(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】感覚特性整理チャート及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B10/00 X
(21)【出願番号】P 2019238602
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】597039984
【氏名又は名称】学校法人 川崎学園
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森戸 雅子
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】岩藤 百香
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 早苗
(72)【発明者】
【氏名】三上 史哲
(72)【発明者】
【氏名】武井 祐子
(72)【発明者】
【氏名】難波 知子
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174715(JP,A)
【文献】米国特許第06632429(US,B1)
【文献】特開2007-065936(JP,A)
【文献】特開2007-058704(JP,A)
【文献】特開2018-047166(JP,A)
【文献】高橋 秀俊,自閉スペクトラム症の感覚の特徴,精神神経学雑誌,2018年,Vol.120, No.5,pp.369-383
【文献】森田 十誉子,唾液検査と質問紙調査を組み合わせた口腔保健指導プログラムの有効性評価,日歯保存誌,2016年,Vol.59, No.6,pp.497-508
【文献】森戸 雅子 Masako MORITO,ITヘルスケア誌 第11巻 1号 (2016) ITヘルスケア 第10回記念学術大会 抄録集 Japanese Journal of Applied of IT Healthcare
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00- 5/01
5/06- 5/22
9/00-10/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自閉スペクトラム症の感覚特性に関する情報を整理するためのチャートであって、
当該チャートは、前記感覚特性の分類を示す複数の分類表示部と、
前記感覚特性に関する質問に対する回答を表示する複数の回答表示部とを有しており、
回答表示部は、原点を中心とする複数の円又は多角形と、原点から半径方向に延びる複数の線と
で構成される複数のマスを含んでおり、
回答表示部は、分類表示部に表示された分類と紐づけて回答を表示するためのものであり、
各回答表示部は、所定の面積を占める2つのマスを含んでおり、
該当すると判断された質問については、中心側の第1段目のマスと外側の第2段目のマスとが塗りつぶされ、わからないと判断された質問については、第1段目のマスのみが塗りつぶされ、該当しないと判断された質問についてはマスを塗りつぶさない感覚特性整理チャート。
【請求項2】
分類表示部に示された各分類に該当する感覚特性に関する質問を表示する質問表示部をさらに備える請求項1に記載の感覚特性整理チャート。
【請求項3】
分類表示部は、4つであり、感覚探求、感覚回避、感覚過敏、低登録に対応する分類である請求項1又は2に記載の感覚特性整理チャート。
【請求項4】
一の分類表示部と、当該分類表示部に該当する質問を表示する質問表示部又は当該分類表示部に対応する回答表示部とは、同一又は同系の色彩で着色されることにより、紐づけられている請求項2又は3に記載の感覚特性整理チャート。
【請求項5】
一の分類表示部と、当該分類表示部に該当する質問を表示する質問表示部又は当該分類表示部に対応する回答表示部とは、近傍に配置されることにより、紐づけられている請求項2に記載の感覚特性整理チャート。
【請求項6】
質問表示部と回答表示部は、原点を中心とする同心の複数の円又は多角形と、原点から半径方向外側に延びる複数の直線とから構成されており、
質問表示部は、当該質問表示部に対応する回答表示部を構成する2本の直線と同一の直線で囲まれることにより、質問表示部と回答表示部とが紐づけられている請求項2に記載の感覚特性整理チャート。
【請求項7】
質問表示部は、回答表示部と紐づけて質問を表示するものである請求項2に記載の感覚特性整理チャート。
【請求項8】
質問表示部は、ユーザーが当該質問表示部に対応する回答を表示する回答表示部の位置を選択すると、回答表示部に対応する質問を表示した質問表示部が表示されることで質問表示部と回答表示部とが紐づけられている請求項2に記載の感覚特性整理チャート。
【請求項9】
一の分類表示部及び当該分類表示部に対応する回答表示部と、
他の分類表示部及び当該分類表示部に対応する回答表示部とは、原点から延びる区画線で仕切られている請求項1ないし8のいずれかに記載の感覚特性整理チャート。
【請求項10】
自閉スペクトラム症の感覚特性に関する情報を整理するためにコンピュータを、
請求項1に記載の感覚特性整理チャートを予め記憶しておくチャート保存手段、
前記感覚特性
整理チャートを画像表示部に表示させるチャート表示手段として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
コンピュータの記憶部に予め記憶させた感覚特性に関する質問を出力させ、
ユーザーによって前記質問に対する回答が入力されると、感覚特性の分類又は前記質問と紐づけて回答に関する情報をコンピュータの記憶部に記憶させ、前記分類又は前記質問に対応する前記感覚特性
整理チャートの回答表示部の所定のマスに回答表示を入れる請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
ユーザーによって自閉スペクトラム症の感覚特性に関するテキストが入力され終わると、記憶部に記憶されている感覚特性に関する質問を出力させ、
ユーザーにより当該ユーザー自身が入力した前記感覚特性に関するテキストの内容が該当すると判断した質問が選択されると、ユーザーによって選択された質問を識別する識別情報と、前記テキストが入力された年月日又はユーザーが入力した年月日とを紐づけて一つのレコードとして記憶部に保存させ、
ユーザーによって開始日と終了日が指定されると、前記開始日以降かつ前記終了日以前に該当するレコードの中から、前記識別情報を含むレコードの数を前記質問ごとに集計させて、
予め記憶部に記憶させた条件と質問ごとに集計された前記レコードの集計数とを比較して、レコードの集計数と前記条件に応じて、前記質問に対応する回答表示部の所定のマスに回答表示を表示させる請求項10に記載のプログラム。
【請求項13】
前記感覚特性
整理チャートにおいて、回答表示部は、原点を中心とする複数の同心の円又は複数の同心の多角形で構成される複数のマスを含み、
前記複数のマスは、半径方向に対して、多段に構成されており、
前記条件は、多段階に設定されており、
集計されたレコードの数と多段に設定された条件とを比較して、集計されたレコード数と前記多段階に設定された条件に応じて、回答を多段に表示する請求項12に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自閉スペクトラム症の支援に使用する感覚特性整理チャート及びそれに関連するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自閉スペクトラム症の診断に使用するシステムとして、以下の特許文献1に示される評価システムが知られている。当該評価システムでは、被験者と、被験者とコミュニケーション可能な人とを対面させる。両者の足の下には、動揺計を設置する。この状態で、両被験者には、相手が何を考えているか、どんな人かなどについて考えるように指示をする。動揺計で測定した重心の動揺データ等から積算ノイズ寄与率を求めるとされている。積算ノイズ寄与率と自閉スペクトラム傾向との間には、優位な相関関係があり、ノイズ寄与率(因果的影響量)は、自閉スペクトラム傾向等の診断の支援に使用できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自閉スペクトラム症を持つ人々は、感覚の特性(以下、感覚特性という。)が特徴的である。例えば、水道の蛇口を繰り返し開けたり閉めたりする動作を何度も繰り返したり、会話をする際に同じ言葉を繰り返したりする。定型の発達を経た人でも視覚、聴覚、嗅覚、触覚等の感覚について不快感を催しやすい者がある。しかし、自閉スペクトラム症の場合は、感覚に基づく苦痛が生活に支障を来し、他人との関係を破壊するに至るほどである。自閉スペクトラム症の人々の感覚特性は、脳の機能障害が原因であるとも言われており、外見からは理解することが困難である。
【0005】
自閉スペクトラム症の支援については、早期診断、早期治療の重要性が指摘されている。しかしながら、日本では、自閉スペクトラム症の診断を確定するまでに多くの時間が費やされている。例えば、受診までに数カ月から数年間待たなければならないことがある。自閉スペクトラム症が疑われる人の家族は、医師、臨床心理士、看護師などの専門家に、短時間で効率的にその人特有の感覚特性について、伝えなければならない。家族は、その人物と密に接しているため、感覚特性についてよく知っている傾向がある。しかしながら、その感覚特性に関する情報は、膨大であることが多く、短時間で効率的に情報共有を図ることは困難を伴うことが多い。
【0006】
診断以外の場面でも、自閉スペクトラム症の人々の感覚特性について、情報共有が望まれることがある。例えば、入学の場合には、幼稚園教諭、学校教諭と、その人特有の感覚特性について情報を共有しておくことが望ましい。
【0007】
特許文献1のシステムは、動揺計のデータを利用して、コミュニケーション能力の評価を支援するものであり、自閉スペクトラム症の感覚特性を他人と共有するためのツールではない。
【0008】
本発明は、自閉スペクトラム症の感覚特性に関する情報を整理、視覚化して、感覚特性に関する情報を他人と効率的に共有するためのチャート、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
自閉スペクトラム症の感覚特性に関する情報を整理するためのチャートであって、当該チャートは、前記感覚特性の分類を示す複数の分類表示部と、前記感覚特性に関する質問に対する回答を表示する回答表示部とを有しており、回答表示部は、原点を中心とする円又は多角形と、原点から半径方向に延びる複数の線とで構成される複数のマスを含んでおり、回答表示部は、分類表示部に表示された分類と紐づけて回答を表示するためのものである感覚特性整理チャートにより、上記の課題を解決する。本チャートは、回答表示部は原点を中心とする円又は多角形と、原点から半径方向に延びる複数の線とで構成される複数のマスで構成されるため、マスに記入された回答は感覚特性の分類ごとに視覚的に整理された状態で表示される。他人に感覚特性を効率的に共有することが可能になる。
【0010】
自閉スペクトラム症の感覚特性に関する情報を整理するためにコンピュータを、前記感覚特性整理チャートの画像を予め記憶しておくチャート保存手段、前記感覚特性チャートの画像を画像表示部に表示させるチャート表示手段として機能させるためのプログラムによって、上記の課題を解決する。このプログラムによれば、画像表示部にチャートの画像等を表示させることにより、他人にチャートを提示し、視覚的に感覚特性に関する情報を効率的に共有することが可能になる。
【0011】
上記のチャートにおいて、分類表示部に示された各分類に該当する感覚特性に関する質問を表示する質問表示部をさらに備える構成とすることが好ましい。
【0012】
上記のチャートにおいて、回答表示部は、原点を中心とする複数の同心の円又は複数の同心の多角形で構成される複数のマスを含むものとすることが好ましい。
【0013】
上記のチャートにおいて、一の分類表示部と、当該分類表示部に該当する質問を表示する質問表示部又は当該分類表示部に対応する回答表示部とは、同一又は同系の色彩で着色されることにより、紐づけられたものとすることが好ましい。
【0014】
上記のチャートにおいて、一の分類表示部と、当該分類表示部に該当する質問を表示する質問表示部又は当該分類表示部に対応する回答表示部とは、近傍に配置されることにより、紐づけられたものとすることが好ましい。
【0015】
上記のチャートにおいて、質問表示部と回答表示部は、原点を中心とする同心の複数の円又は多角形と、原点から半径方向外側に延びる複数の直線とから構成されており、質問表示部は、当該質問表示部に対応する回答表示部を構成する2本の直線と同一の直線で囲まれることにより、質問表示部と回答表示部とが紐づけられたものとすることが好ましい。
【0016】
上記のチャートにおいて、質問表示部は、回答表示部と紐づけて質問を表示するものであることが好ましい。
【0017】
上記のチャートにおいて、質問表示部は、ユーザーが当該質問表示部に対応する回答を表示する回答表示部の位置を選択すると、回答表示部に対応する質問を表示した質問表示部が表示されることで質問表示部と回答表示部とが紐づけられたものとすることが好ましい。
【0018】
上記のチャートにおいて、一の分類表示部及び当該分類表示部に対応する回答表示部と、他の分類表示部及び当該分類表示部に対応する回答表示部とは、原点から延びる区画線で仕切られたものとすることが好ましい。
【0019】
上記のプログラムは、コンピュータの記憶部に予め記憶させた感覚特性に関する質問を出力させ、ユーザーによって前記質問に対する回答が入力されると、感覚特性の分類又は前記質問と紐づけて回答に関する情報をコンピュータの記憶部に記憶させ、前記分類又は前記質問に対応する前記感覚特性チャートの回答表示部の所定のマスに回答表示を入れるものとすることが好ましい。
【0020】
上記のプログラムは、ユーザーによって自閉スペクトラム症の感覚特性に関するテキストが入力され終わると、記憶部に記憶されている前記質問を出力させ、ユーザーによって質問が選択されると、ユーザーによって選択された質問を識別する識別情報と、前記テキストが入力された年月日又はユーザーが入力した年月日とを紐づけて一つのレコードとして記憶部に保存させ、ユーザーによって開始日と終了日が指定されると、前記開始日以降かつ前記終了日以前に該当するレコードの中から、前記識別情報を含むレコードの数を、前記質問ごとに集計させて、予め記憶部に記憶させた条件と質問ごとに集計された前記レコードの集計数と、を比較して、レコードの集計数と前記条件に応じて、前記質問に対応する回答表示部の所定のマスに回答表示を表示させるものとすることが好ましい。
【0021】
上記のプログラムは、前記感覚特性チャートおいて、回答表示部は、原点を中心とする複数の同心の円又は複数の同心の多角形で構成される複数のマスを含み、前記複数のマスは、半径方向に対して、多段に構成されており、前記条件は、多段階に設定されており、集計されたレコードの数と多段に設定された条件とを比較して、集計されたレコード数と前記多段階に設定された条件に応じて、回答を多段に表示させるものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、自閉スペクトラム症の感覚特性に関する情報を整理、視覚化して、感覚特性に関する情報を他人と効率的に共有するためのチャート、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】感覚特性整理チャートの一実施形態を示す図である。
【
図2】回答表示がされた
図1のチャートを示す図である。
【
図3】第2実施形態のチャートを表示したスマートフォンの図である。
【
図4】
図3のチャートの回答表示部をタップして質問表示部をポップアップさせた状態を示す図である。
【
図5】回答表示がされた
図3のチャートを示す図である。
【
図6】感覚特性に関するデータベースとの連携機能を有するチャートを表示したスマートフォンの図である。
【
図10】プログラムがコンピュータにチャートを表示させ、入力された回答を表示させる処理を実行させる流れを示したフローチャートである。
【
図11】質問表示部の他の例を画像表示部に表示させたスマートフォンの図である。
【
図12】質問表示部の他の例を画像表示部に表示させたスマートフォンの図である。
【
図13】感覚特性に関するテキストデータをデータベース化する際に使用される表示の一例を示す図である。
【
図14】
図13の「痛み」の項目を選択した際に表示される表示である。
【
図15】
図13の「保存する」の表示を選択した際に表示される質問リストである。
【
図16】プログラムがコンピュータに感覚特性に関するテキスト情報と、テキストが入力された年月日と、質問の識別情報を記憶させる流れを示したフローチャートである。
【
図17】
図15に示した処理で使用される質問表示部の他の例を示す図である。
【
図18】プログラムがコンピュータに、ユーザーが入力した年月日の範囲に該当するレコードを検索し、質問ごとにレコード数を集計し、集計されたレコード数に基づいてチャートに回答表示をさせる流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下にて説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0025】
[第1実施形態]
図1及び
図2に、自閉スペクトラム症の感覚特性に関する情報を整理するためのチャート(以下、単に感覚特性整理チャート又はチャートと称する。)の一実施形態を示す。本実施形態のチャートは、前記感覚特性の分類を示す複数の分類表示部11と、前記感覚特性に関する質問に対する回答を表示する回答表示部12とを有している。
【0026】
回答表示部12は、平面上に配される原点13を中心とする円と、原点13から半径方向に延びる複数の線とで構成される複数のマス121、122とを含む。本実施形態のチャート1では、回答表示部12は、第1円123と、第2円124と、第3円125と、原点13から半径方向外側に延びる計16本の直線127とから構成される。第1円123と、第2円124と、第3円125とは、原点13を中心とする同心円である。第1円123、第2円、第3円の順に後に記載した円の半径が大きくなる。第1円123の内側には、直線127が描かれていないが、直線が描かれていてもよい。なお、原点13は、チャート1に明示されていてもよいし、
図1又は
図2に示したように、複数の円の中心となる仮想上の点であってもよい。
【0027】
上記の回答表示部12を構成する第3円125の外周部分には、第3円125に比して、半径の大きい第4円126が配されている。第4円は、原点13を中心とする円である。
図1に示したように、第3円125と第4円126と直線127とによって囲まれた複数のマスの内側には、感覚特性に関する質問と、質問番号とが記載されている。本実施形態のチャート1では、感覚特性に関する質問は、以下の計16個記載されている。なお、以下において括弧書で示したのは、分類表示部11に表示される分類である。また、本願の願書に添付した図面において「丸1」ないし「丸4」で表示した個所は、以下では「1」ないし「4」と表示する。
質問1(分類:すきすぎる)
・質問1-1
特定の感触が好きすぎて、変更が難しい。
・質問1-2
特定の刺激が好き過ぎて、中断が難しい。
・質問1-3
状況に関係なく好きな物や人に触ってしまう。
・質問1-4
好きな刺激過ぎて何度も繰り返したい。
質問2(分類:いやすぎる)
・質問2-1
急にその場所にその場から走って逃げてしまう。
・質問2-2
特定の場所に近づけない。
・質問2-3
人混みは避けてしまう。
・質問2-4
特定の物を触れない。
質問3(分類:反応しすぎる)
・質問3-1
特定の物が目に映ると反応しすぎてしまう。
・質問3-2
特定の音が入ると反応しすぎてしまう。
・質問3-3
特定の臭いに反応しすぎてしまう。
・質問3-4
特定の物に触れただけで反応しすぎてしまう。
質問4(分類:わからない)
・質問4-1
人や物にぶつかってもわからない。
・質問4-2
力の加減がわからない。
・質問4-3
気温や湿度などの変化がわからない。
・質問4-4
打撲や傷があっても痛みがわからない。
【0028】
上記の計16個の質問は、質問4個で一個の分類を構成する。各分類は、「すきすぎる」、「いやすぎる」、「反応しすぎる」、「わからない」の計4個である。この4分類は、Dunn Wが提唱した「感覚探求」、「感覚回避」、「感覚過敏」、低登録」の4つの象限を、自閉スペクトラム症の家族や自閉スペクトラム症の知識に必ずしも明るくない他者がわかりやすくする目的で、平易な表現にしたものである。各質問も、同様に平易な表現にされている。
【0029】
本実施形態のチャート1では、
図1又は
図2に示したように、上記の質問が表示された質問表示部14又は回答表示部12の近傍に、4つの分類表示部11が配置されている。各分類表示部11は、対応する質問表示部14又は回答表示部12の近傍に配置されている。これによって、分類表示部11に表示された分類と、回答表示部12に表示示された回答とが紐づけられている。本実施形態のチャート1では、分類表示部11に表示された分類と、質問表示部14とは近傍に配置されているため、どの回答がどの質問に対応するのかについても紐づけられている。例えば、「すきすぎる」の分類表示部11は、上記の質問1-1、質問1-2、質問1-3、又は質問1-4の近傍に配置されている。
【0030】
近傍という場合、一個の分類表示に他の項目、すなわち、回答又は質問が含まれるのか認識できる距離をいう。後述するように、一の分類表示部とそれに含まれる回答表示部又は質問表示部とを同一の色彩とする、線で分類を区分する、質問番号を利用するなどの態様を利用することで、「近傍」の距離は大きくすることができる。
【0031】
本実施形態のチャート1では、各質問表示部14には、「質問1-1」などの質問番号141が記入されており、分類表示部11にも前記の質問番号141に対応する「質問1-1~4」などの質問番号111が記入されている。例えば、「すきすぎる」の分類表示部11の下方には、「1-1~4」の質問番号111が記載されており、質問表示部14には、「1-1」、「1-2」、「1-3」、「1-4」の質問番号141が記載されている。質問表示部14に示された「1-1」、「1-2」、「1-3」、「1-4」の質問番号141の一桁目と、分類表示部11に示された質問番号111の一桁目は、対応しており、数字で紐づけられているので、「1-1」等の各質問が「すきすぎる」に分類されることを認識するのに役立つ。
【0032】
本実施形態のチャート1では、
図1に示したように、質問表示部14と回答表示部12は、原点13を中心とする同心の円又は複数の多角形と、原点13から半径方向外側に延びる複数の直線127とから構成されている。質問表示部14は、当該質問表示部14に対応する回答を表示するための回答表示部12を構成する2本の直線127と同一の直線127で囲まれる。これにより、質問表示部14と回答表示部12とが紐づけられている。本実施形態のチャート1では、半径方向外側に質問表示部14が位置し、半径方向内側に回答表示部12が位置する。この位置関係は、逆であってもよい。
【0033】
また、本実施形態のチャート1では、質問表示部14は、対応する回答表示部の近傍に配置されていることによって、紐づけられている。これにより、どの質問とどの回答が対応するのかわかりやすくなっている。
【0034】
本実施形態のチャート1では、一の分類表示部11及びそれに分類される各質問表示部14又は回答表示部12と、他の分類表示部11及びそれに分類される各質問表示部14又は回答表示部12とは、背景が異なる色彩で着色されている。そして、一の分類表示部11とそれに該当する各質問表示部14又は回答表示部12とは、同一又は同系の色彩で着色されている。
【0035】
例えば、本実施形態のチャート1では、「すきすぎる」の分類表示部11の背景112は濃いオレンジ色で着色されており、「1-1」、「1-2」、「1-3」、及び「1-4」の各質問表示部14の背景142は、薄いオレンジ色で着色されている。回答表示部には、ユーザーに、濃淡2色のオレンジ色で着色させる。そして、「いやすぎる」の分類表示部11の背景111は濃い緑色で着色されており、「2-1」、「2-2」、「2-3」、及び「2-4」の各質問表示部14の背景142は、薄い緑色で着色されている。回答表示部には、ユーザーに、濃淡2色の緑色で着色させる。そして、「反応しすぎる」の分類表示部11の背景112は濃い赤色で着色されており、「3-1」、「3-2」、「3-3」、及び「3-4」の各質問表示部14の背景142は、薄い赤色で着色されている。回答表示部には、ユーザーに、濃淡2色の赤色で着色させる。そして、「わからない」の質問表示部14の背景142は濃い青色で着色されており、「4-1」、「4-2」、「4-3」、及び「4-4」の各質問表示部14の背景142は、薄い青色で着色されている。回答表示部には、ユーザーに、濃淡2色の青色で着色させる。このように、分類表示部及びそれに含まれる質問は、色彩で紐づけられているので、ユーザーが、どの分類にどの質問又はどの回答が含まれるのか把握するのに役立つ。
【0036】
次に本実施形態のチャート1の使い方について説明する。自閉スペクトラム症の人の家族などのユーザーは、上記の1-1から4-4までの計16個の質問を読み、該当する項目があれば、
図2に示したように、該当する回答表示部12に回答を記入する。本実施形態のチャート1は、回答表示部12は、第1円123と第2円124と直線127とに囲まれた第1段目のマス121と、第2円124と第3円125と直線127とに囲まれた第2段目のマス122とを有しており、多段の回答表示部12となっている。第1段目のマス121と第2段目のマス122とは、分類表示部11又は質問表示部12と同一又は同系の色彩でユーザーに着色させるとよい。これにより、回答と該当する分類又は質問とを紐づけて、認識させやすくすることができる。また、第1段目のマス121と第2段目のマス122とは、同一又は同系の色彩を使用して、濃淡で塗り分けさせるとよい。これにより、どの感覚特性が強いのか視覚的に把握しやすくなる。
【0037】
ユーザーが質問を読んで、
図2に示したように、「ある」(該当する)と判断した質問については、第1段目のマス121と第2段目のマス122の二つを色鉛筆などで塗りつぶす。ユーザーが質問を読んで、「わからない」と判断した質問については、第1段目のマス121のみを塗りつぶす。ユーザーが質問を読んで「ない」(該当しない)と判断した質問については、マスを塗りつぶさない。なお、回答は、対象となる質問表示部14を区画する2本の直線127と同一の2本の直線127によって囲まれた半径方向内側のマスに記入する。回答表示は、マスにチェックの印などの文字、図形、又は記号を記入することにより行ってもよいが、着色が視認性に優れるので好ましい。
【0038】
図2に示した例では、上記質問1-2に対する回答が「ある」であり、1段目及び2段目のマスが「すきすぎる」の分類表示部11の背景112と同系の色で塗りつぶされている。第1段目のマス121に比して第2段目のマス122の方が濃色の色彩で着色されている。そして、質問2-4、質問3-3、及び質問4-3に対する回答が、「わからない」であり、それぞれの第1段目のマス121が塗りつぶされている。
【0039】
図2に示しように、本実施形態のチャート1によれば、自閉スペクトラム症の人が有する特有の感覚特性を視覚的に整理することができる。医師、臨床心理士、若しくは看護師などの専門家、又は幼稚園教諭若しくは学校教諭などの関係者に、記入したチャートを提示することで、その人特有の感覚特性を短時間で効率的に伝えることができる。チャート1には、質問を促す効果もある。チャート1を提示しされた者は、チャート1に示された傾向を基に、より具体的な質問を家族などのユーザーに投げかけやすくなる。これにより、自閉スペクトラム症の人の感覚特性をより具体的に把握する効果が得られる。
【0040】
本実施形態のチャート1は、種々の形態で使用される。例えば、チャート1は紙、若しくはプラスチック板などに印刷などにより固定された有体物、又はスマートフォン、タブレット型コンピュータ、ラップトップコンピュータ、若しくはデスクトップコンピュータなどの画像表示部を備える装置に表示された画像として、利用することができる。上記のようなコンピュータの入力装置83を利用して、回答表示部を構成するマス121、122に電子的に回答表示をするようにしてもよい。
[第2実施形態]
【0041】
図3ないし
図5に、チャートの他の実施形態を示す。第2実施形態のチャート2は、スマートフォン、又はタブレット型コンピュータなどの画像表示部91を備える装置9に表示される画像である。
図3の例は、スマートフォンに表示されたチャートの例である。
図3等において符号92は、ベゼル(額縁)であり、画像が表示されない部分である。
図3等において符号93は、物理キーである。
【0042】
チャート2は、質問の分類ごとに回答表示部12を構成するマス121、122を区分する区画線128を備えており、初期状態では質問表示部が表示されていない点で、上記のチャート1とは相違している。共通する点については、チャート1と同様であるので、説明を省略する。
【0043】
上記の区画線128は、原点13から半径方向外側に向けて延在する直線であり、回答表示部12を構成する第2円124の円周から突出する部分を有している。区画線128は、上記の「すきすぎる」に分類される4つの質問に対する回答表示部12と、上記の「いやすぎる」に分類される4つの質問に対する回答表示部12と、上記の「反応しすぎる」に分類される4つの質問に対する回答表示部12と、上記の「わからない」に分類される4つの質問に対する回答表示部12との間に配置される。区画線128によって、各分類に含まれる回答表示部を区分することによって、各質問に対する回答表示部と分類表示部とを視覚的に紐づけて、いずれの回答表示部がどの分類表示部に対応するのかを認識させやすくしている。区画線は、視覚的に回答表示部を区分することができるものであればよく、例えば、マス121、122を構成する直線127よりも太い直線、マスを構成する直線127とは異なる色彩を有する直線、破線と実線など線のパターンでマスを構成する線とは区別されるものなどで構成することもできる。
【0044】
チャート2は、ディスプレイなどの画像表示部91に表示される。画像表示部のサイズが小さい場合は、画像表示部に表示させるチャートの画像に予め質問表示部を設けても、質問の文字が小さくなり、視認性が低下することがある。チャート2では、質問表示部を予めチャートの画像に表示するのではなく、
図4に示したように、任意の回答表示部12の位置を入力装置83で指定すると、その回答表示部12のマス121、122に対応する質問を表示した質問表示部14aが画像表示部91に表示されるようになっている。
【0045】
図3の例では、チャート2はスマートフォンに表示される。周知のとおり、スマートフォンでは、ディスプレイが入力装置83の一つであるタッチパネルとして機能する。回答表示部12のマス121又は122に対応する質問を表示させるには、例えば、任意の回答表示部12のマス121又は122をタップすることによってマス121又は122の位置を指定し、質問表示部14aをポップアップさせればよい。チャート2をマウスなどの入力装置83とディスプレイなどの画像表示部とを有する装置に表示する場合は、例えば、任意の回答表示部12のマス121、又は122にマウスの操作と連動して画面上を移動するカーソルを合わせることによって、マス121、又は122の位置を指定し、質問表示部14aをポップアップさせればよい。質問表示部14aには、指定される回答表示部の位置に応じて、質問1-1から質問4-4までの計16個の質問が表示される。上記の態様により、質問表示部と回答表示部を紐づけて、どの回答表示部がどの質問表示部に対応するのかわかりやすくすることができる。また、任意の回答表示部12のマスをタップすると、音声により、回答表示部12のマスに対応する質問がスピーカーから出力されるようにしてもよい。
【0046】
ユーザーが質問表示部14aに表示された質問を読んで、質問に該当する感覚特性が「ある」(該当する)と判断した場合は、ユーザーに対応する質問表示部14の第2段目のマス122の位置を指定させる。第2段目のマス122の位置が指定されると、第1段目のマス121と第2段目のマス122の両方が、分類表示部11と同一又は同系の色彩で塗りつぶされる。ユーザーが質問表示部14に表示された質問を読んで、質問に該当する感覚特性が「わからない」と判断した場合は、ユーザーに対応する質問表示部14の第1段目のマス121の位置を指定させる。第1段目のマス121の位置が指定されると、第1段目のマス121のみが、分類表示部11と同一又は同系の色彩で塗りつぶされる。ユーザーが質問表示部14に表示された質問を読んで、質問に該当する感覚特性が「ない」(該当しない)と判断した場合は、ユーザーには質問表示部14のマス121、又は122の位置を指定させないようにする。
【0047】
上記の質問表示と回答入力の結果、例えば、
図5に示したチャート2の画像が生成される。
図5に示した例では、質問1-1に対する回答、質問3-4に対する回答、及び質問4-3に対する回答が「わからない」であり、それぞれの1段目のマス121が「すきすぎる」、「反応しすぎる」、「わからない」の背景と同系の色で塗りつぶされている。そして、質問2-4に対する回答が、「ある」であり、第1段目のマス121及び第2段目のマス122が「いやすぎる」と同系の色で塗りつぶされている。なお、回答表示部12のマス121、122に回答表示を入力させる際には、上記の質問表示部14aを表示させる操作とは別の操作により回答表示を入力するようにする。例えば、回答表示部12において回答を表示させようとするマス121、122を長押しする、回答を表示させようとするマス121、122をダブルクリックや素早くタップを繰り返すなど2回素早く指定するなど操作により区別すればよい。
【0048】
本実施形態のチャート1によれば、自閉スペクトラム症の人が有する特有の感覚特性を視覚的に整理することができる。医師、臨床心理士、若しくは看護師などの専門家、又は幼稚園教諭若しくは学校教諭などの関係者に、記入したチャートの画像を提示することで、その人特有の感覚特性を短時間で効率的に伝えることができる。チャートの画像を提示する際には、画像を表示したスマートフォンやラップトップコンピュータを専門家又は関係者に見せてもよいし、回答を入力した画像のデータを専門家又は関係者に送信してもよいし、回答を入力した画像のデータを印刷して提示してもよい。
【0049】
図5に示したように、回答が入力されたチャート2には、回答が色彩で視覚的に表示されている。チャート2においても、分類表示部11及び回答表示部12の色彩と、区画線128と、質問番号111とを利用して回答表示部12に対応する分類表示部11が紐づけられている。専門家や関係者は、分類表示部11に表示された「すきすぎる」などの分類と、回答表示部12の回答表示を見ることで、自閉スペクトラム症の感覚特性を把握することができる。回答表示部12の位置を入力装置83で指定すると、
図4のように、回答表示部12に対応する質問を記載した質問表示部14aがポップアップするようにすることで、入力された回答がどの質問に対応するのかを知らせることも可能である。
【0050】
[第3実施形態]
第2実施形態のチャート2において説明した質問表示部14aは、
図6ないし
図8のように変更してもよい。本実施形態のチャート3の外観は、上記のチャート2と比較して、「質問開始」の文字で構成された質問開始の表示15と、後述する連携開始の表示16が設けられている点で相違する。
【0051】
チャート3では、ユーザーが入力装置83により質問開始の表示15の位置を指定すると、
図7に示した質問表示部14bがチャート3とは別の画面に表示される。チャート3の質問開始の表示15は省略して、チャート3の分類表示部11、第1円123の内側などチャート3の任意の位置を指定することによって、質問表示部14bが表示されるようにしてもよい。
【0052】
チャート3では、質問開始の表示15の位置がタッチパネルなどの入力装置83によって指定されると、
図7に示したように、質問141bとその質問に対する選択肢142bが表示された質問表示部14bがチャート3の画像とは独立した別の表示として表示される。
図7は、「質問1-1」の質問表示部14bである。ユーザーが、「質問1-1」に対する回答を入力し、「次の質問へ」の表示143bの位置を指定すると、次の質問「質問1-2」を含む新たな質問表示部14cが表示される。ユーザーは、「質問1-1」から「質問4-4」の計16個の予定されている質問の表示とその回答が終わるまでこの操作を繰り返す。ユーザーが最後の質問である「質問4-4」の質問表示部14cに表示されている「回答を終わる」の表示143cの位置を指定すると、スマートフォンの演算・制御部によって質問に対する回答結果に基づいて、チャート3の質問表示部12が着色される。
【0053】
[チャート用のプログラム]
次に、自閉スペクトラム症の感覚特性に関する情報を整理するための感覚特性整理チャート用プログラム(以下、単にチャート用プログラムという。)と、当該プログラムによって処理を実行するコンピュータについて説明する。
図9は、コンピュータの構成の一例を示すブロック図である。前記コンピュータとしては、
図9に示したように、演算・制御装置81と、主記憶装置821及び補助記憶装置822とを含む記憶部82と、入力装置83、出力装置84とを含むものが挙げられる。前記コンピュータとしては、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、又はデスクトップコンピュータなどが挙げられる。
図9において実線はデータの流れを示し、破線は制御信号の流れを示す。
【0054】
演算・制御装置81としては、中央演算処理装置(CPU)が挙げられる。主記憶装置821としては、DRAM、SRAMなど比較的高速で読み書きを行うことができる記憶装置が挙げられる。補助記憶装置822としては、SSD、HDD、eMMC、若しくはUFSなど、又はSDカード等の外部記憶装置など比較的低速で読み書きを行う記憶装置が挙げられる。出力装置84としては、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー、又はプロジェクターなどが挙げられる。入力装置83としては、タッチパネル、キーボード、マウス、カメラ、又はマイクなどが挙げられる。不揮発性で高速で読み書きを行うことができる記憶装置があれば、記憶部82はそのような記憶装置で構成してもよい。その場合、記憶部は主記憶装置のみで構成され、補助記憶装置は必要ない。
【0055】
上記のようなコンピュータは、チャート用プログラムによって、チャートの画像を予め記憶しておくチャート保存手段、チャートの画像を画像表示部に表示させるチャート表示手段として機能させることができる。これにより、コンピュータを自閉スペクトラム症の感覚特性に関する情報を整理するための手段として使用することができる。例えば、回答が記入されていない
図1のチャート1の画像、又は回答が記入されていない
図3のチャート1又は2の画像を、補助記憶装置822に予め記憶させておく。ユーザーがプログラムを作動させると、補助記憶装置822に記憶させておいたチャート1等の画像を主記憶装置821に格納させると共に、出力装置82の一つである画像表示部に表示させる。プログラムは、上記の画像表示部に表示させたチャート1又は2の画像をユーザーに確認させて、ユーザーがプリンタなどの出力装置82からチャート1又は2の画像を印刷する処理を実行すると、回答が入力されていないチャート1等の画像を紙などの印刷媒体に印刷させる。ユーザーは、印刷されたチャート1等に筆記具を使用して回答を記入することで自閉スペクトラム症の感覚特性を整理することができる。このプログラムは、上記のようなコンピュータをチャートの画像を印刷する手段として機能させるものである。
【0056】
上述の通り、上記のチャート用プログラムは、チャートの画像を予め記憶しておくチャート保存手段、チャートの画像を画像表示部に表示させるチャート表示手段として機能させるものである。例えば、回答が入力又は記入された
図2のチャート1の画像、又は回答が入力又は記入された
図5のチャート2の画像を補助記憶装置822に予め記憶させておく。ユーザーがプログラムを作動させると、補助記憶装置822に記憶させておいたチャート1又は2の画像を、主記憶装置821に格納させると共に、出力装置82の一つである画像表示部に表示させる。ユーザーは、回答が記入されたチャート1等の画像を他人に見せることで、その他人との間で自閉スペクトラム症の人の感覚特性に関する情報を共有することが可能になる。
【0057】
上記のチャート用プログラムにおいて、さらに実行させる処理を増やして、コンピュータを感覚特性に対する質問を出力させ、ユーザーによって前記質問に対する回答が入力されると、感覚特性の分類又は前記質問と紐づけて回答をコンピュータの記憶部に記憶させ、前記分類又は前記質問に対応する前記感覚特性整理チャートの回答表示部の所定のマスに回答表示を入れた画像を生成させるようにしてもよい。以下、質問を出力させて、ユーザーの回答を反映させたチャートの画像を生成するプロセスについて、説明する。なお、以下のプロセスでは、主記憶装置821と補助記憶装置とからなる記憶部を使用しているが、不揮発性で読み書き処理の早い記憶装置があれば、その記憶装置のみで記憶部を構成してもよい。
【0058】
図10に示したように、チャート用プログラムは、演算・制御装置81に命令し、補助記憶装置822に予め保存されているチャート3の画像を主記憶装置821に格納させる。この状態においては、チャート3の画像には、回答は記入されていない。次に、チャート用プログラムは、主記憶装置821に保存されているチャートの画像を出力装置84であるスマートフォンの画像表示部に表示させる。
【0059】
ユーザーが、
図6に示したチャート3の「質問開始」の表示15をタップするか、チャート3の任意の位置がタップされると、入力装置83であるタッチパネルによりタップした位置が検知される。チャート用プログラムは、演算・制御装置81に命令し、補助記憶装置822に記憶されている上記「1-1」から「4-4」の質問と当該質問に対する回答を表示した計16枚の質問表示部14b、14cを主記憶装置821に格納させる。
図7及び
図8に、質問1-1とその回答の選択肢を表示した質問表示部14bと質問4-4のその回答を入力する選択肢を示した質問表示部14cを一例として示す。次いで、プログラムは、主記憶装置821に格納させた質問「1-1」141bとその回答を入力する選択肢141bを表示した質問表示部14bを出力装置84である画像表示部に表示させる。
【0060】
ユーザーが、入力装置83によって、「ある」、「ない」、及び「わからない」のうちの一つの回答が選択され、「次の質問へ」との表示143bの位置が入力装置83により指定されると、チャート用プログラムは、入力された回答と回答に対応する質問の識別情報を紐づけて一つのレコードとして、主記憶装置821に格納させると共に、質問「1-2」とそれに対する回答の選択肢を表示した質問表示部を出力表示に表示させる。なお、本実施形態では、質問の識別情報は、「1-1」から「1-4」の各質問番号のテキストデータで構成している。回答は、「ある」を「2」、わからないを「1」、ないを「0」の数値に置き換えている。
【0061】
データを紐づけて一つのレコードとして管理する方法としては、例えば、CSV(Comma-Separated Value)を使用することができる。CSVでは、カンマによって、フィールド(項目)を区切り、改行によってレコードを区切る。紐づけて一つのレコードとして管理するには、質問の識別情報と、回答とをカンマで区切り、同一の行に記載すればよい。TSV(Tab-Separated Value)を使用してもよい。
【0062】
チャート用プログラムは、質問「4-4」141c及びそれに対する回答の選択肢142cを含む質問表示部143cが表示されるまで、質問「1-1」と同様の処理を演算・制御装置81に行わせる。ユーザーによって、質問「4-4」及びそれに対する回答の選択肢を含む質問表示部の「回答を終わる」との表示143bの位置が入力装置83によって指定されると、入力された質問「4-4」に対する回答と回答に対応する質問の識別情報を対にして、主記憶装置821に格納し、
図10に示されたフローチャートの「質問選択表示」の繰り返し処理を終了し、次の処理に移行する。
【0063】
チャート用プログラムは、
図10に示したように、上記の「質問選択表示」のプロセスで入力された計16個の質問に対する回答結果と質問の識別情報に基づいて、演算・制御装置81によって、主記憶装置821に格納された
図3に示したチャート2の回答表示部12に回答表示として色情報を付加させる。チャート2の画像は、x軸方向の座標の値と、y軸方向の座標の値とによって、画像のいずれの領域がいずれの質問の識別情報に対応するのか、そして画像のいずれの領域が一段目の回答表示部にあたり、画像のいずれの領域が二段目の回答表示部にあたるのかが管理されている。例えば、質問「1-1」に対する回答が「ある」の場合は、質問1-1に対する回答表示部の一段目及び二段目のマスが着色される。「わからない」の場合は、質問1-1に対する回答表示部の一段目のみが着色される。「ない」の場合は、回答表示部は着色されない。
【0064】
チャート用プログラムは、
図10に示したように、上記のプロセスで生成した回答表示部12が着色されたチャート2の画像を出力装置84である画像表示部に表示させる。チャート用プログラムは、画像表示部に選択肢を表示し、生成した上記画像を保存するか否かをユーザーに選択させる。ユーザーが上記の画像を保存することを選択すると、上記の生成した画像を補助記憶装置822に保存させて処理を終了する。ユーザーが上記の画像を保存しないことを選択すると、上記の生成した画像を補助記憶装置822に保存せずに処理を終了する。
【0065】
上記の処理では、「質問選択表示」のプロセスにおいて、質問「1-1」から質問「4-4」までの計16個の質問を、計16枚の質問と回答の選択肢を含む画像表示部の画像を表示させて、ユーザーに回答させる。この処理に替えて、以下の処理を採用してもよい。チャート用プログラムは、チャートの画像に予め計16個の質問を表示する質問表示部を含む
図1のチャート1の画像を、スマートフォンに比して、サイズの大きい画像表示部に表示させる。マウスやキーボードなどの入力装置83によって、質問に対応する回答表示部12のマス121、122が指定されると、チャート用プログラムは、回答と回答に対応する質問の識別情報とを紐づけて一つのレコードとして主記憶装置821に記憶させると共に対応する回答表示部12のマス121、122が着色されたチャート1の画像を出力装置84である画像表示部に表示させるようにしてもよい。
【0066】
また、これらの処理に替えて、
図11に示したように、チャート用プログラムは、回答表示部12のマス121、122の位置が入力装置83で指定されると、その回答表示部12に対応する質問を含む質問表示部14dをチャート2と同一の画面にポップアップ等により表示させて、ユーザーによって質問の回答が回答表示部12のマス121、122の位置が入力装置83で指定されると、回答と回答に対応する質問の識別情報を対にして主記憶装置821に記憶させると共に対応する回答表示部121のマスが着色されたチャート2の画像が出力装置82に表示されるようにしてもよい。なお、本明細書において、質問表示部を備えるという場合、
図1に示したチャート1のように質問表示部が予め表示されている態様と、質問表示部が後から表示される場合とを含む。
【0067】
また、
図12に示したように、チャート用プログラムは、回答表示部12のマス121、122の位置が入力装置83で指定されると、その回答表示部12に対応する質問を含む質問表示部14eをチャート2と同一の画面にポップアップ等により表示させる。ユーザーによって質問の回答が質問表示部14eの選択肢「ある」、「ない」、又は「わからない」の位置が入力装置83で指定されると、チャート用プログラムは、回答と回答に対応する質問の識別情報を紐づけて1レコードとして主記憶装置821に記憶させる共に対応する回答表示部121のマスが着色されたチャート2の画像を出力装置82に表示させるようにしてもよい。なお、「ある」の選択肢が指定された場合には、第1段目のマス121及び第2段目のマス122に着色する。「わからない」の選択肢が指定された場合には、第1段目のマスのみを着色する。「ない」の選択肢が指定された場合には、マスを着色しない。
【0068】
[感覚特性のテキストデータとの連携用プログラム]
次に、感覚特性のテキストデータをデータベース化するプログラム(以下、データベース化用プログラムという。)と、連携用プログラムについて説明する。まず、データベース化プログラムについて説明する。
【0069】
データベース化プログラムは、コンピュータを、感覚特性に関するテキストデータを記憶する記憶手段として利用し、任意のテキスト、日付、又は感覚特性に関する分類で感覚特性に関するテキストデータを検索させる検索手段として利用することを可能にするものである。具体的には、データベース化プログラムは、
図13に示したように、複数の感覚特性に関する分類表示71と、自閉スペクトラム症の人の写真表示部72と、自閉スペクトラム症の人のプロフィールに関するテキストの入力部73とを含む表示7を出力装置84であるスマートフォンなどの画像表示部に表示させる。当該表示7は、補助憶装置822に予め記憶されており、データベース化プログラムによって、主記憶装置821に格納される。
【0070】
分類表示21は、自閉スペクトラム症の感覚特性を平易な言葉で示して分類する。本実施形態では、「痛み」、「味わう」、「見る」、「触る」、「聴く」、「姿勢を保つ」、「臭う」、及び「その他」の計8個に自閉スペクトラム症の感覚特性を分類している。
【0071】
ユーザーが、入力装置83を使用して、分類表示のいずれか一つを指定すると、
図14及び
図16に示したように、補助憶装置822に予め格納されている感覚特性をテキスト入力させるための表示6が主記憶装置821に格納され、出力装置84である画像表示部に表示される。
図14に表示6の一例を示す。表示6は、痛みの分類に対応するものであり、「好きなこと」、「きらいなこと」、及び「対処」計3つのテキストを入力するためのテキスト入力部61を有する。ユーザーは、各テキスト入力部61のいずれか一つの位置を入力装置83で指定して、「痛み」に関して、「好きなこと」、「嫌いなこと」、又は「対処」をテキストで入力する。ユーザーがテキストの入力を終えて、「保存する」の表示64の位置を入力装置83によって指定すると、プログラムは主記憶装置821に入力されたテキストと、テキストが入力された年月日と、ユーザーによって選択された感覚特性の分類の識別情報と、「好きなこと」、「嫌いなこと」、及び「対処」の入力された小分類とを紐づけて一つのレコードとして主記憶装置821に格納すると共に、予め補助記憶装置822に格納されていた感覚特性に関する質問リスト5を
図15のように表示させる。なお、テキストが入力された年月日は、プログラムが年月日をコンピュータに設定され記憶されている年月日から自動的に取得するようにしてもよいし、ユーザーに年月日を入力させるようにしてもよい。データベース化プログラムにおいて使用される、感覚特性の分類の識別情報は、「痛み」などの計8個の分類である。
図15の質問リスト5は、この計8個の分類ではなく、上記のチャートで質問表示部に表示される上記の「質問1-1」から「質問4-4」までの計16問の質問を使用する。
図14の質問リスト5では、チャート1の分類表示部の4個の分類ごと計16個の質問が分類された状態で表示されている。そして、計16問の質問に隣接して、各質問に対する回答欄51が設けられている。
【0072】
ユーザーは、画像表示部に表示された上記の質問リスト5を読み、直前に入力した感覚特性に関するテキストの内容が、上記の「質問1-1」から「質問4-4」のいずれに該当するか判断する。ユーザーは、該当するものがあれば、上記のリスト5の回答欄の位置を入力装置83で指定して、チェックを入れる。本実施形態の例では、複数の回答欄にチェックを入れることができるようになっている。該当する質問がなければ、ユーザーには「該当なし」にチェックを入れさせる。ユーザーには、回答入力が終わると、「回答を終わる」の表示52の位置を入力装置83を使用して指定させる。
【0073】
データベース化プログラムは、
図16に示されているように、
図15に示した上記の「回答を終わる」の表示52の位置が指定されると、選択された質問の識別情報を主記憶装置821に格納する。質問の識別情報は、「1-1」から「4-1」までの質問番号のテキストデータである。次いで、データベース化プログラムは、質問の識別情報と、直前に入力した感覚特性に関するテキストと、当該テキストが入力された年月日又はユーザーが入力した年月日と、「痛み」などの感覚特性に関する分類の識別情報とを対にして紐づけて一つのレコードとして補助記憶装置822に保存し、処理を終了する。
【0074】
上記の例では、感覚特性に関するテキストを入力した後に、質問リスト5を表示させるようにした。質問リスト5に替えて、例えば、感覚特性に関するテキスト情報が主記憶装置821に格納された後に、
図17に示した質問表示部14fを表示させるようにしてもよい。質問1-1から質問4-4までの計16個の質問を表示する質問表示部14fのデータを予め補助記憶装置822に記憶しておく。ユーザーが感覚特性に関するテキストの入力を終えて
図14に示した画面の「保存する」の表示64の位置を入力装置83で指定すると、質問表示部14fのデータを主記憶装置821に格納すると共に、画像表示部に
図3のチャート2の画像を表示させる。ユーザによってチャート2の回答表示部12の任意の位置が入力装置83により指定されると、その回答表示部12に対応する質問表示部14fがポップアップにより画像表示部に表示される。質問表示部14fには、その回答表示部12に対応する質問と「該当する」、「該当しない」の選択肢が表示されている。ユーザーは、
図14の画像により直線に入力した感覚特性に関するテキストがポップアップ表示された質問に該当するかどうか判断して、任意の選択肢を選択する。ユーザーによって、「該当する」が選択されると、その質問に対応する質問の識別番号が主記憶装置821に表示される。「該当しない」が選択されると、質問表示部14fが画像表示部から消えるようになっている。
【0075】
次に、連携用プログラムの動作について説明する。連携用プログラムは、ユーザによって感覚特性のテキストと共に入力された質問の識別番号の数を集計し、その集計数に基づいて、チャートに自動的に回答表示を表示させるためのものである。
【0076】
連携用プログラムは、
図18に示したように、補助記憶装置822に格納されている
図6に示すチャート3の画像を主記憶装置821に格納させる。次いで、連携用プログラムは、主記憶装置821に保存されているチャート3の画像を出力装置84に表示する。
【0077】
図6に示したチャート3の画像には、「連携開始」の表示16が設けられている。ユーザーが入力装置83によって「連携開始」の表示16の位置を指定すると、プログラムは、感覚特性に関するデータベースと連携する「開始日」と「終了日」とをテキスト入力させるフィールドを有する表示を出力装置84に表示させる。
【0078】
ユーザーによって入力装置83で「開始日」と「終了日」が入力されると、連携用プログラムは入力された「開始日」と「終了日」のテキストデータを主記憶装置821に格納する。これと共に、連携用プログラムは、質問の識別情報と、感覚特性に関するテキストと、年月日とが紐づけられた複数のレコードを補助記憶装置822から主記憶装置821へ読み出すように指令を出す。連携用プログラムは、ユーザーによって入力された「開始日」以降かつ「終了日」以前の条件に該当するレコードを主記憶装置821に格納されているレコードの中から検索させる。そして、検索されたレコードについて、質問の識別情報を利用して、質問ごとに、レコード数を演算・制御装置81に集計させる。
【0079】
連携用プログラムは、上述の通り、質問の識別情報を利用して、上記の開始日以降かつ終了日以前に該当する質問の識別情報の数を、質問ごとに集計する。集計した質問の識別情報の数は、チャート2の回答表示部12に回答表示を自動的に入力するのに使用される。例えば、「質問1-1」に該当する質問の識別情報の数が、該当期間において、6個であり、「質問2-4」に該当する質問の識別情報の数が、該当期間において、12個であり、「質問3-4」に該当する質問の識別情報の数が、該当期間において、9個であり、「質問4-3」に該当する質問の識別情報の数が、該当期間において、7個である場合は、
図5に示した回答表示がされたチャート2の画像が生成される。
図5の例では、質問「1-1」の識別情報の集計数が5個以上の6個、すなわち
図18のフローチャートにおいて「質問の集計レコード数≧5」が「YES」なので、その質問に対応する回答表示部12の内側に配される第1段目のマス121のみに回答表示である着色がされる。次いで、
図18のフローチャートにおいて「10≧質問の集計レコード数」に「質問1-1」の集計数が該当するか判断させるプロセスを行う。質問1-1の集計数は6個であるので、「NO」に該当する。連携用プログラムは、「質問1-1」については回答表示部12の外側に配される2段目マスには回答表示である着色はさせない。連携用プログラムは、質問「1-2」から質問「4-4」の計15個の質問の識別情報についても上記と同様の判断を行わせる。すなわち、連携用プログラムは、
図18のフローチャートにおいて、上端部の両端が角取りされた矩形と、下端部の両端が角取りされた矩形に挟まれた領域の処理、具体的には「1‐1」の質問の集計数の比較から「4‐4」の質問の集計数の比較が終わるまで、繰り返す。
図5のチャート2では、質問「2-4」の質問の集計数は「12」個であり、チャート1の回答表示部の1段目と2段目とが両方着色される。なお、集計されたレコードの集計数に基づいていずれの回答表示部に回答表示をさせるか判断する際に使用する条件は、「質問の集計レコード数≧5」、又は「10≧質問の集計レコード数」に限定されず、適宜設定することができる。また、前記条件は単一であってもよいし、上記の例のように多段に設定してもよい。また、質問の集計数は、ゼロを含む自然数である。また、チャート2、3においては、質問の配列はチャート1と同様である。
【0080】
レコード数の集計数に基づいていずれの回答表示部に回答表示をさせるか判断する際に使用する条件は、上記の例のように予め設定され記憶部に格納された閾値を集計されたレコード数が上回った際に、前記質問に対応する回答表示部の所定のマスに回答表示を表示させるようにしてもよい。また、予め設定され記憶部に格納された閾値を集計されたレコード数が下回った際に、前記質問に対応する回答表示部の所定のマスに予め表示された回答表示を消去するようにしてもよい。
【0081】
プログラムは、「4-4」の質問についての回答表示の処理が終わると、画像表示部に回答表示がされたチャート2のを表示させる。連携用プログラムは、出力装置82に前記画像を保存するか否かを尋ねる質問を出力させる。ユーザーが前記画像を保存するを選択した場合は、回答が反映されたチャート2の画像が補助記憶装置822に保存され、処理は終了する。回答が保存されなかった場合は、チャート2の画像を保存せずに処理を終わる。
【0082】
連携プログラムとデータベース化プログラムを使用すれば、上記のように、指定した開始日以後、かつ指定した終了日以前に該当するデータベースのデータに基づいて、自閉スペクトラム症の人の感覚特性をチャートに自動的に反映し、視覚化することが可能である。チャートは、印刷、又は画像表示等により、専門家や関係者に提示し、情報共有を図ることができる。
【0083】
なお、上記のチャートは、回答表示部又は分類表示部を、円で構成した。回答表示部は、原点13を中心とする径の異なる複数の多角形で構成してもよい。マスを構成する線の数、マスを構成する円又は多角形の数、マスの数は、特に限定されない。
【0084】
上記のチャートでは、分類表示部により質問と回答を4個ずつに分けた。そして、各分類に4個の質問を含ませるようにした。分類の数は、4個に限定されず、他の個数にしてもよい。同様に質問の数も16個に限定されず、他の個数にしてもよい。
【0085】
分類表示部又は質問表示部に表示される分類又は質問の内容は、上記の例に限定されない。自閉スペクトラム症の専門家以外の者と、自閉スペクトラム症の感覚特性について、情報共有を図るために、分類又は質問の内容は、自閉スペクトラム症の専門用語を含まず、かつ平易なものにすることが好ましい。
【0086】
上記のチャートでは、回答表示部を構成するマスは2段にした。回答表示部の構成はこれに限定されず、単一の段からなるマスで構成してもよいし、2段以上のマスで構成してもよい。
【0087】
上記のチャートでは、複数の手段によって、分類表示部に表示された分類と回答表示部に入力された回答とを紐づけて表示するものとした。回答表示部に表示された分類と回答表示部に入力された回答とを紐づけるには、分類表示部と回答表示部とを互いに近傍に配置する、色彩を利用する、区画線を利用する、質問表示を利用するといった複数の手段のうち、少なくとも一つの手段により、実施すればよい。
【0088】
上記のプログラムでは、いずれも質問は、画像表示により出力される形態を採用している。これに変えて、スピーカーなどの出力装置によって、質問を音声出力させて、ユーザーにマウスやタッチパネルで回答を入力させたり、ユーザーに発生させてマイクなどの入力装置によって回答を入力させてもよい。
【0089】
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder,:ASD)とは、『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)における、神経発達症群に分類されるひとつの診断名で、コミュニケーションや言語に関する症状があり、常同行動を示すといった様々な状態を連続体(スペクトラム)として包含する診断名である。日本では、自閉スペクトラム症に関連する用語として「発達障害」が使われることが多い。発達障害者支援法では、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するもの」と定義している。
【0090】
本明細書においては、自閉症スペクトラム症は、「自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するもの」を含むものとする。
【符号の説明】
【0091】
1 チャート
2 チャート
3 チャート
11 分類表示部
12 回答表示部
121 マス
122 マス
14 質問表示部
14a 質問表示部
14b 質問表示部
14c 質問表示部
14d 質問表示部
14e 質問表示部
13 原点