(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】多成分系酸化物ガラス、光学素子、光ファイバ、及び多成分系酸化物ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 3/091 20060101AFI20231226BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20231226BHJP
C03C 13/04 20060101ALI20231226BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20231226BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C03C3/091
C03C3/093
C03C13/04
G02B1/00
G02B6/02 376A
(21)【出願番号】P 2019214549
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391009936
【氏名又は名称】株式会社住田光学ガラス
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】安齋 大
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/158774(WO,A1)
【文献】特開2014-31285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO
2:45~53モル%、
B
2O
3:22~30モル%、
Al
2O
3:5~9モル%、
Sb
2O
3:0.02~0.10モル%、
Li
2O:0~18モル%、
Na
2O:0~18モル%、
K
2O:0~18モル%、
MgO:0~13モル%、
CaO:0~13モル%、
BaO:0~13モル%、及び
ZnO:0~13モル%、
を含有する組成を有し、
Li
2O、Na
2O及びK
2Oの合計含有量をX(モル%)とし、MgO、CaO、BaO及びZnOの合計含有量をY(モル%)としたときに、下式(1)及び下式(2):
11≦X≦18 ・・・(1)
14≦X+Y≦24 ・・・(2)
を満足し、且つ、
下式(3):
βOH=α/t ・・・(3)
[式中、αは、赤外線吸収スペクトルの3400cm
-1~3800cm
-1の範囲内に存在するOH基に起因する吸収ピークの高さ(-)を表し、tは、ガラスの厚み(cm)を表す。]で算出されるβOHの値が、4cm
-1以上である、ことを特徴とする、多成分系酸化物ガラス。
【請求項2】
請求項1に記載の多成分系酸化物ガラスを用いたことを特徴とする、光学素子。
【請求項3】
請求項1に記載の多成分系酸化物ガラスを用いたことを特徴とする、光ファイバ。
【請求項4】
ガラス原料を溶融させる工程を含む、請求項1に記載の多成分系酸化物ガラスの製造方法であって、
ガラス原料として硝酸塩及び硫酸塩を用いず、且つ、
ガラス原料を溶融させる際の加熱温度を1350℃以下とする、ことを特徴とする、多成分系酸化物ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分系酸化物ガラス、光学素子、光ファイバ、及び多成分系酸化物ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業において紫外線の利用が広がっている。特に、近紫外線の中でもUVA(波長:約315~400nm)の利用については、高出力のLEDが開発されたため、より柔軟な光源設計が可能となり、今後ますます市場が広がっていくことが予想される。
【0003】
上述のような波長域の紫外線を利用した光学部材の設計においては、ガラス材料が主に使用される。これは、樹脂等の他の材料が、紫外線に対して劣化し易い傾向にあるからである。しかしながら、ガラスにおいても、強力な紫外線下に長時間曝された場合には、透過率の減衰が起こることが知られている。この現象は、ソラリゼーションと呼ばれる。
【0004】
ガラスのソラリゼーションの原理については、これまで多くの報告がなされており、主にガラスに含まれる遷移金属イオンの価数変化、ガラス中の格子欠陥などによるものと考えられている。そのため、ソラリゼーションを極力回避するためには、遷移金属イオンの混入及び格子欠陥の生成が少ないガラスが好ましいとされており、実際、そのようなガラスとして、石英ガラス、特には気相法で作製された合成石英ガラスが利用されている。しかしながら、石英ガラスは、融点が高い上、熱加工性が悪いため、複雑な形状の光学部品の製造が困難である。また、気相法で作製された合成石英ガラスは、溶融法で作製されるガラスに比べ、原料代が高く、特別な設備を要するため、一般に製造コストが高い。
【0005】
一方、紫外線によるソラリゼーションが少なく、且つ石英ガラス以外のガラスとしては、例えば、特許文献1に開示されているような、フッ素イオンを含む多成分系ガラスが挙げられる。しかしながら、フッ素イオンを含むガラスの製造においては、溶融時に毒性のあるフッ素ガスが多く放出されるため、特殊な設備が必要になる。その上、当該ガラスを熱加工する際には、ガラス表面の失透を避けるべく、酸素が取り除かれた不活性環境とする必要がある。
【0006】
また、特許文献2は、ガラス中に取り込まれた水の大部分がOH基となって存在することに着目するとともに、ガラスに含まれる水の濃度を高める、即ちOH基を多くすることで、紫外線によるソラリゼーションを低減できることを開示している。特に、特許文献2においては、白金坩堝等からの白金イオンの混入が少なくなることでソラリゼーションが低減されること、及び、OH基を多く含むガラスは再熱処理により着色が低減され得ることも示されている。
【0007】
なお、ガラスに含まれるOH基のソラリゼーションへの効果は、例えば特許文献3にも示されている。また、特許文献3では、強力な紫外線レーザ光の照射によって切断された石英ガラスにおいて、OH基が、網目構造の修復に影響を及ぼすことが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-114536号公報
【文献】特開2014-224026号公報
【文献】特開平01-167258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載された、OH基を多く含むガラスの製造では、溶融時に水蒸気を吹き込むなどの特殊な作業を必要とする。そのため、炉内の温度が安定し難い上、水蒸気圧の精密な制御が求められることから、均質なガラスを製造することが困難である。
【0010】
そこで、水蒸気を吹き込むなどの特殊な作業を必要とせず、OH基を多く含むガラスを溶融法により安定して製造することが求められる。しかしながら、かかる製造には、これまで下記の問題があった。
【0011】
まず、現在の光学用ガラスの製造には、炭化ケイ素や二珪化モリブデンといった発熱体を備える電気炉が用いられているが、このような電気炉でガラスを溶融させる際には、酸水素ガスを燃焼させて加熱する炉などでガラスを溶融させる場合に比べ、炉内の雰囲気中に含まれる水蒸気が少ない。よって、水を炉内の雰囲気から取り込むことが難しいため、水を原料から与え、ガラス融液内に留めなければならない。
【0012】
しかしながら、その場合、ガラスの溶融は一般に1000℃を超える高温で行われることから、水は水蒸気となり、原料の反応及び分解により発生するガスとともに、ガラス融液から大量に放出されることとなる。
【0013】
更に、均質で泡の無いガラスブロックを得るためには、高温で数時間保持する工程、即ち清澄工程を経る必要があるところ、かかる工程では、水が水蒸気の泡となって常にガラス融液から浮上し、失われていくこととなる。
【0014】
そこで、本発明は、上記の問題を有利に解決するものであり、特殊な作業を必要とすることなく安定して製造可能な、ソラリゼーション耐性に優れるガラスを提供することを目的とする。また、本発明は、上述したガラスを用いた光学素子及び光ファイバを提供することを目的とする。また、本発明は、ソラリゼーション耐性に優れるガラスを特殊な作業を必要とすることなく安定して製造可能な、ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記問題に対処すべく、ガラス中の水(OH基)に着目して鋭意検討した。その結果、アルミノホウ珪酸塩ガラスの組成を特定の範囲内に調整することで、水蒸気を吹き込むなどの特殊な作業を必要とすることなく、OH基をガラス中に多く取り込めることを見出した。そして、本発明者は、そのOH基濃度の指標となるβOHが所定値以上であれば、紫外線耐性が高くなる(ソラリゼーションが低減される)ことを見出した。
【0016】
更に、本発明者は、上述したガラスを製造するにあたり、使用するガラス原料から特定の化合物を取り除き、ガラス原料を溶融させる際の加熱温度を所定温度以下にすることで、溶融中にガラス融液から失われる水の量を低減できることを見出した。
【0017】
即ち、本発明のガラスは、多成分系酸化物ガラスであって、
SiO2:45~53モル%、
B2O3:22~30モル%、
Al2O3:5~9モル%、
Sb2O3:0.02~0.10モル%、
Li2O:0~18モル%、
Na2O:0~18モル%、
K2O:0~18モル%、
MgO:0~13モル%、
CaO:0~13モル%、
BaO:0~13モル%、及び
ZnO:0~13モル%、
を含有する組成を有し、
Li2O、Na2O及びK2Oの合計含有量をX(モル%)とし、MgO、CaO、BaO及びZnOの合計含有量をY(モル%)としたときに、下式(1)及び下式(2):
11≦X≦18 ・・・(1)
14≦X+Y≦24 ・・・(2)
を満足し、且つ、
下式(3):
βOH=α/t ・・・(3)
[式中、αは、赤外線吸収スペクトルの3400cm-1~3800cm-1の範囲内に存在するOH基に起因する吸収ピークの高さ(-)を表し、tは、ガラスの厚み(cm)を表す。]で算出されるβOHの値が、4cm-1以上である、ことを特徴とする。かかる多成分系酸化物ガラスは、特殊な作業を必要とすることなく安定して製造可能であり、また、ソラリゼーション耐性に優れる。
【0018】
また、本発明の光学素子は、上述した多成分系酸化物ガラスを用いたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の光ファイバは、上述した多成分系酸化物ガラスを用いたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明のガラスの製造方法は、ガラス原料を溶融させる工程を含む、上述した多成分系酸化物ガラスの製造方法であって、
ガラス原料として硝酸塩及び硫酸塩を用いず、且つ、
ガラス原料を溶融させる際の加熱温度を1350℃以下とする、ことを特徴とする。かかるガラスの製造方法によれば、ソラリゼーション耐性に優れるガラスを、特殊な作業を必要とすることなく安定して製造可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特殊な作業を必要とすることなく安定して製造可能な、ソラリゼーション耐性に優れるガラスを提供することができる。また、本発明によれば、上述したガラスを用いた光学素子及び光ファイバを提供することができる。また、本発明によれば、ソラリゼーション耐性に優れるガラスを特殊な作業を必要とすることなく安定して製造可能な、ガラスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一例のガラスの波数3500cm
-1付近における赤外線吸収スペクトルデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(多成分系酸化物ガラス)
本発明の一実施形態の多成分系酸化物ガラス(以下、「本実施形態のガラス」と称することがある。)は、
SiO2:45~53モル%、
B2O3:22~30モル%、
Al2O3:5~9モル%、
Sb2O3:0.02~0.10モル%、
Li2O:0~18モル%、
Na2O:0~18モル%、
K2O:0~18モル%、
MgO:0~13モル%、
CaO:0~13モル%、
BaO:0~13モル%、及び
ZnO:0~13モル%、
を含有する組成を有し、
Li2O、Na2O及びK2Oの合計含有量をX(モル%)とし、MgO、CaO、BaO及びZnOの合計含有量をY(モル%)としたときに、以下の式(1)及び(2):
11≦X≦18 (1)
14≦X+Y≦24 (2)
を満足し、且つ、
下式(3):
βOH=α/t ・・・(3)
[式中、αは、赤外線吸収スペクトルの3400cm-1~3800cm-1の範囲内に存在するOH基に起因する吸収ピークの高さ(-)を表し、tは、ガラスの厚み(cm)を表す。]で算出されるβOHの値が、4cm-1以上である、ことを特徴とする。
【0024】
本実施形態のガラスによれば、βOHの値が4cm-1以上である、言い換えれば、十分な量のOH基を含むことから、UVAをはじめとする紫外線への耐性が高い。なお、ガラス中の水(OH基)は、例えば、空気中の水分、ガラス原料中の水分などに由来することができる。
【0025】
本実施形態のガラスは、例えば、後述する多成分系酸化物ガラスの製造方法により製造することができる。
【0026】
まず、本実施形態のガラスにおいて、各成分の含有量を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分の含有量の単位は何れも「モル%」であるが、以下、特に断らない限り、単に「%」で示す。
【0027】
<SiO2>
本実施形態のガラスにおいて、SiO2は、ガラスの主成分であり、ガラスの網目状の骨格構造を形成する酸化物である。但し、SiO2の含有量が45%未満であると、ガラスが分相し易くなる。一方、SiO2の含有量が53%を超えると、溶け残りが生じ易くなる上、溶融温度(ガラス原料が完全に溶融する温度、以下同じ。)が著しく高くなり、ガラス中のOH基が減少する。よって、本実施形態のガラスにおいては、SiO2の含有量を45~53%とする。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるSiO2の含有量は、46%以上であることが好ましく、47%以上であることがより好ましく、また、52%以下であることが好ましく、51%以下であることがより好ましい。
【0028】
<B2O3>
本実施形態のガラスにおいて、B2O3は、SiO2と同様にガラスの網目状の骨格構造を形成する酸化物であり、また、溶融温度を下げる成分である。但し、B2O3の含有量が22%未満であると、溶融温度が過度に高くなり、溶け残りが生じ易くなる。一方、B2O3の含有量が30%を超えると、ガラス中に泡が多く発生する。その結果、泡を除去するために十分な清澄を行うと、水が失われる。よって、本実施形態のガラスにおいては、B2O3の含有量を22~30%とする。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるB2O3の含有量は、23%以上であることが好ましく、23.5%以上であることがより好ましく、また、29%以下であることが好ましく、28%以下であることがより好ましい。
【0029】
<Al2O3>
本実施形態のガラスにおいて、Al2O3は、ガラスにOH基を多量に取り込む作用に寄与する成分であることが判明した。但し、Al2O3の含有量が5%未満であると、ガラスに十分な量のOH基を取り込むことができない。一方、Al2O3の含有量が9%を超えると、溶け残りが生じ易くなる上、溶融温度が著しく高くなり、ガラス中のOH基が減少する。よって、本実施形態のガラスにおいては、Al2O3の含有量を5~9%とする。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるAl2O3の含有量は、5.5%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましく、また、8%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。
【0030】
<Sb2O3>
本実施形態のガラスにおいて、Sb2O3は、ガラスに脱泡の効果を与える成分である。OH基を多量に取り込んだガラスは泡を発生させ易いことから、本実施形態のガラスにおいては、Sb2O3の添加が有効である。但し、Sb2O3の含有量が0.02%未満であると、脱泡の効果を十分に得ることができない。一方で、Sb2O3は、還元剤としても働くため、不純物として混入した遷移金属イオンを還元するなどによって着色の原因となり易く、また、着色が生じるとソラリゼーションが起こり易くなる。特に、Sb2O3の含有量が0.10%を超えると、紫外線耐性が損なわれ、ソラリゼーションが起こり易くなる。よって、本実施形態のガラスにおいては、Sb2O3の含有量を0.02~0.10%とする。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるSb2O3の含有量は、0.03%以上であることが好ましく、0.04%以上であることがより好ましく、また、0.095%以下であることが好ましく、0.09%以下であることがより好ましい。
【0031】
<Li2O>
本実施形態のガラスにおいて、Li2Oは、修飾酸化物であり、また、ガラス製造時の溶融温度を下げる成分である。但し、Li2Oの含有量が18%を超えると、ガラスにOH基が取り込まれ難くなる虞がある。よって、本実施形態のガラスにおいては、Li2Oの含有量を18%以下とする。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるLi2Oの含有量は、12%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
【0032】
<Na2O>
本実施形態のガラスにおいて、Na2Oは、Li2Oと同様、修飾酸化物であり、また、ガラス製造時の溶融温度を下げる成分である。但し、Na2Oの含有量が18%を超えると、ガラスにOH基が取り込まれ難くなる虞がある。よって、本実施形態のガラスにおいては、Na2Oの含有量を18%以下とする。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるNa2Oの含有量は、12%以下であることが好ましく、11%以下であることがより好ましい。
【0033】
<K2O>
本実施形態のガラスにおいて、K2Oは、Li2O及びNa2Oと同様、修飾酸化物であり、また、ガラス製造時の溶融温度を下げる成分である。但し、K2Oの含有量が18%を超えると、ガラスにOH基が取り込まれ難くなる虞がある。よって、本実施形態のガラスにおいては、K2Oの含有量を18%以下とする。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるK2Oの含有量は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0034】
<Li2O+Na2O+K2O>
本実施形態のガラスにおいて、Li2O、Na2O及びK2Oの合計含有量が11%未満であると、溶け残りが生じ易くなる上、溶融温度が高くなり、ガラス中のOH基が減少する。一方、本実施形態のガラスにおいて、多量のLi2O、Na2O及びK2Oは、ガラスへのOH基の取り込みを阻害する虞があることが判明し、特に、Li2O、Na2O及びK2Oの合計含有量が18%を超えると、ガラスに十分な量のOH基を取り込むことができない。よって、本実施形態のガラスにおいては、Li2O、Na2O及びK2Oの合計含有量をX(モル%)としたときに、以下の式(1):
11≦X≦18 (1)
を満足させることとする。同様の観点から、上記Xは、11.2%以上であることが好ましく、11.5%以上であることがより好ましく、また、17%以下であることが好ましく、16%以下であることがより好ましい。
【0035】
なお、本実施形態のガラスは、混合アルカリ効果を生んでガラス形成をし易くする観点から、Li2O、Na2O及びK2Oから選択される2種以上の成分を含有することが好ましい。
【0036】
<MgO>
本実施形態のガラスにおいて、MgOは、ガラス製造時の溶融温度を下げる成分である。但し、MgOの含有量が13%を超えると、ガラスにOH基が取り込まれ難くなる虞がある。よって、本実施形態のガラスにおいては、MgOの含有量を13%以下とする。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるMgOの含有量は、9%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。
【0037】
<CaO>
本実施形態のガラスにおいて、CaOは、ガラス製造時の溶融温度を下げる成分である。但し、CaOの含有量が13%を超えると、ガラスにOH基が取り込まれ難くなる虞がある。よって、本実施形態のガラスにおいては、CaOの含有量を13%以下とする。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるCaOの含有量は、9%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。
【0038】
<BaO>
本実施形態のガラスにおいて、BaOは、ガラス製造時の溶融温度を下げる成分である。但し、BaOの含有量が13%を超えると、ガラスにOH基が取り込まれ難くなる虞がある。よって、本実施形態のガラスにおいては、BaOの含有量を13%以下とする。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるBaOの含有量は、9%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。
【0039】
<ZnO>
本実施形態のガラスにおいて、ZnOは、ガラス製造時の溶融温度を下げる成分である。但し、ZnOの含有量が13%を超えると、ガラスにOH基が取り込まれ難くなる虞がある。よって、本実施形態のガラスにおいては、ZnOの含有量を13%以下とする。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるZnOの含有量は、9%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。
【0040】
<(Li2O+Na2O+K2O)+(MgO+CaO+BaO+ZnO)>
本実施形態のガラスにおいて、MgO、CaO、BaO及びZnOは、上述の通り、ガラス製造時の溶融温度を下げる成分である。しかし、その効果は、Li2O、Na2O及びK2Oに比べ、小さい。一方で、MgO、CaO、BaO及びZnOは、Li2O、Na2O及びK2Oに比べ、ガラスへのOH基の取り込みを阻害する影響が小さいことも判明した。そのため、本実施形態においては、MgO、CaO、BaO及びZnOから選択される成分を、Li2O、Na2O及びK2Oから選択される成分と併用することで、溶融温度とOH基の含有量とのバランスを調整することができる。
そして、Na2O、K2O及びLi2Oと、MgO、CaO、BaO及びZnOとの合計含有量が14%未満であると、溶け残りが生じ易くなる上、溶融温度が高くなり、ガラス中のOH基が減少する。また、上記合計含有量が24%を超えると、ガラスに十分な量のOH基を取り込むことができない。よって、本実施形態のガラスにおいては、Li2O、Na2O及びK2Oの合計含有量をX(モル%)とし、MgO、CaO、BaO及びZnOの合計含有量をY(モル%)としたときに、以下の式(2):
14≦X+Y≦24 (2)
を満足させることとする。同様の観点から、上記X+Yは、15%以上であることが好ましく、16%以上であることがより好ましく、また、23%以下であることが好ましく、22%以下であることがより好ましい。
【0041】
<その他の成分>
本実施形態のガラスは、目的を外れない限り、上述した成分以外のその他の成分、例えば、Cs2O、SrO、ZrO2、P2O5、Ta2O5、Ga2O3、In2O3、Y2O3、La2O3、及びGd2O3などを適宜含有することができる。但し、より確実に所望の効果を得る観点から、本実施形態のガラスにおける上述のその他の成分の含有量は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましく、実質的に0%であることが一層好ましい。
【0042】
一方、本実施形態のガラスは、より確実に所望の効果を得る観点から、TiO2、Nb2O5、WO3、Bi2O3、Cr2O3、MnO、Mn2O3、Fe2O3、CoO、NiO、Cu2O、Ag2O、Au2O、及びPtO2を実質的に含有しないことが好ましい。
なお、本明細書において「実質的に含有しない」とは、当該成分が不純物として不可避的に混入する、具体的には、当該成分が0.2質量%以下の割合で含有する場合を包含するものとする。
【0043】
また、フッ素成分は、ガラス溶融の際に毒性ガスを発生させるという問題がある。従って、本実施形態のガラスは、フッ素成分を実質的に含有しないことが好ましい。
【0044】
そして、本実施形態のガラスは、より確実に所望の効果を得る観点から、上述した必須成分及び任意成分のみからなる組成(SiO2、B2O3、Al2O3及びSb2O3を必須酸化物とするとともに、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、BaO及びZnOから選択される酸化物のみを含み得る組成)を有することが好ましい。
なお、本明細書において「上述した成分のみからなる」とは、当該成分以外の不純物成分が不可避的に混入する、具体的には、不純物成分の割合が0.2質量%以下である場合を包含するものとする。
【0045】
<βOH>
本実施形態のガラスは、式(3):βOH=α/t[式中、αは、赤外線吸収スペクトルの波数3500cm
-1付近(3400cm
-1~3800cm
-1)に存在するOH基に起因する吸収ピークの高さ(-)を表し、tは、ガラスの厚み(cm)を表す。]で算出されるβOHの値が、4cm
-1以上である。参考までに、
図1に、一例のガラス(後述する実施例9のガラス)の赤外線吸収スペクトルにおけるOH基に起因する吸収ピークの高さ(α)を示し、本図に係るガラスは、α=2.17である。本発明者は、鋭意検討を重ね、種々の組成を有する3mm厚のガラス試料について、赤外線吸収スペクトルにおける波数3500cm
-1付近のOH基に起因する吸収ピークの高さと、JOGIS規格 J04-2005 「光学ガラスのソラリゼーションの測定方法」に準拠したソラリゼーション試験による紫外線耐性との関係性に着目した。その結果、上記の吸収ピークの高さを用いて算出されるβOHが4cm
-1以上であれば、UVAをはじめとする紫外線への耐性を持つことが判明した。同様の観点から、本実施形態のガラスのβOHは、4.5cm
-1以上であることが好ましく、5cm
-1以上であることがより好ましい。一方、本実施形態のガラスは、溶融中の揮発を抑制する観点、及び、ガラスの耐候性などの化学的耐久性を保持する観点から、βOHが15cm
-1以下であることが好ましい。
【0046】
なお、上記の赤外線吸収スペクトルにおいて、他の成分に起因するピークが混在する場合には、ピーク分離を行ってベースライン補正をし、αを求めることとする。
【0047】
また、ガラスのβOHの調整は、例えば、用いるガラス原料の種類又は配合比を適切に選択する、ガラス原料を溶融させる際の加熱温度を調節する、等により、行うことができる。
【0048】
ここで、参考までに、ガラス中のOH基の量を定量する方法として、OH基のモル吸光係数(ε)を用いた以下の式(A)から算出する方法が挙げられる。
【数1】
なお、式(A)において、C
OHはOH基のモル濃度(モル/L)を表し、Iは透過光強度を表し、I
0は入射光強度を表し、tはガラスの厚み(cm)を表し、εはOH基のモル吸光係数(L/モル・cm)を表す。ここで、式(A)におけるlog
10(I
0/I)としては、赤外線吸収スペクトルのOH基に起因する吸収ピークの高さ(波数3500cm
-1付近に存在)を用いることができる。また、OH基のモル吸光係数(ε)は、論文(例えば、J.E.Shelby, J.Am.Ceram.Soc., 65, C59 (1982)、G. Stephenson and K.H.Jack, Tran.Br.Ceram.Soc., 59, 397 (1960)など。)によって異なる上、ガラスの組成によっても変わる。そこで、鈴木俊夫ら BUNSEKI KAGAKU Vol.63, No.10, 831-836 (2014)における報告内容を参考に、本実施形態のガラス系では、ε=55L/モル・cmが一律で妥当であると判断して採用し、C
OHを求めることとする。そして、求めたC
OHと、JOGIS規格 J05-1975 「光学ガラスの比重の測定方法」に準拠して測定されるガラスの密度とを用いると、本実施形態のガラスは、OH基の量がおよそ500質量ppm以上と見積もられる。
【0049】
本実施形態のガラスは、JOGIS規格 J04-2005 「光学ガラスのソラリゼーションの測定方法」に準拠して評価される「ソラリゼーションの程度」(照射前の透過率80%に対応する波長において照射後の透過率の変化量)が、1%以下の減少であることが好ましく、0.8%以下の減少であることがより好ましく、0.6%以下の減少であることが更に好ましい。
なお、上記のソラリゼーションの程度は、具体的には、実施例に記載の方法により評価することができる。
【0050】
本実施形態のガラスは、例えば、高い紫外線耐性が求められる、光学材料、レンズ、レンズアレイ、光導波路などの光学素子、光ファイバ等の製造に用いることができる。
【0051】
(多成分系酸化物ガラスの製造方法)
本発明の一実施形態の多成分系酸化物ガラスの製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」と称することがある。)は、上述した多成分系酸化物ガラスを製造するための方法である。そして、本実施形態の製造方法は、ガラス原料を溶融させる工程を含み、その際、(1)ガラス原料として硝酸塩及び硫酸塩を用いないこと、並びに、(2)ガラス原料を溶融させる際の加熱温度を1350℃以下とすること、を特徴とする。本実施形態の製造方法によれば、水蒸気を吹き込むなどの特殊な作業を必要とせず、上述した多成分系酸化物ガラスを安定して製造可能である。
【0052】
上記(1)に関し、硝酸塩(例えば、硝酸バリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなど)及び硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなど)は、一般に、他の原料に比べて清澄作用を促進させる傾向にある。また、特に硝酸塩は、一般に、他の原料に比べて反応性が高く、また、無機成分の単位質量当たりの嵩が小さいため、逐次投入が容易である。そのため、硝酸塩及び硫酸塩は、ガラスを製造するための原料として頻繁に用いられる。しかしながら、上述した本実施形態のガラスを製造しようとする際に硝酸塩や硫酸塩を用いると、ガラス中に十分な量の水の取り込むことができない虞があることが判明した。これは、例えば硝酸塩が、一般に水を取り込み易い傾向にあることが既知であることからも、当業者が予測できない驚くべき発見である。そのため、本実施形態の製造方法では、ガラス原料として硝酸塩及び硫酸塩を用いず、その代わりに、各成分に相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩等を用いることとする。
【0053】
また、上記(2)に関し、ガラス原料の溶融時の加熱温度を1350℃超とすると、過度の量の水(水蒸気)がガラス融液から放出されるため、所望の量の水(OH基)をガラス中に留めることができない虞があることが判明した。そのため、本実施形態の製造方法では、ガラス原料を溶融させる際の加熱温度を1350℃以下とする。
【0054】
本実施形態の製造方法では、所望の品質を確保する観点から、1350℃以下の加熱により、ガラス原料が完全に溶融することが好ましい。換言すると、本実施形態の製造方法では、ガラス原料の溶融温度が1350℃以下であることが好ましい。なお、加熱温度を1350℃以下にして溶融させる際に、ガラス原料の溶け残り又は泡の発生などの問題が生じる場合には、十分な品質を確保するため、用いるガラス原料の種類又は配合比を適切に変更するなどして、上記問題を回避することが肝要である。
【0055】
本実施形態の製造方法では、例えば、本実施形態のガラスに含まれ得る各成分の原料(ガラス原料)として、硝酸塩及び硫酸塩以外の化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩等)を所定の割合で秤量し、十分混合したものを調合原料とする。次いで、この調合原料を、当該原料と反応性のない熔融容器(例えば貴金属製の坩堝)に投入して、電気炉にて1000~1350℃に加熱して溶融させながら適時撹拌する。次いで、電気炉で清澄化及び均質化を行ってから、適当な温度に予熱した金型内に鋳込んだ後、任意に電気炉内で徐冷して歪みを取り除くことで、上述した本実施形態のガラスを得ることができる。
【0056】
なお、清澄化の時間は、過度の量の水が逸失することを回避する観点から、例えば、1~3時間とすることができる。
【0057】
(光学素子)
本発明の一実施形態の光学素子(以下、「本実施形態の光学素子」と称することがある。)は、上述した多成分系酸化物ガラスを素材として用いたことを特徴とする。別の言い方をすると、本実施形態の光学素子は、上述した多成分系酸化物ガラスを備えることを特徴とする。本実施形態の光学素子は、上述した多成分系酸化物ガラスを素材として用いているため、UVAをはじめとする紫外線への耐性が高い。
【0058】
(光ファイバ)
本発明の一実施形態の光ファイバ(以下、「本実施形態の光ファイバ」と称することがある。)は、上述した多成分系酸化物ガラスを素材として用いたことを特徴とする。別の言い方をすると、本実施形態の光ファイバは、上述した多成分系酸化物ガラスを備えることを特徴とする。本実施形態の光ファイバは、上述した多成分系酸化物ガラスを素材として用いているため、UVAをはじめとする紫外線への耐性が高い。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の多成分系酸化物ガラスを具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
実施例及び比較例のガラスは、以下の方法で製造した。
【0061】
(実施例1-13)
各成分のガラス原料として、各々相当する酸化物、水酸化物又は炭酸塩を準備し、ガラス化した後の組成が表1に示す通りとなるように秤量し、混合して、調合原料を得た。この調合原料を白金坩堝に投入し、表1に示される1300~1350℃の範囲内の温度に加熱して溶融し、白金製の撹拌棒で適時撹拌して均質化を図った。次いで、2.5時間清澄化してから、適当な温度に予熱した金型に鋳込み、徐冷して、それぞれのガラスを得た。その結果、全実施例のガラスにおいて、無色透明であり、結晶物の析出及び大きな泡の発生が無いことが確認された。
【0062】
(比較例1-12)
各成分のガラス原料として、各々相当する酸化物、水酸化物又は炭酸塩を準備し、ガラス化した後の組成が表2に示す通りとなるように秤量し、混合して、調合原料を得た。この調合原料を白金坩堝に投入し、表2に示される1300~1400℃の範囲内の温度に加熱して溶融し、白金製の撹拌棒で適時撹拌して均質化を図った。次いで、2.5時間清澄化してから、適当な温度に予熱した金型に鋳込み、徐冷して、それぞれのガラスを得た。なお、比較例6,7,9,11では、清澄化により、均質で透明なガラス融液が得られた。一方、比較例1,4,5,10,12では、溶け残りが発生し、清澄時間を4時間まで延ばしても、溶け残りを除去することができなかった。また、比較例3,8では、泡が発生し、清澄時間を4時間まで延ばしても、泡を除去することができなかった。更に、比較例2では、徐冷中に分相を生じ、ガラスが乳白色を呈した。そのため、比較例6,7,9,11以外の例においては、十分な品質が得られなかったと判断し、その後の評価を行わなかった。
【0063】
実施例1-13及び比較例6,7,9,11で得られたガラスについて、以下の評価を行った。
【0064】
<βOHの算出>
厚み3mmに加工した各ガラスについて、日本分光株式会社製「FT/IR-6100」を用い、赤外線吸収スペクトルを測定した。得られた赤外線吸収スペクトルにおける、波数3500cm
-1付近に存在するOH基に起因する吸収ピークの高さから、上述した式(3):βOH=α/tにより、βOHを算出した(t=0.3(cm))。結果を表1,2に示す。参考までに、
図1に、実施例9のガラスの波数3500cm
-1付近における赤外線吸収スペクトルデータを示す。
【0065】
<ソラリゼーションの程度の評価>
各ガラスについて、JOGIS規格 J04-2005 「光学ガラスのソラリゼーションの測定方法」に準拠して紫外線耐性を評価した。具体的に、まず、分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「U-4100」)を用い、ガラスの透過率を測定し、ガラスにおいて80%の透過率を示す波長(表1,2に示す。)を確認した。その後、ガラスを100℃に保持した状態で、高圧水銀ランプを用いて所定の距離から紫外線を4時間照射する照射試験を行った。次いで、照射試験前に80%の透過率を示した波長における照射試験後の透過率を測定し、照射試験による透過率の変化量(%)(ソラリゼーションの程度)を算出した。結果を表1,2に示す。透過率の減少量が小さいほど、紫外線耐性に優れる(ソラリゼーションが少ない)ことを示す。
【0066】
【0067】
【0068】
表1より、全ての実施例のガラスにおいて、βOHが4cm-1以上であり、また、照射試験による透過率の変化量が1%以下の減少であり、ソラリゼーションの観点で実用上問題の生じない範囲であった。なお、上述した式(A)を用い、OH基のモル吸光係数(ε)を55L/モル・cmとして、実施例1(密度:2.34g/cm3)のガラスにおけるOH基の量を計算したところ、1008質量ppmであった。また、実施例1以外の全ての実施例のガラスにおけるOH基の量を計算したところ、いずれも500質量ppmを超えていた。
【0069】
これに対して、比較例6,9,11のガラスにおいては、いずれもβOHが4cm-1未満であった。なお、上記と同様にして、比較例6,9,11のガラスにおけるOH基の量を計算したところ、いずれも500質量ppm未満であった。また、比較例6,9,11のガラスにおいては、照射試験により透過率が1%を超えて減少したため、実用上問題が生じ得る。
また、比較例7のガラスにおいては、βOHが4cm-1以上であるものの、照射試験により透過率が1%を超えて減少したため、実用上問題が生じ得る。これは、Sb2O3を過度に多く含むことに起因するものと考えられる。
【0070】
(比較例13:実施例11のガラス原料を変更)
実施例11のガラスの製造条件において、ガラスにカリウム成分を与えるガラス原料の少なくとも一部として、硝酸塩、即ち硝酸カリウムを用いたこと以外は、実施例11と同様にして、ガラスを得た。得られたガラスについて、上記と同様の評価を行った。結果を実施例11とともに表3に示す。
【0071】
【0072】
表3より、比較例13のガラスのβOHは、実施例11のガラスのβOHよりも低く、また、4cm-1未満であった。よって、ガラス原料として硝酸塩や硫酸塩を用いてガラスを製造する場合には、十分な量の水を取り込むことができない虞があることが分かる。
【0073】
(比較例14:溶融の際の加熱温度を変更)
実施例11のガラスの製造条件において、溶融の際の加熱温度を1300℃から1400℃に変更したこと以外は、実施例11と同様にして、ガラスを得た。得られたガラスについて、上記と同様の評価を行った。結果を実施例11とともに表4に示す。
【0074】
【0075】
表4より、比較例14のガラスのβOHは、実施例11のガラスのβOHよりも低く、また、4cm-1未満であった。よって、ガラス原料を溶融させる際の加熱温度を1350℃超にしてガラスを製造する場合には、十分な量の水を取り込むことができない虞があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、特殊な作業を必要とすることなく安定して製造可能な、ソラリゼーション耐性に優れるガラスを提供することができる。また、本発明によれば、上述したガラスを用いた光学素子及び光ファイバを提供することができる。また、本発明によれば、ソラリゼーション耐性に優れるガラスを特殊な作業を必要とすることなく安定して製造可能な、ガラスの製造方法を提供することができる。