータに対する内部処理等のために、通知チャネルCSの信号レベルをLowにすることで、カメラマイコン205に対して通信待機要求を通知する。レンズマイコン111が通信可能な状態となると、S405において通知チャネルCSの信号レベルをHighにして、通信待機要求を解除した上でS411に進む。
【0128】
S403に戻る。S403において、カメラマイコン205から受信したデータに送信要求コマンドが含まれる場合にはS406に進む。S406では、入出力切り替えスイッチ1122を動作させることで、データ通信チャネルDATAをレンズマイコン205のデータ出力部に接続する。そしてS407において、カメラマイコン205へのデータ送信を開始する。
【0129】
カメラマイコン205へのデータ送信が完了した後に、S408において、通知チャネルCSにLow出力を行い、通知チャネルCSの信号レベルをLowにする。これにより、レンズマイコン111は、通信マスタであるカメラマイコン205に対して通信待機要求を行う。通知チャネルCSの信号レベルがLowの期間、カメラマイコン205はレンズマイコン111に対するデータ送信を行わない。
【0130】
S409では、入出力切り替えスイッチ1122を動作させることで、データ通信チャネルDATAをレンズマイコン205のデータ入力部に接続し、S410において、通知チャネルCSへのLow出力を解除し、High出力を行う。
【0131】
S411では、通知チャネルCSの信号レベルがHighになったか否かの判定を行う。この判定は、通知チャネルCSの信号レベルがHighになるまで継続して行われる。通知チャネルCSの信号レベルがHighになった状態は、カメラマイコン205及びレンズマイコン111が通信可能な状態であることを意味している。
【0132】
以上説明したように、カメラ200から、交換レンズ100、アダプタ300にデータを送信する間の通知チャネルCSの電圧レベルを、ブロードキャスト通信とP2P通信とで異ならせている。このようなシステムにより、カメラ200が特定のアクセサリ装置と個別に通信を行う場合に、通信相手が変更されるまでは通信相手を改めて通知する必要がないため、カメラ200と、交換レンズ100やアダプタ300を含むアクセサリ装置との間の通信を高速に行うことができる。
【0133】
<変形例>
以下、ブロードキャスト通信における図4とは異なる通信制御方法について説明する。図4のブロードキャスト通信においては、カメラマイコン205が通知チャネルCSにLow出力を行って、通知チャネルCSの信号レベルをLowにすることでブロードキャスト通信の開始を各通信スレーブに通知している。
【0134】
図9に示した変形例は、通信スレーブとしてのレンズマイコン111やアダプタマイコン302が、ブロードキャスト通信の開始をカメラマイコン205にリクエストする態様を示している。カメラマイコン205への通信リクエストは、カメラマイコン205からアクセサリ装置に含まれるマイコンへの通信が一時停止された状態において、アクセサリ装置に含まれるマイコンが、カメラマイコン205との通信を主体的に再開させるときに実行される。
【0135】
本変形例は、例えば、中間アダプタ300に備えられた操作部材304がユーザによって操作された場合に実行される。交換レンズ100に供えられた操作部材130がユーザによって操作された場合にも実行されうる。カメラシステムとして通信が一時停止された状態から通信を再開させる場合、基本的には、通信マスタであるカメラマイコン205が主体的に通信を再開させることが適切である。通信スレーブであるアクセサリ装置のマイコンに通信を再開させる機能を持たせることは、通信マスタであるカメラシステム205が予期しないタイミングでの通信再開が行われるおそれがある。それゆえ、通信スレーブに対して、無制限に通信を再開させる機能を持たせることは好ましくない。
【0136】
そこで、本変形例では、アクセサリ装置に含まれるマイコンが、カメラマイコン205への通信開始リクエストを行うという形で、通信スレーブであるアクセサリ装置のマイコンに、通信を再開させる機能を持たせている。
【0137】
図9は、本変形例のブロードキャスト通信における通信波形を示している。本変形例の通信制御方法では、通信スレーブとしてのレンズマイコン111やアダプタマイコン302が、通信イベントの発生の有無を監視している。そして、通信イベントが発生した場合には、通知チャネルCSにLow出力を行うことで通知チャネルCSの信号レベルをLowにする。
【0138】
カメラマイコン205は、通知チャネルCSの信号レベルがLowになったことに応じて、通知チャネルCSにLow出力を行った上でブロードキャスト通信を開始する。通知チャネルCSにLow出力を行った後のブロードキャスト通信のフローは、図4で説明したフローと同じであるため、ここでの説明は割愛する。
【0139】
以上説明した実施例は、通知チャネルCSとデータ通信チャネルDATAを含む通信チャネルに加え、別の通信チャネルと併用可能である。
【0140】
その一例を、図10を用いて説明する。なお、図10において、図1と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図10において、図1に記載されている部材の一部の図示を省略している。前述の通知チャネルCSおよびデータ通信チャネルDATAは、第3通信という通信用の通信線である。
【0141】
レンズマイコン111は、通信部112に加え、第1通信を行うための通信部131、第2通信を行うための通信部132を制御する。カメラマイコン205は、通信部112に加え、第1通信を行うための通信部209、第2通信を行うための通信部210を制御する。
【0142】
まず、第1通信について説明する。第1通信は、通信部131と通信部209を介して行われる通信である。通信部131はレンズマイコン111からの指示に基づいて、通信部209はカメラマイコン205からの指示に基づいて、通知チャネルCS1、データ通信チャネルDCL、データ通信チャネルDLCを介して通信を行う。通信部131および通信部209は、通知チャネルCS1の電圧レベル、調歩同期通信の際の通信レート(単位時間当たりのデータ量)や通信電圧の設定をする。さらに、レンズマイコン111やカメラマイコン205からの指示を受けて、データ通信チャネルDCLおよびデータ通信チャネルDLCを介したデータの送受信を行う。
【0143】
通知チャネルCS1は、カメラ本体200から交換レンズ100への通信要求の通知等に用いられる信号線である。データ通信チャネルDCLは、カメラ本体200から交換レンズ100にデータを送信する際に用いられるチャネルであり、データ通信チャネルDLCは交換レンズ100からカメラ本体200にデータを送信する際に用いられるチャネルである。
【0144】
カメラマイコン205とレンズマイコン111は、第1通信では、クロック同期通信または調歩同期通信により通信を行う。交換レンズ100がカメラ本体200に接続された際に行われる初期通信も、まずは第1通信により行う。カメラマイコン205とレンズマイコン111は交換レンズ100の識別情報を通信し、カメラ本体200装着された交換レンズ100が調歩同期通信に対応可能であることが判明すると、クロック同期通信から調歩同期通信に通信方式を切り替える。また、識別情報の通信の結果、カメラマイコン205は、交換レンズ100が、アダプタ300も含めて通信を行う第3通信に対応可能かどうかを識別してもよい。カメラマイコン205は、交換レンズ100が第3通信に対応可能であると判断した場合、交換レンズ100や中間アダプタ300を認識するための認証通信をP2P通信を介して行ってもよい。
【0145】
次に、第2通信について説明する。第2通信は、交換レンズ100からカメラ本体200への一方向の通信である。第2通信は、通信部132と通信部210を介して行われる。通信部132はレンズマイコン111からの指示に基づいて、通信部210はカメラマイコン205からの指示に基づいて、通知チャネルCS2とデータ通信チャネルDLC2を介して通信を行う。カメラ通信部208とレンズ通信部118は、クロック同期式通信や調歩同期通信によりデータを送受信する。第1通信のデータ通信チャネルDLCと共に第2通信チャネルのデータ通信チャネルDLC2を用いることで、交換レンズ100からカメラ本体200に対して大量のデータを短時間で送信することが可能となる。
【0146】
以上説明した実施例は代表的な例に過ぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。例えば、上記実施例では、アクセサリ装置として交換レンズと中間アダプタを用いた例を示したが、アクセサリ装置として、カメラ本体に直接装着される交換レンズとカメラ本体に直接装着されるストロボ等を用いても良い。
【符号の説明】
【0147】
100 交換レンズ(アクセサリ装置)
111 レンズマイコン(アクセサリ制御部)
200 カメラ
205 カメラマイコン(カメラ制御部)
300 中間アダプタ(アクセサリ装置)
302 アダプタマイコン(アクセサリ制御部)
CS 通知チャネル
DATA データ通信チャネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10