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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】マイクロ流体装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20231226BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20231226BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G01N1/00 101F
G01N1/10 B
G01N1/10 V
G01N37/00 101
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021512540
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 SE2019050837
(87)【国際公開番号】W WO2020050770
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】1830253-9
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】1950149-3
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517442856
【氏名又は名称】キャピテイナー アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーランダー、アンナ
(72)【発明者】
【氏名】スタルク-ジョンソン、ハンス ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ハウザー、ヤーノシュ
(72)【発明者】
【氏名】ステム、ヨーラン
(72)【発明者】
【氏名】ロクスヘッド、ニクラス
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-074907(JP,A)
【文献】特開2003-194806(JP,A)
【文献】特表2008-501938(JP,A)
【文献】特表2018-524612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0065973(US,A1)
【文献】国際公開第2015/044454(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画定された体積の血漿を輸送およびサンプリングし、入口(101)から出口(203)まで流体通路を提供するためのマイクロ流体装置であって、
前記入口(101)を有する第1の領域であって、第1の流動抵抗を有し、全血サンプルを受け取って収集し、かつ血漿を分離するように構成される、第1の領域と、
前記出口(203)を有する第2の領域であって、第2の流動抵抗を有し、前記第1の領域と流体連通し、分離された血漿を計測するように構成される、第2の領域と、
前記第1の領域と前記第2の領域との間の流体コネクタと、
前記出口(203)と流体連通し、前記第1の領域から前記第2の領域の血漿を分離しながら、前記第2の領域の計測される血漿体積を輸送および吸収するのに十分に強い毛細管力を発揮するように構成された毛細管手段(204)と、を備え、
前記第2の領域は、少なくとも1つのベントを備えて配置され、
前記第1の領域の有効な第1の流動抵抗は、血漿を輸送するときに、どの時点においても、前記第2の領域の有効な第2の流動抵抗の値の少なくとも2倍である、マイクロ流体装置。
【請求項2】
前記第1の領域は、前記入口(101)を含む血漿抽出区画(100)を備え、前記血漿抽出区画は、全血サンプルを受け取って収集し、かつ血漿を分離するように構成され、
前記第2の領域は、前記流体コネクタ(201)により前記出口(203)と前記血漿抽出区画(100)に流体連通される計測チャネル(202)を含む、請求項1に記載の装置
【請求項3】
前記計測チャネル(202)は、0.5μl~50μlの体積を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
記血漿抽出区画(100)は、全血リザーバ(102)と、血漿分離膜(103)と、分離された血漿を収集するための血漿濾過チャンバ(104)のうちの少なくとも1つを備える、請求項2または3に記載の装置
【請求項5】
記流体コネクタは、接続チャネル(201)であり、前記接続チャネル(201)と前記計測チャネル(202)は、異なる諸元を有し、前記諸元は、断面積および/または長さを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の装置
【請求項6】
前記接続チャネル(201)は、前記計測チャネル(202)よりも小さい断面積を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
記接続チャネル(201)は、前記断面積の急激な変化を伴って前記計測チャネル(202)に接続される、請求項5または6に記載の装置
【請求項8】
記接続チャネル(201)は、前記接続チャネル(201)と前記計測チャネル(202)との長手方向の対称軸がそれぞれ90°以下の角度(V)で交差するような方法で、前記計測チャネル(202)と交わる、請求項5~7のいずれか一項に記載の装置
【請求項9】
記計測チャネル(202)は、終端(b)を有する少なくとも1つの分岐を有する、請求項5~8のいずれか一項に記載の装置
【請求項10】
記接続チャネル(201)は、前記計測チャネル(202)を2つの非対称部に分割する点(C)で前記計測チャネル(202)と交わり、第1の部分は第2の部分よりも充填時間が長く、前記出口(203)に接続される、請求項5~9のいずれか一項に記載の装置
【請求項11】
記第1の部分は、前記出口(203)に接続される長い部分(L1)であり、第2の部分は、終端(b)に接続される短い部分(L2)である、請求項10に記載の装置
【請求項12】
記流体コネクタは、前記血漿抽出区画(100)の出口オリフィスと前記計測チャネル(202)の入口との間の接続部であり、好ましくは、該入口から前記出口へ直線状に延在する、請求項2~4のいずれか一項に記載の装置
【請求項13】
前記流体コネクタにはベントが設けられている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
記全血リザーバは、前記血漿分離膜への血液の流入を制限するように構成され、前記全血リザーバは、前記計測チャネルが1回のみ充填できるように構成される、請求項に記載の装置
【請求項15】
記出口と前記毛細管手段との間に延在する架橋要素を備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置
【請求項16】
血リザーバ、計測チャネル、出口領域のうちの少なくとも1つから選択される位置に配置された少なくとも1つのベントを備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置
【請求項17】
ベントは血漿分離膜に接続された全血リザーバに配置され、ベントは前記計測チャネルの分岐部に配置され、ベントは前記出口に接続して配置される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
求項1~17のいずれか一項に記載の装置により全血のサンプルから計測される体積の血漿を得る方法であって、
(a) 血漿マイクロ流体通路を提供する構造の入口で全血サンプルを受け取るステップと、
(b) 全血から血漿を分離し、血漿抽出チャンバから前記流体通路の計測チャネルへ第1の流動抵抗で血漿を輸送するステップと、
(c)毛細管手段との液体接触を成立させる出口を通して、前記第1の流動抵抗よりも低い第2の流動抵抗で前記計測チャネルを充填するために血漿を受け入れるステップと、
(d) 前記流体通路に残留する血漿を分離しながら、前記毛細管手段の毛細管力によって前記計測チャネルを空にするステップと、
(e) 前記毛細管手段で計測される体積を有する血漿サンプルを得るステップと、を含む方法
【請求項19】
記計測チャネルの少なくとも1つの短い分岐を終端で充填し、続いて、前記計測チャネルのより長い分岐を前記出口と共に充填し、それにより、前記毛細管手段との液体接触を成立させるステップを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全血からマイクロ流体血漿を抽出し、その計測を行うことを目的とする。
【背景技術】
【0002】
全血からの血漿の分離は、臨床診断および生物医学的研究目的のための全血検査における重要なステップである。血液サンプリングは、従来、チューブへの5~10mlの全血の静脈穿刺および収集を通じて行われている。分析のためには、通常、血漿が好ましい物質であり、分析の前に、遠心分離によって遠心実験室で得られる。液体サンプルをチューブで取り扱うための代替の収集方法は、血液を紙材料上に適用し、サンプルを紙上で乾燥させることである。実験室では、乾燥した血液を再溶解し、湿式化学を通して分析用に調製することができる。この方法は、乾式血球分析(DBS)と呼ばれ、血球を保持するための分離技術と組み合わせると、乾燥血漿スポット(DPS)を得ることもできる。この方法論は、研究室への輸送中にコールドチェーンを維持する必要がないという利点をもたらすため、広く受け入れられている。保管フォーマットの単純さは、指穿刺による毛細血の家庭でのサンプリングのためにも広く開かれている。
【0003】
マイクロ流体システムおよびLab-on-Chipsは、生物化学的分析の時間およびコストを削減するための解決策である。小型化により分析量が減り、反応時間が短縮され、高価な試薬の消費が抑えられる。マイクロ流体技術は、血漿抽出目的のために適用されてきた。血球のマイクロスケールでの血球からの分離は、能動的(電気的または磁場などの外部から加えられた力)または受動的(沈殿、濾過または微細特徴によって誘発される流体力学的効果)のいずれかによって達成することができる。さらに、紙ベース、および遠心マイクロ流体技術も適用することができる。
【0004】
多くの生化学分析は分析物の定量化を必要とする。サンプル中の分析物の正確な濃度を確定するには、正確なサンプル量の情報が必要である。マイクロ流体レベルでは、液体の計測は、再び能動的または受動的に達成され得る。体積流体の体積を2つ以上の体積に分割する能動的手段の例は、液体体積と機械的に関わる能動弁のような構成要素を導入して、それによりユニットで分割すること、または液体の一部を分裂させることができる加圧エアと組み合わせて受動弁を導入することである。液滴マイクロ流体技術では、特定のマイクロ流体幾何構造(T接合)における2つの非混和性液体相(油と水)の間に現れる分離力が、液体の区画化のために利用される。受動的計測は、文献での報告が少ない。WO2016/209147は、マイクロチャネルに集積された2つの溶解可能な膜を用いた受動的計測を実証している。更に、US2015/0147777 A1は、計測のために吸収材料を含むスピルチャネル構造の上を交差することを使用している。WO2015/044454は、生体液、好ましくは、計測されたサンプルを収集するための計測チャネルを含む全血を収集および輸送するためのマイクロ流体装置を開示している。この装置は、低流動抵抗を有する第1の領域を有し、入口機構を含み、高流動抵抗を有する計測チャネルを含む第2の領域を有し、これは、血液特性の変動から生じる異なる流動に適合した安定した性能を得るために関連する問題を生じ得る構成である。
【0005】
血漿サンプリングのための完全に自律的なシステムが、ユーザからの双方性の最小要求の利点をもたらし、プロセスを実行することを可能にし、それによって、ユーザの訓練水準の低下とサンプリング中のエラーのリスクの低減を可能にすることが望ましい。マイクロ流体レベルでの受動的手段による自律的システムは、マイクロ流体機能を実行するために電源等を必要とする外部駆動力を必要としないので、システムの複雑性およびコストをさらに低減するであろう。しかしながら、このようなシステムを開発するためには、これらの自由度が能動的な流れの操作を可能にすることにより操作がより容易となるシステムでの流動特性の差を生成するため、個人間で大きく変化するヘマトクリット、脂質含有量および凝固因子の点で、広範囲の血液特性に対する許容性に適合するための設計上の難題に立ち向かうことに直面するであろう。本発明は、上述の問題を解決する一方で、体積規定の血漿サンプルをもたらす改良を目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、血液特性の変動からの独立性を改善した、全血から抽出されたサンプルを輸送および計測するマイクロ流体装置を提供することである。
【0007】
本発明の目的は、時間に依存する構成要素がなく、自律的かつ自立的である、全血から抽出されたサンプルを輸送および計測するマイクロ流体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの一般的な態様では、本発明は、規定体積の血漿を輸送およびサンプリングし、入口から出口への流体通路を提供するためのマイクロ流体装置に関する。装置は、入口を有する第1の領域を備え、前記第1の領域は、第1の流動抵抗を有し、前記第1の領域は、全血サンプルを受け取り、収集し、血漿を分離するように構成される。装置は、出口を有する第2の領域をさらに備え、前記第2の領域は、第2の流動抵抗を有し、前記第2の領域は、前記第1の領域と流体連通し、分離された血漿を測定するように構成される。装置は、さらに、第1の領域と第2の領域とを分離するための手段と、出口と流体連通し、第1の領域の血漿と第2の領域の血漿を分離しながら、第2の領域の計測される血漿体積を輸送および吸収するのに十分に強い毛細管力を発揮するように構成された毛細管手段とを備える。第2の領域は、少なくとも1つのエアベントを備え、この態様による装置は、血漿を輸送するときに、任意の所与の時点で、第2の領域の有効な第2の流動抵抗の値の少なくとも2倍である、第1の領域の有効な第1の流動抵抗を許容する。
【0009】
この態様では、「有効な流動抵抗」という用語は、装置を通るマイクロ流体輸送のプロセスを通しての流動抵抗が動的であり、液体が流体の流れの中のエアによって置換されるときに、徐々に変化するという事実に関する。
【0010】
本発明のこの一般的な態様では、装置の第1の領域は、入口を含む血漿抽出区画を備えることができる。血漿抽出区画は、全血サンプルを受け取り、収集し、装置でさらに輸送するために、サンプルから血漿を分離するように構成される。第2の領域は、流体コネクタによって出口および血漿抽出区画と流体連通された計測チャネルを備え、好ましくは、計測チャネルは、0.5μl~50μlの体積を有する。より好ましくは、計測チャネルの体積は、1~30μlである。
【0011】
計測チャネルの画定された体積は、一般に、本発明による、マイクロ流体装置のコンテクストおよび用語「マイクロ流体」を確定する。
【0012】
本発明のこの一般的な局面において、血漿抽出区画は、分離された血漿を収集し、さらに輸送するための全血リザーバ、血漿分離膜、および血漿濾過チャンバのうちの少なくとも1つを含む。必ずしもそうではないが、好ましくは、装置には、分離された血漿を収集し、さらに輸送するための、全血リザーバ、血漿分離膜、および血漿濾過チャンバのそれぞれが設けられる。
【0013】
マイクロ流体装置の一実施形態では、第1および第2の領域を分離するための手段は、血漿抽出チャンバと計測チャネルとの間の接続チャネルである。この実施形態では、接続チャネルは、好ましくは、例えば、血漿濾過チャンバから計測チャネルへの、血漿抽出区画からの直線的な延長部を有する。好ましくは、接続チャネルおよび計測チャネルは、異なる諸元を有する。このような諸元には、断面積および長さが含まれるが、これらに限定されず、好ましくは、接続チャネルは、計測チャネルよりも小さい断面積を有する。
【0014】
一実施形態では、接続チャネルは、諸元の急激な変化を伴って計測チャネルに繋がれる。
【0015】
一実施形態では、接続チャネルは、鋭角のコーナーで計測チャネルに交わり、そのため、該接続チャネルおよび該計測チャネルの長手方向の対称軸は、90°以下の角度で交差する。
【0016】
一実施形態では、装置は、終端を有する少なくとも1つの分岐を有する計測チャネルを備える。
【0017】
一実施形態では、装置は、2つの非対称部に計測チャネルを分割するように計測チャネルに交わる接続チャネルを有し、第1の部分は、第2の部分よりも長い充填時間で出口を接続する。このようなシステムは、概してT字型として構成することができる。
【0018】
本装置の一実施形態では、計測チャネルの第1の部分は、出口に接続されたより長い部分(L1)であり、計測チャネルの第2の部分は、短い部分(L2)である。例えば、L1:L2 の関係が5:4 または4:3、または5:4 から4:3 の終端に接続されているか、別の例では、長い部分(L1) は、短い部分(L2) の長さと比較して少なくとも2倍の長さになる。
【0019】
本発明によるマイクロ流体装置の別の実施形態において、第1および第2の領域を分離するための手段は、血漿抽出区画の出口オリフィスと計測チャネルの入口との間に延在する流体コネクタであり、流体コネクタには、エアベントが設けられている(図8)。好ましくは、計測チャネルは、計測チャネルの入口から計測チャネルの出口まで直線的な延長部を有する。従って、計測チャネルには分岐が設けられていない。
【0020】
本発明によるマイクロ流体装置の別の実施形態では、第1および第2の領域を分離するための手段は、血漿濾過チャンバと計測チャネルとの間に位置するエアベントであり、それによって、異なる流動抵抗の第1および第2の領域の間のインターフェイスとして作用する。
【0021】
一実施形態では、装置の毛細管手段は、PVAを含むフィルムなどの溶解可能なフィルムによって選択的に覆われる、紙などの多孔質マトリクスである。
【0022】
一実施形態では、装置の毛細管手段は、親水性マイクロ流体チャネルなどの毛細管チャネルであり、計測チャネルから血漿を排出して空にすることができる。
【0023】
あらゆる先の実施形態において定義される装置において、血液リザーバは、血漿分離膜への血液流入を制限するように配置することができる。血液リザーバは、好適には、計測チャネルの体積に適合されるように構成され、計測チャネルが一度だけ充填され得るように構成される。血液リザーバの体積は、1~200μl、より好ましくは5~200μl、さらに好ましくは10~100μlであることが望ましい。
【0024】
先の実施形態のいずれかにおいて定義された装置は、出口と毛細管手段との間に延在する架橋要素を含んでもよい。架橋要素は、出口と毛細管手段との間の流体連通を支持する手段として働く。
【0025】
先の実施形態のいずれかにおいて定義される装置は、全血リザーバ、計測チャネル、出口領域のうちの少なくとも1つから選択される適切な位置に配置された1つまたは複数のエアベントを備えることができる。好ましくは、エアベントが、血漿分離膜に接続された全血リザーバに配置され、エアベントが、計測チャネルの分岐に配置され、エアベントが、出口に接続して配置される。
【0026】
本発明の別の一般的な態様では、不定体積を有する全血サンプルから計測体積の血漿を得る方法に関する。本方法は、(a)血漿マイクロ流体通路を提供する構造の入口で全血サンプルを受け入れるステップと、(b)血漿を全血から分離し、血漿抽出チャンバから前記流体通路の計測チャネルへ第1の流れ流動抵抗血漿で輸送するステップと、(c)第1の流動抵抗よりも低い第2の流動抵抗で、かつ毛細管手段との液体接触を成立させる出口を通して、血漿を充填するために血漿を受け入れるステップと、(d)流体通路に残留する血漿を分離しながら、毛細管手段の毛細管力によって計測チャネルを空にするステップと、(e)毛細管手段に計測される体積を有する血漿サンプルを得るステップと、を含む。
【0027】
このように記載された方法において、マイクロ流体通路を有するマイクロ流体装置が、計測される体積血漿を分割または分離することが可能であることを記載し、その結果、体積画定されたサンプルが毛細管手段に提供され、好ましくは血漿抽出チャンバに、そして本質的に通路のより高い流動抵抗を有する領域に、残りの血漿の幾分かがシステムで保持される。
【0028】
方法の異なる実施形態では、計測チャネルの少なくとも1つの短い分岐を終端で満たし、続いて、計測チャネルのより長い分岐を出口と共に充填し、それによって、毛細管手段との液体接触を成立させることを含んでもよい。
【0029】
ここで概説するような異なる方法は、先に具現化された装置のいずれかで適切に実施することができる。
【0030】
以下の詳細かつ例示的な部分は、例示を目的とする本発明の特定の実施形態を記述しており、請求項に概説したように本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【0031】
次に、本発明を、例として、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明によるマイクロ流体装置を上面視、側面視および垂直側面視で示す。
図2】全血リザーバ入口での全血の注入を示す。
図3】血漿抽出区画および接続チャネルへの入口での血漿の抽出を示す。
図4】チャネルの出口(a)および計測チャネルの端部(b)に向かう、計測チャネルの双方向充填を示す。計測チャネルチャネル
図5】流体がbに達したときのaにのみ向かう片方向充填を示す。
図6】出口における毛細管手段との接触が、計測チャネルの空化を開始する方法を示す。
図7】計測チャネルが2回目に充填され始める様子を示す。
図8】本発明によるマイクロ流体装置の別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、図1においてVとして表される90°以下の角度で計測チャネルに取り付けられる短い接続チャネル(201)によって、血漿抽出区画が計測チャネル(202)に接続される、血漿抽出区画(100)と計測チャネル(202)を有する発明に係る装置の実施形態の全体的な略図を示す。角度Vは、接続チャネル(201)と計測チャネル(202)との間の鋭角コーナーを許容するように構成することができる。接続チャネルを計測チャネルに取り付けるための点は、L1>L2であるところで長さL1およびL2が形成されるように、計測チャネルの長さの中央からオフセンタリングされる。計測チャネルの体積は、その長さ、幅、高さで画定される。計測チャネルは、L2(b)の端部で環境に開かれ、システムの出口を形成するL1(a)の端部で毛細管手段としての紙に接続される。提案された装置における血漿分離は、分離膜(103)が全血リザーバ(102)と血漿濾過チャンバ(104)の間に配置される濾過手段によって行われる。全血は、全血リザーバ(102)の入口(101)に注入される。受動的血漿分離が開始されるためには、分離膜(103)が、毛細管を基底部(図1には示されていない)と接触させる必要があることがよく知られている。これは、例えば、Thorslundら(10.1007/s10544-006-6385-7)のように膜と接触する微細構造を導入することによって、またはWO2009106331A2で提案されているように膜を凹状に曲げることによって、またはWO2016/209147A1で示唆されているように、膜とチャネル底部との間に楔を導入することによって達成され得る。いったん血漿抽出が開始されると、血漿濾過チャンバ(104)は充填を開始する。充満すると、血漿は接続チャネル(201) を介して計測チャネル(202) に入る。計測チャネル(202) は、点a とb に向かう両方向に充満され始める。血漿がL2(b)の端部に達すると、今度は、血漿は出口(a)に向かう方向にのみ流れる。血漿が出口(203)に到達すると、ここでは紙(204)によって具現化される毛細管手段によって接触が開始される。紙の強い毛細管力は、強い吸上げ力により、計測チャネルに充填された液体を紙(204)に引っ張り、血漿抽出区画(104)および接続チャネル(201)の血漿の残りの部分から分離する。紙へと計測される血漿を排出した後、血漿抽出が継続し、計測チャネルが2回目の充填を開始する。2回目に出口に血漿が届かないようにするために、膜の前に全血リザーバがあり、1回の計測体積に十分な血液しかできないようになっている。プロセスの本質的なステップは図2~7に見ることができる。HCT30、40、50の全血65μLから13μlの血漿をサンプリングするために提案した方法を実証した。
【0034】
図2に全血リザーバを配置した入口での全血の注入を示す。
【0035】
図3は、接続チャネルへの血漿抽出区画入口からの血漿の抽出を示す。
【0036】
図4は、計測チャネルの出口(a)および計測チャネルの端部(b)に向かう、計測チャネル202の双方向充填を示す。
【0037】
図5は、(b)に達したときの流れが双方向から一方向に変わり、それにより(a)に向かってのみ充填される様子を示している。
【0038】
図6は、紙の強い毛細管力により、出口での毛細管手段(ここでは紙)との接触が、計測チャネルの空化を開始し、計測チャネルの液体が、抽出区画および接続チャネルの血漿から分離される様子を示している。
【0039】
図7は、計測されるサンプルが紙に分配され、血漿抽出が継続し、計測チャネルの再充填につながる様子を示している。
【0040】
図8は、図1~7に示すように、全血リザーバと、膜と、血漿ろ過液チャンバとを備えた同じ血漿抽出区画を有する、直線的な計測チャネルを備えた本発明によるマイクロ流体装置の別の実施形態の平面視および側面視を示す。図1~7に示すように、流体コネクタは、血漿抽出区画の出口オリフィスと計測チャネルの入口との間に延在する接続部であり、流体コネクタは、図8の位置bにエアベントを備えている。
【0041】
図8に示される装置の別の代替実施形態では、同じ特徴を有するが、流体コネクタは有さず、流動抵抗の異なる第1の領域と第2の領域との間のインターフェイスとして機能する計測チャネル(202)と血漿ろ過液チャンバ(104)との間に位置する通気の形態のエアピンチオフ構造であり、このエアベントは、計測チャネル(202)が充填され、エアベントを通るエアの制御された流入と紙マトリクスの毛細管力とによって、流体が紙マトリクス(204)に到達したときに、ピンチオフ効果を許容するであろう。エアベントは、制御された液体ピンチオフを可能にし、最小の毛細管力という観点でエアベントを提供する。これにより、計測チャネルからの血漿が、DBSのために紙マトリックスに集められ、過剰な血漿から分離されることが認められる。
【0042】
システムの特定の設計は、受動的手段によるマイクロ流体システムにおける血漿の抽出および計測におけるいくつかの困難な課題を解決する。
【0043】
余剰血漿からの計測される血漿の分割は、計測チャネルと接続チャネルの交点で液体を分離することにより達成される。多くの共存因子により分離が現出する。血漿抽出区画での接続チャネルより高い流動抵抗(血漿抽出区画の膜の抵抗を通して現れる)は、紙との接触時に、血漿抽出区画である点cから流体を引くよりむしろ計測チャネルの点bからaに向かって流体を引くことを可能にする。計測チャネルへの入口の鋭角、接続チャネルと計測チャネルとの間の90°以下の角度Vは、メニスカスがそれを通過するときに液体表面を切断し、計測チャネルおよび接続チャネルにおける血漿間の凝集を不能にする。
【0044】
例示のシステムは、例えばヘマトクリットのような個体間の血液特性の変動によって引き起こされ得る計測チャネルの充填時間の変動に対して許容性がある。これは、システムにイベント時間に依存するコンポーネント(例えば、ピンチオフ/分離用の溶解可能なバルブ等)が存在しないがある。
【0045】
例示のシステムは、チャネルの機械的変動および公差によって引き起こされ得る計測チャネルの充填時間の変動に対しても許容性がある。この特徴は、接続チャネルから計測チャネルへの入口の非対称配置(ここでは、L1>L2)によって達成され、その結果、最初に充填を完了するために開放チャネル経路に対して余裕がある。
【0046】
膜抽出区画と計測チャネルとの交点の、計測チャネルの中央(中間ではない)に向かう交点の例示的な配置は、計測チャネル(b)の端部に血漿抽出区画を配置するよりも、血漿抽出区画のための毛細管ポンプとして作用する、より強い毛細管力を伴う。これは、2つのチャネルが1つより強い毛細管力を有し、より速い抽出率を促進するためである。
【0047】
紙ディスクで吸収及び計測した後、計測チャネルは再充填を開始する。閉じた血漿抽出区画を通しての入力体積を制限することにより、余剰血漿の第2の計測が防止される。閉鎖された血漿抽出区画は、30分間にも及ぶ可能性のある抽出プロセス中のサンプルの蒸発および汚染をさらに防止する。
【0048】
本発明は、例えば、生化学分析、治療薬モニタリング、ビタミンD、フェリチン等の栄養素のスクリーニング、及び毒性スクリーニングにおいて有用である。
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