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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】自動弁のクリーニングシステム
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/22 20060101AFI20231226BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F16T1/22 E
F16K51/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020041789
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021143702
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】三宮 佳幸
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-038608(JP,A)
【文献】特開2010-144758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/22
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本流入路からの対象流体の流入を受け、自動的に基本排出路に向けて対象流体を排出する基本自動弁、
本自動弁に対して上部側に配置された補助自動弁であって、基本自動弁に所定の異常状態が生じたとき、基本流入路に接続された分岐流入路からの対象流体の流入を受け、自動的に補助排出路に向けて対象流体を排出する補助自動弁、
を備えた自動弁のクリーニングシステムであって、
前記基本自動弁は、
内部に設けられており、対象流体が流通する内部流路、
内部流路上に設けられており、対象流体を通過させる弁口部、
基本流入路からの対象流体の流入に基づいて、自動的に弁口部を開放する開閉手段、
内部流路及び補助排出路と連通するシリンダー室、
弁口部に対して進入又は退避の移動が可能にシリンダー室内に配置され、ピストン部及び弁口部に進入可能な先端部を有するクリーニング手段であって、前記補助自動弁が補助排出路に向けて排出した対象流体の流体圧をピストン部が受けることによって、当該対象流体に基づいて先端部を弁口部に進入させるクリーニング手段、
シリンダー室と基本排出路とを接続する接続路、
を備えており
クリーニング手段の先端部が弁口部に進入していないとき、シリンダー室内のピストン部によって、接続路を介した基本排出路と補助排出路との連通を遮断し、クリーニング手段の先端部が弁口部に進入したとき、シリンダー室内のピストン部の移動によって、接続路を介した基本排出路と補助排出路との連通を開放する、
ことを特徴とする自動弁のクリーニングシステム。
【請求項2】
請求項1に係る自動弁のクリーニングシステムにおいて、
前記補助排出路は、基本自動弁に対して対象流体を与える接続路、及び確認排出路に分岐している、
ことを特徴とする自動弁のクリーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る自動弁のクリーニングシステムは、自動的にドレン等の流体を排出する自動弁における弁口をクリーニングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動弁としてはたとえばスチームトラップやエアトラップがある。スチームトラップやエアトラップは、産業プラント等に設置された蒸気や圧縮気体(エア・ガス等)を移送するための配管系統の随所に設けられており、配管内の蒸気や圧縮気体から発生するドレンを適宜、配管外に排出し、かつ蒸気や圧縮気体を極力漏らさないように動作する。
【0003】
スチームトラップやエアトラップには種々の構造のものがあるが、フロート式トラップは弁室に中空のフロートを内蔵している。そして、通常においては、このフロートは弁室の底部付近に形成された弁口であるオリフィスを塞いでいるが、弁室にドレンが流入した場合、ドレンの滞留に従ってこのフロートが浮上し、オリフィスを開放する。オリフィスが開放されたことにより、弁室内に滞留したドレンは、配管内の高圧の勢いを受けて自動的にオリフィスからドレン回収管に向けて排出される。ドレンの排出後はフロートが下降して復位し、再びオリフィスを閉塞する。
【0004】
ここで、スチームトラップやエアトラップの弁室内には、流入するドレンとともに錆やスケール(水垢)等の異物が侵入することがある。そして、このような異物がオリフィスに付着して堆積した場合、この異物によってオリフィスが塞がれて詰まりが生じ、フロートが浮上しても適正にドレンを排出することができなくなる。
【0005】
特にオリフィスは、フロートの接触面との関係上、口径が小さく形成されていることから、異物による詰まりが生じやすい。このため、スチームトラップやエアトラップに、オリフィスに付着・堆積した異物を除去するためのクリーニング機構が設けられていることがある。
【0006】
このようなクリーニング機構が設けられたスチームトラップとして、後記特許文献1に開示されている技術がある。このスチームトラップは、ドレンの排出通路16のオリフィスに向けて進退可能な清掃部材30を備えている。そして、この清掃部材30に、温度変化に応じて伸縮するバイメタル22を取り付けている。
【0007】
排出通路16のオリフィスに詰まりが生じ、ドレンの滞留によってスチームトラップの温度が低下した場合、この温度低下を受けてバイメタル22が伸長し、清掃部材30を排出通路16のオリフィス(小径部16a)に進入させて異物を除去する。そしてドレンが適正に排出され、スチームトラップ内に高温の蒸気が入り温度が上昇したとき、バイメタル22は縮小し、清掃部材30を排出通路16から後退させて復位させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6022733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の特許文献1に開示されたスチームトラップは、ドレンの滞留によってスチームトラップに温度低下が生じた場合、これに基づいて清掃部材30を排出通路16のオリフィスに進入させて異物を除去する。しかし、ドレンの滞留の影響を受けてスチームトラップの温度が低下するまでにはある程度の時間を要する。このため、迅速に詰まり状態を解消することができないという問題がある。
【0010】
また、エアトラップは、スチームトラップのように高温の蒸気やドレンが流入するものではないため、オリフィスが異物によって詰まった場合でも温度低下は生じない。このため、前述の特許文献1に開示された技術を適用しても、温度変化に反応するバイメタルが伸縮することはなく、エアトラップの詰まりを適正にクリーニングすることはできない。
【0011】
そこで、本願に係る自動弁のクリーニングシステムは、これらの問題を解決することを課題とし、迅速かつ確実に詰まり状態を解消することができる自動弁のクリーニングシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願に係る自動弁のクリーニングシステムは、
基本流入路からの対象流体の流入を受け、自動的に基本排出路に向けて対象流体を排出する基本自動弁、
基本部自動弁に対して上部側に配置された補助自動弁であって、基本自動弁に所定の異常状態が生じたとき、基本流入路に接続された分岐流入路からの対象流体の流入を受け、自動的に補助排出路に向けて対象流体を排出する補助自動弁、
を備えた自動弁のクリーニングシステムであって、
前記基本自動弁は、
内部に設けられており、対象流体が流通する内部流路、
内部流路上に設けられており、対象流体を通過させる弁口部、
基本流入路からの対象流体の流入に基づいて、自動的に弁口部を開放する開閉手段、
弁口部に対して進入又は退避が可能に配置されたクリーニング手段であって、前記補助自動弁が補助排出路に向けて排出した対象流体を取り込み、当該対象流体に基づいて弁口部に進入するクリーニング手段、
を備えている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願に係る自動弁のクリーニングシステムにおいては、補助自動弁は、基本自動弁に所定の異常状態が生じたとき、基本流入路に接続された分岐流入路から対象流体の流入を受け、自動的に補助排出路に向けて対象流体を排出する。そして、基本自動弁が備えるクリーニング手段は、補助自動弁が補助排出路に向けて排出した対象流体を取り込み、当該対象流体に基づいて弁口部に進入する。
【0014】
したがって、基本自動弁に詰まり状態等の異常状態が生じた場合、クリーニング手段が弁口部に進入するため、迅速かつ確実に弁口部の詰まり状態等を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願に係る自動弁のクリーニングシステムの全体構成を示すブロック図である。
図2図1に示す下部トラップ1の構成を示す断面図である。
図3図2に示すシリンダー20近傍の拡大断面であり、ピストン2及びクリーニングバー3が途中まで前進した状態を示す断面図である。
図4図2に示すシリンダー20近傍の拡大断面であり、ピストン2及びクリーニングバー3が限界位置まで前進した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態において示す主な用語は、本願に係る自動弁のクリーニングシステムの下記の各要素の一例としてそれぞれに対応している。
【0017】
下部トラップ1・・・基本自動弁
ピストン2及びクリーニングバー3・・・クリーニング手段
上部トラップ9・・・補助自動弁
フロート10・・・開閉手段
弁室15及び弁座空間62・・・内部流路
オリフィス61・・・弁口部
ドレン管72・・・基本流入路
分岐ドレン管74・・・分岐流入路
上部排出管75及びクリーニング用接続管76・・・補助排出路
クリーニング用接続管76・・・接続路
確認用配管77・・・確認排出路
詰まり状態・・・所定の異常状態
ドレン・・・対象流体
【0018】
[第1の実施形態]
本願に係る自動弁のクリーニングシステムの第1の実施形態を説明する。本実施形態においては、エアトラップに関するクリーニングシステムを例に掲げる。
【0019】
(システムの全体構成の説明)
まず、図1に基づいて本実施例におけるクリーニングシステムの全体構成を説明する。産業プラント等では、動力源として圧縮空気(圧縮気体の一例)が使用されることがあり、コンプレッサーで圧縮された空気は移送管71を通じて圧縮空気使用装置70に与えられる。
【0020】
この圧縮空気の移送中や圧縮空気使用装置70で使用された時等に、圧縮空気からドレン(凝縮水)が発生する。このドレンは精密機器の回転ムラや錆等を引き起こし、生産物に品質不良を生じさせることがある。このため、配管系等の随所にエアトラップが設けられている。エアトラップは発生したドレンを自動的に配管外に排出するとともに、圧縮空気の流出を防止する機能を有している。
【0021】
図1に示す圧縮空気使用装置70にはドレン管72が設けられており、このドレン管72にエアトラップである下部トラップ1が接続されている。そして、さらに下部トラップ1には排出管73が接続されている。下部トラップ1にはドレン管72を通じてドレンが流入し、下部トラップ1はこのドレンを排出管73に排出する。本実施形態におけるクリーニングシステムは、この下部トラップ1にスケール等の異物による詰まり状態が発生した場合、自動的にクリーニングを行う。
【0022】
ドレン管72には分岐ドレン管74が接続されており、この分岐ドレン管74にエアトラップである上部トラップ9が設けられている。本実施形態では、上部トラップ9は下部トラップ1の鉛直方向における上部側に配置されている。
【0023】
上部トラップ9には、上部排出管75が接続されており、この上部排出管75はクリーニング用接続管76と確認用配管77に分岐している。そして、クリーニング用接続管76は、下部トラップ1に接続されている。なお、上部トラップ9は一般的なフロート式エアトラップであり、分岐ドレン管74からドレンが流入した場合、このドレンを上部排出管75に排出する機能を有している。
【0024】
(下部トラップ1の構成の説明)
次に、下部トラップ1の構成を図2に基づいて説明する。下部トラップ1のボディー11は底面に向けて開口しており、この開口部を覆ってボディー蓋12がボルト13で固定され、内部空間が弁室15として形成される。ボディー11とボディー蓋12との間にはガスケット37が介在し、弁室15の気密性を保つ。ボディー11には流入口51が形成されており、ここに図1に示すドレン管72が接続される。また、ボディー11には、流入口51と同軸上に流出口55が形成されており、ここに図1に示す排出管73が接続される。
【0025】
弁室15内には、中空の球状体であるフロート10が浮動自在に位置している。また、弁室15の上部には、メッシュカバー45がボルトで固定された状態で配置されている。このメッシュカバー45は、エアーやドレンとともに流入口51から流入する異物を捕捉する。
【0026】
ボディー蓋12の底部には斜め方向に筒状の凹部形が形成されており、この凹部に弁座6が取り付けられている。弁座6はガスケット39を挟んでボディー蓋12の凹部に螺入して固定されている。
【0027】
弁座6には、弁室15側の先端にオリフィス61が形成されており、さらに弁座6内には後方に向けて開口する円筒状の弁座空間62が形成されている。弁座6の後端側の空間は中間室19として構成される。小径のオリフィス61は弁座空間62に連通しており、弁座空間62の筒径はオリフィス61の内径よりも大きく形成されている。
【0028】
弁座6の弁座空間62は、中間室19を介してボディー蓋12に形成された出口通路53及びボディー11に形成された出口通路54に連通しており、弁室15内のドレンがオリフィス61からこれらの経路を通して流出口55から排出管73に排出される。なお、フロート10は、弁座6とボディー蓋12に設けられた支持部49とに着座したとき、オリフィス61を閉塞するようになっている。
【0029】
ボディー蓋12の底部には、シリンダー20が一体的に設けられている。シリンダー20の内部には円筒形の第1シリンダー室21及び第2シリンダー室22が形成されている。第1シリンダー室21及び第2シリンダー室22の中心軸は弁座6の弁座空間62の中心軸と一致しており、中心線40上に配置されている。第2シリンダー室22の内径は、第1シリンダー室21の内径よりもやや小さく、第1シリンダー室21と第2シリンダー室22との接続部分には段部23が形成される。
【0030】
なお、中間室19と第2シリンダー室22とは、中心線40に沿って設けられている貫通孔によって連通している。また、第2シリンダー室22と出口通路53とは、バイパス路88によって連通している。
【0031】
第1シリンダー室21内には、ピストン2が矢印105、106方向に往復移動可能に設けられている。そして、このピストン2には中心線40に沿って位置するようにクリーニングバー3が固定されている。クリーニングバー3の先端部3aは弁座6の弁座空間62内に配置されており、先端部3aの横断面の直径はオリフィス61の内径よりもやや小さい。
【0032】
クリーニングバー3の中間部には、一体的にストッパー3bが設けられている。このストッパー3bは中間室19の底部に当接することによって、ピストン2及びクリーニングバー3の矢印105方向への後退を規制する。図1は、クリーニングバー3のストッパー3bが中間室19の底部に当接した状態を示しており、これがピストン2及びクリーニングバー3の後退の限界位置である。なお、通常時において、ピストン2及びクリーニングバー3は、自重によって図1に示す状態に位置している。
【0033】
シリンダー20の第1シリンダー室21の側面には、貫通する側孔25が形成されている。そして、この側孔25には排出接続管78が接続され、排出接続管78はさらに排出管73に接続されている。すなわち、排出接続管78によってシリンダー20の第1シリンダー室21と排出管73とは連通している。なお、排出接続管78には逆止弁35が設けられており、第1シリンダー室21から排出管73に向かうドレンの一方向の流れのみが許容される。
【0034】
また、シリンダー20の第1シリンダー室21の後端は開口しており、この開口部に対して図1で示したクリーニング用接続管76が接続される。クリーニング用接続管76は、シリンダーキャップ28がガスケット38を介してシリンダー20に螺着することによって取り付けられている。
【0035】
(下部トラップ1の通常時の動作の説明)
次に、下部トラップ1の通常時の動作を図2に基づいて説明する。下部トラップ1の弁室15には、ドレン管72を通じて流入口51からドレンが矢印91方向に沿って流入する。このとき、フロート10は弁座6及び支持部49に着座した状態にあり、弁座6のオリフィス61を閉塞している。そして、弁室15内にはドレン80が滞留しており、ドレン80の水位がレベルL1の状態にある。
【0036】
流入口51からドレンが流入することによって、弁室15内のドレン80の水位が徐々に上昇しこれにともなってフロート10も浮上する。そして、ドレン80の水位がレベルL2に達したとき、浮上したフロート10は弁座6のオリフィス61を完全に開放する。オリフィス61が開放されることによって、弁室15内に滞留していたドレンは配管内の高圧の勢いに従い、弁座空間62から中間室19、出口通路53、54及び流出口55を通って、一気に矢印92方向に沿って排出管73に排出される。
【0037】
ドレンの排出によって弁室15内に滞留するドレン80の水位が下がり、レベルL1に達したときフロート10は再び下降して着座し弁座6のオリフィス61を閉塞する。この後、引き続き流入口51からドレンが流入し、弁室15内のドレン80の水位が再度、レベルL2に達したときフロート10が浮上して再びオリフィス61を開放しドレンの排出が行われる。
【0038】
こうして、弁室15内のドレン80の水位の増減に従い、フロート10は浮上と下降を繰り返し、頻繁に下部トラップ1からドレンの排出が連続的に行われる。この動作中、弁室15内に滞留しているドレン80の水位は、レベルL1とL2との間で往復して変動することになるが、弁座6のオリフィス61は常にドレン80に水没している状態にあるため、配管系統を移送される圧縮空気が漏れることはなく、圧縮空気のロスを回避することができる。
【0039】
なお、前述のように、上部トラップ9(図1)は下部トラップ1の鉛直方向における上部側に配置されているため、通常時においてドレンが分岐ドレン管74を通じて上部トラップ9に流入することはない。
【0040】
(下部トラップ1に詰まり状態が生じたときのクリーニング動作の説明)
弁室15にはメッシュカバー45(図2)の網目を透過して、細かいゴミやスケール等の異物が流入することがあり、この異物がオリフィス61に付着することがある。このような異物が時間の経過によって堆積した場合、オリフィス61の口径が徐々に縮小されてドレンの排出が不十分になり、最終的にオリフィス61が完全に閉塞されて、フロート10が浮上してもドレンがまったく排出されない事態に至る。また、比較的大きな異物がオリフィス61に付着した場合、突然、ドレンがまったく排出されなくなることがある。
【0041】
本実施形態に係るシステムでは、下部トラップ1のこのようなオリフィス61の詰まり状態を自動的なクリーニング動作によって解消することができる。まず、オリフィス61に詰まり状態が生じたことによって、下部トラップ1からドレンが排出されなくなり、ドレン管72にはドレンが充満する。そして、ドレン管72から図1に示す分岐ドレン管74にドレンが流れ込み、上部トラップ9の弁室に流入する。
【0042】
前述のように、上部トラップ9は一般的なフロート式エアトラップであり(図示せず)分岐ドレン管74からのドレンの流入を受け、弁室内のフロートが浮上してオリフィスを開放する。これによって、ドレンは上部トラップ9の弁室から上部排出管75に排出され、フロートは下降して一旦、オリフィスを閉塞する。そして、引き続き弁室に流入したドレンによってフロートが浮上し、上部トラップ9はドレンの排出を行う。上部トラップ9はこのような排出動作を繰り返し連続的に行う。
【0043】
上部トラップ9から上部排出管75に排出されたドレンは、クリーニング用接続管76に入って落下し、下部トラップ1のシリンダー20内(図2)に流入する。そして、上部トラップ9の排出動作の繰り返しにより、クリーニング用接続管76内のドレンの水頭レベルは徐々に上昇する。
【0044】
これに従って、下部トラップ1のシリンダー20内に位置するピストン2が受けるクリーニング用接続管76内のドレンの水頭圧も徐々に高くなる。図3に示すように、この水頭圧の上昇によって、ピストン2及びクリーニングバー3は一体となって矢印106方向に前進を始める。図3は、矢印93方向に流入したドレンの水頭圧によって、ピストン2及びクリーニングバー3が前進する途中の状態を示している。
【0045】
ピストン2及びクリーニングバー3の前進によって、クリーニングバー3の先端部3aも異物30が付着しているオリフィス61に向けて前進する。なお、ピストン2の前進に従って、第2シリンダー室22側に滞留していたドレンは、バイパス路88を通じ出口通路53に向けて矢印94方向に押し出される。前述のように、シリンダー20の第1シリンダー室21の側面には側孔25が形成されているが、図3に示す段階では側孔25はピストン2によって塞がれており、矢印93方向に流入したドレンが側孔25から漏れ出すことはない。
【0046】
図4は、ピストン2及びクリーニングバー3が限界位置まで前進した状態を示している。ピストン2が、第1シリンダー室21と第2シリンダー室22との接続部分に位置する段部23に当接することによってピストン2及びクリーニングバー3の矢印106方向への前進は規制され、ここか限界位置になる。なお、ピストン2及びクリーニングバー3の前進が限界位置に達した時点で、クリーニングバー3の先端部3aが弁座6のオリフィス61に進入するように、クリーニングバー3の長さが設定されている。
【0047】
クリーニングバー3の先端部3aがオリフィス61に進入したことによって、オリフィス61に付着した異物30は破壊されて剥がされ弁室15側に押し出される。これによって、先端部3aとオリフィス61との間に隙間が生じ、この隙間からドレンが少しずつ弁座空間62側に流入する。そして、流入したドレンは弁座空間62から矢印95方向に沿って出口通路53に進む。
【0048】
このとき、弁室15及びドレン管72にはドレンが充満している状態であるため、フロート10は浮上したままであり、先端部3aとオリフィス61との隙間からドレンは排出され続ける。なお、出口通路53に入ったドレンは、バイパス路88を通じ、第2シリンダー室22に向けて矢印96方向への流れも生じる。
【0049】
また、ピストン2が図4に示す限界位置まで前進したことによって、シリンダー21の側孔25が開放され、第1シリンダー室21内のドレンは排出接続管78から矢印97方向に沿って排出される。そして、さらにクリーニングバー3の先端部3aとオリフィス61との隙間からドレンが流出を始めたことによって、ドレン管72から分岐ドレン管74への流量が減少し(図1参照)、上部トラップ9にはドレンが流入しなくなる。これに従って、上部トラップ9から上部排出管75へのドレンの排出が停止され、ピストン2に加えられる水頭圧は徐々に低下する。
【0050】
このように、ピストン2に対する第2シリンダー室22側のドレンの水圧の上昇と、ピストン2に対する第1シリンダー室21側のドレンの水圧の低下によって、ピストン2及びクリーニングバー3は徐々に矢印105方向への後退を開始する。そして、クリーニングバー3の先端部3aが弁座6のオリフィス61から完全に退避した時点で弁室15内のドレンは一気に下部トラップ1から排出されて詰まり状態は完全に解消する。
【0051】
また、出口通路53に流出したドレンは、バイパス路88を通じて矢印96方向への高水圧を生じさせ、ピストン2及びクリーニングバー3は図2に示す状態に押し戻されて復位する。この後、下部トラップ1は前述の通常時の動作を再開する。なお、クリーニングバー3の先端部3aの進入によって、オリフィス61から弁室15側に押し出された異物30は、ドレンとともにスチームトラップ1から排出される。
【0052】
(下部トラップ1の詰まり状態が解消されないときの処理の説明)
オリフィス61に異物30が付着し詰まり状態が生じた場合、前述のように自動的にクリーニングバー3の先端部3aが弁座6のオリフィス61に進入して異物30を除去する。しかし、異物30の付着状況によっては、クリーニングバー3の先端部3aがオリフィス61に進入しても異物30が除去されず、詰まり状態が解消されないことがある。このような場合、本実施形態では確認用配管77からのドレンの流出を作業者が目視して詰まり状態が解消されていないことを認識することが可能である。
【0053】
すなわち、クリーニングバー3の先端部3aがオリフィス61に進入しても異物30が除去されない場合、ピストン2及びクリーニングバー3は、図4に示す前進方向の限界位置に達した状態のまま、クリーニング用接続管76内のドレンの水頭圧を受け続けて動きを停止する。この場合、上部トラップ9からは引き続きドレンが上部排出管75に排出され、クリーニング用接続管76内のドレンの水頭レベルは上昇して確認用配管77に入る。
【0054】
なお、ピストン2及びクリーニングバー3が限界位置に達した状態では、図4に示すようにシリンダー21の側孔25が開放され、ここからドレンが排出接続管78(図2)に排出されるが、側孔25からの排出量よりもクリーニング用接続管76から流入するドレン量の方が多い。このため、クリーニング用接続管76及び確認用配管77のドレンの水頭レベルは時間の経過とともに上昇し、やがて確認用配管77からドレンが外部に流出するに至る。
【0055】
この確認用配管77からのドレンの流出が作業者の目視によって確認され、作業者はオリフィス61の詰まり状態が解消されていないことを認識し、下部トラップ1の分解、清掃等のメンテナンス作業を行う。したがって、適切なタイミングで作業者による下部トラップ1のメンテナンス作業を実施することができる。
【0056】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、本願に係る自動弁のクリーニングシステムをエアトラップに適用した例を示したが、他の自動弁に適用することもできる。たとえば、本願に係る自動弁のクリーニングシステムを、蒸気移送の配管に設けられるスチームトラップに適用してもよい。
【0057】
また、前述の実施形態においては、クリーニング手段としてピストン2及びクリーニングバー3を例示したが、補助自動弁(上部トラップ9等)が補助排出路(上部排出管75及びクリーニング用接続管76等)に向けて排出した対象流体(ドレン等)を取り込み、当該対象流体に基づいて弁口部(オリフィス61等)に進入する構成である限り、他の構造、機能を備えた構成を採用することもできる。
【0058】
さらに、前述の実施形態においては、上部トラップ9(補助自動弁)が下部トラップ1(基本自動弁)の鉛直方向における上部側に配置されている例を示したが、必ずしも鉛直方向における上下の位置関係に限るものではなく、ドレン等の対象流体の流れる方向における上流、下流の位置関係があればよい。たとえば、補助自動弁から排出された対象流体(ドレン等)が高圧等の勢いに基づいて基本自動弁に流入する構成であっても、補助自動弁が基本自動弁の上部側に配置された位置関係に該当する。
【符号の説明】
【0059】
1:下部トラップ 2:ピストン 3:クリーニングバー 9:上部トラップ
10:フロート 15:弁室 61:オリフィス 62:弁座空間 72:ドレン管
74:分岐ドレン管 75:上部排出管 76:クリーニング用接続管
77:確認用配管

図1
図2
図3
図4